本発明の実施形態について以下に説明する。なお、以下の記載は、本発明を説明するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
(電気泳動用反応器具の製造方法)
本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法は、基材に電気泳動用のゲルが固定されてなる電気泳動用反応器具の製造方法であって、基材のゲルを固定する面に、液体を吐出して液溜まりを形成する第1の吐出工程と、第1の吐出工程の後、該液溜まりにゲル溶液を吐出する第2の吐出工程とを含めばよい。
電気泳動とは、タンパク質、DNA又はRNA等の生体高分子を、大きさ又は電荷の違いに起因した、所定の電場における移動速度の差を利用して、分離する方法である。電気泳動には、生体高分子をゲル等の支持体中で移動させる方法があり、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はアガロースゲル電気泳動等が挙げられる。
本発明において製造される電気泳動用反応器具は、電気泳動において試料の各成分を分離するための支持体であるゲルが固定されている基材であり、例えば、等電点電気泳動(IEF;isoelctric focusing)によって分離したタンパク質をさらに、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE;sodium dodecyl sulfate−polyacrylamidegel electrophoresis)によって分離する二次元電気泳動に好適に利用することができる。
基材は、その表面の少なくとも一部に、ゲルが形成および固定されるものであり、例えば、平板プレート又は所望の形状に成型したチップ等が挙げられる。基材の原料としては、例えばガラス、樹脂又はセラミックス等が挙げられる。
これら原料のうち、ガラスとしては、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等が挙げられ、樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET;polyethylene terephthalate)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA;polymethyl methacrylate)等が挙げられ、セラミックスとしては、例えば、アルミナ、低温同時焼成セラミック等が挙げられる。
また、特に限定されるものではないが、基材上面の任意の領域が例えば凹状又は凸状に形成されていたり、該領域内に複数の凹凸構造が形成されていたりすることが好ましい。これにより、後述する第1の吐出工程において液体を吐出するとき、吐出した液体の液溜まりを形成する領域を制御することができる。
第1の吐出工程とは、基材のゲルを固定する面に、液体を吐出して液溜まりを形成する工程である。ここでいう液溜まり(液滴捕捉領域)とは、吐出された液体が基材上に留まっている状態を指す。液溜まりを形成する領域は、例えばゲルを形成する所望の領域とすることができる。
液体としては、ゲルの形成に支障を来たすものでなければ特に限定されないが、例えば、水性溶媒であることが好ましく、さらに好ましくは第2の溶液のゲル化を促進させる試薬を含む溶液である。
第1の吐出工程では、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッドを用いて液体を吐出すればよい。また、その吐出量は形成するゲルの膜厚に応じて適宜設定すればよく、例えば、厚いゲルを形成したい場合は液溜まりが厚くなるように吐出し、薄いゲルを形成したい場合は液溜まりが薄くなるように吐出することが好ましい。一例として、例えば0.2mm〜0.4mm程度の液溜まりが形成されるように吐出してもよい。
第2の吐出工程とは、第1の吐出工程において形成された液溜まりにゲル溶液を吐出する工程である。本発明では、ゲル溶液の吐出対象に液溜まりを形成しておくことにより、ゲルの品質を向上させることができる。
つまり、ゲル溶液を基材の表面に直接吐出するとき、基材とゲル溶液との濡れ性が良好でない場合には吐出したゲル溶液の液滴同士が十分に混合されず、形成されたゲルの品質が十分ではない。この場合、ゲル溶液が所望の領域、すなわちゲルを形成する領域に十分に行き渡らず、製造される電気泳動用反応器具の良品率(歩留まり)が低下する。
本発明では、予め基材に液体を吐出して液溜まりを形成しておくことにより、続いて吐出されるゲル溶液と基材との濡れ性が改善し、所望の領域にゲル溶液が行き渡る。よって、基材上に位置再現性よくゲルを形成することが可能であり、歩留まりが向上する。
また、濡れ性が改善しているために吐出したゲル溶液の液滴同士が十分に混合されるため、ゲルの接着性が強固になり、信頼性が高い電気泳動用反応器具を製造することができる。
ゲル溶液としては、例えば、ゲルの主骨格を形成するアクリルアミドと、ゲルの主骨格を架橋するN,N’−メチレンビスアクリルアミドとを混合したアクリルアミド混合溶液、イモビライン混合溶液、アガロース混合溶液等が挙げられる。
