磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random Access Memory:以下、「MRAM」という)は、不揮発性でありながら高速動作が可能で書き換え回数が大きい等の特長を有している。そのため、既存のストレージ或いは揮発性RAMの代替メモリとして期待されている。しかし、抵抗値の変化を検出する特有の読み出し原理のため、既存デバイスとの入出力互換性を満足させるには回路的に解決すべき問題点がいくつか存在する。
例えば、一般的な高速SRAMのアクセス時間は10nsであり、読み出し動作に与えられる時間はわずか数nsである。また、高速なアクセスが可能なバーストモードが用意されているDRAMでも、読み出し動作に与えられる時間は10ns以下が望ましい。これらの高速な揮発性RAMを不揮発性メモリであるMRAMで置き換えようとする場合、MRAMも上記と同様の読み出し時間で動作する必要がある。
MRAMの読み出し動作に関し、以下に述べる。一般的なMRAMのメモリセルはデータを記憶する磁気抵抗素子(Magnetic Tunneling Junction:MTJ)と選択トランジスタから構成される。さらに、MTJは固定された自発磁化を有する磁性層(ピン層)と、反転可能な自発磁化を有する磁性層(フリー層)と、上記2つの磁性層に挟まれたバリア層とによって構成されている。メモリセルは、1ビットのデータをピン層の自発磁化の方向から見たフリー層の自発磁化の方向で記憶する。すなわち、MTJは、フリー層の自発磁化とピン層の自発磁化の向きとが同じである平行状態と、反対である反平行状態の2つの状態を取り得る。したがって、平行状態をデータ“0”に対応させ、反平行状態をデータ“1”に対応させることでデータを記憶することができる。MTJの抵抗値は、平行状態よりも反平行状態の方が高くなるという性質を有している。したがって、MTJの抵抗値を測定することで記憶されたデータを読み出すことができる。
以下、MRAMの読み出し速度を制限する要因を述べる。平行状態のMTJの抵抗値をR0、反平行状態のMTJの抵抗値をR1とした時、一般的にMR比=(R1−R0)/R0で表される信号差(抵抗差)は通常20〜30%しかない。ここで、先行文献1(USP6,392,923)や先行文献2(C.Arndt,et al,“A 16−Mb MRAM Featuring Bootstrapped Write Drivers”,IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS,VOL.40,NO.4,APRIL 2005,p902−908)に記載されているように、以下のようにしてデータの読み出しを行う。まず、事前にデータ“0”と“1”とをそれぞれプログラムされた2つ以上の参照セルを用いて実効的にR0とR1の中間の抵抗値であるRrefを生成する。そして、Rrefとメモリセルの抵抗とを比較することで読み出しが行われる。すなわち、実質10〜15%程度の抵抗差をセンスする必要があり、読み出し速度を制限する大きな要因である。
また、MTJと直列接続される選択トランジスタのオン抵抗による影響を極力小さくするため、そのオン抵抗とMTJの抵抗値とを同程度にする必要がある。そのため、MTJの抵抗値を小さくすることができず、その抵抗値が通常数10kΩ〜数100kΩとなり、高速な読み出し動作を制限する要因となる。例えば、20kΩのMTJの両端に0.4Vを印加して読み出し動作を行う場合、センス電流Isはわずか20μAである。この電流によってメモリアレイ内のビット線、メモリアレイとセンスアンプ間のメイン・ビット線等の寄生容量を充電する必要がある。この充電時間(MTJの印加電圧のセットリング)だけで10ns程度かかってしまう。MTJの印加電圧を高くすることによりセンス電流を増加させることは可能であるが、MR比が低下し、バリア膜を破壊する恐れがあるためこれ以上の電圧を印加することは現実的ではない。
また、センスアンプもわずかなセンス電流Isの差を検出するため、その差を電圧に変換する負荷インピーダンスが大きく、高速な読み出し動作を制限する要因となる。図1は、先行文献2に記載のセンスアンプ回路の構成を示す概略回路図である。参照セルは、データ“0”を予めプログラムされたMTJ(R0)を有する参照セル(メモリセル)112bと、データ“1”を予めプログラムされたMTJ(R1)を有する参照セル(メモリセル)112aとにより形成されいる。トランジスタM1及びM2のゲート端子にはバイアス電圧Vbが印加されている。トランジスタM1のソース端子は、参照セル112bのビット線が接続される。トランジスタM2のソース端子は、選択セル111のビット線にデコーダ107を介して接続される。トランジスタM1及びM2によって、選択セル111のビット線及び参照セル112bのビット線は、共に電圧Vcにクランプされる。トランジスタM3及びM4は、カレントミラー回路であり、参照セルを流れる参照電流Irefとセンス電流Isの負荷回路である。本図では、2つのセンスアンプ回路が記載されており、トランジスタM1のソース端子とM1’のソース端子は短絡され、さらに、M1のドレイン端子とM1’のドレイン端子も短絡されている。これにより、参照電流Irefは、データ“0”に対応するセンス電流Is(0)と、データ“1”に対応するセンス電流Is(1)の中間の電流値となる。トランジスタM3及びM4から構成されるカレントミラー回路は、参照電流IrefをトランジスタM4のドレイン電流として供給しようとする。実際にはトランジスタM4のドレイン電流はセンス電流Isが流れるため、トランジスタM4のドレイン電圧(センス電圧Vs)は、M3のドレイン電圧(参照電圧Vref)よりも大きく異なる電圧値を取ることになる。しかし、トランジスタM3とM4の負荷としてのインピーダンスはM4の方がはるかに大きく、このミスマッチによって応答が異なる。その様子を示したのが図2である。
図2は、先行文献2に記載の読出し動作に関するタイミングチャートである。(a)はデコード・イネーブル信号XDENR、(b)はセンスイネーブル信号SE、(c)はセンス電圧Vs(“1”の場合と“0”の場合)及び参照電圧Vref、(d)はクランプ電圧Vc、(e)は読み出し出力である。横軸は、読み出し動作の時間経過を示す。図2(c)に示されるように、センス電圧Vsの応答時間(t0〜t1)は参照電圧Vrefの応答時間(t0〜tR)よりも長くなる。したがって、センス電圧Vsと参照電圧Vrefの大小を比較する電圧比較器123の動作タイミング((b)SE)は、センス電圧Vsが十分セットリングする時間(t1)まで待つ必要がある。結果的に、記憶データを読み出すのに20ns以上かかってしまう。
