以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
(実施の形態1)
図2に示すように本実施の形態の、無線受信機に搭載される信号分離装置に利用する最
尤判定部100は、最終段階の処理を行う判定部110と、その前段階の処理を行う判定部150とを有する。また、上記信号分離装置では、最尤判定部100の出力段に、尤度選択、LLR算出などを行う尤度出力部160が配設される。ここで本実施の形態において扱う、隣接するステージ(ステージX−1およびステージX)が、特に、最終より1つ前のステージおよび最終ステージであるものとして説明を行う。
最尤判定部100には、上記従来技術の最尤判定部と同様に、信号変換部からユニタリ変換後の受信信号ベクトルzおよび上三角行列Rの行列要素が入力される。
最終ステージの1つ前のステージに係る判定部150は、最終ステージで各候補点に対する2乗ユークリッド距離が算出される送信信号以外の、各送信信号のシンボル候補(「送信信号候補」とも呼ばれることがある)の組み合わせを出力する。
最終ステージに係る判定部110は、第1の距離演算処理部120と、第2の距離演算処理部130とを有する。
第1の距離演算処理部120は、判定部150から入力される、各送信信号のシンボル候補の組み合わせ(つまり、最終より1つ前のステージまでの各ステージに係るシンボル候補の組み合わせ)の各々について、「シンボル候補固定時の信号点(又は「ステージ信号点」、「ステージ受信点」と呼ぶことがある)」からコンスタレーション上で最も近い最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、「シンボル候補固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離を尤度出力部160に出力する。なお、「シンボル候補固定時の信号点(「ステージ信号点」)」とは、例えば、上記従来に示したような4×4MIMO通信が適用される場合、最終ステージにおいては、z1−(r12x2+r13x3+r14x4)に、最終ステージに係るユニタリ変換後の受信信号z1と、各送信信号のシンボル候補の組み合わせ(すなわち、各x2、x3、x4の組み合わせ)とを入力した結果である。すなわち、一般化すると、z1−(r12x2+…+r1XxX)に、最終ステージに係るユニタリ変換後の受信信号z1と、各送信信号のシンボル候補の組み合わせ(すなわち、各x2、…、xXの組み合わせ)とを入力した結果である。
第2の距離演算処理部130は、最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」、つまり上記例においては、z2−(r23x3+r24x4)および最終より1つ前のステージに係る候補点(つまり、上記例においては、r22x2)のそれぞれに「ステージ変換処理」を行うことにより、最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」および候補点と対応する、最終ステージに係るコンスタレーション上の点を算出する。例えば、64QAMが適用される場合には、最終の2つ前のステージまでのシンボル候補の組み合わせの各々に対して、最終より1つ前のステージに係る64個の候補点と対応する、64個の最終ステージに係るコンスタレーション上の点が算出される。
次に、第2の距離演算処理部130は、こうして算出された最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」および候補点と対応する最終ステージに係るコンスタレーション上の点と、最終ステージに係るシンボル候補の各々とから、最終ステージに係るシンボル候補ごとに、最終ステージまでの2乗ユークリッド距離の総和を最も小さくする最終より1つ前のステージにおけるシンボル候補を算出する。すなわち、第2の距離演算処理部130は、最終より1つ前のステージ以外のステージに係るシンボル候補、つまり最終ステージのシンボル候補および最終より2つ前までのシンボル候補を固定したときに、最終ステージまでの2乗ユークリッド距離の総和が最も小さくなる、最終より1つ前のステージに係るシンボル候補を算出し、その2乗ユークリッド距離の総和を、これ
と対応する最終ステージまでのシンボル候補の組み合わせと関連づけて尤度出力部160に出力する。
尤度出力部160は、最終ステージに係る判定部110からの2乗ユークリッド距離に基づいて、送信信号の各々に関し、各ビットのビット値ごとに尤度を算出する。
図3に示すように判定部110の第1の距離演算処理部120は、ステージ信号点算出部122と、近傍信号点候補検出部124と、距離算出部126とを有する。第2の距離演算処理部130は、ステージ変換処理部131と、信号点候補算出部132と、理想点算出部133と、近傍信号点算出部134と、距離算出部135とを有する。
ステージ信号点算出部122は、判定部150から入力される、各送信信号のシンボル候補の組み合わせの各々について、まず、「シンボル候補固定時の信号点」、つまり最終ステージに係る「ステージ信号点」を算出し、こうして得られる最終ステージに係る「ステージ信号点」を近傍信号点候補検出部124および距離算出部126に出力する。
近傍信号点候補検出部124は、ステージ信号点算出部122からの「ステージ信号点」と最も近い最終ステージに係るコンスタレーション上の候補点を検出し、検出された最近傍候補点を距離算出部126に出力する。
距離算出部126は、ステージ信号点算出部122からの「ステージ信号点」と、近傍信号点候補検出部124からの最近傍候補点との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離と、最近傍候補点およびこれに対応する最終より1つ前のステージまでのシンボル候補の組み合わせとを後段の尤度出力部160に出力する。
ステージ変換処理部131は、最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」および最終より1つ前のステージに係る候補点のそれぞれに「ステージ変換処理」を施すことにより、上記最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」および候補点と対応する、最終ステージに係るコンスタレーション上の点を算出し、こうして得られる最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」および最終より1つ前のステージに係る候補点と対応する、最終ステージに係るコンスタレーション上の点を理想点算出部133に出力する。
信号点候補算出部132は、最終ステージに係る上三角行列の要素を入力し、最終ステージに係るコンスタレーション上のシンボル候補に、前記上三角行列の要素のうち最終ステージに係るシンボル候補の係数となる要素を乗算することにより、最終ステージに係る候補点を算出する。なお、前記上三角行列の要素のうち最終ステージに係るシンボル候補の係数となる要素は、例えば、上記従来に示す場合には、r11となる。
理想点算出部133は、理想的な状態のときに最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」に対してステージ変換処理を施して得られる最終ステージのコンスタレーション上の点、つまり最終ステージまでの2乗ユークリッド距離の総和を最も小さくする最終より1つ前のステージに係るシンボル候補と対応する最終ステージに係るコンスタレーション上の点(以下、「理想信号点」と呼ぶことがある)を算出し、こうして得られる「理想信号点」を近傍信号点算出部134に出力する。「理想信号点」は、最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」と対応する、最終ステージに係るコンスタレーション上の点と、最終ステージに係るシンボル候補の各々とに基づいて、算出される。この「理想信号点」の算出は、最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」の各々(つまり、最終の1つ前のステージまでのシンボル候補の組み合わせの各々)と、最終ステージに係るシンボル候補との全組み合わせについて
行われる。この「理想信号点」を求める方法、理論などについては、後に詳述する。
近傍信号点算出部134は、理想点算出部133からの「理想信号点」と最も近い、最終より1つ前のステージに係る候補点を最終ステージに係るコンスタレーション上にステージ変換して移動したときの信号点(つまり、理想点算出部133からの「理想信号点」と最も近い、最終より1つ前のステージに係るシンボル候補と対応する最終ステージに係るコンスタレーション上の点)を算出し、算出された最近傍信号点を距離算出部135に出力する。
具体的には、近傍信号点算出部134は、ステージ逆変換処理部136と、近傍信号点候補検出部137と、ステージ変換処理部138とを有する。なお、近傍信号点算出部134は、ステージ逆変換処理部136と、近傍信号点候補検出部137と、ステージ変換処理部138とに分かれた構成に限定されない。要は、他の構成、又は、近傍信号点算出部134が単独で、上記近傍信号点算出部134の機能を実現できればよい。
ステージ逆変換処理部136は、「理想信号点」に対してステージ変換処理部131における処理と逆の処理(以下、「ステージ逆変換処理」と呼ぶことがある)を施すことにより、「理想信号点」と対応する最終より1つ前のステージに係るコンスタレーション上の点を算出し、算出された点を近傍信号点候補検出部137に出力する。
近傍信号点候補検出部137は、ステージ逆変換処理部136からの、「理想信号点」と対応する最終より1つ前のステージに係るコンスタレーション上の点から、このコンスタレーション上において最も近い候補点を検出し、検出された最近傍候補点をステージ変換処理部138に出力する。
ステージ変換処理部138は、近傍信号点候補検出部137にて検出された最近傍候補点に対して、ステージ変換処理部131と同様のステージ変換処理を施すことにより、近傍信号点候補検出部137にて検出された最近傍候補点と対応する、最終ステージに係るコンスタレーション上の点を算出し、こうして得られる点を距離算出部135に出力する。
距離算出部135は、近傍信号点算出部134からの、「理想信号点」と最も近い、最終より1つ前のステージに係る候補点と対応する最終ステージに係るコンスタレーション上の点と、前記「理想信号点」を求める際に用いた最終ステージに係るシンボル候補との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離と、前記「理想信号点」を求める際に用いた最終ステージに係るシンボル候補および最終より1つ前のステージに係る「シンボル候補固定時の信号点」の要素である最終より2つ前のステージまでのシンボル候補の組み合わせと、前記「理想信号点」と最も近い最終より1つ前のステージに係るシンボル候補と、を後段の尤度出力部160に出力する。
