JP4844866B2 - フェライト焼結体 - Google Patents

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Description

本発明は、チョークコイル、ノイズ除去素子、アンテナなどの電子部品や電波吸収体などに用いられるソフトフェライト材料に係るもので、特に数MHzから数GHz、さらにはそれ以上の高周波帯域において好適に用いられる六方晶フェライトに関する。
近年、携帯電話や無線LAN、パソコンなどの高周波化に伴い装置内部で使用される素子もまた高周波化に対応したものが要求されている。このような要求に対し、これらの機器においてインダクタンス部品、インピーダンス部品等として従来用いられてきたスピネル系フェライトでは高周波帯域においてスネークの限界と呼ばれる周波数限界が存在するため、高周波化に対応するためには限界があった。そこで六方晶系の結晶構造を有し、磁化容易面を持つ六方晶フェライトが、かかる周波数限界を超える周波数特性を有する高周波用材料として検討されている。六方晶フェライトの中でも特にBa、Coを含有したZ型フェライト(BaCoFe2441)、Y型フェライト(BaCoFe1222)が高い透磁率を有し、優れた高周波特性を示すことが知られている。
これら六方晶フェライトに対しては、高周波用途に供する磁性材料として、高透磁率化、周波数特性の改善などが図られてきた。具体的には、SiおよびCaを添加することで高周波特性が改善する方法(特許文献1)や、仮焼後にBiとMnを同時添加してから焼成することにより高周波特性に優れ、比抵抗の高い酸化物磁性材料を得る方法(特許文献2)などのように、添加物などの組成や製造条件の調整による高性能化が主に検討されてきた。
特開平9−129433号公報 特開2001−39718号公報
しかしながら、本発明者は組成等の制御による六方晶フェライトの高性能化を進める中で、六方晶フェライトの焼結体の表面に白色物が生成する場合があることを知見した。かかる白色物の生成は、焼結体の外観を損ねるだけでなく、焼結体にさらに被覆や電極等を形成する場合に密着性等の特性に影響を与えたり、精密電子部品の中で使用する場合にコンタミネーションの原因になる恐れがあった。そこで本発明は前記問題に鑑み、焼結体表面への白色物の生成を抑制した六方晶フェライトを提供することを目的とする。
本発明者は、六方晶フェライトの焼結体表面に生成する白色物が、焼結体中に含まれるNaに起因することをつきとめ、本発明を完成するに至ったものである。
本発明は、BaO:18.2〜21mol%、CoO:6〜11.5mol%、残部FeからなるZ型の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体であって、主体である六方晶フェライトの化学量論比よりもBaが多く、かつCoが少ない組成であり、前記主成分に対してLiとSiの少なくとも一方を、LiはLiCO換算で0.2〜1.0wt%、SiはSiO換算で0.05〜0.5wt%の範囲で含み(ただし、CaOまたはPbOが含まれる場合を除く。)、Naの含有量が0.001wt%以上0.08wt%以下で焼結、面のみで構成されていることを特徴とするフェライト焼結体である。前記主成分に対してMnをMn換算で0.05〜5wt%含むことが好ましい。
六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体中のNa含有量を該範囲とすることで白色物の生成が抑制される。なお、白色物生成抑制の観点からはNaの含有量は少ないほど好ましいので下限を特に限定するものではないが、必要以上にNaを低減することは工程の煩雑化・製造コストの増加を招くので、かかる観点からはNaの含有量は0.001wt%以上、より好ましくは0.005wt%以上とするのがよい。なお、Z型またはY型の六方晶フェライトを主体とするとは、粉末X線回折において最も強度の高いピークがZまたはY型フェライトのメインピークであること意味する。
主体である六方晶フェライトの化学量論比よりもBaが多く、かつCoが少ないものであることが好ましい。Naは、Coの素原料である酸化コバルトに特に多く含有されるため、Coの含有成分を通常の化学量論比よりも少なく、すなわちCoプアにすることは、含有Na量の低減、白色物の生成抑制に寄与する。また、Coプアとしたことに伴いBaを多く、すなわちBaリッチにすることで焼結性を向上し、焼結体密度を向上することができるので、白色物の生成抑制に有利である。
