JP4862371B2 - 薄膜電子部品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば基板上に形成する薄膜コンデンサ等の薄膜電子部品を構成する電極及びその薄膜電子部品並びにその製造方法に関する。
従来、基板の上にコンデンサ等の受動素子が形成された薄膜素子が広く知られている。このような薄膜素子では高信頼性化及び小型化の要求があり、これらの要求を満足するために基板表面、電極膜及び誘電体薄膜のそれぞれが平滑であることが望まれる。
ところで、電極膜の電極材料としては、従来、耐酸化性や耐熱性を考慮して白金(Pt)又はパラジウム(Pd)などの貴金属を用いていた。しかし、これらの貴金属は高価であり、安価な電極材料に置き換えることがコスト低減に効果的である。そこで、電極として銅(Cu)又はニッケル(Ni)等の安価な金属を用いることが望まれる。電極としてCu又はNiを用いた場合には、白金等の貴金属と比較して酸化しやすいことから、誘電体の形成は電極材料が酸化しない還元性雰囲気で行なわれることが望まれる。
一般に、有機誘電体原料を使用して溶液法から誘電体層を作製する場合では高温で焼成すると結晶性が良く、良好な誘電特性が得られやすい。
したがって、安価で、誘電体層の高温焼成に耐えうる電極材料が望まれていたが単独の電極材料でこのような要求を満たすものはなかった。
ところで2種類の電極材料を用いて、2層構造とする技術が開示されている(例えば特許文献1を参照。)。特許文献1では誘電体層の表面に上部電極として金からなる第1の電極層を形成し、第1の電極層の上にAg又はCuからなる第2の電極層を形成している。上部電極を2層構造とする理由は誘電体層の結晶層の不均一性を解消するためであるが、第1の電極層と第2の電極層とは、電極材料を選択することにより合金化を有効に防止している。
特開2001−244139号公報
ところで、電極材料として安価なCu又はNiを用いた場合、誘電体層の焼成時或いは焼成後のアニール処理時において高温まで加熱すると、電極を構成するCu粒子又はNi粒子の粒成長が起きる。この粒成長により電極層に凹凸が生じ、薄膜電子部品の高信頼性化及び小型化の要求を満たすことができないことがわかった。そこで本発明は、電極材料として安価なCu又はNiを用いて電極を高温で焼いた場合においても粒成長による凹凸の発生を抑制し、結果として誘電体層を高温焼成しうる薄膜電子部品用電極及びその薄膜電子部品並びにその製造方法を提供することを目的とする。これにより、例えば溶液法で形成した誘電体層においても、結晶性が良く優れた誘電特性を発揮させることを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため、高価な貴金属電極材料を使用せずに、高温まで加熱しうる電極について鋭意研究した結果、Cu層と高融点金属層との複層電極とすることで、電極を高温で焼いた場合においても粒成長による凹凸の発生を抑制しうることを見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る薄膜電子部品は、基板上に、少なくとも下部電極、誘電体層及び上部電極を順に有する薄膜コンデンサを形成した薄膜電子部品において、前記下部電極は、Cuを主成分とする主電極層と、該主電極層の主成分の金属の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属のうちRu、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する副電極層との複層構造を有し、かつ、該下部電極は基板側から副電極層、主電極層の順に形成されてなり、前記主電極層と前記誘電体層とが接していることを特徴とする。Cu層と高融点金属層との複層電極とすることで、電極の耐熱性を向上させて、電極の粒成長を抑制するものである。
本発明に係る薄膜電子部品では、前記主電極層の厚みは20nm〜1μmであり、且つ前記副電極層の厚みは1nm〜1μmであることが好ましい。
さらに本発明に係る薄膜電子部品では、前記主電極層と前記副電極層との界面において、Cuと、Ru、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素とが合金を形成していることが好ましい。界面部分を合金化させることで、主電極層であるCu層の耐熱性を向上させて、電極の粒成長を抑制するものである。
本発明に係る薄膜電子部品において、前記誘電体層は、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料により形成することが好ましい。
本発明に係る薄膜電子部品の製造方法は、基板上に、少なくとも下部電極、誘電体層及び上部電極を順に有する薄膜コンデンサを形成した薄膜電子部品の製造方法において、
前記基板の表面に、Cuを主成分とする主電極層と、該主電極層の主成分の金属の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属のうちRu、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する副電極層との複層構造を有する下部電極を、副電極層、主電極層の順に形成する下部電極形成工程と、前記下部電極の表面に有機誘電体原料を含有する原料液を塗布して塗布層を形成する原料液塗布工程と、該塗布層を加熱し、前記有機誘電体原料を焼成して金属酸化物薄膜からなる誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、前記誘電体層の表面に上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有し、前記主電極層と前記誘電体層とが接していることを特徴とする。複層構造を有する下部電極を形成するに際して、副電極層、主電極層の順に形成することで、Cuが副電極層を構成する高融点金属に固溶して、主電極層の粒成長が抑制される。
