JP2007031242A - 薄膜電子部品用基板とそれを用いた薄膜電子部品の製造方法 - Google Patents

薄膜電子部品用基板とそれを用いた薄膜電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、数nm〜数μmの膜厚の薄膜を成膜する高精度の薄膜デバイス製造技術を適用しうる、高精度の平滑性を有するセラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板及び該基板の上に受動素子を形成した薄膜電子部品の製造方法を提供することである。
【解決手段】
本発明に係る薄膜電子部品用基板の製造方法は、セラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体に第1原料液の塗布により第1塗布層を形成し、第1塗布層の加熱により金属酸化物薄膜層を形成する工程と、前記金属酸化物薄膜層の表面上に第1原料液よりも相対的に粘度が高い第2原料液の塗布により第2塗布層を形成し、第2塗布層の加熱により金属酸化物薄膜層を形成する工程とを含み、前記金属酸化物薄膜層を積層して0.1μm以上20μm以下の膜厚の金属酸化物薄膜からなるコーティング層を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、セラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体からなる基板の上に電極層、誘電体層等の薄膜層を薄膜電子素子として形成するための基板の製造方法及びそれを用いた薄膜電子部品の製造方法に関する。
従来、アルミナ等のセラミックス多結晶基板又はガラスセラミックス基板(低温焼成基板、LTCC)の上にコンデンサ等の受動素子が形成された電子部品が広く知られている。このような薄膜電子部品の製造には、薄膜デバイス製造技術が用いられることから、受動素子が形成される基板の表面は十分に平滑である必要があり、そのため基板の表面はあらかじめ研磨により鏡面化される(特許文献1参照)。
しかしながら、セラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体からなる基板内には多数のポアが存在するため、研磨により鏡面化すると基板の表面には多くの開口したポアが露出することとなる。このようなポアは、基板にガラス成分(フリット材)が含まれるガラスセラミックス基板において特に多いという傾向がある。これは、ガラスセラミックス基板の焼成時にガラス成分が溶融しガスの発生があり、内包された気泡が充分に抜け切らないためであると推測される。このため、特にガラスセラミックス基板においては露出したポアの深さが約3μm以上に達することがあり、このような深いポアが基板の表面に露出していると、薄膜デバイス製造技術を用いて形成される受動素子に欠陥が生じるおそれがある。例えば、薄膜コンデンサを形成する場合、ポアの部分において下部電極層と上部電極層が短絡するおそれがあった。
このような基板の表面の欠陥を抑制するために、例えば基板の表面にゾルゲル法によってコート膜を形成する特許文献2に開示された技術を適用することも考えられる。特許文献2に開示された技術は次の通りである。ドクターブレード法によりアルミナ等のグリーンシートを形成し、そのグリーンシートに厚膜デバイス製造技術により配線を形成し、複数枚のグリーンシートを積層後、焼成して多層配線基板とする。ここでグリーンシートの焼成時に発生するガスにより基板の内部及び表面にボイドが形成され、特に表面付近に現れたボイドが表面のポア(表面欠陥)となって、焼成後、焼成基板の表面に形成する微細な配線の配線不良を引き起こす。そこで、焼成基板の表面を平滑面として配線不良の発生を防止しつつ、ビアホール等の導通を充分に確保するために、焼成基板の表面にゾルゲル法によってコート膜を形成し、基板の表面の平滑化を図るものである。
特開平10−98158号公報 特開平5−74979号公報
基板表面には基板の焼成時の収縮により生ずるうねりによる広い領域内の凹凸があるが、この種の凹凸は研磨により平滑化が可能である。しかしガラスセラミックス基板では、例えばSiOを主成分とするガラス相中にAlが分散粒子として存在するが、ガラス相よりもAl粒子のほうが硬いため、基板の研磨を行なうとAl粒子の露出表面がガラス相の表面よりもわずかに凸面となる。図1にガラスセラミックス基板の表面付近の断面概略図を示した。図1に示すように発明者らの調査によるとAl粒子の露出表面とガラス相の表面との段差は研磨技術にも左右されるが、少なくとも5〜60nmであることがわかった。このようなAl粒子の粒子径程度の狭い領域での段差は高精度の薄膜デバイス製造技術を適用するに際して欠陥の原因となる。さらに、ガラス相の表面には上述のポアが存在し、発明者らの調査によるとその深さは0.5〜10μmである。ポア径は深さと同程度であるので0.5〜10μm画の領域内における0.5〜10μmの凹部は高精度の薄膜デバイス製造技術を適用するに際して欠陥の原因となる。
セラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板において、基板の表面に特許文献2を例とするコート層を設けることのみでは、ポアの箇所で基板のポアに連通するコート層のポアが生じるか、或いは基板のポア若しくはAl粒子の露出表面に対応したコート層の凹凸が生じる。したがって、このような凹凸がコート層にあると高精度の薄膜デバイス製造技術を適用した場合、厚膜デバイス製造技術を適用したときには解決されうる短絡等の問題が依然として解決されないことがわかった。
このように高精度の薄膜デバイス製造技術を適用して、表面に微小領域での凹凸があるセラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板の上に受動素子を形成して薄膜電子部品を製造するためには、厚膜デバイス製造技術により受動素子を形成して厚膜電子部品を製造する場合よりも基板に高精度な平滑性を与える必要がある。
