JP4845053B2 - フィチン酸を有効成分とする脱水反応用酸触媒、及び該触媒を用いたエステル類又はエーテル類の製造方法。 - Google Patents

フィチン酸を有効成分とする脱水反応用酸触媒、及び該触媒を用いたエステル類又はエーテル類の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、脱水反応用酸触媒、及び該触媒を用いたエステル類又はエーテル類の製造方法に関する。
カルボン酸類とアルコール類との脱水縮合によって生成するエステル類は、化学産業上、極めて重要な基幹化学物質であり、例えば、溶剤としての酢酸エチル、ビニルモノマーとしてのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、可塑剤としてのフタル酸エステル類、香料としての酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、及び吉草酸ペンチル、紫外線吸収剤としてのケイ皮酸エステルなど、その品種が多いばかりか、製造量も膨大である。
効率的なエステル類の製造では一般に、酸触媒による反応の加速が必須である(特許文献1等)。この目的で、小規模の製造の場合には、やや値段の高いトルエンスルホン酸などの有機スルホン酸も使用されてきたが、鉱酸類、なかでも安価な硫酸がもっぱら使われてきた。
しかしながら、エステル類の製造で、劇物である硫酸を多量に、しかも、加熱条件で使用することは、その製造工程が常に危険性を孕んでいることを意味している。また、硫酸はステンレスなど金属類への腐食性が高いため、製造装置に使用できる材質の選択範囲を狭め、設備費の増加を招いていた。
そこで、安全性が高く、ステンレスなどの金属材料への腐食性が低いばかりでなく、同時に安価で活性の高い酸触媒が従来から求められてきた。
特開平6−9496号公報 特公昭58−54193号公報 「食品工業」1967年、10月号 C. Cerard, J. Inorg. Biochem., 75, 71 (1999) Liu, J.R., Surf. Coat. Tech, 201,1536 (2006), Yang, H.F., Anal.Chim.Acta, 548,159 (2005)
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、安全性が高く、ステンレスなどの金属材料への腐食性が低いばかりでなく、同時に安価で活性の高い、脱水反応用の酸触媒及びそれを用いたエステル又はエーテルの製造方法を提供することを目的とするものである。
米などの穀類には、含燐化合物であるフィチン酸が、水に不溶なカルシウム塩、マグネシウム塩の形で大量に含まれている。例えば、玄米には、1.03〜1.17重量%、米ぬかには、9.5〜14.5重量%含まれており(上記非特許文献1参照)、酸処理により容易に水に可溶なフィチン酸として取り出すことができる。
このフィチン酸は、多価アルコールであるイノシトールのヘキサリン酸エステル構造を持つ強酸性の物質である。リン酸に比べて遙かに強い酸性を示すが(上記非特許文献2)、天然物であるが故に、簡単な中和により廃棄ができるので、フィチン酸塩は酸化防止剤などとして、食品や化粧品の添加物として用いられている。しかも、硫酸などの鉱酸類とは異なり、金属材料への腐食性が低いばかりか、積極的に金属材料の防蝕にも利用されている程である(上記特許文献2、非特許文献3参照)。
発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、従来用いられていた硫酸に代えて、前述のフィチン酸を酸触媒として用いることを検討した結果、各種のエステル又はエーテルの製造において、フィチン酸を、反応液中に単に添加することで、触媒作用を発現させることが可能であるという知見を得た。また、さらに検討した結果、より触媒効率を高めたり、反応液の後処理などの作業性を上げる方策を見いだした。
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
(1)フィチン酸を有効成分とする脱水反応用の酸触媒であって、前記フィチン酸が、担持体上に物理吸着により担持されていることを特徴とする脱水反応用の酸触媒
)(1)に記載された酸触媒を用いて、カルボン酸類とアルコール類との脱水縮合反応によりエステル類を製造する方法。
)(1)に記載された酸触媒を用いて、脱水反応によりエーテル類を製造する方法。
