本発明の第1の実施形態に係る水素燃料供給システム12が適用された燃料電池システム10、及び燃料電池システム10が適用された燃料電池ハイブリッドシステム100について、図面に基づいて説明する。
図1には、燃料電池ハイブリッドシステム100の概略全体構成がブロック図にて示されている。この図に示される如く、燃料電池ハイブリッドシステム100は、水素燃料システム12、燃料電池14及びこれらを制御するための発電部コントローラ70を含む発電部としての燃料電池システム10と、燃料電池システム10(燃料電池14)が発電した電力を交流電力に変換して外部負荷としてのモータMに供給するインバータ80と、燃料電池システム10が発電した電力を蓄電池としてのバッテリ82に蓄電(充電)し又はバッテリ82に蓄電している電力を放電してインバータ80に供給するための蓄電手段としてのDC−DCコンバータ84と、燃料電池ハイブリッドシステム100全体を制御するメインコントローラ86とを備えて構成されている。この実施形態では、燃料電池ハイブリッドシステム100は、モータMが比較的負荷変動の大きい自動車駆動用の原動機とされており、電源として燃料電池14及びバッテリ82を備えるハイブリッドシステムとされている。
以下の説明では、先ず、本発明における狭義の燃料電池システムである燃料電池システム10について説明し、その後、本発明における広義の燃料電池システムに含まれる燃料電池ハイブリッドシステム100のモータMの負荷低下時における制御について説明することとする。
(燃料電池システムの構成)
図4には、燃料電池システム10のシステム構成図(システムフローシート)が示されている。この図に示される如く、燃料電池システム10は、水素燃料供給システム12と、水素燃料供給システム12から水素燃料の供給を受けて発電を行う燃料電池14と、水素燃料供給システム12と燃料電池との間で熱交換を行う熱交換器16とを主要構成要素として構成されている。
水素燃料供給システム12は、一対の反応器18を備えている。一対の反応器18は、それぞれ筒状に形成されたハウジングの内部に改質触媒を配設して構成されており、それぞれ供給される炭化水素ガス(ガソリン、メタノール、天然ガス等)と改質用ガス(水蒸気、酸素)を触媒反応させることで、水素ガスを含む燃料ガスを生成する(改質反応を行う)ようになっている。改質反応は、以下の式(1)乃至(4)で表される各反応を含む。したがって、改質工程で得た燃料ガスには、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、分解炭化水素や未反応の原料炭化水素(CxHy)等の可燃性ガス、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)等の不燃性ガスを含むようになっている。
CnHm+nH2O → nCO +(n+m/2)H2 … (1)
CnHm+n/2O2 → nCO + m/2H2 … (2)
CO+H2O ⇔ CO2+H2 … (3)
CO+3H2 ⇔ CH4+H2O … (4)
この改質反応は、所定の温度以上(本実施形態では、700℃)で行われるようになっている。そして、各反応器18は、改質反応によって低下した触媒温度を上昇するために、改質反応とは独立して、供給された再生用ガスと酸素とを反応させて触媒を加熱すると共に該触媒に蓄熱する再生反応を行うようになっている。この実施の形態では、再生用ガス(後述するアノードオフガス)を燃焼することで、各反応器18の触媒を上記した改質反応を行い得る温度まで昇温する構成としている。したがって、各反応器18は、改質反応と再生反応とを選択的に行い得る構成である。
燃料電池14は、水素燃料供給システム12からアノード電極(水素極)に供給される上記改質反応によって得た燃料ガス(水素、一酸化炭素、及び未反応の炭化水素を含むガス)と、カソード電極(酸素極)に供給される酸素とを電気化学的反応させることで発電を行う構成とされている。この実施形態では、燃料電池14は、アノード電極とカソード電極との間に水素分離膜が設けられた水素分離膜式燃料電池(HMFC)とされており、上記燃料ガスのうち水素分離膜を透過した水素のみをカソード電極の酸素と反応させる(すなわち、燃料ガスのうち水素ガスのみを発電に用いる)ようになっている。このため、燃料電池14のアノードオフガスは、主に一酸化炭素及び炭化水素(水素を含む場合もある)が混合した可燃性ガスである。一方、燃料電池14のカソードオフガスは、酸素と水素との反応によって生成された水(水蒸気)及び酸素を含む空気である。
そして、各種ガスの流れについては後述するが、燃料電池システム10では、上記アノードオフガスを反応器18の再生用ガスとして利用するようになっている。また、燃料電池システム10では、カソードオフガスが含む水蒸気及び酸素を、上式(1)、(2)の如く改質反応ガスである炭化水素ガスと反応させるようになっている。さらに、燃料電池14は、その反応温度を略一定(この実施形態では略400℃〜500℃の間の一定温度)に保つために冷却用空気にて冷却される構成とされている。燃料電池14を冷却して昇温された冷却用空気は、再生反応を行うための支燃ガスである酸素含有ガス、すなわち燃焼用空気として利用されるようになっている。したがって、燃料電池システム10は、基本的には炭化水素原料と、カソード用及び冷却用の空気とを供給するだけで作動するようになっている。
熱交換器16は、燃料電池14のアノード電極に供給される高温ガスとしての燃料ガス(700℃)と、低温ガスとしてのカソードオフガス(400℃〜500℃)との熱交換を行い、燃料電池システムの熱効率を向上するようになっている。
水素燃料供給システム12は、一対の反応器18への改質反応ガス(炭化水素ガス、水蒸気、酸素)の流路、改質反応によって生成された燃料ガスの流路、再生用ガス及び燃焼用空気の各流路、並びに再生排ガスの流路を切り換えるための切換装置20を備えている。以下の説明では、2つの反応器18を区別する場合に、各図の紙面上側に示す一方の反応器18を第1反応器18A、他方の反応器18を第2反応器18Bということとする。
切換装置20は、第1反応器18Aに改質反応ガスを供給して改質反応を行わせている期間に第2反応器18Bに再生用ガス及び酸素を供給して再生反応を行わせる状態と、第1反応器18Aに再生用ガス及び酸素を供給して再生反応を行わせている期間に第2反応器18Bに改質反応ガスを供給して改質反応を行わせる状態とを切り換える構成とされている。以下、切換装置20の具体的構成例を説明する。なお、以下の説明では、反応器18が改質反応を行っている状態(期間)を改質工程、反応器18が再生反応を行っている状態(期間)を再生工程という場合がある。
図4に示される如く、水素燃料供給システム12は、原料供給ライン21備えており、原料供給ライン21上には、図示しない燃料タンクから液体の炭化水素原料を供給する燃料ポンプ22が配置されている。原料供給ライン21における燃料ポンプ22の下流には、蒸発器(気化器)24が配置されており、例えば燃料電池システム10の排ガスとの熱交換によって炭化水素原料を蒸発させるようになっている。また、原料供給ライン21における蒸発器24の下流には、混合器26が配置されている。混合器26は、炭化水素燃料と後述するカソードオフガス(式(1)の水蒸気及び式(2)の酸素)とを混合して、改質反応ガスとして下流に排出するようになっている。なお、カソードオフガスが高温であることから、液体の炭化水素原料を混合器26内に噴射する構成(インジェクション)を採用することで、蒸発器24を備えない構成とすることも可能である。さらに、蒸発器24と混合器26との間には、炭化水素原料遮断手段としてのバルブV0が配設されている。
