JP4845267B2 - レーザアニール装置およびレーザアニール方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透光性基板上の非晶質シリコン半導体にエキシマレーザを照射して、この非晶質シリコン半導体を多結晶シリコン半導体にするレーザアニール装置およびレーザアニール方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アクティブマトリクス型の液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)は、非晶質シリコン半導体であるアモルファスシリコン(a-Si)を用いた薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)から、多結晶シリコン半導体であるポリシリコンを用いた薄膜トランジスタへと移行されつつある。
【0003】
これは、アモルファスシリコンに比べ、ポリシリコンの電界移動度(μFE)が高いためであり、液晶ディスプレイの駆動も含めた高性能化が可能となるからである。
【0004】
また、ポリシリコンは、エキシマレーザアニール法により形成するのが主流であり、このエキシマレーザアニール法は、アモルファスシリコンにエキシマレーザを照射して、このアモルファスシリコンをアニールすることにより、このアモルファスシリコンをポリシリコンにする。さらに、このエキシマレーザアニール法では、エキシマレーザに対して透光性基板としてのガラス基板の位置を順次移動して、このガラス基板上に設置したアモルファスシリコンの所望の領域をポリシリコンにする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のエキシマレーザアニール法では、アモルファスシリコンをアニールすることにより形成されるポリシリコンの表面に凹凸である突起が形成されてしまうため、このポリシリコンを用いて製造した薄膜トランジスタのゲートリーク電流が増大しやすい。
【0006】
そして、ゲートリーク電流の増加を避けるためには、薄膜トランジスタのゲート酸化膜の膜厚を厚くする必要がある。ところが、薄膜トランジスタのゲート酸化膜の膜厚を厚くすると、この薄膜トランジスタの駆動電流を稼ぐことができず、ポリシリコンが本来有する高速スイッチング性能を確保できず、液晶ディスプレイヘのモノリシックポリシリコンDAコンバータ搭載や120ピクセル/cmなどの高性能かつ高精細な液晶ディスプレイの実現を阻害してしまうという問題を有している。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、アニール時に形成される多結晶シリコン半導体の表面の突起を低減できるレーザアニール装置およびレーザアニール方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一主面に非晶質シリコン半導体薄膜を堆積した透光性基板が設置されるステージと、このステージ上に設置された前記透光性基板上の非晶質シリコン半導体に向けてレーザビームを照射して、前記非晶質シリコン半導体をアニールし、この非晶質シリコン半導体を多結晶シリコン半導体にするレーザ発振手段と、前記ステージ上に設置された前記透光性基板上の前記レーザビームが照射される領域を囲う雰囲気制御手段と、この雰囲気制御手段内に異なるガスを供給し得る複数のガス供給手段と、このガス供給手段により供給された前記雰囲気制御手段内のガスを排気する排気調整手段とを具備し、前記ガス供給手段は、前記雰囲気制御手段内に窒素ガスを供給する窒素ガス供給ラインと、前記雰囲気制御手段内に窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給する混合ガス供給ラインとを備えているものである。
【0009】
