JP4846173B2 - 高圧放電ランプ及び高圧放電ランプ用電極 - Google Patents

高圧放電ランプ及び高圧放電ランプ用電極 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧放電ランプ及び高圧放電ランプ用電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶プロジェクタ等の投射型画像表示装置の開発が活発に行われている。係る投射型画像表示装置には点光源に近い高輝度の光源が必要であり、このような光源として、一般的にショートアーク型の高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの高圧放電ランプが用いられている。
【0003】
ショートアーク型高圧放電ランプの開発に際しての主要な技術的課題の一つとして、その寿命特性の改善による長寿命化が挙げられる。即ち、一般にショートアーク型高圧放電ランプにおいては、電極先端部の温度が過度に上昇することにより電極を構成するタングステン物質が溶融、蒸発し、電極先端部分が変形、損耗する一方、蒸発したタングステン物質が発光管内壁に付着し、発光管内壁が黒化することによりランプの光束劣化が早くなるという問題がある。この問題を解決するため、ショートアーク型高圧放電ランプの電極設計や電極の製造方法に関して、従来より種々の技術が検討されてきた。
【0004】
上記電極設計に関する従来技術として、図18に示すような構造をもつ電極が開発されている。同図に示される電極901は、線径の細い電極軸902と、前記電極軸902より大きい内径を有する円筒形電極部903とを組合せて構成される。その動作の特徴は、(1)円筒形電極部903が電極先端部904に発生した熱を速やかに電極軸側へと伝導することで前記電極先端部904の温度を低下させ、電極物質が溶融、蒸発することによる電極先端部904の変形、損耗を抑制し、(2)線径の細い電極軸902の作用により電極901全体を保温して、発光管内に封入された発光物質の蒸発を促進する、というものである。
【0005】
係る電極901は、通常タングステンなどの高融点金属材料のブロックを研削加工することにより製造され、特に温度上昇が高い直流放電型の高圧キセノンランプや超高圧水銀ランプなどのショートアーク型高圧放電ランプの陽極として用いられている。
一方、近年の投射型画像表示装置用の光源として採用されているショートアーク型高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプに関しては、当初は従来のロングアーク型の一般照明用高圧放電ランプと同一構成の電極が用いられてきた。図19に例示するように、この電極911は、通常タングステンからなる電極軸912と、線径の細いタングステン線のコイル913とから構成されている。しかしながら、このような電極911を用いたショートアーク型高圧放電ランプでは、上記したようなタングステン電極物質の溶融、蒸発による電極先端部の変形、損耗が避けられず、ランプの長寿命化が難しいことがわかってきた。
【0006】
次いで、ランプの長寿命化に対する解決策として、従来ショートアーク型高圧放電ランプ用として開発された、図18の基本構成を有する電極について改めて検討された。しかしながら、研削加工により製造すると製造コストが高くなるため、基本構成そのものは図18の電極901と同様のものとしながら製造コストをより安くすることができる電極が検討された。係る電極に関する従来技術は、例えば、特許第2820864号公報や特開平10−92377号公報に開示されている。
【0007】
上記公報に開示されている電極の例を図20に示す。同図に示される電極921は、(a)まずタングステン電極軸922の放電側先端部にタングステン線コイル923を巻回、装着し(図20(a)参照)、(b)電極軸922の放電側先端部及び前記コイル923の放電側先端部を、いわゆる放電加工方法により溶融、加工して、ほぼ半球状の形状からなる電極先端部924を形成する(図20(b)参照)という、前記研削加工に比べて簡易な2つのプロセスから製造されるものである。
【0008】
電極921において、前記コイル923と半球状の電極先端部924とからなる部分は、図18に示した電極901の円筒形電極部903及び電極先端部904と同様の効果を有し、従って半球状の電極先端部924の熱はコイル923へと速やかに伝導されて、前記電極先端部924の温度が下げられることになる。このように製造コストのより安い放電加工方法を用いて製造した電極でも、電極物質の溶融、蒸発と電極先端部の変形、損耗が抑制されてランプの長寿命化を図ることができる。
【0009】
なお、高圧放電ランプの長寿命化を図るための電極設計に関するもう一つの従来技術として、特開平9―165641号公報には、電極材料として高純度タングステンを用いる手段が開示されている。ここでは、大型で高出力化された放電ランプの電極(特に陽極)の材料として、主成分組成のタングステンWに対して副成分組成であるAl、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Si、Sn、Na、K、Mo、U、Thの元素の総含有量が10ppm以下に規定された高純度タングステンを用いることが、ランプ電極寿命の改善に効果をもつ、という結果が示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような関連技術に基づき、本願発明者らは、投射型画像表示装置用の光源としてのショートアーク型高圧水銀ランプの開発に取組んだ。この開発を行うにあたり、特に市場から要望されているランプの性能面での目標として、(1)反射ミラー系と組合わせたときの光利用効率を高めるために、電極間距離、即ち発光管内に対向して設けられた二本の電極の放電側先端同士の距離を1.5mm以下と、従来よりも短くするとともに、(2)ランプの寿命時間として3000時間以上を達成するという二つの目標を設定した。なお、上記(2)のランプ寿命時間は、後述するように、ランプユニットによるランプ発光中におけるスクリーン面上9点の平均照度維持率から見積もられた光束維持率が、50%まで低下するときのエイジング時間で定義されている。
