JP4844470B2 - 種結晶の固定方法 - Google Patents

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本発明は、炭化珪素などの単結晶成長用の種結晶を黒鉛からなる種結晶支持部に固定するための固定方法に関するものである。
従来、炭化珪素単結晶基板の製造方法として、昇華再結晶法(改良レーリー法)が主に採用されている。図10はこの昇華再結晶法に用いられる装置の概略図で、容器体20と種結晶支持部2を備えた蓋体30よりなる黒鉛製坩堝の下半部内には、原料粉末としてSiC原料粉末21が収容してあり、これに対向する蓋体30の下面の種結晶支持部2には種結晶4が配置してある。坩堝内は、SiC原料粉末21側が高温に、種結晶4側が低温になるように保持され、SiC原料粉末21の昇華ガスが低温の種結晶4上で再結晶することにより炭化珪素単結晶22が成長する。
上記方法において、種結晶4は、通常、蓋体30に設けた種結晶支持部2に接着剤を用いて貼付けられる。ところが、この場合、図11(a)に示すように、接着剤を乾燥・硬化させる熱処理工程により接着層31に気泡が発生しやすく、接着層31に空隙32が残ってしまう。この空隙32が存在する状態で単結晶22を成長させると、空隙32がなく接着層31に密着している場所では蓋体30の種結晶支持部2に熱が伝導するため、種結晶4と種結晶支持部2の温度勾配はなく、空隙32が存在する場所では種結晶4が種結晶支持部2に熱を逃がさないために、局所的に種結晶4と種結晶支持部2の間に温度勾配が生じる。
この結果、図11(b)に示すように、空隙部分32で種結晶4の裏面から温度の低い種結晶支持部2に向かって種結晶4の昇華が起こる。こうした、種結晶4の裏面で起こる裏面昇華は、種結晶4と種結晶支持部2の貼付け面の複数箇所で発生し、単結晶成長中において継続して起こり、図11(c)に示すように、種結晶4と台座との界面から成長方向に伝播する大きな欠陥(マクロ欠陥)33を引き起こす。このマクロ欠陥33の存在により、長尺のSiC単結晶を得ても、実用可能なSiCウェーハを多数枚切出すことが困難となるばかりでなく、マクロ欠陥33を起点にマイクロパイプと呼ばれる中空貫通欠陥を誘発するおそれがある。このため、高品質SiC単結晶を大面積で得ることは困難であるという問題がある。
種結晶の固定方法として、例えば、種結晶と蓋体の種結晶支持部との間に炭化層を介在させて両者を結合させることにより、種結晶の面内温度分布を均一にする方法が提案されている(特許文献1参照)。この構成は、図11(a)〜(c)の接着層31が炭化層34に置き代わっているだけなので図示を省略する。また、種結晶の単結晶が成長する面以外の面に、単結晶成長条件において安定な物質(例えば、タンタル)よりなる保護層で被覆した上で、蓋体の種結晶支持部に接着剤で接合することにより、マクロ欠陥を抑制する方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、特許文献1の方法は、高分子材料を含有する液状接着剤(例えば、レジスト)を介在させたあと、高温で熱処理することにより種結晶4と蓋体30の種結晶支持部2との間に炭化層34を形成して種結晶4を固定しているため、熱処理工程により発生した気泡が原因で生じる空隙32が発生しやすく、図11に示したのと同様にマクロ欠陥33を完全に抑制することはできない。
また、特許文献2の方法においても、図12(a)〜(c)に示すように、接着層31あるいは炭化層34の不均一さにより局所的な温度分布が発生し、その結果、保護層35にクラック36が入り、そのクラック36を通して種結晶4と種結晶支持部2の間で種結晶の裏面昇華が起こり、マクロ欠陥33が発生してしまうという問題があった。
これらの問題を解決するため、種結晶と蓋体の種結晶支持部との間にチタンを介在させてチタンの融点以上の温度で熱処理を施しチタンを溶融させて、種結晶と種結晶支持部とを固定する方法がある(特許文献3参照)。
特開平9−110584号公報 特開平9−268096号公報 特開2005−247681号公報
パワーデバイス用基板として最適な4H−SiC単結晶基板を作成するためには、種結晶の(000−1)カーボン面を成長面としなければならない。ここで、(000−1)における−1の部分の表記方法は、通常は1の上に−を付して記載するが、本明細書では1の前に−を付して−1としている。
ところが、特許文献3の技術では、図13(c)と(d)に示すように接着層であるチタン炭化物13と接する種結晶4の面極性が(0001)シリコン面で成長面が(000−1)カーボン面として種結晶4の固定を行った後に単結晶成長を行うと、接着層であるチタン炭化物層13と(0001)シリコン面の界面付近からマクロ欠陥33が発生しこれが成長中の単結晶に伝播する問題があった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、チタンを用いた種結晶の固定方法において、(000−1)カーボン面を成長面とした場合でも、成長結晶中に伸長するマクロ欠陥の発生を確実に抑制できる種結晶の固定方法を提供することを目的とする。
従来の課題を解決するために、本発明の種結晶の固定方法は、黒鉛台座に設けられた種結晶支持部上にチタンを配置するチタン配置工程と、(0001)シリコン面を粒径12ミクロン以上のダイヤモンド研磨材を用いた機械研磨を施した炭化珪素から成る種結晶を前記チタン上に配置する種結晶配置工程と、前記種結晶上に加圧部材を配置した積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を覆うように容器体を配置する積層体格納工程と、前記黒鉛台座の下部温度をチタンの融点以上、且つ前記種結晶上に炭化珪素結晶を成長させる温度以下の範囲で加熱する加熱工程と、を特徴としたものである。
