以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式によって画像を形成する複写機の実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、プリンタ部1と、白紙供給装置40と、原稿搬送読取ユニット50とを備えている。原稿搬送読取ユニット50は、プリンタ部1の上に固定された原稿読取装置たるスキャナ150と、これに支持される原稿搬送装置たるADF51とを有している。
白紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから転写紙を送り出す送出ローラ43、送り出された転写紙を分離して給紙路44に供給する分離ローラ45等を有している。また、プリンタ部1の給紙路37に転写紙を搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の転写紙をプリンタ部1内の給紙路37内に給紙する。
図2は、プリンタ部1の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。プリンタ部1は、光書込装置2、K,Y,M,C色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着ユニット60等を備えている。また、カール除去ローラ群34、排紙ローラ対35、スイッチバック装置36、給紙路37等も備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
プロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、潜像担持体たる感光体と、その周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部1本体に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4Kの他、これの表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像装置6Kを有している。また、後述するK用の1次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置15なども有している。本複写機では、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設したいわゆるタンデム型の構成になっている。
図3は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット3は、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。なお、現像装置6として、二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用していもよい。
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサ10などを有している。
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクターブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクターブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクターブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサ10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。
ドラムクリーニング装置15としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
先に示した図2において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。この転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙を中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙に一括2次転写され、転写紙の白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着ユニット60へと搬送される。
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで転写紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
定着ユニット60に搬送された転写紙は、定着ユニット60内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着ユニット60から送り出される。そして、カール除去ローラ群34によって形成されるニップと、排紙ローラ対35によって形成されるニップとを経由した後、機外へと排出される。
先に示した図1において、紙搬送ユニット22および定着ユニット60の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
プリンタ部1の上に固定されたスキャナ150は、原稿MSの画像を読み取るための読取手段として、固定読取部151と、移動読取部152とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、ADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSを走査する。