原料供給ライン21の下流端には、環状のブリッジ管路28が接続されている。このブリッジ管路28には、4つのバルブV1A、V1B、V2B、V2Aが各図において反時計回りにこの順で直列に配置されている。原料供給ライン21の下流端は、ブリッジ管路28におけるバルブV1AとバルブV1Bとの間に接続されている。ブリッジ管路28におけるバルブV2AとバルブV2Bとの間には、排気ライン30の上流端が接続されている。排気ライン30上には、排気処理器32が配置されている。排気処理器32は、ハウジング内に酸化触媒を内蔵して構成されており、再生反応で燃焼しなかった再生用ガスを酸化処理(浄化)するようになっている。排気ライン30の下流端は、排気口30Aとされている。また、排気ライン30における排気処理器32の下流からは、排気戻しライン34が分岐しており、排気戻しライン34は混合器26に排ガスを導入可能に接続されている。排気戻しライン34にはバルブV3が配設されている。また、排気ライン30における排気戻しライン34の分岐部分の下流には、バルブV12が配設されている。バルブV12は、任意の弁開度を取り得る構成とされており、この弁開度に応じて、排気ライン30による排気量、すなわち排気戻しライン34を通じた混合器26への排気戻し量を調整可能とされている。
また、ブリッジ管路28におけるバルブV1AとバルブV2Aとの間からは、一端が第1反応器18Aの第1出入口18Cに接続された第1ライン36Aの他端が接続されている。さらに、ブリッジ管路28におけるバルブV1BとバルブV2Bとの間からは、一端が第2反応器18Bの第1出入口18Dに接続された第2ライン36Bの他端が接続されている。第1ライン36A、第2ライン36Bは、それぞれ改質反応を行う第1反応器18A、第2反応器18Bへの上記改質反応ガスの供給用、再生反応を行う第1反応器18A、第2反応器18Bからの再生排ガスの排出用として、選択的に用いられるようになっている。
さらに、第1反応器18Aにおける第1出入口18Cと反対側(ガス流れ方向の反対側)に配置された第2出入口18Eには、第3ライン38Aの一端が接続されており、第2反応器18Bにおける第1出入口18Dと反対側に配置された第2出入口18Fには、第4ライン38Bの一端が接続されている。第3ライン38A、第4ライン38Bの各他端は、それぞれ環状のブリッジ管路40に接続されている。このブリッジ管路40には、4つのバルブV5A、V5B、V6B、V6Aが各図において反時計回りにこの順で直列に配置されている。第3ライン38Aの他端は、ブリッジ管路40におけるバルブV5AとバルブV6Aとの間に接続されており、第4ライン38Bの他端は、ブリッジ管路40におけるバルブV5BとバルブV6Bとの間に接続されている。
このブリッジ管路40におけるバルブV6AとバルブV6Bとの間には、燃料ガス供給ライン42の一端が接続されている。燃料ガス供給ライン42の他端は、熱交換器16の高温ガス入口16A(燃料電池14の燃料ガス入口14A)に接続されている。また、ブリッジ管路40におけるバルブV5AとバルブV5Bとの間には、再生用ガス導入ライン44の一端が接続されている。再生用ガス導入ライン44の他端は、燃料電池14のアノードオフガス出口14Bに接続されている。
また、燃料ガス供給ライン42からは、下流端が排気口46Aである排気ライン46が分岐しており、排気ライン46上には、排気処理器48が配置されている。排気処理器48は、ハウジング内に酸化触媒を内蔵して構成されており、基本的には水素燃料供給システム12のスタートアップ時の排ガス(燃焼ガス)を浄化するようになっている。排気ライン46における排気処理器48の上流にはバルブV7が配設されている。
さらに、切換装置20は、一端が混合器26に接続され、該混合器26に水蒸気及び酸素を供給する水蒸気供給ライン50を備えている。水蒸気供給ライン50は、その他端が熱交換器16の低温ガス出口16Dに接続されており、燃料電池14のカソードオフガスを混合器26に送給するようになっている。水蒸気供給ライン50上にはバルブV9が配設されている。
また、切換装置20は、一端が第1反応器18Aにおける第2出入口18Eに接続された燃焼用空気供給ライン52A、及び一端が第2反応器18Bにおける第2出入口18Fに接続された燃焼用空気供給ライン52Bを備えている。燃焼用空気供給ライン52A上にはバルブV4Aが配設されており、燃焼用空気供給ライン52B上にはバルブV4Bが配設されている。燃焼用空気供給ライン52A、52Bの各他端(上流端)は、それぞれ一端が燃料電池14の冷却用空気出口14Fに接続された冷却用空気排出ライン54の他端に接続されている。
この冷却用空気排出ライン54からは、下流端が排気口56Aである排気ライン56が分岐しており、排気ライン56上にはバルブV8が配設されている。バルブV8は、任意の弁開度を取り得る構成とされており、この弁開度に応じて、排気ライン56による排気量、すなわち燃焼用空気供給ライン52A、52Bを通じて反応器18に供給する燃焼用空気の供給量を調整可能とされている。
さらに、切換装置20は、一端が第3ライン38Aから分岐すると共に他端が第1反応器18Aの筒壁における第2出入口18E側に配置された再生用ガス入口18Gに接続された再生用ガスライン55Aと、一端が第4ライン38Bから分岐すると共に他端が第2反応器18Bの筒壁における第2出入口18F側に配置された再生用ガス入口18Hに接続された再生用ガスライン55Bとを備えている。第3ライン38Aにおける再生用ガスライン55Aの分岐部38Cと、第1反応器18Aとの間には、該分岐部38C側から第2出入口18Eへのガス流入を阻止する逆止弁CV1Aが配設されている。また、再生用ガスライン55Aにおける分岐部38Cと再生用ガス入口18Gとの間には、該再生用ガス入口18G側から分岐部38C側へのガス流入を阻止する逆止弁CV2Aが配設されている。同様に、第4ライン38Bにおける再生用ガスライン55Bの分岐部38Dと、第2反応器18Bとの間には、該分岐部38D側から第2出入口18Fへのガス流入を阻止する逆止弁CV1Bが配設されている。また、再生用ガスライン55Bにおける分岐部38Dと再生用ガス入口18Hとの間には、該再生用ガス入口18H側から分岐部38D側へのガス流入を阻止する逆止弁CV2Bが配設されている。
