本発明の金属板ラミネート用熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムは、カルボン酸から誘導される官能基がカルボン酸換算の質量比率で2〜20質量%含有された粒子径が0.1〜5μmの粒状のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂が質量比率で3〜30質量%含有され、かつ表面の水に対する界面自由エネルギーが20mN/m以下であるポリエステル樹脂層Aを少なくとも片面の表面に有する樹脂フィルムである。なお、上述したように、樹脂層A以外のフィルムの樹脂は、樹脂層Aと同じ樹脂あるいは樹脂層Aの樹脂とは異なる熱可塑性ポリエステル樹脂である。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂の成分は、酸成分として各種の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が、グリコール成分として各種の脂肪族ジオール、芳香族ジオールが任意に共重合されたものが用いられる。
酸成分としては、具体的には、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタル酸、ダイマー酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカジオン酸、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが用いられる。特に、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を主成分としたものが、機械的物性とフレーバー性等のバランスの点から好適である。
グリコール成分としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、trans-1,4-シクロヘキサンジメタノール、cis-1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類、p-キシレングリコール、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、水添ビスフェノールAなどが用いられる。特に、エチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオールを主成分としたものが、機械的物性とフレーバー性等のバランスの点から好適である。
すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールが主成分のもの、および/またはテレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールが主成分のもの、および/またはテレフタル酸とエチレングリコールおよび1,4-ブタンジオール、および/またはテレフタル酸とエチレングリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールを主成分とするものが、混合樹脂状態での機械的物性とフレーバー性のバランスの点から特に適する。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを主たる基本骨格としたポリエステル樹脂が好適である。ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを主たる基本骨格としたポリエステル樹脂とは、ポリエステル樹脂骨格中のエチレングリコールとテレフタル酸のみを構成単位とする部分および/またはエチレングリコールとテレフタル酸とイソフタル酸を構成単位とする部分の合計が90質量%以上を占めているもので、その他の部位で、酸成分が各種の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を任意に共重合しても良い。
本発明に使用するポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50〜120℃であることが好ましい。より好ましくは60〜100℃である。ガラス転移温度が50℃未満の場合は、ポリエステル樹脂の耐熱性が劣るため加工時の温度上昇で傷等が入りやすくなり、一方、ガラス転移温度が120℃を超える場合には逆に加工性に劣ることがある。また、低温結晶化温度(Tc)については、通常130〜210℃、好ましくは140〜200℃であり、融点(Tm)は、通常210〜265℃、好ましくは220〜260℃である。低温結晶化温度が130℃未満では、結晶化が起こりやすいためレトルト殺菌処理(120℃程度の高温高湿処理のことで、以後「レトルト処理」と呼ぶ。)時等に結晶化が起こりフィルムにクラックが入ったり剥離が生じやすくなる。一方、低温結晶化温度が210℃を超えるものはポリエステル樹脂の加工性、耐衝撃性等の機械的強度に劣ることがある。融点が210℃未満では加工時の熱で樹脂が劣化し、クラックやピンホールの発生が起こりやすくなる。一方、融点が265℃を超えるものは加工時の乾燥、印刷焼付等の加熱処理によって結晶化が進行し、やはりクラックやピンホールの発生が起こりやすくなる。上記ガラス転移温度、低温結晶化温度、結晶融解温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分の条件で、昇温時の吸熱ピーク温度を測定した値である。
