第1の発明の発熱体は、有機材料系の基材と、前記基材に形成した1対以上の電極と、前記電極の間に配置されており高分子材料に導電性付与材が混合された組成物である発熱可能な抵抗体と、前記電極および抵抗体の全体を覆う接着性材料を有する有機性被覆材を少なくとも備え、前記接着性材料のガラス転移点tgもしくは脆化温度tbのいずれかは
、前記抵抗体に用いる高分子材料の結晶化温度Tcより低温側に有りしかも、前記接着性材料の融点tmは、前記抵抗体に用いる高分子材料の融点Tmより高温側に有るとした。
有機性被覆材は、接着性材料を有するので、接着性材料をホットメルト接着材として使用することができ、加熱してホットメルトすると、溶融してすぐに固まって基材と良好に接着して、電極および抵抗体への水分等の進入を良好に防止する。このホットメルトは、簡単な簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、しかも水分等の進入を長期間良好に防止して、発熱体の耐久信頼性を高めることができる。これに加えて、接着性材料のガラス転移点tgもしくは脆化温度tbのいずれかが、抵抗体に用いる高分子材料の結晶化温度Tcより低温側に有るので、抵抗体をその結晶化温度Tc近辺の低温で長期間使用しても、発熱体は、その抵抗特性に影響を受けることなく優れた低温信頼性を長期間維持する。またさらに、接着性材料の融点tmが、抵抗体に用いる高分子材料の融点Tmより高温側に有るので、抵抗体をその融点Tm近辺の高温で長期間使用しても、発熱体は、その抵抗特性に影響を受けることなく優れた高温信頼性を長期間維持する。このように、本発明は、有機性被覆材に使用する接着性材料と抵抗体の材質をお互いの熱特性の関係より最適化して、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、しかもその耐久信頼性を高めることで、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
第2の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる接着性材料は、その融点tmが、抵抗体に用いる高分子材料の融点Tmの1.13〜1.38倍にあり、そのガラス転移点tgもしくは脆化温度tbが、前記融点tmに0.62を乗じた温度で代替されるのガラス転移点tgもしくは脆化温度tbで代替されるとした。このことにより、そのガラス転移点tgや脆化温度tbが融点tmから推定できるので、これらが明確でない、信頼性の高い高結晶性の接着性材料の使用が可能となる。しかも、この高結晶性の接着性材料は、抵抗体に用いる高分子材料の融点Tmに対して、その融点tmが僅かに高いだけであるので、ホットメルト温度を僅かに高くするだけで対応でき、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造できる効果と、抵抗体に与える熱影響が低減する効果が生じる。そのため、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できるようになる。
第3の発明の発熱体は、特に第1の発明もしくは第2の発明に用いる接着性材料が、飽和結晶性ポリエステル樹脂、熱可塑性オレフィンエラストマー、熱可塑性オレフィン樹脂、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物のいずれかもしくは、これらの複合材料が主成分であるとした。これら接着性材料は、ガラス転移点tgもしくは脆化温度tbが非常に低い材料であるので、これら温度に関する使用制限が非常に少なく使用し易いうえに低温で長期間使用しても、発熱体は、その抵抗特性に影響を受けることなく優れた低温信頼性を長期間維持できる。しかも、この接着性材料17は、その融点tmが僅かに高いだけであるので、ホットメルト温度を僅かに高くするだけで対応でき、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造できる効果と、抵抗体に与える熱影響が低減する効果が生じる。そのため、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できるようになる。
第4の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる抵抗体に用いる高分子材料が、熱可塑性樹脂であるとした。抵抗体に用いる高分子材料が熱可塑性樹脂であると、接着性材料をホットメルト接着材として使用するために加熱してホットメルトしても、本来の優れた耐久信頼性を簡単に発揮するので使用し易い。そのため、一層簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、しかもその耐久信頼性が高いので、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できるようになる。
第5の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性被覆材は、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプのポリエステル樹脂が主成分である接着性材料と、前記
接着性材料に積層された有機性コート材で構成されるとした。接着性材料は、ポリエステル樹脂が主成分であるため接着力が強く、基材と有機性コート材の接着の長期間にわたる耐久信頼性が確保でき、接着部分から抵抗体への水の浸入を完全に防止して、抵抗体の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくし、加湿耐久信頼性を向上させる。しかも、接着性材料に用いたポリエステル材料は、多価カルボン酸の組成を適正化して融点が約90〜130℃としているため、結晶性が高まり、耐ブロッキング性と接着性と耐加水分解性が向上している。また、接着性材料に使用したポリエステル材料の結晶性が高まることにともなって、抵抗体も結晶性が高まりその耐久信頼性が向上する利点が生じている。また、接着性材料は、硬化剤を使用しないので線状の柔らかい非架橋型となっているうえに難溶剤溶解性としているので、耐ブロッキング性に優れておりロール状に巻取ったときにお互いがくっつくことがない。さらに、この接着性材料を形成してこれを被覆材に接合する技術とこの被覆材を用いて発熱体を製造する技術は、簡単な製法と品質管理で製造でき、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できる。
第6の発明の発熱体は、特に第5の発明に用いる接着性材料は、その分子量が5000〜15万であるポリエステル樹脂を主成分とするとした。この分子量のポリエステル材料は、小さな高分子材料であるため分子が適度な自由性で動くことができ、耐ブロッキング性と接着性がさらに向上し、製造・検査の容易さと優れた加湿中耐久信頼性を有する。
第7の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性被覆材は、特殊エチレンエラストマーとオレフィン系熱可塑性エラストマーとエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物が主成分の接着性材料と、前記接着性材料に積層された有機性コート材で構成され、基材は、オレフィン系エラストマーとスチレン系エラストマーとアクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物の混合物が主成分の耐熱フィルムが被覆させた材料であるとした。この材料系にすると、抵抗体も結晶性が高まりその耐久信頼性が向上する利点が生じるとともに、これら材料を形成してこれを有機性被覆材や基材に接合する技術およびこれらを用いて発熱体を製造する技術は、簡単な製法と品質管理で製造できる利点が有る。そのため、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できる。
第8発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる電極が、銀粉を主成分とする導電性付与材と、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤とからなり、前記導電性付与剤/前記結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)であるとした。電極は、硬化剤使用タイプのポリエステル樹脂を含有した材料であり、その上部に抵抗体および有機性被覆材が順々に積層される構造となっている。そのため、これら材料が順々に積層されて硬化のために加熱されるごとに、電極は、硬化がどんどん進んでゆき一層優れた電気導電性が得られる。しかも、電極は、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を含有している結合材とし、導電性付与剤/結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)すると、柔らかく優れたゴム弾性を持つ。この共重合ポリエステル樹脂を用いた電極は、その引張り強度が格段に優れるため、給電用リード線の頻繁なる引っ張りによっても、剥離することなく強固に接合していた。また、この材料の電極は、接着性材料をホットメルトする際の熱溶融液化物と接触しても、その硬化を妨げられることがなく、優れた抵抗特性を長期間維持し、これらを用いて発熱体を製造する技術は、簡単な製法と品質管理で製造できる利点が有る。そのため、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できる。
