JP4856474B2 - 酸化鉄微粒子およびマゼンダインク - Google Patents
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Description
本発明の酸化鉄微粒子は、Fe2O3からなる酸化鉄(ヘマタイト)であり、平均粒径が150nm以下のものであることが必要である。平均粒径が150nmよりも大きくなると、プリントヘッドからのインクジェットの吐出安定性が悪くなるだけでなく、色調も黒ずんだ色となってマゼンダインクの着色剤として適さなくなる。平均粒径は、好ましくは120nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。ただし、平均粒径は、10nm以上であることが好ましい。10nm未満になると、黄色味が強くなると共に、均一分散性も悪くなるからである。
本発明の酸化鉄微粒子は、噴霧焙焼法、湿式法、水熱法など、一般に知られているヘマタイトの製造方法で製造することができる。原料溶液としては、塩化鉄溶液や硫酸鉄溶液など、酸化鉄を作るのに一般的に用いられている溶液を用いることができる。また、直接ヘマタイトを得る方法以外に、マグネタイトやゲータイト(α−FeO(OH))等、他の形態の鉄酸化物を熱処理してヘマタイトとする方法であっても構わない。さらに、本発明の酸化鉄微粒子は、これらの方法で得られた酸化鉄を、通常公知の方法で粉砕や分級処理し、上述した平均粒径が150nm以下の粒径に調整したものであることが好ましい。
<湿式法による酸化鉄粉の製造>
0.5mol/lのFeおよびV,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Co,Ni,CuおよびAgのうちの1種以上を所定量含む塩化第一鉄溶液または硫酸第一鉄溶液に水酸化ナトリウムを加えて中和し、Feおよび上記金属イオンを含む水酸化鉄溶液を得、次いで、この溶液を温度80℃、pH10に維持しながら空気を吹き込んで酸化し、上記金属を含む鉄酸化物を得た。その後、この鉄酸化物を、脱塩し、ろ過し、乾燥し、解砕して微粉末にし、さらに、大気中で600℃×2時間の熱処理を施し、表1のNo.11〜24に示した上記金属を含む酸化鉄粉を作製した。
<噴霧焙焼法による酸化鉄粉の製造>
Fe濃度が120g/lで、V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Co,Ni,CuおよびAgを所定量含む塩化第一鉄溶液を、600℃の温度で噴霧焙焼して熱分解し、表1のNo.25〜28に示した上記金属を含む酸化鉄粉を作製した。
上記のようにして得た表1のNo.11〜28に示した各種酸化鉄粉を、さらに振動ボールミルで20分間粉砕して酸化鉄微粒子とし、以下の評価試験に供した。
透過電子顕微鏡を用いて、酸化鉄の粒子200個以上について粒径を測定し、その粒径の平均値を求めた。
(凝集粒子の最大径の測定)
レーザー回折式粒度分布測定装置(Microtrac HRA;日機装製)を用いて、凝集粒子の最大径を求めた。
(色調評価)
酸化鉄微粒子1gにあまに油0.6g加えてフーバー式マラーでペースト化し、これに透明ラッカー12gを加えてから、アプリケーターで厚み0.2mmの塗膜を作製し、日本電色製の色差計を用いて、色調(L値、a値およびb値)を測定し、市販の塩化鉄系酸化鉄(比較例1)のL値、a値およびb値を0(基準)とし、これらの値からのずれ(ΔL,Δa,Δb)を求めた。なお、マゼンダインクとして好適に用いることができる色調範囲は、ΔLが0.5〜2.5、Δaが1.0〜6.0、Δbが0.5〜3.0であり、この範囲内にあるものを色調良(○)、この範囲から外れるものを色調劣(×)と評価した。
(安定吐出性の評価)
各酸化鉄微粒子を用いて実際にインクを作製して、直径20μmのプリントヘッドから吐出させ、目詰まりせずに吐出できるかどうかを評価し、目詰まりを起こさない場合を吐出性良(○)、目詰まりを起こさないが吐出むらがある場合を吐出性やや良(△)、目詰まりを起こす場合を吐出性劣(×)と評価した。
これらの結果から、市販の塩化鉄系酸化鉄(比較例1)は、色がくすんでいて、また、この酸化鉄を微粉砕したもの(比較例2〜5)は、Δbが大きく(黄色味が強く)、いずれもマゼンダインクに用いる酸化鉄として適さない。さらに、市販の塩化鉄系酸化鉄は、平均粒径が大きい場合には、吐出安定性が劣る。
また、市販の硫酸鉄系酸化鉄(比較例6)およびこれを微粉砕した酸化鉄(比較例7〜10)は、いずれも鮮やか過ぎて、特に粉砕したものはΔbも大きく(黄色味が強く)て、いずれもマゼンダインク用の酸化鉄には適さない。
これに対して、本発明に従って、置換金属を適量添加し、平均粒径を適正範囲に制御した酸化鉄微粒子(発明例1〜15)は、いずれも、比較例1および比較例6の中間に位置している、即ち、適度の鮮やかさを有し、かつ、Δbが適度に小さく(青みが強く)、マゼンダインクの添加剤に用いて好ましい色調を示している。また、本発明に適合する酸化鉄は、インクの安定吐出性にも優れている。一方、本発明の条件を外れた酸化鉄粉(比較例11〜13)は、上記好適範囲から外れたものとなっている。
Claims (3)
- 平均粒径が150nm以下のFe2O3粉であって、このFe2O3中のFe原子の一部が、V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Co,Ni,CuおよびAgの中から選ばれる1種以上の元素により、合計で0.3〜9mol%置換されてなるマゼンダインク用酸化鉄微粒子。
- インク用溶媒に分散させた時の凝集粒子の最大粒径が2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のマゼンダインク用酸化鉄微粒子。
- 請求項1または2に記載の酸化鉄微粒子を着色剤として含有するマゼンダインク。
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