JP4851758B2 - スイッチ回路 - Google Patents

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本発明は、電力増幅回路の負荷整合回路を切り換えるスイッチ回路に関する。
携帯電話のアンテナ段等に使われる高出力電力増幅回路において、出力電力の調整のために出力電力を切り替える必要がある。その場合に使用される方法の一つとして、スイッチ回路によって電力増幅回路の負荷整合回路を切り換える方法がある。携帯電話の出力は、その用途や変調方式により多少の違いはあるが、1〜4ワットレベルの高いものである。これは、実効電圧値換算(50オーム負荷時)で7〜15V、peak電圧値で10〜21V、peak-to-peak電圧値で20〜42Vと、非常に大きなものになる。このような高い電圧を切り換えるためスイッチ素子には、当然、高耐圧特性を有するものが使用される。
従来のスイッチ回路としては、スイッチ素子にトランジスタを用いたものが提案されている。かかるスイッチ回路においては、電力増幅回路の負荷整合回路の主要信号伝送線路のある分岐点に、第1のキャパシタを介して、バイポーラトランジスタ(BipTr)のコレクタ端子あるいは電界効果トランジスタ(FET)のドレイン端子が接続される。また、BipTrのエミッタ端子あるいはFETのソース端子は接地されている。BipTrのベース端子あるいはFETのゲート端子には、負荷整合回路切り換え信号が加えられる。
BipTrあるいはFETが導通(ON)時に所望の負荷切り換え特性が得られるように、第1のキャパシタの値は負荷整合回路の特性を整合して決められる。この第1のキャパシタは、負荷整合回路の一部として使われるとともに、主要信号伝送回路とのDCディカップリング(分離)用としても用いられる。
これに対して、特許文献1には、スイッチ素子としてPINダイオードが用いられたスイッチ回路が開示されている。
特開2002−344255号公報
ところで、代表的なスイッチ素子には、Si BipTr、GaAs FETあるいはSi MOSFET等の3端子デバイスがあげられる。しかしながら、これらのデバイスは、サイズが非常に大きいため、スイッチ回路の小型化の面で好ましくない場合が多い。さらに、デバイスの製造段階で高耐圧プロセスを使用しなければならないという点で、コスト高にもつながってしまう。
これに対して、PINダイオード等の2端子デバイスをスイッチ素子に用いれば、小型化および低コストの面で有利である。ところが、ダイオードの場合、2端子であるが故に、ON/OFFの切り換えに必要な信号であるバイアス電流(バイアス電流を流すことでONにし、バイアス電流を止めることでOFFにする)を供給するための周辺回路(バイアス供給回路)とのアイソレーション(分離)が皆無である。そのため、出力電力増幅回路の負荷整合回路切り換え時に流れる高出力電力信号がそのまま印加されることによって、バイアス供給回路が破壊されてしまうことがある。
通常、バイアス供給回路としては、携帯電話内の他の複雑なシステムを制御するために集積化設計が容易で、低コスト化の面でも競争力のあるCMOS回路が用いられる。もちろん、上述のアイソレーション向上という観点からは、かかるCMOS回路自体に高耐圧プロセスを適用して高耐圧性を保持させることも考えられる。しかし、その場合には、電力増幅回路の負荷切り換えに要求される高速性(切り換えスピード)を充分に満足できなくなってしまうというディレンマがある。
本発明によるスイッチ回路は、電力増幅回路の負荷整合回路を切り換えるスイッチ回路であって、上記負荷整合回路に一端が接続された第1の容量素子と、一端が上記第1の容量素子の他端に接続されるとともに、他端が接地されたPINダイオードと、上記第1の容量素子と上記PINダイオードとの間の経路に一端が接続された第1の抵抗素子と、一端が上記第1の抵抗素子の他端に接続されるとともに、他端が接地された第2の容量素子と、上記第1の抵抗素子と上記第2の容量素子との間の経路に一端が接続された第2の抵抗素子と、上記第2の抵抗素子と並列に接続された電界効果トランジスタ(FET)と、出力端が上記第2の抵抗素子の他端に接続され、バイアス供給回路を構成するインバータと、を備えることを特徴とする。
