JP4848081B2 - 顆粒状タルク及び当該タルク含有の熱可塑性樹脂成形材料 - Google Patents
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Description
しかしながら、タルク自身はカサ密度が小さいために粉塵が発生して作業環境が悪化し易く、熱可塑性樹脂に対して分散性が低いために作業性も悪いうえ、この低分散性に因ってタルク含有の熱可塑性樹脂の機械特性も満足すべきものではない。
(1)特許文献1
表面処理した無機フィラーと熱可塑性樹脂とを所定割合で混合し、加熱溶融して混練し、特定粒径以下にカッティングして固形化した微粒状の熱可塑性樹脂成形材料であり(特許請求の範囲)、成形性(成形むらがない)、耐熱性、分散性が改善することが記載されている(第5頁)。
上記無機フィラーはタルク、炭酸カルシウム、クレー、ゼオライト、カオリンなどであり(第2頁)、熱可塑性樹脂はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどであり(第3頁)、また、無機フィラーの表面処理剤として天然樹脂酸(ロジン、ゴム等)、シランカップリング剤、天然油脂などが列挙される(第2頁右下欄)。
無機フィラーに関して繊維状と板状の2種類を混合して複合フィラー造粒品とすることで発塵が防止され、この充填剤を混合した樹脂組成物の引っ張り強度、曲げ強度などの機械的特性が改善することが記載されている(請求項1、段落8)。
上記繊維状フィラーは繊維状マグネシウムオキシサルフェート、チタン酸カリウム、ガラス繊維などであり(段落9)、板状フィラーはタルク、マイカ、クレーなどである(段落11)。
所定の平均一次粒子径の粉末タルクを脱気後に圧縮して得られる顆粒状タルクであって、分散性の改善によりタルクが良好に分散したポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂組成物を製造できることが記載されている(請求項1、段落1、段落17、段落22)。
ベントナイトなどのバインダを用いて、所定の一次平均粒子径の無機質充填剤を所定の見かけ密度の顆粒状に造粒することにより、熱可塑性樹脂との分散性や粉塵発生を防止し、作業環境を改善することが記載されている(請求項1、段落7〜8)。
上記無機質充填剤はタルク、シリカ、酸化チタンなどであり(段落18)、バインダにはベントナイトの外、カオリン、酸性白土、コロイダルシリカ、ゼラチン、PVAなどが列挙される(段落17)。
(A)無機充填剤と、その表面を被覆する(B)ロジン酸および/またはその誘導体とからなり、成分(A)に対する成分(B)の含有量を特定化したロジン酸被覆無機充填剤であって(請求項1)、分散性などが向上し(段落6)、また、このロジン酸被覆無機充填剤を熱可塑性樹脂に配合すると、外観や機械的強度などが改善するとしている(請求項8〜10、段落7)。
上記無機充填剤(A)はタルク、炭酸マグネシウムなどであり(請求項5、段落21〜23)、ロジン酸には、ピマル酸、パラストリン酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸などの樹脂酸が列挙され(段落23)、ロジン酸誘導体には、ロジン酸金属塩、ロジン酸エステル、ロジン酸アミド、ロジン酸イミドなどが列挙されている(段落24、35、54など)。また、ロジン酸やその誘導体が含まれるロジン類として、α,β−不飽和カルボン酸変性ロジンが挙げられる(段落25〜26)。
(6)特許文献6
所定割合でフィラーと有機顔料とを含有し、フィラーの平均粒度が10μmより小さく、且つ小さい粒度のフィラーが特定の狭い粒度分布にある顔料組成物が開示されている(請求項1)。
上記フィラーはタルク、カオリン、雲母などの無機顔料であり(請求項4、段落8)、顔料組成物には諸性質を改良するための組織改良剤として、ロジン酸やロジン酸塩などを含有しても良いことが記載されている(請求項11、段落14)。
実施例1(段落24)には、ジケトピロロピロール粗製顔料、タルク、ロジンのナトリウム塩からなる水性懸濁液に塩化カルシウム水溶液を作用させて、ロジンのCa塩、タルク、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料組成物が開示されており、実施例4(段落27)でも、同様にロジン塩が使用されている。
