本発明は、電力測定用の合成回路を電力計測部IC回路内に組み込む際の回路構成に関する。
図16を用いて、従来の電子式電力量計の電力計測部IC回路の基本構成の一例を説明する。図16に、一相の電力のみを計測する電力計測部回路の基本構成を示す。電力計測部IC回路9は、電圧センサ21のアナログ電圧信号をディジタル電圧信号に変換する電圧信号用アナログ/ディジタル(以下、A/Dと表記する)変換回路11Eと、電流信号用A/D変換回路11Cと、π/2遅延回路12と、切替スイッチ19と、乗算回路13と、累積回路14と、パルス化回路17とを有して電力計測部IC上に構成される。この例では、電流センサ22が基本回路に内蔵されている。
この電力計測部IC回路の基本構成において、端子T1を介して電圧センサ21からのアナログ電圧信号が電圧信号用A/D変換回路11Eに入力される。有効電力を求める場合には、電圧信号用A/D変換回路11Eの出力は、切替スイッチ19経由で乗算回路13の一方の入力端へ入力される。無効電力を求める場合には、電圧信号用A/D変換回路11Eの出力は、π/2遅延回路12を経た後切替スイッチ19を経由して乗算回路13の一方の入力端へ入力される。電流センサ22の出力が、電流信号用A/D変換回路11Cを経由して乗算回路13の他方の入力端へ入力される。乗算回路13の出力は、累積回路14へ出力されて累積されデータ出力として電力計測部IC回路9から外部へ出力される一方、パルス化回路17に入力されてパルス化され端子T2からパルス信号として出力される。
このような電力計測部IC回路9を用いて、有効電力量計を多相式に対応させるには、計測する相(素子)数分の電力計測部IC回路9が必要となる。
また、無効電力をも同時に測定する場合には、図17に示すように、有効電力測定用電力計測部IC回路91および無効電力計測用電力計測部IC回路92を、それぞれ相数分を必要とし、さらに電力計測部IC回路数が倍増する。
この構成において、料金取引のためには素子毎の電力値の総和を表示する必要があり、電力量計の検定に必要な検定パルスを出力するためには、計量パルスを、マイクロコンピュータ32のソフトウェアにより、あるいはパルス合成回路311,312などの外付けハードウェアにより、合成する処理を付加する必要がある。
図18を用いて、一相の電力計測部IC回路によって有効電力二相の計測あるいは、一相の有効電力計測に加えて一相の無効電力の計測を可能とした電力計測部IC回路の構成を説明する。この電力計測部IC回路91/92/93は、アナログ電圧信号とアナログ電流信号を時分割処理によりそれぞれでディジタル電圧信号とディジタル電流信号に変換する1つのA/D変換回路11と、π/2遅延回路12と、2つの乗算回路13e、13rと、2つの累積回路141、142と、2つのパルス化回路171、172と、切替スイッチ19とを有して構成される。
各A/D変換回路11には、電圧センサ21a/21b/21cからのアナログ電圧信号が入力端子T1を介して、電流センサ22a/22b/22cからの電流信号が入力端子T3を介して入力され、それぞれディジタル電圧信号またはディジタル電流信号に変換される。A/D変換回路11の出力信号は、乗算回路13eに入力され、累積回路141、パルス化回路171を介して出力端子T2から有効電力パルス出力1が出力される。さらに、A/D変換回路11の電圧出力信号は、π/2遅延回路12、切替スイッチ19を経由して乗算回路13rに入力され、電流出力信号は直接乗算回路13rに入力され、累積回路142、パルス化回路172を介して出力端子T4から無効電力パルス出力2が出力される。切替スイッチ19を切り替えてA/D変換回路11からの電圧出力信号を直接乗算回路13rへ入力することにより、第2の有効電力パルス出力2が出力端子T4から出力される。
この構成の電力計測部IC回路91,92,93を3個備え、それぞれの電力計測部IC回路に三相の電圧信号および電流信号を入力し、パルス合成回路311、312を接続することにより、三相の有効電力と無効電力を計測することができ、共有できる回路をワンパッケージに収め簡略化することができる。
電力計測部IC回路を図16のような内部構成とすると、多相を計測する計器の場合は図17のように電力計測部IC回路が6個必要となり、回路電流および基板占有面積が増大し、コストを引き上げるという問題がある。また全ての電力計測部IC回路に、有効電力の測定には必要としないπ/2回路等余分な回路があるうえ、外付けのパルス合成回路が必要となる。さらに、パルス合成にマイクロコンピュータを用いソフトウェアによる処理を用いた場合は、マイクロコンピュータと6個の電力計測部IC回路間でのデータのやり取りが煩雑となり重要な処理の妨げとなる(例えば、特許文献1参照)。
また、図17の構成の欠点を考慮した、図18の構成でも、外付けのパルス合成回路311,312あるいは、パルス合成のためのソフトウェアによる処理が必要である。
単相から三相までの各電力量計に対応した電力計測部IC回路を低価格で構成する場合、電力計測部IC回路を極力単機能に抑え、且つ多相電力量計の場合には電力データを容易に合成できることが必要である。
さらに、多相電力量計では、パルス合成において、電力量計の電流の計測範囲が広いため、各電力計測部IC回路間で受渡しする電力データにおいて、電流データの分解能は213(13ビット)必要となり配線数が膨大となるという問題を有している。
本発明の出願人は、A/D変換回路にデルタシグマ(ΔΣ)変調方式を使用し、乗算回路に1ビットデータを直接演算する1ビット乗算回路を用いることにより、最も少ない1配線で電力計測部IC回路間の電力データ受け渡しができる演算回路を提案している(例えば、特許文献2参照)。
再公表特許WO2003/060531号公報
特開2001−94430号公報
本発明は、上記問題点を解決するものであり、各種の電力量計を構成することが可能な電力計測部IC回路を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、3個の電力計測部IC回路を用いて三相の有効電力量計および無効計測電力量計を実現することを目的とする。
また、本発明は、多相計器のときに外部によるマイクロコンピュータ処理あるいはハードウェアによるパルス合成回路を不要とし、電力計測部IC回路個数分の煩雑なデータ処理を省くことができる電力計測部IC回路を提供することを目的とする。