さらに本発明の種結晶の固定方法は、黒鉛台座に設けられた種結晶支持部上にチタンを配置するチタン配置工程と、炭化珪素から成る第1の種結晶の(000−1)カーボン面を前記チタン上に配置する第1の種結晶配置工程と、炭化珪素から成る第2の種結晶の(0001)シリコン面を前記第1の種結晶上に配置する第2の種結晶配置工程と、前記第2の種結晶上に加圧部材を配置した積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を覆うように容器体を配置する積層体格納工程と、前記黒鉛台座の下部温度をチタンの融点以上、且つ前記種結晶上に炭化珪素結晶を成長させる温度以下の範囲で加熱する加熱工程とを特徴としたものである。
本発明の種結晶の固定方法によれば、黒鉛台座上にチタンを配置し、表面処理したSiC単結晶をその(0001)シリコン面がチタンと接するように配置して加圧しながら加熱して黒鉛台座に固定することにより、その後の昇華法によるSiC結晶成長を行う際に、マクロ欠陥の発生が少ない高品質な4H−SiC単結晶の製造を可能とするものである。
さらに、本発明の他の種結晶の固定方法によれば、黒鉛台座上にチタンを配置し、(000−1)カーボン面がチタンと接するように第1の種結晶を配置し、その上に第1の種結晶の(0001)シリコン面と(0001)シリコン面が接するように第2の種結晶を配置して、加圧しながら加熱して黒鉛台座に固定することにより、その後の昇華法によるSiC結晶成長を行う際に、マクロ欠陥の発生が少ない高品質な4H−SiC単結晶の製造を可能とすることができる。
以下に、本発明の炭化珪素単結晶を成長させるための種結晶の固定方法の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
本発明の種結晶の固定方法に対応する具体的な方法について、図1及び図2を参照して説明する。 本実施の形態では、種結晶として昇華法により製造した厚さ約0.3〜1mmの4H−SiC単結晶を用いているが、昇華法により作製された6H−SiC単結晶またはレーリー基板やアチソン法などにより作製された単結晶を種結晶としても用いることができる。
まず、図1(a)に示すように、黒鉛台座1の種結晶支持部2上に、厚さ50μmのチタン3、成長面が(000−1)カーボン面4aで、ダイヤモンド粒子径12μmを用いた機械研磨により表面を粗研磨し(0001)シリコン面4bがチタン3に接するように種結晶4を、黒鉛からなる加重を加えるための加圧部材5が、この順で配置された積層体6を形成した。加重として種結晶4に対し33.5kPa加わるようにした。機械研磨は、以下の手順で行った。
図2に示すように、研磨機14に対し種結晶4を(0001)シリコン面4bが研磨定盤15に接触するようにセットし、ダイヤモンド研磨材16により種結晶4のシリコン面側を機械研磨する。研磨機14は、研磨盤15とガイドリング17と試料固定治具18と噴射ノズル19とから構成されている。種結晶4はガイドリング17内に配置され、試料固定治具18にて固定される。このように固定された種結晶4のシリコン面側が、回転する研磨定盤15に押し付けられて、この状態で研磨が行われる。ダイヤモンド研磨材16は、ダイヤモンド粒子が水などの溶媒に混合されたもので、噴射ノズル19から一定時間間隔で研磨定盤15の表面に供給している。
次に、図1(b)に示すように、黒鉛からなる容器体7を積層体6にかぶせ、さらにこれを上下に穴の開いた断熱材8で覆い、内部の圧力調整が可能な水冷された二重石英容器9中に設置した。二重石英容器9周辺には黒鉛からなる容器体7を加熱するRFコイル10、二重石英容器9上下部に黒鉛台座1の下部温度と黒鉛製の容器体7の上部温度を監視するためのパイロメータ11、12が備え付けられている。実際には、積層体6を保持する固定治具、二重石英容器9を真空に引くための真空ポンプ、二重石英容器9内の雰囲気を調節する圧力調整弁等もあるが、省略する。
次いで、二重石英容器9中を5×10-4Pa以下になるまで真空引きし、アルゴンガスを導入して圧力を93.1kPa(700Torr)に調節した。この状態で黒鉛台座1の下部温度がパイロメータ11の測定値で1700℃、黒鉛からなる容器体7の上部温度がパイロメータ12の測定値で略1700℃程度になるまで加熱し、約3時間保持した。その後1100℃まで10℃/minの速度で降温し、続いて室温(25℃)付近まで 4 時間程度かけて自然冷却した。二重石英容器9から積層体6を取り出し、黒鉛からなる加重を加えるための加圧部材5を取外した。
このようにして図1(c)に示す種結晶4が黒鉛台座1の種結晶支持部2にチタン炭化物13により固定一体化されたものを得た。加熱雰囲気としてアルゴンガスを用いたが、台座の黒鉛、種結晶の炭化珪素、チタンと反応するものでなければよく、ヘリウムやアルゴンとヘリウムの混合ガスなどを用いても良い。