一方、移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下であって、固定読取部151の図中右側方に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサ153で受光する。これにより、光学系を移動させながら、原稿を走査する。
プリンタ部1内には、シート状の記録部材である転写紙Pを搬送するための搬送路が形成されている。そして、プリンタ部1内では、上述した光書込装置2と、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cと、転写ユニット24との組合せにより、搬送路内を搬送される記録部材たる転写紙Pにトナー像を形成するトナー像形成手段が構成されている。上述した給紙路37は、この搬送路の一部であり、白紙供給装置40から受け取った転写紙Pを、これに対するトナー像形成位置である2次転写ニップの直前まで搬送するための記録前経路となっている。そして、2次転写ニップ以降が、トナー像形成後の転写紙Pを搬送するための記録後経路となっている。この記録後経路は、2次転写ニップと、紙搬送ベルト29の上部張架面と、定着ユニット60内と、カール除去ローラ群34によるニップと、レジストローラ対35によるニップとを順に辿る経路である。
図4は、定着ユニット60とカール除去ローラ群34とを示す拡大構成図である。同図において、定着ユニット60は、図示しないケーシング内に、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ61、加圧ローラ62、出口ローラ対63、分離爪64、爪ホルダー65、偏心カム66、レーザー変位センサ67等を有している。定着ローラ61は図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。また、定着ローラ61の図中下方に配設された加圧ローラ62は、定着ローラ61に所定の圧力で当接して定着ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される。定着ローラ61、加圧ローラ62は、それぞれ、回転に伴って表面を無端移動させる表面無端移動体である。また、定着ローラ61と加圧ローラ62との対は、無端移動する表面を互いに当接させて搬送路内でニップたる定着ニップを形成する表面無端移動体対である。
上述した紙搬送ユニット(図2の28)から定着ユニット60に受け渡された転写紙Pは、定着ニップを通過する際に定着ローラ61によって加熱されたり、加圧されたりすることで、表面のトナー像が定着せしめられる。この後、出口ローラ対63によって形成される出口ニップを経由した後、定着ユニット60外に送り出される。
上述した記録後経路内には、複数の表面無端移動体対により、複数のニップが形成されている。例えば、表面無端移動体たる中間転写ベルト25と、表面無端移動体たる紙搬送ベルト29との当接による2次転写ニップも、その1つである。また、上述した定着ニップ、出口ローラ対63によるニップ、カール除去ローラ群34によるニップ、排紙ローラ対(図2の35)によるニップも、それぞれその1つである。これらのうち、特に、定着ニップにおいて、転写紙Pの巻き込みが起こり易い。定着ユニット60内においては、転写紙Pの表面上のトナーが加熱によって軟化することで、粘着性を高めるからである。
定着ユニット60内において、爪ホルダー65によって保持される分離爪64は、その先端を定着ローラ61に突き当てることで、定着ローラ61に巻き付いた転写紙Pをローラ表面から強制的に剥離する。爪ホルダー65の図中左側方には、図示しない駆動手段によって回転駆動される偏心カム66が配設されている。爪ホルダー65は、図示しない支持体によって図中左右方向にスライド移動可能に支持されている。この爪ホルダー65には、図示しないコイルバネが当接しており、これによって爪ホルダー65が図中右側から左側に向けて付勢されて、偏心カム66に突き当たっている。偏心カム66がその短径部側面を爪ホルダー65に接触させる回転角度で停止しているときには、爪ホルダー65が図示のように分離爪64の先端を定着ローラ61から離間させる位置に待避している。この場合、分離爪64による定着ローラ61からの転写紙Pの剥離は行われない。一方、偏心カム66がその長径部側面を爪ホルダー65に接触させる角度まで回転すると、爪ホルダー65が図中左側から右側に押されて、分離爪64の先端が定着ローラ61に当接する。これにより、分離爪64による定着ローラ61からの転写紙Pの剥離が行われるようになる。
次に、本複写機の特徴的な構成について説明する。
図4において、出口ローラ対63の下方には、距離検知手段たるレーザー変位センサ67が配設されている。このレーザー変位センサ67は、図示のように、定着ローラ61に向けてレーザー光を出射する。このレーザー光は、定着ローラ61と加圧ローラ62との当接による定着ニップと、出口ローラ対63によるニップとの間を通過して、定着ローラ61の表面に至る。定着ニップから送り出された図示しない転写紙が、出口ローラ対63によるニップに向けて移動し、このレーザー光の光路を横切ると、レーザー光が転写紙の裏面で反射してレーザー変位センサ67に戻る。レーザー変位センサ67は、この反射光に基づいて、転写紙と、自らのレーザー出射面との間の距離に応じた電圧を出力する。即ち、レーザー変位センサ67は、搬送路の全領域のうち、定着ニップよりも下流側の領域における、定着ニップと出次ローラ対63によるニップとの間という所定位置を通過する転写紙と自らとの距離を検知する距離検知手段として機能している。
レーザー変位センサ67からの出力電圧は、図示しないA/Dコンバーターによってアナログデータからデジタルデータに変換された後、図示しない制御部に送られる。制御部は、必要に応じて、このデジタルデータを情報記憶手段たる図示しないRAM(ランダムアクセスメモリー)やハードディスクに記憶させる。
