JP4862371B2 - 薄膜電子部品及びその製造方法 - Google Patents
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前記基板の表面に、Cuを主成分とする主電極層と、該主電極層の主成分の金属の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属のうちRu、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する副電極層との複層構造を有する下部電極を、副電極層、主電極層の順に形成する下部電極形成工程と、前記下部電極の表面に有機誘電体原料を含有する原料液を塗布して塗布層を形成する原料液塗布工程と、該塗布層を加熱し、前記有機誘電体原料を焼成して金属酸化物薄膜からなる誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、前記誘電体層の表面に上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有し、前記主電極層と前記誘電体層とが接していることを特徴とする。複層構造を有する下部電極を形成するに際して、副電極層、主電極層の順に形成することで、Cuが副電極層を構成する高融点金属に固溶して、主電極層の粒成長が抑制される。
図1に第1実施形態に係る薄膜電子部品の一形態を示す概略断面図を示す。第1実施形態に係る薄膜電子部品の代表的な形態例は、図1に示したように、基板1上に、少なくとも下部電極2、誘電体層3及び上部電極4を有する薄膜コンデンサ50を形成した薄膜電子部品100であり、下部電極2は主成分としてCu若しくはNiを含有し且つ副成分として主成分の金属(Cu若しくはNi)の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属(具体的には、Ru、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素のことである。以降、本発明においては、これらの元素のことを単に「主成分の金属(Cu若しくはNi)の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属」と称することもある。)を含有する金属層又は合金層からなるものである。
図2の基板1上に、基板1と下部電極2との密着性を高めることを目的として密着層5を形成する。密着層5の形成は、物理気相成長法(PVD)、化学気相成長(CVD)法を用いて蒸着する。これらの蒸着方法の選択は、蒸着物質によって適宜選択する。例えばTiO2をターゲットとしてスパッタリング法によりTiO2層を形成する。なお、密着層5の形成は、基板1と下部電極2との組み合わせを考慮して必要により行なえば良い。
次に図2の密着層5の上に主成分としてCu若しくはNiを含有し且つ副成分として前記主成分の金属の融点よりも210℃以上、より好ましくは300℃以上高い融点を有する金属を含有する金属層又は合金層からなる下部電極2を形成する。副成分は前述したとおり、Ru、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素である。
次に図2の下部電極2の上に誘電体層(例えばBST)3を形成する。誘電体層3は、ゾルゲル法やMOD法(有機金属化合物堆積法)等の溶液塗布焼成法、或いはPVD法やCVD法等の気相成膜法を用いて形成する。溶液塗布焼成法を適用する場合では、気相成膜法を適用する場合よりも下部電極2を高温に加熱する必要があるため、耐熱性を有し加熱による粒成長が抑制される第1実施形態に係る薄膜電子部品用電極を使用することは特に有益である。このとき誘電体層3の特性低下を抑制するために、Mn等の耐還元剤を添加しても良い。もちろん気相成膜法により誘電体層3を形成することを妨げるものではない。
次に図2の誘電体層3の上に上部電極4を形成する。下部電極2と同様の薄膜形成法で作製される。例えばアルゴン雰囲気、基板温度200℃とし、80Cu−20Ptターゲットを使用してDCスパッタリングにより上部電極4を形成する。
図3に第2実施形態に係る薄膜電子部品の一形態を示す概略断面図を示す。第2実施形態に係る薄膜電子部品の代表的な形態例は、図3に示したように、基板1上に、少なくとも下部電極2、誘電体層3及び上部電極4を有する薄膜コンデンサ50を形成した薄膜電子部品300であり、下部電極2はCu若しくはNiを主成分とする主電極層2aと、主電極層2aの主成分の金属の融点よりも210℃以上、より好ましくは300℃以上高い融点を有する金属を含有する副電極層2bとの複層構造を有する。
図4の基板1上に、第1実施形態の場合と同様にして密着層5を形成する。
次に図4の密着層5の上に、まず主電極層2aの主成分の金属の融点よりも210℃以上、より好ましくは300℃以上高い融点を有する金属を含有する副電極層2bを形成する。副電極層2bは、前述したとおり、Ru、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する。次に副電極層2bの上に、Cu若しくはNiを主成分とする主電極層2aを形成する。なお、主電極層、副電極層の順に成膜しても良い。
次に図4の下部電極2の上に誘電体層(例えばBST)3を形成する。誘電体層3の形成方法は、第1実施形態と同様である。そして、下部電極2は誘電体層3の加熱の際に粒成長が抑制され、粒成長による凹凸発生も抑制される。したがって、薄膜電子部品を薄層化しても信頼性が高い。
次に図4の誘電体層3の上に上部電極4を形成する。下部電極2と同様の薄膜形成法で作製される。例えば基板温度100℃で高融点金属メタルターゲットを使用してDCスパッタリングにより副電極層2bを形成する。次に基板温度100℃でCuメタルターゲット又はNiメタルターゲットを使用してDCスパッタリングにより主電極層4aを形成する。また、上部電極4の厚さは成膜時間により制御する。
まず、シリコン単結晶基板の表面を熱酸化してSiO2層を形成した基板に、TiO2をターゲットとしてスパッタリング法により密着層としてTiO2層を形成する。基板温度は室温、酸素雰囲気中で成膜を行なった。TiO2層の膜厚は20nmとした。次にTiO2層の上に80Cu−20Crの組成の下部電極を形成する。すなわち室温で80Cu−20Cr合金ターゲットを使用してDCスパッタリングにより上記組成の下部電極を形成した。下部電極の膜厚は100nmとした。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例1とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表2に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、80Cu−20Ptの組成の下部電極を形成する。すなわち室温で80Cu−20Pt合金ターゲットを使用してDCスパッタリングにより上記組成の下部電極を形成した。下部電極の膜厚は100nmとした。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例2とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表2に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Crメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりCr副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例3とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Tiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりTi副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例4とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Taメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりTa副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例5とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Ptメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりPt副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