そして、この構成では、ステージ上に設置させた透光性基板の一主面に堆積した非晶質シリコン半導体に向けてレーザ発振手段によりレーザビームを照射して、非晶質シリコン半導体を多結晶シリコン半導体にする際に、雰囲気制御手段の雰囲気を、窒素ガスを供給する窒素ガス供給ラインと、前記雰囲気制御手段内に窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給する混合ガス供給ラインとを備えるガス供給手段および排気調整手段により適宜に変換して非晶質シリコン半導体をアニールすることにより、この非晶質シリコン半導体をアニールした際に形成される多結晶シリコン半導体の表面の突起が低減可能となる。
【0010】
また、透光性基板上の非晶質シリコン半導体に向けてレーザビームを照射して、前記非晶質シリコン半導体をアニールし、この非晶質シリコン半導体を多結晶シリコン半導体にする際に、第1の雰囲気でアニールする第1レーザアニール工程と、前記レーザビームを一旦遮断して前記第1の雰囲気とは異なる第2の雰囲気に変換した後、この第2の雰囲気で前記レーザビームを照射してアニールする第2レーザアニール工程とを有するものである。
【0011】
そして、この構成では、雰囲気の異なる第1レーザアニール工程および第2レーザアニール工程それぞれで、透光性基板上の非晶質シリコン半導体をレーザビームの照射でアニールすることにより、この非晶質シリコン半導体から形成される多結晶シリコン半導体の表面の突起が低減可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のレーザアニール装置の一実施の形態の構成を図1および図2を参照して説明する。
【0013】
図1に示すレーザアニール装置は、透光性基板であるガラス基板5の一主面上に成膜した非晶質シリコン半導体であるアモルファスシリコン(a-Si)7の薄膜に向けて、キセノンクロライド(XeCl)などからなるパルスレーザであるレーザビームとしてのエキシマレーザビームBを照射して、ガラス基板5上のほぼ全面に位置するアモルファスシリコン7をレーザアニールし、このアモルファスシリコン7を多結晶シリコン半導体であるポリシリコン2にする。
【0014】
さらに、このレーザアニール装置は、エキシマレーザビームBを発振するレーザ発振手段であるレーザ発振器11を備えている。このレーザ発振器11から発振されたエキシマレーザビームBは、光学系の第1のモジュール21および第2のモジュール31を通り、アニールチャンバ30内のステージ40上に設置されたガラス基板5上のアモルファスシリコン7面では線状となる。また、このレーザ発振器11により発振されるエキシマレーザビームBは、アニールチャンバ30内のステージ40上に設置されたガラス基板5上で最終的に焦点が結ばれるように調整されている。
【0015】
また、ステージ40をこの線状の長手方向に交差する方向にスキャンして、エキシマレーザビームBをアモルファスシリコン7に照射する。
【0016】
さらに、このレーザ発振器11は、レーザ本体12を備えており、このレーザ本体12内には、エキシマレーザビームBの発振源であるディテクタ13が取り付けられている。このディテクタ13は、フォトダイオード(Photo diode)により形成されている。また、このディテクタ13にて発振されたレーザビームは、このディテクタ13の光路前方に配設された全反射ミラー14により、光路が90°曲げられる。この全反射ミラー14は、レーザ本体12内に配設されている。
【0017】
また、この全反射ミラー14により光路が屈折されたレーザビームの光路前方には、レーザ発振チューブとしてのレーザチューブ15が配設されている。このレーザチューブ15は、レーザ本体12内に配設されており、ディテクタ13から発振されたレーザビームをエキシマレーザビームBにする。さらに、このレーザチューブ15の光路前方および後方のそれぞれには、レーザ発振器11から発振するエキシマレーザビームBを共振させる共振器ミラー16a,16bが配設されている。
【0018】
そして、共振器ミラー16bを通過したエキシマレーザビームBの光路前方には、このエキシマレーザビームBを高速で遮断可能なシャッタ18が配設されている。このシャッタ18は、レーザ本体12内であるレーザ発振器11の近傍に配設されており、このシャッタ18への開閉信号を受信した際に、60±50msの範囲内でエキシマレーザビームBの通過または遮断を完了する。この結果、ステージ40が60mm/sのスピードで移動しても、エキシマレーザビームBの照射開始および終了位置が±3.0mmの範囲に収まる。
