JP4858934B2 - 還元処理用ダスト成型物 - Google Patents
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Description
例えば、特開2003−3217号公報には、還元焙焼中のダストに水分を添加することによって、ダストから効率的に塩素および弗素を分離する方法が開示されている。
しかし、この特開2003−3217号公報の方法では水分を添加することにより炉内温度が低下して、還元炉の生産性の悪化および燃料使用量の増加は避けられず、 回転床炉での塩素、弗素を含む鉄鋼ダストの処理方法として有効ではなかった。
(1)製鉄プロセスで発生する二種類以上の製鉄ダストを混合した酸化鉄系原料を炭材等と混合して成型し、回転床炉において加熱還元処理を行う還元処理用ダスト成型物であって、前記酸化鉄系原料の組成が下記( A ) 式を満足し、かつ、ダスト成型時の気孔率が3 0 %以下であることを特徴とする還元処理用ダスト成型物。
原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度≧10・・・(A)
(2)前記酸化鉄系原料の組成が下記(B)式を満足し、かつ、ダスト成型時の気孔率が30%以下であることを特徴とする(1)に記載の還元処理用ダスト成型物。
原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度≧20・・・(B)
(3)前記ダスト成型時の気孔率が下記(C)式を満足することを特徴とする(2)に記載の還元処理用ダスト成型物。
1/(原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度)
+0.019×(ダスト成型時の気孔率)<0.71・・・(C)
(4)(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の還元処理用ダスト成型物を使用して、回転床炉にて加熱還元することを特徴とする還元鉄製造方法。
図1は、本発明におけるダスト成型物の還元前の断面写真であり、図2はその還元後の断面写真である。
製鉄プロセスで発生する製鉄ダストなどの酸化鉄系原料を炭材(約10%)等と混合して成型し、回転床炉において加熱還元処理を行う還元処理用ダスト成型物は、図2の断面写真のように還元過程でダスト原料中の鉄粒子同士がネットワークを組むことにより、強度が向上する。
ここに、製鉄ダストとしては、高炉製銑工程・転炉製鋼工程・電気炉製鋼工程などでの発生ダスト、圧延工程での発生 スケール、メッキ工程で発生するスラッジ類が挙げられる。
一方で、Cl, F, Zn, Na, K, Pb (以下揮発物質) を多量に含むダスト類を原料として用いた場合、加熱、還元過程においてこれらの物質が揮発(酸化物として存在する揮発物質は、回転床炉内で還元されると同時に揮発)するため、還元物の気孔率が高くなり、また鉄粒子同士のネットワークもできにくい。
その結果、還元物の強度が低くなり、回転床炉から排出スクリューにより払い出される過程において崩壊し、歩留まりの低下、操業上の問題(岩盤炉床成長、排ガス吸引ダクト閉塞)を引き起こす要因となる。
ここに、
原料中の鉄濃度(T.Fe):還元前のダスト成型物中の合計Fe濃度(質量%)、
揮発物質濃度:還元前のCl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度(質量%)を示す。
図3に示すように、揮発物質濃度が高いダスト成型物の還元後試料は非常に多孔質となり、鉄粒子同士のネットワークも弱く、強度は低い。
図4に示すように、揮発物質が少ないため、還元後試料は緻密であり鉄粒子同士がネットワークを組みやすく、強度は高い。
回転床炉払い出し部での崩壊を抑制するためには、還元物強度を確保する必要がある。還元物強度確保のためには、ダスト原料中の揮発物質の濃度と鉄濃度(T,Fe)のバランス及び造粒物の気孔率が重要となる。
そこで、本発明においては、ダスト成型物を形成する酸化鉄系原料の組成が下記(A)式を満足し、かつ、ダスト成型時の気孔率が30%以下であることを特徴とする。
原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度≧10・・・(A)
さらに、下記(B)式を満足することが好ましい。
原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度≧20・・・(B)
ここに、
原料中の鉄濃度(T.Fe):還元前のダスト成型物中の合計Fe濃度(質量%)、
揮発物質濃度:還元前のCl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度(質量%)を示す。
また、ダスト成型時の気孔率とは、
気孔率 (%)= (ダスト真比重-ダスト成型時嵩比重) × 100 / ダスト真比重を示す。
図5は、T.Fe/揮発物質濃度と還元後試料強度との関係を示す図である。
T.Fe/揮発物質濃度 < 10の場合は、揮発物質を多量に含むため、還元後試料は非常にポーラスとなり、鉄粒子同士もネットワークを組みにくいため、還元後試料強度は30kg以下と低い。
10 ≦ T.Fe/揮発物質濃度 < 20の場合は、揮発物質が少なくなり、鉄粒子同士が比較的ネットワークを組みやすくなるため、還元後試料の圧壊強度は30kg以上で、回転床炉からの払い出し時の崩壊は抑制される。
T.Fe/揮発物質濃度 ≧ 20の場合は、鉄粒子同士がネットワークを十分に組み、揮発成分も少ないため還元後試料は緻密になり、強度は50kg以上と高く、回転床炉からの払い出し時の崩壊も問題ないレベルであり、もっとも好ましい。