本発明の目的は、数nm〜数μmの膜厚の薄膜を成膜する高精度の薄膜デバイス製造技術を適用しうる、高精度の平滑性を有するセラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板を提供することである。さらに、高精度の平滑性を有するセラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板の上に受動素子を形成した薄膜電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための本発明に係る薄膜電子部品用基板の製造方法は、板状のセラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体の少なくとも片面に、加熱により金属酸化物となる原料を含む第1原料液の塗布により第1塗布層を形成し、該第1塗布層の加熱により金属酸化物薄膜層を形成する工程と、前記金属酸化物薄膜層の表面上に、加熱により金属酸化物となる原料を含み、前記第1原料液よりも相対的に粘度が高い第2原料液の塗布により第2塗布層を形成し、該第2塗布層の加熱により金属酸化物薄膜層を形成する工程とを含み、前記金属酸化物薄膜層を積層して0.1μm以上20μm以下の膜厚の金属酸化物薄膜からなるコーティング層を形成することを特徴とする。
ここで本発明に係る薄膜電子部品用基板の製造方法では、前記金属酸化物薄膜は、該金属酸化物薄膜の表面粗さRaが0.5nm以上20nm以下であるか、或いは該金属酸化物薄膜の表面で開口したポアの合計開口面積が該金属酸化物薄膜の表面積に対して100ppm以下であるか、或いは該金属酸化物薄膜の表面で開口したコーティング層ポア数が前記基板の表面で開口した基板ポア数の25%以下であるかのうち、少なくとも一つを満たすことが好ましい。
さらに本発明に係る薄膜電子部品用基板の製造方法では、前記第1塗布層の加熱により形成した金属酸化物薄膜層の上に該金属酸化物薄膜層と同等の金属酸化物薄膜層をさらに1層以上形成することがより好ましい。また、前記第2塗布層の加熱により形成した金属酸化物薄膜層の上に該金属酸化物薄膜層と同等の金属酸化物薄膜層をさらに1層以上形成することがより好ましい。
本発明に係る薄膜電子部品用基板の製造方法では、前記第1原料液を1回若しくは複数回塗布することにより第1塗布層を形成することが好ましい。また前記第2原料液を1回若しくは複数回塗布することにより第2塗布層を形成することが好ましい。
本発明に係る薄膜電子部品用基板の製造方法では、前記第1原料液として、スピンコートの回転数2000r.p.m.、1回塗布の条件で前記金属酸化物薄膜層の膜厚が20〜200nmとなる粘性を有する原料液を使用することが好ましい。また前記第2原料液として、スピンコートの回転数2000r.p.m.、1回塗布の条件で前記金属酸化物薄膜層の膜厚が200nmを超え700nm以下となる粘性を有する原料液を使用することが好ましい。
本発明に係る薄膜電子部品用基板の製造方法では、前記第1塗布層及び前記第2塗布層の焼成温度は500℃以上1000℃未満であることがより好ましい。
さらに本発明に係る薄膜電子部品用基板の製造方法では、前記原料として、Siを主成分とした原料を使用することが好ましい。
本発明に係る薄膜電子部品の製造方法は、前記薄膜電子部品用基板に設けた金属酸化物薄膜からなるコーティング層の上に下部電極層を設け、該下部電極層の上に薄膜誘電体層を設け、該薄膜誘電体層の上に上部電極層を設けたことを特徴とする。ここで下部電極層、上部電極層はPVD法等の気相法により形成することが好ましい。
本発明により、数nm〜数μmの膜厚の薄膜を成膜する高精度の薄膜デバイス製造技術を適用しうる、高精度の平滑性を有するセラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板を提供できる。さらに、高精度の平滑性を有するセラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板の上に受動素子を形成した薄膜電子部品も提供できる。
以下、本発明に実施の形態を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。まず、本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法によって得られる薄膜電子部品用基板の特徴について説明する。この薄膜電子部品用基板は、板状のセラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体の少なくとも片面にコーティング層を設けた基板において、コーティング層は金属酸化物薄膜からなり、金属酸化物薄膜の膜厚を0.1μm以上20μm以下とし且つ表面粗さRaを0.5nm以上20nm以下としたものである。
薄膜電子部品用基板のベースとなるものは、板状のセラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体である。ガラス基板やシリコン単結晶基板は、表面が十分に平滑であるため、薄膜デバイス技術の適用が可能であるが、セラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板は表面を鏡面に研磨して使用するため、解決課題で述べたように図1のポアやアルミナ粒子の露出表面の凸部が存在する。そこで表面の高精度の平滑化が必要である。したがって本実施形態では、これらの基板を対象とする。
セラミックス多結晶体としては、目的とする比誘電率や焼成温度に基づいて適宜選択すればよく、アルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)が例示できる。