本発明では、ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分において、全テレフタル酸量と全イソフタル酸量の割合がモル比率で97:3〜85:15が好ましい。本発明における混合樹脂においては、樹脂中の変性ポリオレフィンがポリエステル樹脂の結晶化を妨げ、加工や加熱等による密着性や耐食性の低下が起こりにくくなるため、変性ポリオレフィン樹脂を含有しない場合に比べて最適な比率はテレフタル酸リッチ側に広がり、イソフタル酸を全く含まないホモエチレンテレフタレート樹脂をポリエステル樹脂として使用することが可能である。さらに、イソフタル酸比率が3モル%共重合化されれば加工、加熱後の密着性が飛躍的に向上する。全テレフタル酸量と全イソフタル酸量の割合が85:15よりイソフタル酸が多くなると融点が低下し、加工時の耐熱性が劣る場合がある。また、特にレトルト処理を行う用途には、熱可塑性ポリエステル樹脂を構成する主たるモノマー成分において、ジカルボン酸がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールと1,4-ブタンジオールで、両者の割合(ジオール成分において、エチレングリコール量と1,4-ブタンジオール量の割合)がモル比率で20:80〜80:20と規定したものが適当である。60:40〜30:70の範囲が最も適当である。前記のようなポリオレフィン樹脂を含むポリエステル樹脂においては、樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂の結晶化を妨げるために、特にレトルト処理において、ポリエステル樹脂の強度が不足し凝集破壊が起きやすくなるという問題があった。このような問題に対し、特に結晶化速度の速いポリブチレンテレフタレートをポリエチレンテレフタレートに所定の割合で混合することによりポリエステル樹脂の結晶化が速まり、レトルト処理においても凝集破壊が生じにくくなる。このような効果は、特に樹脂フィルムをラミネートした蓋材において、レトルト処理時に樹脂フィルム中に浸入した水蒸気が樹脂フィルムを凝集破壊して白濁させるという現象の防止において顕著で、前記組成のポリエステル樹脂を使用することによりそのような問題点が解決できる。ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの割合がモル比率で80:20よりポリエチレンテレフタレート量が多いと結晶化速度が十分に速まらず上述の効果は期待できない。一方、20:80よりポリブチレンテレフタレート量が多いと融点が低く耐熱性に劣る。
ポリエステル樹脂中に混合されるカルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂は、耐衝撃性を向上させるとともに、加工性、耐熱性等その他の諸特性に悪影響を与えないようにするため、その粒子径が等価球換算計で0.1〜5μmの粒子状態で存在させる必要がある。ここで、少なくとも全変性ポリオレフィン樹脂中の質量比率で30%以上のものが等価球換算径で0.1〜5μmの粒子径を有していることが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂中に分散させると、粒子径が0.1μm以下の非常に細かい粒子から5μmを超える大きな粒子まで幅広い粒子分布が生じるが、粒子径が0.1μm未満の粒子は混合樹脂の物性に何ら影響を及ぼさないし、粒子径が5μmを超える粒子は混合樹脂の加工性等の物性を改善しない、あるいはむしろ低下させる。物性の低下を抑制するという観点からは、粒子径が5μmを超える粒子の質量比率は1%以下にすることが好ましい。ここで、樹脂フィルム中に分散する変性ポリオレフィン樹脂の粒子径は、アルカリ性の水溶液で表層のポリエステル樹脂をエッチングして変性ポリオレフィン粒子を残し、その長径及び短径を一つ一つ測定し、粒子径(等価球換算)を算出し、その体積比率、1辺10μm中のフィルム中の粒子数を求めた。
こうした変性ポリオレフィン樹脂の全樹脂中の質量比率は3〜30質量%の範囲であることが必要である。変性ポリオレフィン樹脂の質量比率が3質量%未満では耐衝撃性が十分に向上せず、30質量%を超えると加工性や耐熱性等が低下する。
変性ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度は0℃以下が望ましい。より好ましくは-30℃以下である。ガラス転移温度が0℃を超えると耐衝撃性、特に低温の耐衝撃性に劣る。また、変性ポリオレフィン樹脂の室温でのヤング率が250MPa以下、破断伸びが200%以上であることが望ましい。より望ましくはヤング率が100MPa以下、破断伸びが500%以上である。変性ポリオレフィン樹脂の分子量は特に限定しないが、数平均分子量で2×103以上1×106以下が好ましい。2×103未満や1×106を超えると機械的物性に劣り、耐衝撃性が低下したり、加工しにくくなる場合がある。
