JP4839190B2 - X線撮像装置 - Google Patents

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Description

本発明は、平面検出器がX線発生器に対して機構的に支持されていないX線撮像装置において、X線の光軸に対して平面検出器が垂直に配置されているかどうかを検知することができるX線撮像装置に関する。
従来、非破壊検査などの工業分野や、健康診断などの医療分野において、検査対象または被検体に放射線(代表的には、X線)を照射して、検査対象または被検体を透過した放射線の強度分布を検出し、検査対象または被検体の透視画像を得るX線撮像装置が広く利用されている。このような装置において、近年では、X線を検出する検出器として、平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)が利用されている。このFPDは、非常に広いダイナミックレンジを有しており、また、撮影した透視画像を直ぐに確認できるという利点を有している。
ところで、医療の分野におけるX線撮像装置として、病院の透視撮影室などの定点に設置されているものに限らず、移動することができるものが知られている。このような移動型の装置には、大きく分けて手術用と回診用とがある。手術用X線撮像装置では、X線発生器とFPDとがCアームなどを介して支持され、両者の相対的位置が規定されている。一方、回診用X線撮像装置では、FPDと装置本体とがケーブルのみで連結されており、FPDがX線発生器に対して支持されていないため、両者の相対的位置が規定されていない。
ここで、回診用X線撮像装置などの、FPDがX線発生器に対して支持されていない装置で撮影を行なうときは、FPDを適切に配置すること、特に、X線の光軸に対してFPDを垂直に配置することが重要である。光軸に対してFPDが傾いて配置された場合、得られる透視画像がFPDの傾いた方向に歪んでしまう。また、この装置ではFPDを手作業で配置するため、FPDの配置の度に透視画像の歪み具合が変化するため、画像再現性が低下して、正確な被検体の診断を妨げる虞がある。その他、散乱線除去グリッド板を使用する場合、光軸に対してFPDが傾いていると、偽画像が発生することもある。
上述のように、FPDの配置状態が重要であるにも拘らず、この装置では、X線の光軸に対してFPDを垂直に配置することが難しく、また、垂直に配置されているかを確認することも困難である。例えば、ICU(集中治療室)などで短時間に大量の撮影を行なう場合には、FPDの位置あわせに時間をかけることができず、FPDを被検体に配置する毎に光軸に対するFPDの角度が大きく変化する虞がある。そのため、透視画像の画像再現性が悪く、撮影された透視画像を診断に使用したときに誤診の虞もある。
このような不具合を解消するために、例えば、特許文献1の放射線撮像装置では、放射線源(X線発生器)とカセッテ(カセッテ内のフィルムを含めて、X線検出器)の両方に姿勢センサを設け、この姿勢センサにより、X線発生器とX線検出器との位置関係を把握している。そして、この位置関係に基づいて、X線の光軸とX線検出器とを垂直に配置することができる。
特開2000−23955号公報
しかし、上記特許文献1の放射線撮像装置では、姿勢センサをX線検出器に搭載しなければならない。特に、X線検出器としてFPDを使用した場合、FPDは複雑な内部構造を有しており、姿勢センサおよびこのセンサを制御する基板などを組み込むスペースを確保することが難しい上、組み込む手間が非常に煩雑である。しかも、この装置では、X線検出器とX線発生器の両方に姿勢センサを設けなければならないため、コストが高くなる。
そこで、本発明の主目的は、X線発生器に対して平面検出器が機構的に支持されないX線撮像装置において、簡単な構成で、X線の光軸に対する平面検出器の傾きを把握することができるX線撮像装置を提供することにある。
本発明は、被検体にX線を照射するX線発生器と、被検体を透過したX線の入射線量に応じた画像データを取得する平面検出器とを備えX線撮像装置である。このX線撮像装置は、以下の構成を備えることを特徴とする。
I.平面検出器に対してスポット状のX線照射を行なう照射制限手段
II.スポット状のX線照射により平面検出器に形成される画像データを記憶する記憶手段
III.前記画像データに基づいて、X線の光軸に対する平面検出器の傾きを算出する傾き算出手段
IV.前記傾きを通知する通知手段
本発明の構成によれば、平面検出器がX線の光軸に対してどの程度傾いているかを確認することができる。そのため、平面検出器の傾きが、所定値を超える場合、例えば、過去の経験から撮影に適さないと考えられる傾きの値を超える場合、平面検出器とX線発生器との位置関係の再調整が必要であると判断することができる。一方、平面検出器の傾きが所定値以下の場合、この傾きは許容できると判断できる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のX線撮像装置は、平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)が、X線発生器に対して機構的に支持されていないもの全般を含み、代表的には回診用X線撮像装置などが挙げられる。反対に、「X線発生器に対して機構的に支持されている」とは、何らかの機構的支持手段で、FPDが、その配置状態を制御され、FPDとX線発生器との位置関係を把握することができるものを指す。
[FPD]
本発明の装置に備えるFPDは、ケーブルによる有線接続あるいは通信装置による無線接続により、取得した画像データをX線撮像装置の本体に伝送することができる。また、FPDは、FPD自身の情報、例えば、FPDの中心やFPDのX軸、Y軸などの情報を本体に伝送することができる。FPD自身の情報は、後段で詳述するX線の光軸に対するFPDの傾きを算出するときなどに利用される。
[X線発生器]
本発明の装置に備えるX線発生器は、X線を発生させるX線管を備え、所定の方向にX線を照射する機器である。このX線発生器には、X線の照射領域を制限する公知の可動絞りを設けても良い。
[照射制限手段]