第2の吐出工程におけるゲル溶液の吐出は、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッドを用いて行なえばよいが、特に、インクジェットヘッドを用いて吐出することが好ましい。
このインクジェットヘッドは、溶液を微小な液滴として吐出することができるため、基材と該ゲル溶液との濡れ性が改善するように形成された液溜まりにゲル溶液を微小な液滴で吐出すれば、所望の形状のゲルを容易に作製することができる。
インクジェットヘッドを用いた吐出方法としては、主に連続吐出型(コンティニュアスインクジェット)とオンデマンド型(ドロップオンデマンドインクジェット)とに分類される。さらに、コンティニュアスインクジェットとしては、例えば、チャージした微小液滴を電界でコントロールする荷電制御方式が挙げられ、ドロップオンデマンドインクジェットとしては、例えば、サーマル(バブル)方式、静電アクチュエータ方式又はピエゾ方式等が挙げられる。
また、第2の吐出工程では、例えば、固定化pH勾配(IPG;immobilized pH gradient)ゲル又はグラジエントゲル等のように、形成されるゲルがゲル濃度又はpHの勾配を有するようにゲル溶液を吐出することが好ましい。
IPGゲルとは、等電点電気泳動に用いられるゲルであり、pHに対して勾配を有している。また、グラジエントゲルは、SDS−PAGEに用いられるゲルであり、アクリルアミド濃度に対して勾配を有している。
これらのゲルを作製する場合、pH又はゲル濃度を十分に管理する必要があり、基材にゲル溶液を吐出する際、微小な液滴で吐出されることが多い。そのため、基材の表面に形成された液溜まりによって濡れ性を改善しておくことにより、ゲル溶液の微小な液滴同士が好適に混合される。
これらの工程を経て形成されるゲルは、タンパク質等の生体高分子を電気泳動によって分離する支持体であり、例えば、ポリアクリルアミドゲル又はアガロースゲルを含む。本発明によれば、予め形成した液溜まりにゲル溶液を吐出するため、ゲルを所望の位置に再現性よく形成することができる。
このゲルの厚さは特に限定されないが、例えば、数百ミリメートルから数ミリメートル程度であることが望ましい。形成されるゲルの厚さがこの範囲であれば、電気泳動実験に最適に用いることができる。
また、本発明では、第2の吐出工程の後、液溜まりに重合開始剤を吐出する第3の吐出工程を含むことが好ましい。つまり、ゲルを形成するための試薬を多段階で吐出することが好ましい。
重合開始剤とは、ゲル溶液のゲル化を開始させる溶液であり、例えば、過硫酸アンモニウム(APS;ammmoniumpresulfate)が挙げられる。例えば、重合開始剤をゲル溶液よりも前又は同時に吐出した場合、ゲル溶液を吐出している最中にゲルの重合が開始されることが起こり得、ゲル作製治具又はゲル作製装置(反応器具製造装置)内にて不要にゲル化されてしまうことがある。
また、一般的にインクジェットヘッドにて吐出されるゲル溶液の1スキャンの吐出量は1μLであり、膜厚を大きくするためにはスキャン数が増加する。そのため、先に吐出したゲル溶液がすべてのゲル溶液を吐出し終える前にゲル化してしまうことがあり、品質のよいゲルを形成することが難しい。
そこで、重合開始剤の吐出を、ゲル溶液を吐出する工程の後に行なうことにより、ゲル化時間を制御することが可能である。よって、不必要にゲル化反応が進行して配管が詰る等装置の不具合が生じることを防ぐことができ、例えば100μm以上の膜厚の大きいゲルを作製することができる。
さらに、例えば、第1の吐出工程の前に、基材の表面の性質を化学的に改質する処理を行なってもよい。具体的には、液溜まりを形成する領域が親水性を有し、それ以外の領域が疎水性を有するように処理を施してもよい。
つまり、親水性を有する領域は液体との濡れ性がよく、疎水性を有する領域は液体との濡れ性が悪い。そのため、例えば液体を基材上に吐出したとき、濡れ性がよい領域には液体が広がりながら液溜まりを形成し、濡れ性が悪い領域ではそれ以上液溜まりが広がり難い。よって、基材上に親水性を有する領域と疎水性を有する領域とを形成しておくことにより、液溜まりが形成される範囲を制御することができる。
基材表面の改質処理としては、基材のゲルを固定する面(ゲル形成面ともいう)が親水性材料からなるか、疎水性材料からなるかによって異なる処理を行なうことが可能である。
例えば、基材のゲル形成面が疎水性材料からなる場合、硫酸を用いたニトロ化、硝酸を用いたスルホン化、酸素プラズマ処理を用いた酸素含有官能基の導入等の親水性処理によって基材上に親水性領域を形成することができるが、特に、酸素プラズマ処理を施すこと(酸素プラズマ処理工程)が好ましい。
酸素プラズマ処理とは、物質の表面を改質する処理であり、例えばプラズマによって酸素含有置換基を該表面に導入することによって親水性を高める技術である。つまり、酸素プラズマ処理が施された基材の表面は濡れ性が改善する。