これらにより、第1反応器18Aからブリッジ管路40側に排出されるガスは、第2出入口18E、第3ライン38A(逆止弁CV1A)を経由してブリッジ管路40に至り、ブリッジ管路40側から第1反応器18A側に流れるガス(再生用ガス)は、第3ライン38A、再生用ガスライン55A(逆止弁CV2A)、再生用ガス入口18Gを経由して第1反応器18Aに至るようになっている。同様に、第2反応器18Bからブリッジ管路40側に排出されるガスは、第2出入口18F、第4ライン38B(逆止弁CV1B)を経由してブリッジ管路40に至り、ブリッジ管路40側から第1反応器18A側に流れるガスは、第4ライン38B、再生用ガスライン55B(逆止弁CV2B)、再生用ガス入口18Hを経由して第2反応器18Bに至るようになっている。このため、改質工程で生成された燃料ガスは第2出入口18E、18Fから排出され、再生工程の燃料となる再生用ガスは、反応器18内における燃焼用空気供給ライン52A、52Bから第1出入口18C、18D側に向かう燃焼用空気の流れに対し交差する方向から供給される構成とされている。したがって、再生用ガスと燃焼用空気とは反応器18よりも上流で予混合されないようになっている。
以上説明した切換装置20は、バルブV1A、V1Bの開閉に応じて一対の反応器18への改質反応ガス(炭化水素ガス、水蒸気、酸素)の流路を切り換え、バルブV6A、V6Bの開閉に応じて改質反応によって生成された燃料ガスの流路を切り換え、バルブV5A、V5Bの開閉に応じて再生用ガス(アノードオフガス)の流路を切り換え、バルブV4A、V4Bの開閉に応じて燃焼用空気(冷却用空気)の流路を切り換え、バルブV2A、V2Bの開閉に応じて再生排ガスの流路を切り換えるようになっている。各バルブは電磁弁とされており、後述する発電部コントローラ70からの作動信号に基づいて開閉する(バルブV8は弁開度の調節)を行う構成である。切換装置20のバルブ開閉による切り換え動作、すなわち水素燃料供給システム12の具体的な動作については、燃料電池システム10の基本動作として後述する。なお、上記した各逆止弁CV1A、CV1B、CV2A、CV2Bに代えて、発電部コントローラ70の作動信号に基づいて開閉する電磁開閉弁を備える構成としても良い。
燃料電池14の燃料ガス入口14Aと熱交換器16の高温ガス出口16Bとは燃料ガスライン58によって接続されている。これにより、燃料電池14の燃料ガス入口14Aには、改質工程を行う反応器18、第3ライン38A又は第4ライン38B、ブリッジ管路40のバルブV6A又はバルブV6B、燃料ガス供給ライン42、熱交換器16内の高温ガス流路、燃料ガスライン58を通過した燃料ガスが送給される構成である。燃料ガス入口14Aから燃料電池14内に導入された燃料ガスは、アノード電極に供給されて上記の通り水素ガスのみが発電に使用され、残余の可燃性ガス成分はアノードオフガスとして燃料電池14のアノードオフガス出口14Bから排出されるようになっている。アノードオフガスは、再生用ガス導入ライン44、バルブV5A又はバルブV5B、第3ライン38A又は第4ライン38Bを通じて、再生用ガスとして反応器18に供給される構成である。
また、燃料電池14のカソード用空気入口14Cには、一端が空気ポンプ60の吐出側に接続されたカソード用空気供給ライン62の他端が接続されている。カソード用空気供給ライン62上にはバルブV10が配設されている。カソード用空気入口14Cから燃料電池14内に導入された空気(酸素)は、カソード電極に導入されて、上記の通り水素分離膜を透過してきた水素と反応するようになっている。この反応によって生成された水蒸気、未反応の空気は、カソードオフガスとしてカソードオフガス出口14Dから排出されるようになっている。
燃料電池14のカソードオフガス出口14Dと熱交換器16の低温ガス入口16Cとは、低温ガスライン64にて接続されている。したがって、カソードオフガス出口14Dから排出されたカソードオフガスは、低温ガスライン64、熱交換器16内の低温ガス流路、水蒸気供給ライン50を通じて混合器26に導入され、混合器26内で炭化水素原料と混合されるようになっている。この混合ガスが、原料供給ライン21、ブリッジ管路28のバルブV1A又はバルブV1B、第1ライン36A又は第2ライン36Bを通じて改質反応ガスとして反応器18に供給される構成である。
さらに、燃料電池14の冷却用空気入口14Eは、一端が空気ポンプ66の吐出側に接続された冷却用空気供給ライン68の他端が接続されている。冷却用空気供給ライン68上にはバルブV11が配設されている。冷却用空気入口14Eから燃料電池14内に導入された空気は、図示しない冷却空気流路を流動しつつ該燃料電池14を冷却して運転温度を略一定温度に保つようになっている。燃料電池14を冷却した後の冷却用空気は、冷却用空気出口14Fから排出され、冷却用空気排出ライン54、燃焼用空気供給ライン52A又は燃焼用空気供給ライン52Bを通じて再生工程の燃焼用空気として反応器18に送給されるようになっている。
再生工程で発生した再生排ガス(燃焼ガス)は、第1ライン36A又は第2ライン36B、ブリッジ管路28のバルブV2A又はバルブV2B、排気ライン30を通じて排気口30Aからシステム外に排出されるようになっている。
また、燃料電池システム10は、発電部コントローラ70を備えている。図5に示される如く、発電部コントローラ70は、切換装置20の各バルブ(バルブV0、V1A、V1B、V2A、V2B、V3、V4A、V4B、V5A、V5B、V6A、V6B、V7、V8、V9)、燃料電池14への空気供給用の各バルブV10、V11、燃料ポンプ22、及び各空気ポンプ60、66に電気的に接続されており、各バルブの開閉(バルブV8については弁開度の調節)及び各ポンプの作動、停止(燃料又は空気の供給量の制御)を制御する構成とされている。この発電部コントローラ70は、図6に示すフローチャートに示す如き動作を行うようになっている。この動作については、燃料電池システム10の基本動作と共に説明する。
(基本動作)
次に、燃料電池システム10の基本的な運転動作を説明する。図7には、第1反応器18Aが改質工程を行うと共に第2反応器18Bが再生工程を行う状態がシステム構成図にて示されており、図8には、第1反応器18Aが再生工程を行うと共に第2反応器18Bが改質工程を行う状態がシステム構成図にて示されている。なお、燃料電池システム10の動作を表す各図において、開放状態のバルブを白抜きで示すと共に閉止状態のバルブを黒塗りで示し、かつバルブが閉じて流体の流れが遮断されている流路を想像線にて示すこととする。
図7に示される状態では、バルブV0、V1A、V2B、V4B、V5B、V6A、V9、V10、V11、V12が開放されている。一方、バルブV1B、V2A、V3、V4A、V5A、V6Bが閉止されている。これにより、炭化水素原料は、原料供給ライン21(バルブV0)を通じて混合器26に至り、混合器26にて水蒸気、空気(酸素)と混合され改質反応ガスとなる。混合器26から排出された改質反応ガスは、ブリッジ管路28(バルブV1A)、第1ライン36Aを経由して第1反応器18A内に供給される。第1反応器18A内では、触媒と改質反応ガスとの接触により上式(1)乃至(4)の反応を含む改質反応が行われ、水素、一酸化炭素等を含む燃料ガスが生成される。