本発明の装置は、さらに、X線発生器のX線照射口の部分に照射制限手段を備える。照射制限手段は、X線を遮蔽する遮蔽部材からなり、被検体とFPDにX線が照射されることを制限する。この遮蔽部材は、例えば、一枚の板状部材から構成しても良く、X線照射口の前に挿入されることで、X線の照射を制限する。その他、遮蔽部材は、可動絞りのように複数枚の板状部材から構成しても良い。この場合、光軸を中心とする四方に板状部材を配置して、板状部材を中心方向に挿入する(閉じる)ことで、X線の照射を制限することができる。
遮蔽部材には、この遮蔽部材を貫通する少なくとも2つの微小な照射口(以下、微小照射口とする)が形成される。複数枚の板状部材から遮蔽部材を構成し、これら板状部材を閉じたときに、各板状部材が重なる場合、微小照射口は、重なった板状部材を貫通するように設ける。いずれの場合でも、遮蔽部材のうち、X線照射口に対向する面と、FPDに対向する面における各微小照射口の開口端面は、面一に形成する。
この照射制限手段により、X線発生器から照射されたX線は、そのほとんどが遮蔽部材に遮蔽され、FPDには到達しない。しかし、遮蔽部材には微小照射口が形成されており、この微小照射口を通過したX線はFPDにより検知される。即ち、照射制限手段は、FPDに対してスポット状のX線照射を行なうための手段である。
微小照射口の数は、2つ以上であれば特に限定されない。但し、複数の微小照射口は、遮蔽部材とX線の光軸との交点であるX線の照射中心を中心とした円上に配置されるようにすることが好ましい。例えば、2つの微小照射口であれば、照射中心を挟んで点対称の位置に微小照射口を設ける。また、3つ以上の微小照射口を設ける場合、重心がX線の照射中心と一致する正多角形の頂点に各微小照射口が配置されるようにする。このような配置により、後述するようにFPDの傾きの算出が容易になる。
微小照射口の形状は特に限定されない。例えば、円形や正多角形などが好適である。但し、全ての微小照射口の形状が同一であることが好ましい。このように各微小照射口の形状を統一することで、後述するようにFPDの傾きの算出が容易になる。
[記憶手段]
照射制限手段によりスポット状に照射されるX線により、FPDでは複数のスポット像を有する画像データが検出されることになる。記憶手段は、この画像データを記憶することができる。記憶した画像データは、後述するように、X線の光軸に対するFPDの傾きを算出することに使用される。なお、記憶手段は、スポット像を有する画像データだけでなく、通常の被検体の透視画像などを記憶することもできる。
[傾き算出手段]
傾き算出手段は、撮影したスポット像を有する画像データから、X線の光軸に対するFPDの傾きを算出する手段である。この傾き算出手段は、さらに、各スポット像の大きさを比較して最小のスポット像と最大のスポット像とを選択する選択手段と、最小のスポット像と最大のスポット像から、スポット像の形態に基づいた特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、抽出した特徴量を、予め設定されている特徴量とFPDの傾きとの相関関係に当てはめて、FPDの傾きを求める比較手段とを有する。
選択手段でスポット像の大小関係を比較するには、スポット像の大きさを算出する必要がある。スポット像の大きさは、FPDにおける検出素子の数などから算出することができる。
スポット像の形態に基づいた特徴量としては、スポット像の特定箇所の長さが挙げられる。ここで、X線の光軸に対してFPDが傾いていた場合、スポット像は、FPDの傾いている方向に延びた形状になる。例えば、微小照射口の形状が円形状であれば、FPDが傾いている場合、FPDに形成されるスポット像の形状はおおよそ卵形になる。この卵形スポット像のうち、FPDのX軸方向とY軸方向の最大長さを特徴量とすれば良い。その他、スポット像の輪郭形状を特徴量としても良い。
抽出した特徴量を、予め設定された特徴量とFPDの傾きとの相関関係に当てはめることにより、特徴量に対応したFPDの傾きを求めることができる。相関関係としては、抽出した特徴量を当てはめたときに、対応するFPDのX軸方向の傾きとY軸方向の傾きが判るテーブルなどが挙げられる。例えば、特徴量として、スポット像のうち、FPDのX軸方向、Y軸方向の最大長さを使用する場合、FPDのX軸方向とY軸方向について、最小スポット像の長さに対する最大スポット像の長さの比を求める。そして、X軸方向における比の値と、Y軸方向における比の値の両方を当てはめたときに、FPDがX軸方向とY軸方向に対して何度傾いているかという相関関係を使用して、FPDの傾きを求める。また、特徴量として、スポット像の輪郭形状を使用する場合、最小スポット像の輪郭形状と、最大スポット像の輪郭形状の両方を当てはめたときに、FPDの傾きが判る相関関係を使用する。
[通知手段]
通知手段は、X線の光軸に対するFPDの傾き(傾き情報)を視覚的に通知する手段であっても良いし、聴覚的に通知する手段であっても良い。前者の場合、例えば、本発明の装置に備えるモニタに、前記傾きを表示すれば良い。後者の場合、音声装置などにより前記傾きを通知しても良い。もちろん、両者を複合的に使用してもかまわない。
また、通知手段は、前記傾きが許容範囲を超える場合に、前記傾きを強調して通知しても良い。例えば、前記傾きが許容範囲を超える旨を警告表示(太字、拡大、朱字、点滅など)したり、警報音(サイレン、音声案内など)を発するようにする。
本発明の装置によれば、FPDの傾きが通知されるので、被検体の撮影前にFPDの配置状態を確認することができる。その結果、FPDとX線発生器との位置関係を再調整する機会を得ることができる。例えば、このFPDの傾きに基づいて、実際にX線発生器自体を動かしてX線の照射方向を変えることでFPDとX線発生器との位置関係を再調整することができる。その結果、実際に被検体を撮影する前に、FPDを傾きのない状態にすることができる。
また、本発明の装置は、算出したFPDの傾きに基づいて、実質的に傾きのない状態の画像データ(適正画像データ)を作成する適正画像データ作成手段を設けても良い。画像処理により適正画像データを得る場合、物理的にFPDとX線発生器との位置関係を再調整しなくても診断に適した被検体の透視画像を得ることができるので、迅速に撮影を行なうことができる。画像処理で対処できないほどFPDが傾いていた場合は、通知手段によりFPDとX線発生器との位置関係の再調整を促せば良い。
