JP4865712B2 - ヘルペスウィルス由来疼痛治療剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ヘルペスウィルス由来疼痛治療剤に関する。
ヘルペスウィルスは成人の大多数が潜在的に慢性感染しており、再活性化する可能性をもっているウィルスである。代表的なヘルペスウィルスとしては知覚神経節に潜伏する単純ヘルペスウィルス(Herpes−simplex virus:HSV)と水痘・帯状疱疹ウィルス(Varicella−Zoster Virus:VZV)、血液中のリンパ球に潜伏するEpstein−Barrウィルス(EBV)とサイトメガロウィルス(cytomegalovirus:CMV)などが挙げられる。その中でも単純ヘルペスウィルスや水痘・帯状疱疹ウィルスの感染・再活性化によって引き起こされる特徴的な炎症性皮膚症状と疼痛に悩む患者は多く、その疼痛は時に激痛となる。
その中で、水痘・帯状疱疹ウィルスは、初回感染では水疱瘡を引き起こし、その後知覚神経節に潜伏し、再活性化すると帯状疱疹となる。帯状疱疹の病理は完全に解明されていないが、疲労、ストレス、風邪、ステロイドのパルス療法、抗がん剤の投与、手術、自己免疫疾患などによって免疫機能が低下すると、知覚神経節に潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウィルスが再活性化する。その結果、隣接する多くの神経細胞を損傷し、さらに増殖しながら末梢神経を伝わり、支配皮膚分節の表皮細胞に感染し、特徴的な皮膚症状と疼痛を引き起こすと考えられている。皮膚症状の発現前に現れる疼痛は帯状疱疹前駆痛、皮膚症状とほぼ同時期に現れる疼痛は急性帯状疱疹疼痛と呼ばれる。
急性期には紅斑、水疱、膿疱、さらに重症例になれば糜爛や潰瘍を呈し、皮膚症状は支配神経全般に及ぶこともある。急性帯状疱疹疼痛は、皮膚、末梢神経、神経根、神経節、脊髄後角の炎症による疼痛と考えられており、睡眠障害や食欲不振を引き起こす程の激痛を経験する症例も多い。
その後、急性帯状疱疹疼痛の多くは皮疹の治癒とともに消失するが、帯状疱疹を発症して6ヶ月の時点で10〜15%の症例では皮疹の治癒後も疼痛が残存し、帯状疱疹後神経痛(Post Herpetic Neuralgia:以下PHN)へ移行する。PHNは炎症後の神経変性に起因する非可逆的・難治性の求心性神経遮断疼痛であり、その移行の危険因子としては50歳以上、前駆痛、さらに急性期の症状の重篤度、すなわち神経損傷度とも深く関係する(非特許文献1参照)。
水痘・帯状疱疹ウィルス感染後、皮膚症状の発現する前に現れる帯状疱疹前駆痛、帯状疱疹急性期の炎症性疼痛である急性帯状疱疹痛、炎症後の神経性疼痛である帯状疱疹後神経痛(PHN)、急性帯状疱疹痛から帯状疱疹後神経痛への移行期に発現する帯状疱疹後痛、を合わせて「帯状疱疹関連疼痛」(zoster−associated pain)という。
灼けるような痛みが最も多く、針で刺す、絞られる、締め付けられる、鈍いという不快感に近い痛み、肩こり、腰痛のような筋肉痛に近い痛み、電気が走る、切り裂かれるといった痛みがある。個々の症例ではこれらの多くの痛みが混在し、また痛みの性質も経過とともに変化する。皮膚感覚も触覚、痛覚、温・冷感が低下し、軽微な触刺激により疼痛が誘発されるアロディニア(感覚過敏)があることも多い。
PHNは治療困難な疾患の一つとされ、短期間に消失させる確立された治療法は未だ存在しない。従って、神経損傷が可逆的である急性期に除痛治療を行い、PHNへの移行を阻止することは極めて重要である。
帯状疱疹に罹患した場合の治療法として、まず水痘・帯状疱疹ウィルスへの抗ウィルス療法が有効である。この治療により皮膚症状の軽減、羅病期間の短縮に加え、疼痛の軽減も期待できるが、PHN移行の抑制効果は証明されていない(非特許文献2参照)。また、急性期の除痛治療としては外用ステロイド剤や非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が用いられるが、PHNへの効果や移行予防効果は期待できない。PHNに移行してしまった後の治療法としてビタミン剤、非麻薬性鎮痛剤、ピリン系解熱鎮痛剤、非ピリン系解熱鎮痛剤、抗うつ剤、抗痙攣剤、局所麻酔薬(外用、注射)、麻薬性鎮痛剤、N−methyl−D−aspartate(NMDA)受容体拮抗剤、カプサイシン軟膏、はり治療、温熱療法、イオントフォレーシス、神経根ブロック、超短波療法、赤外線照射療法、レーザー照射療法など様々な報告があるが、副作用の問題や、効果のある症例が限られている、予後が確定していないなどの問題があり、満足できる治療法はない。
本発明の目的は、副作用が少なくて、効果の優れたヘルペスウィルス由来疼痛治療剤を提供することにある。
本発明は、以下の発明に係る。
1.式(1)で表される(±)−〔2−〔4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル〕エチル〕ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネートを有効成分とするヘルペスウィルス由来疼痛治療剤。
Figure 0004865712
2.ヘルペスウィルス由来疼痛が、帯状疱疹関連疼痛である上記記載の治療剤。
3.帯状疱疹関連疼痛が、帯状疱疹後神経痛である上記記載の治療剤。
4.有効成分としてさらに抗ウィルス剤を含む、上記記載の治療剤。