この燃料ガスは、第3ライン38A、ブリッジ管路40(バルブV6A)を通じて熱交換器16に導入され、該熱交換器16にて改質用ガスであるカソードオフガスと熱交換を行って冷却される。このとき、燃料ガスの上流である第1反応器18A内が分岐部38C側のよりも高圧であるため、分岐部38Cから第1反応器18Aへのガス逆流が逆止弁CV2Aによって阻止されている。熱交換器16にて冷却された燃料ガスは、燃料ガスライン58、燃料電池14の燃料ガス入口14Aを通じて燃料電池14内のアノード電極に導入される。燃料電池14には、カソード用空気供給ライン62、カソード用空気入口14Cを通じて、カソード電極に空気すなわち酸素が常時供給されている。アノード電極からは、水素分離膜を通じて水素ガスのみがプロトンとなってカソード電極に移動し、この水素とカソード電極に供給された酸素との反応によって発電が行われる。また、燃料電池14には、冷却用空気供給ライン68、冷却用空気入口14Eを通じて、冷却用空気が常時供給されており、運転温度が400℃〜500℃の略一定温度に保たれている。
燃料電池14のカソードオフガス出口14Dから排出された水蒸気、酸素を含むカソードオフガスは、熱交換器16の低温ガス流路に導入されて上記の通りアノード電極に導入される燃料ガスと熱交換を行う。その後、このカソードオフガスは、水蒸気供給ライン50を通じて混合器26に導入され、上記の通り炭化水素原料と混合して改質反応ガスとなり、第1反応器18Aに導入される。
燃料電池14のアノードオフガス出口14Bから排出された一酸化炭素、炭化水素原料を含むアノードオフガスは、再生用ガス導入ライン44、ブリッジ管路40(バルブV5B)、第4ライン38B、再生用ガスライン55Bを通じて再生用ガスとして再生用ガス入口18Hから第2反応器18Bに導入される。このとき、再生用ガスの上流である分岐部38D側の方が第2反応器18B内よりも高圧であるため、第2反応器18Bから分岐部38Dへのガス逆流が逆止弁CV1Bによって阻止されている。一方、燃料電池14の冷却用空気出口14Fから排出された冷却用空気は、冷却用空気排出ライン54、燃焼用空気供給ライン52B(バルブV4B)を通じて、燃焼用空気として第2出入口18Fから第2反応器18Bに導入される。この第2反応器18B内では、燃焼用空気と共に触媒に接触した可燃性ガスである再生用ガスが燃焼する。これにより、第2反応器18Bの触媒温度が改質反応を行い得る温度まで上昇すると共に改質に必要な蓄熱が行われる。この燃焼によって生じた燃焼ガスである再生排ガスは、第2ライン36B、ブリッジ管路28(バルブV2B)、排気ライン30を通じてシステム外に排出される。
燃料電池システム10の発電部コントローラ70は、図6に示すフローチャートのステップS10において、第1反応器18Aを改質工程から再生工程へ切り換えるタイミングでないと判断すると、ステップS16に進んで、上記の通りバルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aが開放されると共にバルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bが閉止された状態を維持する。一方、発電部コントローラ70は、改質反応を行っていた第1反応器18Aの触媒温度が低下し、改質反応を維持できなくなる場合(所定時間の経過、触媒温度が閾値を下回る等の制御パラメータにより判断される)、切換装置20を切り換えることで、第1反応器18Aを改質工程から再生工程に切り換える。また、この切り換えとほぼ同時に、第2反応器18Bを再生工程から改質工程に切り換える。すなわち、発電部コントローラ70は、第1反応器18Aを改質工程から再生工程へ切り換えるタイミングであると判断すると、ステップS12に進み、バルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aを閉止すると共に、バルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bを開放する。これにより、燃料電池システム10は、図7に示す状態から図8に示す状態に切り換わる。
図7の状態と異なる部分を説明すると、混合器26から排出された改質反応ガスは、ブリッジ管路28(バルブV1B)、第2ライン36Bを経由して第2反応器18B内に供給され、触媒との接触により改質反応が行われ、水素、一酸化炭素を含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、第4ライン38B、ブリッジ管路40(バルブV6B)を通じて熱交換器16・燃料電池14内のアノード電極に導入される。燃料電池14から排出されたカソードオフガスは、熱交換器16を通過した後、混合器26に導入され、上記の通り炭化水素原料と混合して改質反応ガスとなり、第2反応器18Bに導入される。
燃料電池14から排出されたアノードオフガスは、再生用ガス導入ライン44、ブリッジ管路40(バルブV5A)、第3ライン38A、再生用ガスライン55Aを通じて再生用ガスとして再生用ガス入口18Gから第1反応器18Aに導入される。一方、燃料電池14から排出された冷却用空気は、冷却用空気排出ライン54、燃焼用空気供給ライン52A(バルブV4A)を通じて燃焼用空気として第2出入口18Eから第1反応器18Aに導入される。この第1反応器18A内では、燃焼用空気と共に触媒に接触した再生用ガスの燃焼によって、触媒温度が改質反応を行い得る温度まで上昇すると共に改質に必要な蓄熱が行われる。この燃焼によって生じた燃焼ガスである再生排ガスは、第1ライン36A、ブリッジ管路28(バルブV2A)、排気ライン30を通じてシステム外に排出される。
また、発電部コントローラ70は、図6に示すフローチャートのステップS14において、第2反応器18Bを改質工程から再生工程へ切り換えるタイミング(第1反応器18Aを再生交代から改質工程へ切り換えるタイミング)でないと判断すると、ステップS12に戻って、上記の通りバルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bが開放されると共にバルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aが閉止された状態を維持する。一方、発電部コントローラ70は、第2反応器18Bを改質工程から再生工程へ切り換えるタイミングであると判断すると、ステップS16に進み、バルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bを閉止すると共に、バルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aを開放する。これにより、燃料電池システム10は、図8に示す状態から図7に示す状態に切り換わる。したがって、ステップS12及びS16のバルブ開閉状態の何れか一方が本発明における第1状態に相当し、他方が第2状態に相当する。
そして、発電部コントローラ70は、上記各反応器18の改質工程と再生工程との切り換え制御を行いつつ、燃料電池14の負荷に応じて燃料ガスの供給量(改質工程を行う反応器18に対する原料供給量)を調整する制御、再生工程を行う際の触媒燃焼温度を所定温度範囲に保持する制御を行うようになっている。この実施形態では、発電部コントローラ70は、再生工程での空気過剰率(燃焼ストイキ)を予め設定した制御目標(この実施形態では1.1)となるように燃焼用空気(燃料電池14の冷却後の空気)の反応器18への供給量、すなわちバルブV8の弁開度や空気ポンプ66の吐出量を制御して、触媒燃焼温度を800℃乃至900℃に保つようになっている。