【0011】
本願発明者らは、開発を開始した当初、上記公報に開示されている方法に基づき放電加工方法で作製した電極(図20参照)を用いて、従来よりも電極間距離の短いショートアーク型高圧放電ランプの開発を検討した。ところが、係る電極を用いたランプを多数製造してランプ特性を測定してみると、ランプ電圧や寿命時間等のランプ特性についてランプ間のバラツキが大きく、製品化に適切とはいえないことがわかった。
【0012】
そこで、上記ランプ特性のバラツキの原因について調査した結果、従来の放電加工方法で作製された電極先端部の加工形状は、一様な半球状とはなっておらず、形状、寸法にバラツキが生じており、当該形状、寸法のバラツキに起因してランプ特性にもバラツキが発生していることが判明した。例えば、電極先端部の形状が半球状となっていない場合、放電アークが両電極間の中心軸上から外れる場合があり、この結果、放電アーク長が設計値より外れて長くなるため、結果的にランプ電圧が定格値より外れて高くなる。
【0013】
特に、本願発明者らが目標として設定した電極間距離1.5mm以下の範囲になると、このような放電アーク長の変化によるランプ電圧の変動幅が増大することも明らかとなった。また、ランプ間で電極先端部の加工形状、寸法にバラツキがあると、放電時の電極先端部の温度も異なってくるため、これがランプの寿命時間にバラツキを発生させる原因となる。
【0014】
本発明は、以上のような諸点に鑑みてなされたものであって、放電側先端部を溶融、加工した電極を用いる高圧放電ランプにおいて、好ましくは3000時間以上の寿命時間を達成するとともに、ランプ特性のバラツキを抑制することができる高圧放電ランプ及び高圧放電ランプ用電極を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の高圧放電ランプ用電極は、例えば、電極軸に被覆部材が取り付けられてなり、高純度タングステンからなる高圧放電ランプ用電極において、前記被覆部材が取り付けられた部分の放電側先端部は、間欠的な加熱溶融加工により先端部が半球状に成形されており、かつタングステン結晶の平均粒径が100μm以上であることを特徴としている。
【0016】
このように結晶の平均粒径の大きい電極は電極先端部の熱容量が大きくなることから、電極の変形を抑制することができ、もって高圧放電ランプの長寿命化に寄与するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態に係る高圧水銀ランプの構成を示す図である。同図に示されるように、本実施の形態の高圧水銀ランプは、発光管101内の放電空間111において、二本の電極102、103が所定の電極間距離(De)をもって対向するように、それぞれが放電空間111両端の封止部104及び105から放電空間111内へと延出した構造を有している。電極102及び103は、いずれも図20(b)に示した電極921と同様の基本構成を有するものであるが、本発明の製造方法により製造されたものが用いられる。当該製造方法については後に詳細に説明する。
【0018】
発光管101は、容囲器が石英で構成されており、ほぼ回転楕円体形状を有している。一対のタングステン電極102及び103は、発光管101の封止部104及び105のそれぞれにおいてモリブデン箔106及び107を介して気密封着されており、モリブデン箔106及び107は、さらにそれぞれ外部モリブデンリード線108及び109に接続されている。発光管101の全長(Lo)はランプ出力に応じて30〜100mm、最大外径(Do)は5〜20mm、発光空間111の最大内径Diは2〜14mmとすることができる。
【0019】
ここで、前記タングステン電極102及び103の間の電極間距離(De)は、従来は1.5mm〜2.5mm程度の範囲に設定されていたものであるが、本実施の形態の高圧放電ランプでは、ランプの光利用効率をより高めてスクリーン面上の輝度向上を図るために、前記電極間距離(De)の値を1.5mm以下、より好ましくは0.5〜1.5mmの範囲に規定している。もっとも、本願発明に係る電極の製造方法は、電極間距離1.5mm以下の高圧放電ランプに用いる電極に限らず、従来の高圧放電ランプの電極についても適用することができる。
【0020】
発光空間111内部には、発光物質である水銀110、及び始動補助用としてのアルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、併せて沃素、臭素などのハロゲンが封入されている。水銀110の封入量は発光空間111内の容積あたり150mg/cm3以上(ランプ定常点灯時の水銀封入圧力にして約150bar以上に相当する。)の範囲に規定することが好ましく、希ガスのランプ冷却時の封入圧力は0.1〜10barの範囲に設定することが好ましい。
【0021】
なお、前記ハロゲンとしては、例えば臭素を用いる場合であれば、10-9〜10-5mol/cm3の範囲に設定することが好ましく、これはいわゆるハロゲンサイクル作用により、電極から蒸発して発光管101内面に付着したタングステンを元の電極に戻して発光管の黒化を抑制する機能を果たすために封入されている。一方、図2に示すように、完成ランプ200は前記発光管101の片方の管端部に口金120が装着されて構成されており、更に当該完成ランプ200に反射ミラー210が装着されてランプユニット300が構成される。