本発明は、各電力計測部IC回路の乗算回路と累積回路間の配線を大幅に少なくすることができる電力計測部IC回路を提供することを目的とする。さらに、電力計測部IC回路のピン数を少なくし、電力計測部IC回路の単価を下げ、且つ電力計測部IC回路間の接続が簡単で使い易い電力計測部IC回路を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、電圧および電流の2つの入力信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する少なくとも2つのA/D変換回路と、ディジタル化された電圧信号をπ/2遅延させるπ/2遅延回路と、ディジタル電圧信号とディジタル電流信号を乗算する2つの乗算回路と、該2つの乗算回路からの乗算データまたは外部からの乗算データを選択する選択回路と、該選択回路からのデータを累積する3つの累積回路と、累積結果を選択合成する合成回路と、該合成回路の出力をパルス化するパルス化回路とを、電力計測部IC回路上に形成する。
本発明は、電力計測部IC回路を単機能とするために、IC基板上に、アナログ電圧信号が入力される第1のアナログ電圧信号入力端子および第2のアナログ電圧信号入力端子と、アナログ電流信号が入力される第1のアナログ電流信号入力端子および第2のアナログ電流信号入力端子と、アナログ電圧信号をA/D変換し、第1のディジタル電圧信号と第2のディジタル電圧信号を出力する電圧信号用A/D変換回路と、アナログ電流信号をA/D変換し、第1のディジタル電流信号と第2のディジタル電流信号を出力する電流信号用A/D変換回路と、前記第1のディジタル電圧信号をπ/2遅延させるπ/2遅延回路と、前記第1のディジタル電圧信号と前記第1のディジタル電流信号を乗算する第1の乗算回路と、前記π/2遅延させた第1のディジタル電圧信号または前記第2のディジタル電圧信号と前記第2のディジタル電流信号を乗算する第2の乗算回路と、前記第1の乗算回路の出力信号または外部からの信号のいずれかを選択する第1の選択スイッチおよび外部からの信号または前記第2の乗算回路の出力信号のいずれかを選択する第2の選択スイッチならびに外部からの信号または前記第2の乗算回路の出力信号のいずれかを選択する第3の選択スイッチを具備する選択回路と、前記第1の選択スイッチに接続される第1の累積回路と、前記第2の選択スイッチに接続される第2の累積回路と、前記第3の選択スイッチに接続される第3の累積回路と、前記各累積回路の累積結果を合成する合成回路とを備え、前記選択回路は、前記第1の乗算回路の出力を外部に出力する出力端子と、前記第2の乗算回路の出力を外部に出力する出力端子と、外部からの信号を前記第1の選択スイッチの第2接点および前記第2の選択スイッチの第1接点に入力する入力端子と、外部からの信号を前記第3の選択スイッチの第2接点に入力する入力端子を備えて電力計測部IC回路を構成した。
また、本発明は、各A/D変換回路にオーバーサンプリング型のA/D変換回路であるデルタシグマ(以下、ΔΣと記す)変調方式のA/D変換回路を使用し、乗算回路に1ビットシリアルデータを直接演算する1ビット乗算回路を用いるか、1ビットのシリアルデータを多ビット乗算処理する多ビット乗算回路を用いるようにした。
さらに、本発明は、前記第1のディジタル電圧信号と前記第2のディジタル電圧信号を出力する前記電圧信号用A/D変換回路を、2つのA/D変換回路または時分割処理する1つのA/D変換回路で構成することができ、前記電流信号用A/D変換回路を、2つのA/D変換回路または時分割処理する1つのA/D変換回路で構成することができる。
さらに、本発明は、電力計測部IC回路を単機能とするために、IC基板上に、アナログ電圧信号が入力される第1アナログ電圧信号入力端子および第2のアナログ電圧信号入力端子と、アナログ電流信号が入力される第1のアナログ電流信号入力端子および第2のアナログ電流信号入力端子と、前記第1のアナログ電圧信号と第1のアナログ電流信号をA/D変換し第1のデジタル変換電圧信号と第1のデジタル変換電流信号を出力する第1のA/D変換回路と、前記第2のアナログ電圧信号と第2のアナログ電流信号をA/D変換し第2のデジタル変換電圧信号と第2のデジタル変換電流信号を出力する第2のA/D変換回路と、前記第1のA/D変換回路の第1のデジタル変換電圧信号をπ/2遅延させるπ/2遅延回路と、前記第1のA/D変換回路の第1のデジタル変換電圧信号と第1のデジタル変換電流信号を乗算する第1の乗算回路と、前記第2のA/D変換回路の第2のデジタル変換電圧信号または前記π/2遅延回路のπ/2遅延デジタル変換電圧信号のいずれかと第2のデジタル変換電流信号を乗算する第2の乗算回路と、前記π/2遅延回路のπ/2遅延デジタル変換電圧信号または前記第2のA/D変換回路の第2のデジタル変換電流信号のいずれかを切り替えて前記第2の乗算回路の一方の入力側に入力する切替スイッチと、前記第1の乗算回路の出力信号または外部からの信号のいずれかを選択する第1の選択スイッチおよび外部からの信号または前記第2の乗算回路の出力信号のいずれかを選択する第2の選択スイッチならびに外部からの信号または前記第2の乗算回路の出力信号のいずれかを選択する第3の選択スイッチを具備する選択回路と、前記第1の選択スイッチに接続される第1の累積回路と、前記第2の選択スイッチに接続される第2の累積回路と、前記第3の選択スイッチに接続される第3の累積回路と、前記各累積回路の累積結果を合成する合成回路と、を備え、前記選択回路は、前記第1の乗算回路の出力を外部に出力する出力端子と、前記第2の乗算回路の出力を外部に出力する出力端子と、外部からの信号を前記第1の選択スイッチの第2接点および前記第2の選択スイッチの第1接点に入力する入力端子と、外部からの信号を前記第3の選択スイッチの第2接点に入力する入力端子を備えた。
本発明では電力計測部IC回路を単機能とするために、電圧および電流の2信号をディジタル値に変換する2つのA/D変換回路と、該A/D変換回路のうちの一方のA/D変換回路のディジタル電圧信号をπ/2遅延させるπ/2遅延回路と、前記2つのA/D変換回路の一方の出力電圧信号と出力電流信号を乗算する第1の乗算回路と、前記2つのA/D変換回路の他方のディジタル電圧信号または前記π/2遅延回路の出力信号のいずれかと他方のディジタル電流信号を乗算する第2の乗算回路と、第1の乗算回路の出力または第2の乗算回路の出力もしくは外部からの信号を選択する3つの選択スイッチを備えた選択回路と、該選択回路の出力を累積する3つ累積回路を備えた。このため多相計器のときに外部によるマイクロコンピュータ処理あるいはハードによる合成回路が不要になり、電力計測部IC回路個数分の煩雑なデータ処理を省くことができる。