無機粒子に有機ケイ素化合物を担持させることで塗料に均一分散させて、塗料にレベリング性、スリップ性、ブロッキング防止性などを付与するとともに(段落4、23)、予め無機粒子を有機物で表面処理して、有機ケイ素化合物との付着力を増すことが開示されている(請求項2、段落50)。
上記無機粒子はタルク、カオリン、クレーなどであり(請求項8、段落37)、有機物は各所界面活性剤、エステル、脂肪酸、樹脂酸などであり(請求項6、段落50)、樹脂酸にはアビエチン酸、ネオアビエチン酸やその塩が例示されている(段落55)。
例えば、上記特許文献2では、造粒品の製造工程が複雑であり、バインダを添加しないために仕込み等の作業時に粉化し、作業環境が悪化する問題があり、上記特許文献3では、熱可塑性樹脂への混合量が多い場合、混合作業を長時間行う必要があり、作業効率を悪化させる問題がある。また、上記特許文献4では、バインダとしてベントナイトを使用するため、本来のタルクの性能が失われ熱可塑性樹脂の機械特性が悪化する問題がある。
しかも、分散剤の混合量が少ないと、タルクの熱可塑性樹脂への分散性が不充分になり、分散剤の量が多いと、熱可塑性樹脂の機械特性が悪化する問題がある。
一方、熱可塑性樹脂は各種プラスチック製品、家電製品、自動車内装材料等の様々な分野に利用され、近年、これら最終製品の用途にはさらに高度な性能が要求され、例えば、衝撃を受ける箇所に用いる場合、粘着テープ等を使用して部材を固定した際の粘着性の向上が強く要求される。
上記バインダがロジン類を不飽和カルボン酸で変性した強化ロジン類のエマルションであり、粉末タルクに対して固形分換算で0.1〜20重量%の含有率で混合するとともに、
上記顆粒状タルクのカサ密度が0.2〜1.0g/cm3、平均粒子径が0.1〜5.0mmであることを特徴とする顆粒状タルクである。
また、樹脂にタルク成分が均一に分散するため、最終製品である熱可塑性樹脂の成形材料の引っ張り破断伸び、曲げ弾性、熱変形温度などの機械特性に優れ、さらには、強化ロジン類の含有によって両面テープなどの粘着テープとの粘着性にも優れる。
本発明では、湿式(水系)でタルクを造粒するため、乾燥時の揮発成分は水であり、揮発成分処理のために特別な設備を必要としない利点がある。さらに、本発明はエマルション形態のバインダを使用しているため、同じ水系であっても、例えば、石鹸の形で使用する場合に比べて、最終製品である熱可塑性樹脂の成形材料の機械特性に優れる(後述の実施例・比較例3参照)。
本発明の強化ロジン類は強化ロジン及び強化ロジンエステルを包含する概念である。
上記強化ロジンは、公知の方法によりロジン類にα,β−不飽和カルボン酸類を反応させたものをいう。この場合、反応温度は150〜300℃程度、反応温度時間は1〜24時間程度が適当である。α,β−不飽和カルボン酸類の仕込量は、ロジン類100重量部に対してα,β−不飽和カルボン酸類20重量部程度以下が好ましい。
上記ロジン類としては、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジンが挙げられる。
上記α,β−不飽和カルボン酸類としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸などが挙げられる。
当該強化ロジン類の酸価はタルクとの相互作用を促進する見地から、ある程度以上の値が好ましく、具体的には230以上が好ましい。
多価アルコールとのエステル化反応の条件としては、ロジン類と多価アルコールの仕込比率はロジンのカルボキシル基当量に対してアルコールの水酸基当量比換算でCOOH/OH=1/(0.2〜1.2)程度、反応温度は150〜300℃程度、反応時間は2〜30時間程度が夫々適当である。
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の4価アルコール、或いは、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−ノルマルブチルジエタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられる。
一方、上記α,β−不飽和カルボン酸類を付加する反応の条件は前記強化ロジンの製造で述べた通りである。