本発明のX線撮像装置は、さらに、算出したFPDの傾きを利用して、FPDとX線の光軸との交点である照射中心を算出する中心算出手段を備えるようにしても良い。スポット像を有する画像データ(スポット像データ)について、実質的に傾きのない状態に補正したスポット像データ(補正済みスポット像データ)が得られた場合、このデータのスポット像は、照射制限手段の微小照射口の配置状態を反映して配置される。従って、複数の微小照射口が正多角形の頂点の位置に配置される場合は、複数のスポット像の配置により形成される正多角形状の中心位置が、照射中心となる。
なお、補正済みスポット像データは、実際にFPDとX線発生器との配置状態を再調整した上で、再度スポット撮影を行なうことにより取得しても良いし、適正画像データ作成手段でスポット像データについての適正画像データを作成することによって得ても良い。
FPDにおける照射中心がわかると、X線の光軸に対するFPDの傾き以外に、FPDの配置状態を算出することが可能になる。算出できるFPDの配置状態としては、[1]FPDの中心と照射中心との相対的なズレ量(ズレ情報)、[2]X線の光軸に対するFPDの回転量(回転情報)、[3]X線発生器からFPDまでの距離(距離情報)、が挙げられるので、以下にこれらの情報を算出することができる本発明のX線撮像装置を説明する。
[1] ズレ情報を算出できる本発明のX線撮像装置
この装置は、前記照射中心と、FPDの中心との位置関係から、FPDの中心と、照射中心との相対的ズレを算出するズレ量算出手段を備える。FPDの中心位置の情報は、FPD自身が装置本体に伝送すれば良く、FPDがX線発生器に対して機構的に支持されていなくても、FPDと装置本体を繋ぐケーブルや無線装置により送信することができる。なお、FPDの中心と、照射中心とが著しくズレた場合、X線の照射領域がFPDからはみ出して、被検体の透視画像が得られない虞がある。
[2] 回転情報を算出できる本発明のX線撮像装置
この装置は、補正済みスポット像データのうち、少なくとも一つのスポット像と、照射中心を通るFPDのX軸およびY軸との位置関係から、X線の光軸に対するFPDの回転量を算出する回転量算出手段を備える。回転量を算出する具体的な手段として、代表的には一つのスポット像を使用する方法と、二つ以上のスポット像を使用する方法があるので、順次説明する。
『2−1 一つのスポット像を使用する方法』
まず、任意のスポット像を選択し、このスポット像の中心を求める。次に、スポット像の中心について、照射中心を通るX軸とY軸からの距離を求める。ここで、X軸とY軸とを互いに直交軸とし、4つのスポット像が正四角形状に配置されている場合、X軸からスポット像の中心までの最短距離と、Y軸からスポット像の中心までの最短距離が等しいときは、FPDは回転していないといえる。この距離が異なるときは、距離の差からFPDの回転量を求めれば良い。
また、任意のスポット像を選択し、このスポット像の中心と照射中心とを結ぶ直線を求め、この直線と、X軸またはY軸とのなす角を求める。前段の4つのスポット像を使用する場合は、このなす角が、45°のときは、FPDが回転していない。
『2−2 二つ以上のスポット像を使用する方法』
まず、多角形状に配置される複数のスポット像のうち、隣接する頂点の位置にある2つのスポット像を選択し、2つのスポット像の中心を結ぶ直線を求める。次に、この直線と、FPDのX軸若しくはY軸とのなす角を求める。ここで、X軸とY軸が直交座標系で、4つのスポット像が正四角形に配置されている場合、このなす角がFPDの回転量である。
[3] 距離情報を算出できる本発明のX線撮影装置
この装置は、FPDがX線の光軸に対して傾いていない状態のときのスポット像の大きさと、X線発生器とFPDとの間の距離との相関関係に基づいて、前記適正画像データのスポット像の大きさからX線発生器とFPDとの距離を算出する距離算出手段を備える。ここで、スポット像は、微小照射口の投影像なので、スポット像の大きさは、前記距離の2乗に比例する。従って、相関関係としては、例えば、縦軸をスポット像の大きさ、横軸をX線発生器とFPDとの間の距離としたグラフを使用することができる。
[4] その他のX線撮像装置
その他のX線撮像装置として、上述した全ての手段を備えて、「FPDの傾き情報」、「FPDの回転情報」、「FPDのズレ情報」、「FPDの距離情報」の4つの数値情報の全てを算出できるX線撮像装置としても良い。この装置の場合、4つの数値情報は、その全てを一括して確認できるように視覚的に通知することが好ましい。このような構成により、X線発生器とFPDとの配置関係の調整を容易に行うことができる。また、この装置では、透視撮影に明らかな支障が生じる場合、例えば、FPDの中心位置と光軸とが著しくズレているために照射領域がFPDからはみ出してしまうなどの不具合が生じる場合には、上記の数値情報を強調して表示(太字、拡大、朱字、点滅など)したり、警報音(サイレン、音声案内など)を発するようにしても良い。
上述した数値情報は、被検体の透視画像に合成して表示してもかまわない。また、数値情報は、透視画像を印刷したときに、写真の隅に印字されるようにしても良い。数値情報を印字することにより、撮影時の条件、つまり、撮影時のFPDの配置状態を知ることができるので、異なる条件で撮影された透視画像を比較するときにFPDの配置状態を参照することで、誤診の可能性を低くすることができる。
また、数値情報に基づいて、X線発生器自体を動かしてX線発生器とFPDとの位置関係を補正するときは、X線発生器を動かした量を反映して数値情報が変化するようにしても良い。具体的には、X線発生器の可動部にセンサを設けて、X線発生器を動かしたときにどの方向にどの程度動かしたかを検知するようにする。そして、例えば、FPDの中心位置と光軸との左右方向のズレが大きい場合、このズレを小さくするようにX線発生器を左右に動かしてX線の照射方向を動かせば、上述したズレの数値が実際に減少するようにする。もちろん、この例示ではX線の照射方向を動かしているため、上記ズレの情報以外にもFPDの傾きなどの情報も変化する可能性が高いので、変化した情報は全て反映されるようにすることが好ましい。その他、回診用X線撮像装置であれば、本体を走行可能にする台車に、本体の移動量を検知するセンサを設ければ、「X線発生器とFPDとの距離」についても装置を動かした量を反映させることができる。このようにX線発生器の向きや、本体の位置自体を動かした量を反映する構成によれば、画像補正により透視画像の歪みを補正するよりも正確な透視画像を取得することができる。また、再度、スポット撮影をする必要もなくなるので、被検体の被曝量を徒に増加させることもない。