以上により、燃料電池システム10では、各反応器18が改質工程と再生工程とを交互に繰り返し断続的(バッチ的)に燃料ガスを生成する構成でありながら、燃料電池14に対し連続的に燃料ガスを供給して連続的に安定して発電を行うことができる構成を実現している。また、燃料電池システム10では、燃料電池14が水素分離膜によって燃料ガスから水素のみを分離して発電に用い、残余のガスを再生工程の燃料として用いるため、改質工程にて得た燃料ガス中の一酸化炭素を、さらに水と反応させて水素及び二酸化炭素を得るシフト反応を行う必要がない。シフト反応は反応速度が遅く大型の反応器を必要とするが、このシフト反応を行う必要がないため、燃料電池システム10をコンパクトに構成することができる。
(燃料電池ハイブリッドシステムの構成)
図1に示される燃料電池ハイブリッドシステム100では、燃料電池14は、DC−DCコンバータ82の要求に応じてアノード電極、カソード電極にそれぞれ供給される水素及び酸素を消費して、該DC−DCコンバータ82の要求に応じた電力量の発電を行うようになっている。すなわち、燃力電池14が出力する電力は、DC−DCコンバータ82の要求値と水素及び酸素の供給量とに依存する(DC−DCコンバータ82の要求値に応じて水素利用率が変動する)構成である。このため、メインコントローラ86は、DC−DCコンバータ82及び発電部コントローラ70を統合して制御するようになっている。
図1に示される如く、メインコントローラ86には、出力変化信号が入力されるようになっている。自動車の原動機としてのモータMを駆動する燃料電池ハイブリッドシステム100では、出力変化信号として、例えばアクセル開度を含む車両情報が入力されるようになっている。メインコントローラ86は、この車両情報に基づいてモータMに供給する電力、すなわち燃料電池14への要求発電量、及びDC−DCコンバータ82によって燃料電池14から取り出すべき電圧、電流の要求値(燃料電池14側から見ると「発電目標」)をそれぞれ求める構成とされている。この実施形態では、燃料電池14から取り出すべき電圧、電流の要求値は、メインコントローラ86に予め設定されているI−Vテーブルから得られるようになっている。
また、メインコントローラ86には、モータMに実際に供給された電力(電圧及び電流)に応じた信号が供給電力検出器88から入力されるようになっている。
一方、メインコントローラ86は、発電部コントローラ70と電気的に接続されており、上記した燃料電池14への要求発電量に基づく炭化水素原料(水素発生量)、カソード用空気、冷却用空気の各供給量を指令する指令信号を発電部コントローラ70に出力するようになっている。発電部コントローラ70は、この指令信号に基づいて燃料ポンプ22、空気ポンプ60、66の吐出量を制御する構成とされている。また、メインコントローラ86は、DC−DCコンバータ82と電気的に接続されており、上記した燃料電池14から取り出すべき電圧、電流の要求値に応じた指令信号をDC−DCコンバータに出力するようになっている。
このメインコントローラ86の動作を図3に示すフローチャートを用いて説明する。メインコントローラ86は、ステップS20で入力されている車両情報に基づいて燃料電池14に対する要求電力を求める。次いでステップS22でDC−DCコンバータ82に、燃料電池14から取り出すべき電圧、電流の要求値を指令し、ステップS24で発電部コントローラ70に改質原料、カソード用空気、冷却用空気の各供給量を指令する。ステップS22とステップS24とは、順序が逆でも良く、同時に実行されても良い。次いでステップS26に進み、供給電力検出器88から入力されるモータMへの実際の供給電力をステップS20で求めた要求電力と比較する。実測電力と要求電力とに偏差がなければステップS20に戻り、実測電力と要求電力とに偏差がある場合にはステップS28に進んで上記I−Vテーブルを補正してからステップS20に戻る。これにより、燃料電池ハイブリッドシステム100では、モータMの負荷に変動がない場合、変動が緩やかである場合には安定した動作が実現される。
(負荷変動時の制御)
ところで、自動車に適用された燃料電池ハイブリッドシステム100では、モータMの負荷が急激に変動する場合がある。このため、燃料電池ハイブリッドシステム100は、モータMの負荷が急激に低下して該モータMへの供給電力すなわち燃料電池14の出力電力を低下させる場合には、ステップS22、S24に代えて、図2にタイミングチャートにて示す如き制御を行うようになっている。
具体的には、例えばメインコントローラ86に入力されているアクセル開度が急激に小となると、メインコントローラ86が求める要求電力が急激に低下する。すると、メインコントローラ86は、発電部コントローラ70に炭化水素原料の供給量を低下後の要求電力に見合う量に低下する指令信号を出力し、該指令を受けた発電部コントローラ70は、改質原料のうち炭化水素原料の供給量すなわち燃料ポンプ22の吐出量を低下させる。このとき、メインコントローラ86は、DC−DCコンバータ82が燃料電池14から取り出すべき電流及び電圧の要求値(発電目標)すなわち燃料電池14における水素利用率(単位時間あたりの水素利用量)、及び燃料電池14のカソード電極に供給されるカソード用空気の供給量を維持させる。
またこのとき(炭化水素原料の供給量のみを低下する指令を受けたとき)、発電部コントローラ70は、例えば図9に示される如く、バルブV12の開度を絞るか又はバルブV12を閉止すると共に、バルブV3を開放する。すると、図9の例では、第2反応器18Bから排出された再生排ガスが、本発明における流量維持用ガスとして、排気ライン30、排気戻しライン34を経由して混合器26に供給され、炭化水素燃料及びカソードオフガスと混合されて第1反応器18Aに供給される状態に切換装置20が切り換えられる。これにより、上記の通り炭化水素原料の供給量が低下しても、水素燃料供給システム12及び燃料電池14を循環するガス流量が維持される。
再生排ガスによる燃料電池システム10の掃気(以下、系内の掃気という)が完了すると、換言すれば、排気戻しライン34を利用して改質工程を行う反応器18(図9の例では反応器18A)に供給された再生排ガスが、燃料ガスを押し出しながら燃料電池14のアノード電極側流路を経由して再生工程を行う反応器18(図9の例では反応器18B)を通過すると、メインコントローラ86は、再生排ガスの循環を停止させると共に、DC−DCコンバータ82が燃料電池14から取り出すべき電流及び電圧の要求値(水素利用率)、及び燃料電池14のカソード電極に供給されるカソード用空気の供給量を低下させる指令を出力する。
すると、発電部コントローラ70は、バルブV3を閉止すると共にバルブV12を全開にし、再生排ガスを排気口30Aからシステム外に排出させる状態に切換装置20を切り換える。また、発電部コントローラ70は、空気ポンプ60の吐出量を低下後の要求電力に見合う量に低下した炭化水素原料の供給量に応じた量に低下させる。一方、DC−DCコンバータ82は、燃料電池14から取り出すべき電力の要求値を上記低下後の要求電力に変化させ、燃料電池14の発電目標を低下する。
なお、この実施形態では、メインコントローラ86は、バルブV3の開放から所定時間が経過したときに再生排ガスによる系内の掃気が完了したと判断するようになっている。また、この所定時間を、再生排ガスの流量に応じて決めておいても良い。