【0019】
そして、このシャッタ18を通過したエキシマレーザビームBの光路前方であるレーザ本体12の一側面には、このシャッタ18を通過したエキシマレーザビームBをレーザ本体12の外部へと引き出すプロテクトウインドウ17が取り付けられている。このプロテクトウインドウ17の共振器ミラー16b側の一主面は、アンチリフレクションコートが施されている。
【0020】
さらに、このプロテクトウインドウ17の他主面には、発振されたエキシマレーザビームBを引き込み、このエキシマレーザビームBの透過率を制御する第1のモジュール21が配置されている。この第1のモジュール21内には、プロテクトウインドウ17を通過したエキシマレーザビームBの光路前方には、このエキシマレーザビームBの光路を、例えば90°で全反射させる第1のミラー22が配設されている。この第1のミラー22は、第1のモジュール21内に配設されている。
【0021】
また、この第1のミラー21にて反射されたエキシマレーザビームBの光路前方には、バリアブルアッテネータ23が配置されている。このバリアブルアッテネータ23は、第1のモジュール21内に配設されており、エキシマレーザビームBの透過率を変更する。また、このバリアブルアッテネータ23は、エキシマレーザビームBの透過率を0%から90%の範囲で変更可能なアッテネータ24と、このアッテネータ24を通過したエキシマレーザビームBの光路を補正する補償板としてのコンペンセータ25とを備えている。そして、バリアブルアッテネータ23へと入射したエキシマレーザビームBは、アッテネータ24にて透過率を調整された後、コンペンセータ25でアッテネータ24へと入射する以前の光路へと補正される。これらアッテネータ24およびコンペンセータ25は、石英などで成形されており、互いに相対する方向に向けて連動して回動可能である。
【0022】
そして、このバリアブルアッテネータ23を通過したエキシマレーザビームBの光路前方には、テレスコープ26が配設されている。このテレスコープ26は、第1のモジュール21内に配設されており、複数、例えば2枚のレンズにて構成され、LAH32へと入射するエキシマレーザビームBの大きさ、すなわちビームサイズを調整する。また、このテレスコープ26を通過したエキシマレーザビームBの光路前方には、このエキシマレーザビームBの光路を、例えば90°で反射させる第2のミラー27が配設されている。この第2のミラー27は、第1のモジュール21内に配設されており、入射するエキシマレーザビームBを全反射する。
【0023】
さらに、この第2のミラー27にて全反射されたエキシマレーザビームBの光路前方には、第1のモジュール21に隣接された第2のモジュール31が取り付けられている。そして、第2のミラー27にて反射されたエキシマレーザビームBは、このエキシマレーザビームBの長軸を調整するロングアクシスホモジナイザ、すなわちLAH32へと入射する。このLAH32は、第2のモジュール21内に配設されており、エキシマレーザビームBの長軸をズーミングする図示しない第1のLH(ロングホモジナイザ)および第2のLHと、これら第1のLHおよび第2のLHにて長軸をズーミングしたエキシマレーザビームBの波形を補正する図示しないコンデンサレンズとを有している。
【0024】
そして、LAH32により長軸が調整されたエキシマレーザビームBの光路前方には、このエキシマレーザビームBの短軸を調整するショートアクシスホモジナイザ、すなわちSAH33が配設されている。このSAH33は、第2のモジュール31内に配設されており、エキシマレーザビームBの短軸をズーミングする図示しない第1のSH(ショートホモジナイザ)および第2のSHと、これら第1のSHおよび第2のSHにて短軸をズーミングしたエキシマレーザビームBの波形を補正する図示しないコンデンサレンズとを有している。
【0025】
さらに、SAH33により短軸が調整されたエキシマレーザビームBの光路前方には、短軸スリット34が配設されている。この短軸スリット34は、第2のモジュール31内に配設されている。