なお、X線発生器を動かした量を反映して数値情報が変化する構成の場合、数値情報を視覚的に表示する手段をX線発生器の近傍、例えば、X線発生器自体に取り付けることが好ましい。この構成によれば、手動でX線発生器を動かしながら数値情報を確認することができるので、容易にX線発生器とFPDとの位置関係を補正することができる。
本発明のX線撮像装置によれば、光軸に対してFPDが傾いているかどうかを確認することができる。そのため、光軸に対するFPDの傾きを解消するためにX線発生器自体を動かす場合は、どの方向にどの程度X線発生器を動かせば良いのかが容易にわかる。あるいは、画像処理補正により傾きのない透視画像を得る場合には、どのような画像処理補正を行なえば良いかが容易にわかる。
以下、本発明の実施例を、図に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
<実施例1>
[全体構成]
本例では、X線撮像装置として、回診用X線撮像装置を例として説明する。図1に示すように、回診用X線撮像装置0は、寝台Bから容易に移動することができない被検体Pのいる病室などに移動して、被検体PのX線撮影を行なう装置である。この装置0は、本体1と、この本体1に支持部4(例えば、伸長機構を有するアームなど)を介して一体に設けられるX線発生器2と、本体1にケーブル(図示せず)を介して接続されるFPD(Flat Panel Detector:平面検出器)3とを有する。X線発生器2から照射されたX線は、被検体Pを透過し、FPD3に入射する。FPD3は、このX線の入射量に応じた被検体Pの画像データを取得する。そして、取得された画像データは、本体1内部のコンピューターにより画像処理され、被検体Pの透視画像としてモニタ5に表示される。
ところで、回診用である本例のX線撮像装置0を使用して被検体Pを撮影するときは、図1に示すように、寝台Bなどに安静にしている被検体Pの後ろ側にFPD3を配置し、このFPD3に対向するようにX線発生器2を配置してX線撮影を行なう。このとき、FPD3は、手作業で被検体Pの後ろ側に配置される。そのため、X線の光軸2Aに対してFPD3が傾いた状態で配置され易く、また、FPD3がどの程度傾いているかを知ることができない。FPD3が傾いた状態で被検体Pの撮影を行なえば、得られる被検体Pの透視画像が、FPD3の傾いた方向に歪んだ透視画像になり、被検体Pの診断を正確に行なえない虞がある。
そこで、本例の装置は、図2に示すように、被検体Pの撮影を行なう前にX線の光軸2Aに対するFPD3の傾きを知るための構成として、FPD3に複数のスポット像を形成するためのスポット形成絞り(照射制限手段)7と、このスポット像からFPD3の傾きを算出するための傾き算出部(傾き算出手段)15とを備える。
上記構成を備えるX線撮像装置では、傾き算出部15で得られた光軸2Aに対するFPD3の傾きをモニタ(通知手段)5により知ることができる。そのため、被検体Pの撮影前に、FPD3が光軸2Aに対してどの程度傾いているかを知ることができ、この情報に基づいてFPD3の傾きを補正する機会を得ることができる。
以下、本例のX線撮像装置の各構成を詳細に説明し、次いで、FPDの傾きを算出する手順を説明する。
(本体)
本体1は、台車D上に配置され、この台車Dにより走行可能な構成である。また、本体1は、この回診用X線撮像装置0を統括的に制御するコンピューター10と、X線の強度や照射時間を入力する操作パネルCPとを有する。コンピューター10の構成については、後述する。
(X線発生器)
X線発生器2は、被検体PにX線を照射する機器である。X線発生器2は、高圧発生器8から電力供給を受けてX線を発生させるX線管21を有しており、X線照射口22から一方向に向かってX線を照射することができるようになっている。高圧発生器8により、X線発生器2に供給する電力供給量や電力供給時間を制御することで、X線の強度やX線の照射時間、X線の照射間隔を変化させることができる。
また、X線発生器2のX線照射口22の前(X線の照射方向の位置)にはX線の照射範囲を制限する可動絞り6と、スポット形成絞り7が設けられている。
(可動絞り)
可動絞り6は、一般的なX線撮像装置が有するX線の照射範囲を変更する構成であり、照射領域の外枠を決定するための構成である。具体的には、可動絞り6は、X線を遮蔽可能な4枚の矩形板を枠状に配置した構成を有する。そして、この枠で囲まれる開口のサイズを変えることで、図5(A)に示すように、被検体に照射するX線の照射範囲f、即ち、視野サイズや視野の位置を調整することができる。
(スポット形成絞り)
一方、スポット形成絞り7は、図3に示すように、可動絞りと同様に4枚の矩形板状のスポット形成羽根(遮蔽板)71〜74を四方に配置した構成である。各スポット形成羽根71〜74には、2つずつ貫通孔71h〜74hが形成されており、4枚のスポット形成羽根71〜74が中心方向に挿入された(閉じた)状態のときに、貫通孔71h〜74hが重なり合うことで、正四角形の頂点の位置に4つの微小照射口7hが配置されるようになっている。各微小照射口7hの形状は円形であり、その径は同一である。また、正四角形の中心(重心)が、X線の光軸と遮蔽板との交点、即ち、照射中心に一致するようにする。
スポット形成絞りを構成するスポット形成羽根の数は特に限定されない。例えば、図4(A)に示すように、一枚のスポット形成羽根75に4つの微小照射口7hを設けても良い。また、微小照射口7hの数も、2つ以上であれば特に限定されない。例えば、図4(B)に示すように3つでも良い。3つの微小照射口7hは、正三角形の頂点の位置に配置し、正三角形の中心(重心)が照射中心に一致するようにする。
(FPD)