このように、液溜まりを形成する領域が酸素プラズマ処理によって濡れ性が改善されているため、第1の吐出工程において吐出された液体が所望の領域に液溜まりを形成するように、位置を制御することができる。
また、例えば、基材のゲル形成面が親水性材料からなる場合、基材の材質に応じて適切な疎水化処理を行なえばよい(疎水化処理工程)。
例えば、基材がガラス製である場合、親水性領域になる部位をカプトンテープ等でマスキングし、光分解性シランカップリング剤を用いて処理することにより当該部位以外の領域を疎水化する。その後、親水性領域になる部位を紫外光照射することによって当該部位は親水性になる。これにより、基材上に親水性領域と疎水性領域とが形成される。
また、例えば基材がシリコーン製である場合、親水性領域となる部位を自然酸化膜によってマスキングし、希フッ酸によってウェットエッチングすることにより当該部位以外の領域を疎水化すればよいし、先に希フッ酸によって洗浄した後、当該部位以外の領域をマスキングしてから酸化処理してもよい。その後、紫外光照射等によって任意の領域を親水性にすることによって、基材上に親水性領域と疎水性領域とが形成される。
このように、化学的な表面改質処理によって基材上に親水性領域と疎水性領域とを形成することにより、親疎水性に係る濡れ性を利用して、ゲルを位置再現性よくパターニングすることができる。また、化学的な表面処理の代わりに、基材上に、物理的に複数の凹凸を形成することにより、表面積を拡大して濡れ性を向上させてもよい。形成する凹凸は、後述するように微細であることが好ましい。
また、基材上に凹状または凸状に形成された領域が存在していれば、表面張力により、上記液溜りの範囲が規定されるため、ゲルが形成される領域を制御することもできる。
なお、本明細書では、例えば、表面改質処理が施された領域、凹状又は凸状が形成された領域又は凹凸構造が形成された領域等、基材上の任意の領域にゲルが形成(付着)されるように処理が施された領域を「ゲル付着領域」と称する。
(ゲルプレート10の製造方法)
続いて、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法の詳細について図面を参照して説明する。まず、図1を参照して本発明の一実施形態における、電気泳動用反応器具の製造の流れについて説明する。図1は、本発明の一実施形態における、電気泳動用反応器具を製造する際の流れを示す断面図である。
なお、本実施形態では、一例として、典型的な電気泳動用ゲルの一つである4%ポリアクリルアミドゲルが形成されたゲルプレート10(電気泳動用反応器具)の製造方法について説明する。
4%ポリアクリルアミドゲルを形成するための試薬としては、例えば、30%アクリルアミド混合溶液(アクリルアミド+N,N’−メチレンビスアクリルアミド)、1Mトリス塩酸緩衝液(Tris−HCl)、過硫酸アンモニウム(APS;ammmoniumpresulfate)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED;N,N,N’,N’−tetramethylethylenediamine)、及び純水が挙げられる。
アクリルアミド混合溶液は、ゲルの主骨格を形成するアクリルアミドと、ゲルの主骨格を架橋するN,N’−メチレンビスアクリルアミドとを混合したゲル溶液であり、トリス塩酸緩衝液はバッファーであり、APSは重合開始剤であり、TEMEDは重合促進剤である。
本実施形態では、これらゲルを形成するための試薬を3段階で吐出するが、回数はこれに限定されるものではなく、液体を吐出する第1の吐出工程と、ゲル溶液を吐出する第2の吐出工程とを含めばよい。
まず、基板1(基材)の上面を、例えば酸素プラズマ処理等によって表面改質処理し、ゲル付着領域2を形成する(図1の(a))。
ゲル付着領域2は、上述したように基材上の任意の領域にゲルが形成(付着)されるように処理が施された領域であり、表面改質処理が施された領域の他にも、例えば凹状のくり抜き構造又は凸状の出っ張り構造が形成された領域、又は微細な凹凸構造が形成された領域であってもよい。また、これらを組み合わせることが可能である。
基板1としては、例えば、70ミリメートル×13ミリメートルのポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが可能であり、この基板1に対して表面改質処理を行なってゲル付着領域2を形成する。
本実施形態では、第1の吐出工程の前に、ゲル付着領域2以外の部位をマスキングし、酸素プラズマ処理を行なうことにより親水性領域を有するゲル付着領域2を形成する。この酸素プラズマ処理等の表面改質処理はパターニングが容易で且つ生産性が高いため、より好ましい。このとき、ゲル付着領域2の面積は、例えば50ミリメートル×2.4ミリメートルにすることができる。
次に、基板1のゲル付着領域2に対して、第1の溶液(液体)を吐出する。このとき、ゲル付着領域2は酸素プラズマ処理によって親水性にされているため、第1の溶液が位置再現性よくゲル付着領域2に留まって液溜まり5を形成する(図1の(b))。