図4および図5には、特に、本実施の形態の無線受信機に搭載される信号分離装置に利用する最尤判定部100に2×2MIMO通信が適用される場合の最尤判定部100Aが示されている。すなわち、最尤判定部100Aは、ステージ1に係る判定部150Aと、ステージ2(最終ステージ)に係る判定部110Aとを有する。
判定部150Aは、ステージ2で各候補点に対する2乗ユークリッド距離が算出される送信信号以外の送信信号のシンボル候補、すなわちステージ1に係るシンボル候補を出力する。
判定部110Aは、第1の距離演算処理部120Aと、第2の距離演算処理部130A
とを有する。
第1の距離演算処理部120Aは、判定部150Aから入力される、ステージ1に係るシンボル候補の各々について、「シンボル候補固定時の信号点(又は「ステージ信号点」と呼ぶことがある)」からコンスタレーション上で最も近い最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、「シンボル候補固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離を尤度出力部160に出力する。なお、ここでは2×2MIMO通信が適用される場合なので、ステージ2においては、z1−r12x2にステージ2に係るユニタリ変換後の受信信号z1と、ステージ1のシンボル候補(すなわち、x2)のそれぞれとを入力した結果である。
第2の距離演算処理部130Aは、ステージ1に係るユニタリ変換後の受信信号(ここでは、ステージ1とステージ2しかないので、ステージ1に係る「シンボル候補固定時の信号点」は、ステージ1に係るユニタリ変換後の受信信号、つまりz2となる。)およびステージ1に係る候補点(つまり、r12x2)のそれぞれに「ステージ変換処理」を行うことにより、ステージ1に係る受信信号および候補点と対応する、最終ステージに係るコンスタレーション上の点を算出する。
第2の距離演算処理部130Aは、こうして算出されたステージ1に係るユニタリ変換後の受信信号および各ステージ1に係る候補点と対応する、最終ステージに係るコンスタレーション上の点と、最終ステージに係るシンボル候補の各々とから、最終ステージに係るシンボル候補ごとに、ステージ2までの2乗ユークリッド距離の総和を最も小さくするステージ1におけるシンボル候補を算出する。すなわち、第2の距離演算処理部130Aは、ステージ2のシンボル候補を固定したときに、ステージ2までの2乗ユークリッド距離の総和が最も小さくなる、ステージ1に係るシンボル候補を算出し、その2乗ユークリッド距離の総和を、これと対応するステージ1およびステージ2のシンボル候補の組み合わせと関連づけて尤度出力部160に出力する。
図5に示すように第1の距離演算処理部120Aは、ステージ信号点算出部122Aと、近傍信号点候補検出部124Aと、距離算出部126Aとを有する。第2の距離演算処理部130Aは、ステージ変換処理部131Aと、信号点候補算出部132Aと、理想点算出部133Aと、近傍信号点算出部134Aと、距離算出部135Aとを有する。
ステージ信号点算出部122Aは、判定部150Aから入力される、ステージ1のシンボル候補の各々について、まず、「シンボル候補固定時の信号点」、つまりステージ2に係る「ステージ信号点」を算出し、こうして得られるステージ2に係る「ステージ信号点」を近傍信号点候補検出部124Aおよび距離算出部126Aに出力する。
近傍信号点候補検出部124Aは、ステージ信号点算出部122Aからの「ステージ信号点」と最も近いステージ2に係るコンスタレーション上の候補点を検出し、検出された最近傍候補点を距離算出部126Aに出力する。
距離算出部126Aは、ステージ信号点算出部122Aからの「ステージ信号点」と、近傍信号点候補検出部124Aからの最近傍候補点との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離と、最近傍候補点およびこれに対応するステージ2までのシンボル候補の組み合わせとを後段の尤度出力部160に出力する。
ステージ変換処理部131Aは、ステージ1に係るユニタリ変換後の受信信号およびステージ1に係る候補点のそれぞれに「ステージ変換処理」を施すことにより、上記ステージ1に係るユニタリ変換後の受信信号および候補点と対応する、最終ステージに係るコン
スタレーション上の点を算出し、こうして得られるステージ1に係るユニタリ変換後の受信信号およびステージ1に係る候補点と対応する、最終ステージに係るコンスタレーション上の点を理想点算出部133Aに出力する。
信号点候補算出部132Aは、ステージ2に係る上三角行列の要素を入力し、ステージ2に係るコンスタレーション上のシンボル候補に、前記上三角行列の要素のうちステージ2に係るシンボル候補の係数となる要素を乗算することにより、最終ステージに係る候補点を算出する。なお、前記上三角行列の要素のうち最終ステージに係るシンボル候補の係数となる要素は、例えば、上記従来に示す場合には、r11となる。
理想点算出部133Aは、理想的な状態のときにステージ1に係る「シンボル候補固定時の信号点」に対してステージ変換処理を施して得られるステージ2のコンスタレーション上の点、つまりステージ2までの2乗ユークリッド距離の総和を最も小さくするステージ1に係るシンボル候補と対応するステージ2に係るコンスタレーション上の点(以下、「理想信号点」と呼ぶことがある)を算出し、こうして得られる「理想信号点」を近傍信号点算出部134Aに出力する。
近傍信号点算出部134Aは、理想点算出部133Aからの「理想信号点」と最も近い、ステージ1に係る候補点をステージ2に係るコンスタレーション上にステージ変換して移動したときの信号点(つまり、理想点算出部133Aからの「理想信号点」と最も近い、ステージ1に係るシンボル候補と対応するステージ2に係るコンスタレーション上の点)を算出し、算出された最近傍信号点を距離算出部135Aに出力する。
具体的には、ステージ逆変換処理部136Aは、「理想信号点」に対してステージ変換処理部131Aにおける処理と逆の処理(以下、「ステージ逆変換処理」と呼ぶことがある)を施すことにより、「理想信号点」と対応するステージ1に係るコンスタレーション上の点を算出し、算出された点を近傍信号点候補検出部137Aに出力する。なお、近傍信号点算出部134Aは、ステージ逆変換処理部136Aと、近傍信号点候補検出部137Aと、ステージ変換処理部138Aとに分かれた構成に限定されない。要は、他の構成、又は、近傍信号点算出部134Aが単独で、上記近傍信号点算出部134Aの機能を実現できればよい。
近傍信号点候補検出部137Aは、ステージ逆変換処理部136Aからの、「理想信号点」と対応するステージ1に係るコンスタレーション上の点から、このコンスタレーション上において最も近いシンボル候補を検出し、検出された最近傍候補点をステージ変換処理部138Aに出力する。
ステージ変換処理部138Aは、近傍信号点候補検出部137Aにて検出された最近傍候補点に対して、ステージ変換処理部131Aと同様のステージ変換処理を施すことにより、近傍信号点候補検出部137Aにて検出された最近傍候補点と対応する、ステージ2に係るコンスタレーション上の点を算出し、こうして得られる点を距離算出部135Aに出力する。
距離算出部135Aは、近傍信号点算出部134Aからの、「理想信号点」と最も近い、ステージ1に係る候補点と対応するステージ2に係るコンスタレーション上の点と、前記「理想信号点」を求める際に用いたステージ2に係るシンボル候補との2乗ユークリッド距離を算出し、尤度出力部160に出力する。
上記構成を有する最尤判定部100Aおよび尤度出力部160の動作について説明する。ここでは説明を簡単にするために、特に2×2MIMO通信および64QAMが適用さ
れる場合の動作について図4〜6を参照して説明する。
まず、第1の距離演算処理部120Aでは、ステージ信号点算出部122Aがステージ1のシンボル候補d2(64通り)のそれぞれについて、ステージ2の信号点(ステージ2に係るシンボル候補固定時の信号点)であるz1−r12d2を算出する。そして近傍信号点候補検出部124Aにて、ステージ2の信号点(ステージ2に係るシンボル候補固定時の信号点)のそれぞれについて、最も近いステージ2の候補点である最近傍候補点r11d1が全64点検出される。そして、距離算出部126Aにて、各ステージ2の信号点(ステージ2に係るシンボル候補固定時の信号点)と、これに対応する最近傍候補点との2乗ユークリッド距離e2が64通り求められる。
尤度出力部160では、ステージ1およびステージ2で求められたステージ1とステージ2の2乗ユークリッド距離の和e1+e2(246通り)の中で2乗ユークリッド距離の和が最小になるステージ1、ステージ2のシンボル候補d2,d1の各ビットのビット値(0または1(d2,d1に依存))ごとの尤度としてその最小値を設定する。
さらに、尤度出力部160では、この段階で求まっていないd2の尤度を求める。例えば、d2の1ビット目のビット値が1の場合の尤度が求まっていないならば、d2=1*****(*は、0,1任意)の32候補の中で2乗ユークリッド距離の和が最小になるものを尤度として設定する。
以上の第1の距離演算処理部120Aおよび尤度出力部160の流れでは、ステージ2のシンボル候補d1の全着目ビットに関してビット値が0又は1のいずれか一方の尤度が求められていない。このままでは、ビット尤度が存在しない状況になってしまい、通信品質の劣化につながることになる。これを防止するために、第2の距離演算処理部130Aが設けられている。
第2の距離演算処理部130Aでは、ステージ変換処理部131Aがステージ1の信号点をステージ2のコンスタレーション上に移動した点z1−r12/r22×z2を算出する。
理想点算出部133Aでは、ステージ変換処理部131Aにより求められたステージ1の信号点をステージ2のコンスタレーション上に移動した点z1−r12/r22×z2とステージ2の候補点r11d1とを「所定比」α2:1に分割する点である理想信号点Qが64通りのシンボル候補d1について算出される。なお、第1の距離演算処理部120Aおよび尤度出力部160にて求めた「2乗ユークリッド距離の和が最小になるステージ2のシンボル候補」を尤度出力部160が第2の距離演算処理部130Aに出力する場合(図2および図4の破線矢印参照)には、理想点算出部133Aでは、尤度出力部160から出力される、第1の距離演算処理部120Aで求めた「ステージ1のシンボル候補に対する、ステージ2までの2乗ユークリッド距離の和が最小になるステージ2のシンボル候補の組み合わせ情報」に基づいて、第1の距離演算処理部120Aで既に2乗ユークリッド距離の算出対象となったステージ2のシンボル候補以外の最大63通り、最小0通りのシンボル候補d1について理想信号点Qが算出される。すなわち、一般化すると、理想点算出部133では、尤度出力部160から出力される、第1の距離演算処理部120で求めた「最終の1つ前のステージ(ステージX−1)のシンボル候補に対する、最終ステージ(ステージX)までの2乗ユークリッド距離の和が最小になる最終ステージ(ステージX)のシンボル候補の組み合わせ情報」に基づいて、第1の距離演算処理部120で既に2乗ユークリッド距離の算出対象となった最終ステージ(ステージX)のシンボル候補を除く最大63通り、最小0通りのシンボル候補について理想信号点Qが算出される。このようにすることで、演算量を削減することができ、消費電力を低減することができる