本発明によれば、非常に広範囲のエステル化反応或いはエーテル化反応において、従来技術で用いられてきた劇物である硫酸に替えて、法規制がなく、安全性の高いフィチン酸またはフィチン酸を基材とする材料を触媒として用いることができる。また、硫酸は金属材料への腐食性が高く、硫酸を触媒とする場合には製造装置はガラスや非常に高価な金属材料を用いなければならなかったが、本発明によれば、フィチン酸を触媒としているため、加熱時でも汎用のステンレス(SUS304など)への腐食が起きないので、設備費が大幅に引き下げることができる。さらに、本発明においては、フィチン酸を、比表面積の大きな担体に固定化する、ポリエチレングリコール類又はポリエチレングリコール鎖を親水性部とする非イオン界面活性剤で分散させる、又は化学修飾するなどの方法によって、その触媒効率を高めたり、反応液の後処理などの作業性を上げることができる。
本発明は、エステルの製造又はエーテルの製造等の脱水反応において、硫酸に代えて、下記の式で示されるフィチン酸を、反応液中に単に添加することで触媒作用を発現させることを可能としたものである。
Figure 0004845053
本発明において、反応液中に添加するフィチン酸としては、市販のフィチン酸の濃厚水溶液(50%程度)を用いることができる。
また、本発明においては、シリカゲルなどの担体表面にフィチン酸水溶液を均質に塗し、乾燥することにより、フィチン酸を担体表面に物理的に固定し、これを固体酸触媒として利用することができる。
すなわち、フィチン酸は親水性が高く、通常、疎水性の高い反応液と混和しないため、添加したフィチン酸の一部だけしか酸触媒として有効に働かないが、比表面積の大きな担体に固定化することにより、フィチン酸の有効性が高まることが期待できる。反応後、触媒は濾過などで容易に除去することが可能であり、合成反応の後処理の作業性を高めることが可能である。
また、本発明においては、酸触媒であるフィチン酸を、ポリエチレングリコール類又はポリエチレングリコール鎖を親水性部とする非イオン界面活性剤で分散させることができる。
すなわち、フィチン酸は、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどに分散すると、カルボン酸類とアルコール類からなる反応液に容易に混和させることができ、均質反応系を構成することによりフィチン酸の触媒作用を高めることができる。
ポリエチレングリコールとして、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレンリコールなどの、エチレングリコール単位の繰り返し低いものを用いる場合には、末端の水酸基がメチル化されたポリエチレングリコールが望ましく、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。このようなメチル化ポリエチレングリコールを使用することによりエステル化反応の一方の原料であるアルコールとの競合を避けることができる。
また、ポリエチレングリコールを親水性部としてもつ非イオン性界面活性剤も、フィチン酸の反応液への可溶化に利用可能である。非イオン性界面活性剤としてエイコサエチレングリコールオクタデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルなどが挙げられる。
さらに、本発明においては、フィチン酸のリン酸残基と反応が可能な官能基、たとえばエポキシ基を有するシリカゲルなどの担体表面に、フィチン酸を化学反応により固定し、これを固体酸触媒として利用するものである。該方法によれば、フィチン酸が安定に担体表面に固定化され、触媒寿命を長くすることができる。
前記のエポキシ基を有するシリカゲルは、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどの、エポキシ基を有するシラン類により、シリカゲルをアルコール中で処理することにより調製される。ついで、得られたシリカゲル上のエポキシ基へフィチン酸を反応させることによりフィチン酸の固定された担体を得ることができる。
さらにまた、本発明においては、フィチン酸のリン酸残基と反応しうる官能基であるエポキシ基などを有する化合物との間で共有結合を作ることにより、フィチン酸骨格を有する有機性物質、あるいは樹脂状物に変換し、これを酸触媒として利用するものである。
フィチン酸に有機性を付加するためのエポキシ化合物としては、スチレンオキシド、グリシジルフェニルエーテル、ピネンオキシド、1,2−エポキシヘキサデカン、3−[2−(ペルフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパンなどの単官能性エポキシ化合物が挙げられる。またフィチンサンを樹脂状物とするためのエポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-フォルムアルデヒド]、ポリ(エチレン-co-メチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)などの多官能性エポキシ化合物が挙げられる。