これにより、燃料電池ハイブリッドシステム100では、モータMの負荷が急激に低下した際の過渡期が完了し、その後は低下した要求電力に応じた安定運転状態に移行する。また、燃料電池ハイブリッドシステム100では、モータMの負荷急上昇時には、バッテリ84の電力を利用するように構成されている。
ここで、燃料電池ハイブリッドシステム100では、モータMの負荷すなわち燃料電池14に対する要求電力が急激に低下した場合に、水素を得るための改質原料である炭化水素原料の供給量を低下しつつ、改質工程を行う反応器18の上流から再生排ガスを導入するため、改質工程での水素発生量を低減しながら燃料電池14、再生工程を行う反応器18へのガス流量を維持することができる。このため、燃料電池ハイブリッドシステム100(水素燃料供給システム12)では、改質工程を行う反応器18からの排出ガス量の低減によって出力変動時の過渡状態が長時間続くことが防止され、要求電力低下後の安定状態に速やかに移行することができる。すなわち、一方の反応器18が改質工程にて燃料ガスを消費するタイミングと、この燃料ガスのうちの水素を燃料電池14が消費するタイミングと、この燃料電池が消費しなかった燃料ガスの可燃成分を他方の反応器18にて改質工程の燃料として消費するタイミングのずれが、炭化水素原料の供給量低減によって拡大することを、再生用排ガスを混合器26に導入して流量を維持することによって防止することができる。
また、燃料電池ハイブリッドシステム100では、系内の掃気が完了するまで燃料電池14に供給するカソード用空気量を維持すると共に、DC−DCコンバータ82の要求値を維持するため、炭化水素原料の供給量の低下前に生成され要求電力低下後に(タイミングが遅れて)燃料電池14に供給された燃料ガス中の水素が、要求電力低下前と同じ量だけ燃料電池14に消費される。これにより、再生工程を行う反応器18に、要求電力低下前よりも水素含有量の多い(発熱量の多い)燃料ガスが供給されることが防止される。したがって、再生工程で触媒が過剰に昇温、蓄熱されたり、反応器18内の温度が上昇して逆火現象などが生じることが抑制される。なお、メインコントローラ86は、系内の掃気が完了する(再生排ガスの循環を停止させる)前であっても、炭化水素原料の供給量の低下前に生成された燃料ガスが燃料電池14(水素を消費する部分)を通過した後であれば、DC−DCコンバータ82の要求値及びカソード用空気の供給量を低下させる指令を出力することが可能である。
さらに、燃料電池ハイブリッドシステム100では、流量維持用ガスとして再生排ガスを用いるため、換言すれば、燃料電池システム10の系内で生成され再生工定での燃焼によって化学的に安定した(可燃ガス及び支燃ガスの含有量が少ない)ガスを流量維持用ガスとして用いるため、安全かつ速やかに系内を掃気することができる。また、再生排ガスは改質工程と比較して高温の燃焼ガスであるため、該改質工程を行う反応器18、燃料電池14を冷却してしまうことがない。さらに、再生排ガスは系内にて生じるため、排気戻しライン34、バルブV3、V12を設けるだけの簡単なシステム構成で流量維持用ガスを導入することができる。
このように、本実施形態に係る水素燃料供給システム12は、改質反応によって得た水素含有の燃料ガスを、燃料電池14に該燃料電池14の負荷変動に対応しながら供給することができる。また、本発明に係る燃料電池システム10は、水素燃料供給システム12を備え、全体として燃料電池14の出力変動に追従する。
(他の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分には、第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
(第2の実施形態)
図10には、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム90のシステム構成図が示されている。この図に示される如く、燃料電池システム90は、水素燃料供給システム12に代えて水素燃料供給システム92を備えており、水素燃料供給システム92は、切換装置20に代えて切換装置94を備えている。
切換装置94は、水蒸気供給ライン50におけるバルブV9の下流に合流した流量維持用ガス導入ライン96を備えており、流量維持用ガス導入ライン96上には、ガス送給ポンプ98及びバルブV13が上流側から見てこの順に配設されている。図示は省略するが、ガス送給ポンプ98及びバルブV13は、それぞれ発電部コントローラ70に電気的に接続されている。ガス送給ポンプ98は、発電部コントローラ70の指令に基づいて作動すると、流量維持用ガスとしての窒素ガスを吐出するようになっている。また、バルブV13は発電部コントローラ70によって開閉制御される電磁弁とされている。この切換装置94には、バルブV12は設けられておらず、排気戻しライン34及びバルブV3は設けられているが該バルブV3は基本的に常時閉止されるようになっている。燃料電池システム90は、その他の構成が燃料電池システム10の対応する構成と同じ構成とされており、燃料電池ハイブリッドシステム100に適用されている(図示省略)。
したがって、燃料電池システム90では、燃料電池14への要求電力が急激に低下した際に、再生排ガスに代えて窒素ガスを流量維持用ガスとして混合器26に導入するようになっている。すなわち、燃料電池14への要求電力が急激に低下した際にバルブV13を開放し閉止するタイミングは、上記バルブV3の開放、閉止のタイミングと同じである。また、ガス送給ポンプ98は、少なくともバルブV13が開放されているときには作動されるようになっている。
この燃料電池システム90を適用した燃料電池ハイブリッドシステム100においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、流量維持用ガスとして混合器26に導入される窒素ガスは不活性ガスであるため、燃料電池14への要求電力が急激に低下した際には一層安全に系内を掃気することができる。なお、窒素ガスの導入によって改質工程を行う反応器18や燃料電池14を冷却しないように、この窒素ガスを図示しない熱交換器にて加熱することが望ましい。また、この熱交換器の熱源としては、再生排ガス等の系内で生成される熱を利用すること望ましい。さらに、この実施形態では、流量維持用ガスとして窒素ガスに代えて水蒸気を用いることも可能である。この水蒸気を生成する熱にも再生排ガス等の系内で生成される熱を利用すること望ましい。
(第3の実施形態)
図11には、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システム110が適用された燃料電池ハイブリッドシステム112がブロック図にて示されている。この図に示される如く、燃料電池システム110は、水素燃料供給システム12に代えて水素燃料供給システム114を備えており、該水素燃料供給システム114及び燃料電池14は、直接的には発電部コントローラ70に代えて設けられた発電部コントローラ116にて制御されるようになっている。