第9発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる電極が、その給電部分に接着性の導電性有機材料を介して、給電用の導電性端子が積層されており、前記導電性端子には、その外形寸法より小さい寸法で有機性被覆材に設けられた空隙を経由して、給電用リード線が接合材で接合されるとした。導電性端子が有機性被覆材によりその周囲を覆われる構成であるので、給電用リード線が万が一にも引っ張られても、導電性端子が電極より剥離するこ
とがなく、優れた耐久信頼性を長期間維持できる。これに加えて、給電用リード線を通過させるために有機性被覆材に設ける空隙が、導電性端子の外形寸法より小さい寸法であるため、有機性補強材が導電性端子の外周部分を覆ってここからの水の浸入を完全に防止し、抵抗体の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくして加湿耐久信頼性を向上させる。また、この構成は、簡単な製法と品質管理で製造でき、これにより、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できる。
第10発明の発熱体は、特に第9の発明に用いる電極と導電性有機材料が、銀を主成分とする導電性付与材とポリエステル樹脂を少なくとも含有しており、導電性端子は錫メッキした銅箔からなり、接合材はスズを含むハンダとした。電極と導電性有機材料と導電性端子と接合材の材質を相互の関係より最適化したので、給電用リード線の頻繁なる引っ張りによっても、導電性有機材料は電極と剥離することなく強固に接合していた。またこのことで、導電性有機材料は、簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになる。
第11発明の発熱体は、特に第9の発明に用いる有機性被覆材に設ける空隙が、導電性端子の中心部より外れた部分に設けられているとした。有機性被覆材に設ける空隙の位置を、導電性端子の中心部より外れた部分に設けると、ハンダなどの接合材による加熱の影響が、導電性端子の中心部より外れた部分に及ぶようになる。これにともない、この下部に有る導電性有機材料は、加熱の影響を中心部より外れた部分に受けるので、この局部的に受ける接着強度の影響が全体の接着強度に及ぶことが大きく低減し、給電用リード線が頻繁に引っ張られても、電極と剥離することなくこれらと強固に接合している。また、このことで、ハンダなどの接合材による加熱は、簡単な工法と品質管理を用いて行なうことができるようになる。
第12の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる基材が、結晶化核剤を用いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料であるとした。基材や有機性コート材がこの材料組成とすると、接着性材料と親和して各々の特性が向上して、さらに簡単な製造技術と品質管理技術を用いることができ、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
第13の発明の発熱体は、特に第5の発明に用いる有機性コート材が、結晶化核剤を用いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料であるとした。基材や有機性コート材がこの材料組成とすると、接着性材料と親和して各々の特性が向上して、さらに簡単な製造技術と品質管理技術を用いることができ、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
第14発明の発熱体は、特に第9の発明に用いる接合材が、飽和ポリエステル樹脂を主成分とする有機性補強材でその周囲を被覆されているとした。接合材の周囲を、飽和ポリエステル樹脂を主成分とする有機性補強材で被覆すると、給電用リード線が頻繁に引っ張られても、導電性端子と剥離することなく強固に接合している。これは、有機性補強材として接着性と可撓性に優れた飽和ポリエステル樹脂を主成分とする材料を用いると、弾力性の有る有機性補強材となって給電用リード線の引っ張りを吸収して和らげるためと思われる。また、このことで、ハンダなどの接合材の接続熱は、簡単な工法と品質管理を用いて行なうことができるようになる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態である発熱体の断面図と効果特性図であり、(a)は断面図、(b)は適用範囲を表わす特性図である。まず、構造について説明する。図1(a)の断面図に示すように、発熱体は、有機材料系の基材12と、基材12に形成した1対以上の電極13、14と、電極13、14の間に配置され少なくともその1部分を覆って積層される発熱可能な有機材料系の抵抗体15と、電極13、14と抵抗体15の全体を覆っている有機性被覆材16を、少なくとも備えている。抵抗体15は、高分子材料に導電性付与材が混合された組成物であり、直流や交流の電圧を印加されると発熱する。抵抗体15がこの構成であるため、その下部にある基材12は、抵抗体15に用いる高分子材料の融点Tmより、高い融点を持つ材料を使用した。これは、この熱物性を有する基材12にしないと、抵抗体15を基材の表面に厚膜印刷し乾燥硬化させることで形成することができないためである。
有機性被覆材16は、有機性コート材18とこれより融点が低い接着性材料17との積層物となっており、接着性材料17が、電極13、14および抵抗体15の側に配置されている。なお、有機性被覆材16は、全てが接着性材料17だけで構成してもよい。本発明は、抵抗体15に用いる高分子材料とこれらを覆う接着性材料17は、図1(b)に示すように、接着性材料17のガラス転移点tgもしくは脆化温度tbのいずれかが、抵抗体15に用いる高分子材料の結晶化温度Tcより低温側に有りしかも、接着性材料17の融点tmは、抵抗体15に用いる高分子材料の融点Tmより高温側に有る熱挙動特性としている。
有機高分子の構造とその熱挙動特性について説明する。有機高分子は、ある間隔で規則的に配列した結晶を形づくる領域(結晶領域)と、そうではない領域(非結晶領域)が混在した構造となっている。低温では、有機高分子を構成する連鎖の1部が変形する運動(これをミクロブラウン運動と呼ぶ)が緩慢となり、転移点を境にその温度以下では、凍結された脆くて硬いガラス状態になっている。この凍結が起こる温度が、ガラス転移点Tgである。脆化温度Tbは、このガラス転移点Tgとほぼ同じであるが、厳密には僅かに異なる。一方、ガラス転移点Tg以上に温度が上昇すると、非結晶の1部分が再結晶することが起こり始める。このガラス転移点Tgより僅かに高温部において、結晶化が起こる現象を低温結晶化現象と言う。この低温結晶化現象は、温度の上昇とともに活発になるのだがやがて徐々に不活発に転じ、最終的には或る温度を境にまったく起こらなくなる。本発明は、この低温結晶化現象が起こっている領域にある温度を結晶化温度と呼び、高温側に存在する低温結晶化現象が最後に起こる境界温度を、結晶化温度Tcとして用いて検討を進めた。温度がさらに上昇すると、ミクロブラウン運動が、活発になり始めて、構成する分子全体が大きく振動して移動する運動(これをマクロブラウン運動と呼ぶ)が始まる。このマクロブラウン運動は、まず非結晶から始まってやがて結晶にも伝わり、最後には全体が非晶状態になる。融点Tmは、結晶質が非結晶に変わる温度であり、流動した状態になる温度でもある。
発熱体を具体的に試作した事例を以下に記載する。まず、電極13、14を、各種の有機材料系の基材12の片面に形成した。電極13、14は、共重合ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート系硬化剤を混合した結合材に、銀とカーボンからなる導電性付与材を分散した導電性銀ペーストであり、印刷乾燥によって10μm厚みとなっている。そして、熱硬化後の重量組成比は、銀粉81wt%とカーボン3wt%の導電性付与材と、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤の16wt%とからなり、導電性付与剤/結合剤の組成比が84/16である。電極13、14は、主電極とこの主電極から分岐される枝電極から構成されており、枝電極が交互に位置するように配置されている。
次に、有機材料系の抵抗体15を、既に形成された電極13、14の間に配置され少な