なお、定着ローラ61の表面は黒色になっている。レーザー変位センサ67から出射されたレーザー光の光路を転写紙が横切っていないときには、そのレーザー光が定着ローラ61に到達するが、定着ローラ61が初期状態のときには、レーザー光は定着ローラ61に吸収される。これにより、レーザー変位センサ67は、レーザー反射光を検知しないため、センサからの出力電圧値は非検知に対応した値になる。但し、定着ローラ61が徐々に劣化してくると、その表面の見かけ上の反射率が大きくなってくるため、定着ローラ61表面で若干量のレーザー光が反射してレーザー変位センサ67に戻るようになる。この場合、レーザー変位センサ67は、自らのレーザー出射面と、定着ローラ61表面との距離に応じた電圧を出力する。
先に説明したように、本複写機では、上述のレジストローラ対(図2の33)が転写紙を2次転写ニップに向けて送り出す。この送り出し開始時点から、転写紙の先端が2次転写ニップと、紙搬送ベルト上部張架面と、定着ニップとを経由して、レーザー変位センサ67による検知位置に到達する間での時間は、概ね1.2秒程度である。また、レジストローラ対からの送り出し開始時点から、転写紙の後端がレーザー変位センサ67による検知位置を通過するまでの時間は、概ね1.8秒程度である。よって、転写紙は、概ね、1.2秒後から1.8秒後までの間に、レーザー変位センサ67による検知位置を横切ることになる。この時間には若干の誤差が出る可能性があるので、余裕をみると、1.15秒後から1.85秒後の範囲であれば、間違いなく転写紙が通過すると考えて良い。
本発明者らは、分離爪64を定着ローラ61から離間させたままの状態で、以下に説明するような実験を行った。
まず、定着ローラ61として、新品のものを定着ユニット60にセットした。そして、テスト画像をA4サイズの転写紙にプリントアウトし、この際の上述した1.15秒後から1.18秒後までにおけるレーザー変位センサ67からの出力電圧値を、0.001秒間隔でハードディスクに記憶させる制御を行った。1.15秒後から1.18秒後までに0.001秒間隔で取得されるデータ数は701個となる。これら701個のデータは、レーザー変位センサ67による時系列検知データである。
次に、本発明者らは、テスト画像をA4サイズの約10[千枚]の転写紙に連続プリントアウトし、10000枚目のプリントアウト時に、同様にして701個の時系列検知データをハードディスクに記憶させた。その後、定着ローラ61を、約500[千枚]のプリントアウトを行った市場機から取り出したものに交換した後、同様にしてテスト画像をプリントアウトして701個の時系列検知データをハードディスクに記憶させた。更に、定着ローラ61を、約700[千枚]のプリントアウトを行った市場機から取り出したものに交換した後、同様にしてテスト画像をプリントアウトして701個の時系列データをハードディスクに記憶させた。
図5は、これらの実験による時系列検知データを示すグラフである。本複写機では、レーザー変位センサとして、転写紙との距離が近づくほど、出力電圧値を小さくするものを採用している。同図に示すように、プリントアウト枚数が増えるにつれて、時系列データの曲線の前半部分が全体的に高電圧側に持ち上がってくることがわかる。これは、プリントアウト枚数が増えるにつれて、転写紙の先端側がセンサから離れた位置で搬送されるようになることを示している。プリントアウト枚数が増えるにつれて、転写紙が定着ローラに巻き付き易くなってきたからと考えられる。本発明者らは、このような曲線の違いにより、定着ローラ61に対する転写紙の巻き付き易さを把握し得る可能性があると考えた。但し、これらの実験では、それぞれ転写紙として同じ厚みのものを用い、且つ、テスト画像として同じ画像面積のものを用いている。定着ローラ61に対する転写紙の巻き付き易さは、定着ローラ61の表面性の他、転写紙の厚みや画像面積も関与している。転写紙として厚いものを用いるほど、その腰が強くなるため、定着ローラ61からの曲率分離が起こり易くなる。即ち、定着ローラ61に巻き付き難くなる。また、画像面積の大きな画像をプリントするほど、転写紙面上でのトナー量が増加して、転写紙が定着ローラ61に巻き付き易くなる。
そこで、本発明者らは、次に、転写紙の厚みや画像面積を変えて同様の実験を行ってみた。具体的には、転写紙として薄紙(45kg紙)、中厚紙(70kg紙)、厚紙(110kg紙)の三種類を用意した。テスト画像(画像パターン)としては、画像なし(単なる通紙)、全面ハーフトーン(但し、紙上端部、下端部のマージン領域を除く)、全面ハーフトーン+先端部ベタの三種類を選定した。また、定着ローラ61としては、新品のものと、約500[千枚]プリントアウト後のものとを用意した。これらを組み合わせは、18通りである(紙厚3種類×画像3種類×ローラ2種類)。この18通りについて、先の実験と同様にして時系列データを取得した。なお、分離爪64については、先の実験と同様に、定着ローラ61から離間させたままにした。
図6は、これら18通りの時系列検知データを示すグラフである。同図において、時点t1、t2、t3、t4、t5は、ぞれぞれ、転写紙Pが搬送路内において図7、図8、図9、図10、図11に示す位置で搬送されているタイミングである。即ち、時点t1は、図7に示すように、定着ニップから送り出された転写紙Pの先端がレーザー変位センサ67による検知位置に進入し始めるタイミングである。また、時点t2は、図8に示すように、転写紙Pの先端が出口ローラ対63のニップに進入し始めるタイミングである。また、時点t3は、図9に示すように、転写紙Pの先端が定着ユニット60から出た後、カール除去ローラ群34のニップに進入し始めるタイミングである。また、時点t4は、図10に示すように、転写紙Pの後端が定着ニップから抜け出すタイミングである。また、時点t5は、転写紙Pの後端がレーザー変位センサ67による検知位置を通過するタイミングである。