FPD3は、X線発生器2から照射されて被検体を透過したX線を検出して画像データとして出力する機器である。FPD3は、二次元アレイ状に配列された複数のX線検出素子からなり、これらの検出素子により、FPD3に入射したX線を電気信号(画像データ)に変換することができる。取得した画像データはケーブルを介して本体1に転送可能である。もちろん、FPD3と本体1とは、無線接続しても良い。また、FPDは、FPDの中心位置や、FPDのX軸、Y軸などのFPD自身の情報も伝送可能である。
(コンピューター)
コンピューター10は、本例の装置の各機器を制御する制御部11と、FPD3から画像データを取得する画像データ取得部12と、取得した画像データに種々の画像処理を施す画像処理部13を有する。さらに、コンピューター10は、取得した画像データや、後述する傾きの算出に使用する相関関係などを記憶する記憶部14と、光軸2Aに対するFPD3の傾きを算出する傾き算出部15を有する。
(傾き算出部)
傾き算出部15は、さらに、選択部(選択手段)151と、特徴量抽出部(特徴量抽出手段)152と、比較部(比較手段)153とを有し、撮影したスポット像を有する画像データから、X線の光軸2Aに対するFPD3の傾きを算出する構成である。
選択部151は、各スポット像の大きさを比較して最小のスポット像と最大のスポット像とを選択する構成である。選択部151は、スポット像の大きさを比較するにあたって、スポット像の大きさを算出することができる。スポット像の大きさは、スポット像を形成するFPD3の検出素子の数から算出する。
特徴量抽出部152は、最小のスポット像と最大のスポット像から、スポット像の形態に基づいた特徴量を抽出する構成である。本例の特徴量抽出部152は、スポット像のうち、FPD3のX軸方向とY軸方向の最大長さを特徴量として抽出する。ここで、本例の微小照射口の形状は円形であるので、FPD3が傾いている場合、FPD3に形成されるスポット像の形状は概略卵形になる。従って、この卵形スポット像のうち、FPD3のX軸方向とY軸方向の最大長さを特徴量として抽出する。
比較部153は、抽出した特徴量と、記憶部14に記憶されている特徴量とFPDの傾きとの相関関係とを比較する構成である。本例の相関関係は、FPDのX軸方向とY軸方向について最大スポット像の最大長さと、最小スポット像の最大長さの比を当てはめたときに、対応するFPDのX軸方向の傾きとY軸方向の傾きが規定されているテーブルである。テーブルのデータは、予め実測などで求めておいたものを使用した。テーブルについては、FPDの傾きを算出する手順を説明するときに詳しく説明する。
(画像処理部)
画像処理部13は、FPD3で取得した画像データに種々の画像処理を施すことができる。例えば、画像データの明度を調整する輝度値補正や、画像データのノイズを除去するノイズ除去処理、二値化処理などを行なうことができる。その他、ホワイトバランスの調整や白黒反転処理等、通常のX線撮像装置で使用できる画像処理を行なうことができる。
画像処理部13は、さらに傾き補正部(適正画像データ作成手段)を有する。傾き補正部は、傾き算出部15で算出されたX線の光軸2Aに対するFPD3の傾き情報に基づいて、撮影した被検体Pの透視画像を補正することができる。具体的には、FPD3の傾いている方向に延びるように歪んだ透視画像を、FPD3が傾いてない状態で撮影したときの歪んでいない透視画像と実質的に同一となるように補正する。
(その他)
その他、本例の装置は、図示しないスピーカー(通知手段)を有する。スピーカーは、FPD3の傾き情報を音声で通知することができる。
[スポット撮影]
この装置0を使用して被検体Pを撮影するときは、図1に示すように、寝台Bなどに安静にしている被検体Pの後ろ側にFPD3を配置し、このFPD3に対向するようにX線発生器2を配置してX線撮影を行なう。このとき、FPD3は、手作業で被検体Pの後ろ側に配置される。そのため、X線の光軸2Aに対してFPD3を垂直に配置することが困難であり、このまま被検体Pの撮影を行なえば、FPD3の傾いた方向に歪んだ透視画像になる。そこで、本発明の装置0では、被検体Pの撮影を行なう前にスポット撮影を行なって、このスポット撮影により得られた画像データを利用してFPD3の傾きを求める。
スポット撮影とは、スポット形成絞り7を介して、X線発生器2から、X線発生器2と対向する位置にあるFPD3にX線を照射することである。スポット撮影を行なう際のX線の照射線量は、0.1μGy程度とすると、被検体Pに対する被曝量を低減することができて好ましい。0.1μGyの照射線量は、標準的なX線撮影に使用するX線の照射線量の約1/50であり、また、スポット撮影は、極限られた照射領域についてのみ行なうため、被検体Pへの被曝量は問題にならないほど小さいと考えられる。
図5にスポット形成絞りの配置に応じたX線の照射状態を示す。但し、図5では、スポット形成絞り7は、一枚の板状部材からなるように図示した。スポット形成絞り7をX線管球21の前に挿入しない状態では、可動絞り6により枠状の照射範囲fが形成される(図5(A)参照)。一方、スポット形成絞り7を管球21の前に挿入した状態では、図5(B)に示すように、照射されるX線が遮蔽され、微小照射口7hを通過したX線のみ、被検体Pを透過してFPD3に入射する。そのため、このスポット撮影により、スポット形成絞り7の微小照射口7hの形状を反映したスポット像を取得することができる。本例では、微小照射口7hの形状が円形であるので、FPD3が傾いていた場合、スポット像は卵形となる。仮に、FPD3が全く傾いていないとすると、スポット像は、円形となる。
次に、取得したスポット像を有する画像データを利用してX線の光軸に対するFPDの傾きを算出する。以下、その算出手順を図6のフローチャートに基づいて説明する。
[ステップS10]
まず、画像データ取得部によりスポット像を有する画像データを取得する。そして、得られた画像データを画像処理部により二値化処理すると共に、平滑化処理を行なう。この処理により、輪郭の明瞭なスポット像を得ることができるので、以降の処理を円滑に行なうことができる。
[ステップS11]
次に、傾き算出部で、FPDに形成された4つのスポット像の大きさを求める。この大きさは、検出したスポット像を構成するFPDの素子数から求めれば良い。
[ステップS12]