。この「理想信号点」を求める方法、理論などについては、後に詳述する。
近傍信号点算出部134Aでは、その理想信号点Qから最も近い、ステージ1の候補点をステージ2のコンスタレーションに移動した点z1−r12d2(64点(上述のように尤度出力部160から第2の距離演算処理部130Aに出力がある場合には、以下すべて最大63点最小0点))を検出する。具体的には、ステージ逆変換処理部136Aがステージ2の理想信号点(分割点)Qをステージ1のコンスタレーションに移動(移動先の点を点Pとする)し、近傍信号点候補検出部137Aが点P(64点)のそれぞれに対するステージ1の候補点r22d2の中から最近傍候補点(64点)を検出する。そして、ステージ変換処理部138Aが近傍信号点候補検出部137Aにて検出された最近傍候補点をステージ2のコンスタレーション上に移動する。
距離算出部135Aでは、ステージ変換処理部138Aによりステージ2のコンスタレーション上に移動された先の点z1−r12d2と、対応するステージ2の候補点r11d1と間の2乗ユークリッド距離64通りを求める。
さらに、尤度出力部160では、求めたステージ2の2乗ユークリッド距離と、そのステージ1のシンボル候補d2に対するステージ1の2乗ユークリッド距離(これは既に距離演算処理部120Aにて算出されている)の和64通りの中で、まだ尤度を求めていないステージ2のシンボル候補の着目ビットのビット値に対し、尤度を求める。例えば、1ビット目のビット値1の尤度が求まっていないならば、d1=1*****(*は、0,1任意)の32候補の中で2乗ユークリッド距離の和が最小になるものを尤度として設定する。
次に理想点算出部133Aにて用いられる、「理想信号点」を求める方法、理論などについて説明する。ここでも説明を簡単化するために2×2MIMO通信および64QAMが適用される場合について説明を行うが、これに限定されるものではない。
まず、もう一度QR分解を伴うMLDについて説明をする。
QR−MLDでは、チャネル行列HをQR分解してユニタリ行列Qと上三角行列Rに分解する。Q
Hを受信信号ベクトルYに掛けて、直交化後の受信信号ベクトルZを計算する。ただし、Xは送信信号ベクトル、Nは雑音成分ベクトルである。この関係を示す式が下記数式(1)である。
QR−MLDにおいては、ステージ1でz
2とr
22d
2の2乗ユークリッド距離e
1を求める(数式(2))。ステージ2でz
1とr
11d
1+r
12d
2の2乗ユークリッド距離e
2を求める(数式(3))。そして、ステージ1およびステージ2での2乗ユークリッド距離の和e
SUMを求める(数式(4))。
ここで、z2はステージ1の「シンボル候補固定時の信号点」であり、d2はステージ1のシンボル候補であり、r22d2はステージ1の候補点である。また、z1−r12d2はステージ2の「シンボル候補固定時の信号点」であり、d1はステージ2のシンボル候補であり、r11d1はステージ1の候補点である。
次に数式(1)〜(4)の物理的意味を考察する。
r
12は複素数であるので、r
12は数式(5)のように表すことができる。
数式(5)を基にステージ2の信号点z
1−r
12d
2を変形すると、下記数式(6)のようになる。
この数式(6)が意味することは、ステージ1の64個の候補点r22d2(図7A)を‖r12‖/r22倍して得られる点を、z1を中心にφ+πだけ回転したものがステージ2のコンスタレーション上に存在するということである。すなわち、ステージ1の候補点と対応するステージ2のコンスタレーション上の点は、図7B中の●のようになる。ただし、●はステージ1から見ればステージ1の候補点r22d2であるが、ステージ2から見ればステージ2の信号点z1−r12d2になる。また、図7B中の○はステージ2の候補点r11d1である。▲はz1であり、ステージ1からステージ2へ変換する際のステージ1のコンスタレーションの回転中心となる。■はステージ1から見ればステージ1の「シンボル候補固定時の信号点」z2であるが、ステージ2から見ればz1−r12/r22×z2と表される。
ここで、そもそも求めたい尤度は、2乗ユークリッド距離の和e1+e2の最小値である。e1,e2がステージ1、ステージ2のコンスタレーション上でどのように表現されるかを図8に示す。
2乗ユークリッド距離の和e
1+e
2は、数式(7)のように表される。
また、e1’はステージ1の「シンボル候補固定時の信号点」z2と候補点r22d2と間の2乗ユークリッド距離e1を、ステージ2のコンスタレーション上に変換移動したものであり、すなわち、z1−r12/r22×z2とz1−r12d2と間の2乗ユークリッド距離である。
したがって、e
1’は数式(9)のように定義できる。
次に数式(9)で表される2乗ユークリッド距離の和e1+e2の下限について考察する。
2乗ユークリッド距離の和e1+e2が最小になる理想の状態が満たす条件は、次の2つである。この条件を図8および図9を参照して説明する。
第1の条件としては、図8Bのステージ2のコンスタレーションにおいて、ステージ1の「シンボル候補固定時の信号点」z2をステージ2のコンスタレーション上に移動した点z1−r12/r22×z2(図9の点A)と、ステージ2の候補点r11d1(図9中の点C)とを結ぶ直線上に、ステージ1の候補点をステージ2のコンスタレーション上に移動した点z1−r12d2が存在することである。
第2の条件としては、さらに線分ABIdealとBIdealCとの間に、「所定比」の関係が成り立つ場合である。なお、2乗ユークリッド距離の和が最小になる理想の点BIdealを求めたいのであって、実際には、ステージ1の候補点をステージ2のコンスタレーションに移動した点が理想点BIdealに重なる可能性は低い。
次に線分ABIdealと線分BIdealCとの間の「所定比」を求める。
ただし、線分ABIdealの長さを√(e1Ideal’)、線分BIdealCの長さを√(e2Ideal)とし、√(e1Ideal’)+√(e2Ideal)=C(C:定数)とする。
理想状態のステージ1およびステージ2の2乗ユークリッド距離の和e
1Ideal+e
2Idealは、次の数式(10)のように展開することができる。
数式(10)から、理想状態のステージ1およびステージ2の2乗ユークリッド距離の和e
1Ideal+e
2Idealが最小になるときの線分AB
Idealの長さ√(e
1Ideal’)は、数式(11)の条件を満たす。
このとき線分B
IdealCの長さ√(e
2Ideal)は、上述の前提条件から、数式(12)となる。
よって、数式(11)および数式(12)により、理想状態のステージ1およびステージ2の2乗ユークリッド距離の和e
1Ideal+e
2Idealが最小になるときの、線分AB
Idealの長さ√(e
1Ideal’)と、線分B
IdealCの長さ√(e
2Ideal)との間の「所定比」、数式(13)のようになる。
つまり、2乗ユークリッド距離の和e1+e2が最小になる理想の状態が満たす条件は、図10のように、点A(z1−r12/r22×z2)、点BIdeal(z1−r12d2)、点C(r11d1)がこの順に一直線上に並び、かつ、線分ABIdealの長さと、線分BIdealCの長さとがABIdeal:BIdealC=α2:1を満たすことである。
しかしながら、前述したように実際には、そのような理想的な配置になることはなく、理想的な点BIdealから距離Δd、∠BBIdealC=βを満たすような点Bにステージ2の信号点z1−r12d2が存在すると考えられる(図10参照)。
このときのステージ1およびステージ2の2乗ユークリッド距離の和e
1+e
2は、数式(14)で表される。ここで、AB
Idealの長さをa、B
IdealCの長さをbとする。
この数式(14)は、∠BBIdealC=βに依存しない。これが意味するところは、2乗ユークリッド距離の和が最小になる点A,点BIdeal,点Cの配置から、ステージ2の信号点z1−r12d2が理想信号点BIdealの位置から点Bに移動しても、移動距離Δdが等しければ、2乗ユークリッド距離の和の増分は変わらない。すなわち、理想信号点BIdealから最も近いステージ2の信号点z1−r12d2で、2乗ユークリッド距離の和e1+e2は、最小になる。
さらに数式(14)は、数式(15)のように変形できる。すなわち、aとΔd、あるいは、bとΔdから、2乗ユークリッド距離の和を求めることもできる。
以上のように、隣り合うステージ(ステージX−1、ステージX)に関して、ステージX−1の「シンボル候補固定時の信号点」をステージXのコンスタレーション上に変換移動した点と、ステージXのシンボル候補とから「理想信号点」を求め、この「理想信号点」と最も近い、ステージX−1の候補点をステージXのコンスタレーション上に変換移動した点を求めることにより、ステージXに対応する2乗ユークリッド距離の和e1+…+eXの最小値、および、このときのステージX−1の候補点を容易に求めることができる。
次に近傍信号点算出部134にて用いられる理論について説明する。ここでも説明を簡単にするために2×2MIMO通信および64QAMが適用される場合について説明するが、これに限定されるものではない。
ステージ1の信号点をステージ2のコンスタレーション上に移動した点A(z1−r12/r22×z2)と、ステージ2の候補点C(r11d1)をα2:1に分割する点BIdealについて、これをステージ1のコンスタレーション上に移動した点をPとする(図11参照)。
ステージ1においてOPベクトル(図11B参照)を‖r
12‖/r
22倍して得られる点を、z
1を中心にφ+πだけ回転したものが、ステージ2のOB
Idealベクトルになる。この関係を式に表すと、数式(16)のようになる。なお、点Oは、コンスタレーションの原点である。
また、図11Aに示すようにOB
Idealベクトルは、数式(17)のように表される。
よって、OPベクトルは、数式(16)および数式(17)により、数式(18)のようになる。
よって、ステージ逆変換処理部136においては、予め定数(r22 2,‖r12‖2,r22r12 *,r22r12 *r11,r22r12 *z1)を求めておくことで、ステージ変換処理を容易に行うことができる。また、予めシンボル候補を正規化しておけば、d1は複素数の成分はそれぞれ整数にすることができる。そのため、d1の乗算は、加算とビットシフトとのみで実現できる。
また、上記数式(16)、数式(17)は、ステージ1とステージ2とを選択した場合、ステージ2の各シンボル候補に対応する、ステージ2のコンスタレーション上の分割点(理想信号点)を、ステージ1のコンスタレーション上に移動できるということを意味する(ステージ逆変換処理部136における処理に対応)。
このステージ変換移動により、ステージ2での2乗ユークリッド距離の和が最小になるようなステージ1のシンボル候補の選択条件が、「ステージ2のコンスタレーション上にある分割点(理想信号点)から最も近いステージ2における「シンボル候補固定時の信号点」」から、「ステージ1のコンスタレーション上に移動された分割点(理想信号点)から最も近いステージ1における候補点」に変化する。