このような固定方法により形成されたチタン炭化物13は、空隙の存在しない種結晶4と種結晶支持部2を密着させる融点が約2800℃程度の接着層となり、通常、炭化珪素単結晶を成長させる2300℃程度の温度において、種結晶4と種結晶支持部2との間に温度勾配が生じず、種結晶4裏面からの昇華を防止することができ、マクロ欠陥の発生を抑制することができる。チタン炭化物は、カーボンの含有量により融点が異なるが、カーボンの含有量が18atom%以上であれば融点2500℃以上を有するため、炭化珪素単結晶成長温度でも種結晶を固相で保持することが可能である。実際に、固定した種結晶の種結晶と種結晶支持部との界面のSEM(scanning electron microscope)観察とEDX(Energy Dispersive X-ray Fluorescence Spectrometer)分析を行なったところ、チタン45atom%、カーボン55atom%の空隙の存在しないチタン炭化物が形成されていた。
実際にマクロ欠陥の導入の有無を評価するためには炭化珪素単結晶を成長させて、この結晶を成長方向と平行にスライスした後、鏡面研磨して断面観察を行う必要がある。単結晶成長の手順は、以下の通りである。図3に示すように、黒鉛製坩堝20の上部に種結晶支持部2を有する黒鉛台座1を置き、その黒鉛台座1の種結晶支持部2に本発明の種結晶固定方法で固定されたSiC種結晶が設置され、黒鉛製坩堝20の下半分内に、原料粉末としてSiC粉末21を入れ、これを上下に穴のあいた断熱材8で覆い、内部の圧力調整が可能な水冷された二重石英容器9中に設置する。二重石英容器9周辺には黒鉛製坩堝を加熱するRFコイル10、二重石英容器9上下部に黒鉛台座1と黒鉛からなる容器体20の温度を監視するためのパイロメータ11、12を備え付けている。実際には、坩堝を保持する固定治具、二重石英容器9を真空に引く真空ポンプ、二重石英容器9内の雰囲気を調節する圧力調整弁等もあるが、省略する。続いて、SiC粉末21側を高温に、種結晶4側を低温にし、昇華ガスを種結晶上で再結晶化させて炭化珪素単結晶22を成長する。マクロ欠陥を観察するための炭化珪素単結晶の成長条件としては、圧力1.33kPa(10Torr)のアルゴンと窒素の混合ガス雰囲気中で、SiC粉末側温度2230℃、種結晶側温度2160℃、成長時間50時間とした。成長結晶は4H−SiCである。
成長後、単結晶は成長方向と平行にスライスし、研磨を行い、光学顕微鏡の透過モードを利用することにより、断面観察試料の厚さ方向にピントをずらしながらマクロ欠陥の有無を調べた。また、マクロ欠陥の本数を種結晶の幅と断面観察試料の厚みで割ることにより、マクロ欠陥密度を算出した。さらに、必要に応じて、種結晶と成長結晶の界面から発生するマイクロパイプ欠陥の密度も算出した。
ここで種結晶4のチタンと接触する(0001)シリコン面の表面層を粗研磨する理由を説明する。炭化珪素のc面結晶の断面構造は、図4(a)のようにシリコン原子23とカーボン原子24の対を1つのユニットに見立てて、図4(b)のように示される。この例は4H−SiCのものであり、ABCBが1周期となって、これらが秩序よく積層されている構造となっている。図からわかるように、c面結晶には最表面にシリコン原子23が配列した(0001)シリコン面とカーボン原子24が配列した(000−1)カーボン面が存在する。本発明によるチタンを用いた種結晶の固定方法は、溶融したチタンが種結晶支持部の黒鉛と反応してチタン炭化物となり種結晶を固定するが、熱処理温度が1700℃程度と高いので種結晶とチタンの界面でも何らかの反応が生じると考えられる。
このため、(000−1)カーボン面をチタンと接触させた場合は(接着面がカーボン面)、種結晶とチタンの反応は、界面ではカーボン原子とチタンの反応となり、融点の高いチタン炭化物が界面部分にも形成される。逆に、(0001)シリコン面をチタンと接触させた場合は(接着面がシリコン面)、種結晶とチタンの反応は、界面ではシリコン原子とチタンの反応となり、炭化珪素単結晶の成長温度より融点の低いチタンシリサイドが形成されていると考えられる。チタンシリサイドはいくつかの組成の化合物を形成するが、一番融点の高いTi5Si3組成の化合物でも2130°である。このため、(0001)Si面を接着面にした場合、接着界面で炭化珪素単結晶成長中に接着不良を引き起す結果、マクロ欠陥が導入される。
この解決のためには、接着面が(0001)シリコン面の種結晶とチタンの界面において、反応させた際にシリコン原子とだけではなくカーボン原子との反応も取り入れて、チタンとSiとCの3元の化合物を形成すれば、炭化珪素単結晶の成長温度より融点の高い接着層を種結晶との界面に形成できる。この方法として、接着面である(0001)シリコン面に、表面処理を施した傷25を与える。傷25を与えることにより、図4(c)に示すようになり、接着面である(0001)シリコン面の表面にはカーボン原子の情報が露出することになる。
実際に、(0001)シリコン面を粒子径3μm〜45μmのダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行って傷を導入した場合と、コロイダルシリカを用いた化学的機械的研磨(CMP)を行って傷を導入しなかった場合とで(0001)シリコン面を接着面とした種結晶の固定を上記の固定条件で行い、上記の単結晶成長条件でこれらの種結晶を用いて炭化珪素単結晶の成長を行った。
結果を、表1に示す。以下、評価項目ついて説明する。マクロ欠陥を完全に抑制できた場合(マクロ欠陥密度0/cm2の場合)は○、マクロ欠陥が1本でも導入されている場合は×とした。また、マクロ欠陥がバッチごとに導入されなかったり導入されたりする場合は△とした。この評価基準は、表2以降についても同様とする。(0001)シリコン面をCMPで研磨した場合とダイヤモンド粒子径3μmを用いた機械研磨の場合は×、ダイヤモンド粒子径9μmを用いた機械研磨の場合は△であり、マクロ欠陥を抑制することができなかった。ダイヤモンド粒子径12μmを用いた機械研磨の場合は、マクロ欠陥を完全に抑制することができた。