【0026】
また、短軸スリット34を通過したエキシマレーザビームBの光路前方には、このエキシマレーザビームBの短軸、およびこのエキシマレーザビームBの時間波形でのスティープネスを調整するフィールドレンズ35が配設されている。このフィールドレンズ35は、第2のモジュール31内に配設されている。さらに、このフィールドレンズ35を通過したエキシマレーザビームBの光路前方には、このエキシマレーザビームBの光路を、90°で反射させる第3のミラー36が配設されている。この第3のミラー36は、第2のモジュール31内に配設されており、入射するエキシマレーザビームBを全反射する。さらに、この第3のミラー36を通過したエキシマレーザビームBの光路前方には、いわゆる5Xレンズといわれるプロジェクションレンズ37が配設されている。このプロジェクションレンズ37は、第2のモジュール31内に配設されている。
【0027】
そして、このプロジェクションレンズ37を通過したエキシマレーザビームBの光路前方には、内部でガラス基板5上のエキシマレーザビームBが照射される領域を囲う雰囲気制御手段38が配設されている。この雰囲気制御手段38内は、エキシマレーザビームBが照射されるガラス基板5上の雰囲気中の酸素濃度が時系列的に複数、例えば2つの異なる濃度、すなわち第1の雰囲気および第2の雰囲気に調整可能である。
【0028】
さらに、これら雰囲気制御手段38およびステージ40などを囲うようにアニールチャンバ30が配置され、このアニールチャンバ30には、外部からエキシマレーザビームBを内部へと照射させるアニーラウインドウ39が設けられている。このアニーラウインドウ39は、プロジェクションレンズ37を通過したエキシマレーザビームBが入射する位置に配設されている。さらに、アニーラウインドウ39と、アニールチャンバ30との間には、これらアニーラウインドウ39およびアニールチャンバ30間を気密にするシール用のOリング39aが取り付けられている。このOリング39aは、気密またはそれに準ずる構造で、外気と接触する部分に対してシール機構が施されている。
【0029】
また、アニールチャンバ30内には、上面にガラス基板5が設置され、このガラス基板5を面方向に向けて走査、すなわち移動させるステージ40が取り付けられている。このステージ40は、設置したガラス基板5を水平方向である互いに直角に交わるそれぞれの方向に向けて走査可能である。
【0030】
ここで、このステージ40上に設置したガラス基板5上は、雰囲気制御手段38により窒素ガスなどの不活性ガスにより雰囲気が調整されている。さらに、このステージ40は、このステージ40上に設置したガラス基板5上のアモルファスシリコン7の薄膜上の全面、すなわち全域にアニーラウインドウ39を通過したエキシマレーザビームBが照射するように形成されている。また、このステージ40は、このステージ40上に設置したガラス基板5上のアモルファスシリコン7のレーザアニールを開始する位置から等速度で移動する。
【0031】
さらに、雰囲気制御手段38には、この雰囲気制御手段38内に異なるガスを供給し得る複数のガス供給手段としての窒素ガス供給ライン41および混合ガス供給ライン42が接続されている。そして、この窒素ガス供給ライン41は、雰囲気制御手段38内に窒素ガスを供給する。また、混合ガス供給ライン42は、雰囲気制御手段38内に窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給する。さらに、これら窒素ガス供給ライン41と混合ガス供給ライン42とは、雰囲気制御手段38の近傍の位置で、互いの下流端が合流接続されている。
【0032】
そして、窒素ガス供給ライン41は、窒素ガスの流量を調整してこの窒素ガスを雰囲気制御手段38内に供給する流量調整制御手段としての第1の窒素ガス流量制御部43と、第2の窒素ガス流量制御部44とを備えている。これら第1の窒素ガス流量制御部43と第2の窒素ガス流量制御部44とは、雰囲気制御手段38より手前の位置で、互いに接続されている。
【0033】
