JP3732132B2 - 回転炉床式還元炉の操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転炉床式還元炉で、酸化鉄を含む粉から構成される成形体を加熱還元して、強度が高い還元鉄の成形体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
還元鉄や合金鉄を製造する金属還元プロセスとしては各種のものがあるが、この内で、生産性の高いプロセスとして、回転炉床法での操業が実施されている。回転炉床法は、固定した耐火物の天井および側壁の下で、中央部を欠いた円盤状の耐火物の炉床がレールの上を一定速度で回転する型式の焼成炉(以下、回転炉と称す)を主体とするプロセスであり、酸化金属の還元に用いられる。回転炉の炉床直径は10〜50メートルかつ、幅は2〜6メートルである。
【0003】
原料としては、粉状の鉱石や酸化金属ダストなどの酸化金属と還元剤としての炭素を用いる。還元鉄の製造では、ペレットフィード等の微粒の鉄鉱石等が用いられる。還元剤は炭素を用いるが、還元反応の生じる温度である1100℃程度までに、揮発しない炭素分(固定炭素)の比率が高いものが望ましい。この様な炭素源には、粉コークスや無煙炭が良い。
【0004】
原料である酸化金属を含む粉体を炭素を含む粉体と混合する。さらに、この混合物を成形体にして、これを回転炉の炉床上に敷きつめるように供給する。回転炉では、炉床が回転していき、炉床上の成形体は高温の炉内の各部分を移動して、加熱される。この時、成形体内では、炭素により、酸化金属が還元される。回転炉では、成形体が炉床上に静置されていることから、成形体が炉内で崩壊しづらい利点がある。その結果、耐火物上に粉化した原料が付着する問題が無く、また、塊の製品歩留が高いと言った長所がある。また、生産性が高く、安価な石炭系の還元剤や粉原料を使用できる、と言った理由から、近年、実施される例が増加している。
【0005】
さらに、回転炉床法は、高炉、転炉、電気炉から発生する製鉄ダストや圧延工程でのシックナースラジの還元と不純物除去の処理にも有効であり、ダスト処理プロセスとしても使用され、金属資源のリサイクルに有効なプロセスである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、回転炉床法での酸化金属の還元方法は、生産性や製造費用の面で優れており、経済的に金属を製造する方法である。しかしながら、還元をうまく行う以外に、次工程で利用しやすい物理的な条件を満たす必要がある。
【0007】
還元された成形体(還元鉄ペレット)はそのままでは製品とならないため、次工程での最終還元・溶解が必要である。特に、回転炉床法で製造した還元鉄ペレットは、炭素源からの硫黄分が金属鉄に吸収されるため、還元鉄中の硫黄分は0.1〜0.3%となり、そのままでは、鉄鋼製品として使用できない。したがって、最終還元・溶解工程では、脱硫する機能が必要である。製鉄用高炉は、還元・溶解とともに、脱硫機能を持つことから、製鉄用高炉で還元鉄ペレットと他の原料と混合して使用し、銑鉄を製造することは経済的な鉄製造の方法である。
【0008】
ただし、高炉で使用するためには、高強度の還元鉄ペレットを製造することが重要である。理由は以下に示すとおりである。高炉の炉内においては、2000〜8000トンもの大量の鉱石類とコークスが積層されている。その結果、高炉炉内の還元鉄ペレットには、大きな力がかかることから、要求される圧潰強度は5×106 〜6×106N/m2以上と高い。
【0009】
従来の技術においても、例えば、回転炉床法での高強度の還元鉄ペレットの製造方法は、本発明者らが出願した特許である特開2000-34526や特開2000-54034に示されるような方法があった。これらの特許による操業方法は、高強度の還元鉄ペレットの製造に有効なもので、高炉で使用できる還元鉄ペレットの製造には欠かせない技術である。
【0010】
しかしながら、これらの特許に基づく操業においても、原料条件や反応条件の細かい管理がなされていない問題があった。つまり、この技術においても、反応時間の管理が十分でなかった。その結果、場合によっては、十分な強度のない還元鉄ペレットができることもある。また、反応時間の管理が定量的でなく、反応時間が長すぎて、加熱・還元のエネルギー消費が多すぎる問題が生じていた。原料成分の条件や回転炉床法の還元炉の炉内に供給する成形体の大きさ等の条件についても十分な管理がされていない問題もあった。したがって、これらの問題を解決する新しい技術が要望されていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、その要旨とするところは、