本発明におけるこれらのフィチン酸類を用いた触媒は、通常のエステルの製造方法、エーテルの製造方法に用いることができる。
本発明の対象とするエステル類は、今まで硫酸を触媒として製造されてきた全てのエステル類を含む。すなわち、以下のような化学構造を有するエステル類である。
エステルを構成するカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、などの脂肪族カルボン酸、および酸性条件で安定な置換カルボン酸、例えば、2−ブロモ酢酸、2−ブロモヘキサン酸、フェニル酢酸、ジグリコール酸などが挙げられる。脂肪族二価のカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などが挙げられる。また、安息香酸、ナフトエ酸、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸、および酸性条件下で安定な置換芳香族カルボン酸類が挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸が挙げられる。
エステルを構成するアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族ヒドロキシ化合物、および酸性条件で安定な、例えばベンジルアルコール類等の置換1価のアルコールが挙げられる。また、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、イソソルビッド、イソマンニドなどの2価のアルコール、グリセリンやペンタエリスリトールなどの多価アルコールも挙げられる。
本発明のフィチン酸を有効成分とする酸触媒は、上記エステル類を対象とするエステル交換反応にも有効に用いることができる。
本発明のフィチン酸を有効成分とする酸触媒を用いたエーテル化反応などの、エステル化以外の脱水反応は、通常のエステル化と特に変わるところはなく、本発明の対象とするエーテル類には、今まで硫酸を触媒として製造されてきた全てのエーテル類が含まれる。すなわち、少なくとも一方のアルコールが、アリールメタノールや1−アリール−1−アルカノール等のベンジルアルコール類か又は第三級アルコールで、もう一方が第一アルコールか第二アルコールの場合に、対称及び非対称エーテルが収率よく合成できる。
以下、エステルの製造方法を例として、一般的な合成の手順について、説明する。
フィチン酸類触媒の反応液への添加量は、エステル化の反応性を考慮して、カルボン酸類(カルボキシル基)またはアルコール類(ヒドロキシル基)に対し、0.5mol%〜30mol%、好ましくは、1mol%〜5mol%である。
反応混合物の加熱温度は、硫酸などを使用するエステル化の場合と同様で、カルボン酸、アルコール類、製造するエステル類の沸点や融点などの物性、エステル化反応の反応性に応じて決められ、室温から200℃で行われ、多くは50℃〜150℃で行われる。
反応は、反応容器を電気ヒーターなどで直接、または油浴など通じて間接的に加温することにより行なうことが出来るほか、マイクロ波による反応混合物の自体を直接加熱することも可能である。
原料のカルボン酸類とアルコール類が何れも水より高い沸点を有する液体の場合、最も簡単な製造法は、原料の揮発が無視できる程度の減圧下で副生する水を除去しながら、溶媒を添加することなく反応混合物を加温する方法である。
原料のカルボン酸類とアルコール類が何れも水より高い沸点を有する場合、トルエン、ベンゼンなどの共沸溶媒とともに副生する水を蒸発除去する方法もある。
メタノールやエタノールなどの低沸点のアルコール類の場合には、アルコール類を過剰に使用し、ジクロロエタンなどの溶媒中で加熱する。
反応液からのエステル類の回収は、一般的なエステル類の製造に於ける方法と変わるところはない。担体に固定されたフィチン酸の反応液からの除去は最も簡単で、単に反応液の上澄みを取り出すことにより除去しても良いし、濾過によっても容易に除ける。フィチン酸類が反応溶液に均質に溶解して存在する場合は、エステル類の性質(水への溶解性など)、溶媒使用の有無、フィチン酸類の水溶性有無など、反応系の状況により、フィチン酸の除去の方法は異なってくる。反応液が非水溶性の時は、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ性水溶液で反応液を洗浄することによりフィチン酸類は水相側に容易に除去できる。原料が水溶性で、また低沸点の場合には、減圧下に於いて反応液から原料を蒸発除去させた後、生成物をトルエンやクロロホルムなどの疎水性溶媒に溶解し、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ性水溶液で反応液を洗浄することによりフィチン酸類は水相側に除去することが出来る。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