【0022】
一方、前記電極102(前記電極103も同一)は、図3に示すように、(a)線径0.4mmのタングステン電極軸122に線径0.2mmのタングステン線の2層巻コイル123(コイル巻数8ターン)を固定し(図3(a)参照)、(b)次いで前記タングステン電極軸122と前記2層巻コイル123の先端部を、半球状の形状をなすような電極先端部124に溶融加工する(図3(b)参照)という製造プロセスで作製される。
【0023】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る電極の製造方法について、以下に詳細に説明する。本実施の形態では、タングステン電極軸122とタングステン2層巻コイル123の先端部に対してアルゴンプラズマ溶接装置による溶融加工を行うことにより、図3(b)に示されるような、半球状の先端部124を有する電極を形成する。
【0024】
ここで、上記のアルゴンプラズマ溶接装置による溶融加工プロセスについて詳述する。この際、図4に示すように、タングステン電極軸122および2層巻コイル123の先端から、アルゴンプラズマ溶接装置400の電極(陰極)401の先端までの距離Dpを1.0mmに設定、保持し、アーク放電を行う。
この溶融加工プロセスは、複数回の間欠的なアーク放電により行い、アーク放電の合間に少なくとも1回の冷却期間をもうける。図5に、上記溶融加工プロセスの一具体例を示す。この例では、合計4回の溶融加工P1〜P4を間欠的に行い、各溶融加工の間に冷却時間がもうけられている。
【0025】
1回目の溶融加工P1は、26Aのアーク電流による50m秒間のアーク放電を、0.4秒おきに3回連続して行うことによってなされる。この3回のアーク放電により、タングステン電極軸122および2層巻コイル123の先端はほぼ半球状に成形されるが、完全な半球状ではない。
その後、約3秒間の冷却時間をおくことにより、タングステン電極軸122および2層巻コイル123の先端は、アーク放電により赤熱された状態から、金属色を呈する状態へ戻る。なお、本発明における「冷却」とは、何らかの手段による強制冷却の他に、単に放置することによる自然冷却をも含む概念であり、図5に示した各溶融加工間の冷却時間も、自然冷却による。
【0026】
その後、2回目の溶融加工を行う。この2回目の溶融加工P2は、26Aのアーク電流による50m秒間のアーク放電を、0.4秒おきに2回連続して行うことによってなされる。これにより、タングステン電極軸122および2層巻コイル123の先端は、再び赤熱されて溶融し、完全な半球状にさらに近づく。
そして、3秒間の冷却時間をおいた後、26Aのアーク電流による50m秒間のアーク放電を1回行うことにより3回目の溶融加工P3をし、さらに1.5秒間の冷却時間をおいた後、26Aのアーク電流による50m秒間のアーク放電を1回行うことにより、4回目の溶融加工P4を行う。以上の溶融加工P1〜P4により、タングステン電極軸122および2層巻コイル123の先端は、ほぼ完全な半球状に形成される。
【0027】
このように、1回ないし複数回のアーク放電による溶融加工を、冷却時間をおきながら間欠的に行うことにより、タングステン電極軸122および2層巻コイル123の先端の温度上昇が全体的に一様となり、加工温度制御が容易となる。これにより、空孔や未溶融部分などの欠陥が残存しない理想的な半球状の電極先端部124を安定して得ることができる。
【0028】
なお、溶融加工プロセス全体でのアーク放電の合計時間に比べて、冷却時間の合計の方が長くなるように設定することが好ましい。例えば、図5に示した例では、50m秒間のアーク放電を7回行っているのでその合計時間は350m秒であり、これよりも、冷却時間の合計である7.5秒の方が長い。
なお、溶融加工プロセスの好ましい例は、図5に示したものに限られず、各溶融加工におけるアーク放電の回数およびその間隔、冷却時間の長さ、アーク電流の大きさ等の種々の条件を、発明の目的を達成する範囲で様々に設定することが可能である。
【0029】
例えば、図6に示すように、1回目の溶融加工P1を0.6秒おきの4回のアーク放電によって行い、2秒間の冷却期間をおいた後、2回目の溶融加工P2を0.4秒おきの2回のアーク放電によって行い、3秒間の冷却期間の後、1回のアーク放電による3回目の溶融加工P3を行い、さらに1.5秒間の冷却期間の後、1回のアーク放電による4回目の溶融加工P4を行うという溶融加工プロセスによっても、電極先端部124を、空孔や未溶融部分などの欠陥が残存しない理想的な半球状に形成することができる。
【0030】
あるいは、図7に示すように、1回目の溶融加工P1を0.2秒おきの2回のアーク放電(アーク電流23A)で行い、4秒間の冷却期間の後、1回のアーク放電による2回目の溶融加工P2を行い、さらに1.5秒間の冷却期間の後、1回のアーク放電による3回目の溶融加工P3を行うという溶融加工プロセスも、電極先端部124を完全な半球状に形成できる確率がやや劣るものの、許容範囲である。
【0031】
なお、電極102の材料となる、タングステン電極軸122および2層巻コイル123の材料としては、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Si、Sn、Na、K、Mo、U、およびThなどの副成分組成の総含有量を5ppm以下に抑制した、いわゆるノンドープの高純度タングステンを用いることが好ましい。さらに、上記副成分組成のうち、NaおよびKのアルカリ金属と、Fe、Ni、Cr、およびAlとの合計含有量を3ppm以下とすることが好ましい。
【0032】