くともその1部分を覆って積層されるように形成した。抵抗体15は、正抵抗温度特性を有する有機材料系の抵抗体であり、高分子材料(エチレン酢酸ビニル共重合体を使用)と架橋材(ジクミルパーオキサイドを使用)とカーボンブラックの混練物をペースト化したものを、印刷乾燥により10μm厚みとして形成している。
その後、電極13等の給電部分に、導電性銀ペーストからなる導電性有機材料19を介して、70μm厚みの銅箔に錫メッキした導電性端子20を積層し、電極13等と導電性端子20を接合した。導電性有機材料19は、ポリエステル材料とブロックイソシアネート系硬化剤を混合した結合材に導電性付与材として銀粉末を分散した材料である。
さらにその上部に、有機性被覆材16を、基材12や電極13、14さらに抵抗体15を被覆するように配置した。有機性被覆材16は、有機性コート材18とこれより融点が低い接着性材料17との積層物、もしくは、全てが接着性材料17だけの構成物となっている。接着性材料17が、電極13、14および抵抗体15の側に配置されており、その融点温度以上に温度設定されたラミネートロールによって、基材12や電極13、14さらに抵抗体15と熱融着して積層される。基材12を有機性被覆材16で覆い熱融着して気密構造とすることで、水分などが抵抗体15に付着しその抵抗値を変化させることが起こらない様にした。
最後に、導電性端子20の外形寸法より小さい寸法の空隙21を有機性被覆材16にレーザ等で設け、導電性端子20を加熱し硬化させて電極13等に電気的物理的に接合し、給電用リード線22をこの空隙21を経由して導電性端子20にはんだの接合材23を用いて接合して完成である。
実施例では、抵抗体15に混合する高分子材料としてエチレン酢酸ビニル共重合体を使用したので、その脆化温度Tbは238K、ガラス転移点Tgは240K、結晶化温度Tcは280℃、融点Tmは366K、の熱挙動特性を有する。これらガラス転移点Tgや結晶化温度Tcさらに融点Tmは、エチレン酢酸ビニル共重合体を、温度上昇させてその吸発熱ピークを測定する示差走査熱量分析結果から求めた値であり、ガラス転移点Tgは吸熱ピークの低温側始端温度、結晶化温度Tcは発熱ピークの高温側終端温度、融点Tmは吸熱ピークの高温側終端温度で表現した。脆化温度Tbは、JIS K7216 「プラスチックの脆化温度試験方法」に基づき、一定温度の試験槽に入れた片持ばりの試験片に所定の打撃を与えて、その破壊個数を各温度ごとに測定し、その値を所定計算式に代入して算出した温度である。
抵抗体15に用いる熱可塑性材料は、発熱ピークの高温側終端温度を結晶化温度Tcとして取り合ったので、この終端温度Tc以下になると結晶化が起こっている。例えば、熱可塑性材料のエチレン酢酸ビニル共重合体と架橋材のジクミルパーオキサイドと導電性付与材のカーボンブラックの混練物ペーストを印刷乾燥して得ただけの、抵抗体15は、結晶化温度Tc280℃以下の温度に長間放置されると、エチレン酢酸ビニル共重合体の結晶化が起こり、電子導電性が増加してその抵抗値が大きく低下する特性を有する。そこで、実施例では、効果の判定を明確にするために、エチレン酢酸ビニル共重合体を結晶化させて抵抗体15の抵抗を安定させるための低温エイジングを、発熱ピークの高温側終端温度Tc280℃でおこない、検討を進めた。また、エチレン酢酸ビニル共重合体の結晶化を加速させるために、この低温エイジング温度は、高温側終端温度280℃以下でガラス転移点Tg240K以上としてもよく、この場合、この低温エイジング温度を結晶化温度Tcとして扱ってもよく、このことは終端温度Tcを結晶化温度とした前述と技術上何ら矛盾がないものである。
効果特性は、次の様にして評価した。製造・検査の容易さは、接着性材料17を有機性
コート材18に塗布して乾燥硬化させてフィルムとしロール状に巻いて有機性被覆材16を形成する製造工程と、基材12と有機性被覆材16をラミネートして熱融着する工程と、熱融着品を低温エイジングする工程に関する、製造し易さと検査の容易さを評価した指標である。◎◎は製造・検査に極めて優れる、◎は製造・検査に優れる、○は製造・検査が容易である、△は製造・検査がやや複雑であること、×は大変複雑であり不適格を表わす。
耐久信頼性は、発熱体の−10℃およぶ50℃雰囲気での耐久信頼性であり、◎◎は耐久信頼性に極めて優れる、◎は耐久信頼性に優れる、○は耐久信頼性が良好である、△は耐久信頼性がやや不充分であること、×は耐久信頼性が極めて不充分であり不適格を表わす。
(表1)は、本発明に用いる接着性材料17の実施例および比較例の効果特性表である。また、その効果を明確にするため図1(b)に、接着性材料17のガラス転移点tgもしくは脆化温度tbさらに融点tmと、抵抗体15に用いる高分子材料の結晶化温度Tcおよび融点Tmの関係を記載した。
実施例12は、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプの飽和ポリエステル樹脂が主成分であるフィルムを接着性材料17として用い、これをポリエチレンテレフタレートの有機性コート材18に形成した有機性被覆材16を用いた実施例である。材料組成を異なる飽和ポリエステル樹脂を使用して、融点tmやガラス転移点tgが異なるようにしている。基材12は、ポリエチレンテレフタレートであり、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例3は、特殊エチレンエラストマーのフィルムを接着性材料17として用い、これをポリエチレンテレフタレートの有機性コート材18に形成した有機性被覆材16を用いた実施例である。基材12は、ポリエチレンテレフタレートであり、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例4は、ポリエチレンのフィルムを接着性材料17とする有機性被覆材16を用いた実施例であり、基材12もポリエチレンを使用し、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例5は、ポリプロピレンのフィルムを接着性材料17とする有機性被覆材16を用いた実施例であり、基材12もポリプロピレンを使用し、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例6は、ポリ塩化ビニリデンのフィルムを接着性材料17とする有機性被覆材16を用いた実施例であり、基材12もポリ塩化ビニリデンを使用し、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
比較例Aは、ポリイソブチレンのフィルムを接着性材料17とする有機性被覆材16を用いた比較例であり、基材12もポリイソブチレンを使用し、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
比較例Bは、ポリカーボネートのフィルムを接着性材料17とする有機性被覆材16を用いた比較例であり、基材12もポリカーボネート板を使用し、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
比較例Cは、ポリスチレンのフィルムを接着性材料17とする有機性被覆材16を用いた比較例であり、基材12もポリスチレンを使用し、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例の接着性材料17は、そのガラス転移点tgもしくは脆化温度tbのいずれかが、抵抗体15に用いる高分子材料(エチレン酢酸ビニル共重合体)の結晶化温度Tc280℃より低温側にありしかも、その融点tmが、抵抗体に用いる高分子材料(エチレン酢酸ビニル共重合体)の融点Tmより高温側に有る。一方、比較例の接着性材料は、そのガラス転移点tgもしくは脆化温度tbのいずれかが、抵抗体15に用いる高分子材料(エチレン酢酸ビニル共重合体)の結晶化温度Tc280℃より高温側にあるか、その融点tmが、抵抗体に用いる高分子材料(エチレン酢酸ビニル共重合体)の融点Tmより低温側に有る。
本発明は、製造・検査が容易で、信頼性に優れていることがわかる。
(実施の形態2)
実施の形態2は、接着性材料17のガラス転移点tgもしくは脆化温度tbと、融点tmの関係について詳細に検討した内容である。結晶性が低く非結晶領域が多く存在する接着性材料17は、ガラス転移点tgや脆化温度tbが明確に存在するが、結晶性が高く非結晶領域が僅かしか存在しない接着性材料17は、ガラス転移点tgや脆化温度tbが明確に存在しない。そこで、ガラス転移点tgや脆化温度tbが明確でない、結晶性が高く非結晶領域が僅かしか存在しない接着性材料17の使用可否について検討した。
(表2)は、実施の形態2に用いる接着性材料17の実施例および比較例の効果特性表であり、実施例7〜9が実施の形態2の効果特性である。なお、実施例1〜6および比較例A〜Cは、この効果特性を明確にするために記載した前述実施の形態1の同内容である。図2は、同発明に用いる接着性材料17の適用範囲を表わす特性図であり、(a)は温度で表現した特性図、(b)は比率で表現した特性図である。