図6における18個の曲線のうち、14個の曲線はほぼ同じような形状になっている。残りの4個の曲線((1)〜(4))は、それぞれ、前半部分が全体的に高電圧に持ち上がっている。これは、転写紙の先端側がセンサからより離れた位置で移動していることを示しており、他の14のケースに比べて転写紙が巻き付き傾向にあったと言える。これら4個の曲線(番号(1)〜(4))は、何れも定着ローラとして古いもの(500千枚出力後のもの)を用い、且つ、画像なしではなく画像を実際にプリントしたときに取得した時系列検知データに基づくものである。なお、曲線(1)〜(4)の特性を示すプリントアウトでは、それぞれ、同図の符号tyで示された期間の終了時点において、ハーフトーン部の後端が定着ローラの曲率によってローラ表面から離間した。また、曲線(1)、曲線(2)の特性を示すプリントアウトでは、それぞれ、同図の符号txで示された期間の終了時点において、先端部ベタが定着ローラの曲率によってローラ表面から離間した。
曲線(1)は、紙厚=中厚紙、画像パターン=全面ハーフトーン+先端部ベタ、定着ローラ=旧ローラというプリントアウト条件(以下、条件(1)という)で取得された時系列検知データを示している。また、曲線(2)は、紙厚=薄紙、画像パターン=全面ハーフトーン+先端部ベタ、定着ローラ=旧ローラというプリントアウト条件(以下、条件(2)という)で取得された時系列検知データを示している。両者のプリントアウト条件で異なっているのは、紙厚だけである。条件(2)では、先端部ベタが定着ローラから離間すると、転写紙が一瞬だけレーザー変位センサに急激に近づく傾向をみせるが、その後は、転写紙の曲率分離によってハーフトーンの後端が定着ローラから離間するまで、転写紙がゆっくりとセンサに近づいていく。これに対し、条件(1)では、先端部ベタが定着ローラから離間すると、後続のハーフトーンが定着ローラにくっついていたにもかかわらず、紙の腰の強さによってハーフトーンが急激にローラ表面から離間し、結果として転写紙がセンサ検知位置で急激にセンサに近づいている。
一方、曲線(3)は、紙厚=中厚紙、画像パターン=全面ハーフトーン、定着ローラ=旧ローラというプリントアウト条件(以下、条件(3)という)で取得された時系列検知データを示している。また、曲線(4)は、紙厚=薄紙、画像パターン=全面ハーフトーン、定着ローラ=旧ローラというプリントアウト条件(以下、条件(4)という)で取得された時系列検知データを示している。両者のプリントアウト条件で異なっているのは、紙厚だけである。両条件ともに、全面ハーフトーンの後端が定着ローラから離間するまで、センサ検知位置において転写紙がゆっくりとレーザー変位センサに近づいている。曲線(2)と曲線(4)とにおける初期センサ出力の差△Vは、紙先端部におけるトナー付着量の差によるもので、付着量が多いほど、紙先端がよりセンサから離れた位置でセンサ検知位置に進入したからであると考えられる。
このように、紙厚や画像パターンが一定でなくても、時系列検知データを波形として分析すれば、定着ローラに対する転写紙の巻き付き易さを判断することができることがわかった。但し、時系列検知データを波形として制御部に分析させるのは困難である。
そこで、本発明者らは、時系列検知データを波形として分析するのではなく、数値データとして分析する試みを行うことにした。互いに異なる時系列検知データを、それぞれにおける701個のデータの違いによって区別することは困難であるので、主成分分析を行うことにした。主成分分析(Principal Component Analysis)とは、周知の通り、多くの変量の値をできるだけ情報の損失なしに、1個または少数個(個)の総合的指標(主成分)で代表させる方法である。本実験では、主成分分析によって時系列検知データ内の701個のデータを1つまたは少数のデータで代表させるのである。主成分分析の具体的方法については、周知であるので、本明細書では説明を省略するが、この分析によって得た第1主成分の定式を用いれば、701個のデータを1つのデータに代表させることができる。但し、通常は、第1主成分の定式だけでは、データ波形の全体を十分に代表することができない。そこで、第1主成分の定式だけでは説明しきれない部分を説明するために、第2主成分の定式を求める。また、第1主成分の定式、及び第2主成分の定式でも波形全体を十分に代表することができない場合には、第3、第4・・・・主成分と、順に求めていき、それらの定式も用いる。
主成分分析を行うために、まず、標準データを構築した。この構築では、まず、新品の定着ローラを取り付けた状態で、27通りのプリントアウト条件(画像パターン9種類×紙厚3種類)にて、それぞれ100回ずつプリントアウトを行って、270の時系列検知データを得た。そして、これらの時系列検知データに基づいて、第1主成分から第20主成分までをそれぞれ定式化した。
標準データ構築のための第2段階として、第1主成分から第20主成分までの累積寄与率を周知の計算法によって計算した。すると、第10主成分までの累積寄与率が0.84になり、第10主成分まで加味すれば、波形全体を十分に反映し得ることがわかった。よって、以降の実験においては、第1主成分〜第10主成分の定式を標準データとして用いることにした。
このようにして標準データたる第1主成分〜第10主成分の定式を得たら、次に、互いに古さの異なる複数の定着ローラを用意し、それらを順次交換しながら、それぞれ、上述の27通りのプリントアウト条件×100回というプリントアウトを行って、数千にも及ぶ時系列検知データを得た。これらのプリントアウトにおいて、相当に古い定着ローラを用いた場合には、定着ローラへの転写紙の巻き付き、ひいては、定着ユニット内への転写紙の巻き込みを引き起こした場合もあった。