カルボン酸から誘導される官能基はカルボン酸換算の質量比率で2〜20質量%、より好ましくは3〜12質量%含有される必要がある。この含有量の範囲においてポリエステル樹脂との親和性やポリエステル樹脂中の分散性が最大に高まる。変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂と強い親和性を持つほど衝撃時において異樹脂間の破壊に対する緩和効果が高まり、耐衝撃性が高くなる。また、加工時の変性ポリエステル粒同士の凝集が抑制され、加工条件による性能のばらつきが減少する。このような効果は、官能基のカルボン酸換算の質量比率が2質量%以上で得られ、20質量%を超えるとポリエステル樹脂との親和性が逆に低下し、耐衝撃性が劣る。
本発明では、粒子径0.1〜5μmの粒子状態で混合樹脂中に存在する変性ポリオレフィン樹脂の量が混合樹脂中の体積分率で3〜25vol.%の範囲にあることが好ましい。体積分率が3vol.%未満では耐衝撃性が十分に向上せず、25vol.%を超えると加工性等の性能を低下させる。さらに、混合樹脂中の体積1000μm3当りの粒子径0.1〜5μmの粒子状態で存在する変性ポリオレフィン樹脂の数は5〜105個の範囲が好ましい。より好ましくは50〜104個である。5個未満では耐衝撃性が十分に向上せず、105個を超えると加工性等の性能が低下する。
本発明のフィルムの厚さは5〜50μmであることが好ましい。より好ましくは10~30μmである。厚さが5μm以上になると耐衝撃性、加工性により優れるが、50μmを超えるとコストが上昇し、耐衝撃性や加工性の向上効果が飽和する。なお、樹脂層Aの厚さも5〜50μmであることが好ましい。
以下に、変性ポリオレフィン樹脂の製造方法を述べる。カルボン酸から誘導される官能基としては、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸イオンの金属塩等があり、これらの官能基を含むモノマーをポリオレフィン樹脂中に共重合、グラフト重合、またはブロック重合することにより、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂が得られる。
カルボン酸から誘導される官能基を含むモノマーとしては、具体的に、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル等の炭素数3〜8の不飽和カルボン酸、およびそれらの酸の全体または一部がナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の1〜2価の金属陽イオンで中和された金属塩が挙げられる。この中和度は20〜80%が好ましく、30〜70%がより好ましいが、このような中和度の変性ポリオレフィン樹脂から形成される組成物は溶融押出性に優れている。
カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、マレイン酸モノメチルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、アクリルアミン、アクリルアミド等が挙げられる。
これらのカルボン酸誘導官能基含有モノマーを、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、イソブテン、イソブチレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル等のカルボン酸誘導官能基非含有オレフィンモノマーと共重合させるか、ブロック重合またはグラフト重合させることにより、カルボン酸誘導官能基含有変性ポリオレフィン樹脂が得られる。この中でも、特にカルボン酸基がポリオレフィン樹脂中にグラフト重合または共重合されたものが高い性能を示す。このような変性ポリオレフィン樹脂としては、市販の樹脂も使用可能である。例えば、モディパーA(日本油脂(株)社製)、ニュクレル(三井デュポンポリケミカル(株)社製)、ボンダイン(住友化学工業(株)社製)、アドマー(三井化学(株)社製)、タフテック(旭化成(株)社製)等が挙げられる。
また、それらのカルボン酸が一部金属塩で中和されたものも使用可能である。このような樹脂では、加工性がやや低下するが、より高い耐衝撃性が得られる。市販の樹脂としては、ハイミラン(三井デュポンポリケミカル(株)社製)等が挙げられる。さらに、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂中に溶融分散させる時に酸化亜鉛や水酸化カルシウム等を添加すると、変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基がそれらの金属イオンで中和され、カルボン酸が一部金属塩で中和されたカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂中に分散する構造のものが得られる。