また、これら第1の窒素ガス流量制御部43および第2の窒素ガス流量制御部44を合流接続した位置と、雰囲気制御手段38との間には、この雰囲気制御手段38内に供給した混合ガスを窒素ガスに入れ換える動作を促進させるガス交換促進手段である窒素ガスバルブ45が接続されている。
【0034】
さらに、混合ガス供給ライン42は、窒素ガスの流量を調整してこの窒素ガスを雰囲気制御手段38内に供給する流量調整制御手段としての第3の窒素ガス流量制御部46と、酸素ガスの流量を調整してこの酸素ガスを雰囲気制御手段38内に供給する流量調整制御手段としての酸素ガス流量制御部47とを備えている。そして、これら第3の窒素ガス流量制御部46および酸素ガス流量制御部47のそれぞれの下流端は、これら第3の窒素ガス流量制御部46および酸素ガス流量制御部47から供給される窒素ガスと酸素ガスとを均一な濃度に混合させるミキシングタンク48にそれぞれ接続されている。
【0035】
このミキシングタンク48の下流端は、このミキシングタンク48内で混合した混合ガスを雰囲気制御手段38内に供給するためこの雰囲気制御手段38に接続されている。そして、このミキシングタンク48と雰囲気制御手段38との間には、この雰囲気制御手段38内に供給した混合ガスを窒素ガスに入れ換える動作を促進させるガス交換促進手段である酸素ガスバルブ49が接続されている。
【0036】
また、アニールチャンバ30には、窒素ガス供給ライン41と混合ガス供給ライン42とにより供給されたガスを排気する排気調整手段51が接続されている。この排気調整手段51は、アニールチャンバ30内を主として排気する主排気ライン52と、この主排気ライン52の内径寸法より細い内径寸法を有し、アニールチャンバ30内を補助的に排気する副排気ライン53とを備えている。
【0037】
そして、主排気ライン52には、この主排気ライン52内を通過するガスの流量を調整する主排気コンダクタンス調整バルブ54が接続されている。この主排気コンダクタンス調整バルブ54には、この主排気ライン52内を通過するガスの流量が調整可能な流量調整弁としての第1のニードル弁55が取り付けられている。また、この主排気ライン52の上流端は、アニールチャンバ30に接続されている。
【0038】
さらに、副排気ライン53には、この主排気ライン52内を通過するガスの流量を調整する複数、例えば2台の副排気コンダクタンス調整バルブ56,57が直列に接続されている。そして、上流側に位置する副排気コンダクタンス調整バルブ56の上流端は、アニールチャンバ30に接続されており、この副排気コンダクタンス調整バルブ56には、この副排気コンダクタンス調整バルブ56内を通過するガスの流量が調整可能な流量調整弁としての第2のニードル弁58が取り付けられている。また、下流側に位置する副排気コンダクタンス調整バルブ57の下流端は、主排気コンダクタンス調整バルブ54より下流側で主排気ライン52に接続されている。
【0039】
次に、上記レーザアニール装置で製造されるポリシリコンを用いた薄膜トランジスタの構成を図2を参照して説明する。
【0040】
まず、略透明な絶縁性を有するガラス基板5の一主面上に、このガラス基板5からの不純物の拡散を防止する絶縁性のアンダーコート層6が成膜されている。このアンダーコート層6は、SiNxからなる層50nmと、SiOxからなる層100nmとをプラズマCVD法で成膜することにより形成されている。
【0041】
そして、このアンダーコート層6上には、島状のポリシリコン2が成膜されている。このポリシリコン2は、ガラス基板5上に堆積させたアモルファスシリコン7に向けてエキシマレーザビームBを照射して、このアモルファスシリコン7をレーザアニールすることにより形成されている。また、このポリシリコン2の膜厚は、約50nmである。
【0042】
また、このポリシリコン2を含むアンダーコート層6上には、絶縁性を有するシリコン酸化膜などでゲート酸化膜63が成膜されている。
【0043】
そして、このゲート酸化膜63上には、モリブデン−タングステン合金(MoW)などが成膜されて、ゲート電極64が形成されている。
【0044】