本発明では、電極材料として安価なCu又はNiを用いて電極を高温で焼いた場合においても粒成長による凹凸の発生を抑制する。これにより誘電体層を高温焼成しうる薄膜電子部品用電極を提供する。これにより、例えば溶液法で形成した誘電体層においても、結晶性が良く優れた誘電特性を発揮させる。したがって、誘電特性の優れた薄膜電子部品を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本実施形態に係る薄膜電子部品用電極は、本実施形態に係る薄膜電子部品と一緒に説明することとする。なお、図中、同一部材には同一符号を付している。なお、第1実施形態(電極を金属層又は合金層とする場合)は、参考例である。さらに、主電極層を形成する材質としてNiを使用する形態は、参考例である。
(第1実施形態:電極を金属層又は合金層とする場合)
図1に第1実施形態に係る薄膜電子部品の一形態を示す概略断面図を示す。第1実施形態に係る薄膜電子部品の代表的な形態例は、図1に示したように、基板1上に、少なくとも下部電極2、誘電体層3及び上部電極4を有する薄膜コンデンサ50を形成した薄膜電子部品100であり、下部電極2は主成分としてCu若しくはNiを含有し且つ副成分として主成分の金属(Cu若しくはNi)の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属(具体的には、Ru、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素のことである。以降、本発明においては、これらの元素のことを単に「主成分の金属(Cu若しくはNi)の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属」と称することもある。)を含有する金属層又は合金層からなるものである。
図1の第1実施形態に係る薄膜電子部品100において、上部電極4を下部電極2と同様に、主成分としてCu若しくはNiを含有し且つ副成分として主成分の金属(Cu若しくはNi)の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属を含有する金属層又は合金層としても良い。或いは、上部電極4のみを金属層又は合金層としても良い。ただし、誘電体層3を高温焼成した際に電極の凹凸発生を抑制するためには、少なくとも下部電極2は上述の金属層又は合金層で形成することがより好ましい。
基板1としては、シリコン単結晶基板、或いはアルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)マグネシア等のセラミック多結晶基板、或いは1000℃以下で焼成して得たアルミナ(結晶相)と酸化ケイ素(ガラス相)等からなるガラスセラミックス基板(LTCC基板)、或いは石英ガラス等のガラス基板、或いはサファイア、MgO、SrTiO等の単結晶基板、或いはFe−Ni合金等の金属基板が例示される。基板1は、化学的、熱的に安定で応力発生が少なく、表面の平滑性を保つことができれば、何れのものでも良い。目的とする比誘電率や焼成温度に基づいて適宜選択すればよい。前記基板の中でも、基板表面の平滑性が良好なシリコン単結晶基板を用いることが好ましい。シリコン単結晶基板を用いる場合は、絶縁性を確保するためにその表面に熱酸化膜(SiO膜)を形成することが好ましい。熱酸化膜は、シリコン基板を高温にして、酸化性雰囲気中でシリコン単結晶基板の表面を酸化させて形成する。基板1の厚みは、特に限定されず、たとえば100〜1000μmである。
なお、基板1の表面を基板研削(ラッピング)、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等の鏡面化(ポリッシング)処理を行なって、平滑化しても良い。また、基板1には、必要に応じて、ビア電極を形成しても良い。
誘電体層3は、コンデンサとなる絶縁層である。Cu又はNiを主成分とする電極材料を使用するため、電極の酸化を防止するため誘電体層は還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料により形成することが好ましい。このような誘電体として、アルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)が例示できる。さらに、BaTiO、(BaCa1−x)TiO、(BaSr1−x)TiO、PbTiO、Pb(ZrTi1−x等のペロブスカイト構造を持った(強)誘電体材料や、Pb(Mg1/3Ni2/3)O等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料や、BiTi12、SrBiTa等に代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNb等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料が用いられる。この中でも、(BaSr1−x)TiO、BaTiOやPZT等のペロブスカイト構造を持った強誘電体材料が、誘電率が高く比較的低温での合成が容易であるため好ましい。このような強誘電体の場合、還元雰囲気焼成に起因する酸素欠損の発生を抑制するために、酸化マンガン等の耐還元剤を微量添加することが好ましい。誘電体層の膜厚は特に限定されないが50nm以上1μm以下に設定することが好ましい。膜厚が50nm未満であると充分な比誘電率が得られない場合があり、リーク電流が許容範囲を超えるおそれがある。一方、膜厚が1μmを超えると充分な静電容量値が得られない。
