JP4848974B2 - 黒鉛ルツボおよびこれを備えたシリコン単結晶製造装置 - Google Patents
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Description
黒鉛ルツボ105の外側には抵抗加熱式のヒーター107が配設され、ヒーター107の外側には保温筒108が配設されており、これらはそれぞれ黒鉛ルツボ105と同心円状に配設されている。また、石英ルツボ104の中心軸上にはワイヤ109の下端部にシードチャック110を介して種結晶111が取り付けられている。
さらに、この黒鉛ルツボのSiC化層とSiO2(石英ルツボ)が反応し、SiCが消耗しながら、SiOとCOガスが発生する。これにより黒鉛ルツボ105の減肉(消耗)が進行していく。特には、黒鉛ルツボが分割されたものである場合、その分割部でガスの流入・流出が起こり、著しく減肉が進行する。
(1)原料融液(シリコン融液)と石英ルツボとの反応
SiO2+Si→2SiO↑
(2)上記(1)の反応で発生したSiOガスによる黒鉛ルツボの珪化反応
2C+SiO→SiC+CO↑
(3)石英ルツボと黒鉛ルツボの珪化部分での消耗反応
SiC+2SiO2→3SiO↑+CO↑
この為、減肉量がある一定量を超えると、黒鉛ルツボを新品に交換する必要がある。
従って、減肉量が少なくても、SiC化層の厚み(SiC化量)がある量を超えると、黒鉛ルツボを新品に交換する必要があった。
しかしながら、上記のSiC化の進行を起因とするSiC化層と黒鉛基材との熱膨張差による応力の発生、さらには黒鉛ルツボの割れを防止する為に、黒鉛ルツボの内面全面に黒鉛シートを敷き詰めると、広くて大きなシートが必要となり、黒鉛シートの使用コストがアップし、減肉防止による黒鉛ルツボのライフアップのコスト低減効果が充分に得られなくなる。
さらには、黒鉛シートを用いる場合の保護部分および非保護部分のSiC化の差から生じるルツボ割れの問題が発生することもない。また、毎バッチ交換が必要な黒鉛シートを使用せずに済む分だけ材料費を削減することができる。
このように、本発明の黒鉛ルツボは、コストをかけずにライフアップが可能なものとなる。
石英ルツボの熱膨張係数は黒鉛ルツボの熱膨張係数よりも小さいため、単結晶を引上げた後にこれらのルツボを冷却する際に、黒鉛ルツボの収縮が石英ルツボにより妨げられ、黒鉛ルツボを押し広げようとする応力が発生するが、ルツボ本体が2つ以上に分割されたものであるので、冷却時にルツボ本体の各部間にある程度の隙間を形成することができ、そのため石英ルツボを拘束せず、黒鉛ルツボに発生する応力を逃がすことが可能であり、ルツボの破損を防止することができる。
このように、ガス誘導溝、ガス抜き孔、ガス抜き溝が複数本形成されたものであれば、石英ルツボと黒鉛ルツボの隙間に入り込んだSiOガスをより効率よくルツボ外へと排出することができる。
このように、ガス誘導溝が、溝底が曲率半径5mm以上の曲面形状であり、溝幅が3mm以上のものであれば、ガス誘導溝を設けた場合の黒鉛ルツボの強度低下を比較的小さく抑えることができ、単結晶製造中の原料溶融の昇温〜成長温度への降温、切電後の温度低下などの温度変化による熱応力の発生の際、ガス誘導溝部への応力集中が起こることを緩和できる。
このように、ガス誘導溝が、ガス抜き穴から円周角が等しい方向に4本以上延びているものであれば、黒鉛ルツボ内面に入り込んだSiOを含有するガスを均一に分散させやすく、速やかに排出することができる。
このように、ルツボ本体において、上端部の外側がテーパー形状であれば、石英ルツボ内の湯面側から黒鉛ルツボ上端部に流れてきたSiOガスは、テーパー形状によって、ルツボの外側、すなわち、石英ルツボと黒鉛ルツボの隙間側ではなく、これらのルツボを囲むヒーター側に速やかに排出され、上記隙間に流れ込むガス量を低減し、黒鉛ルツボのSiC化の進行をさらに低減することが可能なものとなる。
