JP2005023281A - 多糖類複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 アニオン性多糖類とカチオン性多糖類とがポリイオンコンプレックス構造を形成している多糖類複合体であって、該アニオン性多糖類として、少なくともキチン・キトサンを酸化して、構成単糖であるN−アセチル−D−グルコサミンの6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類を含み、該カチオン性多糖類として、少なくともキトサンを含むことを特徴とする多糖類複合体とるるものである。
【選択図】なし
Description
<製造例1>
(N−アセチル化キトサンの調製(1))
脱アセチル化度100%のキトサンとして、大日精化工業(株)製 ダイキトサン100D(VL)を用い、このキトサン10gを10%酢酸190gに溶解し、メタノール1Lで希釈し、攪拌しながら無水酢酸12.68g(2eq.)を加えると、数分でゲル化した。これを15時間放置後、さらにメタノール1Lを加えてホモジナイザーで攪拌し、2N−NaOH水溶液を加えてpH7に中和し、これを濾過して、メタノール及び水:アセトン=1:7よりなる溶液で洗浄した後、脱イオン水で十分に洗浄し、凍結乾燥させてN−アセチル化キトサン11.6gを得た。元素分析によるN−アセチル化度は95%であった。
<製造例2>
(N−アセチル化キトサンの調製(2))
製造例1における無水酢酸の添加量を5.71g(0.9eq.)と変えた以外製造例1と同様に処理して、N−アセチル化キトサン11.4gを得た。元素分析によるN−アセチル化度は80%であった。
<製造例3>
(N−アセチル化キトサンの調製(3))
脱アセチル化度100%のキトサンとして、大日精化工業(株)製 ダイキトサン100D(VL)を用い、このキトサン10gを10%酢酸190gに溶解し、メタノール1Lで希釈し、攪拌しながら無水酢酸3.17g(0.5eq.)を加え、室温で15時間攪拌した。ここに2N−NaOH水溶液を加えてpH7に中和すると、フレーク状のキトサンが析出し、これを濾過して、メタノール及び水:アセトン=1:7よりなる溶液で十分に洗浄した後、アセトンで脱水して、40℃で減圧乾燥させてN−アセチル化キトサン10.3gを得た。このキトサンは水溶性を示し、1wt%の水溶液でpH8.2であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。塩化重水素酸重水溶液に溶解して測定した1H−NMR分析の結果から、N−アセチル化度は45%であった。図1に1H−NMRのスペクトルを示す。
<製造例4>
(キトウロン酸ナトリウム塩の調製(1))
前記製造例1にて調製したN−アセチル化キトサン10gを蒸留水400gに懸濁し、蒸留水100gにTEMPO 0.15g、臭化ナトリウム2.0gを溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液84gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、2Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%のキトウロン酸ナトリウム塩10.8gを得た。図2に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%水溶液でpH6であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量は32,000であった。
<製造例5>
(キトウロン酸ナトリウム塩の調製(2))
前記製造例2にて調製したN−アセチル化キトサン10gを蒸留水400gに懸濁し、蒸留水100gにTEMPO 0.15g、臭化ナトリウム2.0gを溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液84gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、2Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%のキトウロン酸ナトリウム塩10.6gを得た。図3に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%水溶液でpH6.5であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量は26,000であった。
<製造例6>
(キトウロン酸ナトリウム塩の調製(3))
和光純薬工業(株)製キチン10gを、45%水酸化ナトリウム水溶液150gに浸漬し、室温以下で2時間攪拌した。これに、砕いた氷を850g、周りを氷水などで冷やし、攪拌しながら添加した。このアルカリ処理によりキチンはほぼ溶解する。塩酸で中和し、十分に水洗した後、乾燥ないものを酸化原料とした。
<製造例7>
(アミロウロン酸ナトリウム塩の調製)