以下、本実施の形態にかかる高圧水銀ランプについて本願発明者らが行った、ランプ寿命中の光束維持率などの寿命特性を調べる試験の内容、及びその結果について説明する。
まず、第1の試験として、本願発明者らは、本実施の形態の高圧水銀ランプの寿命特性のばらつきを調べた。ここで、本実施の形態にかかる高圧水銀ランプとしての試験ランプは、図5に示した放電加工サイクルによって先端部124を形成した電極102(及び103)を備えた構成とした。また、比較のために、従来の高圧水銀ランプを準備し、同様に試験を行った。なお、この従来の高圧水銀ランプにかかる試験ランプは、本実施形態にかかる高圧水銀ランプの電極102(及び103)の代わりに図20(b)に示した電極921を備えた構成とした。
【0033】
なお、従来のランプにかかる試験ランプの電極921は、図20(a)に示すように、線径0.4mmのタングステン電極軸922に線径0.2mmのタングステン線を2層巻したタングステンコイル923(コイル巻数8ターン)を固定し、次いで前記タングステン電極軸922とタングステンコイル923との先端部に、アルゴンプラズマ溶接装置による溶融加工を行い、図20(b)に示すように電極先端部924が半球状になるよう形成する、という製造プロセスで作製した。
【0034】
なお、電極先端部92に対する溶融加工プロセスは、タングステン電極軸922およびタングステンコイル923の先端と、図4に示したアルゴンプラズマ溶接装置400の電極(陰極)401の先端との距離Dpを1.0mmに設定・保持し、20Aのアーク電流による1.0秒間のアーク放電を1回のみ行う、という従来行われている単発の放電アーク加工により実施した。
【0035】
また、タングステン電極軸922およびタングステンコイル923の材料としては、タングステンに対する前述の副成分組成の総含有量の上限値を10ppmに抑制したいわゆるノンドープの高純度タングステンを用いた。一方、本実施形態にかかるランプとしての試験ランプについては、電極102及び103の材料として、上記の副成分組成の総含有量が5ppm、かつそのうちのアルカリ金属NaおよびKと、Fe、Ni、CrおよびAlの合計含有量が3ppmの、さらに高純度のタングステンを用いた。
【0036】
なお、この試験に際しては、すべての試験ランプにおいて、入力は150Wに設定し、発光管101の管寸法は、管中央部の最大管外径Do(図1参照)を9.4mmとし、最大管内径Di(図1参照)を4.4mmとした。また、電極先端部の電極間距離Deを1.1mm、管全内容積を0.06cm3、管全長Lo(図1参照)を57mmに設定した。また、管内に、水銀11.4mg(管内容積比質量にして190mg/cm3、点灯時の水銀蒸気圧約190barに相当)と、アルゴン200mbarとを封入した。
【0037】
上記の条件により、本実施形態にかかる高圧水銀ランプと従来の高圧水銀ランプとの各々について数点の試験ランプを準備し、これらの試験ランプの各々を、図2に示したようなランプユニット300に組み立て、3.5時間点灯/0.5時間消灯サイクルのエイジングにより、寿命試験を行なった。なお、ランプの寿命中の光束維持率としては、ANSI規格IT7.215−1992に基づき、ランプユニット300によるスクリーン面上9点の中心照度の平均値、すなわち平均照度を測定し、これから求めた平均照度維持率(エイジング時間3時間の平均照度に対する比率)でもって見積もった。
【0038】
以上の条件で寿命試験を行った結果を図8および図9のグラフに示す。図8に、本実施形態にかかるランプとして準備した試験ランプの寿命特性を示し、図9に、従来のランプとして準備した試験ランプの寿命特性を示す。
図8から分かるように、本実施形態にかかるランプとしての試験ランプは、すべて、500時間以内のエイジング時間で光束維持率が50%以下に低下することがない。特に、グラフg3、g4、およびg5にその特性を示した試験ランプは、エイジング時間3000時間以上でも50%以上の光束維持率を保ち、言い換えれば、3000時間以上の長い寿命時間をもつ。
【0039】
一方、図9から分かるように、従来のランプとしての試験ランプは、エイジング時間500時間で光束維持率が50%以下のレベルにまで大きく低下してしまう特性を持つもの(図9のグラフg11・g12)から、エイジング時間3000時間でも光束維持率が50%以上の高いレベルを保つ特性を持つもの(グラフg16)まで、ランプ間で寿命特性に大きなバラツキがある。
【0040】
この場合、光束維持率が低下した試験ランプでは、一様に発光管黒化が発生し、併せてエイジング時間が1000時間以上と長くなるにつれて発光管石英の失透現象(石英の再結晶化による白濁現象)も観測された。光束維持率が50%以下となった試験ランプは、黒化もしくは失透現象がさらに進むことにより、発光管101の特に上部の温度が上昇して膨らみ、破損にいたる。なお、図8および図9に、試験ランプが破損した時点を×印で示した。
【0041】
また、寿命試験終了後の試験ランプの電極を切断するなどして調べてみると、特に、500時間以内の短いエイジング時間で光束維持率が50%以下まで低下した試験ランプ(従来のランプ)では、電極先端部の溶融・加工状態が一様でないことが分かった。すなわち、例えば図10(a)に示すように、溶融された半球状先端部924に空孔925が存在していたり、図10(b)に示すように、半球状先端部924になるべき個所のタングステンコイル923が部分的に未溶融の状態で残されている等の、溶融加工プロセスに基づく欠陥が見出された。
【0042】
このような欠陥が生じる理由は以下のとおりである。すなわち、電極先端部の溶融加工を行う際に従来採用されている単発の放電アーク加工では加工温度の適切な制御が難しく、特に、電極先端部の温度が局所的にしかも急激かつ過度に上昇するため、空孔や未溶融部分が残存するからである。