また、ガラスセラミックス体としては、目的とする比誘電率や焼成温度に基づいて適宜選択すればよく、1000℃以下で焼成して得たアルミナ(結晶相)と酸化ケイ素(ガラス相)からなる基板が例示できる。その他、セラミックス成分として、マグネシア、スピネル、シリカ、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、ストロンチウム長石、石英、ケイ酸亜鉛、ジルコニア等を用いることができる。ガラス成分としては、ホウケイ酸ガラス、鉛ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸バリウムガラス、ホウケイ酸ストロンチウムガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス、ホウケイ酸カリウムガラス等を用いることができる。1000℃以下で焼成できるため内部導体を配線する場合にはAg、Ag−Pd合金、Au、Pt、Cuの使用が可能である。また誘電率がアルミナ基板より低いので信号遅延も小さい。さらに熱膨張係数がシリコンに近いという特徴があり、基板への直接ダイボンディングやフリップチップ(FC)接続が容易である。これによりモジュールの小型化に有利な基板となっている。基板として使用するため、セラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体の形状は板状とする。ガラス成分は60〜80体積%とし、骨材であるセラミックス成分を40〜20体積%とすることが好ましい。ガラス成分が上記の範囲を外れると複合組成物となりにくく、強度及び成形性が低下するからである。上記の範囲内とすることで、セラミックス基板とほぼ同等の強度及び成形性を確保しつつ、粒界に起因する欠陥を大幅に低減し、平滑性の向上を図ることができる。
基板の少なくとも一面を基板研削(ラッピング)を行ない、基板の焼成工程において生じた焼成反りを除去して平坦化する。基板の平坦化後は、鏡面化(ポリッシング)処理を行なう。ポリッシング処理はCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いることが好ましい。この段階で基板の表面に開口したポアと、セラミックス粒子の露出表面での凸部が発生する。
コーティング層は、上記の研磨面の上に設ける。コーティング層は金属酸化物薄膜からなる。金属酸化物薄膜としては、基板組成と同一若しくは基板組成を主成分とすることが好ましい。さらに、表面の高精度の平滑性を得るためにアモルファスとなるものがより好ましい。SiO薄膜とすることが特に好ましい。SiOにアルミナを含有させた薄膜であっても良い。或いは基板と薄膜電子部品の熱膨張係数の中間値の熱膨張係数を有する金属酸化物薄膜を形成することで、薄膜電子部品のクラックの発生を抑制しても良い。さらに、後述する第1原料液に含む原料と第2原料液に含む原料を違う原料とし、別種の金属酸化物薄膜層を積層して金属酸化物薄膜としても良い。金属酸化物薄膜の膜厚は、基板表面の凹凸を緩和するため、0.1μm以上20μm以下する。金属酸化物薄膜の膜厚が0.1μm未満では、ポアの箇所で基板のポアに連通するコーティング層のポアが生じやすくなると共に、セラミックス粒子の露出表面の凸部の段差を解消できず、セラミックス粒子の露出表面に対応したコーティング層の凹凸が生じる。一方、金属酸化物薄膜の膜厚が20μmを超える場合には、表面の凹凸の緩和及びポアの内圧の抑制が充分に可能であるが、コーティング層にクラックが生じやすくなるとともに、過度の膜厚は無駄となる。さらに、コーティング層の表面粗さRa(算術平均粗さ)は、0.5nm以上20nm以下とする。ここで表面粗さRaはJIS B 0601に準拠した測定装置により決定する。Raを0.5nm未満とすることは基板を構成する原子レベルの凹凸があるため困難である。一方、Raが20nmを超えると、薄膜デバイス技術の適用により、40〜100nm程度の微小膜厚の薄膜を形成する場合もあることから、短絡等の欠陥が生じやすくなる。
金属酸化物薄膜は0.1μm以上20μm以下の膜厚条件を満たしつつ、金属酸化物薄膜の表面で開口したポアの合計開口面積を金属酸化物薄膜の表面積に対して100ppm以下としても良い。通常、鏡面化した基板のポアの合計開口面積は、基板表面に対して約0.02〜0.2%を占める。このとき、コンデンサ等の薄膜電子部品を形成すると短絡がかなりの確率で起こる。金属酸化物薄膜の表面で開口したポアの合計開口面積を金属酸化物薄膜の表面積に対して100ppm以下、好ましくは50ppm以下とすることで、ショート率をほぼ0%とし、リーク電流密度を単結晶シリコン基板状に形成した場合と同等にすることができる。
金属酸化物薄膜は0.1μm以上20μm以下の膜厚条件を満たしつつ、金属酸化物薄膜の表面で開口したコーティング層ポア数をセラミックス多結晶基板やガラスセラミックス基板の表面で開口した基板ポア数の25%以下、好ましくは20%以下としても良い。ポア数を25%以下に低減すれば、金属酸化物薄膜の表面で開口したポアの合計開口面積を金属酸化物薄膜の表面積に対して100ppm以下となり、ポアが金属酸化物薄膜で埋められてポア数も減少した状態となっているため、ショート率がほぼ0%となり、リーク電流密度を単結晶シリコン基板状に形成した場合と同等にすることができる。なお、コーティング層ポア数は顕微鏡を用いた表面観察により求めることができ、基板ポア数はコーティング層を形成する前若しくはコーティング層を除去した後、表面観察により求めることができる。
本実施形態では、セラミックス多結晶基板若しくはガラスセラミックス基板の表面に上述の条件を満たす高精度の平滑性を有するコーティング層を設けた薄膜電子部品用基板の上に数nm〜数μmの薄膜を成膜する薄膜デバイス技術を適用して薄膜電子部品を形成しても良い。図2に本実施形態に係る薄膜電子部品の一形態を示す概略断面図を示す。図2の薄膜電子部品は、ラッピング及びポリッシングを施したセラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体からなる基板の基板1の表面に、金属酸化物薄膜からなる高精度の平滑性を有するコーティング層2を設け、コーティング層2の上に下部電極層3を設け、下部電極層3の上に薄膜誘電体層4を設け、薄膜誘電体層4の上に上部電極層5を設けた形態を有する。
下部電極層3及び上部電極層5は、低抵抗性を有する材料で形成することが好ましく、例えばAu、Ag、Ag-Pd、Pt、Cu或いはこれらの合金等の低抵抗導電体を薄膜に形成したものである。膜厚は特に限定されないが50nm以上、500nm以下に設定することが好ましい。なお、コーティング層2と下部電極層3との間に密着層を設けても良い。