また、ポリシリコン2の両側域には、ソース領域67とドレイン領域68とが形成されている。さらに、ドーピングされていないゲート電極64の下方に位置するポリシリコン2がチャネル領域69となる。
【0045】
そして、ゲート酸化膜63およびゲート電極64上には、シリコン酸化膜などで形成された層間絶縁膜71が成膜されている。また、この層間絶縁膜71とゲート酸化膜63とには、これら層間絶縁膜71およびゲート酸化膜63を貫通し、ソース領域67およびドレイン領域68に連通する第1のコンタクトホール72a,72bが開口されている。
【0046】
さらに、層間絶縁膜71上には、第2の配線層として成膜されたソース電極73と、ドレイン電極74と、信号を供給する図示しない信号線とが形成されている。これらソース電極73、ドレイン電極74および信号線は、アルミニウム(Al)などの低抵抗金属などで成膜形成されている。そして、ソース電極73は、第1のコンタクトホール72aを介してソース領域67に導電接続されている。同様に、ドレイン電極74は、第1のコンタクトホール72bを介してドレイン領域68に導電接続されている。
【0047】
次に、上記レーザアニール装置で製造されるポリシリコンを用いた薄膜トランジスタの製造方法について説明する。
【0048】
まず、ガラス基板5の一主面に、シリコン窒化膜などをプラズマCVD法などで成膜形成してアンダーコート層6を形成し、連続して50nmの膜厚でアモルファスシリコン7を成膜する。
【0049】
そして、このアモルファスシリコン7を窒素雰囲気中において500℃で10分熱処理し、このアモルファスシリコン7中の水素濃度を低下させる。
【0050】
この後、ガラス基板5をレーザアニール装置に移す。
【0051】
そして、窒素ガス供給ライン41および混合ガス供給ライン42で、アニールチャンバ30内の酸素濃度を2%にして第1の雰囲気にした状態で、ガラス基板5を設置したステージ40を60mm/sで移動させる。このとき、ガラス基板5上へのエキシマレーザビームBの照射エネルギ密度を320mJ/cm2と設定し、このエキシマレーザビームBのレーザ発振周波数を300Hzに設定する。
【0052】
また、レーザ発振器11から発振されるエキシマレーザビームBの波長は308nmであり、このエキシマレーザビームBの照射サイズを250mm×0.4mmの線状ビームとする。また、このエキシマレーザビームBのオーバーラップを95%に設定する。
【0053】
この状態で、レーザ発振器11からエキシマレーザビームBを発振させて、このエキシマレーザビームBをガラス基板5上のアモルファスシリコン7に向けて照射して、このアモルファスシリコン7の全面をレーザアニールし、第1レーザアニール工程を行なう。この結果、ステージ40に設置したガラス基板5上のアモルファスシリコン7に、結晶核が形成される。そして、全面への第1レーザアニール工程を終えた時点でシャッタ18を一度遮断して、エキシマレーザビームBを遮断する。
【0054】
次いで、窒素ガス供給ライン41から窒素ガスを100l/min供給して、アニールチャンバ30内の雰囲気を第1の雰囲気とは異なる第2の雰囲気に俊敏に変換、すなわち置換する。
【0055】
この後、窒素ガスバルブ45を絞り、窒素ガス供給ライン41から供給される窒素ガスの流量を30l/minとするとともに、第2のニードル弁58を調整してアニールチャンバ30内の酸素ガスを副排気ライン53で排気する。この結果、アニールチャンバ30内でのステージ40に設置したガラス基板5上の酸素濃度を、瞬時に50ppm以下に安定化できる。
【0056】
この状態で、シャッタ18を開き、ガラス基板5を設置したステージ40を6mm/sで移動させ、再度第2レーザアニール工程を行なう。このとき、ガラス基板5上へのエキシマレーザビームBの照射エネルギ密度を350mJ/cm2と設定し、このエキシマレーザビームBのレーザ発振周波数を300Hzに設定する。
【0057】
また、レーザ発振器11から発振されるエキシマレーザビームBの波長は308nmであり、このエキシマレーザビームBの照射サイズを250mm×0.4mmの線状ビームとする。また、このエキシマレーザビームBのオーバーラップを95%に設定する。