Baを含有する素原料としてNa含有量が0.05wt%以下の炭酸バリウムを、Coを含有する素原料としてNa含有量が1wt%以下の酸化コバルトを用いることが好ましい。かかる構成によって、Na含有量が少なく、白色物の生成が抑えられたBa、CoおよびFeを主成分とするZ型またはY型の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体を得ることができる。Na含有量を0.08wt%以下とすることが可能である。
また、前記フェライト焼結体の製造方法において、前記フェライト焼結体の組成が、主体である六方晶フェライトの化学量論比よりもBaが多く、かつCoが少ないものであることが好ましい。Coプアな組成にするためにNa含有量の多い酸化コバルトの使用量を減らすことができるので、焼結体中のNa含有量を低減できる。また、Coプアとしたことに伴いBaリッチにすることで焼結性を向上し、焼結体密度を向上することができるので、白色物の生成しにくい焼結体を得る上で有利である。
本発明によれば、白色物の生成が抑制された品質の高い六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体を提供することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
本発明の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体は、従来からの粉末冶金的手法を応用することで製造することができる。すなわち、Ba、CoおよびFeをそれぞれ含有する素原料を混合する混合工程と、前記混合工程によって得られた混合粉を仮焼する仮焼工程と、前記仮焼工程によって得られた仮焼粉を粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程によって得られた粉砕粉を成形する成形工程と、前記成形工程によって得られた成形体を焼結する焼結工程とを有する製造方法である。ここで混合は、例えば水を媒体としてボールミル、アトライタ等を用いて湿式で混合すればよい。仮焼は例えば電気炉等を用いて、大気中、酸素中等の雰囲気で行う。仮焼後の粉砕は水を媒体としてボールミル、アトライタ等を用いて湿式で粉砕する。湿式粉砕終了後は、粉砕粉は通常そのまま乾燥される。粉砕粉は、造粒を経た後成形され、大気中、酸素中または酸素量を制御した雰囲気中などで焼結される。
本発明の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体は、Ba、CoおよびFeを主成分とするZ型またはY型の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体である。Ba、CoおよびFeを主成分とするZ型またはY型フェライトの代表的なものは、BaCoFe2441、BaCoFe1222であるが、それに限らずBaのサイトやCoのサイトを他の元素で置換した組成式のものや微量元素を添加したものも含まれる。ただし、Ba、Co、Feを主成分とするため、前記Ba、Co、Feのサイトはそれらの元素が半分以上を占めるものとする。Z型、Y型の六方晶フェライトの中でもBa、CoおよびFeを主成分とするものは、特に高周波特性に優れる。
本発明では、前記Ba、CoおよびFeを主成分とするZ型またはY型の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体において、Naの含有量を0.08wt%以下とする。Z型またはY型の六方晶フェライトを大気中で保管すると白色物が生成する場合があり、この白色物は主にNaを含有し、焼結体中のNa含有量が多い場合に発生しやすいことが判明したのである。Naの含有量が0.08wt%を超えると白色物が生成しやすくなる。焼結体中のNaの含有量は、ICPで測定すればよい。なお、前記Na含有量は、焼結体全体の質量に対する金属Na質量であり、これは例えばNaCO換算すれば0.18wt%である。また、Naを多く含有すると水中で保管した場合に、水への溶出量が増える。これは、湿気の多い空気中でNaを主として含有する白色物が生成しやすいことに対応する。Na含有量を0.08wt%以下とすることにより、この溶出量も抑え、5ppm以下とすることができる。Naの含有量は、より好ましくは、0.04wt%以下、さらに好ましくは0.02wt%以下である。該範囲とすることでNaの溶出量を0.7ppm以下、0.1ppm以下とすることも可能となる。