以上説明したように、MRAMにおいて、10ns以下の高速な読み出し動作を実現するのは容易ではない。更なる回路的工夫等により10ns以下の高速な読み出し動作を可能とする技術が求められる。読み出しの信頼性を損ねることなく高速に記憶データを読み出すことが可能な技術が望まれる。
関連する技術として特開2004−39150号公報に、MRAMが開示されている。このMRAMは、クロスポイントセルアレイと,第1方向に延設されている複数のワード線と,前記第1方向と異なる第2方向に延設されている複数のビット線と,前記第2方向に延設されているダミービット線と,前記複数のワード線のうちから選択ワード線を選択する第1セレクタと,前記複数のビット線のうちから選択ビット線を選択する第2セレクタと,読み出し回路とを備える。前記クロスポイントセルアレイは,反転可能な自発磁化を有し,且つ前記自発磁化の方向に応じて抵抗が異なる磁気抵抗素子を含んで構成されている複数のセルを含む。前記複数のセルは,前記自発磁化の方向に応じてデータを記憶する複数のメモリセルと,複数のダミーセルとを備える。前記複数のメモリセルのそれぞれは,前記複数のワード線のうちの一のワード線と,前記複数のビット線のうちの一のビット線との間に介設されている。前記ダミーセルのそれぞれは,前記複数のワード線のうちの一のワード線と,前記ダミービット線との間に介設されている。前記読み出し回路は,オフセット除去回路とデータ判別回路とを含む。オフセット除去回路は、前記選択ワード線と前記選択ビット線との間に電圧が印加されることによって前記選択ビット線に流れる検知電流と,前記選択ワード線と前記ダミービット線との間に電圧が印加されることによって前記ダミービット線に流れるオフセット成分電流との差に対応する電流差信号を生成する。データ判別回路は、前記電流差信号に基づいて,前記選択ワード線と前記選択ビット線との間に介設された選択セルに記憶されている記憶データを判別する。
特開2004−220759号公報に、半導体記憶装置が開示されている。この半導体記憶装置は、磁気メモリセルと、第1及び第2のビット線と、第1のワード線と、第3のビット線と、第2のワード線とを具備する。磁気メモリセルは、それぞれトンネル磁気抵抗効果を持ち互いに逆のデータを保持する第1の磁気抵抗素子及び第2の磁気抵抗素子と少なくとも1個以上のトランスファゲートとを含み、これら第1、第2の磁気抵抗素子が両端間に直列に挿入されると共に上記少なくとも1個以上のトランスファゲートが上記第1、第2の磁気抵抗素子に直列に接続されている。第1及び第2のビット線は、前記磁気メモリセルの両端にそれぞれ接続されている。第1のワード線は、前記磁気メモリセル内に配置され、書込み用である。第3のビット線は、前記磁気メモリセルに接続され、データ読み出し用である。第2のワード線は、前記少なくとも1個以上のトランスファゲートのゲート電極に接続され、読み出し用である。
特開2004−310971号公報に、データ読出方法、データ書込方法、及び半導体記憶装置が開示されている。このデータ読出方法は、強誘電体キャパシタの分極状態によってデータを記憶するメモリセルを有する半導体記憶装置に関する。1回目の読出パルスを上記メモリセルに印加して、記憶データに応じた第1の信号を発生させる第1の読出ステップと、上記メモリセルにハイレベル側の信号に相当する参照信号発生用データを書き込む書込ステップと、2回目の読出パルスを上記メモリセルに印加して、上記参照信号発生用データに応じた第2の信号を発生させる第2の読出ステップと、上記第2の信号に基づいて参照信号を発生させる参照信号発生ステップと、上記第1の信号と上記参照信号を比較して、上記メモリセルに記憶されていた上記記憶データを判定する判定ステップとを備える。
特開平11−16381号公報に、不揮発性半導体記憶装置が開示されている。この不揮発性半導体記憶装置は、ゲートとソースとドレイン及び電荷蓄積層を有する電気的に書き換え可能な複数のメモリセルがマトリクス状に配置されたメモリセルアレイと、前記メモリセルにデータを書き込むデータ書込手段と、前記メモリセルのデータを読み出すデータ読出手段と、前記メモリセルのデータを消去するデータ消去手段とを有する。前記メモリセルへのデータの書き込みの際、書き込み禁止される所定のメモリセルに対し、ゲートに第1の信号を印加し、ソース及びドレインの少なくともいずれかに容量結合したノードに第2の信号を印加する。前記第1の信号が前記第2の信号より遅れて立ち下がるように制御される。
特開2003−115578号公報に、不揮発固体磁気メモリ装置、該不揮発固体磁気メモリ装置の製造方法およびマルチ・チップ・パッケージが開示されている。この不揮発固体磁気メモリ装置は、MRAMチップとパッケージとを有する。MRAMチップは、複数のメモリ素子を有する。複数のメモリ素子は、基板上にマトリックス状に配置された磁気抵抗素子、該磁気抵抗素子に接続されたビット線、前記磁気抵抗素子に磁界を印加するための書き込み線、および電界効果トランジスタからなる。パッケージは、前記MRAMチップの周辺に設けられている。前記MRAMチップを外部散乱磁界から遮蔽する磁気遮蔽構造を有することを特徴とする。
以下、本発明のMRAMの実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
本発明のMRAMの第1の実施の形態の構成について説明する。
図3は、本発明のMRAMの第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。MRAM1は、メモリアレイ2、コントローラ3、行デコーダ4、X終端回路5、Y終端回路6、列デコーダ7、書き込み電流源回路8、センスアンプ9を具備する。
メモリアレイ2は、複数のリードワード線RWL、複数のライトワード線WWL、複数のビット線BL、複数の参照ビット線BLR、複数のメモリセル11、及び複数の参照セル12a、12bを備える。