実施例7は、オレフィン系熱可塑性エラストマーの厚みフィルムを接着性材料17として用い、これをポリエチレンテレフタレート繊維の有機性コート材18に形成した有機性被覆材16を用いた実施例である。基材12は、ポリエチレンテレフタレート繊維の片側に耐熱フィルム(オレフィン系エラストマー)を積層した材料であり、この耐熱フィルムに電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例8は、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物のフィルムを接着性材料17として用い、これをポリエチレンテレフタレート繊維の有機性コート材18に形成した有機性被覆材16を用いた実施例である。基材12は、ポリエチレンテレフタレート繊維の片側に耐熱フィルム(オレフィン系エラストマーとスチレン系エラストマーの混合物)を積層した材料であり、この耐熱フィルム面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例9は、特殊エチレンエラストマーとオレフィン系熱可塑性エラストマーとエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物を50/20/30の重量比で混合したフィルムを接着性材料17として用い、これをポリエチレンテレフタレート繊維の有機性コート材18に形成した有機性被覆材16を用いた実施例である。基材12は、ポリエチレンテレフタレート繊維の片側に耐熱フィルム(オレフィン系エラストマーとスチレン系エラストマーとアクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物の混合物)を積層した材料であり、この耐熱フィルム面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
(表2)に示すように、本発明に用いる接着性材料17は、そのガラス転移点tgと融点tmの比率(tg/tm)、もしくはその脆化温度tbと融点tmの比率(tb/tm)が、0.51〜0.62の間にある。この関係が成立することは、例えば、図書「活用ガイド 高分子材料」(株式会社オーム社の発行、栗原福次と大石不二夫の共著、昭和58年3月20日 第1版第12刷発行)の第36ページの第2行に記載された文章「二次転移点(ガラス転移点もしくは、脆化温度を意味する)と一次転移点(融点を意味する)との関係はだいたいその比が2:3(0.67を意味する)」とほぼ一致しており、論理的に成立する関係式である。したがって、接着性材料17は、そのガラス転移点tgもしくは脆化温度tbが不明であっても、その融点tmが明確にわかっておれば、ガラス転移点tgもしくは脆化温度tbは、融点tmに0.51〜0.62を乗じた温度となること
が推定できる。
図2(a)は、接着性材料17について、ガラス転移点tgもしくは脆化温度tbと融点tmとの最大関係式すなわち、tg=0.62tmもしくはtb=0.62tmを挿入した特性図である。本発明の適用範囲は、図1(b)に示すように、接着性材料17のガラス転移点tgもしくは脆化温度tbのいずれかが、抵抗体15に用いる熱可塑性材料の結晶化温度Tcより低温側に有る領域であるため、必然的に、この最大関係式より下側領域となる。また、(表2)に示すように、本発明に用いる接着性材料17は、その融点tmが380〜463℃である。これらのことより、本発明の適用範囲は、接着性材料17の融点tmが380〜463℃で、tg=0.62tmもしくはtb=0.62tmの下側領域となり、この関係式を図2(a)にさらに挿入すると、太い実線で囲まれた領域となる。
一方、(表2)に示すように、本発明に用いる接着性材料17はその融点tmが、抵抗体の融点Tmの1.13〜1.38倍である。図2(b)は、接着性材料17の融点tmと抵抗体15の融点Tmの比率(tm/Tm)と、接着性材料17のガラス転移点tgもしくは脆化温度tbと融点tmとの比率(tg/tmもしくはtb/tm)をグラフ化した特性図である。本発明は、tm/Tmが1.13〜1.38で、tg/tmもしくはtb/tmが0.62以下であるので、この関係式を図2(b)に挿入すると、太い実線で囲まれた領域となる。
したがって、接着性材料17のガラス転移点tgもしくは脆化温度tbが不明であっても、この温度を接着性材料17の融点tmに0.62を乗じた温度に代替できる。そして、この代替温度が、抵抗体15に用いる熱可塑性材料の結晶化温度Tcより低温側に有る、つまり、tg/tmもしくはtb/tmが0.62以下であるとともに、接着性材料17の融点tmが、抵抗体15の融点Tmの1.13〜1.38倍にある材料は、製造・検査が容易で信頼性に優れた特性が得られ、このことは、(表2)からも立証できた。
このことにより、ガラス転移点tgや脆化温度tbが明確でない、結晶性が高く非結晶領域が僅かしか存在しない接着性材料17は、そのガラス転移点tgや脆化温度tbが融点tmから推定できるので、その使用が可能となる。しかも、この結晶性が高い接着性材料17は、抵抗体15に用いる高分子材料の融点Tmに対して、その融点tmが僅かに高いだけであるので、ホットメルト温度を僅かに高くするだけで対応でき、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造できる効果と、抵抗体に与える熱影響が低減する効果が生じる。そのため、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できるようになる。
(実施の形態3)
実施例3は、接着性材料17に使用する材料ついてさらに詳細に検討した内容である。(表1)や(表2)に示すように、接着性材料17は、飽和結晶性ポリエステル樹脂、熱可塑性オレフィンエラストマー、熱可塑性オレフィン樹脂、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物のいずれか、もしくはこれらの複合材料が、使用できることがわかる。これら接着性材料17は、ガラス転移点tgもしくは脆化温度tbが非常に低い材料であるので、これら温度に関する使用制限が非常に少なく使用し易いうえに低温で長期間使用しても、発熱体は、その抵抗特性に影響を受けることなく優れた低温信頼性を長期間維持できる。しかも、この接着性材料17は、その融点tmが僅かに高いだけであるので、ホットメルト温度を僅かに高くするだけで対応でき、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造できる効果と、抵抗体に与える熱影響が低減する効果が生じる。そのため、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できるようになる。
(実施の形態4)
実施例4は、抵抗体15に用いる高分子材料について検討した内容である。(表3)は、抵抗体15の高分子材料と接着性材料17の実施例および比較例の効果特性表である。
高分子材料において、ガラス転移点もしくは脆化温度は、結晶化温度より必ず低温側にあるという性質がある。(表3)においてはこの性質を利用して、抵抗体15に用いる高分子材料の結晶化温度Tcは、そのガラス転移点もしくは脆化温度で代替している。このため、抵抗体15の高分子材料と接着性材料17のガラス転移点もしくは脆化温度を比較して、接着性材料17の方が低温側にあることは、抵抗体15に用いる高分子材料の結晶化温度Tcより低温側に有ることを意味する。
実施例αは、抵抗体15に使用する高分子材料が熱可塑性樹脂のエチレン酢酸ビニル共重合体であり、接着性材料17として結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプの飽和ポリエステル樹脂が主成分であるフィルムを用いこれをポリエチレンテレフタレートの有機性コート材18に形成した有機性被覆材16を用いた例である。基材12は、ポリエチレンテレフタレートであり、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例βは、抵抗体15に使用する高分子材料が熱可塑性樹脂のポリエチレン樹脂であり、接着性材料17としてポリー1、4―ブタジエン樹脂の有機性被覆材16を用いた例である。基材12もポリー1、4―ブタジエン樹脂を使用し、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
実施例γは、抵抗体15に使用する高分子材料が熱可塑性樹脂のポリプロピレン樹脂であり、接着性材料17としてポリアセタール樹脂の有機性被覆材16を用いた例である。基材12もポリアセタール樹脂を使用し、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
比較例θは、抵抗体15に使用する高分子材料がゴムであるポリクロロプレン系であり、接着性材料17として結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプの飽和ポリエステル樹脂が主成分であるフィルムを用いこれをポリエチレンテレフタレートの有機性コート材18に形成した有機性被覆材16を用いた例である。基材12は、ポリエチレンテレフタレートであり、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