Naを添加することにより、焼結体密度、初透磁率が向上するため、磁気特性等の観点からはNaの添加量は多い方が得である。しかし、Na量が多いと上述のように外観に関連する問題が生じるため、Naは本発明の範囲とすることが好ましいのである。Naは、積極的に添加する場合の他、素原料からも不純物として混入する。Naは炭酸バリウム(BaCO)、酸化コバルト(Co等)に不純物として多く含まれるが、特に酸化コバルトに多く含まれる。工業的使用に供されている一般品の酸化コバルトでは、1wt%を超えるNaが含有されている場合がある。これは、その製造工程においてアルカリ処理する際にNaを含有するアルカリ源を使用するからである。また、同じく炭酸バリウムでは0.1wt%を超える場合がある。したがって、これらの素原料をそのまま使用して六方晶フェライトを製造すると多くのNaを含有することになる。Naの含有は磁気特性上はむしろ好ましい方向に作用するため、磁気特性向上を志向している限りは素原料からのNaの混入が問題とされることはなかったのである。しかし、大気中での長期保管等で白色物が生成する場合があり、これがNaに起因することが新たにわかったのである。
Z型フェライトを主体とするフェライト焼結体或いはY型フェライトを主体とするフェライト焼結体の具体的な組成は、必要とされる特性に応じて選択すればよく、また、磁気特性向上のためにNa以外の添加物を含有させてもよい。例えば、Z型フェライトであればBaOは17〜21mol%、CoOは6〜13mol%、残部Fe、より好ましくは18.2〜19.8mol%、CoOは8〜11.5mol%、残部Feとすることで、高透磁率を得やすい。また、前記主成分に対してMnをMn換算で0.05〜5質量%、SiをSiO換算で0.05〜0.5質量%含有してもよい。高透磁率、かつ体積抵抗率の高いZ型フェライトを主体とするフェライト焼結体を得ることができる。さらに、LiCO換算で0.05〜1.0質量%のLiを含有してもよい。いっそう初透磁率の高いZ型フェライトを主体とするフェライト焼結体が得られる。Y型フェライトであれば、例えばBaOは20〜23mol%、CoOは17〜21mol%、残部Fe、好ましくはBaOは20〜20.5mol%、CoOは20〜20.5mol%、残部Feとすることで高透磁率が得やすい。また、SiO換算で0.1〜0.6重量部のSiを含有してもよい。高透磁率のY型フェライトを主体とするフェライト焼結体が得られる。さらに、LiCO換算で0.1〜0.8重量部のLiを含有してもよい。高透磁率、かつ低損失のY型フェライトを主体とするフェライト焼結体を得ることができる。
ここで、焼結体の組成が化学量論比(Z型であればBaCoFe2441、Y型であればBaCoFe1222)よりもBaリッチ、かつCoプアであることが好ましい。前記化学量論比はBaO、CoO及びFeのmol%で表示すれば、Z型はBaO:17.65mol%、CoO:11.76mol%、Fe:70.59mol%に相当し、Y型はBaO:20mol%、CoO:20mol%、Fe:60mol%に相当する。CoプアとすることでNaを多く含有するCoの素原料の使用量が減るので、結果的に六方晶フェライト焼結体におけるNa含有量を減らすことができる。また、Baをリッチとすることで焼結性を向上し、焼結体密度を向上することができる。焼結体密度の向上は初透磁率などの磁気特性向上の他、空孔が減少するので粒界に存在するNaの溶出を抑制するうえでも有利である。なお、逆に磁気特性仕様等の観点からの材料設計上、化学量論組成或いはそれを超えてCoリッチとすることもできる。この場合、素原料から混入するNa含有量が多くなることにつながり、白色物も生成しやすい組成域であるので、特にNa含有量を抑制することが重要であり、かつその効果も大きい。すなわち、本発明のようにNa含有量を制御した場合とそうでない場合とで、白色物の生成に顕著な差が現れる。
本発明のZ型またはY型の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体は、それぞれ主にZ型またはY型で構成されていればよい。すなわち、粉末X線回折における最も強度の高いピークがZ型またはY型フェライトのメインピークであればよい。それぞれY型、Z型、W型など他の六方晶フェライトやBaFe等の異相が生成する場合があり、これらの異相を含むことも許容する。ただし、安定した特性を得るためには、Z型単相またはY型単相であることが好ましい。