本発明は、A/D変換回路にオーバーサンプリング方式のA/D変換方式であるΔΣ変調方式を使用し、A/D変換回路の後のフィルタ出力ビット数を抑えたうえ、選択回路を乗算回路と累積回路の間に挿入しているため、乗算回路と累積回路間の配線を大幅に少なくできた。これにより電力計測部IC回路のピン数が少なくなり、電力計測部IC回路単価が下がり且つ電力計測部IC回路間の接続が簡単で使い易くなる。
さらに、乗算回路に1ビットデータを直接演算する1ビット乗算回路を用いることで、最も少ない1配線で電力計測部IC回路間の電力データ受け渡しができる。
以下、図を用いて、本発明にかかる単相電力量計から多相電力量計に使用できる電力計測部IC回路の構成を説明する。
図1を用いて、本発明にかかる電力計測部IC回路の構成を説明する。図1は、本発明にかかる電力計測部IC回路の基本構成を示す図であり、この電力計測部IC回路を1個用いて国内において多く使用されている二相(単相3線式、三相3線式)の電力量計を実現することができる。
本発明にかかる電力計測部IC回路1は、第1チャンネルの電圧センサ21aと第2チャンネルの電圧センサ21bからの電圧アナログ信号をそれぞれ2つのディジタル信号にA/D変換する電圧信号用A/D変換回路11Eと、第1チャンネルの電流センサ22aと第2チャンネルの電流センサ22bの電流アナログ信号をそれぞれ2つのディジタル信号にA/D変換する電流用A/D変換回路11Cと、一方のディジタル電圧信号(例えば、第1チャンネルのディジタル電圧信号)をπ/2遅延させるπ/2遅延回路12と、一方のディジタル電圧信号(例えば、第1チャンネルのディジタル電圧信号)と一方のディジタル電流信号(例えば、第1チャンネルのディジタル電流信号)を乗算する第1の乗算回路13eと、一方のディジタル電圧信号(例えば、第1チャンネルのディジタル電圧信号)を遅延させた遅延ディジタル電圧信号または他方のディジタル電圧信号(例えば、第2チャンネルのディジタル電圧信号)と他方のディジタル電流信号(例えば、第2チャンネルのディジタル電流信号)を乗算する第2の乗算回路13rと、一方のディジタル電圧信号(例えば、第1チャンネルのディジタル電圧信号)を遅延させた遅延ディジタル電圧信号または他方のディジタル電圧信号(例えば、第2チャンネルのディジタル電圧信号)を切り替えて第2の乗算回路13rに入力する切替スイッチ19と、3つの累積回路141,142,143と、各累積回路からの出力を合成する合成回路15と、合成回路15の出力をパルス化するパルス化回路17と、2つの乗算回路の乗算データまたは外部からの乗算データを選択して累積回路14のいずれかへ入力する選択回路16とを有して構成される。
電力計測部IC回路1は、さらに、第1の電圧センサ21aからの第1チャンネルの電圧信号が入力される端子T1と、第2の電圧センサ21bからの第2チャンネルの電圧信号が入力される端子T5と、第1の電流センサ22aからの第1チャンネルの電流信号が入力される端子T3と、第2の電流センサ22bからの第2チャンネルの電流信号が入力される端子T6と、パルス化回路17のパルス出力が出力される端子T2と、第1の乗算回路13eの出力および第1の選択スイッチ161の第1接点に接続される端子T7と、第2の乗算回路13rの出力および第2の選択スイッチ162の第2接点ならびに第3の選択スイッチ163の第1接点に接続される端子T8と、選択回路16の第1の選択スイッチ161の第2接点と第2の選択スイッチ162の第1接点に接続される端子T9と、第3の選択スイッチ163の第2接点に接続される端子T10とを有している。また、電力計測部IC回路1の第1の乗算回路13eの出力は、選択回路16の第1の選択スイッチ161の第1接点に接続される。第2の乗算回路13rの出力は、第2の選択スイッチ162の第2接点および第3の選択スイッチ163の第1接点に接続される。
電圧信号用A/D変換回路11Eは、端子T1を介して第1の電圧センサ21aから入力された第1チャンネルのアナログ電圧信号および端子T5を介して第2の電圧センサ21bから入力された第2チャンネルのアナログ電圧信号を、それぞれ第1チャンネルのディジタル電圧信号および第2チャンネルのディジタル電圧信号に変換して出力する手段である。この電圧信号用A/D変換回路11Eは、第1チャンネルのアナログ電圧信号と第2チャンネルのアナログ電圧信号を時分割処理することによって1つの処理回路で2つのアナログ電圧信号を同時にディジタル電圧信号に変換することができる。
電流信号用A/D変換回路11Cは、端子T3を介して第1の電流センサ22aから入力された第1チャンネルのアナログ電流信号および端子T6を介して第2の電流センサ22bから入力された第2チャンネルのアナログ電流信号を、それぞれ第1チャンネルのディジタル電流信号および第2チャンネルのディジタル電流信号に変換して出力する手段である。この電流信号用A/D変換回路11Cは、第1チャンネルのアナログ電流信号と第2チャンネルのアナログ電流信号を時分割処理することによって1つの処理回路で2つのアナログ電流信号を同時にディジタル電流信号に変換することができる。
電圧信号用A/D変換回路11Eまたは電流信号用A/D変換回路11Cは、オーバーサンプリング型のA/D変換回路で構成され、A/D変換後の出力のフィルタ部出力を低ビット数に抑え、乗算データを選択する選択回路の入出力ピン数を低減し、必要分解能を得るフィルタ処理を選択回路の後の累積回路での処理とした構成である。
オーバーサンプリング型のA/D変換回路であるΔΣ変調方式を採用したA/D変換回路の基本構成を、図2を用いて説明する。オーバーサンプリング型のA/D変換回路を構成するΔΣ変調回路(A/D変換回路)11は、積分器111と、比較器112と、遅延手段113と、1ビットD/A変換器114と、加算器115とを有して構成される。アナログ信号入力Xは、積分器111で積分され、その出力は比較器112により1ビットの論理データYとして出力される。比較器112は、クロックドコンパレータと称しサンプリング周波数fsに同期して出力する。比較器112の出力データYは、遅延手段113を介して1ビットD/A変換器114によりアナログ信号として加算機115へ戻し、次のサンプルで取り込まれる信号との差を積分する。
図2の1次ΔΣ変調回路の入出力関係は、下記(1)式に表される。
Y=X+(1−Z−1)×Q…(1)
ここで、Qは量子化により発生する誤差で、Z−1は1サンプル前の量子化誤差である。したがって、(1−Z−1)は、1サンプル前のものを差し引くという意味で、これが連続することにより微分することと同じ結果となる。よって、1次ΔΣ変調回路の出力は、入力と量子化誤差を微分したものを足したことを言うため、微分とは6dB/octのローカットフィルタを通したこととなる。