比較例κは、抵抗体15に使用する高分子材料が熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂であり、接着性材料17として結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプの飽和ポリエステル樹脂が主成分であるフィルムを用いこれをポリエチレンテレフタレートの有機性コート材18に形成した有機性被覆材16を用いた例である。基材12は、
ポリエチレンテレフタレートであり、その片面に電極13、14、さらに抵抗体15を形成している。
抵抗体15に用いる高分子材料が熱可塑性樹脂であると、接着性材料17をホットメルト接着材として使用するために加熱してホットメルトしても、温度が低下すると可逆的に本来の特性に戻るので使用し易い。そのため、一層簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、しかもその耐久信頼性が高いので、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できるようになる。また、抵抗体15は、さらに架橋材を加えて架橋させた架橋型とすると3次元構造を持ち、この架橋型の3次元構造は、導電性付与材(カーボンブラック、黒鉛など)どうしを強固に接触させてその導電経路が長期的に安定し、優れた耐久信頼性が確保できる。
(実施の形態5)
実施例5は、有機性被覆材16の構成と、接着性材料17の材質について検討した内容である。前述の(表1)や(表3)よりわかる様に、有機性被覆材16が、接着性材料17とこれに積層された有機性コート材18で構成され、接着性材料17が、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプのポリエステル樹脂が主成分であると、優れた効果を有することがわかった。このことをさらに詳細に検討した結果を、(表4)に示す。検討は、接着性材料17としてポリエステル系を使用し種別を変化させ、他は前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。これらの評価は、次のようにしておこなっている。
耐ブロッキング性は、接着性材料17を有機性コート材18に塗布してフィルムとしロール状に巻いた際に、ブロッキング(フィルムが一塊の接着ロールとなって使用できなくなる)が起こらないことを評価した指標である。◎は長期保存でもブロッキングが全く起こらないので離型紙なしで極めて簡単にロールできる、◎は長期保存でもブロッキングが起こらないので離型紙なしで簡単にロールできる、○は短期間の保存ではブロッキングが起こらないが長期保存を考慮すると離型紙が必要、を表わす。
接着の強さは、ラミネートにより基材12を有機性被覆材16で覆い熱融着して際の、接着性材料17の接着の強さを評価した指標である。◎◎は接着が極めて強いので気密シールが極めて優れている、◎は接着が極めて強いので気密シールが優れている、○は接着が強いので気密シールが良好であるを表わす。
製造・検査の容易さは、接着性材料17を有機性コート材18に塗布してフィルムとしロール状に巻いて有機性被覆材16を形成する製造工程と、基材12と有機性被覆材16をラミネートして熱融着する工程の、製造し易さと検査の容易さを評価した指標である。◎◎は製造・検査が極めて優れる、◎は製造・検査に優れる、○は製造・検査が容易であるを表わす。
加湿中耐久信頼性は、発熱体の40℃湿度90%雰囲気での耐久信頼性であり、◎◎は耐久信頼性が極めて優れている、◎は耐久信頼性が優れている、○は耐久信頼性が良好であるを表わす。
次に、接着性材料17に使用するポリエステル材料を構成する全多価カルボン酸の内訳を検討した。(表5)は、その検討結果である。検討は、接着性材料17としてポリエステル系を使用しその全多価カルボン酸の組成を変化させ、他は前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。
実施例1〜5は、全多価カルボン酸(芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸)のうち、芳香族ジカルボン酸が25〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が残部である多価カルボン酸と、多価アルコールを重縮合反応させたポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。これらは、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査の容易さ、加湿中耐久信頼性が優れている。
接着性材料17に用いたポリエステル材料は、多価カルボン酸の組成を適正化して融点が約90〜130℃としているため、結晶性が高まり、耐ブロッキング性と接着性と耐加水分解性が向上している。また、接着性材料17に使用したポリエステル材料の結晶性が高まることにともなって、抵抗体15も結晶性が高まりその耐久信頼性が向上する利点が生じている。さらに、この接着性材料17を形成してこれを被覆材に接合する技術とこの被覆材を用いて発熱体を製造する技術は、簡単な製法と品質管理で製造でき、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できた。
比較例1は、全多価カルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸が75モル%を越えるポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料は、耐ブロッキングは良好であるが接着性が不充分であり、しかも約190℃の融点をもっているため製造・検査が複雑となった。さらに、有機性被覆材16をラミネートロールによって基材12と熱融着する際に、高温でラミネートロールするため、耐久信頼性が低下していた。
比較例2は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が25モル%未満の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料を使用した発熱体は、いずれの特性も不充分であった。
なお、この優れた効果は、基材12および有機性コート材18として、ポリアミド系やポリカーボネート系を使用した実施例でも、同様の優れた効果が得られた。さらに、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリプロピレンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
ポリエステル材料は、多価カルボン酸(カルボン酸を多く含む有機酸の総称)成分と、多価アルコール(アルコールを多く含む有機酸の総称)成分の重縮合反応により生成した材料である。
芳香族ジカルボン酸は、環の中に共役二重結合を含んだ偶数個の炭素原子からなる炭化水素環式物(芳香族炭化水素と称す)に、カルボン酸(COOHで表現される基)が2個付いた化合物である。その量が多いほど耐加水分解性を向上させるが、ガラス転移温度や融点が上昇して高温での接着作業性を必要として製造がやや複雑になる。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボンル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸であり、これを適宜使用した。
脂環族ジカルボン酸は、炭素原子が環状に結合しているがその環の中に二重結合がないかあっても芳香族化合物のように完全に共役していない炭化水素化合物(脂環族炭化水素と称す)に、カルボン酸が2個付いた化合物である。その量が多いとガラス転移温度や融点を低下させて低温で接着作業性を行わせて製造が簡単になるが、逆にその量が低下すると接着性がやや低下する。具体的には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等であり、これを適宜使用した。更に、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、あるいはヒドロキシピバリン酸、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸類も必要により使用した。脂環族ジカルボン酸を含むことにより、ポリエステル材料は適度な結晶性を保持することができ、ホットメルト接着剤等に用いる結晶性ポリエステル材料として適正な特性を示す。脂肪族ジカルボン酸は、脂環族ジカルボン酸のもつ特徴をさらに低下させた特性である。
接着性材料17に使用するポリエステル材料のうち、多価アルコールの内、分子量が250以上の物が占める割合について検討した。検討は、接着性材料17としてポリエステル系を使用し、その多価アルコールの内、分子量が250以上の物が占める割合を変化させ、他は前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。(表6)は、全多価カルボン酸のうち芳香族ジカルボン酸が75〜25モル%で脂環族ジカルボン酸が残部である組成物において、多価アルコールの分子量を異ならせた実施例である。