このスイッチ回路においては、FETがオンのとき、バイアス供給回路からPINダイオードにバイアス電流が供給される。これにより、PINダイオードは、オン状態に保たれる。一方、FETがオフのとき、バイアス供給回路からのバイアス電流の供給が遮断され、PINダイオードはオフ状態に保たれる。ここで、PINダイオードがオン状態のとき、第1の抵抗素子と第2の容量素子とが電圧分割回路として機能する。一方、PINダイオードがオフ状態のとき、第2の抵抗素子とインバータを構成するN型FETとが電圧分割回路として機能する。これにより、オン・オフ何れの場合にも、これらの電圧分割回路によって大きな減衰特性を得ることが可能である。よって、2端子デバイスであるPINダイオードをスイッチ素子として用いても、良好なアイソレーションを得ることができる。
本発明によれば、高速性を維持しつつ、小型化に適した構造のスイッチ回路が実現される。
以下、図面を参照しつつ、本発明によるスイッチ回路の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明によるスイッチ回路の一実施形態を示す回路図である。スイッチ回路1は、電力増幅回路70の負荷整合回路80を切り換えるスイッチ回路である。このスイッチ回路1は、負荷整合回路80に一端が接続された容量素子12(第1の容量素子)と、一端が容量素子12の他端に接続されるとともに、他端が接地されたPINダイオード14と、容量素子12とPINダイオード14との間の経路に一端が接続された抵抗素子16(第1の抵抗素子)と、抵抗素子16の他端に接続されるとともに、他端が接地された容量素子18(第2の容量素子)と、抵抗素子16と容量素子18との間の経路に一端が接続された抵抗素子22(第2の抵抗素子)と、抵抗素子22と並列に接続されたFET24と、出力端が抵抗素子22の他端に接続され、バイアス供給回路を構成するインバータ26と、を備えている。
ここで、容量素子18の容量値は、容量素子12の容量値の20倍以上であることが好ましい。また、容量素子18の容量値と抵抗素子22の抵抗値との積として得られる時定数は、1.0×10−4sec以上であることが好ましい。
出力電力増幅回路70の負荷整合回路80の主要信号伝送線路中の分岐点Pに、容量素子12を介して、PINダイオード14のアノード電極が接続されている。また、PINダイオード14のカソード電極はGNDに接地されている。主要信号伝送線路からの分岐点Pは、PINダイオード14が導通(ON)時に所望の負荷切り換え特性が得られるように、容量素子12の値とともに負荷整合回路80の特性を整合して決められる。容量素子12は整合回路80の一部として使われるとともに主要信号伝送回路とのDCディカップリング用としても用いられる。
容量素子12とPINダイオード14のアノード電極との間の点に、バイアス(電流)供給用の抵抗素子16が接続されている。抵抗素子16の他端は、電荷保持(負電圧維持)用の容量素子18の一端に接続されている。さらに、容量素子18の他端は接地されている。抵抗素子16と容量素子18との接続点は、FETスイッチを介してバイアス供給回路20の出力端子に結ばれている。このFETスイッチは、互いに並列に接続された抵抗素子22およびFET24によって構成されており、負荷整合回路切り換え制御信号と同期して、ON/OFFの状態を保つ。本実施形態において、抵抗素子22の抵抗値は1MΩとしている。
バイアス供給回路20は、上述の抵抗素子22、FET24およびインバータ26に加えて、インバータ28を含んでいる。すなわち、バイアス供給回路20は、CMOSインバータを2段有するCMOS回路として構成されている。これらのインバータ26,28に与えられる電源電位(P型FETのソース電位)は、例えば2.75Vである。
また、電力増幅回路70には、抵抗素子72を介して負荷整合回路80が接続されている。負荷整合回路80は、インダクタ81,82、容量素子83,84,85を含んでいる。インダクタ81の一端は、抵抗素子72に接続されている。インダクタ81の他端には、インダクタ82の一端が接続されている。インダクタ82の他端には、容量素子83の一端が接続されている。さらに、インダクタ81とインダクタ82との間の経路には、容量素子84の一端が接続されている。インダクタ82と容量素子83との間の経路には、容量素子85の一端が接続されている。これらの容量素子84,85の他端は、それぞれ接地されている。
負荷整合回路80の出力端(容量素子83の他端)は、50Ωの抵抗素子92を介して接地されている。抵抗素子72と負荷整合回路80との間の経路には、負荷94を介して電源96が接続されている。電源96の電源電圧は、例えば3.5Vである。