このようなシリコン単結晶製造装置であれば、黒鉛ルツボの減肉の原因となるSiOガスを、石英ルツボと黒鉛ルツボの隙間から速やかに排出することができるので、黒鉛ルツボのSiC化、減肉化を抑制することができ、低コストで黒鉛ルツボのライフアップを図ることが可能である。すなわち、長時間の操業に耐えることが可能であり、ひいてはシリコン単結晶の製造コストの低減に寄与することができるものとなる。
図1は、本発明のシリコン単結晶製造装置の一例を示す概略図である。
本発明のシリコン単結晶製造装置1は、チャンバ2内に、原料融液3を収容する石英ルツボ4と、この石英ルツボ4を保護する本発明の黒鉛ルツボ5とが支持軸6で支持されており、ルツボ駆動機構(不図示)により上下動及び回転動が自在に行えるようになっている。
黒鉛ルツボ5の外側には抵抗加熱式のヒーター7が配設され、ヒーター7の外側には保温筒8が配設されており、これらはそれぞれ黒鉛ルツボ5と同心円状に配設されている。また、石英ルツボ4の中心軸上にはワイヤ9の下端部にシードチャック10を介して種結晶11が取り付けられている。
図2に黒鉛ルツボ5の一例を挙げて説明する。
この黒鉛ルツボ5は、まず、全体の構成として、石英ルツボ4を囲んで保護するためのルツボ本体51と、このルツボ本体51の底部53を嵌合して一体的に保持する受け皿52から成る。この受け皿52は支持軸6に取り付けられるようになっており、操業中は、これを回転させることによってルツボ4、5を回転させることができる。
なお、このように分割されたものであるので、シリコン単結晶12を製造後にシリコン単結晶製造装置1を冷却したときに、シリコン融液が固化する際の体積膨張と石英と黒鉛の熱膨張係数の差から、黒鉛ルツボ5が冷却中に収縮できないため、石英ルツボ4から黒鉛ルツボ5を押し広げようとする応力が発生しても、分割されているためにこの応力を逃すことができる。そのため、上記応力によって、これらのルツボを破損等させることもない。
図2に示す例では、分割の数は2つであるが、これに限定されず、3分割あるいはそれ以上とすることもできる。黒鉛ルツボ5の大きさ等に応じて適宜設定することができる。
そして、ガス抜き穴58は底面55の中心から垂直方向にルツボ本体51の底部53へと延びており、底部53を水平方向に延びて貫通するガス抜き孔59aと連結している。
そしてその後、ガス抜き穴58を通過したSiOガスを、これに連結するガス抜き孔59a、受け皿52の貫通孔60を通して黒鉛ルツボ5の外へと排出することができる。
しかしながら、本発明の黒鉛ルツボ5であれば、従来とは異なり、黒鉛シートを用いずに、分割部付近に限らず内面54の全面においてSiC化の進行をほぼ均一に抑制することができるので、従来のようなSiC化層と黒鉛基材との熱膨張差を起因とする割れが生じることも防ぐことができる。つまり、黒鉛ルツボ5のライフを延ばすことができる。その結果、黒鉛ルツボの交換頻度を低減することができ、コストの低減につなげることができる。
ガス誘導溝57、ガス抜き孔59a、ガス抜き溝59bは、複数本形成されていると良い。それぞれ複数本あれば、すなわち、ガスの抜け道が多くなり、SiOガスをより速やかに抜くことができ、ルツボ内にSiOガスが停滞してSiC化等の反応が進行するのを一層抑えることができる。
特に、ガス誘導溝57においては、例えばガス抜き穴58から円周角が等しい方向に4本以上延びているのが好ましく、石英ルツボ4と黒鉛ルツボ5の隙間に侵入してきたSiOガスを、その隙間中で極めて均一に各ガス誘導溝57に分散させるとともに、速やかにガス抜き穴58へと誘導し、ルツボ外へと排出することができる。
一方で、溝幅を20mm以下とすれば、原料溶融後に軟化した石英ルツボ4がガス誘導溝57に沿って密着していき、溝の空隙が逆に少なくなってしまうことを防ぐことができる。
そして、溝の深さは、ルツボの強度を保つために黒鉛ルツボの肉厚の1/4以下が良く、例えば黒鉛ルツボの肉厚20mmに対して1/10の深さ(2mm以下)とすることができる。