最初に、本発明における触媒の調製について記載するが、本発明はこれらの調製例により何ら限定されるものではない。
(調製例1)
担体上にフィチン酸が物理的に固定された触媒を、以下のようにして調製した。
フィチン酸0.13g(0.1mmol)の50重量%水溶液を純水0.5mlで希釈し、球状シリカゲル0.13g(300メッシュ)を加えて攪拌した後、室温で真空乾燥し、フィチン酸のシリカゲル固定化物を粉体として得た。
(調製例2)
フィチン酸が、ポリエチレングリコールに分散された触媒を、以下のようにして調製した。
フィチン酸0.13g(0.1mmol)の50重量%水溶液、ポリオキシエチレン(分子量9,000〜10,000)0.13gを、純水1mlに溶解した後、室温で真空乾燥し、固形物を得た。
(調製例3)
フィチン酸が、ポリエチレングリコール鎖を親水性部とする非イオン界面活性剤に分散された触媒を、以下のようにして調製した。
フィチン酸0.13g(0.1mmol)の50重量%水溶液と、非イオン性界面活性剤(ポリエチレングリコールヘキサデシル、平均オキシエチレン単位20)0.13gを、純水0.5mlに溶解させた後、室温で真空乾燥し、固形物を得た。
(調製例4)
下記の構造に示す、共有結合によりフィチン酸を担体に固定した触媒を、以下のようにして得た。
Figure 0004845053
3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン0.40gをエタノールに溶かし、この溶液にシリカゲル3.0gを30分間浸漬した。シリカゲルは濾過により取り出し、エタノールで洗浄後真空乾燥した。フィチン酸0.66g(0.5mmol)の50重量%水溶液を室温で真空乾燥し、N,N−ジメチルイミダゾリジノン2mlに溶解した。この溶液に、先の表面修飾シリカゲルを入れ、50〜60℃で30分間加温した。シリカゲルを濾別し、さらに水とエタノールで洗浄後、真空乾燥し、酸触媒を調製した。
(調製例5)
フィチン酸が、スチレンオキシドとの反応により化学修飾された触媒を、以下のようにして調製した。
フィチン酸1.32g(1mmol)の50重量%水溶液を室温で真空乾燥し、N,N−ジメチルイミダゾリジノン2mlに溶解した。スチレンオキシド0.72g(6mmol)をN,N−ジメチルイミダゾリジノン2mlに溶解し、フィチン酸溶液に加え、一昼夜攪拌した。反応液をアセトン30mlに注入し、生成した沈殿を遠心分離により回収した。沈殿をアセトンで2回洗浄後、真空乾燥によりフィチン酸のスチレンオキシド付加物1.32gを得た。
(調製例6)
フィチン酸が、1,2−エポキシヘキサデカンドとの反応により化学修飾された触媒を、以下のようにして調製した。
フィチン酸2.64g(2mmol) 50重量%水溶液を室温で真空乾燥し、N,N−ジメチルイミダゾリジノン5mlに溶解した。1,2−エポキシヘキサデカン0.48g(2mmol)をN,N−ジメチルイミダゾリジノン2mlに溶解し、先に調製したフィチン酸溶液に加え、一昼夜攪拌した。反応液をアセトン30mlに注入し、生成した沈殿を遠心分離により回収した。沈殿をアセトンで2回洗浄後、真空乾燥によりフィチン酸と1,2−エポキシヘキサデカンの反応物0.69gを得た。
次に、本発明のフィチン酸を有効成分とする触媒を用いて、各種エステル及びエーテルを製造した例、或いはエステル交換反応の例を記載するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
参考例1)
下記の式で表される脂肪族カルボン酸エステル合成を行った。
Figure 0004845053
〈実験番号1〉
2−ブロモヘキサン酸0.39g(2mmol)とベンジルアルコール2.16g(20mmol)の混合液に、フィチン酸0.13g(0.1mmol)の50重量%水溶液を加え、磁気攪拌を行いながら油浴上で100℃に加熱した。副生する水を減圧(125mmHg)により除去した。
結果を、表1に示す。なお、2−ブロモヘキサン酸の相当するエステル化物への転化率は、反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比(−COOC 265(生成物)と-CBr-(原料及び生成物))より求めた。
〈実験番号2〜5〉