下部電極2の電極材料は、Cuを主成分とする材料とし、Cu基合金を含む。また、Niを主成分とする材料としても良く、この場合Ni基合金を含む。すなわち、耐熱性(例えば粒成長の抑制)を向上させるために、電極材料の主成分をCu又はNiとしたとき、副成分として主成分の金属(Cu若しくはNi)の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属を含有させる。より好ましくは300℃以上高い融点を有する金属を含有させる。これにより、主成分であるCu又はNiに副成分である高融点金属が含有され、好ましくは固溶化、合金化して、電極の耐熱性が向上する。そして、電極を高温で焼成しても粒成長による凹凸の発生が抑制される。なお、本発明において主成分と副成分との区別は、組成が50原子%を超えた含有量の元素を主成分として区別することとする。また、電極は2相以上の混合相からなる金属層又は主成分に副成分が固溶して合金化した合金層のいずれも含む。
副成分として含有される高融点金属としては、Ru、Rh、Re、PtIr、Os、VTi、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWを挙げることができ、これらの元素を副成分として単独でCu又はNiに含有させても良いし、2種類以上を選択してCu又はNiに含有させても良い。主成分であるCu又はNiに対する副成分である高融点金属の含有比率は、高融点金属の種類、固溶範囲によって適宜変更する。例えばCu又はNiに対して副成分である高融点金属を5〜40原子%含有させることが好ましい。高融点金属の含有量が5原子%よりも少ないと耐熱性向上の効果が少なく、一方、高融点金属の含有量が40原子%よりも多すぎるとCu又はNiに由来する良好な導電性が失われる。なお、表1に各金属の融点を示す。
Figure 0004862371
上部電極4の電極材料は、下部電極2の電極材料と同じ材料とすることが好ましい。ただし、誘電体層3の焼成が完了後、その後の工程において高温焼成を行なわない場合では、高融点金属を含有しないCu又はNiを主成分とする電極材料を用いても良い。また、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)等の金属又はこれらを含む合金でも良いし、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、ガリウム燐(GaP)、インジウム燐(InP)、炭化シリコン(SiC)等の導電性半導体でも良いし、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)、酸化インジウム(In)、二酸化イリジウム(IrO)、二酸化ルテニウム(RuO)、三酸化レニウム(ReO)、LSCO(La0.5Sr0.5CoO)等の金属酸化物導電体でもよい。
下部電極2及び上部電極4の膜厚は導電性が確保できる厚さであれば特に限定されないが、20nm以上1μm以下に設定することが好ましい。より好ましくは50〜200nm程度である。
なお、基板1上には、薄膜コンデンサ50の他、抵抗素子及びそれらを結ぶ配線が形成されるが、配線材料として、下部電極2又は上部電極4と同じ導電材料が選択されても良いことは言うまでもない。
図2に第1実施形態に係る薄膜電子部品の別形態を示す概略断面図を示した。第1実施形態に係る薄膜電子部品200に示すように、基板1と下部電極2との間に基板1と下部電極2との密着性を高めるために、適宜、密着層5を設けても良い。密着層5としては、TiO/Si、TiO/SiO/Si、TaN/Si等を例示できる。密着層の厚みは、例えば1〜200nmとすることが好ましい。なお、/Siは基板側を意味する。
第1実施形態では、図1又は図2において誘電体層3が1層の場合を示したが、誘電体層の内部に内部電極(不図示)を設けて、積層型薄膜コンデンサとしても良い。この場合、内部電極の電極材料としては、下部電極2又は上部電極4と同じ電極材料を用いることが好ましい。
また、上部電極4の上に電極保護の目的でTiO、SiO、Al等の無機材料、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の有機材料等の保護層を設けても良い。
次に第1実施形態に係る薄膜電子部品200の製造方法の一形態について説明する。第1実施形態に係る薄膜電子部品200の製造方法では、基板1としてシリコン単結晶基板の表面を熱酸化してSiO層を形成した基板、誘電体としてBST(チタン酸バリウムストロンチウム)を使用する薄膜電子部品を例として説明する。第2実施形態に係る薄膜電子部品100も同様に製造できることは言うまでもない。
<密着層の形成>
図2の基板1上に、基板1と下部電極2との密着性を高めることを目的として密着層5を形成する。密着層5の形成は、物理気相成長法(PVD)、化学気相成長(CVD)法を用いて蒸着する。これらの蒸着方法の選択は、蒸着物質によって適宜選択する。例えばTiOをターゲットとしてスパッタリング法によりTiO層を形成する。なお、密着層5の形成は、基板1と下部電極2との組み合わせを考慮して必要により行なえば良い。
<下部電極の形成>