複数のリードワード線RWL、及びライトワード線WWLは、X方向に延伸している。一つのリードワード線RWL及び一つのライトワード線WWLは対となり、対ごとに互いに平行にX方向へ並んでいる。複数のビット線BL、及び参照ビット線BLRは、Y方向に延伸している。メモリセル11に対してはビット線BLが接続し、参照セル12a、12bに対しては参照ビット線BLRが接続している。複数のリードワード線RWL及びライトワード線WWLと複数のビット線BLとが交叉する複数の点の各々に対応して複数のメモリセル11が設けられている。複数のリードワード線RWL及びライトワード線WWLと複数の参照ビット線BLRとが交叉する複数の点の各々に対応して複数の参照セル12a、12bが設けられている。参照セル12aは、データ“1”を格納している。参照セル12bは、データ“0”を格納している。
コントローラ3は、入力されたコマンドに対しセンスイネーブル信号SE及びライトイネーブル信号WEをそれぞれセンスアンプ9及び書き込み電流源回路8へ供給する。また、入力されたアドレスに対し、行アドレス信号RAを行デコーダ4へ、列アドレス信号CAを列デコーダ7へ供給する。また、読み出し動作時においてはセンス結果Qoutをデータピンへ出力する。書き込み動作時においてはデータ入力Dinを書き込み電流源に供給する。
行デコーダ4は、読み出し動作時において、入力された行アドレス信号RAに対応するリードワード線RWLを、複数のリードワード線RWLのうちから選択リードワード線RWLとして選択する。それにより、選択リードワード線RWLに沿って存在するメモリセル11及び参照セル12a、12bの各々の選択トランジスタがオンとなる。書き込み動作時において、行レコーダ4は、入力された行アドレス信号RAに対応するライトワード線WWLを、複数のライトワード線WWLのうちから選択ライトワード線WWLとして選択する。それにより、選択ライトワード線WWLに沿って存在するメモリセル11及び参照セル12a、12bの各々の選択トランジスタがオンとなる。X終端回路5は、複数のリードワード線RWL及び複数のライトワード線WWLを終端する。
列デコーダ7は、入力された列アドレス信号CAに対応するビット線BLを、複数のビット線BLのうちから選択ビット線BLとして選択する。読み出し動作時においては、それと共に参照ビット線BLRを選択する。本実施例のように、センスアンプ9内に複数のセンスアンプ24(後述)が用意されている場合、複数のセンスアンプ24に対応するように、同時に複数の選択ビット線BLが選択される。同時に選択された複数の選択ビット線BLの各々は、列デコーダ7を介して、複数のメインビット線RMBLのいずれかに接続する。複数のメインビット線RMBL各々は、複数のセンスアンプ24のいずれかに対応して設けられている。すなわち、複数の選択ビット線BLは、対応するセンスアンプ24へ接続される。参照ビット線BLRは、列デコーダ7及びメイン参照ビット線RMBLRを介してセンスアンプ9へ接続する。Y終端回路6は、複数のビット線BL及び複数の参照ビット線BLRを終端する。
読み出し動作時においては、行デコーダ4と列デコーダ7により、選択リードワード線RWLと複数の選択ビット線BLとの交点に対応する複数のメモリセル11が複数の選択セル11として選択される。選択リードワード線RWLと参照ビット線BLRの交点に対応する参照セル12a、12bが選択参照セルとして選択される。本実施の形態において、データ“1”を予めプログラムされた参照セル12aと、データ“0”を予めプログラムされた参照セル12bとを利用しているため、2個の選択参照セル12a、12bが同時に選択される。そして、複数の選択セル11の各々は、選択ビット線BL、列デコーダ7及びメインビット線RMBLをこの順に介して対応するセンスアンプ24と接続される。同様に、2個の選択参照セル12a、12bは参照ビット線BLR、列デコーダ7及びメイン参照ビット線RMBLRをこの順に介して全てのセンスアンプ24と接続される。
センスアンプ9は、選択ビット線BL及びメインビット線RMBLを介して供給されるセンス電流Isと、参照ビット線BLR及びメイン参照ビット線RMBLRを介して供給される参照電流Irefとに基づいて、選択セルのデータを読み出す。そして、読み出したデータをセンス結果Qoutとしてコントローラ3へ出力する。
書き込み電流源回路8は、書き込み動作時に、ライトイネーブル信号WEと入力データDinとに基づいて、書き込み電流を選択セル11へ供給する。
図4は、本発明のMRAMの第1の実施の形態におけるセンスアンプの構成を示すブロック図である。センスアンプ9は、電流−電圧変換回路21、ブースター回路22、電圧比較回路23及びデータバッファ25とを含む。電流−電圧変換回路21は、メインビット線RMBL及びメイン参照ビット線RMBLRのいずれかに接続されている。メインビット線RMBLに接続されている場合、センス電流Isをセンス電圧Vsに変換する。メイン参照ビット線RMBLRに接続されている場合、参照電流Irefを参照電圧Vrefに変換する。ブースター回路22は、センス電圧Vs及び参照電圧Vrefの応答を高速にする回路である。電圧比較回路23は、センス電圧Vsと参照電圧Vrefの大小を比較し、その比較結果をセンス結果Qとしてデータバッファ25へ出力する。ただし、メインビット線RMBLごとに設けられた電流−電圧変換回路21、ブースター回路22、及び電圧比較回路23は、センスアンプ24を構成する。メイン参照ビット線RMBLRごとに設けられた電流−電圧変換回路21、及びブースター回路22の出力が参照電圧として各センスアンプ24の電圧比較回路23へ供給される。
ここでは、メインビット線RMBLとして、i番(iは0以上の整数)及び(i+1)番のメインビット線RMBL[i]及び[i+1]を示している。メインビット線RMBL[i]及びRMBL[i+1]に接続された電流−電圧変換回路21は、センス電流Isをそれぞれセンス電圧Vs[i]及びVs[i+1]に変換している。メインビット線RMBL[i]及びRMBL[i+1]に接続されたセンスアンプ24は、それぞれ出力Q[i]及びQ[i+1]を出力している。
図5は、本発明のMRAMの第1の実施の形態におけるセンスアンプの構成を示す回路図である。図5に示すセンスアンプ9は、選択セル用の2つのセンスアンプ24(電流−電圧変換回路21、ブースター回路22、及び電圧比較回路23)、及び参照セル用の電流−電圧変換回路21及びブースター回路22を含む。ただし、ここでは、ブースター回路22は、共用されている。