各スポット像の大きさを求めたら、選択部で、それぞれの大きさを比較する。各スポット像の大きさを比較したときに、その差が所定値以上であれば、ステップS13に移行する。一方、前記差が、所定値未満であれば、FPDは傾いていないと判断して、その旨通知する(ステップS16)。
ここで、大きさを求めたスポット像のうち、以降の処理に使用することができない不良スポット像がある場合は、後述するように、この不良スポット像を除外して以降の処理を行なうか、あるいはX線の照射位置を変えて再度、スポット撮影を行なうようにする。もちろん、通知手段により、不良スポット像を除外したことを通知したり、再撮影を促す通知をする。照射口の数と、スポット像の数とが一致しない場合は、X線の照射領域がFPDからはみ出していると考えられるので、通知手段により再撮影を促す。
撮影したスポット像のうち、極端に小さなスポット像は、例えば、被検体内に骨折箇所の固定ボルトやペースメーカーなどが存在することにより、照射したX線がこれらの部材に吸収されたために形成されたと考えられる。一方、極端に大きさの大きなスポット像が存在する場合は、他の3つのスポット像が不良スポット像と考えられる。
スポット像の大きさを比較する代わりに、スポット像の輪郭形状で不良スポット像を検出しても良い。スポット像は、微小照射口の形状を反映して卵形もしくは円形となるので、スポット像に欠けが生じていれば、不良スポット像と判断できる。
[ステップS13]
選択部で、4つのスポット像のうち、その大きさが最大のものと最小のものを選択し、特徴量抽出部で、両スポット像の特徴量をそれぞれ抽出する。本例の特徴量は、スポット像のうち、FPDのX軸方向長さと、Y軸方向長さであって、その長さのうち、最大のものである。
[ステップS14]
ステップS13で求めた最大スポット像の長さと、最小スポット像の長さの比を算出する。この比は、(最大スポット像のX軸(Y軸)方向の長さ/最小スポットのX軸(Y軸)方向の長さ)である。
[ステップS15]
求めた比の値を、予め設定された対応表に照らし合わせる。具体的には、(FPDのX軸方向における比,FPDのY軸方向における比)に対応した(FPDのX軸方向の傾き,FPDのY軸方向の傾き)を示す対応表を使用する。例えば、FPDのX軸方向における比が1、FPDのY軸方向における比が1.3のときは、FPDのX軸方向の傾きは0°、Y軸方向の傾きは5°である。
[ステップS16]
ステップS15で算出したFPDの傾きの数値をモニタに表示して、撮影技師に通知する。このとき、FPDの傾きが所定値以上である場合、警報を発するようにしても良い。警報としては、数値を拡大したり、朱字で表示したり、点滅表示することが挙げられる。また、同時に警告音を発しても良い。
上述した手順により、FPDの傾きが数値として明らかになれば、被検体を撮影したときの透視画像データをどの程度補正すればよいのかわかる。従って、画像処理部の傾き補正部により、被検体についての適正な画像データを作成することができる。傾きの情報は、透視画像と関連付けて記憶したり、透視画像を写真にしたときに写真に印字すると、被検体を診断するときに傾き情報を参考とすることができるので、誤診の可能性が低くなる。
もちろん、手動でX線発生器を動かして、X線発生器とFPDの再配置を行なって、被検体を撮影する前にFPDの傾きを物理的に零となるようにしても良い。ここで、X線発生器に、その向きを検知するセンサを設け、X線発生器を動かした量に応じてFPDの傾きの数値が変化するようにすると、容易にFPDの傾きを零にできる。
また、画像処理的な補正で対処しきれない場合は、警報を発してX線発生器とFPDの再配置を促すようにすることもできる。
<実施例2>
本例では、X線の光軸に対するFPDの傾きだけでなく、この傾きを補正した後のスポット像(補正済みスポット像)を使用して、さらに、FPDの配置状態に関する数値情報を算出して、これらの情報を通知するX線撮像装置を説明する。「X線の光軸に対するFPDの傾き:傾き情報」以外のFPDの配置状態に関する数値情報とは、「FPDの中心と光軸とのズレ量:ズレ情報」、「光軸を中心にしたFPDの回転量:回転情報」および「X線発生器とFPDとの距離:距離情報」の3つである。以下、実施例1のX線撮像装置の構成と異なる構成について主に説明し、図面において、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
(全体構成)
図7は、本例のX線撮像装置の機能ブロック図である。このX線撮像装置は、実施例1の構成に加えて、X線発生器2に予備モニタ51を備えると共に、台車Dにセンサを備える。台車Dのセンサは、装置自体の移動量や移動方向の情報(移動情報)を検知し、この情報を総合算出部100に出力することができる。センサとしては、台車Dの車輪の回転数や向きを検知して移動情報を得る構成や、オプティカルマウスのような、発光器と受光器とを使用して移動情報を得る構成を使用することができる。この移動情報の利用方法については、後述する。
また、この装置のコンピューター10は、FPD3の配置状態についての数値情報を算出する総合算出部100を備える。この総合算出部100は、傾き算出部15に加えて、4つのスポット像が形成する四角形状の中心位置、即ち、X線の光軸2AとFPD3との交点の位置、即ち、照射中心を算出する中心位置算出部16を備える。さらに、総合算出部100は、補正済みスポット像と、前記中心位置とから、ズレ情報、回転情報および距離情報をそれぞれ算出するためのズレ量算出部17と、回転量算出部18と、距離算出部19とを備える。そして、算出した傾き情報、ズレ情報、回転情報および距離情報を、予備モニタ51により一括して通知する。
本例の構成によれば、被検体Pを実際に撮影する前に、FPD3の正確な配置状態を把握することができるので、被検体を撮影する際に、FPDとX線発生器とを適正な配置状態の再調整することができる。
以下、実施例1と異なる構成について詳しく説明する。
[中心位置算出部]
中心位置算出部16(中心算出手段)は、スポット像が形成する四角形状の中心位置を算出する手段である。ここで、X線の光軸は、X線の照射中心軸に一致するので、前記中心位置を算出することは、即ち、照射中心を算出することである。