次に図2の密着層5の上に主成分としてCu若しくはNiを含有し且つ副成分として前記主成分の金属の融点よりも210℃以上、より好ましくは300℃以上高い融点を有する金属を含有する金属層又は合金層からなる下部電極2を形成する。副成分は前述したとおり、Ru、Rh、Re、PtIr、Os、VTi、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素である。
下部電極2は通常の薄膜形成法で作製されるが、例えばPVD法やパルスレーザー蒸着法(PLD)等の物理的蒸着法を用いることができる。電極材料としては、Cu若しくはNiに上記高融点金属を予め所定の割合で含有させた金属又は合金を使用するか、或いはCu若しくはNiと前記高融点金属を別々に準備して使用しても良い。PVD法としては、抵抗加熱蒸着又は電子ビーム加熱蒸着等の真空蒸着法、DCスパッタリング、高周波スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、ECRスパッタリング又はイオンビームスパッタリング等の各種スパッタリング法、高周波イオンプレーティング、活性化蒸着又はアークイオンプレーティング等の各種イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、レーザアブレーション法、イオン化クラスタビーム蒸着法、並びにイオンビーム蒸着法などが例示される。
より具体的には、例えば室温で80Cu−20Ptターゲット又は80Ni−20Ptターゲットを使用してDCスパッタリングによりCu下部電極又はNi下部電極を形成する。なお、80Cu−20Pt又は80Ni−20Ptの組成表示は例示であり、これらに限定されない。ここで、例えば80Cu−20Ptは、80原子%Cu、20原子%Ptを意味する。また、下部電極2の厚さは成膜時間により制御する。
下部電極2は、主成分がCu又はNiであるため、成膜雰囲気は電極の酸化を防止するため、不活性ガス還元雰囲気とすることが好ましい。
<誘電体層の形成>
次に図2の下部電極2の上に誘電体層(例えばBST)3を形成する。誘電体層3は、ゾルゲル法やMOD法(有機金属化合物堆積法)等の溶液塗布焼成法、或いはPVD法やCVD法等の気相成膜法を用いて形成する。溶液塗布焼成法を適用する場合では、気相成膜法を適用する場合よりも下部電極2を高温に加熱する必要があるため、耐熱性を有し加熱による粒成長が抑制される第1実施形態に係る薄膜電子部品用電極を使用することは特に有益である。このとき誘電体層3の特性低下を抑制するために、Mn等の耐還元剤を添加しても良い。もちろん気相成膜法により誘電体層3を形成することを妨げるものではない。
これらの成膜方法によれば、BaTiO3やPZT等のペロブスカイト強誘電体を例にとると、通常のセラミックス粉体焼結法では900〜1000℃以上の高温プロセスが必要であるが、400〜850℃程度の低温で形成可能である。なお、下部電極2の酸化を抑止するために、成膜は電極が酸化しない程度の還元性雰囲気中で行なわれる。そして、下部電極2は誘電体層3の加熱の際に粒成長が抑制され、粒成長による凹凸発生も抑制される。したがって、薄膜電子部品を薄層化しても信頼性が高い。
<上部電極の形成>
次に図2の誘電体層3の上に上部電極4を形成する。下部電極2と同様の薄膜形成法で作製される。例えばアルゴン雰囲気、基板温度200℃とし、80Cu−20Ptターゲットを使用してDCスパッタリングにより上部電極4を形成する。
上部電極4を形成した後に、アニール処理を施しても良い。アニール処理は、還元雰囲気中、400〜1000℃の温度で行なえばよい。また、必要に応じてパッシベージョン層(不図示)を形成する。このアニールによっても、下部電極2又は上部電極4において、粒成長が抑制され、粒成長による凹凸発生も抑制される。したがって、薄膜電子部品を薄層化しても信頼性が高い。なお、前記各層の形成する際にその都度フォトリソグラフィ技術を用いて所定のパターンニングを行っても良い。上記工程を経ることで誘電体層3をキャパシタとする薄膜電子部品200が得られる。
(第2実施形態:電極を複層構造とする場合)
図3に第2実施形態に係る薄膜電子部品の一形態を示す概略断面図を示す。第2実施形態に係る薄膜電子部品の代表的な形態例は、図3に示したように、基板1上に、少なくとも下部電極2、誘電体層3及び上部電極4を有する薄膜コンデンサ50を形成した薄膜電子部品300であり、下部電極2はCu若しくはNiを主成分とする主電極層2aと、主電極層2aの主成分の金属の融点よりも210℃以上、より好ましくは300℃以上高い融点を有する金属を含有する副電極層2bとの複層構造を有する。
図3の第2実施形態に係る薄膜電子部品300において、上部電極4を下部電極2と同様に、Cu若しくはNiを主成分とする主電極層(不図示)と、主電極層の主成分の金属の融点よりも210℃以上、より好ましくは300℃以上高い融点を有する金属を含有する副電極層(不図示)との複層構造により形成しても良い。或いは、上部電極4のみを複層構造としても良い。ただし、誘電体層3を高温焼成した際に電極の凹凸発生を抑制するためには、少なくとも下部電極2は複層構造で形成することがより好ましい。
基板1及び誘電体層3は、第1実施形態で述べた場合と同様のものとすることができる。
下部電極2の主電極層2aの電極材料は、Cuを主成分とする材料とし、Cu基合金を含む。また、Niを主成分とする材料としても良く、この場合Ni基合金を含む。