5.上記式(1)で表される(±)−〔2−〔4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル〕エチル〕ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネートを有効成分として含む上記記載の治療剤と、抗ウィルス剤を有効成分として含む製剤とからなるヘルペスウィルス由来疼痛治療用キット製剤。
6.式(1)で表される(±)−〔2−〔4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル〕エチル〕ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネートのヘルペスウィルス由来疼痛治療剤製造のための使用。
7.式(1)で表される(±)−〔2−〔4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル〕エチル〕ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネートの有効量を哺乳動物に投与するヘルペスウィルス由来疼痛の治療方法。
式(1)で示される(±)−〔2−〔4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル〕エチル〕ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(以下、トシル酸スプラタストという)は、優れたIgE抗体産生抑制作用を有し、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の治療薬として知られている(特公平3−70698号公報:特許文献1)。また、当該トシル酸スプラタストは、排尿障害治療剤(WO00/27383号公報:特許文献2)、腎透析に伴う掻痒治療薬(特開平11−315019号公報:特許文献3)、C型又は非B非C型肝炎ウィルスによる肝機能異常改善剤(特開2002−114672号公報:特許文献4)、化学物質過敏症治療薬(特開2004−292407号公報:特許文献5)としても、有用であることが知られている。しかしながら、トシル酸スプラタストがヘルペスウィルス由来疼痛治療剤として優れた効果を有することは全く知られていなかった。
Pain clinic Vol.25,No.2,2004,P.158−165 治療Vol.85,No.7,2003,P.2097−2104 特公平3−70698号公報 WO00/27383号公報 特開平11−315019号公報 特開2002−114672号公報 特開2004−292407号公報
本発明の有効成分であるトシル酸スプラタストは公知化合物であり、例えば特公平3−70689号公報に記載の方法より製造することができる。
本発明でいう「治療」とは、疾患の予防および治療、ならびに症状の軽減および再発防止のための維持療法を意味する。
本発明でいうトシル酸スプラタストが有効な「ヘルペスウィルス由来疼痛」とは、ヘルペスウィルス科に属する全てのウィルスに感染することによる疼痛を包含し、より具体的には単純ヘルペスウィルス、水痘・帯状疱疹ウィルス(Varicella−Zoster Virus:VZV)の感染により発生する疼痛を指す。
本発明において、帯状疱疹関連疼痛(zoster−associated pain)とは、水痘・帯状疱疹ウィルス感染後、皮膚症状の発現する前に現れる帯状疱疹前駆痛、帯状疱疹急性期の炎症性疼痛である急性帯状疱疹痛、炎症後の神経性疼痛である帯状疱疹後神経痛(PHN)、急性帯状疱疹痛から帯状疱疹後神経痛への移行期に発現する帯状疱疹後痛をいう。
本発明において、哺乳動物とは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、サル、ヒト等の温血哺乳動物をいう。
本発明において、トシル酸スプラタストに併用できる薬剤としては抗ウィルス剤、ビタミン剤、ステロイド剤、非麻薬性鎮痛剤、ピリン系解熱鎮痛剤、非ピリン系鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗うつ剤、抗痙攣剤、麻薬性鎮痛剤、局所麻酔剤、N−methyl−D−aspartate(NMDA)受容体拮抗薬、カプサイシン軟膏などが挙げられる。これらの1つ以上と併用することにより、ヘルペスウィルス由来疼痛治療剤の治療効果がさらに向上するばかりでなく、併用できる薬剤単独で使用する場合に比べて投与量を低減できるので、副作用の軽減という面からも好適である。また、神経ブロック、はり治療、温熱療法、イオントフォレーシス、神経根ブロック、超短波療法、赤外線照射療法、レーザー照射療法などと併用してもよい。
抗ウィルス剤としては、例えばアシクロビル、アジドウリジン、アナスマイシン、アマンタジン、ブロモビニルデオクスシジン、クロロビニルデオキスシジン、シタルビン、ジダノシン、デオキシノジルマイシン、ジデオキシシチジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシヌデオシド、デシクロビル、デオキシアシクロビル、エドクスジン、エンビロキシム、バラシクロビル、フィアシタビン、フォスカルネット、フィアルリジン、フルオロチミジン、フルクリジン、ガンシクロビル、ハイペリシン、インターフェロン、インターロイキン、イセチオネート、イドクスウリジン、ネビラピン、ペンタミジン、リバビリン、リマンタジン、スタビルジン、サルグラモスチン、スラミン、トリコサンチン、トリフルオロチミジン、トリブロモチミジン、トリクロロチミジン、ビダラビン、ジドビリジン、ザルシタビンおよび3−アジド−3−デオキシチミジンまたはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。その中でも特に好ましいのはアシクロビル、ガンシクロビル、バラシクロビル、ビダラビンまたはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