尚、ロジン類のエステル化反応を高温度で行った後にα,β−不飽和カルボン酸類を反応させると、レボピマール骨格を有するロジン類が減少し、デヒドロアビエチン酸骨格に異性化して、反応が進行しにくい場合があるため、注意を要する。逆に、ロジン類とα,β−不飽和カルボン酸類とを予め反応させた後、高温でエステル化反応を行う場合も、分子量の大きい高分子縮合物が生成し易いために、同様の注意が必要である。
強化ロジン類の混合率が適正量より少ないと熱可塑性樹脂に対する分散性が低下し(作業性が低下し)、適正量より多いと顆粒状タルクを含有した場合の熱可塑性樹脂成形材料の機械特性が低下し、或は色調が低下する。
上記溶剤型乳化法は、強化ロジン類をメチレンクロライド等の塩素系炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、或は溶解可能な溶剤類などの有機溶剤に溶解させ、乳化剤と水を混合溶解した乳化水を予備混合して、粗粒子の水性エマルションを調製した後、各種ミキサー、コロイドミル、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機などを用いて微細乳化した後、常圧或は減圧下で加熱しながら上記有機溶剤を除去する方法である。
上記無溶剤乳化法は、常圧或は加圧下で溶融した強化ロジン類と乳化水を予備混合し、粗粒子の水性エマルションを調製した後、各種乳化分散機を用いて同様に微細乳化させる方法である。
また、上記転相乳化法は、常圧或は加圧下で強化ロジン類を加熱溶融した後、撹拌しながら乳化水を徐々に加えて先ず油中水型エマルションを形成させ、次いで水中油型エマルションに相反転させる方法であり、溶剤法或は無溶剤法いずれの方法でも可能である。
上記ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーなどが挙げられる。
上記両性乳化剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの生成縮合物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物などが挙げられる。
上記合成高分子系乳化剤としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアマイド、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの重合性モノマーを2種以上重合させて得られる重合体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのアルカリ類で塩形成させて水に分散又は可溶化させた水分散性重合体などが挙げられる。
顆粒状タルクは熱可塑性樹脂への適正な分散性などを確保するために、カサ密度は0.2〜1.0g/cm3、平均粒子径は0.1〜5.0mmであることが必要である。
顆粒状タルクのカサ密度が適正量より小さいと(つまり過剰に嵩張ると)空気を抱き込んで撹拌の作業性が低下し、適正量より大きいと熱可塑性樹脂に対する分散性が低下する。好ましいカサ密度は0.5〜1.0g/cm3である。
一方、顆粒状タルクの平均粒子径が適正量より小さいと撹拌の作業性が低下し、適正量より大きいと分散性が低下する恐れがある。好ましい平均粒子径は0.2〜3.0mmである。
粉末タルクと強化ロジン類のエマルションは、ヘンセル型ミキサー、高速ミキサー、一軸式又は二軸式のスクリュー式混練機、ローラー式混練機を初め、任意のブレンダーやミキサーなどを使用して湿式混合し、押し出し成形機、圧縮成形機、撹拌機、流動層造粒機などで造粒・成形し、乾燥機や簡易ヒーターで乾燥して顆粒状タルクが製造される。
上記湿式混合に際しては、必要に応じて、酸化防止剤、難燃剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、増量剤などの各種添加剤を含有できる。
上記顆粒状タルクの含有率は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、顆粒状タルク10〜100重量部であり、好ましくは20〜40重量部である。
顆粒状タルクの含有率が適正量より少ないと熱可塑性樹脂の強度が低下し、適正量より多いと引っ張り破断伸びなどの熱可塑性樹脂の機械特性が低下し、色調も低下する。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリスチレンなどのポリオレフィン樹脂を初め、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム系樹脂などの任意の熱可塑性樹脂が挙げられる。