これに対して、本実施形態にかかるランプは、電極先端部124を半球状に形成するための溶融加工プロセスが、従来の単発のアーク放電による方法ではなく、1回ないし複数回のアーク放電による溶融加工を間欠的に複数回行うものであり、なおかつ溶融加工の合間に冷却期間を設けたことにより、電極先端部の温度上昇が全体的に一様となり、また加工温度制御が容易となる。これにより、電極102(及び103)の先端部124に空孔や未溶融部分などの欠陥が残存せず、優れた寿命特性を示す。
【0043】
また、上記の試験において1000〜3000時間までのエイジング時間で光束維持率が50%以下に低下した試験ランプ(図9のg13〜g15)に関しては、電極921の先端部924の溶融加工状態は、一見したかぎりでは一様で適切であるように見えるが、そのタングステン結晶状態も含めて詳細に調べてみると、ひとつの特徴として、エイジング時間3000時間でも50%以上の光束維持率を保った試験ランプの電極に比べて、タングステン結晶粒径がより小さいことが観測された。
【0044】
電極先端部では、通常、溶融加工プロセスにおいて図11に示すような放射状に結晶が成長しており、その結晶粒径の大きさは、溶融加工プロセスの条件に依存している。なお、タングステン結晶の平均粒径daは、図11に示す、各結晶の放射方向の最長寸法d1と、このd1の2分垂線の寸法d2との平均値として定義した。
【0045】
溶融加工プロセスにおける各種の条件(アーク電流の大きさ、放電時間の長さ、各溶融加工におけるアーク放電の回数およびその間隔、冷却時間の長さ、その等様々な条件)と結晶粒径の大きさとの相関関係を一義に導き出すことは非常に困難であるが、基本的には、溶融加工時の加工温度が高く、かつ加工時間が長くなるにつれて、結晶粒径が大きくなることを、本願発明者らは見いだした。
【0046】
そこで、本願発明者らは、ランプの電極先端部に対する溶融加工プロセスにおける各種の条件を、(i)1回ないし複数回のアーク放電による溶融加工を間欠的に複数回行う、(ii)溶融加工の合間に冷却期間をもうける、の二つの条件を満たす範囲内で様々に変えることにより、その溶融加工状態およびタングステン結晶状態(結晶粒径)が互いに異なる電極サンプルを作製し、それらを用いて、電極先端部のタングステン結晶の平均粒径(複数個の代表的粒状結晶の粒径の平均値)と、光束維持率などのランプ寿命特性との相関関係を調べる第2の試験を行った。
【0047】
なお、この第2の試験に際して、電極材料のタングステンに対する副成分組成の総含有量を5ppmとし、かつ、上記副成分組成中のアルカリ金属NaおよびKと、Fe、Ni、CrおよびAlの合計含有量を3ppmとした。
この第2の試験の結果、図12に示すように、電極先端部のタングステン結晶の平均粒径daが大きいものほど、より良い寿命特性が得られることが確認された。特に、平均粒径daが100μm以上の試験ランプ(図12のグラフg24〜g26)になると、寿命特性の改善効果が急激に大きくなり、エイジング時間3000時間で50%以上という、好ましいランプ光束維持率が保たれることが確認された。すなわち、平均粒径daが100μm以上であれば、寿命時間が3000時間以上の高圧水銀ランプを得ることができる。
【0048】
さらに、平均粒径daの値が200μm以上になると(図12のグラフg26)、エイジング時間6000時間でも50%以上(すなわち寿命時間が6000時間以上)というより高いレベルの光束維持率が達成されることも確かめられた。
例えば、図5に示した放電加工サイクルで溶融加工を行った場合の電極先端部のタングステン結晶の平均粒径daは200μmとなり、図12には表れていないが、エイジング時間6000時間において51%のランプ光束維持率が得られた。また、図6に示した放電加工サイクルで溶融加工を行った場合も同様に、電極先端部のタングステン結晶の平均粒径daが200μmとなり、好ましい特性が得られた。
【0049】
また、タングステン結晶の平均粒径が大きくなると、発光管101の黒化現象が抑制されることも確認された。従って、ランプ光束維持率が改善される理由は、発光管黒化をもたらす、電極先端部からのタングステンの蒸発が抑制されるからであるといえる。さらに、電極先端部の結晶粒径の増大につれてその熱伝導性が良くなり、電極後方への熱伝導が促進されて、電極先端部の温度低下が大きくなることも、光束維持率の改善理由であるといえる。
【0050】
さらに、本願発明者らは、図5に示した放電加工サイクルで電極先端部の溶融加工を行った本実施形態にかかる高圧放電ランプを用いて、電極のタングステン材料純度とランプ光束維持率との相関関係を調べる第3の試験を行った。その結果を図13に示す。
図13において、Tは各試験ランプの電極材料における副成分組成の総含有量(単位はppm)であり、Aはその副成分組成中のアルカリ金属NaおよびKと、Fe、Ni、CrおよびAlの合計含有量(単位はppm)を表す。例えば、グラフg31でその特性を示す試験ランプの場合、電極材料における副成分組成の総含有量は10ppm、その副成分組成中のアルカリ金属NaおよびKと、Fe、Ni、CrおよびAlの合計含有量は5ppmである。
【0051】
図13から分かるように、副成分組成の総含有量を10ppmよりも低く低減して材料純度を高めるにつれてランプ光束維持率が改善され、特に、副成分組成のうちでもアルカリ金属Na、KとFe、Ni、CrおよびAlの含有量低減が光束維持率への改善効果が大きい。特に、ランプ寿命時間(光束維持率が50%以下に低下するまでのエイジング時間)を3000時間以上とするためには、副成分組成の総含有量を5ppm以下とし、かつ、その副成分組成中のアルカリ金属Na、KとFe、Ni、CrおよびAlの合計含有量を3ppm以下とすることが好ましいことが確認された。
