JP4852331B2 - 吸収ヒートポンプ装置、及びその運転方法 - Google Patents

吸収ヒートポンプ装置、及びその運転方法 Download PDF

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Description

本発明は、温水などの低質熱を熱源として高温水や蒸気を発生させる第2種吸収ヒートポンプ装置、及び運転方法に関するものである。
各種工場等のプロセスから排出される熱は、高温のものは別のプロセス等で再利用することが進んでいる。しかしながら、環境温度に近い低温の熱に関しては冷却塔などで放熱するケースが多い。こうした排温水或いは排蒸気などの低質の熱源から高温の熱を発生させる吸収ヒートポンプは、特許文献1及び特許文献2等により公知となっている。
第2種吸収ヒートポンプでは、図6のデューリング線図に示すように、冷却水温度が低下した場合、凝縮器の圧力が低下し(冷却水温度TCからTC’に低下すると凝縮器圧力PCからPC’に低下)、結果として溶液の濃縮が進み、吸収器の溶液温度が上昇(吸収器温度がTAからTA’に上昇)する。一般に用いられる吸収溶液である臭化リチウム水溶液の場合、濃縮が過剰に進むと臭化リチウムの結晶が析出し、配管を詰まらせたり、ポンプやバルブを固着、破損したりしてしまうことが知られている。また、吸収器の溶液温度が上昇することによって、被加熱媒体である蒸気や高温水の圧力や温度が過度に上昇してしまう危険がある。
上記問題を回避するため、従来の第2種吸収ヒートポンプ装置は、図7に示すように、 吸収器A、蒸発器E、再生器G、凝縮器Cを備えた吸収ヒートポンプ装置において、凝縮器C内に配置された冷却水配管118に流れる冷却水を冷却水ポンプ120を介して冷却塔121に送る冷却水循環配管122に流量制御弁Vを備えたバイパス配管123を設け、冷却水の温度がある所定の範囲に収まるように制御する場合もある。
図7の吸収ヒートポンプ装置において、再生器Gの濃溶液は溶液ポンプ111により濃溶液配管112を通って吸収器内Aに導かれ散布され、蒸発器Eからの冷媒蒸気を吸収して吸収発熱し、高温配水管119を通る被加熱媒体である温水を加熱すると共に、濃度の薄い希溶液となる。該希溶液は希溶液配管113を通って再生器G内に導かれ散布され、再生器G内で熱源温水管117中を流れる温水で加熱され冷媒蒸気を発生すると共に、濃縮されて濃溶液となる。再生器Gで発生した冷媒蒸気は凝縮器Cに導かれ、冷却水配管118を流れる冷却水により凝縮され冷媒液となる。冷媒液は冷媒ポンプ114により冷媒配管115を通って蒸発器E内に導かれ散布され、熱源温水配管116を流れる熱源温水により加熱されて蒸発して冷媒蒸気となり、冷媒蒸気は吸収器Aに導かれるようになっている。
上記問題を回避するための別な方法として、図8に示すように、凝縮器Cの缶胴から再生器Gの缶胴に通ずるオーバーフロー配管124を設け、凝縮器Cに規定液面レベル以上の冷媒液が溜まった場合に、このオーバーフロー配管124から冷媒液を再生器Gに流すことによって、再生器G内の濃溶液を希釈し、溶液の過濃縮や結晶を防止する場合もある。
特公昭58−18574号公報 特公昭58−18575号公報
図7に示すように、冷却水循環配管122に流量制御弁Vを備えたバイパス配管123を設け冷却水を制御する場合は、大口径の冷却水配管118及び冷却水循環配管122を取りまわす必要(費用、場所、手間)があり、また、流量制御弁Vや制御機器を余計に必要とするという問題があった。
また、図8に示すように、オーバーフロー配管124を設ける場合は、凝縮器Cの冷媒液面と再生器Gの溶液液面との位置関係を考慮(冷媒液がうまく流れるように考慮)する必要があり、装置の全高寸法が大きくなってしまうという問題があった。また、冷媒液がオーバーフローしている状態では、再生器Gの温水入熱を間接的に凝縮器Cの冷却水に捨てていることになるため、装置の効率が著しく低下するという問題があった。