なお、図4に、ガス誘導溝57の一例を示しておく。
同様に、ガス抜き溝59bも、溝の深さはルツボ本体51の底部53の肉厚の1/2以下が好ましい。例えば、図5に示すように、底部53の肉厚が25mmの場合、深さ10mm、溝底が曲率半径5mmのドーム形状とすることができる。そして、ガス抜き穴58を中心に、放射状に底部53を水平方向に貫通したものとすることができる。
上記隙間に入り込むガス量を低減することができれば、その分、黒鉛ルツボ5の内面54とSiOガスとの反応の進行を遅らせることができるので、黒鉛ルツボ5のSiC化、減肉の進行の抑制に役立てることができる。
なお、このテーパー形状61のテーパー角度は特に限定されないが、例えば30〜45度程度であれば、石英ルツボ4内の湯面から流れてくるSiOガスをスムーズにルツボの外側へと流すことができる。
(実施例1)
直径200mmのシリコン単結晶をチョクラルスキー法により製造するにあたって、図1の本発明のシリコン単結晶製造装置を用意した。なお、黒鉛ルツボは図3に示すような本発明のものとした。
すなわち、使用した黒鉛ルツボは、ルツボ本体が口径600mm、肉厚20mm、底部の厚さ25mm、分割数2のものであり、さらに、ガス誘導溝(溝底が曲率半径6mmで湾曲、溝幅が8mm、溝の深さが2mm)が、ガス抜き穴(直径20mm)を中心として円周角が30度間隔で合計12本形成されている。また、底部には、ガス抜き穴と連結するガス抜き溝(溝底が曲率半径5mmで湾曲、溝幅が10mm、溝の深さが10mm)が6本形成されており、各ガス抜き溝の位置に対応して受け皿に6つの貫通孔(ガス抜き溝と断面が同形状)が形成されている。
この図7は、横軸に黒鉛ルツボの使用指数、縦軸に黒鉛ルツボの減肉量(mm)をとったグラフである。ここで、使用指数とは、使用時間(hrs)/目標の使用時間(hrs)であり、例えば使用指数1.0は目標の時間まで使用できたことを示す。また、使用指数1.2は、目標を20%超えて使用できたことを意味する。
しかも、少なくとも使用指数を1.2まで延ばすことができ、黒鉛ルツボのSiC化による割れを発生させることなく、目標の使用時間を超えて使用することができた。
ルツボ本体の上端部の外側にテーパー形状(テーパー角度が30度)が形成されているほかは実施例1と同様の黒鉛ルツボを用意し、これを備えたシリコン単結晶製造装置を用いて実施例1と同様にしてシリコン単結晶を製造した。
また、使用指数も少なくとも1.2まで延ばすことができ、黒鉛ルツボのSiC化による割れを発生させることなく、目標の使用時間を超えて使用することができた。
実施例1や実施例2に使用した黒鉛ルツボとは異なり、ルツボ本体にガス誘導溝等が形成されておらず、受け皿にも貫通孔が形成されていない、単に、ルツボ本体が口径600mm、肉厚20mm、底部の厚さ25mmのものを用意し、これを備えたシリコン単結晶製造装置を用いて実施例1と同様にしてシリコン単結晶を製造した。
したがって、使用指数0.7程度までしか延ばすことができず、目標の使用時間に達することができなかった。
黒鉛シートを、ルツボ分割面付近の石英ルツボと黒鉛ルツボの間に敷く以外は比較例1と同様のルツボを用意し、これを備えたシリコン単結晶製造装置を用いて実施例1と同様にしてシリコン単結晶を製造した。
また、黒鉛シートを使用しているため、コストがかかってしまった。
底部のガス抜き溝をガス抜き孔(直径10mm)とし、受け皿の貫通孔の形状(ガス抜き孔と断面が同形状)を変えた以外は実施例1と同様の本発明の黒鉛ルツボを用意し、これを備えたシリコン単結晶製造装置を用いて実施例1と同様にしてシリコン単結晶を製造した。
その結果、実施例1とほぼ同様の結果を得ることができた。すなわち、減肉量を抑え、使用指数を少なくとも1.2まで延ばすことができ、比較例1や比較例2よりも優れた結果となった。