前者の「ステージ2のコンスタレーション上にある分割点(理想信号点)から最も近いステージ2における「シンボル候補固定時の信号点」」を見つける処理は、ステージ2における「シンボル候補固定時の信号点」がステージ2のコンスタレーションのIQ座標系
に対して、必ずしもI軸、Q軸に平行に配置されないため、求めるための処理に負担がかかる。
これに対して、後者の「ステージ1のコンスタレーション上に移動された分割点(理想信号点)から最も近いステージ1における候補点」を見つける処理は、ステージ1における候補点がステージ1のコンスタレーションのIQ座標系に対して、I軸、Q軸に平行に配置されるため、処理負担が少ない。
具体的には、この場合、区画検出の方法を用いることができる。この区画検出の方法は、図12に示すように、d2のI軸、Q軸成分を、±1、±3、±5、±7で正規化した場合、I軸=0,±2r22,±4r22,±6r22、Q軸=0,±2r22,±4r22,±6r22で分割される区画について、点PのI軸成分およびQ軸成分を調べれば、点Pがどの区画に位置するかを容易に検出することができる。
こうして、区画検出によりステージ1とステージ2の2乗ユークリッド距離の和が最小になるステージ1の候補点がわかったので、ステージ1についてステージ1の「シンボル候補固定時の信号点」と候補点との間の2乗ユークリッド距離、ステージ2についてステージ2の「シンボル候補固定時の信号点」と候補点との間の2乗ユークリッド距離を求めることができる。ただし、ステージ1についてステージ1の「シンボル候補固定時の信号点」とステージ1の候補点との間の2乗ユークリッド距離は、本実施の形態においては第1の距離演算処理部120にて求められているので、第2の距離演算処理部130で計算する必要はない。
以上のように本実施の形態のようにすることで、演算量を削減することができるとともに、ビット尤度の不存在の確率を低減することが可能になる。ここで言う演算量とは、乗算量(乗算回数(≒2乗ユークリッド距離計算回数))+その他の演算量という意味である。乗算処理は、他の演算(例えば、加算など)に比べると負担の大きな処理である。したがって、乗算量を減らせれば演算量削減に大きな効果が得られる。
すなわち、図13に示すように従来のQR−MLDでは、ステージXまでの間に2乗ユークリッド距離を(2m)+(2m)2+(2m)3+…+(2m)X−2+(2m)X−1+(2m)X回行う必要がある。
これに対して、本実施の形態では、最終ステージにおける第1の処理系統(第1の距離演算処理部120に対応)にて、最終ステージの「シンボル候補固定時の信号点」と最も近い、最終ステージの候補点のみとの2乗ユークリッド距離だけ算出する。この第1の処理系統における2乗ユークリッド距離の演算回数は、(2m)+(2m)2+(2m)3+…+(2m)X−2+(2m)X−1回である。
また、最終ステージにおける第2の処理系統(第2の距離演算処理部130に対応)では、1つ前のステージの「シンボル候補固定時の信号点」を最終ステージのコンスタレーション上に変換移動した点と、最終ステージの候補点とから「理想信号点」を求め、更に、この「理想信号点」と最も近い、最終より1つ前の候補点を最終ステージのコンスタレーション上に変換移動した点を求めて、この求めた点についてのみ最終ステージの2乗ユークリッド距離を算出する。この演算回数は、(2m)X−1回である(先述の消費電力削減を行うと最小0回、最大(2m)X−1−1回である)。また、第2の処理系統でも、最終より1つ前のステージまでの2乗ユークリッド距離の総和を求める必要があるが、この演算は第1の処理系統で行っているので第2の処理系統で行う必要はない。よって、第2の処理系統の演算処理回数は、(2m)X−1回となる(先述の消費電力削減を行うと、最小0回、最大(2m)X−1−1回である)。
このように、本実施の形態では、最終ステージにおける第1の処理系統および第2の処理系統にて行う2乗ユークリッド距離計算回数の和は、(2m)+(2m)2+(2m)3+…+(2m)X−2+3×(2m)X−1回であり、上記従来のQR−MLDに比べて演算処理回数を削減することができることが分かる(先述の消費電力削減を行うと、最小(2m)+(2m)2+(2m)3+…+(2m)X−2+2×(2m)X−1回、最大(2m)+(2m)2+(2m)3+…+(2m)X−2+3×(2m)X−1−1回である)。また、第1の処理系統にて計算されていない着目ビットのビット値に係る2乗ユークリッド距離は、第2の処理系統にて計算されるので、ビット尤度の不存在を防止することができる。この結果、通信品質を向上させることができる。
次に、図4の最尤判定部100Aに相当する最尤判定部100Bの回路ブロック図を図14に示す。最尤判定部100Bは、ステージ1とステージ2とが並列に配設されている点が先ず異なる。さらに、100Aでは、「ステージ1の信号点をステージ2のコンスタレーション上に移動した点z1−r12/r22×z2と、ステージ2の候補点r11d1と、をα2:1に分割する点Pを、第1の処理系統である第1の距離演算処理部120Aで求めた2乗ユークリッド距離の和が最小になるステージ2のシンボル候補以外の最大63通り、最小0通りのシンボル候補d1について算出する」場合についても説明を行ったが、ここでは、第1の処理系統である第1の距離演算処理部120Bと第2の処理系統である第2の距離演算処理部130Bとの処理が独立して行われる構成にすることで、構成を簡略化した。そのため、尤度出力部160から第2の処理系統である第2の距離演算処理部130Bへの破線矢印をなくし、その代わり、64通りのシンボル候補d1について2乗ユークリッド距離を算出するようにした。すなわち、第1の処理系統である第1の距離演算処理部120B、第2の処理系統である第2の距離演算処理部130Bは、それぞれが基準とするシンボル候補d2,d1の1候補に対して1回処理される。したがって、第1の処理系統である第1の距離演算処理部120Bは64回、第2の処理系統である第2の距離演算処理部130Bも64回処理を行う。
同図に示すように最尤判定部100Bは、ステージ2に係る判定部110Bと、ステージ1に係る判定部150Bを有する。
判定部150Bは、受信点候補点間ベクトル算出部152Bと、2乗ユークリッド距離算出部154Bとを有する。
受信点候補点間ベクトル算出部152Bは、ステージ1のシンボル候補d2、上三角行列の要素r22、ステージ1の受信点z2を入力し、シンボル候補d2と要素r22とを乗算してステージ1の候補点を算出し、この候補点とステージ1の受信点z2とから受信点候補点間ベクトル(z2−r22d2)を算出する。
2乗ユークリッド距離算出部154Bは、受信点候補点間ベクトル算出部152Bからの受信点候補点間ベクトル(z2−r22d2)を入力し、これに基づいてステージ1に係る2乗ユークリッド距離e1を算出する。
判定部110Bは、第1の距離演算処理部120Bと、第2の距離演算処理部130Bとを有する。第1の距離演算処理部120Bは、受信点算出部122Bと、受信点最近傍候補点間ベクトル検出部124Bと、2乗ユークリッド距離算出部126Bとを有する。第2の距離演算処理部130Bは、理想点算出部133Bと、最近傍シンボル候補検出部137Bと、受信点算出部138Bと、受信点最近傍候補点間ベクトル算出部139Bと、2乗ユークリッド距離算出部135Bとを有する。
受信点算出部122Bは、ステージ1のシンボル候補d2、上三角行列の要素r12、ステージ2に係るユニタリ変換後の受信信号z1を入力し、ステージ2の受信点(z1−r12d2)を算出する。
受信点最近傍候補点間ベクトル検出部124Bは、ステージ2のシンボル候補d1、上三角行列の要素r11、受信点算出部122Bからのステージ2の受信点(z1−r12d2)を入力し、シンボル候補d1と要素r11とを乗算してステージ2の候補点を算出する。そして、受信点最近傍候補点間ベクトル検出部124Bは、この候補点のうちステージ2の受信点(z1−r12d2)から最も近い候補点(最近傍候補点)を検出するとともに、この最近傍候補点と受信点とから受信点候補点間ベクトル(z2−r22d2−r11d1(最近傍))を検出する。
2乗ユークリッド距離算出部126Bは、受信点最近傍候補点間ベクトル検出部124Bからの受信点候補点間ベクトル(z2−r22d2−r11d1(最近傍))を入力し、これに基づいてステージ2に係る2乗ユークリッド距離e2を算出する。
すなわち、受信点算出部122Bは、判定部110Aの第1の距離演算処理部120Aにおけるステージ信号点算出部122Aに対応し、受信点最近傍候補点間ベクトル検出部124Bは、近傍信号点候補検出部124Aと対応し、2乗ユークリッド距離算出部126Bは、距離算出部126Aと対応する。
理想点算出部133Bは、ステージ2のシンボル候補d1、理想rz算出部112Bにて算出されたr,z(数式(18)のr,zに対応)を入力し、「理想信号点(z−rd1)」を算出する。ただし、この「理想信号点(z−rd1)」は、上記説明におけるステージ2で求めた「理想信号点」をステージ1に変化移動した点に対応する。すなわち、理想点算出部133Bは、判定部110Aの第2の距離演算処理部130Aにおけるステージ変換処理部131A、信号点候補算出部132A、理想点算出部133A、およびステージ逆変換処理部136Aと対応する。
最近傍シンボル候補検出部137Bは、「理想信号点(z−rd1)」に最も近いステージ1の候補点を検出し、これに対応するシンボル候補(最近傍シンボル候補d2(最近傍))を受信点算出部138Bに出力する。すなわち、最近傍シンボル候補検出部137Bは、近傍信号点候補検出部137Aに対応する。
受信点算出部138Bは、最近傍シンボル候補d2(最近傍)、上三角行列の要素r12、ステージ2に係るユニタリ変換後の受信信号z1を入力し、ステージ2の受信点(z1−r12d2(最近傍))を算出する。すなわち、受信点算出部138Bは、ステージ変換処理部138Aと対応する。
受信点最近傍候補点間ベクトル算出部139Bは、ステージ2の受信点(z1−r12d2(最近傍))と、この受信点を求める元となったステージ2のシンボル候補d1から求める候補点とから、受信点最近傍候補間ベクトル(z1−r12d2(最近傍)−r11d1)を算出する。
2乗ユークリッド距離算出部135Bは、受信点最近傍候補点間ベクトル算出部139Bからの受信点最近傍候補間ベクトル(z1−r12d2(最近傍)−r11d1)を入力し、これに基づいてステージ2に係る2乗ユークリッド距離e2を算出する。
すなわち、受信点最近傍候補点間ベクトル算出部139Bおよび2乗ユークリッド距離算出部135Bは、距離算出部135Aに対応する。
尤度出力部160は、LLR算出部162と、LLR算出部164とを有する。
LLR算出部162は、判定部150Bにて算出されたステージ1の2乗ユークリッド距離e1と、第1の距離演算処理部120Bにて算出されたステージ2の2乗ユークリッド距離e2とを入力し、ステージ1のシンボル候補d2の尤度を算出する。