図6は、ダスト成型時気孔率と還元物の圧壊強度の関係を示す図である。
図6において、○印は鉄濃度(T.Fe)/揮発成分濃度>20の場合、△印は鉄濃度(T.Fe)/揮発成分濃度≒10の場合、□印は鉄濃度(T.Fe)/揮発成分濃度≒1の場合をそれぞれ示している。
ここに、ダスト成型時気孔率とは、
気孔率 (%)= (ダスト真比重-ダスト成型時嵩比重) × 100 / ダスト真比重を示す。
ダスト成型物の還元後強度は鉄粒子同士がネットワークを組むことにより向上する。従って還元物の気孔率が高い場合、ネットワークが形成されにくくなり強度は低下する。還元後の気孔率については、ダスト中の揮発成分濃度だけでなく、ダスト成型時の気孔率にも大きく影響を受ける。
仮に上記条件を十分に満足した場合でも、成型時の気孔率が高すぎる場合、還元物は鉄粒子同士のネットワークが十分に形成されず、強度は低下する。
図6に示すように、原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度≧10を満足している場合でも、ダスト成型時の気孔率が30%を超えるレベルになると、還元物の強度は著しく低下することがわかる。
ただし、本発明者らは、気孔率が30%を超えるレベルでも、ある条件を満足すれば還元後試料の圧壊強度は30kg以上で、回転床炉からの払い出し時の崩壊は抑制されることを見出した。
図9に示す様に、還元後試料強度とT.Fe/揮発成分濃度、タ゛スト成型時気孔率を用いた指標
強度ハ゜ラメーター(指標) = 1/(タ゛スト中鉄分濃度/揮発成分濃度) + 0.019×気孔率
(ただし、30<気孔率の範囲)
と圧壊強度の間に以下のような良好な相関関係があることを見いだした。
上記式右辺の第1項は、成分の圧壊強度に対する寄与の項であり、第2項は組織構造の圧壊強度に対する寄与の項であり、気孔率に対し実験的に求めた寄与度(係数)を0.019としている。
つまり、図9より、還元後試料強度>30kgを確保するためには
強度ハ゜ラメータ(指標) < 0.71
を満足することが必要である。
< 岩盤炉床成長抑制効果>
図7は、ダスト処理量に対する岩盤炉床成長量(mm/t-ダスト)を示す図である。
回転床炉によりダスト類を用いて還元鉄を製造する方法において、ダスト還元鉄は、排出スクリューにより回転炉床より払い出される。この過程において、ダスト還元鉄が崩壊し粉が発生、粉と炉床材と反応し、融着物が成長していく「岩盤炉床」と呼ばれる現象が起こり、この現象が継続すると、炉床レベルが上昇するため、操業上問題となる。
図7の右側のグラフに示すように、T.Fe/揮発物質濃度 < 10の場合は、還元物の強度が低く排出過程で多量の粉が発生するため、岩盤炉床成長を助長することになる。
これに対して、図7の左側のグラフに示すように、T.Fe/揮発物質濃度 >20の場合は、還元物の強度が確保されるため岩盤炉床成長が抑制される。
図8は、粒径が1mm未満(-1mm)の粉率(%)を比較する図である。
回転床炉内で発生する排ガス(バーナー燃焼ガス、ダスト還元時発生ガス等)については、炉入り口付近に設けられた排ガス吸引ダクトより排出される。
この回転床炉からダスト還元鉄排出時に排出スクリューにより壊されて発生した粉(特に微粉)の一部は、巻上げられて排ガス吸引ダクトに吸引され、歩留まり低下の要因となる。
図8の右側のグラフに示すように、T.Fe/揮発物質濃度 < 10の場合は、還元鉄の強度が低く排出時に多量に粉が発生するため、歩留まり低下が大きくなる。
これに対して、図8の左側のグラフに示すように、T.Fe/揮発物質濃度 >20の場合は、還元物の強度が確保されるため、排出時の粉発生を抑え、歩留まり低下を抑制することができる。
排ガス吸引ダクトに吸引された飛散ダストは、その一部が酸化鉄系ダストとその他の酸化物系ダストとの間で低融点化合物を形成、ダクト通過過程で温度が下がり、ダクト内壁に付着する。ダクト内壁へのダスト付着量は飛ダスト量に依存する。
従って、図8の左側のグラフに示すように、T.Fe/揮発物質濃度 >20の場合は、還元物の強度を確保し、排出時の排出スクリューによる粉発生を低減することにより、ダクト内壁へのダスト付着を抑制することができる。
Claims (4)
- 製鉄プロセスで発生する二種類以上の製鉄ダストを混合した酸化鉄系原料を炭材等と混合して成型し、回転床炉において加熱還元処理を行う還元処理用ダスト成型物であって、前記酸化鉄系原料の組成が下記( A ) 式を満足し、かつ、ダスト成型時の気孔率が3 0 %以下であることを特徴とする還元処理用ダスト成型物。
原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度≧10・・・(A) - 前記酸化鉄系原料の組成が下記(B)式を満足し、かつ、ダスト成型時の気孔率が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の還元処理用ダスト成型物。
原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度≧20・・・(B) - 前記ダスト成型時の気孔率が下記(C)式を満足することを特徴とする請求項2に記載の還元処理用ダスト成型物。
1/(原料中の鉄濃度 (T.Fe)/Cl、F、Zn、Na、K、Pbの合計濃度)
+0.019×(ダスト成型時の気孔率)<0.71・・・(C) - 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の還元処理用ダスト成型物を使用して、回転床炉にて加熱還元することを特徴とする還元鉄製造方法。
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