参照セル12b用の電流−電圧変換回路21は、トランジスタM1及びM3を有する。トランジスタM3は、例えば、PMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子とドレイン端子をノードN1にそれぞれ接続されている。トランジスタM1は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を列デコーダ7を介してメイン参照ビット線RMBLRに、ゲート端子をバイアス電圧Vbを印加する回路に、ドレイン端子をノードN1にそれぞれ接続されている。ブースター回路22は、ノードN1を介してトランジスタM3のゲート端子に接続されている。
一方、選択セル11用のセンスアンプ24(参照セル12b側)の電流−電圧変換回路21はトランジスタM2及びM4を有する。トランジスタM4は、例えば、PMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子をトランジスタM3のゲート端子に、ドレイン端子をノードN2にそれぞれ接続されている。トランジスタM2は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を列デコーダ7を介してメインビット線RMBLに、ゲート端子をバイアス電圧Vbを印加する回路に、ドレイン端子をノードN2にそれぞれ接続されている。ノードN1とノードN2との間には、トランジスタM3のドレイン端子とトランジスタM4のドレイン端子とを短絡することができるスィッチS1が設けられている。このスィッチS1は、CMOSスィッチ(トランスファーゲート)で構成される。ブースター回路22は、ノードN1を介してトランジスタM4のゲート端子に接続されている。電圧比較回路23は、ノードN1とノードN2とに接続されている。
同様に、参照セル12a用の電流−電圧変換回路21は、トランジスタM1’及びM3’を有する。トランジスタM3’は、例えば、PMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子とドレイン端子をノードN1’にそれぞれ接続されている。トランジスタM1’は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を列デコーダ7を介してメイン参照ビット線RMBLRに、ゲート端子をバイアス電圧Vbを印加する回路に、ドレイン端子をノードN1’にそれぞれ接続されている。ブースター回路22は、ノードN1’を介してトランジスタM3’のゲート端子に接続されている。
一方、選択セル11用のセンスアンプ24(参照セル12a側)の電流−電圧変換回路21はトランジスタM2’及びM4’を有する。トランジスタM4’は、例えば、PMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子をトランジスタM3’のゲート端子に、ドレイン端子をノードN2’にそれぞれ接続されている。トランジスタM2’は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を列デコーダ7を介してメインビット線RMBLに、ゲート端子をバイアス電圧Vbを印加する回路に、ドレイン端子をノードN2’にそれぞれ接続されている。ノードN1’とノードN2’との間には、トランジスタM3’のドレイン端子とトランジスタM4’のドレイン端子とを短絡することができるスィッチS1が設けられている。このスィッチS1は、CMOSスィッチ(トランスファーゲート)で構成される。ブースター回路22は、ノードN1’を介してトランジスタM4’のゲート端子に接続されている。電圧比較回路23は、ノードN1’とノードN2’とに接続されている。
トランジスタM1及びM2のゲート端子にはバイアス電圧Vbが印加されている。トランジスタM1のソース端子の電圧すなわちメイン参照ビット線RMBLRの電圧と、トランジスタM2のソース端子の電圧すなわちメインビット線RMBLの電圧とは、共に電圧Vcにクランプされる。トランジスタM3及びM4は、カレントミラー回路であり、それぞれ参照電流Irefとセンス電流Isの負荷となっている。トランジスタM1’、M2’M3’及びM4’についても、トランジスタM1、M2、M3及びM4と同様である。
トランジスタM1のソース端子とトランジスタM1’のソース端子とは短絡されている。さらに、トランジスタM1のドレイン端子とトランジスタM1’のドレイン端子とは短絡されている。これにより、参照電流Irefは、データ“0”の参照セル12bに対応するセンス電流Is(0)とデータ“1”の参照セル12aに対応するセンス電流Is(1)との中間の電流値となる。トランジスタM3のドレイン端子には、参照電流Irefに対応した参照電圧Vrefが得られ、トランジスタM4のドレイン端子には、センス電流Isに対応したセンス電圧Vsが得られる。同様に、ランジスタM3’のドレイン端子には、参照電流Irefに対応した参照電圧Vrefが得られ、トランジスタM4’のドレイン端子には、センス電流Isに対応したセンス電圧Vsが得られる。
ブースター回路22は、デコード・イネーブル信号XDENRに基づいて、センス電圧Vs及び参照電圧Vrefの応答を改善し、高速に動作点に設定する。その出力端子(トランジスタM11のドレイン端子)は、トランジスタM3とM4のゲート端子、及び、トランジスタM3’とM4’のゲート端子にそれぞれ接続されている。ブースター回路22は、トランジスタM11〜M15、及び2つのインバータ、高抵抗素子を備える。トランジスタM11、M14は、例えばPMOSトランジスタであり、トランジスタM12、M13、M15は、例えばNMOSトランジスタである。デコード・イネーブル信号XDENRを出力する回路(図示されず)は、トランジスタM11及びM12のゲート端子に、及び、インバータを介してトランジスタM15のゲート端子にそれぞれ接続されている。トランジスタM15のソース端子は接地に、ドレイン端子は高抵抗素子の一端、トランジスタM14のドレイン端子、及びインバータを介してトランジスタM13のゲート端子にそれぞれ接続されている。トランジスタM11〜M13は、電源と接地との間で、この順に直列に接続されている。トランジスタM11のソース端子は電源に接続されている。トランジスタM13のソース端子は、接地に接続されている。高抵抗素子の他端は接地に接続されている。トランジスタM14は、ソース端子が電源にゲートがトランジスタM11のドレイン端子(トランジスタM12のドレイン端子)に接続されている。トランジスタM13のゲート端子に入力される信号をブースト電圧オン信号Vbst_onともいう。