第1の溶液としては、例えば、1Mトリス塩酸緩衝液、TEMED、純水、およびこれらの混合液が挙げられる。これらの量は、ポリアクリルアミドゲルの濃度に応じて適宜設定すればよく、混合液における混合比率も特に限定されない。また、第1の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いることができる。
第1の吐出工程において吐出される液体は、上述したように、水性溶媒であることが好ましく、第2の溶液のゲル化を促進させる試薬を含む溶液であることがさらに好ましい。
つまり、ゲル溶液を基板1に吐出するとき、反応系が気相中である場合には吐出したゲル溶液の微小液滴が基板1上で十分に混合され難い。一方、ゲル付着領域2に予め液体を吐出して液溜まり5を形成しておくことにより、微小液滴間での結合を起こり易くすることができ、よって、ゲル溶液を十分に混合させることができる。このとき、ゲル付着領域2が親水性を有するように表面改質処理がなされていれば、より好適にゲル溶液を混合させることができる。
また、液体がゲル形成に関連する試薬を含む溶液であれば、ゲルを形成するための試薬を多段階で吐出することになる。このようなゲルの作製方法では、ゲル化時間を制御することが可能であり、例えば、不必要にゲル化反応が進行して配管が詰る等装置の不具合が生じることを防ぐことができる。
第1の溶液の吐出後、液溜まり5が形成されたゲル付着領域2に対して第2の溶液を吐出する。第2の溶液としては、例えば、30%アクリルアミド混合溶液等のゲル溶液が挙げられる。
第2の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等が挙げられるが、特に、微小なノズルから微小液滴を飛ばして基板1に付着させるインクジェットヘッドを用いることが好ましい。図1の(c)に示すように、インクジェットヘッド11を用いて、第2の溶液を微小液滴6として吐出することができれば、ゲルの濃度及び形成領域を容易に制御することができる。
また、例えば、IPGゲル又はグラジエントゲルを作製する場合、インクジェットヘッド11を用いて、例えば30%のアクリルアミド混合溶液を勾配を付けて吐出することにより、高精細なグレースケール(グラジエント)を作製することができる。よって、高性能なIPGゲル又はSDS−PAGEグラジエントゲルを提供することができる。
本実施形態のように、インクジェットヘッド11から第2の溶液の微小液滴6を吐出するときに液溜まり5が形成されていることにより、液溜まり5に吐出された微小液滴6同士の混合を大きく促進させることができる。よって、液溜まり5がない場合に生じる電気泳動特性の劣化を防ぐことができる。また、必要に応じてより精度の高いグラジエントを形成することができる。
続いて、第1の溶液と第2の溶液との混合溶液7に対して、第3の溶液を吐出する(図1の(d))。第3の溶液としては、例えばAPS溶液が挙げられ、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いて吐出すればよい。
これにより、例えば、50ミリメートル×2.4ミリメートルの面積を有するゲル付着領域2に対して、総量80マイクロリットルの第1〜第3の溶液を吐出する場合、0.5〜1.0ミリメートルのポリアクリルアミドゲル3が形成されたゲルプレート10が得られる。
なお、ゲルプレート10の作製は、例えば、アルゴン等の不活性ガス又は窒素雰囲気で行うことが好ましい。すなわち、反応器(例えば、ゲル作製装置が備えているもの)内においてゲルプレート10の作製を行なう場合、ゲルプレート10の作製中は該反応器の内部を例えばアルゴン等の不活性ガス又は窒素雰囲気にして、ゲル化反応の阻害因子になる酸素を反応器内から排出することが望ましい。
従来の典型的なゲル化反応では、ガラス基板等によって形成されるゲル作製治具にゲルがキャスティングされているため大気に触れ難いが、本実施形態のゲルプレート10はゲル溶液を基板1に直接描画するため、ゲル溶液の大部分の表面が大気中に暴露され、酸素の影響を受け易い。よって、反応器内を不活性ガス又は窒素雰囲気にすることが望ましい。
しかし、ゲルプレート10を簡便に作製する場合、反応器等は用いずに大気中でゲル化反応を行なう場合がある。この場合、APSの吐出量を、例えば基板1のゲル付着領域2に吐出される第1〜第3の溶液の全量に対して、5%〜20%程度にすることが好ましい。
APSが5%以上であれば、ゲル溶液を十分にゲル化し得る。また、APSが20%以下であれば、APS同士が影響し合ってゲル化速度が速くなることに起因する、ゲル化開始に必要なラジカルが減少して制御不十分になることを抑制することができる。
この第3の溶液であるAPSは、上述したように最終段階に吐出することが好ましい。これにより、作製治具又はゲル作製装置内におけるゲル溶液のゲル化を抑制し、例えば配管詰り等、ゲル作製治具又はゲル作製装置内で不要にゲル化されてしまうような問題を防止することができる。
このように、本実施形態のゲルプレート10の製造方法によれば、基板1上の任意の位置に形成されたゲル付着領域2に対して各溶液を吐出することにより、任意の大きさ、組成及び濃度を有し、位置再現性高くゲル3を直接的に形成することができる。