LLR算出部164は、判定部150Bにて算出されたステージ1の2乗ユークリッド距離e1と、第2の距離演算処理部130Bにて算出されたステージ2の2乗ユークリッド距離e2とを入力し、ステージ2のシンボル候補d1の尤度を算出する。
このように本実施の形態によれば、MIMO方式の無線受信装置で使用される、QR分解を伴うMLD方式の複数のステージに対応する複数の判定部によって信号分離を行う信号分離装置に、前記複数のステージのうちの1つのステージまでに決定されたシンボル候補の残された全組み合わせについて当該組み合わせを固定したときに得られる、前記1つのステージに係る受信点(1つのステージの「シンボル候補固定時の信号点」)の各々から、前記1つのステージの次ステージである他のステージで使用されるコンスタレーション上の候補点であって離間距離が最小である最近傍候補点を検出する検出手段としての近傍信号点候補検出部124と、各最近傍候補点と、前記他のステージまでに決定されたシンボル候補の残された全組み合わせについて当該組み合わせを固定したときに得られる、前記他のステージに係る受信点(他のステージの「シンボル候補固定時の信号点」)とのユークリッド距離を示す量を算出する第1の距離算出手段としての距離算出部126と、を具備する第1の距離演算処理部120と、前記1つのステージに係る受信点を前記他のステージのコンスタレーション上に変換した点と、前記他のステージの候補点とを結ぶ線分を所定比(α2:1)で分割する点であって、前記他のステージまでの2乗ユークリッド距離を示す量の積算値を最小とする点である理想点(「理想信号点」)を算出する理想点算出手段としての理想点算出部133と、前記1つのステージの候補点を前記他のステージのコンスタレーション上に変換した点のうち前記理想点から最も近い点を算出する最近傍点算出手段としての近傍信号点算出部134と、前記算出された理想点から最も近い点と前記他ステージの候補点との2乗ユークリッド距離を示す量を算出する第2の距離算出手段としての距離算出部135と、を具備する第2の距離演算処理部130とを有する、前記他のステージに対応する判定部110を設けた。
こうすることにより、第1の距離演算処理部120では前記他のステージの候補点の中で最近傍候補点のみに対する前記他のステージの2乗ユークリッド距離を表す量を算出し、更に第2の距離演算処理部130では前記他のステージまでの2乗ユークリッド距離の積算値が最も小さくなるステージ1のシンボル候補のみに対する前記他のステージの2乗ユークリッド距離を表す量を算出するので、従来のQR分解を伴う、MLD方式で信号分離を行う信号分離装置に比べて、演算量を削減することができる。また、最近傍信号点のみに対する前記他のステージの2乗ユークリッド距離を表す量を算出する他に、前記他のステージまでの2乗ユークリッド距離の積算値が最も小さくなるステージ1のシンボル候補のみに対する前記他のステージの2乗ユークリッド距離を表す量を算出するので、ビット尤度の不存在を防止することができる。
前記1つのステージおよび前記他のステージは、それぞれ最終より1つ前のステージおよび最終ステージであり、近傍信号点算出部134は、前記他のステージの候補点のうち第1の距離演算処理部120にて既に前記ユークリッド距離を示す量の算出対象になった候補点以外の候補点についてのみ理想点(「理想信号点」)を算出する。
こうすることにより、さらに演算量を削減することができ、消費電力を低減することが
できる。
近傍信号点算出部134は、前記理想点を前記1つのステージのコンスタレーション上の点に変換する変換手段としてのステージ逆変換処理部136と、前記変換された点が存在する、前記1つのステージの各候補点を中心とする候補点領域を検出し、検出された候補点領域の候補点を特定する特定手段としての近傍信号点候補検出部137と、前記特定された候補点を前記他のステージのコンスタレーション上に変換することにより前記理想点から最も近い点を算出する変換手段としてのステージ変換処理部138と、を具備する。
こうすることにより、候補点領域の輪郭を特定するI座標およびQ座標を予め記憶しておき、ステージ逆変換処理部136にて変換された点のI軸成分およびQ軸成分を特定できれば容易に候補点領域を検出でき、対応する候補点を容易に特定できる。この特定された候補点は、前記他のステージまでの2乗ユークリッド距離を示す量の積算値を最小とする、前記1つのステージの候補点に他ならないので、この特定された候補点を前記他のステージのコンスタレーション上に変換することにより、前記他のステージまでの2乗ユークリッド距離を示す量の積算値を最小とするときの前記他のステージに係る2乗ユークリッド距離を表す量を容易に算出することができる。
なお、以上本実施の形態においては、隣接するステージ(ステージX−1およびステージX)、特に、最終より1つ前のステージおよび最終ステージを扱って説明を行った。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、任意のステージに適用することが可能である。
すなわち、図15に示すように、第1の処理系統では、例えばステージA(シンボル候補dA)を選択すると、dX,dX−1,…,dA−1の全組み合わせで計算すれば、全てのe1,e2,…,eA−1が計算される。これにより、dA+1,dA+2,…,d1の各組み合わせに対してeA,eA+1,…,eXの和が最小となるdAを求めて、この最小となるdAについて2乗ユークリッド距離eA,eA+1,…,eXを求める。こうして得られた各ステージの2乗ユークリッド距離を用いて、尤度出力部にて、dA以外のシンボル候補の各着目ビットのビット値1および0の尤度と、dAの0又は1の一方の尤度が求められる。
例えば、e1はdXに依存するので、全2m通りの組み合わせに対して、2乗ユークリッド距離計算が必要である。e2はdX,dX−1に依存するので、全(2m)2通りの組み合わせに対して、2乗ユークリッド距離計算が必要である。他のステージに係る2乗ユークリッド距離の計算も同様であるが、ステージAの2乗ユークリッド距離eAだけは、dA以外のシンボル候補、全(2m)X−1通りの組み合わせについて、eA,eA+1,…,eXの和が最小になるdAを選ぶので、(2m)X−1通りの組み合わせについて2乗ユークリッド距離計算をするだけでよい。したがって、第1の処理系統では、2乗ユークリッド距離計算回数は(2m)+(2m)2+(2m)3+…+(2m)X−1+(2m)X−1回である。
第2の処理系統では、第1の処理系統で求められていないdAの0又は1の尤度を求める。例えば、ステージB(シンボル候補dB、仮にステージBはステージAより前のステージとする)を選択すると、dX,dX−1,…,dB−1の全組み合わせについては、第1の処理系統で計算しているため、計算の必要はない。したがって、第2の処理系統では、dB+1,dB+2,…,d1の各組み合わせに対して、eB,eB+1,…,eXの和が最小となるようなdBを選択することで、求められていないシンボル候補dBに係る2乗ユークリッド距離が算出される。こうして得られた各ステージの2乗ユークリッド
距離を用いて、尤度出力部にて、dBの0又は1の一方の尤度が求められる。ここで、eB,eB+1,…,eXの和が最小となるときのeB,eB+1,…,eA−1についても、第1の処理系統で求められているので計算する必要はない。よって、第2の処理系統では、2乗ユークリッド距離計算回数は、(2m)A−1+(2m)A+…+(2m)X−2+(2m)X−1回となる。
以上より、最終ステージにおける第1の処理系統および第2の処理系統にて行う演算処理回数の和は、(2m)+(2m)2+(2m)3+…+(2m)A−2+2{(2m)A−1+(2m)A+…+(2m)X−2+(2m)X−1}+(2m)X−1回である。ここで、ステージAは、2〜Xで任意の値を取れるが、A=Xすなわち第1の処理系統で選択するステージが最終ステージである場合に、2乗ユークリッド距離計算回数は最も少なくなり、(2m)+(2m)2+(2m)3+…+(2m)X−2+3(2m)X−1回になる。
なお、第1の処理系統においてdA以外シンボル候補の0および1の尤度計算の基礎になる2乗ユークリッド距離を計算し、第2の処理系統において、dAの0および1の尤度計算の基礎になる2乗ユークリッド距離の計算を行うこともできる。また、説明のためにステージBはステージAより前のステージという前提にしたが、順番が逆でもよい。ただし、AとBとは同一ステージであってはならない。
このようにMIMO方式の無線受信装置で使用される、QR分解を伴うMLD方式の複数のステージによって信号分離を行う信号分離方法に、前記複数のステージのうちの1つのステージ(ここでは、ステージA)以外のシンボル候補の全組み合わせのそれぞれについて、前記1つのステージから最終ステージのそれぞれに係る2乗ユークリッド距離の和が最小となる前記1つのステージのシンボル候補を特定し、当該特定されたシンボル候補と前記組み合わせとの組み合わせについてのみ前記1つのステージ以降のステージに係る2乗ユークリッド距離を算出するステップと、前記1つのステージと異なる他のステージ(ここでは、ステージB)以外のシンボル候補の全組み合わせのそれぞれについて、前記他のステージから最終ステージのそれぞれに係る2乗ユークリッド距離の和が最小となる前記他のステージのシンボル候補を特定し、当該特定されたシンボル候補と前記他のステージ以外のシンボル候補の全組み合わせとの組み合わせについてのみ前記他のステージ以降のステージに係る2乗ユークリッド距離を算出するステップと、を具備するようにした。これは、各ステージの2乗ユークリッド距離ex(1≦x≦X)が、シンボル候補dX,dX−1,…,dX−x+1の関数であることに着目したことに基づくものである。
こうすることにより、演算量を削減しつつビット尤度の存在しない確率を下げることにより、演算量を削減でき、且つ、通信品質を向上させることができる。
(実施の形態2)
上述の実施の形態1では、主にQR分解を伴うMLDが適用される場合について説明を行った。本実施の形態では、QR分解を伴わないMLDが適用される場合について説明する。
図16に示すように無線受信機に搭載される信号分離装置に利用する最尤判定部200は、QR分解を行わないので段階的に2乗ユークリッド距離の和を求めることがなく、判定部210のみを有する。
最尤判定部200には、QR分解を行わないので、受信信号ベクトルyおよびチャネル行列Hの行列要素が入力される。
最尤判定部200は、第1の距離演算処理部230−1と、第2の距離演算処理部230−2とを有する。本実施の形態においては、第1の距離演算処理部230−1と第2の距離演算処理部230−2は同一の構成になる。
第1の距離演算処理部230−1は、「送信信号ベクトルxの1つの送信ストリーム以外の全送信ストリームに係るシンボル候補(つまり、送信信号ベクトルxの1つの要素以外の要素に係るシンボル候補)を固定時の信号点(信号ベクトル)」から、上記1つの送信ストリームに係るコンスタレーション上で最も近い最近傍候補点を、送信信号ベクトルxの1つの送信ストリーム以外の全送信ストリームに係るシンボル候補の組み合わせの各々について検出するとともに、各最近傍候補点と、当該各最近傍候補点と対応する上記「送信信号ベクトルxの1つの送信ストリーム以外の全送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出する。