次に、本発明のMRAMの第1の実施の形態の動作について説明する。図6は、本発明のMRAMの第1の実施の形態における読出し動作に関するタイミングチャートである。(a)はデコード・イネーブル信号XDENR、(b)はセンスイネーブル信号/SE1(ただし、“/”は、否定を示す)、(c)はセンスイネーブル信号SE2、(d)はブースト電圧オン信号Vbst_on、(e)はセンス電圧Vs(“1”の場合と“0”の場合)及び参照電圧Vref、(f)はクランプ電圧Vc、(g)は読み出し出力である。横軸は、読み出し動作の時間経過を示す。
時刻t0までのスタンバイ時において、デコード・イネーブル信号XDENRがLレベルであり、全てのリードワード線RWL及びビット線BLは非選択の状態である。従って、メモリセル11とセンスアンプ9は非接続の状態、すなわちトランジスタM1及びM2のソース端子はフローティング状態である。それにより、センス電流Is及び参照電流Irefは流れない。また、センス・イネーブル信号/SE1がHレベルであり、スィッチS1はオンの状態である。ブースター回路22のトランジスタM11がオン、トランジスタM12がオフ、トランジスタM15がオン、トランジスタM13がオン(Vbst_onがHレベル)の状態である。したがって、トランジスタM4のドレイン端子電圧(センス電圧Vs)及びトランジスタM3のドレイン端子電圧(参照電圧Vref)は共に電源電圧Vddにプルアップされた状態である。また、センス・イネーブル信号SE2はLレベルであり、電圧比較回路23は動作しない。
時刻t0では、デコード・イネーブル信号XDENRがHレベルとなる。行デコーダ4及び列デコーダ7は、それぞれ入力されたアドレス信号RAに対応するリードワード線RWL、及び、アドレス信号CAに対応するビット線BLと参照ビット線BLRを選択する。すなわち、選択セル11及び参照セル12a、12bはセンスアンプ9と電気的に接続される。この時、トランジスタM1及びM2のソース電圧は、クランプ電圧Vc≒(Vb−Vth)なる電圧にクランプされる。選択セル11及び参照セル12a、12bには、それぞれセンス電流Is及び参照電流Irefが供給される。センス・イネーブル信号/SE1はまだHレベルであり、スィッチS1はオンの状態である。ブースター回路22のトランジスタM11はオフ、トランジスタM12がオンとなり、トランジスタM13はオンのままである。すなわち、トランジスタM4のドレイン端子及びトランジスタM3のドレイン端子は、トランジスタM12、M13を介して接地されることになる。したがって、センス電圧Vsと参照電圧Vrefは共に急峻に立ち下がり始める。センス電流Is及び参照電流Irefの負荷、すなわちトランジスタM3及びM4のインピーダンスは低い状態であり、メモリアレイ2内の選択ビット線BL(参照ビット線BLR)やメインビット線RMBL(RMBLR)の寄生容量をセンス電流Is(参照電流Iref)よりも過渡的に大きな電流で充電することが可能である。
時刻t0+Δtにおいて、センス電圧Vsと参照電圧Vrefが共に動作点に近い中間電位になると、ブースター回路22のトランジスタM14がオンとなり、トランジスタM13のゲート端子Vbst_onがLレベルとなる。それにより、トランジスタM13はオフの状態となり、電流−電圧変換回路21とブースター回路22とは電気的に切断される。以上の動作により、センス電圧Vsと参照電圧Vrefは、わずか1ns程度の時間で、ほぼ動作点に近い電圧(中間電位)に高速設定される。
センス・イネーブル信号/SE1がHレベルである時刻t0’までは、スィッチS1はオンのままである。この時、トランジスタM3及びM4の負荷としてのインピーダンスは同じであり、比較的低い。よって、センス電圧Vs及び参照電圧Vref共に比較的高速に動作点まで正確に設定されていく。センス電流Is及び参照電流Irefも高速に定常状態の電流値、すなわち、Is=Vc/Rs、Iref=Vc/Rrefとなる。
時刻t0’に達すると、センス・イネーブル信号/SE1はLレベルとなり、スィッチS1はオフの状態となる。トランジスタM3及びM4はカレントミラー回路である。したがって、トランジスタM4のドレイン電流がIrefと等しい電流値になるように、トランジスタM4のゲート端子にゲート電圧(=Vref)が印加される。トランジスタM4のドレイン電流はセンス電流Isと等しいため、トランジスタM4のドレイン端子電圧であるセンス電圧Vsは、IsとIrefのわずかな電流差によって決定される。つまり、データ“0”を読み出す場合はIs>Irefであるので、Vs<Vrefとなる。データ“1”を読み出す場合にはIs<Irefであるので、Vs>Vrefとなる。
時刻t1に達すると、センス・イネーブル信号SE2がHレベルとなる。この時、電圧比較回路23はセンス電圧Vsと参照電圧Vrefの大小を比較する動作を行う。そして、電圧比較回路23の動作結果、すなわちセンス結果Qが出力端子に出力される。
時刻t2において、デコード・イネーブル信号XDENR及びセンス・イネーブル信号SE2がLレベル、センス・イネーブル信号/SE1がHレベルになる。これにより、MRAMは、時刻t0までのスタンバイ時と同様の状態に戻る。
以上説明した本発明の第1の実施の形態によるセンスアンプ9は、従来のセンスアンプよりも格段に読み出し速度を高速化することが可能である。特に、電流−電圧変換回路21に付加したブースター回路22及びスィッチS1によって高速な読み出し動作を可能としている。このブースター回路22は、読み出し動作開始時におけるセンス電流Is及び参照電流Irefの負荷インピーダンスを非常に小さい値に下げる。スィッチS1は、トランジスタM3のドレイン端子及びトランジスタM4のドレイン端子における負荷インピーダンスの整合をとることにより、センス電圧Vsは参照電圧Vrefと同じ速度で動作点にセットリングされる。つまり、センス電圧Vs及び参照電圧Vrefは共に、わずか数nsで動作点に設定することが可能となる。この結果、読み出し動作が開始され、電圧比較回路23がセンス結果を出力するまでの読み出し時間tREADは10ns以下にすることが可能となる。これは、従来例として示したセンスアンプの読み出し時間よりも2倍以上も高速である。
(第2の実施の形態)
本発明のMRAMの第2の実施の形態の構成について説明する。
図3に示す本発明のMRAMの第2の実施の形態の構成については第1の実施の形態と同様であるからその説明を省略する。図4に示す本発明のMRAMの第2の実施の形態におけるセンスアンプの構成については、第1の実施の形態と同様であるからその説明を省略する。