中心位置を算出するためには、X線の光軸2Aに対してFPD3が傾いていない状態のスポット像を有する画像データ(補正済みスポット像)が必要である。図8に、補正済みスポット像Sを示す。FPDにより検知された4つのスポット像Sは、正四角形の頂点に配置され、各スポット像Sは、円形である。従って、各スポット像の中心Scを求め、対角位置にある中心Scを結ぶ直線の交点が、照射中心Icとなる。
本例の装置では、ズレ情報、回転情報および距離情報を算出するために必要な補正済みスポット像を、画像処理により得た。上記3つの数値情報は、FPDの傾きから求めた照射中心に基づいて、どの順番に求めても良い。補正済みスポット像を画像処理により作成することで、全ての情報を一括して通知することができ、実際に被検体を撮影する前にFPDを適正な配置状態とすることができる。また、補正済みスポット像を得るためのスポット撮影を省略することができるので、この撮影の手間を省くことができると同時に、放射線防護の観点からも好ましい。
[ズレ量算出部]
ズレ量算出部(ズレ量算出手段)17は、FPD3の中心と、照射中心との相対的ズレ量(ズレ情報)を算出する構成である。具体的には、ズレ量算出部17は、図8に示すように、FPDの中心Fcの位置から照射中心Icの位置が、FPDの水平軸(X軸)方向と、垂直軸(Y軸)方向にどの程度離れているかを算出する。算出したズレ情報は、予備モニタ51(図7を参照)に表示される。このとき、ズレ量が許容値を超えていた場合は、後述するように、その旨通知する。例えば、ズレ量が著しく大きい場合、X線の照射範囲がFPDからはみ出してしまうことがあるので、この状態で撮影された透視画像を被検体の診断に使用することはできない。
[回転量算出部]
回転量算出部(回転量算出手段)18は、光軸2Aを中心にしたFPD3の回転量(回転情報)を算出する構成である。回転量算出部18は、照射中心を通るFPD3の水平軸(X軸)または垂直軸(Y軸)の情報と、スポット像とから回転情報を算出する。回転情報を算出する手法としては、大きく分けて2つの手法が考えられるので、順次説明する。
『手法1』
手法1としては、図9に示すように、4つのスポット像のうち、任意のスポット像Sを選択し、このスポット像Sの中心Scについて、照射中心Icを通るX軸とY軸からの距離を求める。具体的には、Y軸からスポット像Sの中心ScまでのX軸に平行な直線の距離dxと、X軸からスポット像Sの中心ScまでのY軸に平行な直線の距離dyとを求める。求めたdxとdyとが等しいときは、FPDは回転していないといえる。一方、dxとdyとが異なるときは、dxとdyとの差からFPDの回転量を求めれば良い。
また、同図に示すように、任意のスポット像Sを選択し、照射中心Icと、スポット像Sの中心Scとを結ぶ直線を求め、この直線と、X軸(またはY軸)とのなす角αを求める。このなす角αが、45°のときは、FPDは回転していないと言える。そして、なす角αから45°を引けば、FPDの回転量を求めることができる。
『手法2』
手法2としては、図10に示すように、水平方向(または、垂直方向)に並ぶ2つのスポット像Sが、FPDの水平軸(または、垂直軸)に対してどの程度傾いているかを算出する手法である。本例では、スポット像Sが正四角形状に配置されるので、例えば、四角形状の上辺に相当する2つのスポット像Sの中心Scを結んだ直線と、FPDの水平軸のなす角βを求める。このなす角βが、FPDの回転量である。また、四角形状の側辺に相当する2つのスポット像Sの中心Scを結んだ直線と、FPDの垂直軸とのなす角を求めても良い。この場合、このなす角βが、FPDの回転量になる。
[距離算出部]
距離算出部(距離算出手段)19は、X線発生器2とFPD3との間の距離(距離情報)を算出する構成である。距離情報を算出するには、まず初めに、任意のスポット像の大きさを算出する。次に、予め設定されている、FPDが傾いていない状態のときのスポット像の大きさと、前記距離との相関関係のグラフに基づいて、スポット像を撮影したときの前記距離を算出する。
上述した相関関係のグラフを図11に示す。グラフの横軸は、FPDとX線管球との距離(cm)を、縦軸は、当該距離が180cmのときのスポット像の大きさを1.0とした場合のスポット像の大きさを拡大率に変換した値(%)示す。即ち、撮影したスポット像の拡大率が、例えば、0.59であれば、FPDとX線管球との距離は、100cmとなる。
以上、説明した4つの算出部15,17,18,19により算出したFPD3の配置状態に関する数値情報は、予備モニタ51および本体1に設けられるモニタ5に表示される。図12に数値情報を予備モニタにより通知した状態を示す。予備モニタの画面右上には、FPDでX線を検知できる領域である検知領域501に対する照射野領域502の位置を模式的に把握するモニタリング図が表示されている。画面上の語句の意味は以下の通りである。
SID…距離情報
θ…FPDのX軸方向の傾き(傾き情報)
φ…FPDのY軸方向の傾き(傾き情報)
ω…回転情報
X…FPDの中心位置と照射中心とのX軸方向のズレ(ズレ情報)
Y…FPDの中心位置と照射中心とのY軸方向のズレ(ズレ情報)
図12(A)は、X、Yのズレ量が比較的大きいが、数値情報の全てが許容範囲内にある場合である。図12(B)は、FPDのX軸方向の傾き(傾き情報)が許容値を超える場合、図12(C)は、Xのズレ量が許容値を超える場合を示す。図12(B)、(C)に示すように、本例の装置は、許容値を超えた数値情報を朱字で拡大表示することで、撮影技師に注意を促している。さらに、警告音による通知を行なっても良い。また、数値情報の少なくとも一つが許容値を超える場合には、FPDの配置状態を再調整しない限り被検体の撮影を行なえないようにしても良い。
また、本例の装置では、X線発生器と台車にセンサが設けられており、X線発生器を動かした量と、台車を動かした量を反映して予備モニタおよびモニタ上の数値情報が更新されるようになっている。そのため、X線発生器と装置本体の少なくとも一方を動かしたときに、X線発生器とFPDとの位置関係の再調整を正確に行うことができ、実際に被検体を撮影する前に、前記位置関係を最適な状態にすることができる。また、数値情報が更新される構成により、配置状態の再調整を行った後に、再びスポット撮影を行なう必要がなく、被検体への被曝量を低減することができる。
上述のように、本例のX線撮像装置によれば、被検体を撮影する前に、X線発生器とFPDとの配置状態を最適に調整することができる。
