JP4854103B2 - スチレン系樹脂組成物及びそれを用いたシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装材料として使用される高透明性シート用のスチレン系樹脂組成物及びそれを用いたシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレンシートは、透明性及び剛性に優れているため、熱成型法により成形され、主として食品包装用の軽量容器として大量に使用されている。しかし、スチレン系樹脂の成形により得られるフィルムやシートなどは、硬くて割れやすい性質を有している。このような成形体の硬くて割れやすい性質を改善する方法として、種々の方法が知られている。
【0003】
例えば、スチレン樹脂に耐衝撃性ポリスチレン樹脂をブレンドする方法が知られている。しかし、この方法では成形体の透明性が著しく低下するため、包装材料として用いるには不適当である。
【0004】
特公昭63−26776号公報では、ブロック率が90〜100%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体100重量部と、ブロック率が0〜75%のスチレン−ブタジエンランダムブロック共重合体とを混合することにより、延伸シートの剛性を改善している。しかし、この方法では、シートに剛性を付与するには、シートを延伸する必要がある。また、透明性が不十分であり、特に食品包装材料に使用するには不適当であるとともに、特殊なスチレン−ブタジエンランダムブロック共重合体を使用するため、コストパフォーマンスが低い。
【0005】
また特開平4−277508号公報では、スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合体及び低温分解型有機過酸化物で構成される連続相に、スチレン−ジエン系ゴム弾性体(スチレン含量20〜50重量%)を分散させることにより、ゴム変性スチレン系樹脂の透明性及びシート強度を高めている。しかし、この方法では、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂を併用する必要があるとともに、スチレン単量体、ブチルアクリレート単量体、メチルメタクリレート単量体及び前記弾性体を予め混合した後で、2段階に分けて単量体を重合する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びスチレン系樹脂だけで構成しても、高透明性及び耐衝撃性を付与可能なスチレン系樹脂組成物及びそれを用いたシートを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、二軸延伸をしなくてもシートに高透明性及び耐衝撃性を付与可能なスチレン系樹脂組成物及びそれを用いたシートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、芳香族ビニル含量が近似する二種類の芳香族ビニル−ジエン共重合体と芳香族ビニル系重合体とを特定の割合で混合すると、均一に相溶し、二軸延伸しなくても、耐衝撃性に優れる高透明性シートが得られることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明のスチレン系樹脂組成物は、芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体混合物(A)と芳香族ビニル系重合体(B)とで構成され、前記芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体混合物(A)と前記芳香族ビニル系重合体(B)の割合(A/B)は5/95〜75/25(重量比)である。そして、前記芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体は、(1)芳香族ビニル含量が74〜85重量%である第1の芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体(A1)と、芳香族ビニル含量が65〜73重量%である第2の芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体(A2)とで構成され、(2)第1及び第2のブロック共重合体(A1)、(A2)の割合[(A1)/(A2)]が15/85〜45/55(重量比)であり、(3)ブロック共重合体混合物(A)中の芳香族ビニル含量が70〜75重量%である。芳香族ビニル系重合体の重量平均分子量は、2.5×105〜3.2×105であってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
[芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体]
本発明では、芳香族ビニルの連鎖ユニット(芳香族ビニルブロック)とジエンの連鎖ユニット(ジエンブロック)とがブロック重合した芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体を用いる。
【0011】
芳香族ビニルブロックの芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン(o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、α−メチルスチレンなど)、ハロスチレン(p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン)などが挙げられる。これら芳香族ビニルブロックは、単独で又は二種以上混合して使用できる。好ましい芳香族ビニルブロックは、スチレンブロックである。
【0012】
ジエンブロックのジエン単量体としては、ブタジエン、イソプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6のハロゲン置換共役ジエンなどが挙げられる。これらジエンブロックは、単独で又は二種以上混合して使用できる。好ましいジエンブロックは、ブタジエンブロックである。
【0013】
ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。芳香族ビニルブロック(α)とジエンブロック(β)とのブロック構造としては、例えば、モノブロックコポリマー、テレブロックコポリマーなどのマルチブロックコポリマー、トリチェインラジアルテレブロックコポリマー、テトラチェインラジアルテレブロックポリマー、テトラチェインラジアルテレブロックコポリマーのなどが例示できる。このようなブロック構造としては、α−β型、α−β−α型、β−α−β型、α−β−α−β型、α−β−α−β−α型、β−α−β−α−β型などが例示できる。