薄膜誘電体層4は、コンデンサとなる絶縁層であり、このような高誘電率材料としては、例えば、BST(チタン酸バリウムストロンチウム)、BaTiO、(BaCa1−x)TiO、(BaSr1−x)TiO、PbTiO、Pb(ZrTi1−x等のペロブスカイト構造を持った(強)誘電体材料や、Pb(Mg1/3Ni2/3)O等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料や、BiTi12、SrBiTa等に代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNbO等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料が用いられる。この中でも、BST、BaTiOやPZT等のペロブスカイト構造を持った強誘電体材料が、誘電率が高く比較的低温での合成が容易であるため好ましい。膜厚は特に限定されないが30nm以上500nm以下に設定することが好ましい。膜厚が30nm以下であると充分な比誘電率が得られない場合があり、リーク電流が許容範囲を超えるおそれがある。一方、膜厚が500nmを超えると充分な容量値が得られない場合がある。
なお、上部電極層5の上に電極保護の目的でTiOやポリイミド等の保護層を設けても良い。
基板表面に金属酸化物薄膜からなるコーティング層を設けることで、基板中に含まれる不純物が電極や薄膜誘電体に拡散することを防止しうる場合がある。一方、電極や薄膜誘電体から基板へ不純物が拡散することを防止しうる場合がある。
次に本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法について図3〜図9を参照しながら説明する。本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法のうち、加熱により金属酸化物となる原料を含む第1原料液の塗布により第1塗布層を形成し、第1塗布層の加熱により金属酸化物薄膜層を形成する工程について説明する。まず、図3に示すように板状のセラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体からなる基板10の少なくとも片面に、加熱により金属酸化物となる原料を含む第1原料液の塗布により第1塗布層11を形成する。ここで第1原料液とは、加熱により金属酸化物となる原料を含むものであれば特に制限はない。原料としては、例えば金属アルコキシド、金属アルコラート、有機金属酸塩、無機金属塩、金属トリフルオロ酢酸塩、シリカゾル、アルキルシリケート、無機シロキサンなどがある。2種以上の原料を混合して用いても良い。原料として、Siを主成分とし、ガラス層を形成する原料を使用することが好ましい。粘性が高いと限界膜厚(1回の塗布・熱処理でクラックが生成し始める膜厚のことをいう)を超えてしまい、コーティング層にクラックが生じる。したがって、上記原料に溶剤を添加し、粘性調整を行なった原料液とすることが好ましい。ここで、図9に1回塗布膜の模式図を示した。図9に示すように粘性の低い原料液を使用してサブミクロンから数ミクロンの膜厚の塗布層26を形成する場合は、セラミックス粒子22の露出表面の凸部の段差23を緩和すると共に基板20のポア24の内部に原料液が浸透する。したがって、粘性の低い原料液を使用して、基板表面の凹凸がなくなるまで繰り返して塗布を行なうことで、セラミックス粒子の露出表面の凸部の段差を緩和すると共に基板のポアをほぼ埋めることができ、高精度の平滑性を有するコーティング層を形成することが可能となる。前記第1原料液として、スピンコートの回転数2000r.p.m.、1回塗布の条件で、塗布層から得られる金属酸化物薄膜層の膜厚が20〜200nmとなる粘性を有する原料液を使用することが好ましい。200nm以下となる粘性を有する原料液を使用する理由は、ポアを確実に埋めるためである。また20nm以上となる粘性を有する原料液を使用する理由は、コーティング層の膜厚の下限には制限がないが、膜厚が小さ過ぎると、塗布回数が多くなり製造コストが上昇するためである。このような粘性を与えるための原料の希釈溶剤は、原料を安定的に溶解できるものであれば特に制限はなく、望ましくは使用する基板に対して濡れ性の良い溶剤が好ましい。なお、第1原料液の塗布前にはシリンジフィルター等の異物除去手段を使って、原料液を濾過することが好ましい。第1原料液の塗布はスピンコート、ディップコート、インクジェットによるコート、刷毛による塗布を例示できる。ここで第1塗布層は、原料液を1回若しくは複数回塗布することにより形成することが好ましい。すなわち原料液は限界膜厚を超えない厚みで繰り返して、例えば5〜10回程度の塗布を行なうことが好ましく、粘性の低い原料液を使用して繰り返して塗布を行なうことがより好ましい。図4に図示化の容易のため第1原料液を2回繰り返しの塗布により、第1塗布層11,12が形成される場合を示した。
次に図5に示すように第1塗布層11,12を加熱して金属酸化物薄膜層13を形成する。加熱工程では、500℃以上1000℃未満、好ましくは、600〜900℃において焼成を行なう。焼成を行なう前に、第1塗布層の乾燥及び仮焼を行なっても良い。焼成により金属酸化物薄膜層が緻密化される。本実施形態における第1塗布層の加熱は、焼成を含む概念である。焼成が500℃未満では、金属酸化物薄膜層が緻密化されず或いは金属酸化物となる中間反応状態の膜で形成されるおそれがある。一方焼成を1000℃以上とすると、ガラスセラミックス基板の場合、基板の熱変形のおそれがある。なお、コーティング層がガラスの場合は各第1塗布層の境界は電子顕微鏡による断面観察でも確認は難しい。
第1塗布層の加熱により形成した金属酸化物薄膜層の上に該金属酸化物薄膜層と同等の金属酸化物薄膜層をさらに1層以上形成することによる金属酸化物薄膜層の積層は、基板のポアが埋まる程度の厚さ、例えば0.5〜5μmの厚さまで行なうことが好ましい。