次いで、得られた数千にも及ぶ時系列検知データをそれぞれグラフ化し、それらを目視にて観察しながら、それぞれのプリントアウトにおける定着ローラへの転写紙の巻き付き易さを評価し、巻き付き指標値1〜80の何れかに決定した。巻き付き指標値の数値が大きくなるほど、巻き付き易くなっている状態を示している。また、巻き付き指標値が55を超えると、巻き付き(ひいては巻き込み)が発生し始めていた。
その後、上述した数千にも及ぶ時系列検知データを、それぞれ第1主成分〜第10主成分の定式に代入し、それぞれ第1主成分得点〜第10主成分得点までを算出した。各時系列検知データについて、それぞれ第1主成分得点〜第10主成分得点までを算出したのである。そして、最小二乗法により、「巻き付き指標値(推定値)=定数A+a1×第1主成分得点+a2×第2主成分得点+・・・+a10×第10主成分得点」という重回帰式を求めた。最小二乗法では、定数Aや各係数(a1〜A10)は、それらを未知数として算出した推定値と、真値との差の二乗和が最小になるように決定される。図12は、個々の主成分得点をこの重回帰式に代入して得られる巻き付き指標値の推定値と真値との対応(当てはめの精度)を示す散布図及ぶ回帰直線である。巻き付き指標値の推定値と真値とが良好な相関関係にあることがわかる。実機においては真値が得られないので、重回帰式に基づいて求めた推定値を用いて、巻き付きの良否を判断させる。
ここで、新品の定着ローラが用いられたプリントアウトでは、画像パターンや紙厚にかかわらず、巻き付き指標値(真値)が最小の「1」となる。そして、定着ローラが古くなっていくにつれて、巻き付き指標値(真値)が徐々に大きくなっていき、巻き付き指標値(真値)が「55」になった時点で定着ローラが寿命に達して、それ以降、定着ユニット内への転写紙の巻き込みが発生し始める。
また、新品の定着ローラが用いられたプリントアウトでは、画像パターンや紙厚にかかわらず、上述の重回帰式に基づいて求められる巻き付き指標値(推定値)が「13」以下になる。よって、この場合、定着ローラに対して転写紙の巻き付き易さが非常に低く、定着ローラの寿命がまだ十分にあると予測することができる。
一方、定着ローラの劣化が徐々に進んでいくと、上述の重回帰式に基づいて求められる巻き付き指標値(推定値)が「13」から徐々に大きくなっていく。そして、やがて「55」に到達する。このとき、定着ローラの寿命到達であると判定することができるが、この時点よりも少し前、例えば算出された巻き込み指標値(推定値)が「50」であった時点では、定着ローラの寿命が近い将来に到達する時点である。よって、プリントアウト時に得られた時系列検知データに基づいて算出された巻き込み指標値(推定値)が例えば「50」に達した時点で、ユーザーに対して「定着ローラの寿命がもうすぐ到達しそうである」旨を報知すれば、次のことが可能になる。即ち、寿命到達前に、定着ローラの交換準備に取り掛かってもらうことができる。
図13は、本複写機の電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御部100は、プリンタ部(図1の1)全体の制御を司るものであり、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)101、情報記憶手段たるRAM(Random Access Memory)102、情報記憶手段たるROM(Read Only Memory)103、情報記憶手段たるHDD(Hard Disk Drive)104等から構成されている。そして、これら情報記憶手段に記憶されているプログラム等に基づいて、各種の処理を実行する。制御部100には、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、定着ユニットに関連する機器やセンサだけを示している。カムモータ110は、上述した偏心カム(図4の66)の回転駆動源であり、これの駆動によって偏心カムが回転することで、分離爪(図4の64)が定着ローラ(図4の61)に接離する。また、レジストセンサ102は、上述したレジストローラ対(図2の33)の近傍に配設されており、これによって転写紙の先端が検知されたところで、レジストローラ対の回転駆動が一時停止された後、回転再開によって転写紙が2次転写ニップに向けて送り出される。また、レーザー変位センサ67は、上述したように、定着ニップを出た後の転写紙を検知して、転写紙との距離に応じた電圧を制御部100に出力する。また、操作表示部103は、図示しないテンキーや液晶ディスプレイから構成され、制御部100に入力するためのデータをキー入力によって受け付けたり、制御部100による制御によって文字情報をディスプレイに表示したりする。また、スピーカー104は、制御部100からの制御信号に基づいて音声を出力する。
HDD104内には、予めの試験によって構築された上述の第1主成分〜第10主成分までの定式が格納されている。また、上述の回帰直線(回帰式)も格納されている。
図14は、制御部100によって実施される寿命判定処理の制御フローを示すフローチャートである。プリント動作が開始されると、この寿命判定処理が開始された後、分離フラグについてセット中であるか否かが判断される(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。後述する理由により、この分離フラグがセット中である場合には(S1でY)、定着ローラの寿命がもうすぐ到達しそうな状態にあるため、偏心カムの回転によって分離爪が定着ローラとの当接位置にセットされる(S2)。その後、レジストローラ対(図1の33)による転写紙の送り出し(レジスト送り出し)が行われるタイミングの到来が待機される(S3)。なお、分離フラグがセット中でない場合には、分離爪がセットされることなく、レジスト送り出しの到来が待機される。
