JP4837976B2 - 農用作業車の姿勢制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、センサ等を用いてトラクタ等の農用作業車と、該農用作業車に装着される作業機との相対関係を検知して、該農用作業車に対して対地作業機の角度制御を行う技術に関する。
従来、農用作業車の一例としてその後部に圃場を耕耘するためのロータリ耕耘装置等の対地作業機が連結可能なトラクタは存在する。このようなトラクタは、その本体にローリング方向(左右方向)の対地角度(傾斜角度)を検出するとともに、トラクタとロータリ耕耘装置との相対角度(上下方向)を検出する。さらにトラクタが傾いたときは、連結されるロータリ耕耘装置の傾きを補償するように油圧シリンダなどのアクチュエータを作動させることによって、圃場を平坦にすべく耕耘する。また、特許文献1、特許文献2に記載のように、トラクタのローリング方向の相対速度を検出することによって、トラクタのローリング方向の角速度を検出し上記のアクチュエータの作動速度を変化させるものは公知である。また、特許文献3、特許文献4に記載のように、ローリング角度の正確な検出に角速度センサを用いることも公知である。
特開平11−275908号 特開平11−275909号 特開2002−253003号 特開2002−253004号
前記特許文献1及び2に記載されるように、アクチュエータの動作速度を角速度センサの検出値によって補正し、システムの応答を改善する手段、前記特許文献3及び4に記載されるように角速度センサの検出値を積分し傾斜角度の検出値を補正することで正確な対地角度の検知を行う手段がある。これらはともに、角速度センサの応答性の速さを前記ローリング制御の応答性向上に利用するものである。また、角速度センサの検出値に対して負帰還制御(フィードバック制御)を行うことで、対地作業機の角速度を減少させ、作業圃場面の凹凸を少なくする制御を行うことも可能である。
しかしながら、これらはトラクタに装着された角速度センサの検出値が走行する圃場の起伏からくるローリング角度の変化のみから検出された場合には有効であるが、実際のロータリ耕耘装置のローリング制御などにおいては、ローリング制御動作が原因となってもトラクタの車体が揺動し、前記角速度センサの検出値に反映される場合がある。
例えば、浅耕作業などでは比較的対地作業機を高い位置に持ち上げて作業を行うため、トラクタ車体の重心が高くなり、また、耕耘深さが浅くなることからロータリ作業機と地面の接触量が小さくなり、ほとんど対地作業機は地面に支えられず宙吊りの状態になる。このような場合に、ローリング方向にトラクタとロータリ作業機との相対角度を変化させるべくアクチュエータを駆動したとき、ロータリがローリング方向に動作する運動エネルギーと車体全体の重心の移動によってトラクタが左右に揺動する。この運動からくる検出信号によって相対角度を負帰還修正するべくアクチュエータが駆動されると今度は逆のローリング方向に前記の運動エネルギーと車体全体の重心移動による揺動が発生する。この繰り返しの結果、作業車両であるトラクタ自身の揺動が源となってシステムが発振することになる(図16参照)。
このような場合、作業圃場面に起伏が無くてもトラクタ本体と対置作業機が左右方向に余計な動作をしながら逆に作業圃場面を荒らしてしまうこととなる。また、角速度センサは応答性が高いため、アクチュエータが追従不可能な高周波のローリング変化速度も検出する。そのため、トラクタ本体に搭載された角速度センサの検出値を基準に対地作業機の角速度を減衰する制御を行った場合、何らかの防止策を講じなければ発振しやすいシステムとなる。一般には、対地作業機とトラクタ本体を接続する3点リンクに適度な遊びを設けて(例えば図4に示すチェックチェーンを緩めるなど)対地作業機の揺動が直接トラクタ本体に伝動しない措置を取ることが有効だが、実際のユーザーが必ずしも適切な遊び量の調整を行って作業するとは限らず、またシステムの発振が起こったときにその原因は多くのユーザーにはわからないため、システムの故障を疑われることにもなる。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トラクタ本体が揺動源となり制御が不安定になることを防止し(図17参照)、且つ角速度センサの応答性の良さを生かして精度よく圃場面の起伏を検知して制御しうる農用作業車を提供することである。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、農用作業車の左右の傾斜角の変化速度を検出する角速度センサ(19)と、前記角速度センサ(19)の検出値に基づいて、農用作業車と対地作業装置との相対角度を制御する制御手段とを具備し、該制御手段は前記対地作業装置の姿勢変化による角速度を減少させるべく相対角度制御を行う農用作業車において、前記制御手段は、該角速度センサ(19)の検出値が一定時間内に閾値(U)を超える頻度が一定以上である場合は、前記対地作業機の相対角度制御に対する角速度センサ(19)の検出値の影響を低下させる手段(A)を設け、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)が用いられる場合、前記角速度センサ(19)の検出値の影響を低下させても、前記一定時間内に角速度センサ(19)の検出値が閾値(U)を超える頻度が高い場合には、更に相対角度制御に対する、角速度センサの検出値の影響を低下させる手段(A)の働きを時系列的に段階を踏んで強めていくことにより、角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させることによって、最適補正量を自動的に得る農用作業車の姿勢制御装置である。