変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂中に分散させることにより原料となる樹脂が得られる。分散の方法としては、例えば、2つの樹脂を溶融して混合し、1相になる温度に保った後に2相に分離する温度まで冷却して相分離を利用してポリエステル樹脂相中に変性ポリオレフィン樹脂相を分散させる方法や、2つの樹脂を共通の溶媒に溶解させた後溶媒を蒸発させる方法、あらかじめ1次粒径を1μm以下に微細化した変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂中で凝集しない温度で溶融させて分散させる方法、あらかじめ1次粒径を1μm以下に微細化した変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂構成モノマーを含む溶液中においてモノマーを重合させポリエステル樹脂を製造するとともに変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル中に分散した状態にする方法、さらに2つの樹脂を溶融混合して機械的なせん断力で変性ポリオレフィン樹脂を微細化する方法等が挙げられる。
混合、溶融する装置としては、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、V形ブレンダーなどの混合装置や、1軸または2軸の押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混合装置が使用できる。その際、混合装置の温度管理や温度変化等の温度制御を通常の混合方法に比べ厳しくしたり、混合時間を通常の混合時間に比べて例えば3〜10倍程度長くしたり、混合時の機械的なせん断速度を通常の速度に比べて例えば2〜5倍程度速くしたり、あるいはそれらを組み合わせて、例えばタンブラーブレンダーで機械的に混合した後に押出機で溶融混合することにより、熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂を分散させた混合樹脂が得られる。押出機で溶融混合することで得られた分散性の高い混合樹脂をフィルムに加工することで、より変性ポリオレフィン樹脂の粒径が揃った耐衝撃性等の性能に優れる樹脂フィルムが得られる。このような粒径が揃い、分散性の高い混合樹脂を押出し機で溶融してフィルムに加工することで、フィルムに加工しながら変性ポリオレフィン樹脂を分散させるよりも、はるかに粒状樹脂の粒径分布が狭まり、各種性能に優れたフィルムが得られる。
滑り性、成形加工性、耐衝撃性等の向上に効果がある無機粒子としては、乾式法および湿式法で製造されたシリカ、多孔質シリカ、コロイド状シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、スピネル、酸化鉄、リン酸カルシウム等が挙げられる。また、有機粒子あるいは有機高分子粒子としては、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、スチレン-アクリル系架橋粒子、アクリル系架橋粒子、スチレン-メタクリル酸系樹脂架橋粒子、メタクリル酸樹脂系架橋粒子などのビニル樹脂系粒子や、シリコーン、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニルエステル、フェノール樹脂等を構成成分とする有機高分子粒子が挙げられる。これら粒子の含有量は特に限定しないが、性能を最大限に発揮するためにはその粒子径を0.01〜5μmの範囲にすることが好ましい。より好ましくは0.1〜2.5μmの範囲にする。また、それらの粒径分布は鋭く、標準偏差で0.5以下が好ましい。さらに、粒子の形状は真球に近いものが望ましく、長径/短径の比が1.0〜1.2であることが望ましい。
過酷な成形に対応するため、樹脂フィルムの機械的物性としては、破断伸びが20%以上、好ましくは50%以上であり、破断強度が20N/mm2以上であることが望ましい。ここで、樹脂フィルムの破断伸び、破断強度は、通常の引張試験機を用い、5mm×60mmの樹脂層をチャック間距離30mmにセットし、25℃の一定温度下で引張速度20mm/分で引張試験を行い求めることができる。低温での引張特性は、0〜5℃の一定温度下で同様の引張試験を行うことにより求めることができる。試験のための樹脂サンプルは、樹脂フィルム、ラミネート金属板または加工後の容器いずれから採取しても良い。
こうした樹脂フィルムは、通常のポリエステル樹脂に比べると、下地金属との密着性に優れ、高い加工性、優れた耐衝撃性、通常使用するのに十分なフレーバー性を有しているので、金属板ラミネート用熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムとして好適である。
ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを主たる基本骨格としたポリエステル樹脂とは、ポリエステル樹脂骨格中のエチレングリコールとテレフタル酸のみを構成単位とする部分および/またはエチレングリコールとテレフタル酸とイソフタル酸を構成単位とする部分の合計が90質量%以上を占めているもので、その他の部位で、酸成分が、各種の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を任意に共重合しても良い。
上記のように、上層の混合樹脂層、すなわち樹脂層Aは柔軟で優れた性能を有しているが、熱履歴や衝撃により樹脂層中に亀裂発生やその伝播が著しく耐食性等の性能が不十分な場合には、その下層に(すなわち、金属板側に)、例えば、1層以上のポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を設けることが好ましい。また、高密着性が必要な場合、金属板に接する下層にカルボン酸を含有する変性オレフィン樹脂を設けることが好ましい。
この場合、混合樹脂層(上層)と熱可塑性樹脂層(下層)を合わせた複層の樹脂フィルムの合計の厚さは5~50μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは10~30μmである。厚さが5μm以上になると耐衝撃性、加工性に優れるが、50μmを超えると樹脂フィルムのコストが上昇し、耐衝撃性や加工性の向上効果が飽和する。
さらに、下層樹脂層と上層樹脂層の厚さ比(下層)/(上層)=1/2〜1/15にすると、加工性、耐衝撃性等の機械的物性を著しく向上できる。この厚さ比を1/5〜1/10にすることがより好適である。上層がこれより厚いと機械的物性が非常に劣り、下層がこれより薄いと製造時に長手方向や幅方向で均一な厚さ比が得られず、性能にバラツキが生じる。
例えば、下層にポリエステル樹脂を設ける場合、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は30〜100℃が好ましい。より好ましくは50〜80℃である。ガラス転移温度が30℃未満の場合は、ポリエステル樹脂の耐熱性が劣り加工時の温度上昇で傷等が入りやすくなり、100℃を超えると逆に加工性に劣る。また、低温結晶化温度(Tc)については、通常70〜210℃であるが、好ましくは80〜200℃であり、融点(Tm)は、通常210〜265℃であるが、好ましくは220〜260℃である。低温結晶化温度が70℃未満では結晶化が起こりやすくなるためレトルト処理時等に樹脂フィルムにクラックが入ったり、剥離が生じやすくなり、210℃を超えるとポリエステルの機械的強度が劣る。融点が210℃未満では加工時の熱で樹脂が劣化し、クラックやピンホールの発生が起こりやすくなり、265℃を超えると加工時の乾燥、印刷焼付等の加熱処理によって結晶化が進行し、クラックやピンホールが発生しやすくなる。なお、ガラス転移温度、低温結晶化温度、結晶融解温度は、上記した方法で測定した値である。
上層樹脂層と、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを主たる基本骨格とした下層のポリエステル樹脂層を積層させた樹脂フィルムは、通常の複層樹脂の押出し法により得ることができる。すなわち、2つの押出し機を用いて、異なる押出し機に、上層の原料樹脂として、本発明である熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂と、下層の原料樹脂として、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを主たる基本骨格としたポリエステル樹脂をそれぞれ挿入し、溶融してフィードブロック法やマルチマニュホールド法により1つのTダイから積層状態で押出し、冷却ロール等で冷却して複層樹脂フィルムとした後に金属板上にラミネートする方法で、あるいは直接金属板上に溶融樹脂を押出した後に冷却ロールで挟み込んでラミネートする直接ラミネート法によりラミネート金属板が製造可能である。Tダイの方式としては、複数の樹脂の溶融温度を詳細に制御できるマルチマニュホールド法で製造するのが特に好ましい。
ラミネート金属板を製造する方法については、ポリエステル樹脂の融点-70℃〜融点+30℃の範囲に加熱した金属板に、樹脂フィルムを回転するロールを用いて押し付けてラミネートする方法が好ましい。ポリエステル樹脂の融点-70℃未満では、金属板との密着力が十分でなく、ポリエステル樹脂の融点+30℃を超えると樹脂フィルムがラミネートロールに融着してしまうためである。本発明の樹脂フィルムは、加工性や加熱後の密着性に優れるため、フィルムラミネートにおける製造条件の最適範囲が現行の樹脂の場合よりも大きく広がり、製造管理や品質管理における省力化や安定化が可能となる。
ラミネートする樹脂フィルムについては、延伸配向した樹脂フィルム、無延伸の樹脂フィルム、いずれも使用可能である。特に、延伸樹脂フィルムを使用する場合は、前述したようにその配向度を熱ラミネート時の温度制御により目標の値に制御する必要がある。