この式に加わる誤差は、生の形でなく6dB/octの曲線になって加わるため、変換帯域ではノイズが減り、逆に変換帯域外ではノイズが上昇し、ノイズの分布状態を変形させることができる。以上のように、ΔΣ変調器とは図2に示すように回路規模も小さいだけでなく高い帯域に量子化雑音を追いやることができるため、サンプリング周波数fsを高い帯域へ持っていき、広域のノイズをローパスフィルタで減衰させることで変換帯域では高い分解能を得ることができる。
ΔΣ変調回路の出力は、入力信号に量子化雑音を加算した、サンプリングレートfsのリアル論理データである。
図3を用いて、高周波帯域の量子化雑音を減衰させるローパスフィルタの役割を果たす移動平均デジタルフィルタの例を説明する。通常のデジタルフィルタは、後段での間引き処理による折り返しノイズ(再量子化雑音)を軽減するため、急峻な減衰特性が必要となるが、間引き処理による不要な再量子化雑音の発生を避けるため、間引きを行わず、減衰特性の緩やかな移動平均デジタルフィルタを用いる。移動平均デジタルフィルタの構成は、ローパスフィルタの特性を決める係数による乗算回路が不要なため、回路規模が小さく実現できる。図3では、移動平均タップ数を14タップとした。移動平均デジタルフィルタ後処理は、サンプリングレートにて行う必要があるが、移動平均デジタルフィルタの出力は4ビットであるため、後段処理の回路規模は小さくなる。
すなわち、電圧信号用A/D変換回路11Eおよび電流信号用A/D変換回路11Cの後段に、図3に示す移動平均デジタルフィルタを用いた多ビット化回路を挿入することによって、第1の乗算器13eおよび第2の乗算器13rを多ビット乗算器とすることができる。
図4に、本発明の実施例で用いた、2次デルタシグマ変調回路を用いたA/D変換器11の構成を示す。A/D変換回路11は、図2に示した1次デルタシグマ変調回路11に、さらに、第2の遅延手段116と、第2の1ビットD/A変換回路117と、第2の加算器118と、第2の積分器119を図示のように設けて構成されている。
すなわち、電圧信号用A/D変換回路11Eおよび電流信号用A/D変換回路11Cは、1ビット出力信号をフィルタ機能付き1ビット乗算回路を用い1ビット乗算データを選択する選択回路とし1相1ピン処理にて行うピン数および選択回路規模を極小化する構成とされる。
π/2遅延回路12は、無効電力を計測するために例えば第1チャンネルのアナログ電圧信号をA/D変換したディジタル電圧信号を信号周波数の90°(π/2)分位相を遅らせて出力する回路である。
第1の乗算回路13eは、第1チャンネルの電流信号のA/D変換結果であるディジタル電流信号と第1チャンネルの電圧信号のA/D変換結果であるディジタル電圧信号を乗算する回路である。乗算回路13rは第2チャンネルの電流信号のA/D変換結果であるディジタル電流信号と、第2チャンネルの電圧信号のA/D変換結果であるディジタル電圧信号もしくは第1チャンネルのディジタル電圧信号をπ/2遅延させた遅延ディジタル電圧信号を乗算する回路である。
第1の乗算回路13eまたは第2の乗算回路13rは、前記電圧信号用A/D変換回路11Eまたは電流信号用A/D変換回路11Cの1ビット出力信号を乗算するフィルタ機能付き1ビット乗算回路であり、1ビット乗算データを選択する選択回路とし、1相1ピン処理にて行うピン数および選択回路規模を極小化している。これらの乗算回路は、本出願人が既に提案している、前記特許文献2に記載の「シングルビットのΔΣ変調信号演算回路」を用いることができる。
この乗算回路13として用いるシングルビットのΔΣ変調信号演算回路の構成例を、図5を用いて説明する。シングルビットのΔΣ変調信号演算回路13は、第1のDフリップフロップ131と、第2のDフリップフロップ132と、第1の論理和(OR)回路133aと、第1の論理積(AND)回路134aと、第2の論理積(AND)回路135aと、第1の否定(NOT)回路136aと、第2の論理和(OR)回路133bと、第3の論理積(AND)回路134bと、第4の論理積(AND)回路135bと、第2の否定(NOT)回路136bと第3の否定(NOT)回路137と、第5の論理積(AND)回路138と、排他的論理和(EXOR)139と、を図示のように接続して構成される。
第5のAND回路138およびEXOR回路139の入力端にΔΣ変調された1ビットの信号x(n)、y(n)を入力し、多ビット信号に変換することなく直接加算して、加算結果を1ビット信号として第1のDフリップフロップ131のQ出力から1ビット信号z(n)で出力する。この場合、出力信号z(n)と、加算回路13内部の第2のDフリップフロップ回路132のQ出力q(n)とは、
x(n)+y(n)≠0の場合、
z(n+1)=(x(n)+y(n))/2、
q(n+1)=q(n)の2式によって決められる。
また、x(n)+y(n)=0の場合、
z(n+1)=q(n)、
q(n+1)=−q(n)の2式によって決められる。
この演算回路13の構成および働きの詳細は、上記特許文献2を参照されたい。
累積回路141,142,143は、選択回路16で選択した乗算回路からの乗算信号のデータを加算し累積する回路であり、乗算信号データに高周波成分が残って粗い場合には高周波成分を除去するフィルタ効果を持たせる。
合成回路15は、3つの累積回路141,142,143からのデータを1つの電力積算データに合成し、外部へ出力するとともに、必要に応じてパルス化回路17へも出力する回路である。
合成回路15の構成例を、図6および図7を用いて説明する。図6の回路構成図に示すように、合成回路15は、3つの比較器151−1,151−2,151−3と、3つのワンショットパルス回路152−1,152−2,152−3と、タイミング回路153と、論理和(OR)回路154とを有して構成される。累積回路141の累積結果の出力は比較器151−1に入力されて規定パルス相当のデータ閾値と比較され、一致したときにワンショットパルス回路152−1にてパルスを生成し出力する。ここで、規定パルス相当のデータ閾値とは、電力会社によって計器種別毎に定められ、単位をximp/Wh、xWh/imp、pulse/kWhとした定格パルスに相当する累積(電力)データ値である閾値とされる。同様に各累積回路142,143の出力はそれぞれ比較器151−2,151−3に入力されて比較され、一致したときにワンショットパルス回路152−2,152−3にてパルスを生成し出力する。図7のタイミングチャートに示すようにワンショットパルス回路152の動作クロック(CLK)は、各累積回路のパルス出力が重ならないようにタイミング回路153でずらしてワンショットパルス回路152−1,152−2,152−3へそれぞれ出力する。タイミング回路153でずらした出力T1、出力T2、出力T3は、例えば動作クロック(CLK)を累積回路141,142,143の動作クロック(DATA CLK)の4倍の周波数とし並列デコードして出力すればよい。ワンショットパルス回路152−1,152−2,152−3の出力を論理和(OR)回路154にて合成する。