すなわち、第1の距離演算処理部230−1は、各送信ストリームのシンボル候補の組み合わせの各々について、「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」からコンスタレーション上で最も近い最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、上記「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出する。なお、上記「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」とは、例えば、上記従来に示したような4×4MIMO通信が適用される場合で、シンボル候補x2、x3、x4の組合せを固定する場合は、y1−(h12x2+h13x3+h14x4)、y2−(h22x2+h23x3+h24x4)、y3−(h32x2+h33x3+h34x4)、y4−(h42x2+h43x3+h44x4)に、受信信号y1、y2、y3、y4と、各送信信号のシンボル候補の組み合わせ(すなわち、各x2、x3、x4の組み合わせ)とを入力した結果である。すなわち、一般化すると、y1−(h12x2+…+h1XxX)、y2−(h22x2+…+h2XxX)、…yX−(hX2x2+…+hXXxX)に、受信信号z1、z2、…zxと、各送信信号のシンボル候補の組み合わせ(すなわち、各x2、…、xXの組み合わせ)とを入力した結果である。
具体的には、第1の距離演算処理部230−1は、「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」および候補点と対応する、固定していない残り1つのシンボル候補(つまり、上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補)に係るコンスタレーション上の点と、上記1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補の各々とから、上記1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補ごとに、2乗ユークリッド距離の総和を最も小さくする上記1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を算出する。すなわち、第1の距離演算処理部230−1は、1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定したときに、2乗ユークリッド距離の総和が最も小さくなる、上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補を算出する。そして、第1の距離演算処理部230−1は、その2乗ユークリッド距離の総和を、これと対応するシンボル候補の組み合わせと関連づけて尤度出力部160に出力する。
第2の距離演算処理部230−2は、「第1の距離演算処理部230−1で固定しなかった送信ストリームとは別の送信ストリーム(以下、単に「他送信ストリーム」と呼ぶことがある)以外の全送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点(信号ベクトル)」から、上記他送信ストリームに係るコンスタレーション上で最も近い最近傍候補点を、他送信ストリーム以外の全送信ストリームに係るシンボル候補の組み合わせの各々について検出するとともに、各最近傍候補点と、当該各最近傍候補点と対応する上記「他送信ストリーム以外の全送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出する。
すなわち、第2の距離演算処理部230−2は、「他送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」からコンスタレーション上で最も近い最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、上記「他送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出する。なお、上記「他送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」とは、例えば、上記例において、シンボル候補x1、x3、x4を固定する場合は、y1−(h11x1+h13x3+h14x4)、y2−(h21x1+h23x3+h24x4)、y3−(h31x1+h33x3+h34x4)、y4−(h41x1+h43x3+h44x4)に、受信信号y1、y2、y3、y4と、各送信信号のシンボル候補の組み合わせ(すなわち、各x1、x3、x4の組み合わせ)とを入力した結果である。すなわち、一般化すると、y1−(h11x1+…+h1XxX)、y2−(h21x1+…+h2XxX)、…yX−(hX1x1+…+hXXxX)に、受信信号z1、z2、…zxと、各送信信号のシンボル候補の組み合わせ(すなわち、各x1、x3、…、xXの組み合わせ)とを入力した結果である。なお、第2の距離演算処理部230−2も具体的には、上記1つの送信ストリームと異なる上記他送信ストリームについて第1の距離演算処理部230−1と同様に、上記他送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定したときに、2乗ユークリッド距離の総和が最も小さくなる、上記他送信ストリームに係るシンボル候補を算出する。そして第2の距離演算処理部230−2も、その2乗ユークリッド距離の総和を、これと対応するシンボル候補の組み合わせと関連づけて尤度出力部160に出力する。
尤度出力部160は、判定部210からの2乗ユークリッド距離に基づいて、送信信号の各々に関し、各ビットのビット値ごとに尤度を算出する。
図17に示すように判定部210の第1、第2の距離演算処理部230−1,2は、受信点算出部232と、理想点算出部233と、近傍信号点算出部234と、距離算出部235とを有する。
第1の距離演算処理部230−1においては、受信点算出部232は、受信信号とチャネル行列の要素を入力し、固定していない1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補に、前記チャネル行列の要素を乗算することにより、「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の候補点」を算出する。
理想点算出部233は、理想的な状態のときに上記「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」に対して2乗ユークリッド距離の総和を最も小さくする、上記「1つの送信ストリームに係るシンボル候補に対応するコンスタレーション上の点(以下、「理想信号点」と呼ぶことがある)を算出し、こうして得られる「理想信号点」を近傍信号点算出部234に出力する。「理想信号点」は、「1つのシンボル候補以外のシンボル候補を固定時の信号点」と対応する、固定していない残り1つのシンボル候補(つまり、上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補)に対応するコンスタレーション上の点、および、残り1つのシンボル候補(つまり、上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補)の各々とに基づいて、算出される。この「理想信号点」の算出は、上記「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」の各々と、上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補との全組み合わせについて行われる。この「理想信号点」を求める方法、理論などについては、後に詳述する。
近傍信号点算出部234は、理想点算出部233からの「理想信号点」と最も近い、上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補に対応する候補点を算出し、算出された最近
傍信号点を距離算出部235に出力する。
距離算出部235は、近傍信号点算出部234からの、「理想信号点」と最も近い、上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補に対応する候補点と、前記「理想信号点」を求める際に用いた「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離と、前記「理想信号点」を求める際に用いた「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」の要素であるシンボル候補の組み合わせと、前記「理想信号点」と最も近い上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補と、を後段の尤度出力部160に出力する。
なお、第2の距離演算処理部230−2の受信点算出部232、理想点算出部233、近傍信号点算出部234、および距離算出部235では、第1の距離演算処理部230−1での上記1つの送信ストリームと異なる上記他送信ストリームについて同様の処理が行われる。
図18および図19には、特に、本実施の形態の無線受信機に搭載される信号分離装置に利用する最尤判定部200に2×2MIMO通信が適用される場合の最尤判定部200Aが示されている。QR分解を行わないので段階的に2乗ユークリッド距離の和を求めることがなく、判定部210Aのみを有する。この判定部210Aは、第1送信ストリームについて処理を行う第1の距離演算処理部230A−1と、第1送信ストリームと異なる第2送信ストリームについて処理を行う第2の距離演算処理部230A−2とを有する。
第1の距離演算処理部230A−1は、各送信信号のシンボル候補の組み合わせの各々について、「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」からコンスタレーション上で最も近い最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、上記「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離を尤度出力部160に出力する。なお、上記「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」とは、y1−h12x2、y2−h22x2に、受信信号y1、y2と、送信信号のシンボル候補x2とを入力した結果である。