【0014】
芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体としては、例えば、スチレンと炭素数4〜6程度の共役ジエンとのブロック共重合体(スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体など)、スチレンと炭素数4〜6程度のハロゲン置換共役ジエンとのブロック共重合体、アルキルスチレンと炭素数4〜6程度の共役ジエンとのブロック共重合体(o,m,p−メチルスチレン−ブタジエンブロック共重合体など)などが挙げられる。好ましい芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、特に芳香族ビニル−ジエンランダム共重合体を含まず、ブロック率が90〜100%の芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体が挙げられる。ブロック共重合体を用いることによりシートの透明性及び耐衝撃性を向上できる。
【0015】
本発明では、前記芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体のうち、芳香族ビニル含量が近似する2種類の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体を用いる(以下、芳香族ビニル含量が相対的に大きいブロック共重合体を第1の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A1)と、芳香族ビニル含量が相対的に小さいブロック共重合体を第2の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A2)という)。
【0016】
第1の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A1)の芳香族ビニル含量は、例えば、73.1〜95重量%程度、好ましくは73.5〜90重量%程度、さらに好ましくは74〜85重量%程度である。
【0017】
第2の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A2)の芳香族ビニル含量は、例えば、60〜73重量%程度、好ましくは65〜73重量%程度である。
【0018】
なお、前記第1及び第2の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A1)、(A2)は、芳香族ビニル含量がそれぞれ上記の範囲である限り、単一のブロック共重合体で構成してもよく、複数のブロック共重合体で構成してもよい。
【0019】
2種類の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体の芳香族ビニル含量が近似するため、共重合体同士の相溶性が向上し、シートの透明性を向上できる。
[芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体混合物(A)]
前記2種類の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A1)と(A2)の割合[(A1/A2)]は、例えば、15/85〜45/55(重量比)程度、好ましくは20/80〜45/55(重量比)程度である。芳香族ビニル含量が比較的小さい第2の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A2)の割合を大きくすることで、シートの透明性を損なうことなく、シートに耐衝撃性を付与できる。
【0020】
芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体混合物(A)中の芳香族ビニルの含量は、60〜80重量%程度、好ましくは65〜78重量%程度、さらに好ましくは70〜75重量%程度(特に、71〜73重量%程度)である。芳香族ビニル含量が小さ過ぎると、芳香族ビニル系重合体と混合しても透明性が低下する。一方、芳香族ビニル含量が大きすぎると、耐衝撃強度改質剤としての効果がない。
【0021】
なお、芳香族ビニル含量が上記範囲から外れた2種類の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体を用いた場合、例えば、スチレン含量50〜80重量%及びスチレン含量50重量%以下の2種類の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体をスチレン樹脂と混合、成形し、シート化しても、ブロック共重合体とスチレン系樹脂との混和性が低いため、シートの透明性及び光沢が十分ではない。
【0022】
芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体混合物(A)中のスチレン成分の含量は、混合前の2種類の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体中のスチレン成分の含量に基づいて平均値を求めてもよく、混合物中のスチレン含量を直接測定してもよい。
【0023】
[芳香族ビニル系重合体(B)]
芳香族ビニル系重合体(B)の芳香族ビニル単量体としては、前記芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体の芳香族ビニル単量体が挙げられる。
【0024】
芳香族ビニル系重合体(B)は、単独で又は二種以上混合して使用できる。例えば、スチレンとα−メチルスチレンを混合して使用する場合、α−メチルスチレンは耐熱性を大きく向上させる効果があるため、α−メチルスチレンを5〜25重量%含有させると二軸延伸シートの耐熱性を顕著に向上できる。ただし、α−メチルスチレンの含有量が25重量%を越えると、重合速度が著しく低下し、α−メチルスチレンの残存モノマー量が多くなるため、耐熱性が低下するなど、種々の物性が低下する。
【0025】
好ましい芳香族ビニル系重合体(B)には、透明性の高い重合体、例えば、ポリスチレンが例示できる。
【0026】