次に本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法のうち、第1原料液を使用して作製した金属酸化物薄膜層の表面上に、加熱により金属酸化物となる原料を含み、第1原料液よりも相対的に粘度が高い第2原料液の塗布により第2塗布層を形成し、第2塗布層の加熱により金属酸化物薄膜層を形成する工程について説明する。図6に示すように金属酸化物薄膜層13の表面に第2原料液を塗布することで第2塗布層14を形成する。ここで第2原料液とは、加熱により金属酸化物となる原料を含むものであれば特に制限はない。原料としては、第1原料液の原料と同様に例えば金属アルコキシド、金属アルコラート、有機金属酸塩、無機金属塩、金属トリフルオロ酢酸塩、シリカゾル、アルキルシリケート、無機シロキサンなどがある。2種以上の原料を混合して用いても良い。第2原料液は、第1原料液の原料と同じ金属酸化物となる原料を含むことが好ましいが異なる金属酸化物となる原料を選択しても良い。原料として、Siを主成分とし、ガラス層を形成する原料を使用することが好ましい。粘性が高いと限界膜厚を超えてしまい、コーティング層にクラックが生じる。したがって、上記原料に溶剤を添加し、粘性調整を行なった原料液とすることが好ましい。ただし、第2原料液は、第1原料液よりも相対的に粘度が高いことが必要である。このような粘性に調整するのは次の理由による。まず、粘性の低い第1原料液を使用して、セラミックス粒子の露出表面の凸部の段差を緩和すると共に基板のポアの内部に原料液を浸透させ、基板表面の凹凸がなくなるまで繰り返して塗布を行なうことで、セラミックス粒子の露出表面の凸部の段差を緩和すると共に基板のポアをほぼ埋める。粘性の高い原料液を基板の表面に塗布すると、凸部の段差はよく緩和するが、基板表面に繰り返し塗布すると、ポアを完全に埋めきる前にクラックが入ってしまうからである。このように粘性の低い第1原料液を使用して、基板の表面の凹凸を緩和する金属酸化物薄膜層を形成した後に、第1原料液よりも相対的に粘性の高い第2原料液を使用して、コーティング層である金属酸化物薄膜の膜厚が所望値となるように繰り返して塗布を行なうのである。この結果、基板のポアを埋めつつ、少ない塗布回数で高精度の平滑性を有するコーティング層を形成することが可能となる。第2原料液として、スピンコートの回転数2000r.p.m.、1回塗布の条件で、塗布層から得られる金属酸化物薄膜層の膜厚が200nmを超え700nm以下となる粘性を有する原料液を使用することが好ましい。2000r.p.m.でのスピンコート、1回の塗布の条件で、700nmを超えると、コーティング層にクラックの入るおそれがある。一方、200nm以下であると、コーティング層である金属酸化物薄膜を所望の膜厚に形成する際に、塗布回数が増加し、経済不利を伴う。このような粘性を与えるための原料の希釈溶剤は、原料を安定的に溶解できるものであれば特に制限はなく、望ましくは使用する基板に対して濡れ性の良い溶剤が好ましい。なお、第2原料液の塗布前においてもシリンジフィルター等の異物除去手段を使って、原料液を濾過することが好ましい。第2原料液の塗布は、第1原料液と同様にスピンコート、ディップコート、インクジェットによるコート、刷毛による塗布を例示できる。ここで第2塗布層は、第2原料液を1回若しくは複数回塗布することにより形成することが好ましい。すなわち原料液は限界膜厚を超えない厚みで繰り返して、例えば1〜5回程度の塗布を行なうことが好ましい。図7に図示化の容易のため第2原料液を2回繰り返しの塗布により、第2塗布層14,15が形成される場合を示した。
次に図8に示すように第2塗布層14,15を加熱して金属酸化物薄膜層16を形成する。加熱工程では、500℃以上1000℃未満、好ましくは、600〜900℃において焼成を行なう。焼成を行なう前に、第2塗布層の乾燥及び仮焼を行なっても良い。焼成により金属酸化物薄膜層が緻密化される。本実施形態における第2塗布層の加熱は、焼成を含む概念である。焼成を上記の温度範囲で行なう理由は、第1塗布層の焼成において述べた理由と同じである。コーティング層がガラスの場合は各第2塗布層の境界は電子顕微鏡による断面観察でも確認は難しい。
第2塗布層の加熱により形成した金属酸化物薄膜層の上に該金属酸化物薄膜層と同等の金属酸化物薄膜層をさらに1層以上形成することにより金属酸化物薄膜層の積層を行なってもよい。このとき、金属酸化物薄膜の膜厚(第1塗布層の形成による金属酸化物薄膜層と第2塗布層の形成による金属酸化物薄膜層の合計膜厚)が所望の膜厚となるまで行なうことが好ましい。これにより0.1μm以上20μm以下の金属酸化物薄膜17が得られる。なお、図3〜8では、理解の便宜上、各塗布層の区別をするために分けて図示したが、同一の原料液を使用して金属酸化物薄膜17を形成する場合には、塗布層の重ね塗りによる明確な境界(例えば、図8の点線で示した境界)が識別できるとは限らない。以上の工程を経て、薄膜電子部品用基板を製造する。
第1塗布層及び第2塗布層を形成するに際しては、上述したとおり、原料液を1回若しくは複数回塗布する形態がある。例えば、セラミックス多結晶基板若しくはガラスセラミックス基板の表面に、第1原料液を複数回塗布し、その後、加熱することにより金属酸化物薄膜層を形成し、さらに第1原料液を複数回塗布して加熱を行なうことを繰り返して金属酸化物薄膜層を積層し、次に第2原料液を複数回塗布し、その後、加熱することにより金属酸化物薄膜層を形成し、さらに第2原料液を複数回塗布して加熱を行なうことを繰り返して金属酸化物薄膜層を積層することで所望の膜厚の金属酸化物薄膜に形成する。さらに本実施形態は次の形態も含む。すなわち、セラミックス多結晶基板若しくはガラスセラミックス基板の表面に、第1原料液を1回塗布し、その後、加熱することにより金属酸化物薄膜層を形成し、さらに第1原料液を1回塗布して加熱を行なうことを繰り返して金属酸化物薄膜層を積層し、次に第2原料液を1回塗布し、その後、加熱することにより金属酸化物薄膜層を形成し、さらに第2原料液を1回塗布して加熱を行なうことを繰り返して金属酸化物薄膜層を積層することで所望の膜厚の金属酸化物薄膜に形成しても良い。さらに、第1原料液又は第2原料液のそれぞれについて、1回塗布して加熱を行なうこと及び原料液を複数回塗布して加熱を行なうことを組み合わせても良い。
なお、第1原料液又は第2原料液の中にPVP(ポリビニルピロリドン)などの添加剤を加えることで限界膜厚を大きくしても良い。