下部電極2の副電極層2bの電極材料は、主電極層2aの主成分の金属の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属を含有する材料とする。この高融点金属としては、Ru、Rh、Re、PtIr、Os、VTi、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWを挙げることができ、これらの元素により単独で副電極層を形成しても良いし、2種類以上を選択して副電極層を形成しても良い。2種類以上を選択して副電極層を形成する場合、高融点金属の混合相からなる金属層としても良いし、2種以上の高融点金属の合金からなる合金層としても良い。
主電極層2aの厚みは20nm〜1μmであり、副電極層2bの厚みは1nm〜1μmとすることが好ましい。ただし本発明では、主電極層2aは副電極層2bの厚み以上の厚さを有することとする。第1の実施形態では下部電極を合金層とする場合、高融点金属のCu又はNiへの固溶限界により組成の制限を受けるが、第2実施形態では下部電極2を主電極層2aと副電極層2bとの複層構造とすることで、各層の厚みを制御するのみで電極特性を調製することが可能となる。なお、主電極層2aと副電極層2bとの厚さの比は、高融点金属の種類によって適宜変更する。例えば主電極層2aの厚さに対して副電極層2bの厚さを5〜70%とすることが好ましい。副電極層2bの厚さが5%よりも少ないと耐熱性向上の効果が少なく、一方、副電極層2bの厚さが70%よりも多すぎるとCu又はNiに由来する良好な導電性が失われる。
下部電極2は、実質的に主電極層2aと副電極層2bとから構成されていれば足り、主電極層2aを主成分がCu又はNiで組成の異なる2層、例えばCu層とCu合金層とから構成しても良く、また副電極層2bを高融点金属で組成の異なる2層、例えばCr層とTi層とから構成しても良い。
下部電極2を複層構造とすることにより、主電極層2aの耐熱性(例えば粒成長の抑制)を向上させる。主電極層2aと副電極層2bとの界面において、Cu若しくはNiと、Ru、Rh、Re、PtIr、Os、VTi、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素との合金を形成させて、主電極層2aの耐熱性をより向上させることが好ましい。これにより、電極を高温で焼成しても粒成長による凹凸の発生が抑制される。
上部電極4の電極材料は、複層構造を有する第2実施形態の下部電極2の電極材料と同じ材料・構造とすることが好ましい。すなわち、主電極層4aと副電極層4bとからなる複層構造とすることが好ましい。ただし、誘電体層3の焼成が完了後、その後の工程において高温焼成を行なわない場合では、第1実施形態と同様の電極材料を用いても良い。
下部電極2及び上部電極4の膜厚は導電性が確保できる厚さであれば特に限定されないが、主電極層と副電極層を合わせて21nm以上2μm以下に設定することが好ましい。より好ましくは50〜200nm程度である。
また、下部電極2又は上部電極4を複層構造とする場合には、基板1の表面方向に従って、副電極層、主電極層の順に形成することが好ましい。副電極層を先に形成することで、主電極層を形成する際に発生しやすいCu又はNiの粒成長を抑制し、電極の凹凸発生防止に有効である。
なお、第2実施形態においても基板1上に形成される配線の配線材料として、下部電極2又は上部電極4と同じ導電材料が選択されることは言うまでもない。
図4に第2実施形態に係る薄膜電子部品の別形態を示す概略断面図を示した。第2実施形態に係る薄膜電子部品400は、基板1と下部電極2との間に基板1と下部電極2との密着性を高めるために、適宜、密着層5を設けても良い。密着層5としては、第1実施形態と同様のものが選ばれ、その厚みは、例えば1〜200nmとすることが好ましい。
第2実施形態では、図3又は図4において誘電体層3が1層の場合を示したが、誘電体層の内部に内部電極(不図示)を設けて、積層型薄膜コンデンサとしても良い。この場合、内部電極の電極材料としては、下部電極2又は上部電極4と同じ電極材料を用いることが好ましい。
また、上部電極4の上に電極保護の目的でTiO、SiO、Al等の無機材料、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の有機材料等の保護層を設けても良い。
次に第2実施形態に係る薄膜電子部品400の製造方法の一形態について説明する。第2実施形態に係る薄膜電子部品400の製造方法では、基板1としてシリコン単結晶基板の表面を熱酸化してSiO層を形成した基板、誘電体としてBST(チタン酸バリウムストロンチウム)を使用する薄膜電子部品を例として説明する。第2実施形態に係る薄膜電子部品300も同様に製造できることは言うまでもない。
<密着層の形成>
図4の基板1上に、第1実施形態の場合と同様にして密着層5を形成する。
<下部電極の形成>
次に図4の密着層5の上に、まず主電極層2aの主成分の金属の融点よりも210℃以上、より好ましくは300℃以上高い融点を有する金属を含有する副電極層2bを形成する。副電極層2bは、前述したとおり、Ru、Rh、Re、PtIr、Os、VTi、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する。次に副電極層2bの上に、Cu若しくはNiを主成分とする主電極層2aを形成する。なお、主電極層、副電極層の順に成膜しても良い。
下部電極2の主電極層2a、副電極層2bはともに通常の薄膜形成法で作製されるが、例えばPVD法やパルスレーザー蒸着法(PLD)等の物理的蒸着法を用いることができる。