芳香族ビニル系重合体(B)の重量平均分子量は、2×105 〜3.2×105 程度(特に2.0×105 〜3.2×105 程度)、好ましくは2.5×105 〜3.2×105 程度、さらに好ましくは2.7×105 〜3×105 程度(特に2.7×105 〜3.0×105 程度)である。芳香族ビニル系シートを形成する場合には、一般には、重量平均分子量が3.2×105 を越える高分子量の重合体が使用されるが、本発明では重量平均分子量が若干小さい芳香族ビニル系重合体を用いることにより、シートに高い透明性を付与できる。一方、重量平均分子量が小さすぎると、重合体の溶融張力及び成形後の衝撃強度が低下する。
本発明に用いる芳香族ビニル系重合体(B)は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合及び溶液重合などの慣用の重合法により、簡便に得ることができる。
【0027】
[スチレン系樹脂組成物]
スチレン系樹脂組成物は、前記2種類のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A1)、(A2)及び芳香族ビニル系重合体(B)の3成分を慣用の方法により混合(例えば、ヘンシェルミキサー、Vブレンダーなどによるドライブレンド)することにより調製できる。本発明では、2種類の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A1)及び(A2)に含まれる芳香族ビニルブロックと芳香族ビニル共重合体とが共通又は近似する。このため、前記3成分の相溶性を向上でき、シートの透明性を向上できる。
【0028】
前記3成分の混合順は、特に制限されず、前記3成分を直接混合してもよく、前記3成分を適当な順序で混合してもよい。例えば、第1の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A1)と第2の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A2)とを混合することにより、芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体混合物(A)を調製し、次いで前記芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体混合物(A)と芳香族ビニル共重合体(B)とを混合することによりスチレン系樹脂組成物を調製できる。
【0029】
芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体混合物(A)と芳香族ビニル系重合体(B)の割合(A/B)は、5/95〜75/25(重量比)程度、好ましくは30/70〜75/25(重量比)程度、さらに好ましくは50/50〜75/25(重量比)程度である。芳香族ビニル系重合体の比率が小さすぎると、弾性率が低くなり、シートとしての商品価値が損なわれる。また、芳香族ビニル系重合体の比率が大きすぎると、強靱性が損なわれる。
【0030】
このようなスチレン系樹脂組成物において、第1の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A1)の含量は、11〜35重量%程度、好ましくは13〜30重量%程度である。第2の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A2)の含量は、32〜58重量%程度、好ましくは35〜55重量%程度である。また、芳香族ビニル系共重合体の含量は、25〜57重量%程度、好ましくは、25〜50重量%程度である。
【0031】
また、前記スチレン系樹脂組成物において、スチレン含量は、70〜90重量%程度、好ましくは75〜85重量%程度である。また、ブタジエン含量は、10〜30重量%程度、好ましくは15〜25重量%程度である。
【0032】
スチレン系樹脂組成物は、揮発成分(例えば、芳香族ビニルの単量体から三量体、アルキル置換ベンゼン(トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど))を殆ど含有していないのが好ましい。揮発成分が多いと、揮発成分がシート表面(特に二軸延伸シートの表面)に浮き出て、油膜状に偏在するため、シートの商品価値が低下する。揮発成分の合計含有量は、通常、0.6重量%以下、好ましくは0.4重量%以下である。これら揮発成分は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0033】
シートの成型性を向上させるために、スチレン系樹脂組成物に、0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.2〜1重量%の範囲でミネラルオイルなどの可塑剤を添加してもよい。
【0034】
また、スチレン系樹脂組成物には、シートのブロッキングを防止するために、平均粒子径が2〜10μm程度のスチレングラフトブタジエンゴム及びポリスチレン架橋ビーズから選ばれた少なくとも一方の成分を添加してもよい。前記スチレングラフトブタジエンゴムの添加量は、ブタジエン濃度で100〜1000ppm程度、ポリスチレン架橋ビーズの添加量は20〜2000ppm程度である。
【0035】
さらに、スチレン系樹脂組成物には、樹脂組成物の透明性、強度、成型性などを損なわない範囲で、各種熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤(リン系、硫黄系又はヒンダードフェノール系酸化防止剤など)、充填剤(シリカビーズ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、ゼオライト、ジビニルベンゼン架橋ビーズなど)、着色剤、滑剤(脂肪酸エステルなど)、帯電防止剤などの添加剤を配合してもよい。
【0036】
[スチレン系樹脂シート]
本発明のスチレン系樹脂シートは、前記スチレン系樹脂組成物を、Tダイ法などの慣用の方法によりシート状に押出し成型することにより得ることができる。
【0037】
なお、前記スチレン系樹脂組成物の形成と、押出し成型とを一連の操作として行ってもよい。例えば、第1の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A1)、第2の芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体(A2)及び芳香族ビニル系重合体(B)を溶融混合し、押出し成型することによりシート成型できる。溶融混合の方法は特に限定されず、例えば、一軸又は二軸押出し機、バンバリーミキサーなどを用いた慣用の方法により、溶融混合できる。
【0038】