また、従来の吸収ヒートポンプは、プロセス用途など大型のものが殆どを占めていたが、近年、エネルギーコストの上昇や環境意識の高まりから、比較的小容量の吸収ヒートポンプ装置をコージェネレーションなどに組み入れて、低質排熱を昇温して有効利用を図ることが考えられており、そのため小型で効率の良い吸収ヒートポンプ装置の開発が求められている。
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、比較的小容量でコージェネレーション等に組み入れて、低質排熱を有効に利用して、高温の温水又は蒸気を得ることができ、小型で効率の良い吸収ヒートポンプ装置、及びその運転方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、吸収器、蒸発器、再生器、凝縮器を備え、前記再生器の濃溶液は濃溶液配管を通って前記吸収器内に導かれ、前記蒸発器からの冷媒蒸気を吸収して吸収発熱し、被加熱媒体流路を通る被加熱媒体を加熱すると共に、前記冷媒蒸気を吸収し濃度の薄くなった希溶液となり、該希溶液は希溶液配管を通って前記再生器内に導かれ、該再生器内で熱源媒体流路を流れる熱源媒体で加熱され冷媒蒸気を発生すると共に、濃縮されて濃溶液となり、前記再生器で発生した冷媒蒸気は前記凝縮器に導かれ、冷却媒体流路を流れる冷却媒体により凝縮され冷媒液となり、該冷媒液は冷媒配管を通って前記蒸発器内に導かれ、熱源媒体流路を流れる熱源媒体により加熱されて蒸発して冷媒蒸気となり、該冷媒蒸気は前記吸収器に導かれるように構成された吸収ヒートポンプ装置において、前記再生器の前記熱源媒体流路に散布する溶液の量を減少させ、熱源媒体から溶液に伝熱する伝熱量を減少させることにより該再生器の能力を制限する再生器能力制限手段を設けたことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の吸収ヒートポンプ装置において、前記吸収器は温度の異なる複数段の吸収器からなり、前記蒸発器は温度の異なる複数段の蒸発器からなり、同じ段の蒸発器で蒸発した冷媒蒸気は同じ段の吸収器に流入するように構成された多段昇温型となっていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、吸収器、蒸発器、再生器、凝縮器を備え、前記再生器の濃溶液は濃溶液配管を通って前記吸収器内に導かれ、前記蒸発器からの冷媒蒸気を吸収して吸収発熱し、被加熱媒体流路を通る被加熱媒体を加熱すると共に、前記冷媒蒸気を吸収し濃度の薄くなった希溶液となり、該希溶液は希溶液配管を通って前記再生器内に導かれ、該再生器内で熱源媒体流路を流れる熱源媒体で加熱され冷媒蒸気を発生すると共に、濃縮されて濃溶液となり、前記再生器で発生した冷媒蒸気は前記凝縮器に導かれ、冷却媒体流路を流れる冷却媒体により凝縮され冷媒液となり、該冷媒液は冷媒配管を通って前記蒸発器内に導かれ、熱源媒体流路を流れる熱源媒体により加熱されて蒸発して冷媒蒸気となり、該冷媒蒸気は前記吸収器に導かれるように構成された吸収ヒートポンプ装置の運転方法において、前記吸収器から前記再生器に導き前記熱源媒体流路に散布する希溶液の量を減少させ、熱源媒体から希溶液に伝熱する伝熱量を減少させることにより前記再生器の能力を制限することを特徴とする。
請求項に記載の発明によれば、再生器の熱源媒体流路に散布する溶液の量を減少させ、熱源媒体から溶液に伝熱する伝熱量を減少させることにより再生器の能力を制限するので、大掛かりな設備や制御が不要で故障も無く、なおかつ缶胴のレイアウトに制約がなく、再生器の能力を効果的に制限でき、装置の全高を抑えたコンパクトで、且つサイクルの熱効率を向上させることができる。