選択回路16は、第1の選択スイッチ161と第2の選択スイッチ162と第3の選択スイッチ163を備えており、3つある累積回路141,142,143の入力への乗算信号を選択する回路である。選択回路16は、他の電力計測部IC回路へ自身の2つの乗算結果を出力する2つの出力端子T7,T8、他の電力計測部IC回路の乗算結果を受取る2つの乗算入力端子T9、T10を持つ。
選択回路16の第1の選択スイッチ161の第1接点が第1の乗算回路13eに接続され第2接点が入力端子T9に接続される。選択回路16の第2の選択スイッチ162の第1接点が入力端子T9に接続され第2接点が第2の乗算回路13rに接続される。選択回路16の第3の選択スイッチ163の第1接点が第2の乗算回路13rに接続され第2接点が入力端子T10に接続される。
第1の選択スイッチ161が第1の累積回路141に、第2の選択スイッチ162が第2の累積回路142に、第3の選択スイッチ163が第3の累積回路143に接続される。図1に示した選択回路16は、一例であり、本発明の目的を達成できる他の選択手段を用いてもよい。
パルス化回路17は、精度測定用に合成回路15からの電力積算データに比例したパルスを出力する回路である。
切替スイッチ19は、電圧信号用A/D変換回路11Eからの第1チャンネルのディジタル電圧信号をπ/2遅延させた信号または電圧信号用A/D変換回路11Eからの第2チャンネルのディジタル電圧信号のいずれかを選択して第2の乗算回路13rに入力する回路である。
図8を用いて、本発明にかかる電力計測部IC回路の変形例の構成を説明する。図8は、本発明にかかる電力計測部IC回路の基本構成の変形例を示す図であり、図1に示した電力計測部IC回路とは、電圧信号用A/D変換回路11Eを第1の電圧信号用A/D変換回路11E−1と第2の電圧信号用A/D変換回路11E−2のそれぞれ独立した回路として構成している点、電流信号用A/D変換回路11Cを第1の電流信号用A/D変換回路11C−1と、第2の電流信号用A/D変換回路11C−2のそれぞれ独立した回路として構成している点で相違している。この構成によれば、各A/D変換回路を時分割処理する必要がなくなり、回路の動作と構造を簡易化することができる。その他の構成および動作は、図1に示した電力計測部IC回路と同じである。
図1に示した上述のような構成の電力計測部IC回路1を、単相3線式の積算電力量計測に用いた第1の実施例の動作を説明する。第1チャンネルのアナログ電圧信号は、電圧信号用A/D変換器11Eでディジタル電圧信号に変換された後、第1の乗算回路13eの一方の入力へ入力される。第1チャンネルのアナログ電流信号は、電流信号用A/D変換回路11Cでディジタル電流信号に変換された後、第1の乗算回路13eの他方の入力へ入力される。第1の乗算回路13eの出力は、選択回路16の第1の選択スイッチ161の第1接点に入力される。
第2チャンネルのアナログ電圧信号は、電圧信号用A/D変換器11Eでディジタル電圧信号に変換された後、第2の乗算回路13rの一方の入力へ入力される。第2チャンネルのアナログ電流信号は、電流信号用A/D変換回路11Cでディジタル電流信号に変換された後、第2の乗算回路13rの他方の入力へ入力される。第2の乗算回路13rの出力は、選択回路16の第2の選択スイッチ162の第2接点に入力される。この実施例では、切替スイッチ19は電圧信号用A/D変換回路11Eの第2チャンネルのディジタル電圧信号を選択している。
選択回路16の第1の選択スイッチ161は第1接点に接続されて第1の乗算回路13eの出力が第1の累積回路141に入力される。第2の選択スイッチ162は第2の接点に接続されて第2の乗算回路13rの出力が第2の累積回路142に入力される。この実施例では、第3の選択スイッチ163はいずれの接点にも接続されず、第3の累積回路143には入力がない。
第1の累積回路141は第1の乗算回路13eの出力を累積し、第2の累積回路は第2の乗算回路13rの出力を累積する。第1の累積回路141と第3の累積回路143の出力が合成回路15に入力され、積算電力データが出力され、単相3線式の積算電力量を計測することができる。
本発明においては、電圧信号用A/D変換回路11Eおよび電流信号用A/D変換回路11Cにオーバーサンプリング型を使用した場合は、データの更新が高速周波数となるが低ビットのデータで高分解能を表現している。乗算処理のあとに選択回路16を設け累積回路141,142,143でフィルタする構成となっているため、電力計測部IC回路1の合成のための入出力用ピン数を大幅に倹約することができる。
パルス化回路17は、合成回路15の出力を精度測定用に電力に比例したパルスとして出力する回路であり、このパルス出力は、例えば、電力量計の検定用に使用することができる。但し、国内の料金取用引計器では国家機関の検定用に必要なだけなので計器種別によっては必要ない。また、パルス化回路17は、海外計器は低速周波数のパルス仕様のため、マイコン処理で賄うことができれば必要ない。
本発明にかかる電力計測部IC回路を用いて三相の有効・無効計測電力量計を構成する第2の実施例を、図9を用いて説明する。実施例2は、3個の電力計測部IC回路1a、1b、1cを用い、該電力計測部IC回路内の選択回路16をそれぞれ図示のように、また各電力計測部IC回路1a、1b、1c間を図示のように接続して実現する。
第1相の電力計測部IC回路1aの電圧信号用A/D変換回路11Eの2つの入力T1、T5端子には、第1相の電圧センサ21aの出力がそれぞれ入力される。第2相の電力計測部IC回路1bの電圧信号用A/D変換回路11Eの2つの入力端子T1、T5には、第2相の電圧センサ21bの出力が入力される。第3相の電力計測部IC回路1cの電圧信号用A/D変換回路11Eの2つの入力端子T1、T5には、第3相の電圧センサ21cの出力が入力される。同様に、第1相の電力計測部IC回路1aの電流信号用A/D変換回路11Cの2つの入力端子T3、T6には、第1相の電流センサ22aの出力が入力される。第2相の電力計測部IC回路1bの電流信号用A/D変換回路11Cの2つの入力T3、T6には、第2相の電流センサ22bの出力が入力される。第3相の電力計測部IC回路1cの電流信号用A/D変換回路11Eの2つの入力T3、T5には、第3相の電流センサ22cの出力が入力される。