コンスターチ10gを蒸留水400gに加熱溶解させ、冷却した。この溶液に、蒸留水100gにTEMPO0.18g、臭化ナトリウム2.5gを溶解した溶液を加え、11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液104gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、2Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%のアミロウロン酸ナトリウム塩11.7gを得た。図5に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%水溶液でpH7であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量は58,000であった。
<製造例8>
(セロウロン酸ナトリウム塩の調製)
再生セルロースとして旭化成工業(株)製ベンリーゼを用い、再生セルロース10gを蒸留水400gに懸濁し、蒸留水100gにTEMPO0.18g、臭化ナトリウム2.5gを溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液104gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、2Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%のセロウロン酸ナトリウム塩11.6gを得た。図6に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%水溶液でpH7であった。この溶液に酸を加えてpH3以下にすると白濁したが、均一な分散液であった。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量は52,000であった。
<試験例1>
製造例4、7、8の酸化多糖類、及び製造例3のN−アセチル化キトサン、および微結晶セルロース粉末、さらにALDRICH製カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 Mw=250,000 DS=0.7について、下記の方法にて、土壌中の好気性微生物による生分解性を評価した。結果を図7に示す。カルボキシルメチルセルロースナトリウム塩が殆ど分解しないのに対して、本発明の原料となる酸化多糖類およびキトサンは、ほぼセルロースと同様に分解することが分かる。
(生分解性の評価方法)
八幡物産(株)製の微生物酸化分解測定装置(MODA)を用い、試験土壌として、水分60%に調整した標準コンポスト(八幡物産(株)製 YK−2)250ccと、水分18%に調整した海砂250ccを混合したものを用いた。試料10gを試験土壌と均一に混合して、カラム状の反応筒に充填し、反応筒内の温度を35℃で一定に保持した。さらに反応筒下方より水蒸気を飽和した脱炭酸空気を40ml/分で通気し、反応筒上部からはガス漏れなく配管されて、アンモニアガスを除くために硫酸水浴中を通り、水分を除くためにシリカゲルと塩化カルシウムを充填した吸湿筒を通り、さらにソーダタルク及びソーダライムを充填した吸収筒に導かれる。試料が好気的に生分解して発生する二酸化炭素は全て、吸収筒に吸収されるため、吸収筒の重量変化から生分解により発生した二酸化炭素量を定量できるものである。なお試料を入れない試験土壌のみの空試験を同時に行い、空試験で発生した二酸化炭素量を差し引いて、分解により発生した二酸化炭素量を求めた。試料10g中の炭素含量から理論的に発生する二酸化炭素量を算出し、理論量に対する発生二酸化炭素量の割合を生分解度として、図7に示した。
<比較例1>
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度2%、pH1のキトサン溶液とした。ここに、攪拌しながら、製造例8で作成したセロウロン酸ナトリウム塩1gを加え、その後1N−NaOH水溶液によりpHを7に調整するとゲルが析出した。攪拌を止めてしばらく静置するとゲルは容器底面に堆積した。上澄み液を捨て、比較例1の多糖類複合体を得た。この多糖類複合体は結着力が弱く、変形応力を加えるとボロボロに形態が崩れるものであった。
<比較例2>
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度2%、pH1のキトサン溶液とした。ここに、攪拌しながら、ALDRICH製カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 Mw=250,000 DS=0.7 1gを1%濃度の水溶液として添加し、その後1N−NaOH水溶液によりpHを7に調整すると白色のゲルが析出した。攪拌を止めてしばらく静置するとゲルは容器底面に堆積した。上澄み液を捨て、比較例2の多糖類複合体を得た。この多糖類複合体は結着力が弱く、容易にボロボロに形態が崩れるものであった。
<比較例3>
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1のキトサン溶液とした。ここに、攪拌しながら、和光純薬工業(株)製 アルギン酸ナトリウム 500〜600cP 1gを1%濃度の水溶液として加え、その後1N−NaOH水溶液によりpHを7に調整すると全体がゲル状となった。この高膨潤のゲルを底面積が127.5cm2のポリスチレン製容器に移し、一晩静置したが、上澄みが僅かに生成したが、高膨潤な状態であった。このゲルを風乾して、比較例3の多糖類複合体を得た。本多糖類複合体は、乾燥時の膜厚が50〜300μmのシートとなったが、ムラのあるもので、水中に投じると膨潤してシート形状をとどめるものではなかった。