レジスト送り出しが行われると(S3でY)、計時処理が開始され(S4)、所定期間であるカウント開始後1.15秒から1.85秒までの期間におけるレーザー変位センサ出力値が0.01秒間隔で検出されて、HDD内に格納される(S5〜S8)。そして、上述したプロセスにより、HDD内に格納された時系列検知データと、予め格納されている第1〜第10主成分の定式と、重回帰式とに基づいて、巻き付き指標値S(推定値)が算出される(S9)。次いで、巻き付き指標値S(推定値)について「50」以上であるか否かが判定される(S10)。ここで、「50」以上であると判定された場合には(S10でY)、定着ローラの寿命がもうすぐ到達しそうな状態になったので、分離フラグがセットされた後(S11)、ユーザーに対する警報によってその旨が報知される(S12)。この警報は、操作表示部にその旨の文字情報が表示されたり、スピーカーから警報音が出力されたりすることによって行われる。その後、プリントジョブについて終了すると(S13でY)、分離爪が解除された後に(S14、S15)、一連の制御フローが終了する。なお、巻き付き指標値S(推定値)が「50」未満である場合には(S10でN)、分離フラグがセットされず、且つ警報が発信されることなく、プリントジョブが終了する。
かかる構成の本複写機においては、また、上述した偏心カム(66)と、カムモータ(110)と、コイルバネとの組合せが、分離爪を定着ローラ表面に接離させる接離手段として機能している。また、制御部(100)が、時系列検知データに基づいて、表面無端移動体対の何れか一方の表面無端移動体である定着ローラに対する転写紙の巻き付き易さを示す巻き付き指標値を算出する指標値算出手段として機能している。また、巻き付き指標値(推定値)と所定の閾値(「50」)とを比較する比較手段としても機能している。また、分離爪の接離手段を制御する接離制御手段としても機能している。また、制御部(100)と、操作表示部(103)と、スピーカー(104)との組合せが、前述の比較に基づいて、警報を発信する警報発信手段として機能している。そして、本複写機では、上述した寿命判定処理を実行することで、ユーザーに対し、定着ローラの寿命がもうすぐ到来しそうな場合には、その到来前から交換準備に取り掛からせることで、定着ローラの交換準備期間に余裕をもたせることができる。
なお、定着ローラの寿命がもうすぐ到来しようになったときにだけ分離爪をセットするのは次に説明する理由からである。即ち、分離爪を定着ローラに当接させると、両者の摺擦によって定着ローラ表面を削ってしまうため、定着ローラの寿命を縮めてしまう。そこで、寿命が到来しそうになったときだけ、換言すれば、分離爪による転写紙の強制的な剥離が必要になったときだけ、分離爪をセットすることで、定着ローラの寿命低下を抑えているのである。
時系列検知データに、転写紙の厚み情報や画像面積情報を付加したデータ行列を構築し、これに基づいて主成分の定式化等を行ってもよい。例えば、702、703番目のデータとして、紙厚情報、画像面積情報を付加して、主成分の定式化を行ったり、主成分得点を算出させたりするのである。こうすることで、紙厚や画像面積を判定に正確に反映させて、劣化判定精度をより高めることができる。実際の運転においては、ユーザーによって紙厚情報を操作表示部に入力してもらうようにし、且つ、図示しない光書込制御回路から制御部に、形成したトナー像の画像面積情報を入力し、これらを時系列検知データに付加させるようにすればよい。また、多変量データを指標値に変換するどの段階で転写紙の厚み上方や画像面積情報を付加しても良いので、主成分分析の段階だけでなく、重回帰分析の段階でもよい。
次に、実施形態に係る複写機に、より特徴的な構成を付加した各実施例の複写機について説明する。
[第1実施例]
定着ローラに対する転写紙の巻き付き易さの高まりには、定着ローラ表面自体の摩耗による表面性の低下の他、ローラ表面に対する異物(トナーや紙粉)の付着量増加も関与している。トナーや紙粉の付着量が増加してくると、転写紙が定着ローラに巻き付き易くなっていくのである。トナーや紙粉の付着量増加に起因する巻き付き易さの高まりについて、定着ローラ表面をクリーニングすることによって解消することができる。しかしながら、クリーニング部材を定着ローラ表面に当接させると、両者の摺擦によるローラ表面の削れによって定着ローラの寿命を縮めてしまう。
図15は、本第1実施例に係る複写機における定着ユニット60を、カール除去ローラ群34とともに示す拡大構成図である。同図において、定着ユニット60は、定着ローラ61の表面に付着した異物をクリーニングするクリーニング手段たるローラクリーニング機構68を有している。このローラクリーニング機構68は、クリーニング部材たるウエブ69の後端側を巻き付けながら、先端側を送り出すウエブ送り出しローラ70、送り出されたウエブ69を巻き取る巻き取る巻き取りローラ71、両ローラ間のウエブ箇所を引き伸ばす展張ローラ72等から構成されている。ローラクリーニング機構68は、図示しない接離手段たる移動機構により、図中左右方向に移動せしめられる。この移動機構は、制御部(100)によって制御される。接離制御手段たる制御部の制御によってクリーニング手段たるローラクリーニング機構68が図中左右方向に移動することで、ウエブ69が定着ローラ61に接離する。定着ローラの寿命にまだ十分に余裕があるときには、ローラクリーニング機構68がウエブ69を定着ローラ61に当接させない位置に待避している。
上述したHDD(104)内には、巻き付き指標値と比較するための閾値として、第1閾値と、第2閾値とが格納されている(第1閾値<第2閾値)。そして、制御部は、巻き付き指標値が第1閾値を超えると、ローラクリーニング機構68を所定時間だけ定着ローラ61に当接させる制御を行う。また、巻き付き指標値が第2閾値を超えると、定着ローラの寿命の到来がもうすぐであるとみなして、警報を発信したり、分離爪64をセットしたりする。