【0052】
タングステン電極材料中の副成分組成物質がランプ寿命特性に及ぼす影響としては、(i)エイジングによりタングステン材料から蒸発したアルカリ金属などの副成分物質と封入ハロゲンが反応してしまうことにより、発光管の黒化抑制のためのハロゲンサイクル作用に本来必要とするハロゲン量が不足する、(ii)蒸発した副成分組成物質の一部が発光管の石英と反応して再結晶化のための結晶核となり、石英の失透現象を加速させる、という2つが挙げられる。
【0053】
上記第3の試験において確認されたように、本実施形態にかかる高圧水銀ランプでは、電極材料におけるタングステン以外の副成分組成の総含有量と、上記副成分組成中のアルカリ金属等の特定金属の合計含有量をより低減させた高純度タングステン電極を用いることにより、エイジングによる発光管黒化と発光管石英の失透現象との2つが抑制されている。
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0054】
第1の実施の形態にて説明したように、放電アーク加工によっても、間欠的な加熱溶融を行うことにより、電極先端部の形状等のバラツキを抑制することは可能であるが、本願発明者らは第1の実施の形態の方法よりも加工精度の高い電極製造方法について更に検討したところ、レーザ加工方法が原理的に優れていることが推測された。即ち、レーザ加工方法に用いるレーザビームは、照射位置や出力などをより精度よく制御して電極先端部124に照射できるので、それだけ電極先端部124の加工形状、寸法のバラツキを少なくすることができるのではないかと推測された。
【0055】
そこで本願発明者らは、レーザ加工方法による電極製造方法について検討を行った。レーザとしては金属加工に適したCO2レーザ、レーザ・ダイオード(LD、半導体レーザ)などを用いることができるが、今回は波長1064nmを放射するNd−YAGパルスレーザを用いた。具体的には、まず電極先端部124を溶融、加工するに際して、より加工精度を高めることができる上記レーザ加工方法での製造プロセス条件について検討を行った。次いで、実際にそのような製造プロセス条件のもとでレーザ加工方法により作製した電極を用いた試験ランプを準備して、ランプ電圧及び光束維持率などのランプ特性を測定した。また、同時に溶融、加工された前記電極先端部124の加工形状、寸法を観測して、測定したランプ特性との相関関係を調べた。
【0056】
図14は、本実施の形態において電極先端部124の溶融加工に用いるNd−YAGレーザ溶融装置500の概略構成を示す図である。なお、同図において、501は、内部に電極を設置するためのチャンバー、502は、波長1064nmのNd−YAGパルスレーザの発振装置、503は光ファイバー、504は光学系である。
【0057】
ここで、前記電極先端部124の加工は、(1)アルゴン雰囲気中のチャンバー501の内部にタングステン電極軸122に2層巻タングステンコイル123を固定したものを設置し、(2)前記タングステン電極軸122及び前記2層巻タングステンコイル123の先端部にレーザ照射を行うことにより溶融加工するという二つの製造プロセスにより行うことができる。
【0058】
なお、電極加工方法を除き、本検討で用いた試験ランプの具体的なランプ設計は、第1の実施の形態と同一とした。即ち、ランプ入力は150Wに設定し、前記発光管101の管寸法は、管中央部の最大管外径Do(図1参照)を9.4mm、最大管内径Di(図1参照)を4.4mm、二本の電極102及び103それぞれの電極先端部124間の距離である電極間距離Deを1.1mm、管全内容積を0.06cm3、管全長Lo(図1参照)を57mmに設定した。また発光管101内には水銀11.4mg(管内容積比質量にして190mg/cm3、点灯時の水銀蒸気圧約190barに相当する。)とアルゴン200mbarを封入した。なお、本実施の形態におけるタングステン電極軸122およびタングステンコイル123の材料としては、タングステンに対する前述の副成分組成の総含有量の上限値を10ppmに抑制したいわゆるノンドープの高純度タングステンを用いたが、第1の実施の形態と同様、上記の副成分組成の総含有量が5ppm、かつそのうちのアルカリ金属NaおよびKと、Fe、Ni、CrおよびAlの合計含有量が3ppmの、さらに高純度のタングステンを用いることが、より好ましいことは勿論である。
【0059】
また、前記試験ランプの寿命試験及び光束維持率などの特性測定も第1の実施の形態と同様に行った。即ち、試験ランプの寿命試験は、図2に示した前記ランプユニット300に組み立て、3.5時間点灯/0.5時間消灯サイクルのエイジングにより行なった。また、試験ランプの光束維持率としては、ANSI規格IT7.215−1992に基づき、前記ランプユニット300によるスクリーン面上9点の中心照度の平均値、すなわち平均照度を測定し、これから求めた平均照度維持率(エイジング時間3時間の平均照度に対する比率)でもって見積もった。
【0060】
以上のような検討を行った結果、次の知見が得られた。
まず、レーザ加工方法による製造プロセス条件の一つとして、連続的にレーザ照射を行った場合の結果を図15に示す。同図に示されるように、前記電極先端部124の加工形状が半球状よりもむしろ球状に近くなり、電極先端部124の加工方法としては不適切であることがわかった。これは、連続的にレーザ照射をすると、電極先端部の加工温度が急激に、かつ過度に上昇して前記電極先端部124が溶融し過ぎることになるからであると考えられる。
【0061】
