JP4868385B2 - パラジウムナノ粒子が分散した耐熱用高分子成型体複合材料、及びその製造方法 - Google Patents
パラジウムナノ粒子が分散した耐熱用高分子成型体複合材料、及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
また、従来の添加剤の問題点は、有機系化合物であるため、高温時に揮発することや高分子に溶解するため、添加により高分子のガラス転移温度、融点を低下させたり、機械的特性を低下させることが挙げられる。
ここでは、金属クラスターが高分子全体に一様に分散した構造とならず、ブロックコポリマーを構成するポリマーの内で還元力の大きな特定なポリマー中のみに分散した構造、すなわち、ブッロクコポリマーのミクロ相分離構造内における特定の相でのみ金属クラスターが成長することが記載されている。
本発明は、高分子材料を成型した成型体の耐熱性を向上させた耐熱用高分子成型体複合材料を提供する。
また、この発明のもう一つの目的は、このような耐熱用高分子成型体複合材料の製造方法を提供する。
本発明は、直径10nm以下のパラジウムナノ粒子を0.27〜0.35重量%含有する付加重合型高分子成型体であって、その空気中での熱分解開始温度が前記ナノ粒子を含まない高分子成型体に比べて50℃以上高いことを特徴とする耐熱用高分子成型体。
また、本発明においては、高分子をポリスチレン系重合体、ポリメタクリレート系重合体又はポリオレフィン系重合体とすることができる。
さらに、本発明においては、高分子成型体をフィルムとすることが望ましい。
さらに、本発明は、従来の有機系添加剤に比べ、熱劣化抑制効果が顕著である。高分子材料の本来有する機械的特性を落とすことなく、熱劣化を抑制する。シンジオタクティックポリスチレンの様な汎用的な有機溶剤に溶解しない高分子に対して、添加することが可能である。
パラジウムナノ粒子のポリマーへの添加方法としては、蒸気化した重金属化合物とポリマーを、ポリマーのガラス転移温度以上の温度、窒素雰囲気下に所定時間置き、重金属化合物をポリマー内部へ浸透させ、同時に還元する方法、重金属化合物を予めポリマーに混合し、その後、熱処理により純金属化合物を還元する方法が考えられる。重金属化合物を蒸気として利用する前者の方法は、有機溶媒への溶解性の低いシンジオタクティックポリスチレン、ポリプロピレン等のポリマーへパラジウムナノ粒子を容易に導入することが可能であることから望ましい。さらに、後者の方法では、予め溶解させた重金属化合物が還元のための熱処理時に再び蒸気としてポリマーから放出されるため、結果としてパラジウムナノ粒子の導入量を高くすることが困難である。
次に、本発明について実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(一般的な耐熱用高分子成型体複合材料の製造方法)
ポリマーフィルムとパラジウム(II)ジアセチルアセトナート(Pd(acac)2)蒸気を窒素雰囲気下、180℃で30〜2時間の所定時間ガラス管内に放置する。Pd(acac)2は高分子フィルム内で還元され、金属ナノ粒子が分散する。
耐熱性評価方法:金属ナノ粒子を導入したポリマーフィルムの加熱時での重量減少を、一定の昇温速度および一定の温度において測定する(TGA測定)。
ポリスチレンフィルムとパラジウム(II)ジアセチルアセトナート(Pd(acac)2)10mgをガラス容器に入れ、窒素置換後に180℃のオイルバスに30分間漬ける。蒸気となったPd(acac)2がポリスチレンフィルムに浸透し、同時に還元され、直径3nmのパラジウムナノ粒子が分散する。 図1にフィルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)観察により得られた写真を示す。このフィルムの窒素雰囲気下での10℃/minの昇温速度で熱重量測定(TGA)を行ったところ、熱分解温度が無添加のポリスチレンの場合350℃であるのに対し、パラジウムナノ粒子を含有するポリスチレンでは430℃であった(図2上)。また、360℃での等温重量変化測定では、ポリスチレンの場合、30分で重量が半分になるのに対し、パラジウムナノ粒子を含有するフィルムでは、重量が半分になる時間は60分であった(図2下)。