芳香族ジカルボン酸が75モル%のグループ6〜9において、実施例7〜8は、分子量が250以上の多価アルコールを2〜20モル%使用したものであり、20モル%を超えた比較品6、2モル%未満の比較品9と比べて、耐ブロッキング性、接着性、製造検査の簡易性、加湿中耐久信頼性が優れている。このことは、芳香族ジカルボン酸が25モル%のグループ10〜13でも同様であり、実施例11〜12は、比較品10と13と比べて、耐ブロッキング性、接着性、製造検査の簡易性、加湿中耐久信頼性が優れている。
さらに、接着性材料17に使用するポリエステル材料を構成する全多価カルボン酸の内訳を検討した。(表7)は、その検討結果である。検討は、接着性材料17としてポリエステル系を使用しその全多価カルボン酸の組成を変化させ、他は前述の実施の形態と同じ材料系である発熱体で行なった。前述の実施形態と異なる点は、全多価カルボン酸を、芳香族ジカルボン酸と脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸の3組成系にしたことである。
実施例A〜Gは、全多価カルボン酸(芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸)のうち、芳香族ジカルボン酸が45〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が45〜5モル%で脂肪族ジカルボン酸が残部である多価カルボン酸と、多価アルコールを重縮合反応させたポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。
この実施例A〜Gで使用するポリエステル材料は、耐ブロッキング性、接着性、製造・
検査の容易さ、加湿中耐久信頼性が優れている。
比較例10は、全多価カルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸が75モル%を越えるポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料は、耐ブロッキングや接着性は良好であるが、約190℃の融点をもっているため製造・検査が複雑となった。さらに、有機性被覆材16をラミネートロールによって基材12と熱融着する際に、高温でラミネートロールするため、耐久信頼性が低下していた。
比較例11は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が45モル%未満の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料を使用した発熱体は、加湿中耐久信頼性がやや不充分であった。比較例12は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が45モル%未満で脂肪族ジカルボン酸が45モル%を超えるポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料は、いずれの特性も不充分であった。
なお、この優れた効果は、基材12および有機性コート材18として、ポリアミド系やポリカーボネート系を使用した実施例でも、同様の優れた効果が得られた。さらに、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリプロピレンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
(表8)は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が45〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が45〜5モル%で脂肪族ジカルボン酸が残部である組成物において、多価アルコールの分子量を異ならせた実施例である。
芳香族ジカルボン酸が75モル%系のH〜Kで本発明の効果を説明する。分子量が250以上の多価アルコールを2〜20モル%使用した第9実施例I〜Jは、この多価アルコールが20モル%を超えた比較品H、2モル%未満の比較品Kと比べて、耐ブロッキング性、接着性、製造検査の簡易性、加湿中耐久信頼性が優れている。このことは、芳香族ジカルボン酸が45モル%のグループL〜Oでも同様であり、実施例M〜Nは、比較品LとOと比べて、耐ブロッキング性、接着性、製造検査の簡易性、加湿中耐久信頼性が優れている。
多価アルコール成分のうち少なくとも分子量が250以上のポリアルキレングリコールを2〜20モル%とした第9実施例は、20モル%を超える参考品や2モル%未満の参考品と比較して、耐ブロッキング性および接着性が優れていることがわかる。なお、この優れた効果は、基材12および有機性コート材18として、ポリアミド系やポリカーボネート系を使用した実施例でも、同様の優れた効果が得られた。さらに、抵抗体15は、熱可
塑性材料をポリプロピレンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
多価アルコールについて説明する。多価アルコールの内、分子量が250未満のものは、炭素数2〜10の脂肪族グリコ−ル、炭素数が6〜12の脂環族グリコ−ル、これらのエ−テル結合含有グリコ−ルよりなる。炭素数2〜10の脂肪族グリコ−ルは、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,2−ブタンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、2,3−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、1,9−ノナンジオ−ル、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールヘプタン、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオールであり、これを適宜使用した。炭素数6〜12の脂環族グリコ−ルは、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAであり、これを適宜使用した。エ−テル結合含有グリコ−ルとしては、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ルである。一方。分子量が250以上の多価アルコールは、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールであり、これらポリアルキレングリコールを適宜使用した。この中で特に、ポリテトラメチレングリコールは、初期接着力と耐加水分解性の観点で好ましく、その分子量は250〜3000であった。
(実施の形態6)
実施例6は、接着性材料17として用いる、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプのポリエステル樹脂の分子量について検討した内容である。その検討結果を、(表9)に示す。
第6実施例は、接着性材料17を分子量が0.5万〜15万であるポリエステル系材料としているため、接着性材料17が、基材12および有機性コート材18と親和力を持って強固に接着するようになり、水分等の浸入を防止し、極めて優れた加湿中耐久信頼性を有するようになった。また、耐ブロッキング性や接着性、製造・検査も極めて優れていた。
参考品は、接着性材料17を分子量が0.5万未満または、15万を超えるとしているため、各々の特性は優れるが、第6実施例と比較すると物足りない。
なお、この結果は、基材12および有機性コート材18としてポリスチレンやポリカーボネート系を使用した同様の実施例でも同じであり、接着性材料17を分子量が0.5〜15万であるポリエステル系とすると、極めて優れた加湿中耐久信頼性、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査、となった。また、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリプロピレンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の効果が得られた。
(実施の形態7)
実施例7は、有機性被覆材16の構成と、接着性材料17の材質について検討した内容である。前述の(表2)の実施例9よりわかる様に、有機性被覆材16が、特殊エチレンエラストマーとオレフィン系熱可塑性エラストマーとエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物が主成分の接着性材料17と、接着性材料17に積層された有機性コート材18で構成され、基材12が、オレフィン系エラストマーとスチレン系エラストマーとアクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物の混合物が主成分の耐熱フィルムが被覆させた材料であると、優れた効果を有することがわかった。