アルコールの量及び酸触媒の量を、下記の表1に示すように変更する以外は、実験番号1の場合と同様にしてエステルを合成した。それらの結果を表1に示す。
Figure 0004845053
(実施例
調製例1で得られたシリカゲルを固体酸触媒として用い、参考例1の実験番号1と同一条件で反応液を加熱し、不均質系のエステル化反応を行った。1時間後の転化率は36%であり、4時間後の転化率は85%であった。
参考
調製例2で得られた固形物を酸触媒として用い、参考例1と実験番号1と同一条件で反応液を加熱し、均質系に於いてエステル化反応を行った。1時間後の転化率は28%であり、4時間後の転化率は73%であった。
参考
調製例3で得られた固形物を酸触媒として用い、参考例1の実験番号1と同一条件で反応液を加熱し、均質系に於いてエステル化反応を行った。1時間後の転化率は39%であり、4時間後の転化率は78%であった。
(実施例
下記の式で表されるブロモ酢酸ベンジルの合成を行った。
Figure 0004845053
調製例1で得られたシリカゲルを固体酸触媒として用い、ブロモ酢酸0.28g(2mmol)とベンジルアルコール2.16g(20mml)を、磁気攪拌を行いながら100℃で反応させた。副生する水を減圧(125mmHg)により除去した。2−ブロモ酢酸の相当するエステル化物への転化率は、反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比(−COOC 265(生成物)と−C 2Br−(原料および生成物))より求めた。1時間後の転化率は102%であった。
(実施例
下記の式で表される不飽和カルボン酸(化粧品などの紫外線吸収剤)の合成を行った。
Figure 0004845053
フィチン酸0.53g(0.4mmol)の50重量%水溶液と球状シリカゲル(300メッシュ)0.53gより調製例1と同様にして得られたシリカゲル、4−メトキシケイ皮酸(1.43g、8mmol)、および1−オクタノール(2.08g、16mmol)の混合物を磁気攪拌下に油浴上で100℃に加熱した。副生する水は減圧(125mmHg)により除去した。4−メトキシケイ皮酸の相当するエステル化物への転化率は、反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比(−COOC 2715(生成物)とHOC 2715(原料))より決定した。4時間後の転化率は47%であった。
(実施例
下記の式で表される芳香族カルボン酸(高分子材料の可塑剤)の合成を行った。
Figure 0004845053
フィチン酸0.33g(0.25mmol)の50重量%水溶液と球状シリカゲル(300メッシュ)0.33gより調製例1と同様にして得られたシリカゲル、フタル酸(0.83g、5mmol)、および1−オクタノール(2.61g、20mmol)の混合物を磁気攪拌下に油浴上で100℃に加熱した。副生する水は減圧(125mmHg)により除去した。フタル酸の相当するエステル化物への転化率は、反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比(−COOC 2715(生成物)とHOC 2715(原料))より求めた。4時間後のカルボキシル基の転化率は72%であった。
(参考)
調製例6で得られた付加物90mgに、2−ブロモヘキサン酸0.39g(2mmol)とベンジルアルコール2.16g(20mmol)の混合液を加え、磁気攪拌を行いながら油浴上で100℃に加熱した。副生する水を減圧(125mHg)により除去した。2−ブロモヘキサン酸の相当するエステル化物への転化率は、反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比(−COOC 265(生成物)と−CBr−(原料及び生成物))より求めた。4時間後の転化率は80%であった。
(実施例
以下のようにして、共沸脱水によるエステル化を行った。
フィチン酸0.66g(0.5mmol)の50重量%水溶液と球状シリカゲル(300メッシュ)0.66gより調製例1と同様にして得られたシリカゲル、2−ブロモヘキサン酸1.95g(10mmol)とベンジルアルコール(2.16g、20mmol)、及びシクロペンチルメチルエーテル25mlを加え、磁気攪拌を行いながら加熱還流を行った。副生する水を共沸蒸留により除去した。2−ブロモヘキサン酸の相当するエステル化物への転化率は、反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比(−COOC 265(生成物)とCBr(原料及び生成物)より決定した。12時間後の転化率は85%であった。
参考