より具体的には、例えば室温で高融点金属メタルターゲットを使用してDCスパッタリングにより副電極層2bを形成する。次に室温でCuメタルターゲット又はNiメタルターゲットを使用してDCスパッタリングにより主電極層2aを形成する。また、下部電極2の厚さは成膜時間により制御する。
成膜雰囲気は電極の酸化を防止するため、還元雰囲気とすることが好ましい。
<誘電体層の形成>
次に図4の下部電極2の上に誘電体層(例えばBST)3を形成する。誘電体層3の形成方法は、第1実施形態と同様である。そして、下部電極2は誘電体層3の加熱の際に粒成長が抑制され、粒成長による凹凸発生も抑制される。したがって、薄膜電子部品を薄層化しても信頼性が高い。
<上部電極の形成>
次に図4の誘電体層3の上に上部電極4を形成する。下部電極2と同様の薄膜形成法で作製される。例えば基板温度100℃で高融点金属メタルターゲットを使用してDCスパッタリングにより副電極層2bを形成する。次に基板温度100℃でCuメタルターゲット又はNiメタルターゲットを使用してDCスパッタリングにより主電極層4aを形成する。また、上部電極4の厚さは成膜時間により制御する。
上部電極4を形成した後に、第1実施形態の場合と同様に、アニール処理を施しても良い。また、必要に応じてパッシベージョン層(不図示)を形成する。このアニールによっても、下部電極2又は上部電極4は粒成長が抑制され、粒成長による凹凸発生も抑制される。したがって、薄膜電子部品を薄層化しても信頼性が高い。なお、前記各層の形成する際にその都度フォトリソグラフィ技術を用いて所定のパターンニングを行っても良い。上記工程を経ることで誘電体層3をキャパシタとする薄膜電子部品400が得られる。
次に、具体的な実施例を示し更に詳細に本発明について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
基板上に下部電極を形成し、これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、下部電極のRa(nm)を測定し、下部電極の凹凸の程度を評価した。表面粗さRaは、プローブ顕微鏡(SPI3800N、セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて測定し、測定条件は、たわみ量−1.0、Iゲイン0.5、Pゲイン0.1、Aゲイン0、走査エリア20μm、走査周波数1Hzとした
(参考例1)
まず、シリコン単結晶基板の表面を熱酸化してSiO層を形成した基板に、TiOをターゲットとしてスパッタリング法により密着層としてTiO層を形成する。基板温度は室温、酸素雰囲気中で成膜を行なった。TiO層の膜厚は20nmとした。次にTiO層の上に80Cu−20Crの組成の下部電極を形成する。すなわち室温で80Cu−20Cr合金ターゲットを使用してDCスパッタリングにより上記組成の下部電極を形成した。下部電極の膜厚は100nmとした。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例1とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表2に示した。
参考例2)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、80Cu−20Ptの組成の下部電極を形成する。すなわち室温で80Cu−20Pt合金ターゲットを使用してDCスパッタリングにより上記組成の下部電極を形成した。下部電極の膜厚は100nmとした。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例2とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表2に示した。
参考例3)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Crメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりCr副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例3とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
(実施例4)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Tiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりTi副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例4とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
(実施例5)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Taメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりTa副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例5とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
(実施例6)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Ptメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりPt副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例6とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