具体的には、第1の距離演算処理部230A−1は、「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」および候補点と対応する、第1送信ストリームに係るシンボル候補に対応するコンスタレーション上の点と、第1送信ストリームに係るシンボル候補の各々とから、第1送信ストリームに係るシンボル候補ごとに、2乗ユークリッド距離の総和を最も小さくする第2送信ストリームに係るシンボル候補を算出する。すなわち、第1の距離演算処理部230A−1は、第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定したときに、2乗ユークリッド距離の総和が最も小さくなる、第1送信ストリームに係るシンボル候補を算出する。そして、第1の距離演算処理部230A−1は、その2乗ユークリッド距離の総和を、これと対応するシンボル候補の組み合わせと関連づけて尤度出力部160に出力する。
第2の距離演算処理部230A−2は、「第1の距離演算処理部230A−1で固定しなかった送信ストリームとは別の送信ストリームである第1送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」からコンスタレーション上で最も近い最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、上記「第1送信ストリームに係るシンボル候補固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出する。なお、上記「第1送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」とは、y1−h11x1、y2−h21x1に、受信信号y1、y2と、送信信号のシンボル候補x1とを入力した結果である。なお、第2の距
離演算処理部230A−2も具体的には、上記第2送信ストリームについて第1の距離演算処理部230A−1と同様に、上記第1送信ストリームに係るシンボル候補を固定したときに、2乗ユークリッド距離の総和が最も小さくなる、上記第2送信ストリームに係るシンボル候補を算出する。そして第2の距離演算処理部230A−2も、その2乗ユークリッド距離の総和を、これと対応するシンボル候補の組み合わせと関連づけて尤度出力部160に出力する。
尤度出力部160は、判定部210Aからの2乗ユークリッド距離に基づいて、送信信号の各々に関し、各ビットのビット値ごとに尤度を算出する。
図19に示すように判定部210Aの第1、第2の距離演算処理部230A−1,2は、受信点算出部232Aと、理想点算出部233Aと、近傍信号点算出部234Aと、距離算出部235Aとを有する。
第1の距離演算処理部230A−1においては、受信点算出部232Aは、受信信号とチャネル行列の要素を入力し、第2送信ストリームに係るシンボル候補に、前記チャネル行列の要素を乗算することにより、「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の候補点」を算出する。
理想点算出部233Aは、理想的な状態のときに上記「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」に対して2乗ユークリッド距離の総和を最も小さくする、上記「第1送信ストリームに係るシンボル候補に対応するコンスタレーション上の点(つまり、「理想信号点」)を算出し、こうして得られる「理想信号点」を近傍信号点算出部234Aに出力する。「理想信号点」は、「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」と対応する、第1送信ストリームに係るシンボル候補に対応するコンスタレーション上の点、第1送信ストリームに係るシンボル候補の各々とに基づいて、算出される。この「理想信号点」の算出は、上記「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」の各々と、第1送信ストリームに係るシンボル候補との全組み合わせについて行われる。この「理想信号点」を求める方法、理論などについては、後に詳述する。
近傍信号点算出部234Aは、理想点算出部233Aからの「理想信号点」と最も近い、第1送信ストリームに係るシンボル候補に対応する候補点を算出し、算出された最近傍信号点を距離算出部235Aに出力する。
距離算出部235Aは、近傍信号点算出部234Aからの、「理想信号点」と最も近い、第1送信ストリームに係るシンボル候補に対応する候補点と、前記「理想信号点」を求める際に用いた「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離と、前記「理想信号点」を求める際に用いた「第2送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」の要素であるシンボル候補の組み合わせと、前記「理想信号点」と最も近い上記第1送信ストリームに係るシンボル候補と、を後段の尤度出力部160に出力する。
なお、第2の距離演算処理部230A−2の受信点算出部232A、理想点算出部233A、近傍信号点算出部234A、および距離算出部235Aでは、第1の距離演算処理部230A−1での第2送信ストリームについて同様の処理が行われる。
次に理想点算出部233Aにて用いられる、「理想信号点」を求める方法、理論などについて説明する。ここでは説明を簡単化するために2×2MIMO通信および64QAMが適用される場合について説明を行うが、これに限定されるものではない。
まず、QR分解を伴わないMLDについて説明をする。
QR分解を伴わないMLDでは、Xを送信信号ベクトル、Nを雑音成分ベクトルとすると、受信信号ベクトルYは、下記数式(19)で表される。
MLDにおいては、y
1とh
11d
1+h
12d
2の2乗ユークリッド距離e
1を求める(数式(20))。またy
2とh
21d
1+h
22d
2の2乗ユークリッド距離e
2を求める(数式(21))。そして、2乗ユークリッド距離の和e
SUMを求める(数式(22))。
ここで、y1−h12d2、y2−h22d2は固定するシンボル候補としてd2を選んだときの「1つの送信ストリーム以外の他送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」であり、このときのd1は固定していない残り1つの送信ストリームである他送信ストリームのシンボル候補である。また、y1−h11d1、y2−h21d1は固定するシンボル候補としてd1を選んだときの上記「他送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」であり、このときのd2は固定していない残り1つの送信ストリームである上記他送信ストリームのシンボル候補である。
ここで、数式(22)を以下のように数式(23)のように変形する。ただしD
1はシンボル候補d
2固定時の定数である。D
2はシンボル候補d
1固定時の定数である。1つの送信ストリーム以外の他送信ストリームに係るシンボル候補を固定時、2乗ユークリッド距離の和は、1つの送信ストリームに係るシンボル候補についての2次関数で表されるため、2乗ユークリッド距離の和が最小となる1つの送信ストリームに係るシンボル候補を算出できる。
これより、固定するシンボル候補としてd
2を選んだときの、理想的な、固定していない残り1つのシンボル候補d
1は、数式(24)のようになる。
同様にして、固定するシンボル候補としてd
1を選んだときの、理想的な、固定していない残り1つのシンボル候補d
2は、数式(25)のようになる。
これより、固定するシンボル候補としてd2を選んだときの「理想信号点」は、h11d1Ideal、h21d1Idealとなる。固定するシンボル候補としてd1を選んだときの「理想信号点」は、h12d2Ideal、h22d2Idealとなる。
ところで従来のMLDでは、送信アンテナ数がXの場合、2乗ユークリッド距離計算をX(2m)X回行う必要がある。
これに対して、本実施の形態では、第1の処理系統(第1の距離演算処理部230A−1に対応)にて、「1つの送信ストリーム以外の送信ストリームに係るシンボル候補を固定時の信号点」と最も近い、固定していない残り1つの送信ストリームである上記1つの送信ストリームに係るシンボル候補点のみとの2乗ユークリッド距離だけ算出する。この第1の処理系統における2乗ユークリッド距離の演算回数は、X(2m)X−1回である。
第2の処理系統(第2の距離演算処理部230A−2に対応)における2乗ユークリッド距離の演算回数も同様に、X(2m)X−1回である。
このように本実施の形態では、第1の処理系統および第2の処理系統にて行う2乗ユークリッド距離計算回数の和は、2X(2m)X−1回であり、上記従来のMLDに比べて演算処理回数を削減することができることが分かる。また、第1の処理系統にて計算されていない着目ビットのビット値に係る2乗ユークリッド距離は、第2の処理系統にて計算されるので、ビット尤度の不存在を防止することができる。この結果、通信品質を向上さ
せることができる。
以上本発明の実施の形態1および実施の形態2をまとめると、本発明の1つの特徴は、以下の点である。すなわち、図20に示すように第1の処理系統において、1つの送信ストリームに係るシンボル候補dA以外の全送信ストリームに係るシンボル候補(2m)X通りの組合せについて、それぞれの組合せについて2乗ユークリッド距離の総和を最小にするようなシンボル候補dAを選択し、そのときの2乗ユークリッド距離とシンボル候補の組合せを出力する。第2の処理系統において、1つの送信ストリームに係るシンボル候補dB(ただしA≠B)以外の全送信ストリームに係るシンボル候補(2m)X通りの組合せについて、それぞれの組合せについて2乗ユークリッド距離の総和を最小にするようなシンボル候補dBを選択し、そのときの2乗ユークリッド距離とシンボル候補の組合せを出力する。
なお、2乗ユークリッド距離の計算のために、実施の形態として主にQR分解を伴うMLDとMLDの2種類を挙げたが、本発明はシンボル候補の選択の方法を特徴としているのであって、2乗ユークリッド距離の計算方法にはよらない。また、図20に示すように、尤度の求め方としては、第1の処理系統にて求められた2乗ユークリッド距離とシンボル候補の組合せからdB以外の尤度を計算し、第2の処理系統にて求められた2乗ユークリッド距離とシンボル候補の組合せからdBの尤度を計算することができる一方で、第1の処理系統にて求められた2乗ユークリッド距離とシンボル候補の組合せからdAの尤度を計算し、第2の処理系統にて求められた2乗ユークリッド距離とシンボル候補の組合せからdA以外の尤度を計算することもできる。
こうすることにより、演算量を削減しつつビット尤度の存在しない確率を下げることにより、演算量を削減でき、且つ、通信品質を向上させることができる。
(他の実施の形態)
(1)前述の数式(15)は、さらに次のように変形することができる。
ここで、定数を以下の数式(27)〜(31)のように定義する。
そうすると、2乗ユークリッド距離は、以下のように送信シンボル候補を逆転させて表現できる。
上記数式(32)〜(34)が意味することは、上記(27)〜(31)のような変換式を用いることにより、各ステージに係る送信ストリームを入れ替えることが可能であるということである。この事実を、2×2MIMO通信、QR分解を伴うMLDに導入した実施例について以下で説明する。