ビタミン剤としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB類、(B1、B2、B6、B12)、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビタミンC、ビタミンE、ビオチン、ビタミンKが挙げられ、より具体的にはレチノール、αカルシドール、カルシトリオール、タカルシトール、カルシポトリオール、マキサカルシトール、ファレカルシトール、カルシトリオール、チアミン、コカルボキシラーゼ、フルスルチアミン、プロスルチアミン、オクトチアミン、チアミンジスルフィド、ビスベンチアミン、ビスイブチアミン、ベンフォチアミン、セトチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、ピリドキサール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、シアノコバラミン、コバマミド、メコバラミン、葉酸、パントテン酸カルシウム、パンテノール、パンテチン、アスコルビン酸、トコフェノール、ビオチン、フィトナジオン、メナテトレノン、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
ステロイド剤としては、例えばプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、フルタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、クロベタゾン、フルドロキシコルチド、フルオシノニド、ハルシノニド、アムシノニド、ジフルプレドナート、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、クロベタゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾンナトリウム、フルドロコルチゾン、プレドニゾロンナトリウム、ハロプレドン、メチルプレドニゾロンナトリウム、デキサメタゾンナトリウム、パラメタゾン、モメタゾン、デプロドン、アルクロメタゾン、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
非麻薬性鎮痛剤としては、ペンタゾシン、トラマドール、ブトルファノール、ブプレノルフィン、エプタゾシン、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
ピリン系解熱鎮痛剤としては、スルピリンまたは薬学的に許容される塩などが挙げられる。
非ピリン系解熱鎮痛剤としては、アセトアミノフェン、ジメトチアジンまたはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
非ステロイド性抗炎症剤としては、サリチル酸ナトリウム、アセチルサリチル酸、サリチルアミド、フルフェナム酸、メフェナム酸、トルフェナム酸、ジクロフェナク、スリンダク、フェンブフェン、アンフェナク、インドメタシン、プログルメタシン、アセメタシン、ナブメトン、エトドラク、モフェゾラク、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、フェノブフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェン、ロキソプロフェン、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、ブコローム、ピロキシカム、アンピロキシカム、テノキシカム、ロルノキシカム、エピリゾール、チアラミド、エモルファン、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
抗うつ剤としては、ノルトリプチリン、アモキサピン、マプロチリン、イミプラミン、アミトリプチリン、トリミプラチン、クロミプラミン、ロフェプラミン、ドスレピン、トラゾトン、フルボキサミン、パロキセチン、ミルナシプラン、ミアンセリン、セチプチリン、スルピリド、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
抗痙攣剤としては、フェニトイン、エトトイン、フェノバルビタール、プリミドン、バルプロ酸、カルバマゼピン、トリメタジオン、エトスクシミド、アセチルフェネトライド、スルチアム、ジアゼパム、クロナゼパム、クロバザム、ゾニサミド、アセタゾラミド、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