図16は、本複写機における累積プリント枚数と、巻き付き指標値との関係を示すグラフである。累積プリント枚数の増加に従って、巻き付き指標値は徐々に大きくなっていき、やがて第1閾値に達する。この時点で、ローラクリーニング機構(68)による定着ローラ(61)のクリーニングが所定時間だけ行われた後、ローラクリーニング機構が定着ローラから離される。これにより、定着ローラ表面の異物が除去され、その分だけ巻き付き易さが低下するため、巻き付き指標値は大きく低下するが、その後のプリントアウトに伴って再び上昇し、やがて第1閾値に再到達する。そして、定着ローラのクリーニングが再び所定時間だけ行われる。このようようにしてクリーニングが繰り返されることにより、図示のようにグラフが上下に波打つが、その波打ちの位置が全体的に持ち上がっていく。これは、定着ローラ表面の削れが進行していくためである。グラフの波打ちが第1閾値よりも上の位置で起こるようになると、ローラクリーニング機構(68)が定着ローラ(61)に常に当接した状態になり、やがて、巻き付き指標値が第2閾値に達する。この時点で、警報が発信されるとともに、分離爪(64)がセットされる。なお、図中点線で示した曲線は、クリーニングを行わない場合の巻き付き指標値の推移を示している。
かかる構成の本複写機においては、定期的なクリーニングによって定着ローラの長寿命化を図りつつ、ローラクリーニング機構を常に当接させることによる定着ローラの低寿命化を回避することができる。
[第2実施例]
定着ローラの寿命到来の予測については、重回帰分析の代わりに、MTS(Maharanobis Taguchi System)法を用いることによっても、行うことができる。MTS法の詳細は、「MTシステムにおける技術開発 刊行委員会委員長 田口玄一著 日本規格協会刊」に詳しく説明されているので、詳しい説明を省略するが、次のような処理を行う。即ち、まず、正常な状態の被検対象、あるいはこれと同一仕様のものである同一仕様物から、複数種類の情報からなる組データを取得する。そして、この組データを数多く収集して標準データとなる逆行列を構築する。その後、被検対象の正常さ加減を調べたいときに、被検対象から組データを取得する。そして、この組データについて、予め構築しておいた標準データによる多次元空間内でどのような相対位置関係にあるのかを示すマハラノビス距離を求め、その結果に基づいて被検対象の正常さ加減を量る。なお、逆行列を構築しないでマハラノビス距離を求める方法もある。
本複写機では、標準データとして、MTS法による逆行列がHDD(104)内に格納されている。この逆行列は、新品の定着ローラが搭載された本複写機によって様々な画像パターンや紙厚のプリントアウトが複数回に渡って行われた際におけるそれぞれの時系列検知データに基づいて構築されたものである。ユーザーのもとでのプリントアウトが行われる際には、そのときの時系列検知データが取得され、取得結果と、前述の逆行列とに基づいてマハラノビス距離が求められる。そして、マハラノビス距離が所定の閾値を超えた時点で、警報が発信されたり、分離爪がセットされたりする。なお、逆行列を使用しないでマハラノビス距離を求める方法を用いても良い。
[第3実施例]
予めHDD(104)に記憶されている上述の主成分の定式、重回帰式は、それぞれ、テスト機を用いた試験に基づいて構築されたものである。これら式の特性は、必ずしもユーザー所有機と一致しているとは限らない。むしろ、部品の寸法誤差などにより、特性に誤差が生じていることが多い。このような誤差があると、劣化判定精度が低下してしまう。
そこで、本複写機では、「閾値補正・更新モード運転」を行うように構成されている。この「閾値補正・更新モード運転」は、ユーザーが操作表示部をキー操作することによって設定が可能である。HDDには、紙厚と、基準トナー像をプリントアウトした場合の巻き付き指標値(推定値)とを関連付けるデータテーブルが記憶されている。このデータテーブルについては、テスト機を用いて各紙厚でそれぞれ基準トナー像をプリントアウトし、それぞれにおける巻き付き指標値(推定値)を求めた結果と、それぞれのプリントアウトにおける紙厚とに基づいて予め構築しておく。
「補正・更新モード運転」が開始されると、操作表示部での表示により、白紙供給装置(図1の40)内にセットされている転写紙の厚みがユーザーに問い合わせされる。この問い合わせに基づいてユーザーが厚み情報を操作表示部に入力すると、それがHDDに記憶される。即ち、本複写機では、操作表示部が転写紙の厚み情報を取得する情報取得手段として機能している。このようにして厚み情報が取得されると、次に、その厚み情報に対応する巻き付き指標値(推定値)が上記データテーブルに基づいて特定され、特定値としてRAMに一時記憶される。その後、画像面積が既知である所定の基準トナー像が自動的にプリントアウトされるとともに、そのときの時系列検知データがHDDに記憶される。そして、この時系列検知データと、上述の主成分の定式と、重回帰式とに基づいて、巻き付き指標値(推定値)が算出される。この巻き付き指標値(推定値)は、先に得られた特定値と理論的には一致するはずである。一致しない場合には、テスト機における特性と、ユーザー所有機における特性とに誤差が生じている。そこで、巻き付き指標値(推定値)と、特定値との差に基づいて、上述の閾値が補正される。これにより、閾値がユーザー所有機の特性に見合ったものになり、両機間での特性の誤差による劣化判定精度の低下が抑えられる。
[第4実施例]
巻き付き指標値(推定値)が上述の閾値を超えた時点から、定着ユニット内への転写紙の巻き込みが発生し始めるまでの期間は、その間におけるユーザーのプリントアウト条件によって異なってくる。例えば、一般原稿などといった、中厚紙且つ画像面積の比較的小さなプリントアウトを主に行うユーザーでは、その期間が比較的長くなる。これに対し、写真画像などといった面積の比較的大きな画像を薄紙に出力するプリントアウト条件が主なユーザーでは、その期間が比較的短くなる。実施形態に係る複写機では、それにもかかわらず、それぞれ同じタイミングで警報を発信していた。すると、前者のユーザーに対しては、寿命到来までにまだ少し余裕があるにもかかわらず、定着ローラを少し早めに交換させてしまうおそれがある。また、後者のユーザーでは、定着ローラの交換が待ち合わないといった事態を発生させるおそれがある。