このようにして得られたスチレン系樹脂シートは、二軸延伸しなくても高い透明性を有している。スチレン系樹脂シートのヘーズは、通常、8%以下(例えば、0〜8%程度)、好ましくは5%以下(例えば、0〜5%程度)、さらに好ましくは3%以下(例えば0〜3%程度)である。
【0039】
前記スチレン系樹脂シートは、高い写像鮮明度も有しており、例えば、スガ試験機(株)製の写像測定器によるスチレン系樹脂シートの写像鮮明度は、通常、50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
【0040】
さらに、スチレン系樹脂シートは、二軸延伸しなくても高い耐衝撃性を有している。シャルピー衝撃試験機によるスチレン系樹脂シートの衝撃強度(試験片:JIS7113 2号ダンベル)は、通常、10kg-cm/cm2 以上、好ましくは20kg-cm/cm2 以上、さらに好ましくは30kg-cm/cm2 以上である。
[スチレン系樹脂延伸シート]
押出し成型により得られた前記スチレン系樹脂シートは、必要に応じて一軸又は二軸延伸して、スチレン系樹脂延伸シートとしてもよい。延伸により、さらにシートの透明性及び耐衝撃性を高めることができる。延伸は、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法などの慣用の方法により、行うことができる。
【0041】
一軸又は二軸延伸において、延伸倍率は、1.1〜5倍程度、通常、1.5〜3倍程度である。二軸延伸による延伸倍率は、縦方向及び横方向にそれぞれ2〜3倍程度であり、好ましくは均等に延伸する。延伸倍率が小さすぎると、シートの強靱性の向上が小さく、延伸倍率が大きすぎると、真空成形法、圧空成形法などにより容器を製造するときに、シート厚みに偏肉が生じやすい。
【0042】
延伸温度は、シート強度及び成形性に応じて適宜選択でき、通常、100〜150℃程度、好ましくは110〜135℃程度である。
【0043】
スチレン系樹脂延伸延伸シートは、ASTM D−1504に準拠して測定した配向緩和応力が、1〜10kg/cm2 程度、好ましくは、3〜7kg/cm2 程度である。配向緩和応力が、1kg/cm2 未満では、十分な衝撃強度および耐折強度が得られず、また10kg/cm2 を越えると成形性が著しく低下する。
【0044】
スチレン系樹脂延伸シート又はスチレン系樹脂シートの表面には種々の塗布剤、例えば、帯電防止剤、防曇剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリコール脂肪酸エステル、ポリグリコール脂肪酸エステルなど)、離型剤(シリコーンオイルなど)を塗布してもよい。一方の面に防曇剤、残る他方の面に離型剤を塗布することが多い。
【0045】
これら塗布剤の塗布量は、シートの片面に対して、0.1〜10g/m2 程度、好ましくは0.01〜5g/m2 程度である。
【0046】
【発明の効果】
本発明によると、芳香族ビニル−ジエンブロック共重合体及び芳香族ビニル系重合体だけで樹脂を構成しても、所定の芳香族ビニル含量を有する2種類の芳香族ビニル−ジエン系樹脂を所定量用いることにより、樹脂の相溶性を向上でき、高透明性及び耐衝撃性付与可能なスチレン系樹脂組成物及びそれを用いたシートを得ることができる。また、本発明によると、前記スチレン系樹脂組成物を用いることにより、二軸延伸をしなくてもシートに高透明性及び耐衝撃性を付与可能である。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0048】
なお、表1に示す特性の評価方法は次の通りである。
1.透明性:
日本電色(株)製のヘーズ測定器(300A)を用い、ASTM D1003に準じてヘーズを測定し(n=5の平均値)、以下の基準でヘーズを評価した。数値が小さい程、透明性が高い。
【0049】
◎:2%未満
○:2%以上、3%未満
△:3%以上、5%未満
×:5%以上
2.写像鮮明度:
スガ試験機(株)製の写像性測定器(ICD−1DP)を用い、光学くしの幅を1mmにして、写像鮮明度を測定し、以下の基準で写像鮮明度を評価した。数値が大きい程、鮮明度が高い。
【0050】
◎:90%以上
○:80%以上、90%未満
△:70%以上、80%未満
×:70%未満
3.衝撃強度:
シートの流れ方向に、JIS7113規定の2号のダンベルを打ち抜き、試験片を得た。前記試験片の両端を支持し、シャルピー衝撃試験機に供して衝撃強度を測定し、以下の基準で衝撃強度を評価した。
【0051】
◎:50 kg-cm/cm2以上
○:30 kg-cm/cm2以上、50 kg-cm/cm2未満
△:20 kg-cm/cm2以上、30 kg-cm/cm2未満
×:20 kg-cm/cm2未満
実施例1
スチレン含量76重量%の第1のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A1)24重量部とスチレン含量70重量%の第2のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A2)76重量部とをドライブレンドすることにより、平均スチレン含量71.4重量%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物を得た。
【0052】
重量平均分子量が2.95×105 であるポリスチレン30重量部と前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物70重量部とを混合し、65mmφの押出し機(L/D=28、シリンダー温度210℃)を用いて、T−ダイ(ダイ温度210℃)よりシート状に押し出した。冷却ロールで冷却することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0053】
実施例2
ポリスチレン40重量部とスチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物60重量部とを混合する以外は、実施例1と同様にして操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0054】
実施例3
スチレン含量76重量%の第1のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A1)40重量部とスチレン含量70重量%の第2のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A2)60重量部とをドライブレンドすることにより、平均スチレン含量72.4重量%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物を得る以外は、実施例1と同様にして操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0055】