含有されるNaは主として粒界および空孔部に存在する。そのため、粒界に粗大空孔が存在するとNaが外部からの水分と接触しやすく、また焼結体表面に析出したり、溶出したりしやすくなる。したがって、焼結体密度は高いことが好ましい。例えば、焼結体の密度は4.5×10kg/m以上、より好ましくは4.8×10kg/m以上、さらに好ましくは5.0×10kg/m以上とすることで、粒界および空孔部に存在するNaの溶出を抑制する効果が上がる。前記焼結体密度は、Ba量を化学量論組成よりも多くしたり、Li、Siを単独或いは複合で添加することによって得ることができる。Y型フェライトの場合、例えばCuを0.1〜1.5wt%或いはZnを0.1〜1.0wt%を含有させることで4.8×10kg/m以上の高い焼結体密度が得られる。Z型フェライトの場合、例えば、Liであれば0.2wt%以上で4.8×10kg/m以上の焼結体密度を、0.4〜1.0wt%とすることで5.0×10kg/m以上の焼結体密度を得ることも可能である。Siであれば、0.05〜0.2wt%が好ましい。特に、これらを複合で含有する場合に、焼結体密度、初透磁率、体積抵抗率の高いZ型六方晶フェライトを得ることができる。
上述のように含有されるNaは粒界および空孔部に存在するので、焼結後の焼結体は、研磨、切断、化学エッチング等の後加工を施さずに、その表面が焼結面のみ、焼結したままの状態の表面で構成されていることが好ましい。焼結体表面が研磨面や切断面などの加工面を有することなく、焼結ままの焼結面のみで構成されていることによって、焼結体表面にNa含有部分が露出することを抑え、白色物の生成抑制に寄与しうる。該焼結面のみとは、焼結体単体で見た表面であるので、被覆等他の部材で覆われていてもよいのはもちろんである。焼結体表面に機械的加工や化学的加工を施すと、Naを含有する新たな空孔や粒界が露出することになり、Naを含有する白色物の生成やNaの溶出が起きやすくなる。
Naを含有する白色物は、焼結体中の空孔や粒界の存在するNaが大気中の水分或いは水に浸した際に付着する水分に溶解するなどして、焼結体表面に析出したものであると推測される。焼結直後には白色物が確認されなくても、数日以上長期に渡って保管する場合に、白色物の生成が認められる。白色物が経時的に析出すると、焼結体表面に被覆を設けたり、電極を設けたりする場合に、それらの密着性等が低下したり、精密電子部品の中で使用する場合にコンタミネーションの原因になる恐れがある。Naの含有量を本発明の範囲とすることで、事後的に発生する前記問題を回避できる。
工業的に使用されている一般グレードの酸化コバルト、炭酸バリウムをそのまま使用して六方晶フェライトを製造すると、そのNa含有量が多くなる。例えば、酸化コバルトは、その製法上アルカリ反応の際のNaが多く残留する。このように、これらの素原料は製法に起因してNaを多く含有する。これに対してNaの含有量は、例えば以下の方法で低減し、制御することができる。例えば、Coを含有する素原料、Baを含有する素原料として、不純物の少ない高純度グレードを用いる。酸化コバルトは、Na含有量が1wt%以下のCoなどの酸化コバルト用いることが好ましい(例えば、OMG KOKKOLA CHEMIACALS OY 製71/72)。より好ましくは、0.8wt%以下である。また、炭酸バリウムBaCOは、Na含有量が0.05wt%以下のものを用いることが好ましい(例えば、堺化学工業製BW−KS)。より好ましくは0.005wt%以下、さらに好ましくは0.002wt%以下である。
酸化鉄はもともと不純物としてのNaの含有量は少ないので、このNa含有量の観点からは特に限定するものではないが、Na含有量が少ないものが好ましい。例えば0.05wt%以下、より好ましくは0.02wt%以下、さらに好ましくは0.01wt%以下のものを用いればよい。しかし、酸化鉄の種類は、Naの含有量には大きく影響しないものの、焼結体からのNaの溶出に対しては影響を及ぼす。工業的に用いられる酸化鉄としては、鉄鋼生産における酸洗浄によって発生する酸溶液から製造されるもの代表的である。このうちFeを含有する素原料として、Feの塩酸溶液から製造した酸化鉄(塩酸鉄系酸化鉄)を用いて、Z型またはY型の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体を製造すると、焼結体からのNa溶出量が抑制できる。焼結体からの溶出物質にはNa以外にSも含まれており、このSの存在が溶出に影響を与える。この点、硫酸溶液から製造された酸化鉄(硫酸鉄系酸化鉄)は硫黄Sが多い。素原料のうち酸化鉄が大きな比率を占めるので、素原料の酸化鉄におけるSの含有量は低減することが好ましい。かかる含有量を0.01wt%以下とすると、特に水中におけるNaの溶出量を抑制することができる。また、同じ観点からは、Coを含有する素原料である酸化コバルト、Baを含有する素原料である炭酸バリウムのS含有量も少ないことがより好ましい。例えば、Coなどの酸化コバルトでは0.05wt%以下のS含有量のものを、炭酸バリウムでは0.05wt%以下、好ましくは0.01以下のS含有量のものを用いればよい。フェライト焼結体の含有S量としては、0.1wt%以下、より好ましくは0.05wt%以下、さらに好ましくは0.01wt%以下することが、Na溶出量を抑制する上で好ましい。