麻薬性鎮痛剤としては、アヘン、アヘン・トコン酸、アヘンアルカロイド、アヘンアルカロイド・アトロピン、アヘンアルカロイド・スコポラミン、モルヒネ、モルヒネ・アトロピン、エチルモルヒネ、オキシコドン、オキシコドン・アトロピン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシメテバナール、コカイン、ペチジン、フェンタニル、メタンフェタミン、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
局所麻酔剤としては、ロピバカイン、リドカイン、プロカイン、プロピトカイン、ブピバカイン、メピバカイン、ジブカイン、ジブカイン・パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、テトラカイン、オキシブプロカイン、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
NMDA受容体拮抗剤としては、ケタミン、アマンタジン、デキストロメトルファン、イフェンプロジル、メマンチン、またはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられる。
本発明において薬学的に許容される塩とは、例えば塩酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、プロピオン酸、ジプロピオン酸、吉草酸、酪酸、ピバル酸、酢酸塩、安息香酸塩、メシル酸、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸、パルミチン酸、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ニコチン酸塩等の有機酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の無機塩を挙げることができる。化合物によっては、水和物を形成する場合もあるが、それらも本発明の範囲に属するものである。
本発明のヘルペスウィルス由来疼痛治療剤は、種々の形態で哺乳動物に投与することができる。そのような形態としては、例えば、経口剤、注射剤、直腸坐剤、外用剤(軟膏剤、貼付剤、点眼剤など)のいずれでもよく、これら製剤は当業者に周知の慣用方法により製造できる。
経口剤のうち、固形製剤としては、トシル酸スプラタストに賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤などを加えた後、常法により処理して、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤などとすることができる。また、経口液剤としては、トシル酸スプラタストに矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤などを用い、常法により処理して、内服液剤、シロップ剤などとすることができる。
注射剤としては、トシル酸スプラタストにpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により処理して、皮下用注射剤、筋肉内用注射剤、静脈内用注射剤などとすることができる。
直腸投与用坐剤としては、トシル酸スプラタストに賦形剤、さらに必要に応じて界面活性剤などを加えた後、常法により処理して、坐剤とすることができる。
外用剤のうち、軟膏剤、例えばペースト、クリーム、ゲルなどは、トシル酸スプラタストを含む基剤に安定化剤、湿潤剤、保存剤などを必要に応じて配合し、常法により処理して製剤化することができる。上記の基剤としては、例えば白色ワセリン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイトなどが挙げられる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
また、外用剤としての貼付剤は、通常の支持体上に、上記の軟膏、クリーム、ゲル、ペーストなどを常法により塗布することにより製造することができる。支持体としては、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、または軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタンなどのフィルム、あるいは発泡体シートなどが好適である。
併用できる薬剤も、上記のトシル酸スプラタストと同様の投与形態とすることができる。
したがって、トシル酸スプラタストと併用できる薬剤との2成分以上を用いる場合は、これらを含む単一の投与形態としてもよいし、これらのそれぞれを含む2つ以上の投与形態としてもよい。そして、2つ以上の投与形態とする場合には、同一投与ルートの形態(例えば、両者ともに経口剤)としてキット化してもよいし、あるいは異なった投与ルートの形態(例えば、一方を経口剤とし、他方を注射剤)としてキット化してもよい。また、本発明の目的が達せられるかぎり、別々に調製した製剤を、同時にまたは時間差をおいて、同一の投与対象に用いてもよく、各製剤の1日当たりの投与回数は異なっていてもよい。
上記の各種製剤中に配合されるべきトシル酸スプラタストの量は、これを投与すべき患者の症状により、あるいはその剤型などにより適宜定め得るが、一般に、投与単位当たり、経口剤では約5〜1000mg、注射剤では約0.1〜500mg、坐剤および外用剤では約5〜1000mgとするのが望ましい。