請求項に記載の発明によれば、多段昇温型のヒートポンプ装置において上記と同様の効果が得られる。
請求項に記載の発明によれば、吸収器から再生器に導き熱源媒体流路に散布する希溶液の量を減少させ、熱源媒体から希溶液に伝熱する伝熱量を減少させることにより、再生器の能力制限を行なうので、大掛かりな設備や制御が不要で再生器の能力を効果的に制限でき、装置の全高を抑えたコンパクトで、且つサイクルの熱効率を向上させることができる。


以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の構造例(第1の実施形態)を示す断面である。吸収ヒートポンプ装置10−1は、吸収器A、蒸発器E、再生器G、凝縮器Cを備え、これらを全て角型断面の単一の缶胴12に収容配置している。即ち、吸収器Aと蒸発器Eを缶胴12内の上側左右に、再生器Gと凝縮器Cを同じ缶胴12内の下側左右に配置した構造となっている。吸収器A内には高温水配管14が、蒸発器E内には熱源温水配管16が、再生器G内には熱源温水配管18が、凝縮器C内には冷却水配管20がそれぞれ配置されている。吸収器Aと蒸発器Eの間には、蒸発器Eで蒸発した蒸気を吸収器Aに導くための冷媒蒸気流路34を設け、再生器Gと凝縮器Cの間には再生器Gで発生した冷媒蒸気を凝縮器Cに導くための冷媒蒸気流路36を設けている。
なお、熱交換器となる高温水配管14、熱源温水配管16、熱源温水配管18は、シェル&チューブ型の熱交換器を用いるが、その他の形式、例えばプレート型でもよい。以下、他の実施形態でも同様とする。
<運転サイクルの説明>
上記構造の吸収ヒートポンプ装置10−1において、再生器G内の濃溶液は、溶液ポンプ22により濃溶液配管26を通り、溶液熱交換器24で加熱された後、吸収器A内に散布される。吸収器A内に散布された濃溶液は、蒸発器Eから該蒸発器Eと吸収器Aの間に設けた冷媒蒸気流路34を通って流入する冷媒蒸気を吸収して吸収熱を発生し、その熱で高温水配管14の中を流れる被加熱媒体である高温水を加熱する。吸収器A内で濃溶液は蒸発器Eからの冷媒蒸気を吸収してその濃度が薄くなり希溶液となる。該希溶液は、吸収器Aからの希溶液配管28を通り、溶液熱交換器24の加熱側を通り、濃溶液配管26を通る濃溶液を加熱し、再生器Gに戻り散布される。再生器Gに散布された希溶液は、熱源温水配管18の中を流れる温水によって加熱され、冷媒蒸気を発生して濃縮され濃溶液となり、溶液サイクルを一巡する。
再生器Gで発生した冷媒蒸気は、該再生器Gと凝縮器Cの間に設けた冷媒蒸気流路36を通って凝縮器Cに導かれ、冷却水配管20の中を流れる冷却水によって冷却されて凝縮し、冷媒液となる。冷媒液は冷媒ポンプ30から冷媒配管32を通って蒸発器E内に散布される。該散布された冷媒液は、熱源温水配管16の中を流れる熱源温水によって加熱されて蒸発し、蒸発した冷媒蒸気は上記のように吸収器Aに導かれる。このように、吸収ヒートポンプ装置10−1に再生器Gと蒸発気Eにそれぞれ熱源温水配管18、熱源温水配管16を通して熱源媒体(温水)を供給し、凝縮器Cの冷却水配管20に冷却水を供給することによって、吸収器Aで高温の熱を発生させることができる。
<冷却水温度が低下した場合の説明>
上記本吸収ヒートポンプ装置10−1においては、吸収ヒートポンプ装置10−1が通常の運転状態で凝縮器Cの冷却水が定格状態では、図2(a)に示すように、冷媒液面L1は冷却水配管20の下方に位置しているが、外気温が低い場合等の冷却水の温度が低下し溶液過濃縮となるような場合、凝縮器Cの冷媒液面L1が上昇し、冷却水配管20が冷媒液に沈みその伝熱面積が小さくなるような構成を採用している。即ち、外気温が低い場合等、凝縮器Cの冷却水配管20に流れる冷却水の温度が低下した場合、図6で説明したように凝縮器Cの圧力が低下し、濃溶液の濃縮が進み、溶液は再生器Gの底部に、冷媒液は凝縮器Cの底部に溜まるようになっているため、溶液が濃縮されると、再生器Gの溶液液面は低下し、凝縮器C内の冷媒液面L1が図2(b)に示すように上昇する。