また、上述の本発明の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体の製造方法において、Ba、CoおよびFeをそれぞれ含有する素原料を混合する混合工程と、仮焼工程によって得られた仮焼粉を粉砕する粉砕工程とを、媒体を水とした湿式混合工程および湿式粉砕工程とし、前記湿式混合工程および湿式粉砕工程の後には混合して得られた混合粉の乾燥および粉砕して得られた粉砕粉の乾燥を行い、前記乾燥うちの少なくとも一方の前に、混合粉または粉砕粉に含まれる水分を液体の状態で除去してもよい。水を媒体とした混合後の混合粉、粉砕後の粉砕粉はスラリー状態を呈しており、通常これらは、乾燥、すなわち水分の蒸発によって、粉状体を得る。この場合、蒸発によって水分を除去しても、含有されるNa量に変化はないが、蒸発乾燥の前に液体の状態で水分を除去すれば、それに溶解しているNaを除去することができる。液体状態での水分の除去は混合工程の後に行ってもよく、粉砕工程の後、または両方の後に行ってもよい。粉砕工程の後の方が粉の粒径が大きく水分を分離しやすいので好ましい。除去の方法は、静置して上澄みを除去してもよいし、フィルタプレス等によって除去してもよい。また、少なくとも一度除去すればよいが、除去後新たな水を加えてもよいし、Na量のいっそうの低減を目的に除去と加水を繰り返してもよい。
(実施例1)
以下、本発明に係る六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体について具体的に説明する。先ず、主成分組成が表1のような割合となるよう、酸化鉄Fe、炭酸バリウムBaCO、酸化コバルトCoを秤量し、水を媒体として湿式ボールミルにて16時間混合した。使用した素原料は、Feは戸田工業製PF−3400、BaCOはNaの含有量が0.05wt%以下である堺化学工業製BW−KS、CoはNaの含有量が1wt%以下であるOMG KOKKOLA CHEMICALS製71/72であり、Fe、BaCO及び、Coが不純物として含有するNa量はそれぞれ0.01wt%、0.001wt%、0.7wt%である。なお、不純物として含有するS量はそれぞれ0.1wt%、0.01wt%未満(検出されず)、0.04wt%であった。素原料と水からなるスラリーを140℃の乾燥機に入れて12時間乾燥した。次にこれを大気中1100℃で2時間仮焼して仮焼粉となした後、この仮焼粉を水を媒体として湿式ボールミルにて18時間粉砕した。得られた粉砕粉のスラリーは、140℃の乾燥機に入れて12時間乾燥した。乾燥後の粉砕粉にバインダー(PVA)を添加し、造粒した。造粒後リング状に圧縮成形し、その後、酸素雰囲気中1280℃で3時間焼結した。得られた外径25mm、内径15mm、高さ5mmのリング状焼結体の25℃における初透磁率を測定した。初透磁率μiは、リング焼結体に20回の巻き線を施し、インピーダンス・ゲインフェイズアナライザー4194A(Yokogawa・Hewlett・Packard社製)を用いて周波数100kHzで測定した(以下、特に断らない限り初透磁率とは100kHzで測定した値を指すものとする)。また、得られた試料の含有Na量は、焼結体を酸に溶解し、それをICPで分析した。なお、焼結体密度は水中置換法で測定し、焼結体の構成相は粉末X線回折法で確認した。X線回折の結果、Z型フェライトのメインピークが最も大きく、焼結体は主にZ型フェライトで構成されていることがわかった。含有Na量や磁気特性の評価結果を表1に示す。なお、これらの試料について、そのリング焼結体を中心で2分割に切断し、切断面に導電材であるドータイトを塗布し絶縁抵抗計(アドバンテスト社製)を用いて体積抵抗率を測定したところ、1×10Ω・m未満の体積抵抗率であった。表1に示すように、焼結体中のNa含有量は、0.08wt%以下の低い値を示した。また、表面が焼結面のみで構成されている,すなわち、焼結ままの実施例1の焼結体を5日間大気中で放置したが、焼結体表面白色物の生成は認められず、良好な表面状態を維持していた。
Figure 0004844866
(比較例1)