パラジウムナノ粒子のポリスチレンフィルムへの導入方法として、ポリマーとPd(acac) 2を予めクロロホルムに溶解し、溶液を乾燥させることにより、金属錯体が均一に溶解したポリマーフィルムを得た。窒素雰囲気下、180℃において30分間熱処理することにより調整したフィルムにおいても、パラジウムナノ粒子がフィルム内に形成され、同様の効果を確認した。
シンジオタクティックポリスチレン(sPS)は、通常のポリスチレン(アタクティックポリスチレン、(aPS)と同じ分子構造であるが、立体規則性により結晶性を有し、融点が260℃である。このポリマーのフィルムに実施例3と同様の方法によりパラジウムナノ粒子を導入し、耐熱性を評価した。
昇温速度20℃/minでの重量変化では、未処理のフィルムに対してパラジウムナノ粒子を導入することにより、分解開始温度が100℃以上上昇する。パラジウムナノ粒子の導入量は、金属錯体蒸気の作用時間が30, 60, 120minの時、それぞれ、0.35, 3, 4.4重量%であった(図3左)。360℃での等温熱処理では、未処理のフィルムが約30分で重量が50%になるのに対し、パラジウムナノ粒子の効果により50%の重量減少に1時間を要するようになる(図3右)。
これらのフィルムの機械的特性評価として、動的粘弾性測定を行った。弾性率の温度依存性は無添加のシンジオタクティックポリスチレン(sPS)と変わらず、物性の低下を引き起こさないことを確認した(図4)。
次に、400℃の一定温度下にフィルムをおいた時の重量の時間変化を測定したところ、図5右のようになった。未処理のフィルムに比較して、パラジウムナノ粒子が1重量%以下のわずかの添加量により、ポリプロピレンの重量減少速度を遅延させる効果が著しい。重量減少率が50%である時間により比較すると、未処理のフィルムは約30分であるのに対し、パラジウムナノ粒子を添加することにより、約80分となる。(図5参照)
同様にポリブチルメタクリレート(PBMA)についても検討した。30分間の処理により、1.53%のパラジウムナノ粒子を導入し、昇温速度10℃/minでの重量変化測定では、重量減少開始温度が約80℃上昇し、330℃での等温重量変化では、未処理フィルムでは5分で50%の重量減少となるのに対し、パラジウムナノ粒子により、約10分となる(図6参照)。
<ナイロン及びPET>
ナイロン、PETについても上記と同様の方法により、パラジウムナノ粒子をフィルムに導入することが可能である。しかし、10℃/minの昇温速度での熱重量減少測定により、上記ポリマーとは異なり、パラジウムナノ粒子の導入により、熱分解開始温度が低下することが判明した(図7参照)。
以上の結果から、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブチルメタクリレートについては、パラジウムナノ粒子の1wt%以下のきわめて少ない導入量により、ポリマーの熱分解を遅延させる効果が認められる。一方、ナイロン、PETについては、パラジウムナノ粒子の導入量は、最大30wt%にもなるが、熱分解は逆に早める傾向がある。
よって、パラジウムナノ粒子は、付加重合型ポリマーに対しては、熱分解を抑制する作用があり、縮重合型ポリマーに対しては、促進させる作用があることが明らかになった。
Claims (3)
- 直径10nm以下のパラジウムナノ粒子を0.27〜0.35重量%含有する付加重合型高分子成型体であって、その空気中での熱分解開始温度が前記ナノ粒子を含まない高分子成型体に比べて50℃以上高いことを特徴とする耐熱用高分子成型体。
- 高分子がポリスチレン系重合体、ポリメタクリレート系重合体又はポリオレフィン系重合体である請求項1に記載した耐熱用高分子成型体。
- 高分子成型体がフィルムである請求項1又は請求項2に記載した耐熱用高分子成型体。
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