(実施例7)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Irメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりIr副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例7とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
(実施例8)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Ruメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりRu副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例8とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例9)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Ptメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりPt副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例9とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例10)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Crメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりCr副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例10とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例11)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Tiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりTi副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例11とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例12)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、Irメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりIr副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例12とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
(比較例1)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、上部電極としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを比較例1とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
(比較例2)
参考例1と同様のTiOの密着層を形成した基板の表面に、上部電極としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを比較例2とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
なお、実施例及び比較例では下部電極の酸化を防止するために、還元雰囲気で下部電極を成膜した。
Figure 0004862371
Figure 0004862371
表2及び表3の結果から、実施例4は、下部電極を高融点金属からなる副電極層とCu若しくはNiからなる主電極層との複層構造とすることにより、下部電極の耐熱性が向上し、表面の凹凸発生が抑制された。粒成長が抑制されたからと考えられる。実施例4及び参考例11のTiは融点が1675℃と他の実施例の高融点金属と比較して融点が低い。そしてCuの融点と比較して300℃以上高い融点の金属を使用した実施例では、Raが小さい。したがって、融点の差が300℃とすることで電極の粒成長がより抑制される。
上記で示した実施例と比較例では、下部電極におけるデータであるが、上部電極においても、上部電極に高融点金属を含有させるか、或いは上部電極を高融点金属からなる副電極層とCu若しくはNiからなる主電極層との複層構造とすることにより、同様のメカニズムで耐熱性を付与できた。
本実施例では、電極材料として安価なCu又はNiを用いて電極を高温で焼いた場合においても粒成長による凹凸の発生を抑制し、これにより誘電体層を高温焼成しうる薄膜電子部品用電極を提供できることが明らかとなった。
参考例13)