金属酸化物薄膜17は、金属酸化物薄膜の表面粗さRaが0.5nm以上20nm以下であるか、或いは金属酸化物薄膜の表面で開口したポアの合計開口面積が金属酸化物薄膜の表面積に対して100ppm以下であるか、或いは金属酸化物薄膜の表面で開口したコーティング層ポア数が前記基板の表面で開口した基板ポア数の25%以下であるかのうち、少なくとも一つを満たして高精度の平滑性を付与するように形成することが好ましい。
次に図2を参照して薄膜電子部品用基板を用いて、薄膜電子部品を製造する方法について説明する。基板1の上に形成したコーティング層2である金属酸化物薄膜の上に、下部電極層3をPVD法等の気相法により薄膜形成する。PVD法としては、抵抗加熱蒸着又は電子ビーム加熱蒸着等の真空蒸着法、DCスパッタリング、高周波スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、ECRスパッタリング又はイオンビームスパッタリング等の各種スパッタリング法、高周波イオンプレーティング、活性化蒸着又はアークイオンプレーティング等の各種イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、レーザアブレーション法、イオン化クラスタビーム蒸着法、並びにイオンビーム蒸着法などが例示できる。
薄膜誘電体層4は、ゾルゲル法やMOD法(有機金属化合物堆積法)等の溶液塗布焼成法、スパッタリング法等のPVD法又はCVD法等の薄膜デバイス製造技術を用いて形成する。これらの成膜方法によれば、BaTiO3やPZT等のペロブスカイト強誘電体を例にとると、通常のセラミックス粉体焼結法では900〜1000℃以上の高温プロセスが必要であるが、400〜850℃程度の低温で形成可能である。
次に薄膜誘電体層4の上に上部電極層5を、下部電極層3を成膜した場合と同様の材質のものをPVD法等の気相法により薄膜形成する。なお、上部電極層5の上に電極保護の目的でTiOやポリイミド等の保護層を設けても良い。
以下、本発明の実施例を具体的に示す。
(実施例1−原料液の粘性の検討その1)
まず、Al−SiO系のガラスセラミックス基板について、ラッピング及びポリッシングを行った平滑鏡面基板を準備する。次に東京応化工業株式会社製のSiO系被膜形成用塗布液、商品名OCD T−7を、希釈倍率を変化させてガラスセラミックス基板の上にスピンコート(ミカサ株式会社製、1H−D7)を行い、塗布層を形成し、乾燥、仮焼及び焼成を行なってSiOコーティング層を形成した。ここで、スピンコートにおける回転数は2000r.p.m.、乾燥温度は150℃、仮焼温度は500℃、焼成温度は750℃とした。OCD T−7は、メチルシロキサンポリマーメタノール・プロピレングリコール・水であり、粘度は3.94mPa・sであった。
SiO系被膜形成用塗布液の希釈はブタノールを溶媒として行なった。OCD T−7は希釈倍率を1倍(すなわち希釈せず)、2倍、3倍又は4倍とした。膜厚は光学膜厚を測定した。図10にOCD T−7の希釈倍率と光学膜厚の関係を示した。OCD T−7は希釈倍率を1〜4倍において、70〜850nmであり、希釈倍率が大きくなるにつれて膜厚が減少した。ここで、OCD T−7をそのままコーティングした場合(希釈倍率を1倍、粘度3.94mPa・s)、コーティング層にクラックが発生した。他のサンプルのコーティング層にはクラックは発生しなかった。第1原料液及び第2原料液として、2000r.p.m.でのスピンコート、1回の塗布の条件で、コーティング層の膜厚が800nm以下、より好ましくは600nm以下となるような粘性を有する原料液を使用することが好ましい。
(実施例2−原料液の粘性の検討その2)
アルミナ多結晶基板について、ラッピング及びポリッシングを行った平滑鏡面基板を準備する。アルミナ多結晶基板の表面粗さRaは35.7nmであった。ここで、Ra測定装置は、針式表面形状測定器Dektak3(日本真空技術株式会社製)を使用した。測定条件を図11に示す。以下、実施例2で行なった表面粗さRaの測定はこの条件にて測定した。原料液は、東京応化工業株式会社製のSiO系被膜形成用塗布液、商品名OCD T−2(溶質濃度5.91重量%、1倍希釈)、OCD T−7(溶質濃度15.98重量%、1倍希釈)及びOCD T−7(ブタノールで1.5倍希釈)の3種類を準備した。なお、OCD T−2は、エチルシリケートポリマーエタノール・酢酸エチルであり、粘度は1.02mPa・sであった。スピンコートの回転数(r.p.m.)は2000、3000、4000又は5000とした。1回塗布による塗布層の形成、塗布層の乾燥、仮焼、焼成のプロセスを行なったときのSiOコーティング層の膜厚、表面粗さRa及びクラックの有無を評価した。膜厚は光学膜厚計(フィルメトリクス株式会社製)により測定した。結果を表1に示した。
Figure 2007031242
表1の結果から次のことがわかる。OCD T−7(濃度15.98重量%、1倍希釈)は、濃度が高いため粘性も高く、1回の塗布でえられるコーティング層の膜厚が大きすぎ、クラックが生じる。そしてスピンコートの回転数を大きくして膜厚を小さくしてもクラックが生じた。
それに対してOCD T−7(ブタノールで1.5倍希釈)の1回塗布・加熱は、OCD T−7(濃度15.98重量%、1倍希釈)よりもブタノールを添加して濃度と粘性を低くしたため、2000〜5000r.p.m.のいずれの回転数で得られたコーティング層にもクラックは生じなかった。表面粗さRaは15.2〜23.8nmであり、基板の表面粗さRa35.7nmと比較して平滑性が増していた。なお、スピンコートの回転数が小さいほど表面粗さRaが小さいことがわかる。次にOCD T−7(ブタノールで1.5倍希釈)の2回塗布・加熱で得られるコーティング層も、クラックは生じなかった。表面粗さRaは11.5〜17.7nmと1回目の塗布の場合よりもさらに平滑性が増していた。2回目塗布の場合においてもスピンコートの回転数が小さいほど表面粗さRaが小さいことがわかる。
さらにOCD T−2(濃度5.91重量%、1倍希釈)は、OCD T−7(ブタノールで1.5倍希釈)よりも得られたコーティング層の膜厚はさらに小さく、2000〜5000r.p.m.のいずれの回転数で得られたコーティング層にもクラックは生じなかった。表面粗さRaは20.0〜27.8nmであり、OCD T−7(ブタノールで1.5倍希釈)から得られたコーティング層とほぼ同等の平滑性を有していた。ここでもスピンコートの回転数が小さいほど表面粗さRaが小さいことがわかる。次にOCD T−2(濃度5.91重量%、1倍希釈)の2回の塗布でえられるコーティング層も、クラックは生じなかった。表面粗さRaは15.2〜18.2nmと1回目の塗布の場合よりもさらに平滑性が増していた。以上のことから、濃度の低い原料液を使用し、繰り返し塗布・熱処理することでRaをより小さくすることができた。