本発明の樹脂フィルムにより、従来のポリエステル樹脂では不可能であった押出しラミネート法によるラミネート金属板が製造が可能になったのは、本発明の樹脂フィルムが実質無配向状態でも十分な性能が得られるためである。
本発明の効果を妨げない範囲で、プライマー層を金属板との密着層として設けても良い。本発明のラミネート金属板は、樹脂層と金属板の1次密着性、加工後密着性とも優れたものであるが、より厳しい腐食環境、あるいはより優れた密着性が要求される環境下では、プライマー層を設けて、要求に応じた特性を付与できる。例えば、金属缶として使用する場合、より腐食性の強い内容物を充填すると、樹脂層を通して内容物が金属板との界面に侵入し、金属板を腐食させ、樹脂フィルムとの密着性を劣化させる可能性がある。このような場合、適切なプライマー層を設けることにより樹脂層の剥離を防止できる。
本発明の金属板ラミネート用熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムは、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶の内面被覆樹脂フィルムに好適である。また、本発明の樹脂フィルムは、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底にも好適である。本発明の樹脂フィルムを被覆したラミネート金属板は、加工性、耐衝撃性、密着性に優れるので、材料の板厚減少が進み、過酷な加工を強いられる薄肉深絞り缶に対しても好適である。
また、本発明の樹脂フィルムを被覆したラミネート金属板では、レトルト処理時に樹脂フィルムの白濁が起こらないので、樹脂フィルムの白濁防止の要求の強い缶蓋や缶底部、例えばツーピース缶の蓋部材、あるいはスリーピース缶の蓋部材、缶胴部材に好適である。
次ぎに内容物の取り出し性について詳述する。上述した本発明のポリエステルを主成分とする樹脂フィルムでは、内容物の取り出し性を向上させるために、容器として用いられたとき内容物と接する樹脂フィルム表面の水に対する界面自由エネルギーを20mN/m以下にする必要がある。これにより、ランチョンミートやスパムなどの内容物に対しても、優れた取り出し性が得られる。この現象の詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように考えられる。すなわち、樹脂フィルム表面の水に対する界面自由エネルギーを20mN/m以下に制御することで、ランチョンミートなどの水分を多く含む内容物はもちろんのこと、他の内容物(魚肉、野菜など)についても、樹脂フィルムと内容物との界面に水の薄膜を形成することができる。この水の薄膜が、内容物由来のタンパク質や細胞の吸着を抑止するように働くため、樹脂フィルム表面への内容物付着を抑制する。水の薄膜の形成能は、樹脂フィルム表面の水との界面自由エネルギーと逆相関にあり、エネルギー値の低下に伴い、取り出し性は良好となる。より優れた内容物取り出し性を得るためには、水に対する界面自由エネルギーを10mN/m以下とすることが好ましく、5mN/m以下であればより好ましい。なお、界面自由エネルギーが1mN/m以下になると、素材表面での膨潤が激しくなり、変形が大きくなることが懸念される。
本発明で規定する樹脂フィルム表面の水に対する界面自由エネルギーは、レトルト処理後も維持されていなければならない。内容物中のタンパク質は、レトルト処理で加熱され、熱変性する。熱変性したタンパク質は、その高次構造が崩れるため、未変性状態では分子鎖の内部に存在していた親水基や疎水基が、その立体配置を変化させる。疎水基は、互いに疎水結合することで凝集・沈殿するように働き(疎水性の部分が水と接触することはエネルギー的に不利なので、タンパク質同士が凝集して疎水性の部分を水から遮断しようとする、すなわち変性タンパク質は凝集して沈殿する。)、親水基はタンパク質の表面に多く分布することになる。このため、熱変性後のタンパク質は、ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム表面に対し、より付着しやすくなる。よって、ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム表面は、レトルト処理後も、内容物との界面に水の薄膜を維持している必要がある。このとき、樹脂フィルム表面は水に溶け難い化学組成であることが望ましい。例えば、樹脂フィルム表面にセルロースなどの親水性樹脂層をそのまま配置した場合、樹脂フィルム表面の水に対する界面自由エネルギーは本発明の規定する範囲を確保できるものの、樹脂自体が水(内容物由来)に溶解してしまうため、内容物中に移行してフレーバー性を損なわせたり、樹脂フィルムの被覆性が不十分となり耐食性が劣化してしまう懸念がある。同様に、樹脂フィルム表面の親水基も、樹脂フィルム表面に固定されて、脱離し難い状態であることが望ましい。