以上のような知見に基づき、本願発明者らは、製造プロセス条件として、所定回数のレーザ照射を、所定の時間間隔でもって繰返し行うことが好適であることを見出した。これが、本実施の形態におけるレーザ加工方法における基本的な製造プロセス条件である。これにより、前記電極先端部124の溶融、加工を行うに際しての加工温度を適切な範囲に制御することができるので、加工形状が半球状により近づくように調整することが可能となる。
【0062】
なお、この場合のレーザ照射の時間間隔を規定する繰返し周波数としては、1Hzから20Hzの範囲とすることが適切であることがわかった。この繰返し周波数は、レーザ発振装置502において公知の方法で制御することが可能である。図16に、本発明に係る電極製造方法の基本的な製造プロセス条件に基づき、本願発明者らが設定したレーザ照射サイクルの典型例を示す。同図に示される例は、合計5回のレーザ照射を繰返し周波数4Hzにて間欠的に行うことで溶融、加工を行う場合の例である。なお、第1の実施の形態においては、アーク放電の回数により加工温度の制御を行ったが、本実施の形態では、レーザの出力を調整することにより前記と同様の効果を得ている。即ち、図16の例において、最後(5回目)のレーザ照射では、それまでのレーザ照射と比較してレーザの出力をやや小さくしているが、これにより、徐冷しながらの再結晶化がなされるという、アーク放電の回数による制御と同様の効果が得られるからである。もっとも、第1の実施の形態と同様、間欠的なレーザ照射の間の時間間隔の設定制御を行うようにしてもよい。
【0063】
また、徐冷しながら再結晶を行う方法として、最後のレーザ照射でそれまでのレーザ照射と比較してレーザの出力を小さくする方法以外に、最後の複数回のレーザ照射のレーザ出力を徐々に小さくしていってもよい。
このときの電極先端部124の加工形状の一例を図17に示す。同図に示されるように、間欠的なレーザ照射を行うレーザ加工方法の結果、電極先端部124の加工形状は、ほぼ半球状となり、かつ加工寸法のバラツキも少なく抑制、改善されことが確認された。なお、結晶粒径については、200μm以上の平均粒径が実現されることが確認された。
【0064】
次に、上記のようなレーザ加工方法を用いて電極先端部124の溶融、加工を行った電極を用いた試験ランプを複数作製し、主としてランプ間のランプ特性のバラツキの検出を目的として試験を行った結果について説明する。
本検討では、まずエイジング時間1時間後のランプ電圧Vlaを測定した。その結果、複数のランプ間のランプ電圧のバラツキがVla=61±5Vと小さくなることが判明した。このようなバラツキ抑制は、電極先端部124の加工精度が高くなった結果、加工形状、寸法がより一様となり、係る電極を用いた場合に実質的な電極間距離Deのバラツキが低減されることによると考えられる。即ち、電極先端部124の形状にバラツキがあると、定常点灯時の放電アークが両電極間の中心軸上から外れ、これにより実質的な電極間距離Deが設計値より長くなり、ランプ電圧が本来の定格値よりも高くなる場合が生じるが、本実施の形態の方法を用いることにより、係るバラツキが低減されたことを示している。
【0065】
一方、ランプのエイジング時間3000時間後の光束維持率φlaを測定したところ、φla=78±8%となり、ランプ間のバラツキが小さくなることがわかった。従って、本願発明者らが目標として設定した3000時間以上のランプ寿命時間を、より確実に実現できることが確認された。
なお、この光束維持率のバラツキの改善も、電極先端部124の加工形状、寸法がより一様となり、複数のランプ間でのランプ点灯時の電極温度のバラツキが少なくなり、タングステン物質の蒸発の状態がランプ間で比較的変動しなくなるからであると考えられる。
【0066】
以上に説明したように、所定回数のレーザ照射を間欠的に行うことにより電極先端部124の溶融、加工を行うというプロセス条件を用いるレーザ加工方法で電極の製造を行うことにより、前記電極先端部が、より確実に半球状の形状を有するように加工されるとともに、その加工形状、寸法のランプ間のバラツキが抑制されるため、ランプ電圧や光束維持率などのランプ特性のバラツキを抑えることができ、これによって従来よりもアーク長を短くした高圧放電ランプにおいて、より確実に長寿命化を図ることができるようになることが確認された。
【0067】
<変形例>
以上、本発明を種々の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明の内容が、上記実施の形態に示された具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を考えることができる。
(1)即ち、上記各実施の形態では、ランプ入力を150Wに設定したが、本発明に係る製造方法は、他のランプ入力の製品に適用することも可能である。ランプ入力の値により、電極軸122の線径やコイル123の線径などを変える必要がある場合も有り得るが、その場合にはそれぞれの条件に対応して、アーク放電の回数や間隔、冷却時間の長さ、アーク電流の大きさ等の各条件(アーク放電による加工による場合)、レーザ照射の出力や繰返し周波数等の条件(レーザ照射による場合)などを適宜変更すればよい。上記に説明した間欠的な放電アーク加工やレーザ加工の原理、及びそれらに基づき加工形状、寸法のバラツキが抑制される理由に鑑みれば、本願発明者らの見出したプロセス条件、即ち、間欠的な加熱溶融を行うという本発明の範囲内における各条件の最適化は、通常は容易に行うことができるものであると考えられる。
【0068】
(2)また、上記第2の実施の形態では、繰返し周波数4Hzの例、即ち、レーザ照射の時間間隔が一定である場合の例を示した(図16参照)。これは、レーザ発振装置502内の制御回路の構成が容易にできる点で好ましいのであるが、レーザ照射の時間間隔は必ずしも一定である必要はなく、例えば、前記したように、最初の数回のレーザ照射の時間間隔とその後のレーザ照射の時間間隔とに変化をつけるようにする等の時間間隔制御を行うようにしてもよい。