ガス誘導溝を、溝底が曲率半径5mmで湾曲、溝幅が3mm(実施例4)、溝底が曲率半径4mmで湾曲、溝幅が2.5mm(実施例5)とする以外は実施例1と同様の本発明の黒鉛ルツボを用意し、これを備えたシリコン単結晶製造装置を用いて実施例1と同様にしてシリコン単結晶を製造した。
その結果、実施例4では、実施例1(減肉量4mm)よりも減肉量が増したが(減肉量4.5mm)、比較例1(減肉量8mm超)より著しく抑えることができ、使用指数を少なくとも1.2まで延ばすことができ、比較例1や比較例2よりも優れた結果となった。
また、実施例5では、実施例4よりもさらに減肉量が増したが(減肉量5.5mm)、比較例1よりは抑えられ、また、使用指数を少なくとも1.2まで延ばすことができ、比較例1や比較例2よりも優れた結果となった。
ガス誘導溝の本数を、4本(実施例6)、3本(実施例7)とする以外は実施例1と同様の本発明の黒鉛ルツボを用意し、これを備えたシリコン単結晶製造装置を用いて実施例1と同様にしてシリコン単結晶を製造した。
その結果、実施例6では、実施例1(減肉量4mm)よりも減肉量が増したが(減肉量4.8mm)、比較例1(減肉量8mm超)より著しく抑えることができ、使用指数を少なくとも1.2まで延ばすことができ、比較例1や比較例2よりも優れた結果となった。
また、実施例7では、実施例6よりもさらに減肉量が増したが(減肉量6mm)、比較例1よりは抑えられ、また、使用指数を少なくとも1.2まで延ばすことができ、比較例1や比較例2よりも優れた結果となった。
4…石英ルツボ、 5…本発明の黒鉛ルツボ、 6…支持軸、
7…ヒーター、 8…保温筒、 9…ワイヤ、 10…シードチャック、
11…種結晶、 12…シリコン単結晶、
51、51a、51b…ルツボ本体、 52…受け皿、 53…底部、
54…内面、 55…底面、 56…上端部、 57…ガス誘導溝、
58…ガス抜き穴、 59a…ガス抜き孔、 59b…ガス抜き溝、
60…貫通孔、 61…テーパー形状。
Claims (6)
- チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造する際に用いる黒鉛ルツボであって、少なくとも、シリコン融液を収容する石英ルツボを保護する2つ以上に分割されたルツボ本体と、該ルツボ本体の底部を嵌合して一体的に保持する受け皿を有し、
前記ルツボ本体の内面にはガスを誘導するためのガス誘導溝が放射状に形成されており、該ガス誘導溝が集結するルツボ本体の底面中心には、垂直方向にルツボ本体の底部へ延びるガス抜き穴が形成されており、該ガス抜き穴と連通し、水平方向に延びてルツボ本体の底部を貫通するガス抜き孔またはガス抜き溝がルツボ本体の底部に形成されており、該ガス抜き孔またはガス抜き溝に対応して、前記受け皿に貫通孔が形成されたものであることを特徴とする黒鉛ルツボ。 - 前記ガス誘導溝、前記ガス抜き孔、前記ガス抜き溝が、複数本形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の黒鉛ルツボ。
- 前記ガス誘導溝は、溝底が曲率半径5mm以上の曲面形状であり、溝幅が3mm以上のものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の黒鉛ルツボ。
- 前記ガス誘導溝は、前記ガス抜き穴から円周角が等しい方向に4本以上延びているものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の黒鉛ルツボ。
- 前記ルツボ本体は、上端部の外側がテーパー形状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の黒鉛ルツボ。
- 少なくとも、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の黒鉛ルツボを備えたチョクラルスキー法によるシリコン単結晶製造装置。
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