続いて、スイッチ回路1の動作および効果を説明する。出力電力増幅回路70の負荷整合回路80切り換え時でPINダイオード14が導通(ON)のとき、上述のFETスイッチはONで低抵抗値となる。また、相補型回路構成になっているバイアス供給回路20のCMOS回路の最終段(インバータ26)のうち、電源線側に接続されているpMOSFETもONになる。これにより、抵抗素子16を通じてPINダイオード14にバイアス電流が供給され、PINダイオード14がONに保たれる。
このとき、主要信号伝送線路からの分岐点Pで計測される高出力電圧Vは、基本的には容量素子12とPINダイオード14導通時のインピーダンスとに印加され、PINダイオード14導通時のインピーダンスをImp(PIN)とするとPINダイオード14のアノード電極端子に現れる電圧Vaは、次式で表される。
Va= Imp(PIN)/(Imp(PIN)+1/jωC1)×V…(1)
ここで、C1は、容量素子12の容量値である。
実際は、PINダイオード14導通時のインピーダンスImp(PIN)は、導通時に流すバイアス電流に依存するが、その影響は充分に小さく、容易にVa<1/20×Vの関係を実現できる。出力電力増幅回路70の負荷整合回路80切り換え前の状態でPINダイオード14が非導通(OFF)のとき、FETスイッチはOFFで、このFETスイッチ部分は、FETと並列に置かれた抵抗素子22の1MΩの高抵抗になる。
バイアス供給回路20のCMOS回路の最終段(インバータ26)は、相補型回路構成になっており、この相補型回路のグランド側に接続されているnMOSFETがONになる。このとき、主要信号伝送線路の分岐点Pで計測される高出力電圧Vは、負荷整合回路80の一部を担う容量素子12と抵抗素子16と容量素子18とで分圧される。よって、抵抗素子16と容量素子18との中点に現れる電圧Vmは、次式で表される。
Vm=1/jωC2/(1/jωC1+R1+1/jωC2)×V
=1/(C2/C1+jωR1・C2+1)×V…(2)
ここで、R1は抵抗素子16の抵抗値、C2は容量素子18の容量値である。
この式からわかるように、C2/C1の比を大きく取るとともに、R1を可能な限り大きな値に設定することにより、容易に、Vmを1/10×V以下にすることができる。実際、本発明者が計算機解析において使用したR1=1kΩ、C1=5pF、C2=100pFの値で、Vm<1/20×Vの関係が実現されている。
PINダイオード14へのバイアス電流を2mAと設計し、バイアス供給回路20であるCMOS回路の電源電圧を3.5Vとした。R1およびC1の値は、上述のとおり、それぞれ1kΩおよび5pFとした。出力電力増幅回路70の負荷整合回路80切り換え時でPINダイオード14が導通(ON)のとき、上記バイアス電流下でのImp(PIN)は約1.5Ωである。動作周波数を800MHzとした場合、(1)式からPINダイオード14のアノード電極端子に現れる電圧Vaを計算すると、Va=約1/37×Vとなる。電圧Vaは、PINダイオード14のターンオン(閾値)電圧に制限されて、非常に低い値(約1V)となる。
バイアス供給回路20の出力端子は抵抗素子16と容量素子18との接続点に接続されている。いま、抵抗素子16および容量素子18が約30dBの減衰特性が得られる電圧分割回路として働くため、バイアス供給回路20の出力端子に現れる電圧Vは、負荷整合回路80の主要信号伝送線路の分岐点Pでの電圧が40V(代表的な応用例を考えた場合の最大値と思われる)だとしても、4mV程度の小さな電圧となる。すなわち、低コストで小型な2端子スイッチを使用しても、バイアス供給回路20とのアイソレーションが問題ないレベルになる。
その結果、高速性の観点から、高耐圧CMOSプロセス使用のCMOSバイアス供給回路を使用しなくてはならない理由が無くなる。したがって、製品目標特性仕様実現のための最適な組み合わせによる電力増幅回路用負荷整合回路切り替えスイッチ回路が実現できる。
出力電力増幅回路70の負荷整合回路80切り換え前の状態でPINダイオードが非導通(OFF)のとき、FETスイッチはOFFで、このFETスイッチ部分はFET24と並列に置かれた抵抗素子22の1MΩの高抵抗になり、容量素子18に蓄積されている電荷の散逸(discharge)が防止される。容量素子18に蓄積された電荷と、C2/C1の値を大きく設定することによる容量素子12の電圧降下が大きいことから、PINダイオード14を常に非導通の状態に保つことができる。