すなわち、第1相の電力計測部IC回路1aの第1相の選択回路16は、第1の選択スイッチ161が第1接点を選択し、第2の選択スイッチ162が第1接点を選択し、第3の選択スイッチ163が第2接点を選択するように設定される。第2相の電力計測部IC回路1bの第2相の選択回路16は、第1の選択スイッチ161が第2接点を選択し、第2の選択スイッチ162が第2接点を選択し、第3の選択スイッチ163が第2接点を選択するように設定される。第3相の電力計測部IC回路1cの第3相の選択回路16は、第1の選択スイッチ161が第1接点を選択し、第2の選択スイッチ162が第2接点を選択し、第3の選択スイッチ163が第1接点を選択するように設定される。
そして、各相の切替スイッチ19は、いずれもπ/2遅延回路12側に切り替えられる。
第1相の電力計測部IC回路1aの端子T7は他の電力計測部IC回路に接続されず、端子T8は第2相の電力計測部IC回路1bの端子T9に接続され、端子T9は第2相の電力計測部IC回路1bの端子T7に接続され、端子10は第3相の電力計測部IC回路1cの端子T7に接続される。第2相の電力計測部IC回路1bの端子T8は他の電力計測部IC回路には接続されず、端子T10が第3相の電力計測部IC回路1cの端子T8に接続される。第3相の電力計測部IC回路1の端子T9,T10は、他の電力計測部IC回路には接続されない。
上述のように、各相の電力計測部IC回路の選択回路を設定し、各相の電力計測部IC回路の端子間を接続することによって、第1相の第1の累積回路141には第1相の第1の乗算回路13eの出力(有効電力)が入力され、第1相の第2の累積回路142には第2相の第1の乗算回路13eの出力(有効電力)が入力され、第1相の第3の累積回路143には第3相の第1の乗算回路13eの出力(有効電力)が入力される。また、第2相の第1の累積回路141には第1相の第2の乗算回路13rの出力(無効電力)が入力され、第2相の第2の累積回路142には第2相の第2の乗算回路13rの出力(無効電力)が入力され、第2相の第3の累積回路143には第3相の第2の乗算回路13rの出力(無効電力)が入力される。第1相の電力計測部IC回路1aの合成回路15からは有効電力の積算電力データが出力され、第2相の電力計測部IC回路1bの合成回路15からは無効電力の積算電力データが出力さる。
第1相の電力計測部IC回路1aの合成回路15の有効電力積算データ出力はパルス化回路17に出力され、パルス化されて出力端子T2から出力される。第2相の電力計測部IC回路1bの合成回路15の無効電力積算データ出力はパルス化回路17に出力され、パルス化されて出力端子T2から出力される。
図10を用いて、本発明の第3の実施例を説明する。実施例3は、国内高圧計器(二相有効・無効計測)を、2個の図1に示した電力計測部IC回路1a、1bを用いそれぞれの電力計測部IC回路内の選択回路16を図示のように設定し、電力計測部IC回路1a、1bの入出力端子T7〜T10間を図示のように接続して構成される。
すなわち、第1相の電力計測部IC回路1aの電圧信号用A/D変換回路11Eの一方の入力T1には第1相の電圧センサ21aの出力が接続され他方の入力T5は接地される。第2相の電力計測部IC回路1bの電圧信号用A/D変換回路11Eの一方の入力T1には第2相の電圧センサ21bの出力が接続され他方の入力T5は接地される。同様に、第1相の電力計測部IC回路1aの電流信号用A/D変換回路11Cの一方の入力T3には第1相の電流センサ22aの出力が接続され他方の入力T5は接地される。第2相の電力計測部IC回路1bの電流信号用A/D変換回路11Cの一方の入力T3には第2相の電流センサ22の出力が接続され他方の入力T6は接地される。
第1相の電力計測部IC回路1aの選択回路16は、第1の選択スイッチ161が第1接点を選択し、第2の選択スイッチ162が第1接点を選択し、第3の選択スイッチ163がいずれの接点をも選択しないように設定される。第2相の電力計測部IC回路1bの選択回路16は、第1の選択スイッチ161が第2接点を選択し、第2の選択スイッチ162が第2接点を選択し、第3の選択スイッチ163がいずれの接点をも選択しないように設定される。
そして、各相の電力計測部IC回路の切替スイッチ19は、いずれもπ/2遅延回路12側に切り替えられる。
そして、第1相の電力計測部IC回路1aの端子T7は他の電力計測部IC回路に接続されず、端子T8は第2相の電力計測部IC回路1bの端子T9に接続され、端子T9は第2相の電力計測部IC回路1bの端子T7に接続され、端子T10は他の電力計測部IC回路には接続されない。第2相の電力計測部IC回路1bの端子T8、T10は他の電力計測部IC回路には接続されない。
上述のように、各相の電力計測部IC回路の選択回路を設定し、各相の電力計測部IC回路の端子間を接続することによって、第1相の第1の累積回路141には第1相の第1の乗算回路13eの出力(有効電力)が入力され、第1相の第2の累積回路142には第2相の第1の乗算回路13eの出力(有効電力)が入力され、第1相の第3の累積回路143にはいずれの信号も入力されない。また、第2相の第1の累積回路141には第1相の第2の乗算回路13rの出力(無効電力)が入力され、第2相の第2の累積回路142には第2相の第2の乗算回路13rの出力(無効電力)が入力され、第2相の第3の累積回路143にはいずれの信号も入力されない。第1相の電力計測部IC回路1aの合成回路15からは有効電力の積算電力データが出力され、第2相の電力計測部IC回路1bの合成回路15からは無効電力の積算電力データが出力さる。
図11を用いて、図1に示した電力計測部IC回路2個を用いて三相4線式の電力量計を構成した場合の第4の実施例を説明する。第1相第2相電力計測部IC回路1aは、図1に示した電力計測部IC回路と同様に2つの第1相電圧センサ21aおよび第2相電圧センサ21bと第1相電流センサ22aおよび第2相電流センサ22bが接続される。図1と同様に選択回路16の第1の選択スイッチ161は第一接点を、第2の選択スイッチ162は第2接点を選択し、第3の選択スイッチは第2接点を選択するように設定される。電力計測部IC回路1aおよび電力計測部IC回路1bの切替スイッチ19は端子T5からのディジタル電圧信号を選択するように設定される。
第3相電力計測部IC回路1cの電圧信号用A/D変換回路11Eと電流信号用A/D変換回路11Cには、図10の第2相の電力計測部IC回路1bと同様に、第3相電圧センサ21cと第3相電流センサ22cがそれぞれ一方の入力端子T1および入力端子T3に接続され、それぞれのA/D変換回路の他方の入力端子T5,T6は接地される。選択回路16の第1の選択スイッチ161は第1接点を選択し、第2の選択スイッチ162は第2接点を選択するように設定され、第3の選択スイッチ163はいずれの接点をも選択しないように設定される。