本実施形態例では、冷媒液面が上昇した場合に、冷却水配管20の伝熱面が冷媒液に沈むように設定しているため、冷媒液面L1の上昇に伴って、冷却水配管20の有効伝熱面積が減少する。伝熱量Qは熱通過率U、伝熱面積F、及び対数平均温度差ΔTの積で表される(Q=U・F・ΔT)ため、伝熱量が一定のままで伝熱面積が減少すると、対数平均温度差が伝熱面積に反比例して増大する。即ち、冷却水温度が低下しても、冷媒の凝縮温度(即ち、凝縮器Cの圧力)の低下分は、対数平均温度差が増大する分と相殺されて、ほぼ一定に保たれる。
また、本実施形態では、上記のように冷却水温度が低下した場合に、凝縮器Cの冷却水配管20の伝熱面を冷媒液に沈めて伝熱能力を低下させることによって、冷媒の凝縮圧力の低下を抑え、溶液過濃縮及び吸収器Aの異常昇温を防止することができる。
また、本実施形態では、再生器G内の溶液の濃縮によって生成した冷媒液を凝縮器Cに導き(凝縮器Cの圧力が低下することにより、再生器Gで多量冷媒蒸気が発生し、該冷媒蒸気が冷媒蒸気流路36を通って凝縮器Cに導かれ凝縮し多量の凝縮液となる)、冷却水配管20の伝熱面を冷媒液に沈めることにより、正味の伝熱面積を減少させる構造とすることにより、凝縮器Cの能力を制限するために、大掛かりな設備や制御装置が不要で、故障も無く、なおかつ、缶胴のレイアウトに制約がない。装置の全高を抑えたコンパクトな吸収ヒートポンプ装置を実現できる。
また、本実施形態では、冷却水温度が低下した場合にも内部サイクルの変動が少ないため、サイクル効率があまり変化せず、冷媒をオーバーフローさせる従来例(図8参照)などに比較して、冷却水温度低下時の効率を大幅に向上させることができる。
図3は本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の他構造例(第2の実施形態)を示す断面である。本吸収ヒートポンプ装置10−2は、吸収器A、蒸発器E、再生器G、凝縮器Cを備え、これらを全て角型断面の単一の缶胴12に収容配置している。本吸収ヒートポンプ装置10−2は、吸収器Aから希溶液配管28を通って再生器Gに戻る希溶液を再生器Gの入口部でバルブ38を備えたバイパス配管40で分岐し、再生器Gの熱源温水配管18より下方に導くことができるようになっている点、及び冷却水温度が低下して凝縮器Cの冷媒液面が上昇した場合、冷却水配管20が冷媒液中に沈むようになっていない点を除けば第1の実施形態に係る吸収ヒートポンプと同一である。再生器Gには溶液液面L2を検出するフロート42が設けられており、該フロート42はバルブ38に接続(連結)されており、フロート42の上下でバルブ38が開閉されるようになっている。なお、フロート42とバルブ38に替えてボールタップを使用しても良いし、液面センサと電磁弁で構成してもよい。
<運転サイクルの説明>
上記構造の吸収ヒートポンプ装置10−2において、再生器G内の濃溶液は、溶液ポンプ22により濃溶液配管26を通り、溶液熱交換器24で加熱された後、吸収器A内に散布され、蒸発器Eからの冷媒蒸気を吸収して吸収熱を発生し、その熱で高温水配管14を通る被加熱媒体である高温水を加熱して希溶液となり、希溶液配管28を通り、再生器Gに戻り散布され、熱源温水配管18の中を流れる熱源温水によって加熱され、冷媒蒸気を発生して濃縮され濃溶液となり、溶液サイクルを一巡する点は、図1の吸収ヒートポンプ装置10−1と同一である。また、再生器Gで発生した冷媒蒸気は凝縮器Cに導かれ、凝縮し、冷媒液となり、該冷媒液は冷媒ポンプ30により蒸発器Eに送られ散布され、熱源温水配管16を通る熱源温水によって加熱されて冷媒蒸気を発生し、該冷媒蒸気が吸収器Aに導かれる点も図1の吸収ヒートポンプ装置10−1と同一である。