よって、従来ではガラス基板等のキャスティング治具を用いてゲルプレートを形成していたためにゲルを形成する場所が制限されていたが、本実施形態の製造方法によれば、例えば基板1の端面等、任意の場所にゲルを形成することができる。
続いて、本実施形態に係る製造方法によって作製されるゲルプレート(等電点電気泳動チップ、SDS−PAGEチップを含む)の構成について説明する。なお、以下では、ゲルプレートがゲル付着領域を有している場合について説明するが、本発明はゲル付着領域を有しているゲルプレートを作製する場合に限定されず、基板上にゲルが固定されてなるゲルプレート一般を作製するために適用することができる。
(ゲルプレート10の構成)
本実施形態に係る製造方法によって作製されたゲルプレートの一例について図2〜6を参照して説明する。図2の(a)は、本実施形態に係る製造方法によって作製されたゲルプレートの一例であるゲルプレート10の構成を示す斜視図であり、図2の(b)は、ゲルプレート10の構成を示す断面図である。
図2に示すゲルプレート10は、電気泳動用のゲルを固定するための基板1に電気泳動用のゲル3が固定されてなるものである。この基板1は、ゲル3を固定する面の少なくとも一部に、当該ゲル3を付着させるための処理が施されたゲル付着領域2を有している。
図2では、ゲル付着領域2が基板1の上面の外周近傍に枠状に設けられており、例えば、表面改質層レベルである数ナノメートルから溝構造レベルである数百マイクロメートルの厚さを有している。基板1にこのようなゲル付着領域2を設けることにより、所望の領域に液溜まりを形成することが可能であり、ゲルが形成される領域を容易に制御することができる。
しかしながら、ゲル付着領域2の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、基板1上面の任意の領域に凹状又は凸状の構造が形成されていてもよいし、微細な凹凸構造が形成されていてもよい。また、これらの構成を組み合わせることができる。
例えば、図3に示す基板1には、上面中央に所望のパターンの凹構造(くり抜き構造)が設けられている。このくり抜き構造は、例えば、数マイクロメートルから数百マイクロメートルの深さを有していてもよいが、基板1の厚さに応じて適宜設定すればよい。
くり抜き構造の作製方法としては、基板1の材質に応じて選択すればよい。例えば、ガラス基板であればフォトリソグラフィ、つまり、ゲル付着領域2になる所望の領域以外をフォトレジストマスクによってマスクし、該所望の領域をエッチングしてくり抜き構造を作製することができる。また、例えば、樹脂基板であれば、切削加工又は射出成型によってくり抜き構造を作製することができる。
また、例えば図4に示す基板1には、図3に示す基板1とは反対に上面中央に所望のパターンの凸構造(出っ張り構造)が設けられている。この出っ張り構造は、例えば、数マイクロメートルから数百マイクロメートルの深さを有していてもよいが、基板1の厚さに応じて適宜設定すればよい。
出っ張り構造の作製方法としては、上述のくり抜き構造と同様の方法により作製することができる。例えば、基板1がガラス基板である場合、ゲル付着領域2になる所望の領域をフォトレジストマスクによってマスクし、該所望の領域以外をエッチングして出っ張り構造を作製することができる。
さらに、ゲル付着領域2には、その内部に複数の凹凸構造が形成されていてもよい。該凹凸構造は微細であることが好ましい。例えば、図5に示す基板1においては、ゲル付着領域2の内部に微細な凹凸構造4が形成されている。
例えば、ゲル溶液を微小な液滴で基板1に吐出したとき、ゲル溶液と基板1との濡れ性が悪いと、吐出された液滴同士が十分に混合されず、電気泳動特性の悪いゲルになる。これに対し、図5に示す微細な凹凸構造4によってゲルが形成される領域を制御することが可能である。
つまり、凹凸構造4が形成された微小領域には第1の吐出工程において吐出された液体が留まり易い。その結果、該領域の濡れ性が改善し、第2の吐出工程において吐出するゲル溶液の液滴同士の結合が起こり易い。よって、効率よく所望の形状のゲル3を形成することができる。
この凹凸構造4は、例えば、数ナノメートルから数十ナノメートルの深さ又は厚さを有していてもよく、一般的に知られているナノインプリント技術を用いることにより好適に作製することができる。
また、図5に示す例では、基板1の平面上に直接凹凸構造4が形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、図2〜4に示す構成のゲル付着領域2の内部に凹凸構造4が形成されていてもよい。
また、上述したように、基板1の表面を基材の表面の性質を化学的に改質する処理を行なってもよく、例えば、液溜まりを形成する領域が親水性を有し、それ以外の領域が疎水性を有するように処理を施すことが好ましい。
例えば、図6に示す基板1のゲル付着領域2の内部に親水性を有する親水性領域を含み、それ以外の基板1の表面が疎水性を有することが望ましい。これにより、ゲル付着領域2の濡れ性が向上するため、ゲル3を位置再現性よく形成することができる。