一方、レトルト処理前に、樹脂フィルム表面の水に対する界面自由エネルギーが20mN/m以上であっても、レトルト処理過程で、表面が改質され界面自由エネルギーが本発明範囲になれば、優れた内容物取り出し性が得られる。タンパク質が熱変性する前に、界面自由エネルギーが20mN/m以下に調整されていれば、内容物との界面に水の薄膜が形成され、タンパク質の吸着抑制層として機能するためである。
次に、ポリエステルを主成分とする樹脂フィルムの水に対する界面自由エネルギーを20mN/m以下にする方法としては、樹脂フィルム表面に、-SO3H、-SO3M、-OSO3M、-COOM、-COOH、-CO、-CN、-OH、-NHCONH2基などの親水基を存在させることが好適である。そのための具体的な手段としては、1)親水性ポリマー等のグラフト化処理やカップリング反応処理などによって、樹脂フィルム表面を修飾する技術、2)化学的処理によって、水酸基などの官能基を樹脂フィルム表面に導入する技術、3)プラズマ処理、紫外線照射処理によって、水酸基などの官能基を樹脂フィルム表面に導入する技術、4)樹脂フィルム内へ、界面活性剤や親水性樹脂などを添加する技術、5)樹脂フィルム表面を、親水性ポリマー等でコーティングする技術、などが挙げられる。
1)の技術に用いることのできる親水性ポリマーとしては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシメチルメタクリレート、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース)、アミロース、アルギン酸など、あるいはこれらの共重合体および誘導体が挙げられる。また、アルブミンなどの親水性の生体内物質を固定化してもよい。ポリエチレンオキシドを用いることが特に望ましい。
グラフト化処理の方式としては、気相光照射グラフト化処理、液相同時グラフト化処理、などが好適である。また、カップリング反応を利用する技術としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリルパーオキシド溶液に浸漬させて、これらの層を形成させる処理が挙げられる。特に、シラン系カップリング剤の使用が好ましく、ビニルトリクロルシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの使用により表面の水に対する界面自由エネルギーを20mN/m以下に制御できる。
2)の技術としては、例えば、水酸化ナトリウム中に浸漬させる方法が挙げられる。ポリエステル樹脂表面の加水分解反応により、極性基を生成させることができる。しかし、水との界面自由エネルギーを20mN/m以下とするためには長時間の浸漬が必要であり、樹脂表面が劣化してしまう可能性が高いので、注意が必要である。
3)の技術としては、例えば、電子密度が比較的低い(10-2〜10mmHg)低圧ガス下でおこるグロー放電プラズマ(低温プラズマ)処理が挙げられる。活性粒子のエネルギーが高く、寿命も長いことから、ポリエステル樹脂フィルムの性質を損なわずに、表面とその近傍の深さ数1000Åの表面層のみを変化させることができる。水に対する界面自由エネルギーは、雰囲気のガス成分を変えることにより調整できる。酸素、窒素、ヘリウムプラズマ処理により、樹脂フィルム表面の水に対する界面自由エネルギーを20mN/m以下に制御できる。特に、酸素プラズマ処理が好適であり、例えば、無線周波数電磁場によってエネルギーを与えられる空気または過酸素雰囲気で満たされた閉鎖室でプラズマ処理する技術を用いることができる。また、紫外線照射処理では、照射出力を適正化することにより、水に対する界面自由エネルギーを制御できる。例えば、出力170W(ランプ電流0.6A、電圧280V)の低圧水銀灯を光源として使用し、照射時間を制御することによって水に対する界面自由エネルギーを20mN/m以下に制御できる。
4)の技術としては、親水基と疎水基をもつ界面活性剤を樹脂フィルム中に添加する方法が挙げられる。これが表面に拡散し、親水基を空気の方に向けて配列する。その結果、表面が親水化され、水に対する界面自由エネルギーを制御できる。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のうちから選ばれた少なくとも1つを含むことが望ましい。例えば、脂肪族カルボン酸化合物と脂肪族アルコール化合物とのエステル化合物や、ショ糖脂肪酸エステル系、グリセリン脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、プロピレングリコール脂肪酸エステル系およびこれらのエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系を用いることができる。特に、界面活性剤を構成する総炭素数が10〜120の脂肪族エステル化合物が、ポリエステルの相溶性の観点から好ましい。また、親水性樹脂を樹脂フィルム中に少量添加する処理も好適である。ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)などを添加する技術が挙げられるが、水溶性であるため、樹脂フィルム表面に固定化させる技術の併用が必須である。