図7は、本発明のMRAMの第2の実施の形態におけるセンスアンプの詳細な構成を示す回路図である。図7に示すセンスアンプ9は、選択セル用の2つのセンスアンプ24(電流−電圧変換回路21、ブースター回路22、及び電圧比較回路23)、及び参照セル用の電流−電圧変換回路21及びブースター回路22を含む。ただし、ここでは、ブースター回路22は、個別に設けられている。
本実施の形態では、図7に示したセンスアンプ24において、電流−電圧変換回路21の回路構成が第1の実施の形態と異なる。詳細は後述する。また、ブースター回路22において、高抵抗素子が、ゲート端子を接地に接続したノンドープ・トランジスタM16を用いている点で第1の実施の形態と異なる。
参照セル12b側の電流−電圧変換回路21は、トランジスタM1、M3、M5、M7及びM9を有する。トランジスタM3は、例えば、PMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子とドレイン端子をノードN1にそれぞれ接続されている。トランジスタM5は、例えばPMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子をトランジスタM3のゲート端子に、ドレイン端子をノードN3にぞれそれ接続されている。すなわち、トランジスタM3とM5は、カレントミラー回路を構成している。トランジスタM1は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を列デコーダ7を介してメイン参照ビット線RMBLRに、ゲート端子をバイアス電圧Vbを印加する回路に、ドレイン端子をノードN1にそれぞれ接続されている。トランジスタM7は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を接地に、ドレイン端子をノードN3に、ゲート端子をノードN2にそれぞれ接続されている。トランジスタM9は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を接地に、ゲート端子及びドレイン端子をノードN3にそれぞれ接続されている。ブースター回路22は、ノードN1を介してトランジスタM3のゲート端子(トランジスタM1とM3のドレイン端子、ノードN1)に接続されている。
一方、選択セル11用のセンスアンプ24(参照セル12b側)の電流−電圧変換回路21はトランジスタM2、M4、M6、M8及びM10を有する。トランジスタM4は、例えば、PMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子とドレイン端子をノードN4にそれぞれ接続されている。トランジスタM6は、例えばPMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子をトランジスタM4のゲート端子に、ドレイン端子をノードN2にぞれそれ接続されている。すなわち、トランジスタM4とM6は、カレントミラー回路を構成している。トランジスタM2は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を列デコーダ7を介してメインビット線RMBLに、ゲート端子をバイアス電圧Vbを印加する回路に、ドレイン端子をノードN4にそれぞれ接続されている。トランジスタM8は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を接地に、ドレイン端子をノードN2に、ゲート端子をノードN3にそれぞれ接続されている。トランジスタM10は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を接地に、ゲート端子及びドレイン端子をノードN2にそれぞれ接続されている。ブースター回路22は、トランジスタM4とM6のゲート端子(トランジスタM4とM2のドレイン端子、ノードN4)へ接続されている。電圧比較回路23は、ノードN2とノードN3とに接続されている。
同様に、参照セル12a側の電流−電圧変換回路21は、トランジスタM1’、M3’、M5’、M7’及びM9’を有する。トランジスタM3’は、例えば、PMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子とドレイン端子をノードN1’にそれぞれ接続されている。トランジスタM5’は、例えばPMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子をトランジスタM3’のゲート端子に、ドレイン端子をノードN3’にぞれそれ接続されている。すなわち、トランジスタM3’とM5’は、カレントミラー回路を構成している。トランジスタM1’は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を列デコーダ7を介してメイン参照ビット線RMBLRに、ゲート端子をバイアス電圧Vbを印加する回路に、ドレイン端子をノードN1’にそれぞれ接続されている。トランジスタM7’は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を接地に、ドレイン端子をノードN3’に、ゲート端子をノードN2’にそれぞれ接続されている。トランジスタM9’は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を接地に、ゲート端子及びドレイン端子をノードN3’にそれぞれ接続されている。ブースター回路22は、ノードN1’を介してトランジスタM3’のゲート端子(トランジスタM1’とM3’のドレイン端子、ノードN1’)に接続されている。
一方、選択セル11用のセンスアンプ24(参照セル12a側)の電流−電圧変換回路21はトランジスタM2’、M4’、M6’、M8’及びM10’を有する。トランジスタM4’は、例えば、PMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子とドレイン端子をノードN4’にそれぞれ接続されている。トランジスタM6’は、例えばPMOSトランジスタであり、ソース端子を電源Vddに、ゲート端子をトランジスタM4’のゲート端子に、ドレイン端子をノードN2’にぞれそれ接続されている。すなわち、トランジスタM4’とM6’は、カレントミラー回路を構成している。トランジスタM2’は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を列デコーダ7を介してメインビット線RMBLに、ゲート端子をバイアス電圧Vbを印加する回路に、ドレイン端子をノードN4’にそれぞれ接続されている。トランジスタM8’は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を接地に、ドレイン端子をノードN2’に、ゲート端子をノードN3’にそれぞれ接続されている。トランジスタM10’は、例えば、NMOSトランジスタであり、ソース端子を接地に、ゲート端子及びドレイン端子をノードN2’にそれぞれ接続されている。ブースター回路22は、トランジスタM4’とM6’のゲート端子(トランジスタM4’とM2’のドレイン端子、ノードN4’)へ接続されている。電圧比較回路23は、ノードN2’とノードN3’とに接続されている。