シリコン単結晶基板の表面を熱酸化してSiO層を形成した基板に、TiOをターゲットとしてスパッタリング法により密着層としてTiO層を形成する。基板温度は室温、酸素雰囲気中(Ar+O混合ガス、ガス流量比はAr:O=4:1)で成膜を行なった。TiO層の膜厚は20nmとした。次にTiO層の上に80Cu−20Crの組成の下部電極を形成する。すなわち室温で80Cu−20Cr合金ターゲットを使用してDCスパッタリングにより上記組成の下部電極を形成した。下部電極の膜厚は100nmとした。次に下部電極の上に誘電体層を形成した。誘電体層の形成はMOD法によった。すなわち、誘電体層を組成式(Ba0.7,Sr0.3)TiOで示されるチタン酸バリウムストロンチウム(BST)とし、2−エチルヘキサン酸Baを0.7モルと、2−エチルヘキサン酸Srを0.3モルと、2−エチルヘキサン酸Tiを1モルとなるように、これらの三種の溶液を混合し、トルエンで希釈し、原料液を調整した。これらの原料溶液は、それぞれクリーンルーム内で、孔径0.2μmのPTFE製シリンジフィルタによって、クリーンルーム内で洗浄済のガラス製容器内に濾過した。次に、前記の通り調整した原料液を、下部電極の上に塗布した。塗布法としては、スピンコート法を用いた。具体的には、前記基板をスピンコータにセットし、下部電極の表面に、それぞれの原料溶液を10μリットルほど添加し、4000r.p.m.および20秒の条件で、スピンコートし、下部電極の表面に塗布層を形成した。その後、塗布層の溶媒を蒸発させるために、大気中、100℃で10分間乾燥させた。次に塗布層を還元雰囲気中800℃で熱分解して上記組成のチタン酸バリウムストロンチウム薄膜からなる誘電体層を形成した。誘電体層の膜厚は、250nmであった。次に基板温度100℃で80Cu−20Cr合金ターゲットを使用してDCスパッタリングにより80Cu−20Cr組成の上部電極を形成した。下部電極の膜厚は100nmとした。このサンプルを参考例13とした。比誘電率k(100kHz)、tanδ(%)、リーク特性(100kV/cmの電圧印加)を評価したところ、kは750、tanδは1.5%、リーク特性は1.0×10−7であった。したがって、MOD法により、誘電体層を高温焼成により形成しても、Cu電極を高温で焼成したという条件に基づく粒成長、ひいては凹凸発生の影響を受けなかったといえる。したがって、例えば溶液法で形成した誘電体層においても、結晶性が良く優れた誘電特性を発揮させる。したがって、誘電特性の優れた薄膜電子部品を提供できる。
第1実施形態に係る薄膜電子部品の一形態を示す概略断面図である。 第1実施形態に係る薄膜電子部品の別形態を示す概略断面図である。 第2実施形態に係る薄膜電子部品の一形態を示す概略断面図である。 第2実施形態に係る薄膜電子部品の別形態を示す概略断面図である。
符号の説明
1 基板
2 下部電極
2a,4a 主電極層
2b,4b 副電極層
3 誘電体層
4 上部電極
5 密着層
50 薄膜コンデンサ
100,200,300,400 薄膜電子部品

Claims (5)

  1. 基板上に、少なくとも下部電極、誘電体層及び上部電極を順に有する薄膜コンデンサを形成した薄膜電子部品において、
    前記下部電極は、Cuを主成分とする主電極層と、該主電極層の主成分の金属の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属のうちRu、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する副電極層との複層構造を有し、かつ、該下部電極は基板側から副電極層、主電極層の順に形成されてなり、前記主電極層と前記誘電体層とが接していることを特徴とする薄膜電子部品。
  2. 前記主電極層の厚みは20nm〜1μmであり、且つ前記副電極層の厚みは1nm〜1μmであることを特徴とする請求項記載の薄膜電子部品。
  3. 前記主電極層と前記副電極層との界面において、Cuと、Ru、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素とが合金を形成していることを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜電子部品。
  4. 前記誘電体層は、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料により形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の薄膜電子部品。
  5. 基板上に、少なくとも下部電極、誘電体層及び上部電極を順に有する薄膜コンデンサを形成した薄膜電子部品の製造方法において、
    前記基板の表面に、Cuを主成分とする主電極層と、該主電極層の主成分の金属の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属のうちRu、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する副電極層との複層構造を有する下部電極を、副電極層、主電極層の順に形成する下部電極形成工程と、
    前記下部電極の表面に有機誘電体原料を含有する原料液を塗布して塗布層を形成する原料液塗布工程と、
    該塗布層を加熱し、前記有機誘電体原料を焼成して金属酸化物薄膜からなる誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
    前記誘電体層の表面に上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有し、前記主電極層と前記誘電体層とが接していることを特徴とする薄膜電子部品の製造方法。
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