<冷却水温度が低下した場合の説明>
凝縮器Cの冷却水温度が低下した場合、再生器Gの溶液濃縮に伴って再生器Gの溶液液面L2が低下する。再生器Gに設けられたフロート42が溶液液面L2の低下を検出すると、バルブ38を開いて、吸収器Aから再生器Gに戻る希溶液の一部をバイパス配管40を通して、再生器Gの熱源温水配管18より下方に導く。これにより熱源温水配管18に散布される希溶液量が減少するため、再生器Gの溶液を濃縮する能力が低下し、溶液の過濃縮が抑制される。
本実施形態例では、上記のように再生器Gの溶液の濃縮が進み、溶液液面L2が低下した場合に、フロート42により、バルブ38を開いて、再生器Gに戻る希溶液の一部をバイパス配管40を通して、再生器Gの熱源温水配管18より下方に導くため、熱源温水配管18に散布される希溶液量を減少させるから、溶液の濃縮度は略一定に保たれる。
また、本実施形態では、上記のように冷却水温度が低下して再生器Gの溶液濃縮が進んで溶液面L2が低下した場合、熱源温水配管18に散布される希溶液量を減少させて濃縮度を略一定に保つことによって、溶液過濃縮及び吸収器Aの異常昇温を防止することができる。
また、バルブ38とバイパス配管40とフロート42を設けるだけで、再生器Gの濃縮度は略一定に保つことができるから、大掛かりな設備や制御装置が不要で、故障も少なく、なおかつ、缶胴12のレイアウトに制約がない。装置の全高を抑えたコンパクトな吸収ヒートポンプ装置を実現できる。
また、本実施形態では、第1の実施形態と同様、冷却水温度が低下した場合にも内部サイクルの変動が少ないため、サイクル効率があまり変化せず、冷媒をオーバーフローさせる従来例(図8参照)などに比較して、冷却水温度低下時の効率を大幅に向上させることができる。
図4は本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の他構造例(第3の実施形態)を示す断面である。本吸収ヒートポンプ装置は2段昇温サイクルの吸収ヒートポンプ装置である。本吸収ヒートポンプ装置10−3は低温蒸発器EL、高温蒸発器EH、低温吸収器AL、高温吸収器AH、再生器G、凝縮器C、溶液熱交換器50L、50H、溶液ポンプ52、濃溶液配管54、中間濃度溶液配管56、希溶液配管58、冷媒ポンプ60、冷媒配管62、熱源温水配管64,66、冷却水配管68、熱媒配管70、高温水配管72から構成される。なお、図中の※1と※1、※2と※2はこの部分が接続され低温吸収器AL内の熱媒配管70と高温蒸発器EH内の熱媒配管70が接続されていることを示す。
本吸収ヒートポンプ装置10−3は図4に示すように、低温蒸発器EL、高温蒸発器EH、低温吸収器AL、高温吸収器AH、再生器G、及び凝縮器Cを角型断面の単一の缶胴12に収め、缶胴12内の上部に高温吸収器AH及び高温蒸発器EHを、缶胴12内の中段に低温吸収器ALと低温蒸発器ELを、缶胴12内の下部に再生器G及び凝縮器Cを配置した構造となっている。また、高温吸収器AHの下に低温吸収器AL、その下に再生器Gを、高温蒸発器EHの下に低温蒸発器EL、その下に凝縮器Cを配置している。高温吸収器AHと高温蒸発器EHの間には高温蒸発器EHで発生した冷媒蒸気を高温吸収器AHに導くための冷媒蒸気流路74を設け、低温吸収器ALと低温蒸発器ELの間には低温蒸発器ELで発生した冷媒蒸気を低温吸収器ALに導くための冷媒蒸気流路76を設け、再生器Gと凝縮器Cの間には、再生器Gで発生した冷媒蒸気を凝縮器Cに導くための冷媒蒸気流路78を設けている。
<運転サイクルの説明>