5)の技術としては、高い親水性を有する高分子などをコーティングする方法が挙げられる。高い親水性を有する高分子としては、カルボキシル基、水酸基などの親水基を有する高分子であれば特に限定しないが、ポリメタクリル酸、(メタ)メタクリル酸-アルキルメタアクリレート共重合体、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート(例えばポリヒドロキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシアルキルメタクリレート-アルキルメタクリレート共重合体、ポリオキシアルキレン基含有メタクリレート重合体またはこれを含む共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、リン脂質・高分子複合体などが挙げられる。特に、リン脂質共重合体を樹脂表面に修飾する技術が好適であり、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホルコリン(MPC)とメタクリル酸の共重合体を樹脂表面に修飾する技術、あるいはエラストマーやジエン系合成ゴムを用いてリン脂質をコーティングする技術が好ましい。
無機高分子としては、ポリシロキサンなどが好適である。フィルム表面にシロキサン結合からなる薄膜を形成させ、これが内容物中に含まれる水分と水和しシラノール基を生成することで、表面が親水化し水に対する界面自由エネルギーを20mN/m以下に制御することができる。
上記1)〜5)の技術の中から、容器用ラミネート金属板に要求される各種特性および工業性(生産性や経済性)などを考慮して、最適な技術を選択する。4)の技術は、例えば、ポリエステル樹脂中に特定の添加剤を微量に導入することで達成されるため、低コストで生産性を阻害する可能性が小さく、また性能面においてもポリエステル樹脂とほぼ同等のレベルを確保することが容易であるため、好適である。
さらに、本発明であるポリエステルを主成分とする樹脂フィルムに着色顔料を添加することで、下地の金属板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。また、隠蔽性を完全とせず下地の金属光沢を利用した光輝色の付与も可能であり、優れた意匠性を与えることができる。樹脂フィルム表面への印刷と異なり、樹脂内に直接顔料を添加して着色しているため、容器加工工程においても色調が脱落する問題もなく、良好な外観を保持できる。
添加する顔料としては、容器加工後に優れた意匠性を発揮するという観点から、二酸化チタンなどの無機系顔料や有機系顔料が使用できる。これらは着色力が強く、展延性にも富むため、容器加工後も良好な意匠性が確保されるので好適である。特に、本発明である容器として用いられるとき内容物と接する側に来る樹脂フィルムには、二酸化チタンが望ましい。容器開封後、内容物の色が映えると共に、清潔感を付与できるためである。なお、これら顔料は、着色力や展延性に富み、FDAに認可された安全衛生物質であるため、より好ましい。
本発明である樹脂フィルムが2層以上の複層構造である場合、顔料はそのうちの少なくとも1つの層に添加されていればよい。
なお、顔料の添加量については特に規定しないが、一般的に、樹脂フィルムに対して質量比で30%以上含有させると、隠蔽性については飽和するとともに経済的にも不利となる。ここで、顔料の添加量は、顔料を添加した樹脂層(下層に添加した場合は下層)に対する割合である。
次に、本発明の樹脂フィルムを金属板にラミネートしてラミネート金属板を製造する方法について説明する。前述のように、押出した樹脂を直接金属板にラミネートする製造法を適用できるが、一般にはラミネート装置により製造される。本発明では、例えば、金属板をフィルムの融点を超える温度に加熱し、その両面に樹脂フィルムを圧着ロール(以後、ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いことができる。
金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができ、特に下層に金属クロム、上層にクロム水酸化物からなる2層皮膜を形成させた表面処理鋼板(いわゆるTFS)等が最適である。TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量についても、特に限定しないが、加工後の密着性や耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m2、クロム水酸化物層は10〜30mg/m2とすることが望ましい。
本発明であるラミネート金属板の製造方法では、樹脂をフィルムに成形して、金属板に樹脂層Aが表面となるように被覆することを原則としているが、樹脂層Aの規定が本発明の範囲内であれば、樹脂フィルムに成形せずに、樹脂を溶融し、金属板表面に樹脂層Aが表面となるように被覆する溶融押出しラミネーション法を適用することも可能である。