(1)ブリケット又は押し出し成形体であって、気孔率が33〜55%であり、トータル鉄の含有比率が40%以上で、かつ、含有されている元素の内、炭素と、鉄、マンガン、ニッケル、亜鉛、および、鉛と化学結合している酸素との原子モル比率が0.5〜1.5の範囲である粉体で構成される成形体を、1200℃以上のガス雰囲気に暴露される時間が下記の式で示される加熱最低時間 :Tbの1.0〜3.0倍の範囲で、炉内ガスの最高温度が1400℃以下の条件で焼成還元することを特徴とする回転炉床式還元炉の操業方法。
Tb = 0.05 exp (7,100/T) + 0.14 Vp1/3
なお、Tb:加熱最低時間(分)、
T:1200℃以上の炉内部分の平均ガス温度(K)、
Vp:成形体の平均容積(立方mm)
(2)体積が100〜14000立方mmの成形体を用いることを特徴とする前記(1)記載の回転炉床式還元炉の操業方法。
(3)混在する酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および、酸化燐の合計質量が全質量の30%以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の回転炉床式還元炉の操業方法。
(4)成形体を回転炉床式還元炉の炉床上に平均層数が2.0以下の状態に積んで、焼成還元することを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の鉄の製造方法、である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、回転炉床式還元炉で、炭素を還元剤として、酸化鉄を固体状態での還元する還元炉で高強度の還元鉄ペレットを製造する技術に関するものである。本発明を実施する回転炉床法の設備の例を図1に示し、これをもとに、本発明の方法および装置を説明する。
【0013】
図1の設備は、原料粉体の成形装置1、成形体乾燥装置2、回転炉床式還元炉3、還元鉄ペレット冷却装置4、還元鉄ペレット篩装置5、および、還元鉄ペレット備蓄ビン6から構成される。また、回転炉床式還元炉3の断面図を図2に示す。固定された耐火物製の天井7と炉壁8の下に、車輪10の上を回転する炉床9が設置してある。炉壁8には、バーナー11が複数設置してあり、火炎12により、炉内の温度と雰囲気をコントロールする。成形装置1で製造された成形体13は、炉床上でガス輻射により、加熱されて、還元反応を起こす。
【0014】
まず、粉鉄鉱石や転炉ガスダストなどの酸化鉄を含む粉体とコークス粉などの炭素を含む粉体を混合する。成形装置1にて、混合された粉体をハンドリングしやすい形状に成形する。成形方法は、圧縮成形するブリケット製造法や押し出し式の成形方法が用いられる。
【0015】
ここで、成形体は還元炉までの搬送に耐えられる強度が必要である。ブリケット製造法や押し出し式の成形方法では、気孔率が30から55%で、緻密でない成形体しかできないため、バインダーや水分の粘着力で強度を高める。
【0016】
酸化鉄と不純物のうち、1200℃前後の温度で、一酸化炭素雰囲気の還元性の高い酸化物は、回転炉床式還元炉3の炉内で炭素によって還元される。炭素とこれらの酸化鉄を含む酸化物の比率は、炭素の原子モル数が、これら酸化物中の酸素(活性酸素)の原子モル数に対する比率を0.5〜1.5とすることが望ましい。理由は以下の通りである。回転炉床法での還元では、酸化金属中の酸素と炭素が一酸化炭素を形成する条件での還元反応が中心である。したがって、炭素と活性酸素の原子モル比率(以降、炭素当量比と称す)は1.0を中心基準として、原料配合する。ただし、雰囲気ガスや温度によっては、一部は二酸化炭素までの反応まで還元に寄与する場合もある。また、炉内の高温の水蒸気や二酸化炭素ガスによる炭素の消費が多い場合もあることから、余剰の炭素が必要な場合もある。つまり、炉内での反応条件によっては、炭素当量比を基準の0.5倍まで減少させたり、1.5倍まで増加させたりする。なお、一般的には、還元鉄を製造するための原料に混合している、活性酸素を有する酸化物は、主に、鉄、マンガン、ニッケル、亜鉛、および、鉛の酸化物である。
【0017】
上記の方法で製造した成形体を回転炉床式還元炉3の炉内で、炉床9上に敷き詰め、焼成還元する。成形体を敷き込む層の数は、2層以下が望ましい。理由は以下の通りである。成形体への熱伝達は、成形体上部のガスからの輻射と炉床9からの接触・輻射伝熱で行われる。したがって、層の数が2層までの場合は、成形体が直接的に受熱できるが、2層以上では中間に入った成形体は、上下の成形体の加熱が進んだ後にしか、加熱されない。したがって、上下の成形体の還元が終了した後も長時間、中間の成形体の還元が終了しない問題がある。