上記構造の吸収ヒートポンプ装置10−3において、再生器Gの濃溶液は、溶液ポンプ52から濃溶液配管54を通り、溶液熱交換器50L、続いて溶液熱交換器50Hで加熱された後、高温吸収器AH内に散布される。高温吸収器AHに散布された濃溶液は、高温蒸発器EHから冷媒蒸気流路74を通って流入する冷媒蒸気を吸収して吸収熱を発生し、その熱で高温水配管72の中を流れる被加熱媒体を加熱する。冷媒蒸気を吸収して濃度の薄くなった中間濃度溶液は、溶液熱交換器50Hの加熱側を通り、濃溶液配管54を通る濃溶液を加熱して低温吸収器AL内に散布される。
低温吸収器AL内に散布された中間濃溶液は低温蒸発器ELから冷媒蒸気通路76を通って流入する冷媒蒸気を吸収して吸収熱を発生し、その熱で熱媒配管70の中を流れる熱媒を加熱する。低温吸収器AL内で冷媒蒸気を吸収して濃度が薄くなった希溶液は、溶液熱交換器50Lの加熱側を通り、濃溶液配管54を通る濃溶液を加熱して再生器Gに戻り散布される。再生器G内に散布された希溶液は、熱源温水配管66の中を流れる熱源温水によって加熱され、冷媒蒸気を発生して濃縮され濃溶液となり、溶液サイクルを一巡する。
再生器Gで発生した冷媒蒸気は凝縮器Cに導かれ、冷却水によって冷却されて凝縮し、冷媒液となる。凝縮器C内の冷媒液は冷媒ポンプ60により冷媒配管62を通って低温蒸発器EL内及び高温蒸発気EH内に散布される。低温蒸発器EL内に散布された冷媒液は熱源温水配管64の中を流れる熱源温水によって加熱されて蒸発し、冷媒蒸気流路76を通って低温吸収器ALに導かれる。同様に、高温蒸発器EH内に散布された冷媒液は,熱媒配管70の中を流れる熱媒によって加熱されて蒸発し、冷媒蒸気流路74を通って高温吸収器AHに導かれる。
以上が冷媒と溶液サイクルであり、被加熱媒体(高温水)は高温吸収器AH内の高温水配管72で溶液の吸収熱によって加熱される。このように、吸収ヒートポンプを多段に構成することによって、単段昇温サイクルより高温の熱を発生することができる。
<冷却水温度が低下した場合の説明>
本吸収ヒートポンプ装置10−3においては、吸収ヒートポンプ装置10−3が通常の運転状態で凝縮器Cの冷却水が定格状態では、図2(a)に示すと同様に、冷媒液面L1は冷却水配管68の下方に位置しているが、外気温か低い場合等の冷却水の温度が低下し溶液過濃縮となるような場合、凝縮器Cの冷媒液面L1が上昇し、冷却水配管68が冷媒液に埋まりその伝熱面積が小さくなるような構成を採用している。即ち、外気温が低い場合等、凝縮器Cの冷却水配管20に流れる冷却水の温度が低下した場合、図6で説明したように凝縮器Cの圧力が低下し、溶液の濃縮が進み、溶液は再生器Gの底部に、冷媒液は凝縮器Cの底部に溜まるようになっているため、溶液が濃縮されると、再生器Gの溶液液面は低下し、図2(b)に示すと同様に、凝縮器C内の冷媒液面L1が上昇する。
本実施形態例では、冷媒液面が上昇した場合に、冷却水配管68の伝熱面が冷媒液に沈むように設定しているため、冷媒液面L1の上昇に伴って、冷却水配管68の有効伝熱面積が減少する。伝熱量Qは熱通過率U、伝熱面積F、及び対数平均温度差ΔTの積で表される(Q=U・F・ΔT)ため、伝熱量が一定のままで伝熱面積が減少すると、対数平均温度差が伝熱面積に反比例して増大する。即ち、冷却水温度が低下しても、冷媒の凝縮温度(即ち、凝縮器Cの圧力)の低下分は、対数平均温度差が増大する分と相殺されて、ほぼ一定に保たれる点は上記第1の実施形態である吸収ヒートポンプ装置10−1と同一である。
図5は本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の他構造例(第4の実施形態)を示す断面である。本吸収ヒートポンプ装置は2段昇温サイクルの吸収ヒートポンプ装置である。本吸収ヒートポンプ装置10−4は、低温吸収器ALからの希溶液を希溶液配管58を通して全部再生器Gに流入させ、再生器G内の溶液はスプレー専用ポンプ84により、配管80を通って熱源温水配管66に散布されるように構成し、該熱源温水配管66への溶液散布量は絞り弁82にて調節し、これにより再生器Gの伝熱量をコントロールするようにしている点を除けば、図4に示す吸収ヒートポンプ装置10−3と略同一である。なお、絞り弁82の代わりにインバータでスプレー専用ポンプ84の回転数を制御して、熱源温水配管66への溶液散布量を変化させてもよい。本吸収ヒートポンプ装置10−4の運転サイクルは図4に示す吸収ヒートポンプ装置10−3と同一であるのでその説明は省略する。