<比較例4〜6>
比較例1〜3の多糖類複合体の乾燥ゲルを凍結粉砕して、粉末状とした。それぞれ、粉末1gを蒸留水100g中に攪拌しながら添加した。3分間攪拌後、速やかに底面積が36.3cm2のポリスチレン製容器に注ぎ込み一晩静置した。容器底面に堆積した湿潤ゲルは結着せず、湿潤状態ではシートにはならなかった。
<試験例2>
実施例3〜10の多糖類複合体の乾燥ゲルシートを1cm角の試験片とし、それぞれ20ml容ガラス瓶に入れたリン酸緩衝生理食塩水10ml中に浸漬した。37℃で3日間保存し、形態変化を観察した。いずれも膨潤してもシート形状を維持していた。さらに37℃保存中容器を激しく攪拌すると実施例3および6のゲルシートは壊れて断片化したが、それ以外は壊れることなくシート状を維持した。
<試験例3>
実施例3〜10の多糖類複合体の乾燥ゲルシートを1cm角の試験片とし、それぞれ20ml容ガラス瓶に入れたリン酸緩衝生理食塩水10ml中に浸漬した。ここに、それぞれ和光純薬工業(株)製リゾチーム(卵白由来)10μgを添加し、37℃で2日間保存し、形態変化を観察した。その後残存したゲルシートを取り出し洗浄・乾燥して、重量減少(%)=(100−試験後の乾燥重量/試験前の乾燥重量×100)を求めた。
Claims (10)
- アニオン性多糖類とカチオン性多糖類とがポリイオンコンプレックス構造を形成している多糖類複合体であって、該アニオン性多糖類として、少なくともキチン・キトサンを酸化して、構成単糖であるN−アセチル−D−グルコサミンの6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類を含み、該カチオン性多糖類として、少なくともキトサンを含むことを特徴とする多糖類複合体。
- 前記酸化多糖類が、結晶性を低下させたアルカリ再生キチン或いはN−アセチル化キトサンを原料に、水系で、N−オキシル化合物触媒の存在下、酸化剤を用いて酸化する方法により得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の多糖類複合体。
- 前記酸化多糖類が、下記一般式(1)に示す化学構造からなることを特徴とする請求項1または2に記載の多糖類複合体。
- 前記一般式(1)中の(a+c):(b+d)の比率が8:2から10:0の範囲にあり、(a+b):(c+d)の比率が7:3から10:0の範囲にあることを特徴とする請求項3記載の多糖類複合体。
- 前記カチオン性多糖類として含まれるキトサンが、その構成単糖であるD−グルコサミンとN−アセチル−D−グルコサミンの比率が、40:60から60:40の範囲にあることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多糖類複合体。
- 前記アニオン性多糖類中に占める、キチン・キトサンを酸化して、構成単糖であるN−アセチル−D−グルコサミンの6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類の比率が、重量比で80%から100%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の多糖類複合体。
- 前記アニオン性多糖類が、少なくともキチン・キトサンを酸化して、構成単糖であるN−アセチル−D−グルコサミンの6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類を含み、さらにキチン・キトサン以外の多糖類を酸化してその多糖類のピラノース環の6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の多糖類複合体。
- 前記アニオン性多糖類が、でんぷんを酸化して、D−グルコースの6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類を含むことを特徴とする請求項7に記載の多糖類複合体。
- 前記アニオン性多糖類が、再生セルロースを酸化して、D−グルコースの6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類を含むことを特徴とする請求項7に記載の多糖類複合体。
- 前記アニオン性多糖類中の、キチン・キトサンを酸化して、構成単糖であるN−アセチル−D−グルコサミンの6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類と、キチン・キトサン以外の多糖類を酸化してその多糖類のピラノース環の6位にカルボキシル基又はその塩を導入した酸化多糖類の比率が重量比で8:2から1:9であることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の多糖類複合体。
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