【0018】
還元反応は、1100℃程度で始まり、1200℃を超えた時点から盛んに進行するようになる。したがって、還元帯の炉内ガスは、1200℃以上であることが必要である。ただし、1400℃以上となると、成形体に混在しているスラグ成分や還元された鉄が残留炭素と反応して生成した鉄−炭素化合物が溶融する。成形体の一部が溶融して、周囲の成形体同士で粘着したり、炉床9と融着したりする。この結果、成形体が炉内から排出されなくなる問題があるため、還元温度は、1200〜1400℃の範囲であることが望ましい。また、1400℃以上の場合は、スラグ成分と還元鉄との表面分離が起き、成形体の強度が低下する問題が起きる。
【0019】
本発明者らは、反応が盛んに行われる条件である1200℃以上のガス温度の部分に、成形体が何分間暴露されるかが、還元反応の進行に対して重要な指標であるとして、以降の解析を行った。また、この温度では、ある程度還元反応が進行した時点で、生成した金属鉄の粒子間の焼結が始まるため、この焼結の進行についての解析を行った。
【0020】
還元反応の進行状態は、一般的に温度により異なる。この酸化鉄と炭素のような単純系の無機反応では、反応速度は温度に強く支配されている。一般に、反応速度は、R = A exp(-G/kT) (ここで、Rは反応速度定数、Aは常数、Gは活性化エネルギー、kはガス定数、Tは絶対温度)で示される。また、還元反応の後に起きる金属鉄粉の焼結反応の速度も同様の温度依存性がある。そこで、本発明者らは、回転炉床法の還元帯の炉内温度と1200℃以上のガス温度に暴露される時間の酸化鉄還元率と還元鉄ペレット圧潰強度に対する関係を調査した。
【0021】
本発明者らが行った実験では、還元鉄ペレットを高炉で使用するための強度を確保するためには、還元反応が進行して、金属化率が高くなり、かつ、還元で生成した金属鉄粉の焼結が進行していることが重要な条件であることを解明した。そこで、還元鉄ペレットの強度と還元条件(還元帯の平均ガス温度と1200℃以上のガスに暴露される時間)を中心に解析すると、5×106N/m2以上の圧潰強度を実現するための加熱最低時間(Tc)は、
Tc = A exp (7,100/T) + B Vp1/3 ------ (1)
なお、Tc:加熱最低時間(分)、
T:1200℃以上の炉内部分の平均ガス温度(K)、
Vp:成形体の平均容積(立方mm)
の式で表すことができた。ここで、本発明者らは、この実験の中で、式(1)の右辺の第2項で示されるように、成形体の大きさでも最低加熱時間が変わることも見出した。成形体の形がいろいろあるため、大きさを容積で表現することが望ましく、この式には、成形体の大きさの指標として容積の影響項を入れた。成形体が大きいと内部までの加熱時間がかかることなどの現象があるから、この影響が現れた。
【0023】
また、粒子の充填が粗なもので気孔率が33から55%と大きい成形体は、反応と焼結が遅く、常数A、Bの大きい、下式(3)となる。
Tb = 0.05 exp (7,100/T) + 0.14 Vp1/3 ------ (3)
つまり、上式で表される加熱最低時間を越える場合は、いずれも5×106N/m2以上の還元鉄ペレット圧潰強度が実現できていた。この条件での実験結果の1例を図4に示す。図4の結果は、ガス平均温度1250℃、成形体は径が12mmで、気孔率が47%のものを加熱還元した結果である。ガス温度と成形体サイズから計算されるTb値である6.8分間の線を示す。この実験結果でも、6分間以下の加熱還元時間では、強度が不十分であったが、7分間以上では、還元ペレットの圧潰強度が、5×106N/m2を超えていた。
【0024】
ただし、本発明者らは、成形体の体積が14000立方mm(球に近い形状では25mmのサイズ)を超えると、原料成形体の強度が低下するとともに、還元鉄ペレットの形状が異常となって、強度が低下する現象が時として起きることがあることを、見い出した。大きな成形体の場合は、表面の反応が終了してから、中心部の反応が盛んになる。その結果、表面近くの部分の反応は早期に終了して、すぐに、金属鉄粉間の焼結が始まる。しかし、内部の還元は遅いため、表面が焼結した後も、還元反応が進行する。焼成後半には、内部の還元に伴う一酸化炭素ガスの発生があるが、表面は緻密になっており、ガス抜けが悪く、内部圧力が上昇して、還元鉄ペレットに機械的な欠陥を与える。その結果、還元鉄ペレットの形状が異常となって、強度が低下する。