実施例4
ポリスチレン40重量部とスチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物60重量部とを混合する以外は、実施例3と同様にして操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0056】
比較例1
ポリスチレン97重量部とスチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物3重量部とを混合する以外は、実施例1と同様にして操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0057】
比較例2
スチレン含量76重量%の第1のスチレン−ブタジエンブロック(A1)共重合体89重量部とスチレン含量53重量%の第2のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A2)11重量部とをドライブレンドすることにより、平均スチレン含量72.4重量%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物を得る以外は、実施例1と同様にして操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0058】
比較例3
スチレン含量76重量%の第1のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A1)14.5重量部とスチレン含量70重量%の第2のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A2)85.5重量部とをドライブレンドすることにより、平均スチレン含量70.8重量%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物を得る以外は、実施例1と同様にして操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0059】
比較例4
スチレン含量76重量%の第1のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A1)55重量部とスチレン含量70重量%の第2のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A2)45重量部とをドライブレンドすることにより、平均スチレン含量73.3重量%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体混合物を得る以外は、実施例1と同様にして操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0060】
比較例5
スチレン含量76重量%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A1)70重量部と、重量平均分子量が2.95×105 であるポリスチレン30重量部とを混合し、押出し機とTダイを用いて、実施例1と同様に操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0061】
比較例6
スチレン含量70重量%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(A2)70重量部と、重量平均分子量が2.95×105 であるポリスチレン30重量部とを混合し、押出し機とTダイを用いて、実施例1と同様に操作することにより、厚さ約0.4mmのシートを得た。
【0062】
実施例1〜4及び比較例1〜6により得られたシートの評価結果を表1に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から明らかなように、実施例のシートは、高透明性、高写像鮮明度、高耐衝撃度を有している。
Claims (3)
- ブロック率が90〜100%であり、かつ芳香族ビニル含量が74〜85重量%である第1の芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体(A1)と、ブロック率が90〜100%であり、かつ芳香族ビニル含量が65〜73重量%である第2の芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体(A2)とで構成され、ブロック共重合体(A1)と(A2)の割合[(A1)/(A2)]が15/85〜45/55(重量比)であり、芳香族ビニル含量が70〜75重量%である芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体混合物(A)と
重量平均分子量が2.5×10 5 〜3.2×10 5 である芳香族ビニル系重合体(B)とで構成された樹脂組成物であって、
前記芳香族ビニル−ジエン完全ブロック共重合体混合物(A)と前記芳香族ビニル系重合体(B)の割合(A/B)が5/95〜75/25(重量比)であるスチレン系樹脂組成物。 - スチレン含量が74〜85重量%である第1のスチレン−ブタジエン完全ブロック共重合体(A1)と、スチレン含量が65〜73重量%である第2のスチレン−ブタジエン完全ブロック共重合体(A2)とで構成され、ブロック共重合体(A1)と(A2)の割合[(A1)/(A2)]が20/80〜45/55(重量比)であり、スチレン含量が70〜75重量%であるスチレン−ブタジエン完全ブロック共重合体混合物(A)と
重量平均分子量が2.5×105〜3.2×105である芳香族ビニル系重合体(B)とで構成された樹脂組成物であって、
前記スチレン−ブタジエンブロック完全共重合体混合物(A)と前記芳香族ビニル系重合体(B)の割合(A/B)が50/50〜75/25(重量比)である請求項1記載のスチレン系樹脂組成物。 - 請求項1又は2記載の樹脂組成物で形成されたシート。
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JP19339498A JP4854103B2 (ja) | 1998-07-08 | 1998-07-08 | スチレン系樹脂組成物及びそれを用いたシート |
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