Figure 0004844470
これらの結果により、(0001)シリコン面の表面処理をせずに傷を与えなかった場合は、図5(a)に示すように(0001)シリコン面とチタンの界面に炭化珪素単結晶の成長温度より融点の低いチタンシリサイド層26が形成され、(0001)シリコン面の表面処理を施し傷を与えた場合は、図5(b)に示すように(0001)シリコン面とチタンの界面にチタンとシリコンとカーボンの3元からなる炭化珪素単結晶の成長温度より融点の高い化合物の層27が形成されているものと推測される。このため、接着面を(0001)シリコン面にする際は、表面層の粗研磨が必要である。
次に、チタンの厚さの具体的要件を説明する。本実施の形態では、チタンの厚さとしては50μmとしたが、20〜200μmの間のものを用いることにより、十分な接着強度を得ることができ、炭化珪素単結晶を成長させた際のマクロ欠陥を抑制できる。加えて、種結晶表面への溶融金属の回り込みを防止でき、種結晶表面に付着した金属を核としたマイクロパイプ欠陥の発生や成長させる炭化珪素単結晶中への金属汚染を抑制することができる。チタンの厚さを変えて、加重33.5kPaとして、圧力93.1kPa(700Torr)のアルゴンガス雰囲気中で、加熱温度1700℃で3時間熱処理した場合の結果を表2に示す。
評価項目としては、接着強度と結晶表面への金属の回り込みの有無とマクロ欠陥の発生の有無で判断した。金属の回り込みに関しては、回り込みが無いものは○、回り込みの有るものは×とした。また、接着強度は、100g/cm2より大きな負荷に耐えることができるものを○、100g/cm2以下の負荷にしか耐えられないものを×とした。これは昇華法で作製出来る結晶の大きさに関与する値なので大きいほど良いが、必要以上に大きい値は不要である。例えば、2インチ口径の種結晶を用いて長さ100mm程度の単結晶インゴットを作製する場合には、最低32g/cm2の負荷に耐えることができればよいが、これ以上大きな結晶を作製するには、不十分である。実用性を考慮して、接着強度の判断基準を、負荷100g/cm2に耐えるか否かとした。
Figure 0004844470
表2の結果から明らかなように、チタンの厚みが薄いほど、接着強度が低くなる。厚さ20μmでは、十分な接着強度を有しているが、厚さが5μmになると接着強度が低下し、種結晶が種結晶支持部に接着されていなかった(接着強度が不十分であるためマクロ欠陥のデータはない)。一方、チタンの厚さが厚くなるにつれ、種結晶表面側へのチタンの回り込みが大きくなる。チタンの厚さ200μmでは、接着強度は十分であるものの、チタンが種結晶側面にわずかに回り込んだチタン溶融跡が残っていた。このため、回り込みの評価としては△〜○と記した。ただし、種結晶表面にチタンの回り込みはないのでこれが回り込みの限界と考えられる。さらに厚くした厚さ250μmでは種結晶表面の周辺部分や、黒鉛からなる加圧部材にチタンの溶融付着跡が確認できた。また、マクロ欠陥はチタン厚さ20〜250μmで完全に抑制できていた。これらのことより、チタンの厚さとしては、20〜200μmであることが望ましい。
次に、加熱温度の具体的要件を説明する。本実施の形態では、加熱工程の加熱温度として1700℃を用いたが、1700〜2000℃の範囲であれば、十分な接着強度を得ることができ、炭化珪素単結晶を成長させた際のマクロ欠陥を抑制できる。
加熱温度を変化させて、チタン厚さ50μm、加重33.5kPa、圧力93.1kPa(700Torr)のアルゴンガス雰囲気中で3時間熱処理した場合の結果を表3に示す。評価項目としては、接着強度とマクロ欠陥で判断した。
Figure 0004844470
表3から明らかなように、加熱温度が1500℃〜1600℃では、接着強度は十分であるものの、マクロ欠陥は加熱温度の低下とともに抑制できない傾向にある。これは、加熱温度がチタンの融点である約1675℃より低いため、チタンが完全に溶融して種結晶支持部の黒鉛との反応が進行していないために、カーボン含有量が18atom%より低く、融点が2500℃より低いチタン炭化物層が形成されているためであると思われる。一方、加熱温度が1700〜2000℃の範囲では、接着強度とマクロ欠陥ともに良好な結果が得られた。これは、チタンが完全に溶融して種結晶支持部の黒鉛と反応が十分進行したため、カーボン含有量が18atom%より高く、融点が2500℃より高いチタン炭化物層が形成されているためであると思われる。さらに加熱温度を上げ、2050℃にすると、種結晶が台座に接着されない。これは、加熱温度が高いため、溶融したチタンと種結晶支持部の黒鉛が過剰に反応し、チタン炭化物層がカーボンリッチになり、ポーラスな層構造になったためと推測される。従って、加熱温度は1700〜2000℃であることが望ましい。
次に、加熱時間の具体的要件を説明する。本実施の形態では、加熱工程の加熱時間の具体例として、3時間としたが、1〜6時間の範囲であれば、種結晶4と黒鉛台座1の種結晶支持部2とをチタン炭化物層により強固に結合させることができるとともに、マクロ欠陥を抑制することができる。加熱時間を変化させて、チタン厚さ50μm、加重33.5kPa、圧力93.1kPa(700Torr)のアルゴンガス雰囲気中にて熱処理した場合の接着実験の結果を表4に示す。加熱温度は、上記の結果より、1700℃〜2000℃の範囲とした。評価項目としては、接着強度とマクロ欠陥とした。加熱時間と接着強度及びマクロ欠陥との関係を表4に示す。
Figure 0004844470