【0025】
成形体の体積が100立方mm以下(球に近い形状では5mm以下のサイズ)では、成形体が小さすぎて、周りの成形体の影に入り、炉内ガスからの輻射を受けづらい結果、反応が一定の率で進みづらい問題があった。この結果、このサイズ以下の成形体では、還元率と強度が安定しなかった。また、100立方mmの成形体は、還元されると、約30%体積が小さくなる。したがって、例えば、高炉で使用する場合は、還元鉄ペレットの体積は、70立方mm以上であることが望ましい。
【0026】
反応と焼結の時間には、操業条件による変化があり、また、5×106N/m2ではなく、より高強度の還元鉄ペレットを製造する必要がある場合は、加熱最低時間よりも長い時間の焼成が必要な場合もある。なお、加熱最低時間の3倍までは、還元鉄ペレットの圧潰強度が向上していくが、これ以上の長時間の焼成では強度の向上が認められなかった。したがって、原料成形体を1200℃以上で焼成還元する時間は、加熱最低時間の1.0から3.0倍の範囲であることが良い。
【0027】
さらに、本発明者らは、還元鉄ペレットの成分と圧潰強度の関係を調査した。原料の酸化鉄比率が高い場合は、いっそう圧潰強度が高くなることを見出した。この現象の理由としては、1200〜1400℃では、金属鉄は物質移動が速いため、還元鉄ペレット中の金属鉄粉は短時間でも焼結する。このため、金属鉄比率の還元鉄ペレットの緻密化、強度アップが大きい。一方、酸化アルミなどの酸化物は物質移動が遅く、この温度での数分間の加熱では、十分な焼結が進行しない。このため、高金属鉄比率の還元鉄ペレットの強度が高くなり、低金属鉄比率ものは強度が低い。本発明者らは、還元鉄ペレットの金属鉄比率が40%以上の場合には、高炉利用の限界値である、圧潰強度が5×106N/m2以上の還元鉄ペレットを得ることができることを解明した。また、この強度があれば、トラックや船での長距離輸送も可能となる。
【0028】
金属鉄比率が40%以上の還元鉄ペレットの製造方法は以下のとおりである。まず、トータル鉄(原料が含む鉄元素の質量比率)が、40%以上であれば、還元時の酸素と炭素の質量減少を考慮すると、金属鉄比率が40%以上の還元鉄ペレットが得られる。本発明の還元反応では、反応した酸素と炭素が一酸化炭素と二酸化炭素となって、成形体から放出される。その結果、還元鉄ペレットの質量は原料成形体の65〜80%となる。原料のトータル鉄40%を超えていれば、還元鉄ペレットのトータル鉄比率は50〜60%と増える。さらに、上記に説明した反応条件での鉄の還元率は70%程度以上であることから、還元鉄ペレットの金属鉄比率が40%以上のものが得られる。
【0029】
ただし、原料成形体の還元を受けない酸化物(酸化珪素、酸化アルミ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等、以降、スラグ生成物と称す)の比率が多い場合には、還元後の金属鉄ペレットの強度が低い。本発明者らは、原料成形体のスラグ生成物比率が30%を越す場合は、他の条件が適正であっても、金属鉄ペレットの強度が5×106N/m2よりも低いことを解明した。つまり、還元鉄の粒子とは異なり、スラグ生成物の物質移動は遅いため、1200〜1400℃の条件では、数分間の間に、十分な焼結が終了しないことが理由である。また、原料成形体のスラグ生成物比率が30%を越す場合に、還元後の金属鉄ペレットのスラグ生成物比率は35%を越える。
【0030】
このような原料を十分な炭素比率の原料を1200〜1400℃の温度で還元反応、および、焼結させる。焼成時間は、前に述べた加熱最低時間よりも長い時間が必要であるが、通常の成形体体積、ガス温度、気孔率などの条件では、7分間以上の1200℃以上のガスへの暴露を行えば、この条件を満たす。
【0031】
また、本発明者らが行った以前の発明である特開2000-34526にも示すように、還元鉄ペレット中の残留炭素が多い場合に、本発明の条件でも、還元鉄ペレットの強度が低下することを確認した。本発明の操業条件では、残留炭素質量が金属鉄の質量の4%以上になると、還元鉄ペレットの圧潰強度が低下することを解明した。これは、金属鉄の炭素溶解量は4%までであり、未溶解の炭素が、還元鉄ペレット内の粒子間に存在すると、炭素が金属鉄の焼結結合を妨げることから、強度低下をもたらすからである。この残留炭素濃度は、前出の炭素と活性酸素の比率の原料を適正に還元した場合に得られる。一般的な回転炉床法還元炉では、炭素当量比が0.5以下であれば、トータル鉄中の金属鉄の比率(金属化率)が65%以上となり、強度が高く、還元も進んだ還元ペレットを製造できる。一方、炭素当量比が、1.3を超えるあたりから、反応後に、酸化鉄の還元に余剰の炭素が発生し始めて、1.5以上では、還元ペレットの残留炭素比率が4質量%以上となり、還元ペレットの強度が所定の目的以下となる。したがって、炭素当量比は、0.5〜1.5の範囲が良い。