また、トシル酸スプラタストの1日当たりの投与量も、患者の症状、体重、年齢、性別、その他の条件に応じて変動し得るが、約5〜1000mgとするのが望ましい。
また、抗ウィルス剤を併用する場合、その投与量は用いる抗ウィルス剤の種類により適宜決定されるが、通常1日当たり0.1〜10000mg程度が好ましく、徐々に減量することも可能である。
以下の実施例および試験例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。尚、実施例中の疼痛の評価は、患者自身に痛みの程度を100mmの直線上に示してもらうVisual Analogue Scale評価(以下VAS評価という)で行った。VAS評価は最高点を10点(100mm)とし、疼痛が低減するほど点数が小さくなるものである。(Anesth Analog 1993,77,1041−1047など参照)
製剤例1 (錠剤)
トシル酸スプラタスト 50mg
トウモロコシデンプン 50mg
微結晶セルロース 50mg
ハイドロキシプロピルセルロース 15mg
乳糖 47mg
タルク 2mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
エチルセルロース 30mg
不飽和グリセリド 2mg
二酸化チタン 2mg
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1錠当たりトシル酸スプラタストを50mg含む錠剤を調製した。
製剤例2 (顆粒剤)
トシル酸スプラタスト 300mg
乳糖 540mg
トウモロコシデンプン 100mg
ハイドロキシプロピルセルロース 50mg
タルク 10mg
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1包当たりトシル酸スプラタストを300mg含む顆粒剤を調製した。
製剤例3 (カプセル剤)
トシル酸スプラタスト 100mg
乳糖 30mg
トウモロコシデンプン 50mg
微結晶セルロース 10mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1カプセル当たりトシル酸スプラタストを100mg含むカプセル剤を調製した。
製剤例4 (注射剤)
トシル酸スプラタスト 100mg
塩化ナトリウム 3.5mg
注射用蒸留水 適量
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1アンプル(2ml)当たりトシル酸スプラタストを100mg含む注射剤を調製した。
製剤例5 (ドライシロップ剤)
トシル酸スプラタスト 50mg
精製白糖 949mg
香料 適量
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1包当たりトシル酸スプラタストを50mg含むドライシロップ剤を調製した。
製剤例6 (シロップ剤)
トシル酸スプラタスト 50mg
精製白糖 1000mg
パラヒドロキシ安息香酸エチル 1mg
精製水 適量
香料 適量
着色料 適量
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、2ml中にトシル酸スプラタストを50mg含むシロップ剤を調製した。
製剤例7 (坐剤)
トシル酸スプラタスト 300mg
ウィテップゾールW−35* 1400mg
(*:登録商標、ラウリン酸からステアリン酸までの飽和脂肪酸のモノ−、ジ−およびトリ−グリセライドの混合物、ダイナマイトノーベル社製)
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1個当たりトシル酸スプラタストを300mg含む坐剤を調製した。
製剤例8 (錠剤)
トシル酸スプラタスト 100mg
アシクロビル 200mg
トウモロコシデンプン 45mg
微結晶セルロース 50mg
ハイドロキシプロピルセルロース 15mg
乳糖 47mg
タルク 2mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
エチルセルロース 30mg
不飽和グリセリド 2mg
二酸化チタン 2mg
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1錠当たりトシル酸スプラタストを100mg、アシクロビルを200mg含む錠剤を調製した。
製剤例9 (キット)
<トシル酸スプラタストを含む硬カプセル剤>
トシル酸スプラタスト 100mg
乳糖 50mg
トウモロコシデンプン 47mg
結晶セルロース 50mg
タルク 2mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1カプセル当たりトシル酸スプラタストを100mg含む硬カプセル剤を調製した。
<塩酸バラシクロビルを含む錠剤>
塩酸バラシクロビル 556mg
結晶セルロース 100mg
ヒドロキシプロピルセルロース 30mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
マクロゴール 5mg
酸化チタン 4mg
上記の配合割合からなる組成物を常法に従って処理して、1錠当たり塩酸バラシクロビルを556mg含む錠剤を調製した。
上記で調製されたトシル酸スプラタストを含む硬カプセル剤1個と塩酸バラシクロビルを含む錠剤1個を、単一の包装形態とした。