トランジスタM1及びM2のゲート端子にはバイアス電圧Vbが印加され、トランジスタM1のソース端子の電圧すなわちメイン参照ビット線RMBLRの電圧と、トランジスタM2のソース端子の電圧すなわちメインビット線RMBLの電圧とは共にクランプ電圧Vcにクランプされる。トランジスタM3とM5はカレントミラー回路であり、参照電流Irefに対応する電流値をトランジスタM5のドレイン電流として供給する。トランジスタM4とM6はカレントミラー回路であり、センス電流Isに対応する電流値をトランジスタM6のドレイン電流として供給する。トランジスタM7のゲート端子はトランジスタM8のドレイン端子に接続され、トランジスタM8のゲート端子はトランジスタM7のドレイン端子に接続されている。トランジスタM9のゲート端子とドレイン端子が接続され(ダイオード接続)、さらにトランジスタM7のドレイン端子とも接続されている。トランジスタM10のゲート端子とドレイン端子が接続され(ダイオード接続)、さらにトランジスタM8のドレイン端子とも接続されている。トランジスタM7〜M10は、M5のドレイン電流とM6のドレイン電流の電流差、すなわち、参照電流Irefとセンス電流Isの電流差を、差動のセンス電圧Vs(ノードN2の電圧)、センス電圧/Vs(ノードN3の電圧)に増幅変換する。トランジスタM1’〜M10’についても、トランジスタM1〜M10と同様である。
トランジスタM1のソース端子とトランジスタM1’のソース端子とは短絡されている。さらに、トランジスタM1のドレイン端子とトランジスタM1’のドレイン端子とは短絡されている。これにより、参照電流Irefは、データ“0”に対応するセンス電流Is(0)とデータ“1”に対応するセンス電流Is(1)との中間の電流値となる。また、トランジスタM5とM6のドレイン端子同士を短絡することができるスイッチS1を有している。同様に、トランジスタM5’とM6’のドレイン端子同士を短絡することができるスイッチS1を有している。
各ブースター回路22は、高抵抗素子がトランジスタM16(ゲート端子が接地に接続されたノンドープ・トランジスタ)であること以外は、図5の場合と同様であるのでその説明を省略する。
電圧比較回路23は、トランジスタM5とM6(M5’とM6’)のドレイン端子を入力端子に接続されている。センス電流Isと参照電流Irefのわずかな電流差から生成されるセンス電圧Vs、/Vsの大小を比較してセンス結果Qを出力する。
次に、本発明のMRAMの第2の実施の形態の動作について説明する。図8は、本発明のMRAMの第2の実施の形態における読出し動作に関するタイミングチャートである。(a)はデコード・イネーブル信号XDENR、(b)はセンスイネーブル信号/SE1(ただし、“/”は、否定を示す)、(c)はセンスイネーブル信号SE2、(d)はブースト電圧オン信号Vbst_on、(e)はトランジスタM3のゲート電圧Vpr及びトランジスタM4のゲート電圧Vp、(f)はクランプ電圧Vc、(g)はセンス電圧Vs、/Vs、(h)は読み出し出力である。横軸は、読み出し動作の時間経過を示す。
時刻t0までのスタンバイ時において、デコード・イネーブル信号XDENRがLレベルであり、全てのリードワード線RWL及びビット線BLは非選択の状態である。従って、メモリセル11とセンスアンプ9は非接続の状態、すなわちトランジスタM1及びM2のソース端子はフローティング状態である。それにより、センス電流Is及び参照電流Irefは流れない。また、センス・イネーブル信号/SE1がHレベルであり、スイッチS1はオンの状態である。ブースター回路22のトランジスタM11がオン、トランジスタM12がオフ、トランジスタM15がオン、トランジスタM13がオン(Vbst_onがHレベル)の状態である。したがって、トランジスタM3のゲート電圧Vpr、及びトランジスタM4のゲート電圧Vpは共に電源電圧Vddにプルアップされた状態である。また、センス・イネーブル信号SE2はLレベルであり、電圧比較回路23は動作しない。
時刻t0では、デコーダ・イネーブル信号XDENRがHレベルとなる。行デコーダ4及び列デコーダ7は、それぞれ入力されたアドレス信号RAに対応するリードワード線RWL、及び、アドレス信号CAに対応するビット線BLと参照ビット線BLRを選択する。すなわち、選択セル11及び参照セル12a、12bはセンスアンプ9と電気的に接続される。この時、トランジスタM1及びM2のソース電圧は、クランプ電圧Vc≒(Vb−Vth)なる電圧にクランプされる。選択セル11及び参照セル12a、12bには、それぞれセンス電流Is及び参照電流Irefが供給される。センス・イネーブル信号/SE1はまだHレベルであり、スィッチS1はオンの状態である。ブースター回路22のトランジスタM11はオフ、トランジスタM12がオンとなり、トランジスタM13はオンのままである。すなわち、トランジスタM4のドレイン端子(=ゲート端子)及びトランジスタM3のドレイン端子(=ゲート端子)は、トランジスタM12、M13を介して接地されることになる。したがって、トランジスタM3のゲート電圧Vpr及びトランジスタM4のゲート電圧Vpは急峻に立ち下がり始める。センス電流Is及び参照電流Irefの負荷、すなわちトランジスタM3及びM4のインピーダンスは低い状態であり、メモリアレイ2内の選択ビット線BL(参照ビット線BLR)やメインビット線RMBL(RMBLR)の寄生容量をセンス電流Is(参照電流Iref)よりも過渡的に大きな電流で充電することが可能である。