【0032】
以上に説明した操業方法で、還元鉄ペレットを製造すると、還元された鉄粒子が焼結して、還元ペレットが締まることから、強度の高いものが得られるが、この還元鉄ペレットは見掛け比重が1.6〜4.5kg/cm3の範囲であった。この条件の還元鉄ペレットは5×106N/m2以上の圧潰強度を有していた。原料の成形体の気孔率が低く、緻密であれば、製造された還元鉄ペレットの密度も高かった。還元鉄ペレットの見かけ密度は、原料成形体の気孔率にも影響される。
【0033】
ブリケットや押し出し成形体では気孔率が33から55%であり、この成形体から作った還元鉄ペレットの見掛け比重が1.6〜3.5kg/cm3であった。
【0034】
以上に説明した方法で、製造した高温の還元鉄ペレットを適正な条件で冷却することにより、常温の還元鉄ペレットを製造する。この還元鉄ペレットは、長距離の輸送や製鉄用高炉での使用に耐えられるものである。この還元鉄ペレットは、スラグ生成物や硫黄や燐などの固溶不純物を溶かし、除去するためには、他の高炉原料と混合して製鉄用高炉で使用することが望ましい。高炉では、一部残った酸化鉄の還元と溶解を行う。この時に、スラグ生成物は融体となって、溶融鉄と分離する。また、硫黄分はスラグ中に移行して、約90%の脱硫率が得られる。ここで、製造した銑鉄は、転炉や電気炉の原料として用いられる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の操業方法と装置を用いれば、比較的高い還元率を確保したまま、圧潰強度が高い還元鉄ペレットを製造することができる。この還元鉄ペレットは、高炉で直接使用して溶銑を製造でき、また、長距離の輸送にも耐えられる特徴を持つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の還元用回転炉床法の回転炉とその付帯の装置からなる全体プロセス例を示す図である。
【図2】 回転炉床式の還元炉の断面を示す図である。
【図3】 気孔率が47%であり、直径が12mmの球形の成形体を、平均ガス温度1250℃で、加熱還元した場合の1200℃以上の雰囲気温度に暴露されている時間と還元ペレットの圧潰強度の関係を示す図である。なお、図中のプロットに付随する線の長さは、統計的に計算された誤差を示すものであり、線の長さの範囲は90%の確実性を示す。
【符号の説明】
1 成形装置
2 成形体乾燥装置
3 回転炉床式還元炉
4 還元鉄ペレット冷却装置
5 還元鉄ペレット篩装置
6 還元鉄ペレット備蓄ビン
7 天井
8 炉壁
9 炉床
10 車輪
11 バーナー
12 火炎
13 成形体
Claims (4)
- ブリケット又は押し出し成形体であって、気孔率が33〜55%であり、トータル鉄の含有比率が40%以上で、かつ、含有されている元素のうち、炭素と、鉄、マンガン、ニッケル、亜鉛、および、鉛と化学結合している酸素との原子モル比率が0.5〜1.5の範囲である粉体で構成される成形体を、1200℃以上のガス雰囲気に暴露される時間が下記の式で示される加熱最低時間:Tbの1.0〜3.0倍の範囲で、炉内ガスの最高温度が1400℃以下の条件で焼成還元することを特徴とする回転炉床式還元炉の操業方法。
Tb = 0.05 exp (7,100/T) + 0.14 Vp1/3
なお、Tb:加熱最低時間(分)、
T:1200℃以上の炉内部分の平均ガス温度(K)、
Vp:成形体の平均容積(立方mm) - 体積が100〜14000立方mmの成形体を用いることを特徴とする請求項1記載の回転炉床式還元炉の操業方法。
- 混在する酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および、酸化燐の合計質量が全質量の30%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転炉床式還元炉の操業方法。
- 成形体を回転炉床式還元炉の炉床上に平均層数が2.0以下の状態に積んで、焼成還元することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鉄の製造方法。
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