表4で明らかなように、加熱時間0.5時間では加熱温度1700℃、1800℃、1900℃において種結晶4が黒鉛台座1の種結晶支持部2に接着されていなかった。これは、加熱温度1700〜1900℃の範囲において、加熱時間0.5時間ではチタンが溶融するのに十分な時間でないのが原因と考えられる。2000℃では、接着強度は十分であるものの、マクロ欠陥が確認できた。これは、加熱温度2000℃、加熱時間0.5時間では、チタンが溶融し種結晶支持部の黒鉛と反応するものの、時間が短いために反応時間が短く、カーボン含有量が18atom%より低く、融点が2500℃より低いチタン炭化物層が形成されているためであると思われる。加熱時間1〜6時間では、加熱温度1700〜2000℃の範囲において、接着強度とマクロ欠陥とも良好な結果が得られた。これは、この条件範囲では、チタンが完全に溶融して種結晶支持部の黒鉛と十分に反応したために、カーボン含有量が18atom%より高く、融点が2500℃より高いチタンカーバイド層が形成されているためであると思われる。加熱時間8時間以上では、すべての加熱温度において、接着強度減少、マクロ欠陥密度増加の傾向が見られた。これに関しては、加熱時間が長いために、溶融したチタンが種結晶支持部の黒鉛と過剰に反応し、チタン炭化物層がカーボンリッチになり、ポーラスな層構造になっているためと推測される。従って、加熱時間は1〜6時間の範囲にあることが望ましい。
次に、接着時の加圧要件について説明する。本実施の形態では、接着時の加重を加えるための加圧部材5の加重としては黒鉛製の部材で33.5kPaとしたが、7.84〜87.5kPaの範囲であれば、種結晶4と黒鉛台座1とをチタンた炭化物13により強固に結合させることができるとともに、マクロ欠陥を抑制することができる。加圧を変化させて、チタン厚さ50μmを用いて、圧力93.1kPa(700Torr)のアルゴンガス雰囲気中にて3時間熱処理した場合の結果を表5に示す。加熱温度は、1700℃〜2000℃の範囲とした。評価項目としては、接着強度とマクロ欠陥で判断した。加圧力と接着強度及びマクロ欠陥との関係を表5に示す。
Figure 0004844470
表5から明らかなように、すべての温度範囲で、加圧4.23kPaにおいて、接着強度は十分であるものの、わずかではあるがマクロ欠陥が確認できた。これは、加圧が弱いために、種結晶とチタンの界面、あるいは、チタンと種結晶支持部の界面において、局所的に接触している部分と接触していない部分ができ、熱処理を施した際に、チタンと黒鉛の反応が十分に行われている部分と反応が不十分である部分が存在することが原因と思われる。これにより、接着層の構成が、カーボン含有量が18atom%より高いチタンカーバイド層とカーボン含有量が18atom%より低いチタンカーバイド層が混在した層となり、接着強度はあるものの、マクロ欠陥を抑制できない。
一方、加圧7.84〜87.5kPaにおいては、すべての温度範囲で接着強度とマクロ欠陥密度とも良好な結果が得られた。これは、種結晶とチタンの界面、あるいは、チタンと種結晶支持部の界面において、全面的に良好な接触が得られているため、熱処理を施した際に、チタンと黒鉛の反応が全面均一に行われているためである。
加圧95.3kPaにおいては、接着強度は十分であるものの、加圧が大きいため、接着後に種結晶の周辺の欠けやクラックを生じることがあった。表の○(*)は、所望の接着がされており、マクロ欠陥も抑制できているものの、種結晶周辺部の欠けやクラックから再度結晶成長させた際に新たな欠陥を引き起こすと考えられるので、このような表現とした。
従って、加熱温度1700〜2000℃の範囲での加圧力は、7.84〜87.5kPaであることが望ましい。但し、種結晶厚さを1mmまでにした場合は上限が87.5kPaという結果になったが、種結晶厚さがこれ以上に厚い場合は加圧力が87.5kPa以上であっても割れないため、この加圧力の上限に関しては種結晶の厚みに左右される値であるため、これに限定されるものではない。
また、加重をかけるための加圧部材5の具体例として黒鉛を用いたが、タンタル、ニオブ、モリブデン、タンタル炭化物、ニオブ炭化物、モリブデン炭化物の少なくともいずれか1つから構成されたものを用いても、加熱工程の間、加圧部材5の溶融や溶融した加圧部材5が種結晶4と反応することがないため、種結晶表面への汚染がなく、成長させる炭化珪素単結晶中への不純物取り込みや不純物を起点としたMPなどの新たな欠陥の発生を抑制することができる。
次に、種結晶と種結晶支持部と加圧部材の関係について説明する。本実施の形態では、図1に示すように、加重をかけるための加圧部材5を種結晶4全面に接触するように配置しているが、図6に示すように、黒鉛台座1の種結晶支持部2の面積より種結晶4の面積が大きく、加圧部材が種結晶4の周辺部と接触するようにしたほうが良い。さらに、種結晶支持部2の種結晶4を支持する領域よりはみ出した種結晶領域の少なくとも一部分のみが加圧部材5と接触するようにしたほうがより好ましい。この効果を、以下説明する。
種結晶の固定の条件は、チタンの厚さ50μm、黒鉛台座の下部温度1700℃、容器体の上部温度1695℃、加重33.5kPa、圧力93.1kPa(700Torr)のアルゴンガス雰囲気中にて3時間の熱処理とした。黒鉛台座の種結晶支持部の大きさは直径16mmとし、種結晶の大きさとしては略円形で直径17mmのものを用い、種結晶の外周部約0.5mmの部分に黒鉛からなる加圧部材が接触するようにした。評価項目としては、種結晶の初期の表面粗さRaと種結晶の固定後の表面粗さRaの測定と、この種結晶を用いて炭化珪素単結晶を成長させ断面観察を行い、マクロ欠陥密度とマイクロパイプ密度を計測した。Raの測定は、Zygo社製Newview5032を用いて行った。測定領域は、縦:0.14mm、横:0.11mmである。比較として、黒鉛からなる加圧部材がレーリー種結晶全面に接触した場合についても同様の実験を行った。結果を表6に示す。