ゲル付着領域2を親水性領域にする方法としては、基板1の少なくともゲル付着領域2が形成されている面が親水性材料からなるか、疎水性材料からなるかによって異なる処理を行なうことが可能である。なお、それぞれの材料に応じた親水性処理は、例えば上述の「電気泳動用反応器具の製造方法」の項目にて説明した方法により行なえばよい。
また、親水性領域は、酸素含有官能基を多く含む組成であることが好ましい。この場合、例えば、酸素含有官能基を有する有機樹脂を基板1として用いるか、市販品の有機樹脂を親水化処理して基板1として用いればよい。親水性領域が酸素含有官能基を多く含む組成であれば、さらに濡れ性がよい。
このように、化学的な表面改質処理によって基板1上に親水性領域と疎水性領域とを形成することにより、親疎水性に係る濡れ性を利用して、ゲルを位置再現性よくパターニングすることができる。
なお、基板1の表面改質処理は、図2〜5に示す構成の基板1に対して行なってもよい。
(等電点電気泳動チップ20の作製)
次に、本発明に係る製造方法の他の例として、図7に示すような等電点電気泳動チップ20を製造する場合について説明する。図7は、等電点電気泳動チップ20を製造する際の流れを示す断面図である。なお、図7に示すIEFチップ20に形成されたIPGゲルは、例えば特開2007−64848号公報(2007年3月15日公開)に開示されている第1媒体(1Dゲル)、すなわち固定化pH勾配ゲルに好適に適用可能である。
以下では、二次元電気泳動の一次元目、すなわち等電点電気泳動に用いられる固定化pH勾配ゲル(IPGゲル)が形成された等電点電気泳動チップ20(IEFチップ)の製造方法について説明する。
一般的に知られる等電点電気泳動に用いられるIEFチップは、ゲルボンドフィルム上にIPGゲルをキャスティングし、所望の形状に切断することにより得られる。
例えば、このようなIPGゲルにおいて本実施形態の製造方法を適用する場合、ゲルボンドフィルムの素材であるPETに対してゲル付着領域2を形成する部位以外をマスキングし、グロー放電又はアーク放電等によって酸素プラズマ処理を行なうことにより、ゲル付着領域2を形成することができる。
このように、IPGゲルが固定されたIEFチップの作製に本実施形態の製造方法を用いれば、従来、作製が困難であった形状に対しても十分にゲルを形成することができる。
IPGゲルを形成するための試薬としては、例えば、イモビライン混合溶液、等電点電気泳動試薬、TEMED、APS、及び純水が挙げられる。
イモビライン混合溶液は、例えばpHが異なる2種類のイモビラインを混合した溶液であり、正電荷又は負電荷を有するアクリルアミド誘導体によって、様々な解離定数(pK)を有するイモビラインを混合することにより、所望のpHを有するイモビライン混合溶液が得られる。また、等電点電気泳動試薬(アンフォライン)は両性電解質混合物である。
まず、図7の(a)に示すように、支持基体12の上端面にゲル付着領域2を形成する。支持基体12としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のプラスチック基板又はガラス基板を用いることができる。
また、本実施形態においても、支持基体12のゲル付着領域2を親水性にし、ゲル付着領域2以外の領域を疎水性にすることが好ましい。例えば、支持基体12がPMMAである場合、ゲル付着領域2以外の領域をマスキングし、酸素プラズマ処理又はスルホン化処理を行なうことにより親水性領域を有するゲル付着領域2を形成することができる。
次に、支持基体12のゲル付着領域2に対して、第1の溶液を吐出する。第1の溶液としては、例えば、等電点電気泳動試薬、TEMED、及び純水が挙げられる。これらの混合比率は特に限定されない。これにより、ゲル付着領域2に液溜まり13が形成される。
第1の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等が挙げられる。
第1の溶液の吐出後、液溜まり13が形成されたゲル付着領域2に対して第2の溶液を吐出し、グラジエントを形成する。第2の溶液としては、例えば、イモビライン混合溶液が挙げられる。
第2の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等が挙げられるが、特に、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。例えば、図7の(b)に示すように、液溜まり13が形成されたゲル付着領域2に、2種類のイモビライン混合溶液の濃度勾配ができるように、インクジェットヘッド11を支持基体12の長手方向(図7の(b)中、「A」で示す矢印の方向)にスキャンさせる。
例えば、一方のイモビライン混合溶液をpH3に調整し、他方のイモビライン混合溶液をpH10に調整したイモビライン混合溶液をインクジェットヘッド11から微小液滴で吐出する。なお、イモビライン混合溶液の調整方法については一般的な方法を用いればよいため説明を省略する。