なお、接着性材料17として用いる、特殊エチレンエラストマー/オレフィン系熱可塑性エラストマー/エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物は、残部/10〜30/20〜40の重量比で混合した組成物が、最適であった。一方、基材12として用いる、オレフィン系エラストマー/スチレン系エラストマー/アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物は、残部/15〜35/10〜30の重量比で混合した組成物が、最適であった。
(実施の形態8)
実施例8は、電極13、14の材質について検討した内容である。電極13等は、その給電部分に導電性有機材料19を介して給電用の導電性端子20が積層されており、さらに導電性端子20にはハンダなどの接合材23を用いて、給電用リード線22が接合される構造である。給電用リード線22は、発熱体に電圧電流を供給するリード線であり、電圧電流供給時に頻繁に引っ張られる。電極13等の給電部分と導電性有機材料19は、この給電用リード線22の引っ張りによって剥離しないことが肝要であり、この影響を回避するため、ただ単に電極13、14の材質を決めると、複雑な工法と高度な品質管理を用いて硬化を行なわななければならない必要が生じる。これに加えて、電極13、14は、その上部に接着性材料17がホットメルトされた際の熱溶融液化物が積層されるので、この影響が回避できる材質としなければならない。
これらのことを考慮して、電極の材質検討をおこなったところ、電極13、14は、銀粉を主成分とする導電性付与材と、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤とからなり、導電性付与剤/結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)であるとすると、柔らかく優れたゴム弾性を持つ電極となった。この共重合ポリエステル樹脂を用いた電極13等は、その引張り強度が他の汎用電極と比較して格段に優れており、給電用リード線22の頻繁なる引っ張りによっても、導電性有機材料19と剥離することなく強固に接合していた。また、この材料の電極13等は、接着性材料17をホットメルトする際の熱溶融液化物と接触しても、その硬化を妨げられることがなく、優れた抵抗特性(導電性、耐屈曲性、耐熱性、耐湿性、耐熱衝撃性など)を長期間維持した。そしてこのことで、電極13、14は、簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになる。
一方、導電性付与剤/結合剤の組成比は、60/40未満とすると、良好な導電性、耐屈曲性、耐熱性や耐湿性や耐熱衝撃性、耐引張り性等が得られず、好ましくなかった。また、95/5を越えると、耐屈曲性、密着性が低下して好ましくなかった。また、導電性付与剤/結合剤の組成比は、より好ましくは80/20〜90/10であり、この組成比とすると、極めて優れた導電性、耐屈曲性、耐熱性、耐湿性、耐熱衝撃性、耐引張り性が得られた。
また、導電性付与材は、銀粉単独または銀粉を主体とするものが好ましい。銀粉の形状としては、フレーク状(リン片状)、球状、樹枝状(デンドライト状)、球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状などがある。この内、フレーク状銀粉または、前述した球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状の銀粉が、特に好ましい。フレーク状銀粉としては光散乱法による平均粒子径(50%D)が1〜15μmが好ましく、より好ましくは2〜8μm、さらに好ましくは2〜5μmである。銀粉の他にカーボンブラック、グラファイト粉などの炭素系のフィラー、金粉、白金粉、パラジウム粉などの貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミ粉、真鍮粉などの卑金属粉、銀などの貴金属でめっき、合金化した卑金属粉、シリカ、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどの無機フィラー、などを銀粉に混合して使用できる。ただ、導電性や耐湿性さらにコスト面より、カーボンブラックおよび/またはグラファイト粉は、銀粉主体の全導電粉に20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下で配合することが好ましい。
共重合ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂とイソシアネート系化合物を反応させ硬化させることで得られる。このポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート系硬化剤となる樹脂(B)を混合して塗布液を調製する場合、樹脂(A)と樹脂(B)の重量比は(A):(B)=90:10〜10:90が好ましく、更に好ましくは(A):(B)=80:20〜20:80の範囲である。固形分重量に対する上記樹脂(A)の割合が10%未満では、基材12への塗布性が不適でその密着性が不十分であるので、酸化重合(あるいは溶剤)タイプのインキの密着性が悪くなった。一方、上記樹脂(B)の割合が10%未満の場合には、酸化重合(あるいは溶剤)タイプのインキによる印刷は可能であるが、実用性のあるインキの密着性が得られなかった。なお、共重合ポリエステル樹脂は、その分子鎖末端に水酸基とカルボキシル基を有するようにすることでも得られた。
硬化剤として用いるイソシアネート化合物は、芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
また、イソシアネート化合物は、特に、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂が最適である。これは、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下、これをブロックイソシアネート型と言う)した樹脂である。例えば、熱反応型の水溶性ウレタンを使用する場合で具体例を説明する。このブロック化されたイソシアネート基は、ウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。製膜時の乾燥あるいは熱セットの過程で、上記樹脂(B)に熱エネルギーが与えられると、ブロック剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂(B)は自己架橋した網目に、混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂(A)
を固定化するとともに、上記樹脂(A)の末端基等とも反応する。塗布液調製時の樹脂(B)は、親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥および熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂(B)の親水基すなわちブロック剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。上記親水性すなわちブロック剤のうち、熱処理温度および熱処理時間が適当で、工業的に広く用いられるものとしては、重亜硫酸塩類が最も好ましい。また、上記樹脂(B)において使用されるウレタンプレポリマーの化学組成としては、(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する分子量が200〜20000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート、(3)分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる末端イソシアネート基を有する化合物、である。
また、ブロックイソシアネート化合物は、これ以外に例えば、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類,エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第三級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が使用される。またその他にも、芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、イミダゾール類、尿素類、ジアリール化合物類も挙げられる。これらは、硬化性よりオキシム類、イミダゾール類、アミン類が好ましい。これらの架橋剤には、その種類に応じて選択された公知の触媒あるいは促進剤を併用することもできる。
(実施の形態9)