Figure 0004844470
表6から明らかなように、加圧部材が周辺部のみに接触している場合は種結晶の固定後の表面粗さRaは1.837nm、全面に接触している場合は種結晶の固定後の表面粗さRaは10.36nmであり、明らかに加圧部材を周辺部のみに接触させる方法では、種結晶の固定後の表面の粗さが小さくなっている。これは、1700℃で加熱処理をしているため、炭化珪素の構成元素で融点が約1450℃と低いシリコンが種結晶表面から抜けやすい状況にあり、種結晶全面に黒鉛からなる加圧部材が接触しているとシリコンと黒鉛との反応が促進されるためと考えられる。周辺部のみの接触でも、加圧部材が接触している周辺領域は加圧部材が全面接触しているときと同様Ra=9.963nmと悪くなるが、炭化珪素単結晶の成長雰囲気において、黒鉛台座の種結晶を支持する領域よりはみ出した種結晶領域は高温となり熱エッチングされて消失してしまうため、単結晶の品質に影響を及ぼさない。マクロ欠陥密度に関しては、両者とも0であり、チタン炭化物層により良好な接着が得られていると思われる。マイクロパイプ密度に関しては、加圧部材が周辺部のみ接触している場合は3/cm2、加圧部材が全面に接触している場合は100/cm2であった。種結晶の固定条件や単結晶成長条件を同じにしていることから、マイクロパイプ密度は種結晶の固定後の表面粗さに依存しているものと推測される。従って、黒鉛台座の種結晶支持部の面積より種結晶の面積が大きく、加圧部材が種結晶の周辺部と接触するようにしたほうが良く、さらに、種結晶支持部の種結晶を支持する領域よりはみ出した種結晶領域の少なくとも一部分のみが加圧部材と接触するようにしたほうが望ましい。
次に、黒鉛台座1の種結晶支持部2の面積より種結晶4の面積が大きく、加圧部材5が黒鉛台座1の種結晶支持部2よりはみ出した種結晶領域のみが接触するようにし、黒鉛台座1の下部温度と黒鉛からなる容器体7の上部温度の差を調節するようにしたことの効果について、結果とともに説明する。種結晶の固定の条件は、チタン50μm、下部温度1700℃、圧力93.1kPa(700Torr)のアルゴンガス雰囲気中、加熱時間3時間、加重33.5kPaとし、上部温度をパラメータとして変化させた。黒鉛台座の種結晶を支持する領域の大きさは直径16mmとし、種結晶の大きさとしては略円形で直径17mmのものを用い、種結晶の外周部約0.5mmの部分に黒鉛からなる加圧部材が接触するようにした。評価項目としては、種結晶の固定後の表面粗さRaの測定と、炭化珪素単結晶成長後のマクロ欠陥密度とマイクロパイプ密度の計測とした。種結晶の初期の表面粗さRaは、約0.5nm程度にそろえた。
結果を、図7に示す。図7(a)は種結晶固定後の表面粗さの結果であり、図7(b)は種結晶と成長層界面から生じるマイクロパイプ密度の結果である。(下部温度−上部温度)≦0の条件において、種結晶の固定後のRaは1nm程度となっており、表面の粗れが抑制されているのがわかる。これに対応して、マイクロパイプ密度も、(下部温度−上部温度)≦0の条件において、激減しており、10/cm2以下を実現することができている。これは、(下部温度−上部温度)>0の条件では、上部温度が低いために種結晶を原料とした昇華法に類似の減少が起こり、種結晶が昇華されて表面が粗れ、(下部温度−上部温度)≦0の条件では、これとは反対の現象が起こり、種結晶の昇華が抑制されていると思われる。マクロ欠陥については、すべての条件において導入されていなかった。
このように、黒鉛台座の種結晶支持部の面積より種結晶の面積を大きくし、黒鉛台座の種結晶支持部よりはみ出した種結晶領域の少なくとも一部分のみを加圧部材に接触させ、黒鉛台座の下部温度と黒鉛製容器体の上部温度の関係を(下部温度−上部温度)≦0にすることにより、種結晶上に成長した炭化珪素単結晶中に伸長するマクロ欠陥を大幅に抑制するとともに、種結晶と成長層の界面から発生するマイクロパイプも抑制することができる。
以上のように、(0001)シリコン面の表面層を除去した面を接着面とし、最適な熱処理条件で、チタンを溶融し、黒鉛と反応させ、単結晶成長温度以上の融点を有する空隙のないチタン炭化物で種結晶と黒鉛台座の種結晶支持部とを強固に固定することにより、チタンを用いた固定方法においてカーボン面を用いた成長を可能にするとともに、成長した単結晶中に伸長するマクロ欠陥を大幅に抑制することが可能となる。
(実施の形態2)
本発明の他の種結晶の固定方法に対応する具体的な方法について、図8を参照して説明する。本発明の実施の形態2の実施例1と異なる点は、種結晶支持部に固定する種結晶を2枚使用して炭化珪素単結晶成長面を(000−1)カーボン面にするということである。これ以外の、チタンの厚さ、加熱温度範囲、加熱時間範囲、加圧範囲などに関しては実施の形態1と同様であるため、説明は省略した。