なお、液溜まり13に対してインクジェットヘッド11からイモビライン混合溶液を吐出して形成したイモビライン含有ゲル溶液14(図7の(c))は、次工程まではゲル化反応が起こらず、溶液状態のままであり得る。
続いて、イモビライン含有ゲル溶液14に対して、第3の溶液を吐出する。第3の溶液としては、例えばAPSが挙げられ、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いて吐出すればよいが、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。
例えば、ピペッター等を用いてAPSを吐出した場合、APSを吐出していない領域のゲル化がAPSを滴下した領域に対して抑制されるため、IPGゲルの均一性が劣化する。よって、インクジェットヘッドを用いたAPSの吐出は、ゲル付着領域2の平面に加え、イモビライン含有ゲル溶液14の深さ方向に対しても均一にすることができる。
これにより、例えば、pH3〜10であり、IPGゲルのサイズが50nm(等電点グラジエント方向)×2.4mm×0.5mである支持基体12と、支持基体12に対して位置精度よく固定化して形成されたIPGゲルとからなるIEFチップ20を得ることができる。
なお、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気以外でIPGゲルを作製する場合、例えば、APSの体積比(APSの吐出体積/全吐出体積)は、5〜20%であることが好ましい。しかし、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気、すなわち脱酸素雰囲気においてIPGゲルを作製する場合は、APSの体積比は1%以下であってもよい。
(SDS−PAGEチップ30の作製)
次に、本発明に係る製造方法の他の例として、図8に示すようなSDS−PAGEチップ30を製造する場合について説明する。図8は、SDS−PAGEチップ30を製造する際の流れを示す断面図である。
以下では、二次元電気泳動の二次元目、すなわちSDS−PAGE電気泳動に用いられるグラジエントゲルが形成されたSDS−PAGEチップ30の製造方法について説明する。
一般的に知られるSDS−PAGEに用いられるSDS−PAGEチップ30は、PMMA等のプラスチック樹脂からなる器具等にポリアクリルアミドゲルをキャスティングしている。
しかし、本実施形態のSDS−PAGEチップ30の製造方法を用いれば、IEFチップ20と同様にキャスティング構造を設ける必要がなく、プラスチック平板又はガラス平板等の構造であってもよい。なお、SDS−PAGEチップ30に形成されたグラジエントゲルは、例えば、特開2007−64848号公報(2007年3月15日公開)に開示されている第2媒体(2Dゲル)及び第2分離部(サンプル器具)、グラジエントゲルに好適である。
グラジエントゲルを形成するための試薬としては、例えば、上述したポリアクリルアミドゲルと同様の溶液を含み得る。
まず、図8の(a)に示すように、グラジエントゲルを設ける支持基体15の所望の領域に、ゲル付着領域2を形成する。支持基体15としては、例えば、PMMA等のプラスチック基板又はガラス基板を用いることができる。
また、本実施形態においても、支持基体15のゲル付着領域2を親水性にし、ゲル付着領域2以外の領域を疎水性にすることが好ましい。例えば、支持基体15のゲル付着領域2以外の領域をマスキングし、酸素プラズマ処理、スルホン化処理又はニトロ化処理等を行なうことにより親水性領域を有するゲル付着領域2を形成することができる。
次に、支持基体15のゲル付着領域2に対して、第1の溶液を吐出する。第1の溶液としては、例えば、1Mトリス塩酸緩衝液、TEMED、及び純水が挙げられる。これらの混合比率は特に限定されない。これにより、図8の(b)に示すように、ゲル付着領域2に液溜まり16が形成される。
第1の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等が挙げられる。
第1の溶液の吐出後、液溜まり16が形成されたゲル付着領域2に対して第2の溶液を吐出し、グラジエントを形成する。第2の溶液としては、例えば、アクリルアミド混合溶液(アクリルアミド+N,N’−メチレンビスアクリルアミド)が挙げられる。アクリルアミド混合溶液の濃度は、例えば、30〜50%(アクリルアミド:N,N’−メチレンビスアクリルアミド=37.5:1)の比較的高濃度にすることができる。
第2の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を含むが、特に、インクジェットヘッド11を用いることが好ましい。例えば、インクジェットヘッド11を用いて図8の(b)中、「B」で示す矢印の方向に沿ってスキャンさせることにより、好適にグラジエントを形成することができる。
なお、液溜まり16に対してインクジェットヘッド11から第2の溶液を吐出して形成したアクリルアミド混合物含有ゲル溶液17(図8の(c))は、次工程まではゲル化反応が起こらず、溶液状態のままであり得る。