63歳、女性。左下腹部、臀部、大腿部にかけ、有痛性の発疹がみられ、帯状疱疹と診断された。その後、皮疹は治癒し、強い痛みは時間とともに軽減したが、鈍痛が続いていたため、メコバラミン1500μg/日の内服を続けていた。受診から約3年経過後も帯状疱疹後神経痛は以前と変わらない(VAS評価5点)ため、アイピーディー(商品名)(一般名:トシル酸スプラタスト)100mgカプセル〔大鵬薬品工業(株)社製〕1日3回経口投与を開始した。トシル酸スプラタスト投与から3日後帯状疱疹後神経痛は消失し、VAS評価は0点となった。
70歳、女性。右胸部から腹部にかけて違和感を訴え、5日後同部位に有痛性の発疹がみられ、帯状疱疹と診断された。抗ウィルス剤の点滴にて皮疹軽快、治癒するが、同部位の鈍痛と違和感が残るためメコバラミン1500μg/日の内服を続けていた。受診から約8ヶ月経過後も帯状疱疹後神経痛は以前と変わらない(VAS評価7点)ため、実施例1と同様にアイピーディー100mgカプセル1日3回経口投与を開始した。トシル酸スプラタスト1ヶ月半投与後、帯状疱疹後神経痛は軽減し、VAS評価は2点となった。
26歳、女性。右顔面帯状疱疹と診断され、5日間抗ウィルス剤の点滴を施行。その後も同部位の疼痛が続くため受診から10日後よりメコバラミン1500μg/日、ロキソプロフェンナトリウム180mg/日を開始。投与から2週間後疼痛のVAS評価が1点と軽快したためロキソプロフェンナトリウムを中止し、メコバラミンのみ継続した。その後、メコバラミンは継続投与していたが、約3ヶ月間VAS評価は1〜3点であったが違和感、発作性の鈍痛からなる帯状疱疹後神経痛が続くため、メコバラミンの投与継続しながら実施例1と同様にアイピーディー100mgカプセル1日3回経口投与を開始した。トシル酸スプラタスト投与から1週間後帯状疱疹後神経痛が消失し、VAS評価は0となった。その後も約1ヶ月間トシル酸スプラタストとメコバラミンの内服を続けたが症状が消失したままであるため、投与終了とした。
76歳、女性。左腋から左背部にかけて疼痛が出現、5日後同領域に紅暈を伴う小水疱が出現した。受診により帯状疱疹と診断され、1週間抗ウィルス剤を内服したが疼痛(VAS評価5点)が続くため受診より2週間後メコバラミン1500μg/日を開始。メコバラミン投与約1カ月半経過後、VAS評価0.5−1点であったが帯状疱疹後神経痛が残るため、フラビアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサールの内服を追加し、超短波療法を追加するが療法追加約3ヶ月経過後も完全には神経痛が消退しなかった。このため、実施例1と同様にアイピーディー100mgカプセル1日3回経口投与を開始したところ、投与から1ヶ月経過後帯状疱疹後神経痛は軽減し、VAS評価は0.1−0.2点となった。
67歳、女性。左上肢と左肩〜背部の帯状疱疹と診断され、1週間の抗ウィルス剤の内服投与を行ったが、約1ヶ月半経過後にも帯状疱疹後神経痛(VAS評価5点)が続いていた。このため実施例1と同様にアイピーディー100mgカプセル1日3回経口投与を開始したところ、1週間経過後帯状疱疹後神経痛は軽減し、VAS評価は1点となった。その後投与を継続したところさらに軽減し、VAS評価は0.7点となった。
68歳、男性。右胸部〜背部にかけての有痛性の発疹が出現、帯状疱疹と診断。1週間の抗ウィルス剤の点滴を行ったが疼痛が続いていた。ジクロフェナクナトリウム坐薬を1日1〜2回使用し、塩酸モルヒネを30mg/日投与するも無効であり、神経ブロック療法も無効であった。受診より約6ヶ月後、この帯状疱疹神経痛(VAS評価7点)に対し、実施例1と同様にアイピーディー100mgカプセル1日3回経口投与を開始したところ、モルヒネの投与で無効であったにも拘わらず3週間経過後帯状疱疹後神経痛が軽減し、VAS評価は5点となった。
本発明の治療剤は、ヘルペスウィルス由来疼痛の治療に優れた効果を示し、且つ副作用が少なく非常に有用である。

Claims (4)

  1. 式(1)で表される(±)−〔2−〔4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル〕エチル〕ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネートを有効成分とするヘルペスウィルス由来の帯状疱疹後神経痛治療剤。
    Figure 0004865712
  2. 有効成分としてさらに抗ウィルス剤を含む、請求項1記載の治療剤。
  3. 上記式(1)で表される(±)−〔2−〔4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル〕エチル〕ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネートを有効成分として含む請求項1に記載の治療剤と、抗ウィルス剤を有効成分として含む製剤とからなるヘルペスウィルス由来の帯状疱疹後神経痛治療用キット製剤。
  4. 式(1)で表される(±)−〔2−〔4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル〕エチル〕ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネートのヘルペスウィルス由来の帯状疱疹後神経痛治療剤製造のための使用。
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