R1=1kΩ、C1=5pF、C2=100pFの場合で、Vm=1/36×Vとなり、負荷整合回路80の主要信号伝送線路の分岐点Pでの電圧Vが40Vのとき、バイアス供給回路20のCMOS回路の出力端子(インバータ26の出力端子)での電圧はVm=約1.1Vとなる。さらに、FETスイッチ部の1MΩの抵抗と、最終段の相補型回路構成のグランド側に接続されているnMOSFETのON抵抗とで電圧分割回路を構成し、30dB以上の減衰量となる。最終的に、CMOS回路の最終段の相補型回路構成の中点に現れる電圧は1.1mV以下で、充分な高速動作を維持できるCMOSプロセスの耐圧限界以下となる。よって、出力電力増幅回路70の負荷整合回路80切り換え時でPINダイオード14が導通(ON)の場合と同様に、最適な組み合わせによる電力増幅回路用負荷整合回路切り替えスイッチ回路が実現できる。
以上述べたように、スイッチ回路1においては、FET24がオンのとき、バイアス供給回路20からPINダイオード14にバイアス電流が供給される。これにより、PINダイオード14は、オン状態に保たれる。一方、FET24がオフのとき、バイアス供給回路20からのバイアス電流の供給が遮断され、PINダイオード14はオフ状態に保たれる。ここで、PINダイオード14がオン状態のとき、抵抗素子16と容量素子18とが電圧分割回路として機能する。一方、PINダイオード14がオフ状態のとき、抵抗素子22とインバータ26を構成するN型FETとが電圧分割回路として機能する。これにより、オン・オフ何れの場合にも、これらの電圧分割回路によって大きな減衰特性を得ることが可能である。よって、2端子デバイスであるPINダイオード14をスイッチ素子として用いても、良好なアイソレーションを得ることができる。
充分なアイソレーションが実現できた事によりバイアス供給回路20用のCMOSプロセスの選定に際して、耐圧を心配することなく、スイッチ速度のみを考慮すればよく、高速スイッチング設計が可能となる。これにより、高速性を維持しつつ、小型化に適した構造のスイッチ回路1が実現されている。
また、バイアス供給回路20としてCMOS回路を用いているため、スイッチ回路1は低コストで製造することができる。さらに、回路構成素子に複数の役割を設定して回路素子数を低減することにより、回路全体の一層の小型化が図られている。例えば、容量素子12は、上述のように、負荷整合回路80の一部としての機能とDC分離の機能とを兼ねている。
容量素子18の容量値を容量素子12の容量値の20倍以上とした場合、容易に、Vmの値をVに対して充分に小さくすることができる。Vm≦1/10×Vであれば、外乱の影響を充分に小さく抑えることができる。
容量素子18の容量値と抵抗素子22の抵抗値との積として得られる時定数を1.0×10−4sec以上とした場合、容量素子18に蓄積されている電荷の散逸を好適に防ぐことができる。
本発明によるスイッチ回路の一実施形態を示す回路図である。
符号の説明
1 スイッチ回路
12 容量素子
14 PINダイオード
16 抵抗素子
18 容量素子
20 バイアス供給回路
22 抵抗素子
26,28 インバータ

Claims (1)

  1. 電力増幅回路の負荷整合回路を切り換えるスイッチ回路であって、
    前記負荷整合回路に一端が接続された第1の容量素子と、
    一端が前記第1の容量素子の他端に接続されるとともに、他端が接地されたPINダイオードと、
    前記第1の容量素子と前記PINダイオードとの間の経路に一端が接続された第1の抵抗素子と、
    一端が前記第1の抵抗素子の他端に接続されるとともに、他端が接地された第2の容量素子と、
    前記第1の抵抗素子と前記第2の容量素子との間の経路に一端が接続された第2の抵抗素子と、
    前記第2の抵抗素子と並列に接続された電界効果トランジスタと、
    出力端が前記第2の抵抗素子の他端に接続され、バイアス供給回路を構成するインバータと、
    を備え
    前記第2の容量素子の容量値は、前記第1の容量素子の容量値の20倍以上であり、
    前記第2の容量素子の容量値と前記第2の抵抗素子の抵抗値との積として得られる時定数は、1.0×10 −4 sec以上であり、
    前記電界効果トランジスタのオン/オフを切り換えて前記負荷整合回路を切り換えるスイッチ回路。
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