本実施の形態2では、図8に示すように、黒鉛台座1の種結晶支持部2上に、厚さ50μmのチタン3、チタン3に(000−1)カーボン面28aが接し、チタンと接触しない反対の面が(0001)シリコン面28bであるように第1の種結晶28を配置し、続いて、第1の種結晶28の(0001)シリコン面28bに(0001)シリコン面29bが対向し単結晶を成長させる成長面が(000−1)カーボン面29aとなるように第2の種結晶を配置し、その上に第2の種結晶の周辺部に接触するように黒鉛からなる加重を加えるための加圧部材5が、この順で配置された積層体6を形成した。種結晶支持部の大きさは直径16mmとし、種結晶は略円形で第1の種結晶の大きさは直径17mm、第2の種結晶の大きさは直径18mmとし、加圧部材は第2の種結晶の周辺部の約0.5mmのみに接触するようにした。ここで、第1の種結晶の(000−1)カーボン面28aの表面粗さRaとして0.8nm、第1の種結晶の(0001)シリコン面28bの表面粗さRaとして0.4nm、第2の種結晶の(0001)シリコン面29bの表面粗さRaとして0.4nmとした。種結晶の固定条件としては、黒鉛台座の下部温度1700℃、容器体の上部温度1710℃、加重33.5kPa、圧力93.1kPa(700Torr)のアルゴンガス雰囲気中にて3時間の熱処理とした。図8は、実際には積層体を形成しているが、分かりやすくするために、種結晶支持部、チタン、種結晶、加圧部材を離して示している。
このような種結晶の固定方法により、種結晶28と種結晶支持部2が空隙の存在しないチタン炭化物により固定され、さらに、種結晶28の(0001)シリコン面28bと種結晶29の(0001)シリコン面29bを密着させて成長面を(000−1)カーボン面29aとすることができ、通常、炭化珪素単結晶を成長させる2300℃程度の温度において、種結晶28と種結晶支持部2との間に温度勾配が生じず、種結晶28裏面からの昇華を防止することができ、マクロ欠陥の発生を抑制することができる。また、カーボン面を成長面とすることができるので、4H−SiC単結晶を成長することが可能となる。
種結晶支持部の大きさ直径16mm、第1の種結晶の大きさ直径17mm、第2の種結晶の大きさ直径18mm、加圧部材は第2の種結晶の外周部の約0.5mmのみに接触するようにしたが、こうすることにより、実施の形態1と同様、種結晶固定後の第2の種結晶の表面である(000−1)カーボン面の表面荒れを抑制でき、さらには、炭化珪素単結晶の成長雰囲気において、種結晶支持部よりはみ出した第1の種結晶の外周部と加圧部材と接触していた第2の種結晶の外周部は高温となり熱エッチングされて消失してしまうため、高品質な炭化珪素単結晶を成長させることができる。
本実施の形態において、第1の種結晶28のチタンと接触する(000−1)カーボン面の表面粗さRaを0.8nmとしたが、0.5〜2nmの間とすることにより、炭化珪素単結晶を成長させた際のマクロ欠陥を完全に抑制できる。第1の種結晶28のチタンと接触する(000−1)カーボン面28aの表面粗さRaを変えて、種結晶を上記条件で固定し、炭化珪素単結晶の成長実験を10回行い、マクロ欠陥の抑制確率を調べた結果を表7に示す。Raの測定は、Zygo社製Newview5032を用いて行った。測定領域は、縦:0.14mm、横:0.11mmである。
Figure 0004844470
表7から明らかなように、第1の種結晶の(000−1)カーボン面のRaが5.373nm以上において、10回中のマクロ欠陥抑制確率はRaの悪化とともに悪くなる傾向になる。しかしながら、Raが2nm以下においてマクロ欠陥抑制確率は100%と完全に抑制することができた。
この理由としては、実施の形態1の場合におけるチタンと接触する面が(0001)シリコン面のときの場合と反対のことであり、(0001)カーボン面の表面粗さが悪いとチタンと第1の種結晶のカーボン面の界面にシリコンの含有量が高いチタンとシリコンとカーボンの3元からなるな炭化珪素単結晶の成長温度より融点の低い化合物の層が形成されて、このため、マクロ欠陥が導入されているものと考えられる。以上のことから、第1の種結晶のチタンと接触する(000−1)カーボン面の表面粗さRaとしては0.5〜2nmの間とすることが望ましい。
また、本実施の形態において、第1の種結晶の(0001)シリコン面28bの表面粗さRaとして0.4nm、第2の種結晶の(0001)シリコン面29bの表面粗さRaとして0.4nmとしたが、両方とも0.4nm〜100nmの間とすることにより、第1の種結晶の(0001)シリコン面と第2の種結晶の(0001)シリコン面を密着させることができ、図9に示すように、炭化珪素単結晶を成長させた際に第1の種結晶28と第2の種結晶29の境界から発生するマクロ欠陥を抑制することができる。実際に、第1の種結晶28の(0001)シリコン面28bと第2の種結晶の(0001)シリコン面29bの表面粗さRaを変えて、種結晶を上記条件で固定し、その種結晶を用いて炭化珪素単結晶の成長を行い、第1の種結晶28と第2の種結晶29の境界から発生するマクロ欠陥の有無を調べた結果を表8に示す。Raの値が0.4nmの表面に関しては化学的機械的研磨(CMP)で磨いたものであり、他のRaの値に関してはダイヤモンド研磨材を用いた機械研磨で磨いたものである。ダイヤモンド研磨材を用いた場合、ダイヤモンド粒子径が小さいほどRaの値が小さく、ロットによってほぼ安定した値が得られるが、ダイヤモンド粒子径が大きいほどRaが大きくなり、ロットによって多少ばらつく値となる。表8の中に80−100nmという表現があるが、こういう理由からこのような表現にしている。
Figure 0004844470
表8から明らかなように、第1の種結晶の(0001)シリコン面か第2の種結晶の(0001)シリコン面のRaのどちらかが100nmより大きいとマクロ欠陥が抑制できず、第1の種結晶の(0001)シリコン面と第2の種結晶の(0001)シリコン面のRaの両方が0.4〜100nmの範囲であればマクロ欠陥を抑制することが可能となる。以上のことから、第1の種結晶の(0001)シリコン面と第2の種結晶の(0001)シリコン面のRaの両方の値は、0.4〜100nmの範囲とすることが望ましい。