本発明のX線撮像装置は、特に、回診用X線撮像装置に好適に利用可能である。
図1は、実施例1および2に記載のX線撮像装置の外観図である。 図2は、実施例1に記載のX線撮像装置の機能ブロック図である。 図3は、4枚のスポット形成羽根からなるスポット形成絞り(照射制限手段)の概略構成図である。 図4は、1枚のスポット形成羽根からなるスポット形成絞り(照射制限手段)の概略構成図であって、(A)は微小照射口が4つのもの、(B)は微小照射口が3つのものを示す。 図5は、スポット形成絞りの配置に応じたX線の照射状態を示す図であって、(A)はスポット形成絞りが挿入されていない場合、(B)はスポット形成絞りが挿入されている状態を示す。 図6は、X線の光軸に対するFPDの傾きを算出する手順を示すフローチャートである。 図7は、実施例2に記載のX線撮像装置の機能ブロック図である。 図8は、X線の光軸に対してFPDが傾いてない状態のときのスポット像に基づいて、X線の照射中心とFPDの中心とのズレを算出する手法を示す説明図である。 図9は、X線の光軸に対してFPDが傾いてない状態のときのスポット像に基づいて、X線の光軸を中心にしたFPDの回転量を算出する手法であって、1つのスポット像を使用する手法(手法1)を示す説明図である。 図10は、X線の光軸に対してFPDが傾いてない状態のときのスポット像に基づいて、X線の光軸を中心にしたFPDの回転量を算出する手法であって、2つのスポット像を使用する手法(手法2)を示す説明図である。 図11は、X線の光軸に対してFPDが傾いていない状態のときのスポット像の大きさと、X線発生器とFPDとの距離の関係を示すグラフである。 図12は、FPDの配置状態についての数値情報を予備モニタにより通知した状態を示す図であって、(A)は、FPDのズレ量が比較的大きいが、数値情報の全てが許容範囲内にある場合である。(B)は、FPDのX軸方向の傾きθが許容値を超える場合、(C)は、FPDのX軸方向のズレ量が許容値を超える場合を示す。
符号の説明
0 X線撮像装置
1 本体 2 X線発生器 21 X線管 22 X線照射口 2A X線の光軸
3 FPD 4 支持部 5 モニタ 51 予備モニタ 6 可動絞り
7 スポット形成絞り 7h 微小照射口
71,72,73,74,75 スポット形成羽根 71h,72h,73h,74h 貫通孔
8 高圧発生器 B 寝台 D 台車 CP 操作パネル P 被検体
10 コンピューター
11 制御部 12 画像データ取得部 13 画像処理部 14 記憶部
15 傾き算出部 151 選択部 152 特徴量抽出部 153 比較部
100 総合算出部
16 中心位置算出部 17 ズレ量算出部 18 回転量算出部 19 距離算出部
501 検知領域 502 照射野領域
S スポット像 Sc スポット像の中心 Ic 照射中心 Fc FPDの中心

Claims (6)

  1. 被検体にX線を照射するX線発生器と、被検体を透過したX線の入射線量に応じた画像データを取得する平面検出器とを備えX線撮像装置であって、
    X線を遮蔽する遮蔽部材からなり、前記遮蔽部材を貫通する少なくとも2つの照射口を有する照射制限手段と、
    記照射口を通過したX線により前記平面検出器に形成される複数のスポット像を有するスポット像データを記憶する記憶手段と、
    前記複数のスポット像に基づいて、前記被検体に照射されるX線の光軸に対する前記平面検出器の傾きを算出する傾き算出手段と、
    前記傾きを通知する通知手段とを備えことを特徴とするX線撮像装置。
  2. 前記傾き算出手段は、
    各スポット像の大きさを比較して最小のスポット像と最大のスポット像とを選択する選択手段と、
    最小のスポット像と最大のスポット像から、スポット像の形態に基づいた特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
    抽出した特徴量を、予め設定された特徴量と平面検出器の傾きとの相関関係に当てはめて、前記傾きを求める比較手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
  3. 前記傾きに基づいて、実質的に傾きのない状態の画像データを作成する適正画像データ作成手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のX線撮像装置。
  4. 前記傾きに基づいて実質的に傾きのない状態に補正したスポット像データから、前記平面検出器と光軸との交点である照射中心を算出する中心算出手段と、
    前記照射中心と、前記平面検出器の中心との位置関係から、前記平面検出器の中心と、前記照射中心との相対的ズレを算出するズレ量算出手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
  5. 前記傾きに基づいて実質的に傾きのない状態に補正したスポット像データから、前記平面検出器と光軸との交点である照射中心を算出する中心算出手段と、
    X線の光軸に対する前記平面検出器の回転量を算出する回転量算出手段とを備え、
    前記回転量算出手段は、前記補正したスポット像データのうち、少なくとも一つのスポット像と、前記照射中心を通る前記平面検出器のX軸およびY軸との位置関係から、前記回転量を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
  6. 前記傾きに基づいて実質的に傾きのない状態に補正したスポット像データから、前記平面検出器と光軸との交点である照射中心を算出する中心算出手段と、
    前記X線発生器と前記平面検出器との距離を算出する距離算出手段を備え、
    前記距離算出手段は、前記平面検出器がX線の光軸に対して傾いていない状態のときのスポット像の大きさと、前記X線発生器と前記平面検出器との間の距離との相関関係に基づいて、前記補正したスポット像データのスポット像の大きさから前記距離を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
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