<冷却水温度が低下した場合の説明>
凝縮器Cの冷却水温度が低下した場合、再生器Gの溶液濃縮に伴って再生器Gの溶液液面が低下する。該溶液液面のレベルが所定以下になったことを図示しないセンサで検出すると、絞り弁82により配管80を通って熱源温水配管66に散布されるよう溶液量を減少させる。また、インバータでスプレー専用ポンプ84の回転数を制御する場合は、回転数を減少させて、溶液散布量を減少させる。これにより再生器Gの溶液を濃縮する能力が低下し、溶液の過濃縮が抑制される。
上記実施形態例では、第1の実施形態、第2の実施形態をそれぞれ別々に示したが、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせてもよい。つまり、凝縮器Cの冷却水配管20に流れる冷却水の温度が低下し、凝縮器Cの圧力が低下し、溶液の濃縮が進み凝縮器C内の冷媒液面L1が上昇した場合、該冷媒液に冷却水配管20の伝熱面積が沈む構造とすると共に、希溶液配管58を通る低温吸収器ALからの希溶液を再生器Gの入口部でフロート42で開閉されるバルブ38を備えたバイパス配管40で分岐し、再生器Gの熱源温水配管18より下方に導くようしてもよい。また、第3の実施形態と第4の実施形態を組み合わせても良い。
上記実施形態では、熱源をコージェネレーションの温水排熱としたが、工場排熱などにも同様に適用できる。また、温水に限らず廃蒸気など他の熱源でも構わない。
また、上記実施形態で凝縮器Cの熱交換器である冷却水配管20,熱源温水配管68が冷媒液に没入する割合は、一部でも全部でも良い。
また、被加熱媒体は高温水ではなく、蒸気として取り出すようにしても良い。また、水に限らず他の熱媒でも良い。
また、第3及び第4の実施形態では、2段昇温サイクルの吸収ヒートポンプ装置を示したが、2段昇温サイクルに限らず3段以上の昇温サイクルの吸収ヒートポンプ装置もよい。
なお、上記第1及び第2の実施形態例では、吸収器A内に熱交換部として高温水配管を配置し、被加熱媒体として高温水を流すようにしているが、被加熱媒体は高温水に限らず蒸気等他の媒体でもよく、また熱交換部もシェル&チューブに限らず、例えばプレートでもよく、要は吸収器A内に被加熱媒体が通る被加熱媒体流路が配置されていればよい。また、蒸発器E及び再生器G内には熱交換部として熱源温水配管16、18を配置し、熱源媒体として熱源温水を流しているが、熱源媒体は温水に限らず蒸気等他の媒体でもよく、要は蒸発器E及び再生器G内に熱源媒体が流れる熱源媒体流路が配置されていればよい。また、凝縮器C内には熱交換部として冷却水配管20を配置し、冷却媒体として冷却水を流しているが、冷却媒体は冷却水に限らず他の冷却媒体でもよく、要は凝縮器C内に冷却媒体が流れる冷却媒体流路が配置されていればよい。また、第3及び第4の実施形態、さらに多段の吸収ヒートポンプ装置とする場合にも同様である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の構造例を示した断面図である。(実施例1) 本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の凝縮器の構造例を示した断面図である。 本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の構造例を示した断面図である。(実施例2) 本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の構造例を示した断面図である。(実施例3) 本発明に係る吸収ヒートポンプ装置の構造例を示した断面図である。(実施例4) 従来例のデューリング線図(冷却水低下時のサイクル変化) 従来の吸収ヒートポンプ装置の構成を示した図である。 従来の吸収ヒートポンプ装置の構成を示した図である。