【0069】
(3)また、上記各実施の形態では、電極軸122に2層巻コイル123を巻回したが、電極軸122の放電側先端部分を被覆する部材についてもコイルに限定されるわけではなく、例えば円筒状の部材などを用いることも可能である。また、コイルも必ずしも2層巻きである必要はないし、巻数も8ターンに限定されるわけではない。
【0070】
(4)また、上記各実施の形態では、電極軸122及びコイル123にタングステンを主成分とする材料を用いたが、他の難溶性金属材料を主成分として用いる電極に適用することも可能である。
【0071】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る高圧放電ランプでは、先端部におけるタングステン結晶の平均粒径が100μm以上である電極を用いることにより、ランプの長寿命化が達成されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る高圧水銀ランプの構成を示す図である。
【図2】ランプユニット300の構成を示す一部切り欠き側面図である。
【図3】(a)電極102及び103の製造プロセスについて説明するための図である。
(b)電極102及び103の製造プロセスについて説明するための一部断面図である。
【図4】第1の実施の形態において電極先端部の加工に用いたアルゴンプラズマ溶接装置の基本構成を模式的に示す図である。
【図5】第1の実施の形態における、前記アルゴンプラズマ溶接装置による放電加工サイクルの一例を示す波形図である。
【図6】第1の実施の形態における、前記アルゴンプラズマ溶接装置による放電加工サイクルの他の例を示す波形図である。
【図7】第1の実施の形態における、前記アルゴンプラズマ溶接装置による放電加工サイクルのさらに他の例を示す波形図である。
【図8】第1の実施の形態における高圧放電ランプの、エイジング時間に対する光束維持率の変化を示す図である。
【図9】比較例としての試験ランプ(従来の高圧放電ランプ)について、エイジング時間に対する光束維持率の変化を示す図である。
【図10】前記比較例としての試験ランプにおいて生じた電極先端部の欠陥を示す一部断面図である。
【図11】第1の実施の形態に係る高圧放電ランプの電極先端部のタングステン結晶を示す断面図である。
【図12】電極先端部のタングステン結晶の平均粒径をそれぞれ異ならせた試験ランプについて、エイジング時間に対する光束維持率の変化を示す図である。
【図13】電極材料の副成分組成の割合と副成分組成中の特定金属の割合とをそれぞれ異ならせた試験ランプについて、エイジング時間に対する光束維持率の変化を示す図である。
【図14】第2の実施の形態において電極先端部124の溶融加工に用いるNd−YAGレーザ溶融装置500の概略構成を示す図である。
【図15】連続的にレーザ照射を行うことにより溶融加工された電極先端部124付近の断面図である。
【図16】本発明に係る電極製造方法の基本的な製造プロセス条件に基づき、本願発明者らが設定したレーザ照射サイクルの典型例を示す。
【図17】5回のレーザ照射を繰返し周波数4Hzにて間欠的に行うことで溶融加工された電極先端部124付近の断面図である。
【図18】従来のタングステン電極の一例を示す図である。
【図19】従来のロングアーク型の一般照明用高圧放電ランプに用いられていたタングステン電極の一例を示す図である。
【図20】電極軸の放電側先端部にコイルを巻回し、先端部を溶融加工してほぼ半球状の電極先端部を形成した従来の電極及びその製造方法について説明するための図である。
【符号の説明】
101 発光管
102、103 電極
104、105 封止部
106、107 モリブデン箔
108、109 モリブデンリード線
110 水銀
111 放電空間
120 口金
122 電極軸
123 コイル
124 電極先端部
200 完成ランプ
210 反射ミラー
300 ランプユニット
400 アルゴンプラズマ溶接装置
401 電極(陰極)
500 Nd−YAGレーザ溶融装置
501 チャンバー
502 Nd−YAGレーザ発振装置
503 光ファイバー
504 光学系

Claims (4)

  1. 電極軸に被覆部材が取り付けられてなり、高純度タングステンからなる高圧放電ランプ用電極において、
    前記被覆部材が取り付けられた部分の放電側先端部は、間欠的な加熱溶融加工により半球状に成形されており、かつタングステン結晶の平均粒径が100μm以上である
    ことを特徴とする高圧放電ランプ用電極。
  2. 前記高純度タングステンのうちタングステン以外の副成分元素の総含有量が10ppm以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ用電極。
  3. 前記高純度タングステンのうちタングステン以外の副成分元素の総含有量が5ppm以下、かつ前記副成分元素のうちのNa、K、Fe、Ni、Cr、及びAlの総含有量が3ppm以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ用電極。
  4. 高純度タングステンから成り、先端部が半球状に成形された一対の電極が、発光管内に当該先端部を対向させて配置された高圧放電ランプにおいて、
    前記一対の電極の少なくとも一方が請求項1〜3のいずれか1項に記載の高圧放電ランプ用電極である
    ことを特徴とする高圧放電ランプ。
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