第1相第2相電力計測部IC回路1aの入力端子T10が第3相電力計測部IC回路1cの出力端子T7に接続される。
このように選択回路16を設定し、かつ第1相第2相電力計測部IC回路1aおよび第3相電力計測部IC回路1cの端子T10、T7を接続することによって、1相2相電力計測部IC回路1aの第1の累積回路141は第1相の有効電力を積算し、第2の累積回路142は第2相の有効電力を積算し、第3の累積回路143は第3相電力計測部IC回路1cから送られてきた第1の乗算回路13eの出力である第3相の有効電力を積算する。合成回路15は、各累積回路141,142,143の出力を合成して電力積算データを出力する。
[変形例1]
図12を用いて、合成回路とパルス化回路を追加してさらに多機能な電力量計を実現するようにした電力計測部IC回路の変形例を説明する。この変形例は、単相2線式で有効電力量と無効電力量を計量できるようにした例である。この例では、一相の電圧センサ21の出力が端子T1および端子T5を介して入力される電圧信号用A/D変換回路11Eと、一相の電流センサ22の出力が端子T3および端子T6を介して入力される電流信号用A/D変換回路11Cと、π/2遅延回路12と、第1の乗算回路13eと、第2の乗算回路13rと、選択回路16と、3つの累積回路141,142,143と、第1の合成回路151と、第2の合成回路152と、第1のパルス化回路171と、第2のパルス化回路172とを備えて構成される。切替スイッチ19は電圧信号用A/D変換回路11Eの出力をπ/2遅延させたディジタル電圧信号を選択している。
選択回路16の第1の選択スイッチ161は、第1接点が第1の乗算回路13eの出力に接続された第1接点を選択している。第2の選択スイッチ162は、第2の乗算回路13の出力に接続された第2接点を選択している。第3の選択スイッチ163はいずれの接点をも選択していない。
このような回路構成で、3つの累積回路141,142,143の出力をそれぞれ第1の合成回路151と第2の合成回路152に出力し、これら二つの合成回路の出力を合わせて電力積算データとし、第1の合成回路141の出力を第1のパルス化回路171でパルス化して有効電力のパルス出力とし、第2の合成回路142の出力を第2のパルス化回路172でパルス化して無効電力のパルス出力とする。
第1の累積回路141は、第1の乗算回路13eの出力(有効電力)を積算して有効電力量を出力する。第2の累積回路142は、第2の乗算回路13rの出力(無効電力)を積算して無効電力量を出力する。
図12に示した合成回路15の構成例を、図13を用いて説明する。この構成例は、合成回路15を2個化したものであり、図13の回路構成図に示すように、合成回路15は、3つの比較器151−1,151−2,151−3と、3つのワンショットパルス回路152−1,152−2,152−3と、タイミング回路153と、選択回路155と、第1の論理和(OR)回路154−1と、第2の論理和(OR)回路154−2とを有して構成される。選択回路155を備えてワンショットパルス回路152−1〜152−3の出力を選択することによって、複数の出力Z1,Z2を得ることができる。
[変形例2]
図14を用いて、図12に示した電力計測部IC回路1を3個用いて、三相4線式の、有効電力および無効電力ならびに各相の電力を計測可能とした変形例を説明する。この変形例では、図12に示した変形例と同様に各電力計測部IC回路の電圧信号用A/D変換回路11Eおよび電流信号用A/D変換回路11Cには、それぞれ各相の電圧センサ21a〜21cの出力および電流センサ22a〜22cの出力が入力される。
第1相の電力計測部IC回路1aの選択回路16の第1の選択スイッチ161が第1接点を選択し、第2の選択スイッチ162が第1の接点を選択し、第3の選択スイッチ163が第2接点を選択するように設定される。第2相の電力計測部IC回路1bの選択回路16の第1の選択スイッチ161が第2接点を選択し、第2の選択スイッチ162が第2の接点を選択し、第3の選択スイッチ163が第2接点を選択するように設定される。第3相の電力計測部IC回路1cの選択回路16の第1の選択スイッチ161が第1接点を選択し、第2の選択スイッチ162が第1の接点を選択し、第3の選択スイッチ163が第1接点を選択するように設定される。各相の切替スイッチ19はいずれもπ/2遅延回路12を選択するように設定される。
第1相の電力計測部IC回路1aの端子T7は他の電力計測部IC回路に接続されず、端子T8が2相の電力計測部IC回路1bの端子T9に、端子T9が第2相の電力計測部IC回路1bの端子T7および第3相の電力計測部IC回路1cの端子T9に接続され、端子T10は第3相の電力計測部IC回路1cの端子T7に接続される。第2相の電力計測部IC回路1bの端子T10が第3相の電力計測部IC回路1cの端子T8に接続される。第2相の電力計測部IC回路1bの端子T8と、第3相の電力計測部IC回路1cの端子T10は他のいずれの電力計測部IC回路にも接続されない。
このように設定された電力量計では、第1相の電力計測部IC回路1aでは、第1の累積回路141は1相の第1の乗算回路13eの出力を積算し第1の合成回路151および第2の合成回路152へ出力する。第1相の電力計測部IC回路1aでは、第2の累積回路142は2相の第1の乗算回路13eの出力を積算し第1の合成回路151へ出力する。第1相の電力計測部IC回路1aでは、第3の累積回路143は3相の第1の乗算回路13eの出力を積算し第1の合成回路151へ出力する。第1の合成回路151の出力を第1のパルス化回路171でパルス化して有効総電力のパルス出力を得る。第2の合成回路152の出力を第2のパルス化回路172でパルス化して1相電力のパルス出力を得る。第1の合成回路151および第2の合成回路152の出力から有効電力積算データを得る。
第2相の電力計測部IC回路1bでは、第1の累積回路141には、第1相の電力計測部IC回路1aの第2の乗算回路13rの出力(無効電力)が入力され、第1の合成回路151に入力される。第2相の電力計測部IC回路1bでは、第2の累積回路142には、第2相の電力計測部IC回路1aの第2の乗算回路13rの出力(無効電力)が入力され、第1の合成回路151に入力される。第2相の電力計測部IC回路1bでは、第3の累積回路143には、第3相の電力計測部IC回路1cの第2の乗算回路13rの出力(無効電力)が入力され、第1の合成回路151に入力される。第1の合成回路151は、第1の累積回路141と第2の累積回路142と第3の累積回路143の出力が入力され、これらを合成して無効電力積算データを得る。第1の合成回路151の出力が第1のパルス化回路171に入力され無効総電力のパルス出力を得る。