(実施例3−第1原料液と第2原料液を用いた塗布)
次にAl‐SiO系ガラスセラミックス基板の表面に、OCD T−7をブタノールで希釈倍率2倍又は3倍とした原料液を用いて、(a)希釈倍率2倍原料液を塗布(1回)・焼成を5回繰り返し、(b)希釈倍率3倍原料液を塗布(1回)・焼成を5回繰り返し後、希釈倍率2倍原料液を塗布(1回)・焼成を1回行なう、の2通りの工程をそれぞれ行ってSiOコーティング層を形成し、平滑化したガラスセラミックス基板を得た。スパッタリング法により、これらの基板のSiOコーティング層の上に白金下部電極層を形成し、その上にBSTからなる薄膜誘電体層を形成し、さらにその上に白金上部電極層を形成し、薄膜電子部品を得た。上部電極の電極径を0.1mmφとした。これらの薄膜電子部品の電気特性の評価を行なった。コーティング層のクラックの有無の観察と、表面粗さRa、ショート率、容量密度C/A、リーク電流密度J及びtandの測定を行なった。表面粗さRaは、プローブ顕微鏡(SPI3800N、セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて測定し、測定条件は、たわみ量−1.0、Iゲイン0.5、Pゲイン0.1、Aゲイン0、走査エリア20μm、走査周波数1Hzとした。ショート率は任意に選んだ10個の上部電極のうち、下部電極と短絡しなかった割合により算出した。
比較のためにコーティング層を設けずにAl‐SiO系ガラスセラミックス基板の表面にそのまま薄膜電子部品を形成し、同様の評価を行なった。また、シリコン単結晶基板の表面に熱酸化膜を形成し、熱酸化膜の上にそのまま薄膜電子部品を形成し、同様の評価を行なった。結果を表2に示した。
Figure 2007031242
表2から、Al‐SiO系ガラスセラミックス基板の上にコーティング層を設けずに形成した薄膜電子部品では、ショート率が70%と高く、ショートしていないサンプルにおいてもリーク電流密度が大きい。希釈倍率を2倍としてSiOコーティング層を形成したサンプル(前記(a)のケース)は、コーティング層にクラックが生じていた。ここで(a)のケースにおいて、塗布(1回)・焼成を1回行なったときにはクラックは生じなかったが5回繰り返しを行なうとクラックが生じた。希釈倍率3倍原料液(第1原料液)を塗布(1回)・焼成を5回繰り返し後、希釈倍率2倍原料液(第2原料液)を塗布(1回)・焼成を1回行なった工程で得たサンプル(前記(b)のケース)では、コーティング層にクラックは生じておらず、ショート率は0%で、リーク電流密度も高く、高電気特性を有していた。すなわち、シリコン単結晶基板状に形成した薄膜電子部品とほぼ同等の電気特性を有していた。以上のことから、濃度の薄い原料液(第1原料液)をスピンコートして重ね塗りにより基板の上に金属酸化物薄膜層を形成し、次いで第1原料液と比較して相対的に濃度の濃い原料液(第2原料液)を使用してさらに金属酸化物薄膜層を形成することで、基板のポアが塞がれると共にセラミックス粒子の露出表面での段差が緩和され、薄膜デバイス製造技術を適用しうる高精度の平滑性を有する薄膜電子部品用基板を提供できることがわかった。
(実施例4−ポア低減率の測定)
次に、OCD T−7希釈倍率3倍原料液(第1原料液)を塗布(1回)・焼成を5回繰り返し後、OCD T−7希釈倍率2倍原料液(第2原料液)を塗布(1回)・焼成を1回行なう工程により、SiOからなるコーティング層をAl‐SiO系ガラスセラミックス基板の上に設けた場合に、基板上の開口したポアの合計開口面積とポア数がどの程度減少するのかを評価した。スピンコート回転数2000r.p.m.、乾燥温度150℃、仮焼温度500℃、焼成温度750℃とした。コーティング層の膜厚は750nmであった。開口したポアの合計開口面積及びポア数は、レーザー顕微鏡(VH2000、レーザーテック株式会社製)を用いて測定した。測定視野は500μm×1000μmとした。塗布前のポアの合計開口面積を基板の表面積で除した、基板の表面積に対する開口したポアの合計開口面積の割合を求めた。また、塗布後のポアの合計開口面積を基板の表面積で除した、基板の表面積に対する開口したポアの合計開口面積の割合を求めた。その際3水準測定し、その平均を算出した。さらに、塗布後の平均合計開口面積の割合を塗布前の平均合計開口面積の割合で除して、ポア面積低減率を算出した。また、金属酸化物薄膜の表面で開口したコーティング層ポア数及びコーティング層を形成する前の基板の表面で開口した基板ポア数をそれぞれ3水準測定し、その平均を算出した。さらに、コーティング層ポア数を基板ポア数で除して、ポア数低減率を算出した。
塗布前の鏡面研磨基板の開口したポアの合計開口面積の割合は、368ppmであった。これに対して、OCD T−7希釈倍率3倍原料液(第1原料液)を塗布(1回)・焼成を5回繰り返し後、OCD T−7希釈倍率2倍原料液(第2原料液)を塗布(1回)・焼成を1回行なう工程によりSiOからなるコーティング層を設けた場合、開口したポアの合計開口面積の割合は、30ppmであった。したがって、ポア面積低減率は8.3%であった。また、基板ポア数は122個で、コーティング層ポア数は24個であった。したがって、ポア数低減率は20.0%であった。このようにコーティング層の形成により、ポアの合計開口面積の割合及びポア数は大幅に低減した。なお、基板別及び同一基板内におけるポアの分布差があるため、5枚の基板につき各3点測定したところ、最大の合計開口面積の割合は966ppmであった。したがって、上記ポア面積低減率を勘案すると、本実施形態に係る薄膜電子部品用基板は、金属酸化物薄膜の表面で開口したポアの合計開口面積を金属酸化物薄膜の表面積に対して100ppm以下、好ましくは50ppm以下とすることができる。またポア面積低減率は、15%以下、好ましくは10%以下とする。