顆粒状タルクと熱可塑性樹脂は、例えば、ヘンセル型ミキサーなどで予備混合し、一軸式又は二軸式押出し機などで溶融混練し、固形ペレットに成形される。
尚、顆粒状タルクを混合して熱可塑性樹脂の成形材料を製造する際には、必要に応じて、前記顆粒状タルクの製造時に含有可能な各種添加剤を添加することができる(或は、顆粒状タルクの製造時ではなく、この成形材料の製造時に添加しても良い)。
尚、本発明は下記の実施例、合成例、製造例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
下記の合成例1〜2は強化ロジンの例、比較合成例1はロジンエステルの例である。
(1)合成例1
攪拌機、温度計、還流冷却器、分水器及び窒素ガス導入管を具備した2000mlの四つ口フラスコ内で、溶融したトール油ロジン(ハリマ化成(株)製、ハートールR−WW、酸価170)1000部を仕込み、160℃で無水マレイン酸190部を加えて200℃まで1時間かけて昇温した。
次いで、そのままの温度で2時間反応させた後、冷却して酸価280、軟化点110℃のマレイン酸変性ロジンを得た。
上記合成例1を基本として、トール油ロジンに替えて中国産ガムロジン(酸価170)1000部を仕込み、加熱溶融させた。その後、フマル酸100部を加えた以外は、合成例1と同様に処理してフマル酸変性ロジンを得た。
得られた樹脂の性状は酸価238、軟化点100℃であった。
温度計、攪拌機、窒素導入管、水抜き管を具備した1Lのガラス製反応容器に中国産ガムロジン500gを仕込み、窒素気流下にてこれを溶融し、160℃にてペンタエリスリトール50gを添加し、撹拌しながら3時間かけて275℃まで昇温した。
次いで、275℃でそのまま反応を継続させて、軟化点が103℃のロジンエステルを得た。
《強化ロジンエマルションの調製例》
(1)調製例1
前記合成例1のマレイン酸変性ロジン(軟化点110℃)100部をトルエン100部に溶解させてトルエン溶液を得た。
次いで、乳化剤としてソフタノールMES−9(日本触媒社製品:有効成分24%)12.5部を水116部に希釈溶解して乳化水溶液を調製し、この乳化水溶液を上記トルエン溶液に添加した後、撹拌混合して予備乳化を行った。
得られた予備乳化物を高圧乳化機(マントンガウリン社製、15M−8BA)により300kg/cm2の圧力で乳化して、微細乳化物を得た。
この乳化物を110mmHgの条件下で加熱減圧蒸留してトルエンを除去した後、固形分を調整して固形分50.3%、pH6.3、粒子径0.26μmのマレイン酸変性ロジンエマルションを得た。
上記調製例1を基本として、前記合成例2のフマル酸変性ロジン(軟化点100℃)を使用した以外は、上記調製例1と同様の条件で微細乳化物を製造し、固形分50.1%、pH6.8、粒子径0.20μmのフマル酸変性ロジンエマルションを得た。
上記調製例1を基本として、前記比較合成例1のロジンエステルを使用した以外は、上記調製例1と同様の条件で微細乳化物を製造し、固形分50.5%、pH6.9、粒子径0.30μmのロジンエステルエマルションを得た。
《顆粒状タルクの製造実施例》
下記の実施例1〜7のうち、実施例1〜5はマレイン酸変性ロジンエマルションを添加した例、実施例6〜7はフマル酸変性ロジンエマルションの添加例である。
また、比較例1〜3のうち、比較例1はロジンエマルションを添加しないブランク例である。比較例2は強化ロジンエマルションに替えて、ロジンエステルのエマルションを添加した例である。比較例3は強化ロジンエマルションに替えて、冒述の特許文献5に準拠して、ロジン石鹸(ロジン金属塩の水溶液)を添加した例である。
尚、図1の上半部には、実施例1〜7及び比較例1〜3におけるタルクに含有するロジン系樹脂の種類とその含有率をまとめた。
平均粒子径1.8μmのタルク(松村産業製、ハイフィラー#5000PJ)4000gを20リットルのヘンセルミキサーに入れ、撹拌羽根を2000rpmの高速回転で撹拌しながら、前記調製例1のマレイン酸変性ロジンエマルション(50%乳化液)を加水したうえで2分間かけた添加した。
この添加に際して、強化ロジンエマルションのタルクに対する各実施例の含有率(固形分換算;重量%)は次の通りである。
実施例1:0.25%
実施例2: 2.5%