続いて、アクリルアミド混合物含有ゲル溶液17に対して、第3の溶液を吐出する。第3の溶液としては、例えばAPSを含み、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いて吐出すればよいが、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。
IEFチップ20と同様に、APSの吐出は、ゲル付着領域2の平面に加え、アクリルアミド混合物含有ゲル溶液17の深さ方向に対しても均一にすることが望ましいため、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。このように、グラジエントを有するアクリルアミド混合物含有ゲル溶液17に対して所望の量のAPSを吐出することにより、支持基体15の所望の領域に作製されたゲル付着領域2の上にグラジエントゲルを形成することができる。
例えば、低濃度側が4%及び高濃度側15%であり、グラジエントゲルのサイズが50nm(濃度グラジエント方向)×2.4mm×0.5mである支持基体15と、支持基体15に対して位置精度よく固定化して形成されたグラジエントゲルとからなるSDS−PAGEチップ30が得られる。
なお、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気以外でグラジエントゲルを作製する場合、例えば、APSの体積比(APSの吐出体積/全吐出体積)は、5%以上であることが好ましい。しかし、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気、すなわち脱酸素雰囲気においてIPGゲルを作製する場合は、これに限定されるものではない。
(反応器具製造装置)
一実施形態において、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法は、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造装置によって実施されてもよい。上記製造装置は、基材のゲルを固定する面に、液体を吐出して液溜まりを形成する第1の吐出手段と、形成された液溜まりにゲル溶液を吐出する第2の吐出手段とを備えていればよい。
本発明の製造装置によれば、第1の吐出手段が基材に液体を吐出して液溜まりを形成し、続いて第2の吐出手段によってゲル溶液を吐出することができるため、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法を好適に実施することができる。
なお、第1の吐出手段及び第2の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッドによって構成することができる。例えば、第2の吐出手段は、インクジェットヘッドを用いて上記ゲル溶液を吐出するようになっていることが好ましい。また、上記製造装置は、第2の吐出手段によりゲル溶液が吐出された上記液溜まりに重合開始剤を吐出する第3の吐出手段をさらに備えていてもよい。
図9は、本発明の一実施形態に係る反応器具製造装置(電気泳動用反応器具の製造装置)40の概略構成を示すブロック図である。図9に示すように、反応器具製造装置40は、インクジェットヘッド11、第1の容器41、第2の容器42、第3の容器43、ヘッド移動部44、およびシーケンス制御部45を備えている。反応器具製造装置40は、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法を実施して、電気泳動用反応器具を首尾よく製造することができる。
第1の容器41には、上述したような第1の溶液が貯められており、第2の容器42には、上述したような第2の溶液が貯められており、第3の容器43には、上述したような第3の溶液が貯められている。第1の容器41、第2の容器42および第3の容器43は、インクジェットヘッド11に接続されており、それぞれの容器に貯められた溶液をインクジェットヘッド11から吐出することができる。すなわち、第1の容器41とインクジェットヘッド11とで第1の吐出手段が構成され、第2の容器42とインクジェット11とで第2の吐出手段が構成されている。また、第3の容器43とインクジェット11とで第3の吐出手段を構成してもよい。
ヘッド移動部44は、アクチュエータ等によって構成され、インクジェットヘッド11を移動させる。これにより、基板上の目的の位置にゲルを容易に形成することができる。シーケンス制御部45は、ヘッド移動部44およびインクジェットヘッド11の挙動を、上述した電気泳動用反応器具の製造方法の各工程を実施するようにシーケンス制御するものである。
(被分離物質)
本発明の製造方法によって製造された電気泳動用反応器具を用いて電気泳動される被分離物質としては、電気泳動及び転写によって分離又は分析する対象の物質であればよく、例えば、生物個体、体液、細胞株、組織培養物又は組織断片等の生物材料から採取した調製物を好適に用いることができる。特に、ポリペプチド又はポリヌクレオチドがより好適である。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。