時刻t0+Δtにおいて、トランジスタM3のゲート電圧Vpr、及びトランジスタM4のゲート電圧Vpが共に動作点に近い中間電位になると、ブースター回路22のトランジスタM14がオンとなり、トランジスタM13のゲート端子Vbst_onがLレベルとなる。それにより、トランジスタM13はオフの状態となり、電流−電圧変換回路21とブースター回路22とは電気的に切断される。以上の動作により、トランジスタM3のゲート電圧Vpr及びトランジスタM4のゲート電圧Vpは、わずか1ns程度の時間で、ほぼ動作点に近い電圧に高速設定される。
センス・イネーブル信号/SE1がHレベルである時刻t0’までは、トランジスタM1及びM2のソース電圧はほぼVcにクランプされ、センス電流Is及び参照電流Irefともに定常状態となる。すなわち、トランジスタM3のゲート電圧Vpr、及びトランジスタM4のゲート電圧Vpも定常状態となる。トランジスタM3とM5はカレントミラー回路であるから、参照電流Irefに対応する電流がトランジスタM5のドレイン電流として供給される。同様に、トランジスタM4とM6はカレントミラー回路であるから、センス電流Isに対応する電流がトランジスタM6のドレイン電流として供給される。スィッチS1はオンの状態であるから、トランジスタM5のドレイン端子とトランジスタM6のドレイン端子は短絡された状態である。よって、負荷回路(増幅回路)であるトランジスタM7及びM8のドレイン−ソース間には、共にトランジスタM5のドレイン電流とトランジスタM6のドレイン電流の和の1/2にほぼ等しい電流が流れる。すなわち、M5のドレイン電圧/Vsと、M6のドレイン電圧Vsはほぼ等しい電圧にプリチャージされる。
時刻t0’に達すると、センス・イネーブル信号/SE1がLレベルとなり、スイッチS1がオフの状態となる。よって、参照電流Irefに対応する電流がトランジスタM7のドレイン電流として流れ、同様にセンス電流Isに対応する電流がトランジスタM8のドレイン電流として流れる。トランジスタM7とM8は、各々のドレイン電流の電流差をドレイン電圧/Vs、Vsとして増幅変換する。例えば、データ“0”を読み出す場合、Is>IrefであるからトランジスタM8のドレイン電流>トランジスタM7のドレイン電流となる。この時、トランジスタM7のゲート電圧(/Vs)は低下し、トランジスタM8のゲート電圧(Vs)は上昇する。つまり、Vs>(/Vs)が得られる。同様に、データ“1”を読み出す場合、Is<IrefであるからM8のドレイン電流<M7のドレイン電流となる。この時、トランジスタM7のゲート電圧(/Vs)は上昇し、トランジスタM8のゲート電圧(Vs)は低下する。つまり、Vs<(/Vs)が得られる。トランジスタM9、M10は、トランジスタM5、M6の定電流源性を維持するため、センス電圧Vs及び/Vsの振幅を接地側へ抑制する働きを有する。
時刻t1に達すると、センス・イネーブル信号SE2がHレベルとなる。この時、電圧比較回路23は差動出力のセンス電圧Vs及び/Vsの大小を比較する動作を行う。そして、電圧比較回路23の動作結果、すなわちセンス結果Qが出力端子に出力される。
時刻t2において、デコード・イネーブル信号XDENR及びセンス・イネーブル信号SE2がLレベル、センス・イネーブル信号/SE1がHレベルになる。これにより、MRAMは、時刻t0までのスタンバイ時と同様の状態に戻る。
以上説明した本発明の第2の実施の形態によるセンスアンプ9は、従来のセンスアンプよりも格段に読み出し速度を高速化することが可能である。特に、電流−電圧変換回路21に付加したブースター回路22及びスィッチS1によって高速な読み出し動作を可能としている。このブースター回路22は、読み出し動作開始時におけるセンス電流Is及び参照電流Irefの負荷インピーダンスを非常に小さい値に下げる。スィッチS1は、トランジスタM7及びM8のドレイン電流の整合をとる働きをし、差動出力のセンス電圧Vs及び/Vsは同じ速度で動作点にセットリングされる。つまり、Vs及び/Vsは共に、わずか数nsで動作点に設定することが可能となる。この結果、読み出し動作が開始され、電圧比較回路23がセンス結果を出力するまでの読み出し時間tREADは10ns以下にすることが可能となる。さらに、トランジスタM7及びM8で形成される負荷回路は、センス電流Isと参照電流Irefのわずかな電流差を互いに増幅しながらセンス電圧Vs、/Vsに変換するので第1の実施の形態で示したセンスアンプよりも高速動作が可能である。
以上、本発明のMRAM、特にそのセンスアンプ9について、図3〜図8の実施の形態を用いながら詳述した。なお、本発明は、上記各実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、この発明の技術的思想を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても良い。また、上記の技術的思想に基づいて動作するものであれば本発明の範囲内であることは明確である。
例えば、第1の実施の形態で示した電流−電圧変換回路21の負荷回路(トランジスタM3、M4)の構成は、図5のものに限定されない。例えば、第2の実施の形態で示した電流−電圧変換回路21の負荷回路(トランジスタM7、M8)の構成は、図7のものに限定されない。
例えば、図5に示した第1の実施の形態において、2つのセンスアンプ24が図示されているが、それ以上にセンスアンプ24の個数を増加させても構わない。より具体的には、2個の参照セル12a、12bに対し、n個のメモリセルの記憶情報を読み出す場合、図2の構成に加えて、トランジスタM2、M4から成る電流−電圧変換回路21をn個に増加させ、スィッチS1もn個に増加させても良い。
例えば、図7に示した第2の実施の形態において、2つのセンスアンプ24が図示されているが、それ以上にセンスアンプ24の個数を増加させても構わない。より具体的には、2個の参照セル12a、12bに対し、n個のメモリセル11の記憶データを読み出す場合、図7の構成に加えて、トランジスタM2及びM4〜M10で形成される電流−電圧変換回路をn個に増加させ、ブースター回路22及びスィッチS1もn個に増加させても良い。
例えば、図3及び図7に示したブースター回路22は本構成に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて動作する回路構成であれば本発明の範囲に含まれる。
以上説明したように、本発明の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセル11の記憶データの読み出しに関し、読み出しの信頼性を損ねることなく、高速な読み出し動作が可能となる。