実施例9は、給電用リード線22を電極13等に接続する構造について検討した内容である。図1(a)に記載したように、有機性被覆材16は、導電性端子20の外形寸法より小さい寸法の空隙21が設けられている。そして、この小さな空隙21を経由して、給電用リード線22が、電極13等に積層した導電性端子20に接合材23を用いて接合される構成とした。給電用リード線22を通過させるために有機性被覆材16に設ける空隙21が、導電性端子20の外形寸法より小さい寸法であるため、有機性被覆材16が導電性端子20の外周部分を覆って強固に接着しここからの水の浸入を完全に防止して、抵抗体15の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくして加湿耐久信頼性を向上させる。
(実施の形態10)
実施例10は、電極13、14と導電性有機材料19と導電性端子20と接合材23の材質について検討した内容である。導電性有機材料19は、給電用リード線22を接続する導電性端子20を、電極13等の給電部分に物理的電気的に接着する材料である。この給電用リード線22は、発熱体に電圧電流を供給するリード線でありハンダなどの接合材23を用いて導電性端子20に接続固定されているのであるが、電圧電流供給時に頻繁に引っ張られている。導電性有機材料19は、この給電用リード線22の引っ張りによって、電極13等の給電部分から剥離しないことが肝要であり、ただ単にこれらの材質を決めると、複雑な工法と高度な品質管理を用いて硬化を行なわななければならない必要が生じる。
これらのことを考慮して、これらの材質検討をおこなった。その結果、電極13、14と導電性有機材料19は、銀を主成分とする導電性付与材とポリエステル樹脂を少なくとも含有しており、導電性端子20は錫メッキした銅箔からなり、接合材23はスズを含むハンダとすると、給電用リード線22の頻繁なる引っ張りによっても、電極13等と剥離
することなく強固に接合していた。またこのことで、導電性有機材料19は、簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになった。
これら材料は、汎用的な接合材23であるハンダが、スズを含みこれに各種金属を固溶溶させて融点190〜230℃としていることを考慮し、このハンダを使用することで給電用リード線22が簡単な工法と品質管理を用いて電極13等と強固に接合できる様に、その材質を最適に決めたものである。
電極13、14と導電性有機材料19は、両者とも前述の実施の形態1と同じ材質であり、銀の単独または銀とカーボンを混合した導電性付与材と、加工性や接着性さらに電気絶縁性に優れたポリエステル樹脂と、これを硬化させるイソシアネートやスチレンさらにはメタクリル酸メチルエステルなどの硬化剤(架橋用単量体と呼ばれることも有り)が少なくとも含有される。これらは、実施の形態2と同じ組成系とすると良好であり、さらに同じ材質と組成とすると極めて良好であった。また、導電性有機材料19は、電極13等に接合される以前は未硬化の状態であるとすると、さらに簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになった。このことについて以下詳細に説明する。
導電性樹脂材料19は、電極に接合される前は未硬化の状態であり、電極13等に熱接着した後に硬化させることにより、材料の本来の接着強度が発揮されるとした。これを実現するため、導電性有機材料19は、流動性を付与するための僅かな溶剤と、所定の温度(約50〜100℃の任意温度)以下で反応性を制限されるラジカル重合禁止剤(C)を含有している。このことで、未硬化の状態を長期に維持管理できるようになり、導電性有機材料19が形成された導電性端子20の保存期間を長くすることができた。そして、電極13等と接着後に、ラジカル重合禁止剤(C)のブロックが解除される温度以上で熱反応させることによって、共重合ポリエステルは硬化し、熱硬化した共重合ポリエステル本来の強固な接着強度が得られる。その組成配合比は、ポリエステル樹脂(A)、ポリイソシアネート(B)、ラジカル重合禁止剤(C)が、(A)/(B)/(C)=100/0.5〜30/0.001〜0.5(重量比)である。この組成にすることで、共重合ポリエステルは、硬化後も柔軟で変形にも強い接着強度が得られ、さらに簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになった。
また、導電性端子20は、導電性有機材料19の側を疎面化した銅箔に錫メッキすると、さらに良好な接合が得られ、さらに簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになった。
(実施の形態11)
実施例11は、有機性被覆材16に設ける空隙21の位置について検討した内容である。空隙21は、給電用リード線22を導電性端子20にハンダなどの接合材23を用いて接合するために、有機性被覆材16に設けて給電用リード線22を通過させる穴である。導電性端子20は、ハンダなどの接合材23で加熱されるため、その下部にある導電性有機材料19も同時に加熱される。このハンダなどの接合材23による加熱は、導電性有機材料19の導電性端子20および電極13等に対する物理的電気的な接着に影響を与えるため、この影響を回避するため、ただ単に空隙21の位置を決めると、複雑な工法と高度な品質管理を用いて加熱を行なう必要が生じる。
図1(a)に記載したように、有機性被覆材16に設ける空隙21の位置を、導電性端子20の中心部より外れた部分(例えば、中心部より右側部分)に設けると、ハンダなどの接合材23による加熱の影響が、導電性端子20の中心部より外れた部分に及ぶようになる。これにともない、この下部に有る導電性有機材料19は、加熱の影響を中心部より外れた部分に受けるので、この局部的に受ける接着強度の影響が全体の接着強度に及ぶこ
とが大きく低減し、給電用リード線22が頻繁に引っ張られても、電極13等と剥離することなくこれらと強固に接合している。また、このことで、ハンダなどの接合材23による加熱は、簡単な工法と品質管理を用いて行なうことができるようになる。
(実施の形態12)
実施の形態12は、基材12および有機性コート材18の材質について検討した内容であり、(表10)は、その検討結果である。検討は、基材12および有機性コート材18として、材質が異なる芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料を使用した以外は、前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。
実施例は、ポリエチレンテレフタレート(略称、PET)を基材12および有機性コート材18として使用した発熱体である。この実施例は、極めて優れた加湿中耐久信頼性、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査の簡易性となった。この理由は、接着性材料17に使用するポリエステル材料と、基材12および有機性コート材18に使用する芳香族ジカルボン酸を多数有するこの結晶性耐熱ポリエステル材料が、お互いが親和して各々の特性が向上するためと思われる。
なお、この優れた効果は、接着性材料17として、前述のように全多価カルボン酸や多価アルコールの組成を異ならせたポリエステル系組成物を使用しても、同様に得られた。また、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリプロピレンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
(実施の形態13)
実施例12は、給電用リード線22を接合する接合材23の周辺構造について検討した内容である。給電用リード線22は、電圧電流供給時に頻繁に引っ張られるので、導電性端子20から剥離しないことが肝要であり、この影響を回避するため、ただ単に接合材23を加熱すると、複雑な工法と高度な品質管理を用いて加熱を行なう必要が生じる。
図1(a)に記載したように、接合材23は、飽和ポリエステル樹脂を主成分とする有機性補強材24でその周囲を被覆されると、給電用リード線22が頻繁に引っ張られても、導電性端子20と剥離することなく強固に接合していた。これは、接着性と可撓性に優れた飽和ポリエステル樹脂を主成分とする材料を有機性補強材24として用いているため、有機性補強材24が有機性コート材18および接合材23と良好に接着し、しかも弾力性の有るとなって給電用リード線22の引っ張りを吸収して和らげるためと思われる。また、このことで、ハンダなどの接合材23の接続熱は、簡単な工法と品質管理を用いて行
なうことができるようになる。有機性補強材24で使用する飽和ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートまたは接着性材料17に使用した樹脂など、結晶性を有する熱可塑性樹脂に分類される樹脂であり、これをホットメルトしてその熱溶解物を接合材23の周囲に被覆し、冷却して固化した状態で使用される。さらに、有機性補強材24は、リンなどの難燃材を混合した樹脂を使用し、耐トラッキング性を向上されてもよい。