素原料の炭酸バリウムBaCOとしてNaの含有量が0.05wt%を超える堺化学工業製BW−P、酸化コバルトCoとしてNaの含有量が1wt%を超えるumicore製Cobalt Black Oxide ORを用いた以外は実施例1と同様にして焼結体を得た。BaCOとCoに不純物として含有するNa量はそれぞれ0.139wt%、1.1wt%である。なお、不純物として含有するS量はそれぞれ0.04wt%、0.02wt%であった。X線回折の結果、Z型フェライトのメインピークが最も大きく、焼結体は主にZ型フェライトで構成されていることがわかった。含有Na量や磁気特性の評価結果を表1に示す。表1に示すように、焼結体中のNa含有量は、0.08wt%を超える高い値を示した。また、初透磁率はNa含有量の少ない実施例1に比べて高い値を示した。しかし、表面が焼結面のみで構成されている,すなわち、焼結ままの比較例1の焼結体を5日間大気中で放置したところ、焼結体表面に白色物が生成していることが確認された。白色物をエネルギー分散型X線分光器EDXで分析したところ、Naが94.5wt%、Siが3.7wt%、Feが1.8wt%であり、Na含有量が90%を超えるNaリッチな相であることがわかった。
(実施例2、比較例2〜3)
主成分組成が表1のような割合となるよう、酸化鉄Fe、炭酸バリウムBaCO、酸化コバルトCoを秤量し、この主成分に対しMn、SiOをそれぞれ3.0wt%、0.13wt%添加し、さらにNaCO添加量を変え、それ以外は実施例1と同様にして焼結体を得た。使用した素原料は、実施例1と同じである。なお、実施例2は積極的にNaCOを添加していないものである。X線回折の結果、Z型フェライトのメインピークが最も大きく、焼結体は主にZ型フェライトで構成されていることがわかった。含有Na量や磁気特性の結果は表1に示した。Na含有量が増えると初透磁率が増加する傾向を示す。表面が焼結面のみで構成されている,すなわち、焼結ままのNa含有量が0.03wt%の焼結体を5日間大気中で放置したが、焼結体表面白色物の生成は認められず、良好な表面状態を維持していた。しかし、Na含有量が0.10wt%、0.20wt%のものは、5日間大気中で放置したところ、焼結体表面に白色物が生成していることが確認された。また、これらの試料について、焼結体からのNaの溶出試験として、焼結体の一部約1gを30mlの純水に入れ、100℃で30分保持した後、純水中に溶け出したNa量をICPで分析し、焼結体重量に対する溶出量を算出した。結果を表2に示すが、Na含有量が0.10wt%以上のものはNaの溶出量が5ppm超と高いのに対して、Na含有量が0.03wt%の試料は、溶出量が0.3ppmであり、低Na溶出性、高安定性を示した。この含有Na量とNa溶出量との関係は三次関数でほぼフィッティングできる。なお、これらの試料について、そのリング焼結体を中心で2分割に切断し、切断面に導電材であるドータイトを塗布し絶縁抵抗計(アドバンテスト社製)を用いて体積抵抗率を測定したところ、1×10Ω・m以上の非常に高い体積抵抗率を示した。
Figure 0004844866
(実施例3)
主成分組成が表1のような割合となるよう、酸化鉄Fe、炭酸バリウムBaCO、酸化コバルトCoを秤量し、この主成分に対しMn、SiO、LiCOをそれぞれ3.0wt%、0.13wt%、0.4wt%添加し、それ以外は実施例1と同様にして焼結体を得た。使用した素原料は、実施例1と同じである。X線回折の結果、Z型フェライトのメインピークが最も大きく、焼結体は主にZ型フェライトで構成されていることがわかった。含有Na量を表1に示すが、CoOが9モル%、BaOが19.2モル、残部Feの組成である実施例3では含有Naが少なく、かつ焼結体密度が特に高い焼結体が得られている。特に化学量論組成よりも、大幅にCoプアーな組成とすることで、含有Na量が大幅に少なくできることが分かる。表面が焼結面のみで構成されている,すなわち、焼結ままの実施例3の焼結体を、焼結体を5日間大気中で放置したが、焼結体表面白色物の生成は認められず、良好な表面状態を維持していた。

Claims (2)

  1. BaO:18.2〜21mol%、CoO:6〜11.5mol%、残部FeからなるZ型の六方晶フェライトを主体とするフェライト焼結体であって、
    前記主成分に対してLiとSiの少なくとも一方を、LiはLiCO換算で0.2〜1.0wt%、SiはSiO換算で0.05〜0.5wt%の範囲で含み(ただし、CaOまたはPbOが含まれる場合を除く。)、Naの含有量が0.001wt%以上0.08wt%以下で、
    焼結体表面が焼結ままの焼結面のみで構成されていることを特徴とするフェライト焼結体。
  2. 前記主成分に対してMnをMn換算で0.05〜5wt%含むことを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結体。
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