【0058】
そして、このエキシマレーザビームBをガラス基板5上のアモルファスシリコン7に向けて照射して、このアモルファスシリコン7をレーザアニールする。この結果、先のレーザアニールによりアモルファスシリコン7に形成された結晶核を中心とする突起の低いポリシリコン2が形成される。
【0059】
次に、このポリシリコン2をパターニングした後、このポリシリコン2を含むガラス基板5上に、プラズマCVD法などでゲート酸化膜63を形成する。
【0060】
次いで、このゲート酸化膜63上に、第1配線層をスパッタリング法で成膜し、この第1配線層をエッチング加工して、ゲート電極64を形成する。
【0061】
この後、ポリシリコン2の両側域にソース領域67およびドレイン領域68を形成する。これらソース領域67およびドレイン領域68は、ゲート電極64をエッチング加工する際におけるレジストをマスクとして、ボロン(B)やリン(P)などの不純物をイオンドーピング法などで、ポリシリコン2の両側域をドーピングすることにより形成されている。
【0062】
このとき、ゲート電極64の下方に位置するドーピングされていないポリシリコン2がチャネル領域69となる。
【0063】
次いで、ゲート酸化膜63およびゲート電極64上に層間絶縁膜71を形成し、層間絶縁膜71およびゲート酸化膜63に第1のコンタクトホール72a,72bを形成した後、この層間絶縁膜71上に低抵抗金属をスパッタリング法などで成膜しパターニングしてソース電極73、ドレイン電極74および信号線を形成する。
【0064】
上述したように、上記一実施の形態によれば、ステージ40に設置したガラス基板5上のアモルファスシリコン7に向けてエキシマレーザビームBを照射しながらこのステージ40を走査して、ガラス基板5のほぼ全面に多結晶化のためのレーザアニールをする際に、レーザ発振器11のシャッタ18を高速で動作させてこのレーザ発振器11から発振されるエキシマレーザビームBを遮断または通過させ、さらに、窒素ガスを供給する窒素ガス供給ライン41、酸素ガスを供給する酸素ガス供給ライン49、および排気調整手段51で、ステージ40上に設置したガラス基板5上の酸素濃度を調整して、このガラス基板5上のアモルファスシリコン7をレーザアニールすることにより、アモルファスシリコン7をエキシマレーザビームBでレーザアニールした際に形成されるポリシリコン2の表面の突起を低減できる。
【0065】
この結果、このポリシリコン2を用いて製造した薄膜トランジスタ3のゲートリーク電流の増大を避けることができる。
【0066】
このため、薄膜トランジスタ3の駆動電流を小さくすることができるとともに、ポリシリコン2が本来有する高速スイッチング性能を確保でき、さらには、高い電流駆動能力を持つ薄膜トランジスタ3をガラス基板5上の略全域で均一に製造できるから、デジタル信号をアナログ信号に置き換えるDAコンバータや駆動回路一体型の大型な高精細液晶ディスプレイなどを製造できる。
【0067】
また、アニールチャンバ30内の酸素濃度を置換する際における排気速度は、排気調整手段51のコンダクタンスに大きく影響する。このため、アニールチャンバ30内を主として排気する主排気ライン52と、このアニールチャンバ30内を補助的に排気する副排気ライン53とにより排気調整手段51を構成したことにより、アニールチャンバ30内のガラス基板5上の酸素濃度を精密に制御できる。
【0068】
さらに、レーザ本体12内であるレーザ発振器11の近傍に配設したシャッタ18が、開閉信号を受信した際に60±50msの範囲内でエキシマレーザビームBの通過または遮断を完了する。この結果、ステージ40が60mm/sのスピードで移動しても、エキシマレーザビームBの照射開始および終了位置が±3.0mmの範囲に収まるため、実用上の問題となることはない。
【0069】
そして、窒素ガス供給ライン41と混合ガス供給ライン42とによりアニールチャンバ30内の酸素濃度を置換するため、このアニールチャンバ30内の酸素濃度を置換する際に掛かる時間を短縮できる。
【0070】