ガラスセラミックス基板の表面の断面概略図である。 本実施形態に係る薄膜電子部品の一形態を示す概略断面図である。 本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法の工程の1形態を示す概略図であって、第1塗布層(第1層)を形成した場合を示す。 本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法の工程の1形態を示す概略図であって、第1塗布層(第2層)を形成した場合を示す。 本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法の工程の1形態を示す概略図であって、第1塗布層(第1層及び第2層)を加熱して金属酸化物薄膜層とした場合を示す。 本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法の工程の1形態を示す概略図であって、金属酸化物薄膜層の上に第2塗布層(第3層)を形成した場合を示す。 本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法の工程の1形態を示す概略図であって、金属酸化物薄膜層の上に第2塗布層(第4層)を形成した場合を示す。 本実施形態に係る薄膜電子部品用基板の製造方法の工程の1形態を示す概略図であって、第2塗布層(第3層及び第4層)を加熱して金属酸化物薄膜層とした場合を示す。 1回塗布膜の模式図を示し、膜厚の薄い塗布層26を形成した場合を示す。 SiO系被膜形成用塗布液(OCD T−7)を使用して金属酸化物薄膜を形成したときの原料液の希釈倍率と光学膜厚の関係を示す図である。 針式表面形状測定器Dektak3の表面粗さRaの測定条件を示す。
符号の説明
1,10,20,ガラスセラミックス基板
2,17,金属酸化物薄膜
3,下部電極層
4,薄膜誘電体層
5,上部電極層
11,第1塗布層(第1層)
12,第1塗布層(第2層)
13,第1の金属酸化物薄膜層
14,第2塗布層(第3層)
15,第2塗布層(第4層)
16,第2の金属酸化物薄膜層
22,セラミックス粒子
23,セラミックス粒子の露出表面の凸部による段差
24,ポア(基板部分)
26,塗布層

Claims (11)

  1. 板状のセラミックス多結晶体若しくはガラスセラミックス体の少なくとも片面に、加熱により金属酸化物となる原料を含む第1原料液の塗布により第1塗布層を形成し、該第1塗布層の加熱により金属酸化物薄膜層を形成する工程と、
    前記金属酸化物薄膜層の表面上に、加熱により金属酸化物となる原料を含み、前記第1原料液よりも相対的に粘度が高い第2原料液の塗布により第2塗布層を形成し、該第2塗布層の加熱により金属酸化物薄膜層を形成する工程とを含み、
    前記金属酸化物薄膜層を積層して0.1μm以上20μm以下の膜厚の金属酸化物薄膜からなるコーティング層を形成することを特徴とする薄膜電子部品用基板の製造方法。
  2. 前記金属酸化物薄膜は、該金属酸化物薄膜の表面粗さRaが0.5nm以上20nm以下であるか、或いは該金属酸化物薄膜の表面で開口したポアの合計開口面積が該金属酸化物薄膜の表面積に対して100ppm以下であるか、或いは該金属酸化物薄膜の表面で開口したコーティング層ポア数が前記基板の表面で開口した基板ポア数の25%以下であるかのうち、少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項1記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  3. 前記第1塗布層の加熱により形成した金属酸化物薄膜層の上に該金属酸化物薄膜層と同等の金属酸化物薄膜層をさらに1層以上形成することを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  4. 前記第2塗布層の加熱により形成した金属酸化物薄膜層の上に該金属酸化物薄膜層と同等の金属酸化物薄膜層をさらに1層以上形成することを特徴とする請求項1、2又は3記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  5. 前記第1原料液を1回若しくは複数回塗布することにより第1塗布層を形成することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  6. 前記第2原料液を1回若しくは複数回塗布することにより第2塗布層を形成することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  7. 前記第1原料液として、スピンコートの回転数2000r.p.m.、1回塗布の条件で前記金属酸化物薄膜層の膜厚が20〜200nmとなる粘性を有する原料液を使用することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  8. 前記第2原料液として、スピンコートの回転数2000r.p.m.、1回塗布の条件で前記金属酸化物薄膜層の膜厚が200nmを超え700nm以下となる粘性を有する原料液を使用することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  9. 前記第1塗布層及び前記第2塗布層の焼成温度は500℃以上1000℃未満であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  10. 前記原料として、Siを主成分とした原料を使用することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の薄膜電子部品用基板の製造方法。
  11. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の薄膜電子部品用基板に設けた金属酸化物薄膜からなるコーティング層の上に下部電極層を設け、該下部電極層の上に薄膜誘電体層を設け、該薄膜誘電体層の上に上部電極層を設けたことを特徴とする薄膜電子部品の製造方法。
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