また、燃料電池ハイブリッドシステム110は、メインコントローラ86に代えてメインコントローラ118を備えており、メインコントローラ118は、発電部コントローラ116、DC−DCコンバータ82、供給電力検出器88の他に、バッテリ84の残容量(蓄電可能量)に応じた信号を出力するバッテリ残量検出器120にも該信号を入力可能に電気的に接続されている。また、メインコントローラ118には、メインメインコントローラ86と同様の車両情報が入力されるようになっている。そして、メインコントローラ118は、モータMの負荷変動がない(小さい)場合には、メインコントローラ86と同様に図3にフローチャートにて示す制御を行う構成とされている。
図15に示される如く、燃料電池システム110を構成する水素燃料供給システム114は、切換装置20に代えて切換装置122を備えている。切換装置122は、ブリッジ管路40(燃料電池14)をバイパスして第3ライン38Aと第4ライン38Bとを連通するバイパスライン124を備えており、バイパスライン124上には、バルブV14が配設されている。図示は省略するが、バルブV14は、発電部コントローラ116に電気的に接続されており、発電部コントローラ116によって開閉制御される電磁弁とされている。バルブV14は、後述する要求電力の急減時以外には常時閉止されるようになっている。
この切換装置122には、バルブV12は設けられておらず、排気戻しライン34及びバルブV3は設けられているが該バルブV3は基本的に常時閉止されるようになっている。切換装置122の他の構成は、切換装置20の対応する構成と同様に構成されている。また、発電部コントローラ116は、バルブV12に代えてバルブV14が電気的に接続される以外は、発電部コントローラ70と同様に各バルブ、ポンプに電気的に接続されているが、その制御が発電部コントローラ70の制御とは異なる(後述)。
以上説明した燃料電池ハイブリッドシステム112では、モータMの負荷が急激に低下して燃料電池14に対する要求電力が低下した場合、メインコントローラ118は、図12(A)にタイミングチャートにて示される如く、基本的には出力変化信号入力後に最初に到達する反応器18の改質工程と再生工程との切り換えタイミングまで、改質原料である炭化水素原料の供給量、DC−DCコンバータ82の要求値(燃料電池14の発電目標)、燃料電池14へのカソード用空気の供給量などを、出力変化信号の入呂9区前の状態に維持するようになっている。
そして、メインコントローラ118は、反応器18の改質工程と再生工程との切り換えタイミングに、改質原料である炭化水素原料の供給量、DC−DCコンバータ82の要求値(燃料電池14の発電目標)、燃料電池14へのカソード用空気の供給量などを、低下後の要求電力に対応させるように、DC−DCコンバータ82、発電部コントローラ116(切換装置122)に指令信号を出力するようになっている。これにより、何れかの反応器18で改質工程を行っている期間中に改質原料である炭化水素原料の供給量等を変更したりする場合のように、燃料電池システム110の系内のガスバランスを乱すことなく低下した要求電量に対応する状態に移行することができる構成が実現されている。
また、燃料電池ハイブリッドシステム112では、燃料電池14の発電量が低下する前に発電された要求電力に対する余剰の電力を、基本的にはバッテリ84に蓄電(充電)させるようになっている。メインコントローラ118は、バッテリ残量検出器120からの入力信号に基づいてバッテリの蓄電可能量が不足すると判断した場合には、燃料電池システム110の系内のガスバランスを保ちつつ燃料電池14に発電量を抑える制御を行うように構成されている。
以下、メインコントローラ118による具体的な制御を、図12のタイミングチャート及び図13、14のフローチャートを参照しつつ説明する。
メインコントローラ118は、図13に示すステップS30では、モータMの負荷が安定しており燃料電池14が所定の電力を発電するように各部を作動させる制御、すなわち図3に示す制御を行う。ステップS32では、出力低下要求の有無を判断する。出力低下要求がない場合には、ステップS30に戻る。出力低下要求があったと判断した場合には、ステップS34に進み、反応器18の改質工程と再生工程との切り換えタイミングであるか否かを判断する。
メインコントローラ118は、反応器18の改質工程と再生工程との切り換えタイミングであると判断した場合には、ステップS35に進み、低下した要求電力に対応した低出力での作動状態に移行する。すなわち、メインコントローラ118は、上記切り換えタイミングにおいて、DC−DCコンバータ82に低下後の要求電力に応じて要求値(電流及び電圧)を低下する指令を出力して燃料電池14から取り出される電力を減少させる。また、メインコントローラ118は、上記切り換えタイミングにおいて、発電部コントローラ116に低下後の要求電力に応じて燃料電池14への水素すなわち燃料ガス供給量を低下させる指令を出力し、炭化水素原料の供給量及びカソード用空気の各供給量を低下させるように、燃料ポンプ22、空気ポンプ60の吐出量を制御させる。
一方、メインコントローラ118は、ステップS34にて反応器18の改質工程と再生工程との切り換えタイミングではないと判断した場合には、ステップS36に進み、バッテリ残量検出器120からの信号に基づいて推定されるバッテリ84への蓄電可能量が、図12(A)に示される反応器18の改質工程と再生工程との切り換えタイミングまでに発電される余剰電力W0を吸収可能であるか否かを判断する。余剰電力W0をバッテリ84に蓄電可能である判断した場合には、ステップS38に進み、燃料電池14が上記所定の電力を発電するように各部を作動させる制御を維持する指令を出力し、ステップS40に進んでこの間に生じた余剰電力をバッテリ84に蓄えさせる。
メインコントローラ118は、ステップS36にて余剰電力W0をバッテリ84に蓄電可能ではないと判断した場合には、ステップS42に進む。ステップS42では、燃料電池14の発電量すなわち余剰電力の発生量を抑えるように水素燃料供給システム114を制御する。具体的には、ステップS42では、図14にフローチャートにて示す制御を行う。
先ず、メインコントローラ118は、ステップS50において、現時点で改質工程を行っている反応器18の改質時間を短縮する(水素生成量を低減する)ために、改質工程の終了タイミングを早める(改質工程と再生工程との切り換え周期を短縮する)指令を発電部コントローラ116、DC−DCコンバータ82に出力する。すると、図12(B)に示される如く、燃料電池14が発電する余剰電力W1が上記余剰電力W0よりも小さくなる。
次いで、メインコントローラ118は、ステップS52に進み、上記改質時間の短縮によって減少した余剰電力W1をバッテリ84に蓄電可能であるか否かを判断する。余剰電力W1をバッテリ84に蓄電可能である判断した場合には、ステップS54に進み、燃料電池14が上記所定の電力(単位時間あたりの電力)を発電するように各部を作動させる制御を維持する指令を出力し、ステップS56に進んでこの間に生じた余剰電力をバッテリ84に蓄えさせる。
メインコントローラ118は、ステップS52にて余剰電力W1をバッテリ84に蓄電可能ではないと判断した場合には、ステップS58に進む。ステップS58では、さらに短縮された改質工程への炭化水素原料の供給量すなわち燃料電池14への水素供給量を低減した場合に生じる余剰電力W2を、バッテリ84に蓄電可能であるか否かを判断する。