例6とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Irメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりIr副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例7とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Ruメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりRu副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを実施例8とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Ptメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりPt副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例9とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Crメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりCr副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例10とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Tiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりTi副電極層を20nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例11とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、Irメタルターゲットを用いてDCスパッタリングによりIr副電極層を100nmの厚さで形成した。次に副電極層の上に、主電極層としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを参考例12とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、上部電極としてCuメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてCu主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを比較例1とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
参考例1と同様のTiO2の密着層を形成した基板の表面に、上部電極としてNiメタルターゲットを用いてDCスパッタリングにより基板温度100℃としてNi主電極層を200nmの厚さで形成した。これを還元雰囲気中800℃・30分間で焼成して、これを比較例2とする。下部電極のRa(nm)を測定し、結果を表3に示した。
シリコン単結晶基板の表面を熱酸化してSiO2層を形成した基板に、TiO2をターゲットとしてスパッタリング法により密着層としてTiO2層を形成する。基板温度は室温、酸素雰囲気中(Ar+O2混合ガス、ガス流量比はAr:O2=4:1)で成膜を行なった。TiO2層の膜厚は20nmとした。次にTiO2層の上に80Cu−20Crの組成の下部電極を形成する。すなわち室温で80Cu−20Cr合金ターゲットを使用してDCスパッタリングにより上記組成の下部電極を形成した。下部電極の膜厚は100nmとした。次に下部電極の上に誘電体層を形成した。誘電体層の形成はMOD法によった。すなわち、誘電体層を組成式(Ba0.7,Sr0.3)TiO3で示されるチタン酸バリウムストロンチウム(BST)とし、2−エチルヘキサン酸Baを0.7モルと、2−エチルヘキサン酸Srを0.3モルと、2−エチルヘキサン酸Tiを1モルとなるように、これらの三種の溶液を混合し、トルエンで希釈し、原料液を調整した。これらの原料溶液は、それぞれクリーンルーム内で、孔径0.2μmのPTFE製シリンジフィルタによって、クリーンルーム内で洗浄済のガラス製容器内に濾過した。次に、前記の通り調整した原料液を、下部電極の上に塗布した。塗布法としては、スピンコート法を用いた。具体的には、前記基板をスピンコータにセットし、下部電極の表面に、それぞれの原料溶液を10μリットルほど添加し、4000r.p.m.および20秒の条件で、スピンコートし、下部電極の表面に塗布層を形成した。その後、塗布層の溶媒を蒸発させるために、大気中、100℃で10分間乾燥させた。次に塗布層を還元雰囲気中800℃で熱分解して上記組成のチタン酸バリウムストロンチウム薄膜からなる誘電体層を形成した。誘電体層の膜厚は、250nmであった。次に基板温度100℃で80Cu−20Cr合金ターゲットを使用してDCスパッタリングにより80Cu−20Cr組成の上部電極を形成した。下部電極の膜厚は100nmとした。このサンプルを参考例13とした。比誘電率k(100kHz)、tanδ(%)、リーク特性(100kV/cmの電圧印加)を評価したところ、kは750、tanδは1.5%、リーク特性は1.0×10−7であった。したがって、MOD法により、誘電体層を高温焼成により形成しても、Cu電極を高温で焼成したという条件に基づく粒成長、ひいては凹凸発生の影響を受けなかったといえる。したがって、例えば溶液法で形成した誘電体層においても、結晶性が良く優れた誘電特性を発揮させる。したがって、誘電特性の優れた薄膜電子部品を提供できる。
2 下部電極
2a,4a 主電極層
2b,4b 副電極層
3 誘電体層
4 上部電極
5 密着層
50 薄膜コンデンサ
100,200,300,400 薄膜電子部品
Claims (5)
- 基板上に、少なくとも下部電極、誘電体層及び上部電極を順に有する薄膜コンデンサを形成した薄膜電子部品において、
前記下部電極は、Cuを主成分とする主電極層と、該主電極層の主成分の金属の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属のうちRu、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する副電極層との複層構造を有し、かつ、該下部電極は基板側から副電極層、主電極層の順に形成されてなり、前記主電極層と前記誘電体層とが接していることを特徴とする薄膜電子部品。 - 前記主電極層の厚みは20nm〜1μmであり、且つ前記副電極層の厚みは1nm〜1μmであることを特徴とする請求項1記載の薄膜電子部品。
- 前記主電極層と前記副電極層との界面において、Cuと、Ru、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素とが合金を形成していることを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜電子部品。
- 前記誘電体層は、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料により形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の薄膜電子部品。
- 基板上に、少なくとも下部電極、誘電体層及び上部電極を順に有する薄膜コンデンサを形成した薄膜電子部品の製造方法において、
前記基板の表面に、Cuを主成分とする主電極層と、該主電極層の主成分の金属の融点よりも210℃以上高い融点を有する金属のうちRu、Rh、Re、Pt、Ir、Os、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はWから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する副電極層との複層構造を有する下部電極を、副電極層、主電極層の順に形成する下部電極形成工程と、
前記下部電極の表面に有機誘電体原料を含有する原料液を塗布して塗布層を形成する原料液塗布工程と、
該塗布層を加熱し、前記有機誘電体原料を焼成して金属酸化物薄膜からなる誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
前記誘電体層の表面に上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有し、前記主電極層と前記誘電体層とが接していることを特徴とする薄膜電子部品の製造方法。
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