また、アニールチャンバ30内であるこのアニールチャンバ30の近傍の位置で、窒素ガス供給ライン41と混合ガス供給ライン42とのそれぞれの下流端を合流接続したため、これら窒素ガス供給ライン41および混合ガス供給ライン42による窒素ガスまたは酸素ガスの供給を停止した際におけるこれら窒素ガス供給ライン41および混合ガス供給ライン42内に残留する窒素ガスまたは酸素ガスの分量を少なくできる。よって、アニールチャンバ30内の雰囲気をより正確かつ俊敏に置換できる。
【0071】
さらに、排気調整手段51の主排気ライン52に第1のニードル弁55を取り付け、この排気調整手段51の副排気ライン53に第2のニードル弁58を取り付けたため、これら主排気ライン52および副排気ライン53によるアニールチャンバ30内をより正確かつ俊敏に排気できる。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、非晶質シリコン半導体に向けてレーザビームを照射して、非晶質シリコン半導体を多結晶シリコン半導体にする際に、雰囲気を適宜に変換して非晶質シリコン半導体をアニールすることにより、この非晶質シリコン半導体をアニールした際に形成される多結晶シリコン半導体の表面の突起を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザアニール装置の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】同上レーザアニール装置により製造される薄膜トランジスタを示す断面図である。
【符号の説明】
2 多結晶シリコン半導体としてのポリシリコン
5 透光性基板としてのガラス基板
7 非晶質シリコン半導体としてのアモルファスシリコン
11 レーザ発振手段としてのレーザ発振器
18 シャッタ
38 雰囲気制御手段
40 ステージ
41 ガス供給手段としての窒素ガス供給ライン
42 ガス供給手段としての混合ガス供給ライン
45 ガス交換促進手段としての窒素ガスバルブ
49 ガス交換促進手段としての酸素ガスバルブ
51 排気調整手段
52 主排気ライン
53 副排気ライン
B レーザビームとしてのエキシマレーザビーム
Claims (4)
- 一主面に非晶質シリコン半導体薄膜を堆積した透光性基板が設置されるステージと、
このステージ上に設置された前記透光性基板上の非晶質シリコン半導体に向けてレーザビームを照射して、前記非晶質シリコン半導体をアニールし、この非晶質シリコン半導体を多結晶シリコン半導体にするレーザ発振手段と、
前記ステージ上に設置された前記透光性基板上の前記レーザビームが照射される領域を囲う雰囲気制御手段と、
この雰囲気制御手段内に異なるガスを供給し得る複数のガス供給手段と、
このガス供給手段により供給された前記雰囲気制御手段内のガスを排気する排気調整手段とを具備し、
前記ガス供給手段は、
前記雰囲気制御手段内に窒素ガスを供給する窒素ガス供給ラインと、
前記雰囲気制御手段内に窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給する混合ガス供給ラインとを備えている
ことを特徴としたレーザアニール装置。 - 窒素ガス供給ラインと混合ガス供給ラインとは、雰囲気制御手段内で互いの下流端が合流接続されている
ことを特徴とした請求項1記載のレーザアニール装置。 - ガス供給手段は、雰囲気制御手段内に供給した混合ガスを窒素ガスに入れ換える動作を促進させるガス交換促進手段を備えている
ことを特徴とした請求項1記載のレーザアニール装置。 - 透光性基板上の非晶質シリコン半導体に向けてレーザビームを照射して、前記非晶質シリコン半導体をアニールし、この非晶質シリコン半導体を多結晶シリコン半導体にする際に、第1の雰囲気でアニールする第1レーザアニール工程と、
前記レーザビームを一旦遮断して前記第1の雰囲気とは異なる第2の雰囲気に変換した後、この第2の雰囲気で前記レーザビームを照射してアニールする第2レーザアニール工程と
を有することを特徴としたレーザアニール方法。
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