メインコントローラ118は、余剰電力W2をバッテリ84に蓄電可能である判断した場合には、ステップS60に進み、発電部コントローラ116に対し改質工程への炭化水素原料の供給量を減少させる指令を出力する。この指令を受けた発電部コントローラ116は、図12(C)に示される如く、段階的に改質工程への炭化水素原料の供給量を減少させる。これに伴って、DC−DCコンバータ82の要求値(発電目標)、燃料電池14に供給するカソード用空気の供給量も低減させる。これにより、燃料電池システム110の系内のガスバランスを保ちつつ燃料電池への水素供給量を順次低減し、実際の余剰電力をW2とすることができる。
メインコントローラ118は、ステップS58にて余剰電力W2をバッテリ84に蓄電可能ではないと判断した場合(バッテリ84が過充電状態である場合など)には、ステップS62に進み、発電部コントローラ116に対し改質工程への炭化水素原料の供給を停止させる指令を出力する。この指令を受けた発電部コントローラ116は、燃料ポンプ22を停止させることで、改質工程への炭化水素原料の供給を阻止させる。
すると、混合器26、反応器18内等に残留していた炭化水素原料によって生成された燃料ガスが燃料電池14に供給された後は、該燃料電池14への水素供給が停止されて発電が停止される。このため、燃料電池ハイブリッドシステム112では、低下した要求電力が燃料電池14で発電されなくなり、DC−DCコンバータ82は、バッテリ84の電力を消費してモータMの運転を維持する。これにより、バッテリ84の蓄電可能量も増加する。
メインコントローラ118は、ステップS60又はステップS62の後には、ステップS54の跡と同様にステップS56に進み、余剰電力が生じていれば、これをバッテリ84に蓄える。メインコントローラ118は、次いでステップS64に進み、上記の通り改質工程の終了タイミングを早めた分だけ、再生工程の終了タイミングを早める指令を発電部コントローラ116、DC−DCコンバータ82に出力する。
さらに、メインコントローラ118は、ステップS66に進み、再生工程が短縮されることによって不足する触媒への蓄熱量を補うために、再生工程を行う反応器18に再生用の燃料を追加供給させる指令を発電部コントローラ116に出力する。これを受けた発電部コントローラ116は、図16に例示する如く、バルブV14を開放する。すると、この図16の例では、第2反応器18Bが生成した燃料ガス(ステップS62で炭化水素原料の供給を停止した場合は要求出力低下前に生成した燃料ガス)が、燃料電池14側と第1反応器18A側とに分岐する。これにより、再生工程を行っている第1反応器18Aへの再生燃料(燃料電池14を経由した再生用ガス、及び燃料電池14をバイパスした水素リッチな燃料ガス)の供給量すなわち発熱量が増し、再生時間の低下が補われる。
次いで、メインコントローラ118は、ステップS68に進み、短縮された再生工程において次回の改質工程を行うのに十分な蓄熱が行われるか否かを判断する。メインコントローラ118は、十分な蓄熱が行われると判断すると、ステップS70に進む。一方、ステップS68で十分な蓄熱が行われないと判断した場合には、ステップS72に進み、切り換え直後の改質工程の維持時間を所定の時間よりも短縮する。この短縮された改質工程の実行中にも、他方の反応器における発熱量が不足しないように、バルブV14を開放し、その後の改質工程を標準的な所定時間だけ継続できるようにする。ステップS72の後は、ステップS70に進む。
メインコントローラ118は、ステップS70では、ステップS50、64で早められた切り換えタイミングに達したか否かを判断する。メインコントローラ118は、反応器18の改質工程と再生工程との切り換えタイミングであると判断した場合には、ステップS70に戻り切り換えタイミングになるまで制御状態を維持する。反応器18の改質工程と再生工程との切り換えタイミングであると判断した場合には、ステップS74に進み、ステップS35の場合と同様に、低下した要求電力に対応した低出力での作動状態に移行する。
以上により、第3の実施形態に係る燃料電池システム110を備えた燃料電池ハイブリッドシステム112では、余剰電力をバッテリ84に蓄えることで、要求電力が急激に低下した場合に、燃料電池システム110のガスバランスを乱す原因となる改質工程途中での急激な炭化水素原料の供給量変化を制限することができる。そして、バッテリ84の蓄電可能量が少ない場合、又は過充電状態である場合には、改質工程の維持時間を短縮し、改質工程への炭化水素原料の供給量を段階的に減少することで、燃料電池システム110のガスバランスをで極力抑えながら、バッテリ84への蓄電を抑制することができる。
また、燃料電池システム110では、バッテリへの蓄電を抑制する場合に、改質量の低減(改質停止を含む)に伴う再生工程での発熱量不足を補うため、要求電力低下後(改質工程と再生工程との切り換え後)においても改質工程が維持され、燃料電池14に連続的に水素含有の燃料ガスを供給しつづけることができる。すなわち、燃料電池システム110では、安定運転が担保される。
このように、本実施形態に係る水素燃料供給システム114は、改質反応によって得た水素含有の燃料ガスを、燃料電池14に該燃料電池14の負荷変動に対応しながら供給することができる。また、本発明に係る燃料電池システム110は、水素燃料供給システム12を備え、全体として燃料電池14の出力変動に追従する。
なお、上記第3の実施形態では、バッテリ84の蓄電可能量が余剰電力に対し不足する場合に燃料ガスの生成量を減じるために、先ず改質工程の終了タイミングを早め(できるだけ所定出力での作動を維持する)、次いで炭化水素原料の供給量を段階的に減らす構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、改質工程の終了タイミングを早めることなく炭化水素原料の供給量を段階的に減らしたり、炭化水素原料の供給量を連続的に(徐々に)減らしたりしても良い。また、単にバッテリ84が過充電状態であるか否かに基づいて、改質量を低下するための各種制御を行うようにしても良い。
さらに、上記第3の実施形態では、改質量の低減に伴う再生工程での発熱量不足を補うために燃料電池14をバイパスするバルブV14を開放する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1ライン36Aと再生用ガスライン55B、第2ライン36Bと再生用ガスライン55Aとを連通するラインを設け、炭化水素原料を再生燃料として追加供給する構成としても良い。この構成では、仮に改質工程を行う反応器18への炭化水素原料の供給を停止した場合でも、再生工程を行う反応器18に十分な発熱量を得る燃料を供給することができる。また例えば、バイパスライン124及びバルブV14を設けることなく、DC−DCコンバータ82の要求値を変更して燃料電池14の水素利用率を低下させ、通常よりも水素リッチな再生用ガスを再生工程を行う反応器18に供給するようにしても良い。また、追加の燃料を再生工程において供給する構成には限定されず、例えば、改質工程への切り換え後に炭化水素原料と酸素含有ガスとを共に供給することで、改質反応が開始される前に予備的な再生工程を行うようにしても良い。