図21および図22には、本実施の形態の無線受信機に搭載される信号分離装置に利用する最尤判定部100に2×2MIMO通信が適用される場合の最尤判定部100Cが示されている。すなわち、最尤判定部100Cは、定数計算部151Cと、判定部110Cとを有する。
定数計算部151Cは、チャネル行列HがQR分解された結果であるQ行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルの要素およびR行列の行列要素である、zとrとを入力し、上記数式(27)〜(31)を用いてz’とr’とを算出し、算出結果を判定部110Cに出力する。すなわち、定数計算部151Cから判定部110Cへは、チャネル行列HがQR分解された結果であるQ行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルおよびR行列から求められた、チャネル行列Hの列が入れ替えられた変換後チャネル行列H’がQR分解された結果であるQ’行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルの要素およびR’行列の要素が入力される。
判定部110Cは、第1の距離演算処理部120C−1と、第2の距離演算処理部12
0C−2とを有する。本実施の形態においては、第1の距離演算処理部120C−1と第2の距離演算処理部120C−2は同一の構成になる。
第1の距離演算処理部120C−1は、チャネル行列HがQR分解された結果であるQ行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルの要素およびR行列の要素を入力し、ステージ1に係るシンボル候補の各々について、「シンボル候補固定時の信号点(又は「ステージ信号点」と呼ぶことがある)」からコンスタレーション上で最も近い、ステージ2の最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、「シンボル候補固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離を尤度出力部160に出力する。なお、ここでは2×2MIMO通信が適用される場合なので、「シンボル候補固定時の信号点(又は「ステージ信号点」と呼ぶことがある)」とは、ステージ2においては、z1−r12x2にステージ2に係るユニタリ変換後の受信信号z1と、ステージ1のシンボル候補(すなわち、x2)のそれぞれとを入力した結果である。
第2の距離演算処理部120C−2は、チャネル行列HがQR分解された結果であるQ行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルおよびR行列から求められた、チャネル行列Hの列が入れ替えられた変換後チャネル行列H’がQR分解された結果であるQ’行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルの要素およびR’行列の要素を入力し、ステージ1に係るシンボル候補の各々について、「シンボル候補固定時の信号点(又は「ステージ信号点」と呼ぶことがある)」からコンスタレーション上で最も近い、ステージ2の最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、「シンボル候補固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離を尤度出力部160に出力する。なお、ここでは2×2MIMO通信が適用される場合なので、「シンボル候補固定時の信号点(又は「ステージ信号点」と呼ぶことがある)」とは、ステージ2においては、z1’−r12’x1にステージ2に係るユニタリ変換後の受信信号z1’と、ステージ1のシンボル候補(すなわち、x1)のそれぞれとを入力した結果である。また、第2の距離演算処理部120C−2では、Q行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルおよびR行列から求められた、チャネル行列Hの列が入れ替えられた変換後チャネル行列H’がQR分解された結果であるQ’行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルの要素およびR’行列の要素を用いた演算がなされるので、第2の距離演算処理部120C−2で扱う各ステージに対応する送信ストリームは、第1の距離演算処理部120C−1と扱うものと入れ替わっている。すなわち、第2の距離演算処理部120C−2にてステージ1に対応する送信ストリームは、第1の距離演算処理部120C−1ではステージ2に対応する送信ストリームである。
図22に示すように第1、第2の距離演算処理部120C−1,2は、ステージ1に係る判定部150Cと、ステージ信号点算出部122Cと、近傍信号点候補検出部124Cと、距離算出部126Cとを有する。
判定部150Cは、ステージ2で各候補点に対する2乗ユークリッド距離が算出される送信ストリーム以外の送信ストリームのシンボル候補、すなわちステージ1に係るシンボル候補を出力する。
ステージ信号点算出部122Cは、判定部150Cから入力される、ステージ1のシンボル候補の各々について、まず、「シンボル候補固定時の信号点」、つまりステージ2に係る「ステージ信号点」(第1であればz1−r12x2、第2であればz1’−r12’x1)を算出し、こうして得られるステージ2に係る「ステージ信号点」を近傍信号点候補検出部124Cおよび距離算出部126Cに出力する。
近傍信号点候補検出部124Cは、ステージ信号点算出部122Cからの「ステージ信
号点」と最も近いステージ2に係るコンスタレーション上の候補点(第1であればr11x1、第2であればr11’x2)を検出し、検出された最近傍候補点を距離算出部126Cに出力する。
距離算出部126Cは、ステージ信号点算出部122Cからの「ステージ信号点」と、近傍信号点候補検出部124Cからの最近傍候補点との2乗ユークリッド距離を算出し、この2乗ユークリッド距離と、最近傍候補点およびこれに対応するステージ2までのシンボル候補の組み合わせとを後段の尤度出力部160Cに出力する。
このように第1の距離演算処理部120C−1および第2の距離演算処理部120C−2では、それぞれステージ1に係るシンボル候補の各々について、「シンボル候補固定時の信号点」からコンスタレーション上で最も近い、ステージ2の最近傍候補点を検出するとともに、この最近傍候補点と、「シンボル候補固定時の信号点」との2乗ユークリッド距離を算出するので、従来のQR分解を伴う、MLD方式で信号分離を行う信号分離装置に比べて、演算量を削減することができる。また、第2の距離演算処理部120C−2では、チャネル行列HがQR分解された結果であるQ行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルおよびR行列から求められた、チャネル行列Hの列が入れ替えられた変換後チャネル行列H’がQR分解された結果であるQ’行列によりユニタリ変換された後の受信信号ベクトルの要素およびR’行列の要素に基づいて、第1の距離演算処理部120C−1と各ステージに係る送信ストリームを入れ替えて同様の演算処理を行うことにより、ビット尤度の存在しない確率を下げることができる。
(2)ここで、各ストリームの変調多値数がそれぞれ異なる場合について考える。変調多値数が、第1ストリームに係るシンボル候補d1でm1、第2ストリームに係るシンボル候補d2でm2、…、第Xストリームに係るシンボル候補dXでmXである場合、コンスタレーション数は順に2m1、2m2、…、2mXとなる。このとき、変調多値数の最も大きいシンボル候補を最終ステージに係るシンボル候補とすることで、演算量(2乗ユークリッド距離計算回数)を削減できる。
説明を簡単にするために、2×2MIMOの場合について説明する。シンボル候補d1、d2について、変調多値数が順にm1、m2であり、m1>m2であるとする。このとき、第1の距離演算処理部120における2乗ユークリッド距離計算回数は、2m1+2m1回であり、第2の距離演算処理部130における2乗ユークリッド距離計算回数は、2m2回である。よって第1の距離演算処理部120および第2の距離演算処理部130の全体での2乗ユークリッド距離計算回数は、(2m1+2m2)+2m1回である。一方で、m1>m2であるので、変調多値数の大きいm1、すなわちシンボル候補d1を最終ステージに係るシンボル候補とすると、第1の距離演算処理部120における2乗ユークリッド距離計算回数は、2m2+2m2回であり、第2の距離演算処理部130における2乗ユークリッド距離計算回数は、2m1回である。よって第1の距離演算処理部120および第2の距離演算処理部130の全体での2乗ユークリッド距離計算回数は、(2m1+2m2)+2m2回である。
以上より、変調多値数の大きいシンボル候補を最終ステージに係るシンボル候補とすることで、2×2MIMOにおいて2乗ユークリッド距離計算回数を、2m1−2m2(m1>m2)回減らすことができる。
送信アンテナ数がXの場合でも、変調多値数の大きいシンボル候補を最終ステージに係るシンボル候補とすることで、同様に2乗ユークリッド距離計算回数を減らすことができる。すなわち、シンボル候補の変調多値数の大きさに応じてチャネル行列Hの行を並べ替えた後にQR分解することにより、より一層2乗ユークリッド距離計算回数を削減するこ
とができる。
このときの信号分離装置の構成例を図23に示す。同図に示すように、最尤判定部100の入力段にQR分解/Q
H乗算部があり、そのさらに入力段に、チャネル推定部と、当該チャネル推定部の出力段のソート部が設けられている。ソート部は、下記数式(35)に示すように、入力される変調多値数mに基づいて、表列要素を入れ替えることによりチャネル行列Hを変換し、変換後のチャネル行列をQR分解/Q
H乗算部に出力する。
(3)以上の各実施の形態では、2乗ユークリッド距離の和を用いて尤度を求めるものとして説明を行ったが、これに限らず、例えばユークリッド距離の和、又はマンハッタン距離などを用いてもよい。
また、以上の各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されても良いし、一部又は全てを含むように1チップ化されても良い。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現しても良い。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable
Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行っても良い。例えば、バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
2006年9月15日出願の特願2006−251502及び2006年12月26日出願の特願2006−350658の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。