実施例3: 3.0%
実施例4: 3.5%
実施例5: 5.0%
また、添加時の加水については、タルクに対して水として40部(1600g)になるように添加した。
次いで、加水後3分間撹拌混練して、粘土状の混練物を得た。粘土状の混練物は目開き1.2mmのスクリーンを装着したデスクペレッター型造粒機で押出し造粒し、流動層乾燥機で温度100℃、時間90分の条件で熱風乾燥し、実施例1〜5の顆粒状タルクを夫々得た。
得られたタルクはいずれも、粒径0.2〜3.0mm、含水率0.3%以下、カサ密度0.67〜0.70g/cm3であった。
尚、上記含水率はKett型赤外水分計を用いて、サンプル5gを105℃、60分で加熱後の減量に基づいて算出した。カサ密度はJISK5101に準拠して測定し、また、顆粒の粒径はJISZ8801に準拠した標準ふるいを使用して測定した。
上記実施例1を基本として、強化ロジンエマルションを調製例1から前記調製例2のフマル酸変性ロジンエマルション(50%乳化液)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して造粒を行い、実施例6〜7の顆粒状タルクを夫々得た。
強化ロジンエマルションのタルクに対する各実施例の含有率(重量%)は次の通りである。
実施例6:2.5%
実施例7:3.5%
得られたタルクは、粒径0.2〜3.0mm、含水率0.3%以下、カサ密度は実施例6で0.64g/cm3、実施例7で0.66g/cm3であった。
上記実施例1を基本として、強化ロジンエマルションを使用せずに平均粒子径1.8μmの同タルクを無処理で使用した以外は、実施例1と同様の条件で造粒し、顆粒状タルクを得た。
得られたタルクは、粒径0.2〜3.0mm、含水率0.3%以下、カサ密度0.58g/cm3であった。
上記実施例1を基本として、強化ロジンエマルションに替えて前記比較調製例1のロジンエステルエマルションを使用し、ロジンエステルエマルションの処理量をタルクに対して2.0%とした以外は、実施例1と同様の条件で造粒を行い、顆粒状タルクを得た。
得られたタルクは、粒径0.2〜3.0mm、含水率0.3%以下、カサ密度は0.66g/cm3であった。
上記実施例1を基本として、ロジンエマルションに替えてロジン石鹸(ハリマ化成(株)製、バンディスG−25K)を使用し、ロジン石鹸の処理量をタルクに対して2.0%とした以外は、実施例1と同様の条件で造粒を行い、顆粒状タルクを得た。
得られたタルクは、粒径0.2〜3.0mm、含水率0.3%以下、カサ密度は0.66g/cm3であった。
《ポリプロピレン樹脂コンパウンドの製造例》
(1)製造例1
先ず、上記実施例1の顆粒状タルクをポリプロピレン樹脂に次の組成で配合するとともに、20リットルのヘンセルミキサーを用いて周速25m/秒で1分間混合し、均一混合物を得た。
[樹脂コンパウンドの配合組成]
ポリプロピレン樹脂 80%
顆粒状タルク 20%
酸化防止剤 1部
耐熱安定剤 1部
滑剤(ステアリン酸亜鉛) 0.2部
尚、上記ポリプロピレン樹脂はチッソ(株)製のブロックコポリマー(MFR=20)、酸化防止剤はイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、耐熱安定剤はイルガホス168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を夫々使用した。ポリプロピレン樹脂と顆粒状タルクの配合量は両者の合計に対する各重量%であり、酸化防止剤以下の各種添加剤の配合量は同樹脂と顆粒状タルクの合計量(100重量部)に対する重量部である。
次いで、二軸押出機(池貝(株)製、PCM30、L/D=30)を使用し、上記配合組成の混合物をシリンダー温度220℃、スクリュウ回転数250rpmの条件で溶解混練し、ダイスよりストランドとして押し出し、水冷した後、カッターで切断し、樹脂コンパウンド品のペレットを作成した。
上記製造例1を基本として、顆粒状タルクを実施例1から実施例2〜7又は比較例1〜3に代替した以外は、製造例1と同様に処理して、各樹脂コンパウンド品のペレットを製造した。
尚、製造例と実施例、或は比較製造例と比較例の対応関係を示すと、製造例nは実施例n(n=1〜7)の顆粒状タルクを添加した樹脂コンパウンドの例であり、比較製造例mは比較例m(m=1〜3)の顆粒状タルクを添加した例である。例えば、製造例3(つまりn=3)は実施例3の顆粒状タルクを添加した例、比較製造例2(つまりm=2)は比較例2の顆粒状タルクを添加した例である。