以上のように、種結晶として、接着面として(000−1)カーボン面、接着面でない反対の面が(0001)シリコン面である第1の種結晶と第1の種結晶の(0001)シリコン面に(0001)シリコン面が対向し単結晶を成長させる面が(000−1)カーボン面となるようにした第2の種結晶の2枚の種結晶を用いて、最適な熱処理条件で、チタンを溶融し、黒鉛と反応させ、単結晶成長温度以上の融点を有する空隙のないチタン炭化物で種結晶と黒鉛台座の種結晶支持部とを強固に固定することにより、チタンを用いた固定方法においてカーボン面を用いた成長を可能にするとともに、成長した単結晶中に伸長するマクロ欠陥を大幅に抑制することが可能となる。
本発明にかかる炭化珪素単結晶を成長させるための種結晶の固定方法は、種結晶裏面からの昇華を防止し、成長結晶中へのマクロ欠陥の導入を抑制できるため、昇華法により成長できる単結晶である硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)などの用途にも適用できる。
本発明の実施の形態1における種結晶の固定方法を示す断面図 種結晶の(0001)シリコン面の表面層を除去する研磨装置の図 本発明の実施の形態1における単結晶を成長させるための昇華法装置の概略断面図 本発明の実施の形態1における種結晶の(0001)シリコン面の表面層を除去する必要があることを説明するための概略図 本発明の実施の形態1における種結晶の(0001)シリコン面の表面層を除去した場合と除去しなかった場合の接着層の反応を説明するためのモデル図 本発明の実施の形態1における加圧部材の形状を示す断面図 本発明の実施の形態1における種結晶の固定後の表面粗さと種結晶と成長層界面から発生するマイクロパイプ密度の結果を示すグラフ 本発明の実施の形態2における種結晶の固定方法を示す断面図 本発明の実施の形態2における第1の種結晶と第2の種結晶界面から発生するマクロ欠陥示す断面図 従来例の単結晶を成長させるための昇華法装置の概略断面図 従来方法における種結晶の構造及びマクロ欠陥発生メカニズムを示す断面図 従来方法における保護層に被覆された種結晶の構造及びマクロ欠陥発生メカニズムを示す断面図 従来法におけるチタンを用いた種結晶における問題点を説明するための概略図
符号の説明
1 黒鉛台座
2 種結晶支持部
3 チタン
4 種結晶
4a (000−1)カーボン面
4b (0001)シリコン面
5 加圧部材
6 積層体
7 容器体
8 断熱材
9 二重石英容器
10 RFコイル
11、12 パイロメータ
13 チタン炭化物
14 研磨機
15 研磨定盤
16 ダイヤモンド研磨材
17 ガイドリング
18 試料固定治具
19 噴射ノズル
20 黒鉛坩堝
21 SiC原料粉末
22 炭化珪素単結晶
23 シリコン原子
24 カーボン原子
25 表面処理を施した傷
26 チタンシリサイド層
27 化合物の層
28 第1の種結晶
28a (000−1)カーボン面
28b (0001)シリコン面
29 第2の種結晶
29a (000−1)カーボン面
29b (0001)シリコン面
30 蓋体
31 接着層
32 空隙
33 マクロ欠陥
34 炭化層
35 保護層
36 クラック

Claims (10)

  1. 黒鉛台座に設けられた種結晶支持部上にチタンを配置するチタン配置工程と、
    (0001)シリコン面を粒径12ミクロン以上のダイヤモンド研磨材を用いた機械研磨を施した炭化珪素から成る種結晶を前記チタン上に配置する種結晶配置工程と、
    前記種結晶上に加圧部材を配置した積層体を形成する積層体形成工程と、
    前記積層体を覆うように容器体を配置する積層体格納工程と、
    前記黒鉛台座の下部温度をチタンの融点以上、且つ前記種結晶上に炭化珪素結晶を成長させる温度以下の範囲で加熱する加熱工程と
    から成る種結晶の固定方法。
  2. 前記チタン配置工程におけるチタンの厚さは、20μm以上200μm以下の範囲である
    請求項1に記載の種結晶の固定方法。
  3. 前記積層体形成工程における前記種結晶の形状は略円形であり、その径は前記種結晶支持部の径よりも大きい請求項1に記載の種結晶の固定方法。
  4. 前記積層体形成工程における前記加圧部材は、前記種結晶の周辺部のみに加重を加える形状を持つ請求項3に記載の種結晶の固定方法。
  5. 前記周辺部は、前記種結晶の前記種結晶支持部より外側の領域の少なくとも一部である請求項4に記載の種結晶の固定方法。
  6. 積層体形成工程における前記加圧部材は、前記種結晶に対して7.84kPa以上87.5kPa以下の圧力を加えられる重量を持つ請求項1に記載の種結晶の固定方法。
  7. 前記加圧部材は、黒鉛、タンタル、ニオブ、モリブデン、タンタル炭化物、ニオブ炭化物及びモリブデン炭化物から選ばれる少なくとも1つの材料で構成される請求項1に記載の種結晶の固定方法。
  8. 前記加熱工程における加熱温度は、1700度以上2000度以下の範囲である請求項1に記載の種結晶の固定方法。
  9. 前記加熱工程における加熱時間は、1時間以上6時間以下の範囲である請求項1に記載の種結晶の固定方法。
  10. 前記加熱工程における前記種結晶支持部の下部温度から前記容器体の上部温度を引いた値が、0以下となるように保持されている請求項1に記載の種結晶の固定方法。
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