符号の説明
A 吸収器
E 蒸発器
G 再生器
C 凝縮器
AH 高温吸収器
EH 高温蒸発器
10 吸収ヒートポンプ装置
12 缶胴
14 高温水配管
16 熱源温水配管
18 熱源温水配管
20 冷却水配管
22 溶液ポンプ
24 溶液熱交換器
26 濃溶液配管
28 希溶液配管
30 冷媒ポンプ
32 冷媒配管
34 冷媒蒸気流路
36 冷媒蒸気流路
38 バルブ
40 バイパス配管
42 フロート
50L 溶液熱交換器
50H 溶液熱交換器
52 溶液ポンプ
54 濃溶液配管
56 中間濃溶液配管
58 希溶液配管
60 冷媒ポンプ
62 冷媒配管
64 熱源温水配管
66 熱源温水配管
68 冷却水配管
70 熱媒配管
72 高温水配管
74 冷媒蒸気流路
76 冷媒蒸気流路
78 冷媒蒸気流路
80 配管
82 絞り弁
84 スプレー専用ポンプ

Claims (3)

  1. 吸収器、蒸発器、再生器、凝縮器を備え、前記再生器の濃溶液は濃溶液配管を通って前記吸収器内に導かれ、前記蒸発器からの冷媒蒸気を吸収して吸収発熱し、被加熱媒体流路を通る被加熱媒体を加熱すると共に、前記冷媒蒸気を吸収し濃度の薄くなった希溶液となり、該希溶液は希溶液配管を通って前記再生器内に導かれ、該再生器内で熱源媒体流路を流れる熱源媒体で加熱され冷媒蒸気を発生すると共に、濃縮されて濃溶液となり、前記再生器で発生した冷媒蒸気は前記凝縮器に導かれ、冷却媒体流路を流れる冷却媒体により凝縮され冷媒液となり、該冷媒液は冷媒配管を通って前記蒸発器内に導かれ、熱源媒体流路を流れる熱源媒体により加熱されて蒸発して冷媒蒸気となり、該冷媒蒸気は前記吸収器に導かれるように構成された吸収ヒートポンプ装置において、
    前記再生器の前記熱源媒体流路に散布する溶液の量を減少させ、熱源媒体から溶液に伝熱する伝熱量を減少させることにより該再生器の能力を制限する再生器能力制限手段を設けたことを特徴とする吸収ヒートポンプ装置。
  2. 請求項に記載の吸収ヒートポンプ装置において、
    前記吸収器は温度の異なる複数段の吸収器からなり、前記蒸発器は温度の異なる複数段の蒸発器からなり、同じ段の蒸発器で蒸発した冷媒蒸気は同じ段の吸収器に流入するように構成された多段昇温型となっていることを特徴とする吸収ヒートポンプ装置。
  3. 吸収器、蒸発器、再生器、凝縮器を備え、前記再生器の濃溶液は濃溶液配管を通って前記吸収器内に導かれ、前記蒸発器からの冷媒蒸気を吸収して吸収発熱し、被加熱媒体流路を通る被加熱媒体を加熱すると共に、前記冷媒蒸気を吸収し濃度の薄くなった希溶液となり、該希溶液は希溶液配管を通って前記再生器内に導かれ、該再生器内で熱源媒体流路を流れる熱源媒体で加熱され冷媒蒸気を発生すると共に、濃縮されて濃溶液となり、前記再生器で発生した冷媒蒸気は前記凝縮器に導かれ、冷却媒体流路を流れる冷却媒体により凝縮され冷媒液となり、該冷媒液は冷媒配管を通って前記蒸発器内に導かれ、熱源媒体流路を流れる熱源媒体により加熱されて蒸発して冷媒蒸気となり、該冷媒蒸気は前記吸収器に導かれるように構成された吸収ヒートポンプ装置の運転方法において、
    前記吸収器から前記再生器に導き前記熱源媒体流路に散布する希溶液の量を減少させ、熱源媒体から希溶液に伝熱する伝熱量を減少させることにより前記再生器の能力を制限することを特徴とする吸収ヒートポンプ装置の運転方法。
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