請求項2においては、請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)として、該角速度センサ(19)の検出値を姿勢制御に反映させないものである。
請求項3においては、請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)として、該角速度センサ(19)の閾値(U)を増加させるものである。
請求項4においては、請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)として、実際の角速度センサ(19)の検出値よりも低い値に変換して対地作業機の相対角度制御に用いるものである。
請求項5においては、請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)を用いた後、該角速度センサ(19)の検出値が一定時間内に閾値(U)を超える頻度が一定以内になった場合は、該角速度センサの検出値の影響を低下させる手段(A)を用いることを解除するものである。
請求項6においては、請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)が用いられる場合には、警報を発する報知手段を具備するものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、農用作業車の左右の傾斜角の変化速度を検出する角速度センサ(19)と、前記角速度センサ(19)の検出値に基づいて、農用作業車と対地作業装置との相対角度を制御する制御手段とを具備し、該制御手段は前記対地作業装置の姿勢変化による角速度を減少させるべく相対角度制御を行う農用作業車において、前記制御手段は、該角速度センサ(19)の検出値が一定時間内に閾値(U)を超える頻度が一定以上である場合は、前記対地作業機の相対角度制御に対する角速度センサ(19)の検出値の影響を低下させる手段(A)を設けたので、応答性の良い制御システムが状況によって、作業車両であるトラクタ自身の揺動が源となってシステムが発振することを防止し、システムの安定性を高めることが可能となる。また、移動平均を用いた処理や、あらかじめ不感帯を大きく設定する処理などの、安定性を確保するために通常状態の応答性を低下させてしまう処理を採用せずに、結果としてシステム全体の応答性を高めることが可能となる。
また、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)が用いられる場合、前記角速度センサ(19)の検出値の影響を低下させても、前記一定時間内に角速度センサ(19)の検出値が閾値(U)を超える頻度が高い場合には、更に相対角度制御に対する、角速度センサの検出値の影響を低下させる手段(A)の働きを時系列的に段階を踏んで強めていくことにより、角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させることによって、最適補正量を自動的に得ることが可能となり、システムの応答性向上を行うことが可能となる。
請求項2においては、簡便且つ確実に制御システムの発振を防止し、システムの安定性を高めることが可能となる。
請求項3においては、必要な場合のみシステム発振防止処置が図られ、応答性の良い通常の制御状態を維持する頻度が高まり、システムの安定性を確保する範囲で応答性を向上することが可能となる。
請求項4においては、発振による悪影響を排除しながらも、発振以外の角速度の検出を継続することが可能となるため、システムの応答性を高めることが可能となる。
請求項5においては、必要のない場合には角速度センサの検出値を通常に戻すことが可能となるため、システムの応答性が向上する。