そこで、本第4実施例に係る複写機では、トナー像形成手段によって形成されるトナー像の面積情報と、転写紙の厚み情報と、プリント回数(画像形成動作回数)とに基づいて閾値を補正させるように、比較手段たる制御部(100)を構成している。
具体的には、先に示した図1において、光書込装置2は、図示しない光書込制御回路により、パーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報や、スキャナ150によって読み取られ得た画像情報に基づいて駆動制御される。この光書込制御回路は、これらかプリントアウトされるトナー像の画像面積をドット数(画素数)に基づいて算出し、その結果を制御部(100)に送る。即ち、光書込制御回路は、トナー像の面積情報を取得する情報取得手段として機能している。また、制御部(100)は、白紙供給装置40に転写紙束がセットされると、上述した操作表示部(103)にメッセージを表示して、その転写紙の厚みをユーザーに問い合わせる処理を実行する。ユーザーは、この問い合わせに基づいて、セットした転写紙の厚み情報を操作表示部にキー入力する。制御部(100)は、入力された厚み情報をHDD(104)に記憶させておく。即ち、本複写機では、制御部と操作表示部との組合せが、転写紙の厚み情報を取得する情報取得手段として機能している。
HDD(104)内には、プリント条件データテーブルも格納されている。このプリント条件データテーブルは、条件点数と、プリント条件とを関連付けるデータテーブルである。ここで、プリント条件とは、画像面積と紙厚との組合せによる条件である。本複写機では、例えば5通りの画像面積(極低、低、中、高、極高)と、3通りの紙厚(薄紙、中厚紙、厚紙)との組合せからなる15通り(5×3)のプリント条件を定義している。これら15通りのプリント条件には、それぞれ定着ローラへの転写紙の巻き付きを発生し難いものから順に、1、2、・・・14、15という条件点数を対応させている。この対応関係を示すのが、プリント条件データテーブルである。
制御部(100)は、プリントジョブを行う毎に、光書込回路から送られてくる面積情報と、HDD(104)に記憶させておいた転写紙の厚み情報(紙厚情報)とに基づいて、そのジョブにおけるプリント条件について、上述した15通りのどれに一番近いかを判定する。そして、判定結果に対応する条件点数を、プリント条件データテーブルから検索し、検索結果を前回までの条件点数累積に加算する。また、プリントジョブを行う毎に、累積プリント回数をカウントアップする。そして、条件点数累積を累積プリント回数で除算して平均条件値を求める。この平均条件値は、これまでの平均的なプリントアウト条件を示している。
平均条件値が1〜15の中間である「8」になった場合には、それまでの平均的なプリントアウト条件が一般的な条件であったことになる。そこで、上記閾値を補正しないまま、上述の劣化判定処理を行う。
一方、平均条件値が「8」未満になった場合には、それまでの平均的なプリントアウト条件が通常よりも巻き付きを引き起こし難い条件であったことになる。即ち、プリントアウトは、巻き付きを引き起こし難い条件で行われる傾向にあると言える。そこで、この場合には、平均条件値が小さくなるに従って大きな数値を上記閾値に加算する補正を行う。これにより、警報発信のタイミングが巻き付きの引き起こし難さに応じて通常よりも延期される。
また、平均条件値が「8」を超えた場合には、それまでの平均的なプリントアウト条件が通常よりも巻き付きを引き起こし易い条件であったことになる。即ち、プリントアウトは、巻き付きを引き起こし易い条件で行われる傾向にあると言える。そこで、この場合には、平均条件値が大きくなるに従って大きな数値を上記閾値から減算する補正を行う。これにより、警報発信のタイミングが巻き付きの引き起こし易さに応じて通常よりも早められる。
かかる構成の本複写機では、ユーザーによる平均的なプリントアウト条件に応じた適切なタイミングで、警報を発信することができる。
これまで、電子写真方式によってトナー像を形成する複写機の例について説明してきたが、直接記録方式によってトナー像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。直接記録方式とは、例えば、特開2002−307737号公報に記載の画像形成装置のように、潜像担持体によらず、トナー飛翔装置から飛翔させたトナー群を記録体に直接付着させてトナー像を形成する方式である。
また、定着ローラ61に対する転写紙の巻き込み易さを判定するようにした複写機について説明したが、定着ローラ61に限らず、記録後経路内でニップを形成する表面無端移動体であれば、それに対する巻き込み易さを本発明によって判定することが可能である。例えば、図17に示す画像形成装置は、感光体4上のトナー像を、紙搬送ベルト29によって搬送される転写紙に転写する直接転写方式ものものである。かかる構成において、トナー像を担持する転写紙は、感光体4に巻き付いて、プロセスユニットに巻き込まれるおそれがある。そこで、図中で符号67aを付したレーザー変位センサによって時系列検知データを取得して、感光体4に対する転写紙の巻き付き易さを判定させるようにしてもよい。また、両面転写モードでは、紙搬送ベルト29と転写紙との間にトナー像が介在するため、転写紙が紙搬送ベルト29に巻き付いて、紙搬送ユニット28内に巻き込まれるおそれがある。そこで、図中で符号67bを付したレーザー変位センサによって時系列検知データを取得して、紙搬送ベルト29に対する転写紙の巻き付き易さを判定させるようにしてもよい。