以下のようにして、1,2−ジクロロエタン溶液中でのエステル化を行った。
ヘキサン酸1.16g(10mmol)、メタノール3.2g(100mmol)、フィチン酸1.32g(1.0mmol)の50重量%水溶液を室温乾燥したもの、及び1,2−ジクロロエタン20mlの混合物を油浴上で加熱還流を行った。反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比(−CH2COOH(原料)と−CH2COOCH3(生成物))より、転化率を求めた。6時間後の転化率は66%であった。
参考
以下のようにして、2官能性カルボン酸と2官能性アルコールとのエステル化反応を行った。
フィチン酸1.32g(1mmol)の50重量%水溶液、トリエチレングリコール0.398g(2mmol)、ジグリコール酸0.268g(2mmol)からなる混合物を60℃で1時間真空加熱により乾燥した後、125mmHgで4時間加熱攪拌した。混合物に炭酸水素ナトリウム6mmolとクロロホルム20mlを加え、クロロホルム相を分離し、溶媒を減圧下に除去した。反応生成物のNMRより、原料のトリエチレングリコールとジグリコール酸のピークの消失を確認した。
(実施例
下記の式で表されるエーテルの合成を行った。
Figure 0004845053
フィチン酸0.66g(0.5mmol)の50重量%水溶液と球状シリカゲル(300メッシュ)0.66gより調製例1と同様にして得られたシリカゲルを固体酸触媒として、ベンジルアルコール2.16g(20mmol)を減圧下(125mmHg)に、4時間加熱攪拌を行った。転化率は、反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比(C65 2OC 265(生成物)とHOC 265(原料))より決定した。4時間後の転化率は96%であった。
(実施例
以下の式で表される非対称エーテルの合成を行った。
Figure 0004845053
フィチン酸0.66g(0.5mmol)の50重量%水溶液と球状シリカゲル(300メッシュ)0.66gより調製例1と同様にして得られたシリカゲルを固体酸触媒として用い、ベンジルアルコール1.08g(10mmol)と1−オクタノール1.30g(10mmol)を減圧下(125mmHg)に加熱攪拌を行った。反応液の1H−NMRスペクトルのピーク積分値の比によるベンジル基由来の化合物の組成(モル数)は、反応時間12時間において、ベンジルエーテル37%、オクチルベンジルエーテル49%、ベンジルアルコール(原料)13%であった。
(実施例
下記の式で表されるエステル交換反応によるエステル合成を行った。
Figure 0004845053
フィチン酸0.13g(0.1mmol)の50重量%水溶液と球状シリカゲル(300メッシュ)0.13gより調製例1と同様にして得られたシルカゲルを固体酸触媒として用い、パルミチン酸メチル0.332g(2mmol)と1−オクタノール2.61g(20mmol)とを減圧下(125mmHg)100℃で加熱し、エステル交換反応を行った。パルミチン酸オクチルの生成量をNMR(−COOC 2−(生成物)と−C 2COO−(生成物と原料)の比)で調べた。4時間後の交換率は64%であり、12時間後の交換率は100%であった。
(実施例
下記の式で表されるエステル交換反応によるエステル合成を行った。
Figure 0004845053
フィチン酸0.33g(0.25mmol)の50重量%水溶液と球状シリカゲル(300メッシュ)0.33gより調製例1と同様にして得られたシルカゲルを固体酸触媒として用い、トリラウリン1.60mg(2.5mmol)とメタノール16gを加え、圧力容器内において100℃で加熱攪拌した。(1H−NMRの積分比(−COOC 3(生成物)と−C 2COO−(生成物と原料)の比)より求めた、12時間後のラウリル酸メチルの理論収量に対する生成量は、81%であった。
本発明のフィチン酸を有効成分とする酸触媒は、脱水縮合反応によるエステル類、エーテル類などの製造において、従来用いられてきた硫酸などの鉱酸に代替できる酸触媒として一般に利用が期待される。

Claims (3)

  1. フィチン酸を有効性とする脱水反応用酸触媒であって、前記フィチン酸が、担持体上に物理吸着により担持されていることを特徴とする脱水反応用酸触媒。
  2. 請求項1に記載された酸触媒を用いて、カルボン酸類とアルコール類との脱水縮合反応によりエステル類を製造する方法。
  3. 請求項1に記載された酸触媒を用いて、脱水反応によりエーテル類を製造する方法。
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