第3相の電力計測部IC回路1cでは、第1の累積回路141には、3相の第1の乗算回路13eの出力(有効電力)が入力され、第1の合成回路151に入力され、第1のパルス化回路171でパルス化されて第3相電力のパルス出力を得る。第3相の電力計測部IC回路1cでは、第2の累積回路142には、第2相の電力計測部IC回路1bの第1の乗算回路13eの出力(有効電力)が入力され、第2の合成回路151に入力され、第2のパルス化回路172でパルス化されて、2相の電力のパルス出力を得る。
このように、この変形例では3個の電力計測部IC回路を用いて三相4線式の有効総電力および無効総電力を計測するとともに、各相の相電力をも計測することができる。
以上の説明において、2つのA/D変換回路は、電圧信号用A/D変換回路11Eと電流信号用A/D変換回路11Cとして構成されるが、A/D変換回路11EおよびA/D変換回路11Cを、それぞれ電圧信号および電流信号をA/D変換する回路として構成し、それぞれのA/D変換後の信号を第1乗算回路および第2の乗算回路に出力するとともに一方のA/D変換回路の電圧出力をπ/2遅延回路を経て第2の乗算回路の電圧入力端子に選択的に入力する構成とすることも本発明の実施の範囲である。
本発明の第5の実施例を図15を用いて説明する。この電力計測部IC回路は、第1のアナログ電圧信号と第1のアナログ電流信号をA/D変換し第1のデジタル変換電圧信号と第1のデジタル変換電流信号を出力する第1のA/D変換回路11Aと、第2のアナログ電圧信号と第2のアナログ電流信号をA/D変換し第2のデジタル変換電圧信号と第2のデジタル変換電流信号を出力する第2のA/D変換回路11Bと、前記第1のA/D変換回路11Aの第1のデジタル変換電圧信号をπ/2遅延させるπ/2遅延回路12と、前記第1のA/D変換回路11Aの第1のデジタル変換電圧信号と第1のデジタル変換電流信号を乗算する第1の乗算回路13eと、前記第2のA/D変換回路11Bの第2のデジタル変換電圧信号または前記π/2遅延回路のπ/2遅延デジタル変換電圧信号のいずれかと第2のデジタル変換電流信号を乗算する第2の乗算回路13rと、前記π/2遅延回路12のπ/2遅延デジタル変換電圧信号または前記第2のA/D変換回路11Bの第2のデジタル変換電圧信号のいずれかを切り替えて前記第2の乗算回路13rの一方の入力側に入力する切替スイッチ19と、前記第1の乗算回路13eの出力信号または外部からの信号のいずれかを選択する第1の選択スイッチ161、外部からの信号または前記第2の乗算回路11eの出力信号のいずれかを選択する第2の選択スイッチ162、外部からの信号または前記第2の乗算回路13rの出力信号のいずれかを選択する第3の選択スイッチ163を具備する選択回路16と、前記第1の選択スイッチ161に接続される第1の累積回路141と、前記第2の選択スイッチ162に接続される第2の累積回路142と、前記第3の選択スイッチ163に接続される第3の累積回路143と、前記各累積回路の累積結果を合成する合成回路15とを備え、前記選択回路16は、前記第1の乗算回路13eの出力を外部に出力する出力端子T7と、前記第2の乗算回路13rの出力を外部に出力する出力端子T8と、外部からの信号を前記第1の選択スイッチ161の第2接点および前記第2の選択スイッチ162の第1接点に入力する入力端子T9と、外部からの信号を前記第3の選択スイッチ163の第2接点に入力する入力端子T10を備えて、電力計測部IC回路を構成する。
この電力計測部IC回路は、図1の電力計測部IC回路1と同様の動作をする。実施例1から実施例4と同様に使用することができる。
本発明にかかる電力計測部IC回路の基本構成(二相の有効電力積算データを計測し、有効電力パルス出力を得る電力量計)を説明する図。
デルタシグマ(ΔΣ)変調方式を採用したA/D変換回路の基本構成を説明する図。
高周波帯域の量子化雑音を減衰させる移動平均デジタルフィルタの原理を説明する図。
本発明の実施例で用いた2次デルタシグマ変調回路を用いたA/D変換器の構成を説明する図。
本発明にかかる電力計測部IC回路で用いる乗算回路の構成例を説明する図。
本発明で用いた合成回路の構成を説明する図。
図6のタイミング回路の出力を説明するタイミングチャート。
本発明にかかる電力計測部IC回路の基本構成(二相の有効電力積算データを計測し、有効電力パルス出力を得る電力量計)の変形例を説明する図。
本発明にかかる電力計測部IC回路を3個用いて三相の有効電力積算データ・無効電力積算データを計測し、有効電力パルス出力・無効電力パルス出力を得る電力量計の構成を説明する図。
本発明にかかる電力計測部IC回路を2個用いて二相の有効電力積算データ・無効電力積算データならびに有効電力パルス出力および無効電力パルス出力を計測する電力量計の構成を説明する図。
本発明にかかる電力計測部IC回路を2個用いて三相の有効電力積算を計測し、有効電力パルス出力を得る電力量計の構成を説明する図。
本発明にかかる電力計測部IC回路を用いて一相の電力積算データおよび有効電力パルス出力ならびに無効電力パルス出力を計測する電力量計の構成を説明する図。
本発明で用いた合成回路の他の構成を説明する図。
本発明にかかる電力計測部IC回路を3個用いて三相の有効電力積算データ・無効電力積算データを計測し、有効相電力パルス出力・第1相電力パルス出力・第2相電力パルス出力・第3相電力パルス出力を得る電力量計の構成を説明する図。
本発明にかかる電力計測部IC回路の実施例5の基本構成(二相の有効電力積算データを計測し、有効電力パルス出力を得る電力量計)を説明する図。
従来の電力計測部IC回路の基本構成を説明する図。
従来の電力計測部IC回路を用いた三相の有効電力パルス出力・無効電力パルス出力を得る電力量計の構成を説明する図。
従来の電力計測部IC回路を3個用いて三相の有効電力パルス出力・無効電力パルス出力を得る電力量計の構成を説明する図。
符号の説明
1:電力計測部IC回路、11E:電圧信号用A/D変換回路、11C:電流信号用A/D変換回路、12:π/2遅延回路、13e:第1の乗算回路、13r:第2の乗算回路、141:第1の累積回路、142:第2の累積回路、143:第3の累積回路、15:合成回路、151:第1の合成回路、152:第2の合成回路、16:選択回路、161:第1の選択スイッチ、162:第2の選択スイッチ、163:第3の選択スイッチ、17:パルス化回路、171:第1のパルス化回路、172:第2のパルス化回路、19:切替スイッチ、21:電圧センサ、22:電流センサ。