上記製造例1〜7及び比較製造例1〜3の各樹脂コンパウンド品は、120℃で3時間乾燥後、射出成形機(東芝機械(株)製、IS190型)を使用し、シリンダー温度220℃、金型温度室温(20℃)、成形サイクル40秒の条件で試験片を作成し、下記の機械特性を主眼とする各種評価試験に供した。
(1)灰分
電気炉内で1000℃、60分加熱灰化し、残渣として算出した。
(2)MFR
JISK7210に準拠した。230℃、2.16kg/cm2の条件で実施。
(3)引張破断伸び
JISK7203に準拠した。厚み3mm試験片を用いた。
(4)曲げ弾性率
JISK7203に準拠した。厚み3mm試験片を用いた。
(5)熱変形温度
JISK7207に準拠した。0.45MPa荷重。6mm試験片を用いた。
バインダを含まないタルク(比較例1)のみを使用した場合に比べて、強化ロジンをバインダに含む顆粒状タルク(実施例1〜7)を使用した場合では、ポリプロピレン樹脂成形材料の引っ張り破断伸び、曲げ弾性率、熱変形温度などの機械特性は共に良好に改善され、特に前2者が大きく改善されていることが分かった。従って、実施例1〜7の顆粒状タルクを熱可塑性樹脂に含有させると、従来の粉末タルクの場合に比べて均一分散性が大きく増し、機械特性の向上をもたらすことが確認できた。
また、同じロジン種でもロジンエステルを含む顆粒状タルク(比較例2)を使用した場合には、バインダを含まない比較例1からの改善率は小さく、従って、強化ロジンを含む実施例1〜7を使用した場合ほどには機械特性は改善されないことから、熱可塑性樹脂成形材料の機械特性を改善する面で、ロジンエステルに比べて強化ロジンをバインダに用いることの優位性が確認できた。
さらに、エマルション形態ではないロジン石鹸を含む顆粒状タルク(比較例3)を使用した場合には、強化ロジンエマルションを含む実施例1〜7を使用した場合に比べて、機械特性は明らかに後退し、特に曲げ弾性率、熱変形温度は比較例1(ブランク例)とあまり変わらないことから、強化ロジンを含む顆粒状タルクにあっては、エマルション形態での含有が樹脂成形材料の機械特性の向上に寄与することが認められた。
尚、試験結果には挙げなかったが、強化ロジンのタルクへの含有率が本発明の適正範囲より少ないと分散性が低下して機械特性は後退し、適正範囲より多いとやはり機械特性が後退した。顆粒状タルクのカサ密度や平均粒子径が本発明の適正範囲から外れるとやはり機械特性は後退した。
次いで、強化ロジンの粉末タルクへの含有率が適正範囲内で変化しても機械特性は同様の水準で改善でき、例えば、含有率が少ない実施例1の熱変形温度は含有率がそれより1ケタ多い実施例2〜4と同水準であり、また、実施例2〜5では含有率の変化にも拘わらず、引っ張り破断伸び、曲げ弾性率、熱変形温度などの機械特性は概ね同様の水準を保持していた。尚、強化ロジンに替えて強化ロジンエステルを含む顆粒状タルクを使用した場合にも、概ね実施例1〜7に遜色のない機械特性を示した。
しかも、ポリプロピレン樹脂に添加した実施例1〜7の顆粒状タルクは強化ロジンを含むため、強化ロジンを含まない比較例1に比べて、粘着テープに対する接着性は明らかに増大していた。
Claims (4)
- 粉末タルクとバインダを湿式混合して造粒し、乾燥させた顆粒状タルクにおいて、
上記バインダがロジン類を不飽和カルボン酸で変性した強化ロジン類のエマルションであり、粉末タルクに対して固形分換算で0.1〜20重量%の含有率で混合するとともに、
上記顆粒状タルクのカサ密度が0.2〜1.0g/cm3、平均粒子径が0.1〜5.0mmであることを特徴とする顆粒状タルク。 - 不飽和カルボン酸が、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の顆粒状タルク。
- 粉末タルクの平均一次粒子径が0.01〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の顆粒状タルク。
- 熱可塑性樹脂100重量部に対して、請求項1〜3のいずれか1項に記載の顆粒状タルク10〜100重量部を混合し、加熱溶融して混練し、固形化することを特徴とする熱可塑性樹脂成形材料。
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