請求項6においては、オペレータなどにシステムが非定常状態で働いていることを報知できるため、トラクタ本体と対地作業機の連結状態を調整しなおすことが可能となる。これによって最適な状態で制御装置を使用することが可能となり、システムの精度が向上し、使用者が扱いやすい機械を供給することが可能となる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1は本発明の実施の形態に係るトラクタ1の概略構成を示す側面図、図2はトラクタ1の制御系に関するブロック図、図3はトラクタ1における油圧回路図、図4はトラクタ1における対地作業機との連結に用いるロワーリンクの詳細図、図5は制御系が行う一連の処理(スタート〜S40)の一例を示した流れ図、図6は制御系が行う一連の処理(S50〜S70)の一例を示した流れ図、図7は制御系が行う一連の処理(S80〜S120)の一例を示した流れ図、図8は制御系が行う一連の処理(S65a等)の一例を示した流れ図、図9は制御系が行う一連の処理(S65b、S70b等)の一例を示した流れ図、図10は制御系が行う一連の処理(S65c、S66c等)の一例を示した流れ図、図11は制御系が行う一連の処理(S64c、S65b、S65c、S66c等)の一例を示した流れ図、図12は制御系が行う一連の処理(S45b、S55b、S65d、S70d等)の一例を示した流れ図、図13は制御系が行う一連の処理(S45c、S55c、S65e、S66e、S70e等)の一例を示した流れ図、図14は制御系が行う一連の処理(S46、S56等)の一例を示した流れ図、図15はトラクタ1におけるメータパネルの一例を表した平面図、図16はシステムが発振を起こした場合の角速度センサ検出値を表したグラフ図、システムが発振を起こした場合において、図17は本発明に掛かる処理を施した場合の角速度センサ検出値を表したグラフ図である。
先ず、図1(外観図)、図2(ブロック図)、及び図3を(油圧回路図)を用いて本発明の農用作業車の一例であるトラクタの概略構成について説明する。1はトラクタで、機体の前後部に夫々前輪2・2と後輪3・3とを備え、ミッションケース4の後上部には油圧シリンダケース5を固着して設けている。該油圧シリンダケース5内には、単動式油圧シリンダ6が設けられており、油圧シリンダケース5の左右両側には該油圧シリンダ6の伸縮により回動するリフトアーム7・7を配置している。
また、トップリンク10、ロワーリンク11、11からなる3点リンク機構12の後端部には、対地作業機の一例であるロータリ耕耘装置14がリフトアーム7・7にて昇降自在に連結されている。したがって、上記単動式油圧シリンダ6によって、リフトアーム7・7に連結されるロータリ耕耘装置14が上昇または下降制御されることになる。リフトアーム7、7とロワーリンク11、11との間には左右一方にリフトロッド15と左右他方に傾倒シリンダ18が介装されている。
また、傾倒シリンダ18は複動式とし、後述する制御弁の切換で伸縮され、ロータリ耕耘装置14をローリング方向(左右方向)に傾動させることが可能となり、ロータリ耕耘装置14の水平(姿勢)制御を行うことが可能となる。また、17は本機(リフトアーム)と作業機の間の左右方向の相対角を検出する手段であり、トラクタ1とロータリ耕耘装置14との間の相対的回動量を検出するストロークセンサで構成して、具体的には直線式のポテンショメータで構成されている。このストロークセンサ17は、上記傾倒シリンダ18の横側部に配設され、該傾倒シリンダ18の伸縮量を検出することによって、上記相対的回動量を検出するものである。16は、本機の任意位置、例えば、油圧シリンダケース5の横側部に取り付けられた傾斜センサであって、トラクタ1の左右の傾斜角度(即ち対地角度)を検出する対地検出手段の一例である。
<ロータリ耕耘装置14の位置決めに関するもの>
20はポジション制御用の油圧操作レバーであって、この油圧操作レバー20の回動基部には、トラクタ1の後部に連結されているロータリ耕耘装置14の対地高さを設定するためのポテンショメータからなる対地高さ設定器21(図2参照)が取り付けられている。
一方、片側リフトアーム7の回動基部にもポテンショメータからなる対地高さセンサ23(図2参照)が設けられ、油圧操作レバー20にて設定された位置にリフトアーム7、7が回動してその設定位置に停止するように構成している。該対地高さセンサ23は回転型のポテンショメータやロータリエンコーダ等の回転センサにより、リフトアーム7の回動角度を検知することにより、ロータリ耕耘装置(作業機)14の高さを検出するようにしている。
<ロータリ耕耘装置14に関して>
ロータリ耕耘装置14について簡単に説明すると、ロータリ耕耘装置14は、耕耘爪を回動して耕耘する耕耘部34と、耕耘部34の上方を覆う耕耘カバー35と、耕耘カバー35の後部にリヤカバー36を枢支し、該リヤカバー36の回動基部に、リヤカバー36の角度を検出する耕深センサ37が設けられている。該耕深センサ37はリヤカバーの角度を検出しても、ハンガーロッドの伸縮長さを検知する構成であっても良い。
次に油圧経路について図3を用いて説明する。
<ロータリ耕耘装置14の左右の傾動に関する油圧系統>
油圧ポンプ25から送り出された作動圧油は、分流弁26により一部は上述した水平制御用の傾動シリンダ18側に送られ、他はトラクタ1の後部に連結可能な作業機(例えば、上述したロータリ耕耘装置14)を昇降するためのリフトアーム7・7に連結される単動式油圧シリンダ6側に送られる。ロータリ耕耘装置14の水平制御用の切換弁27は、3位置4ポート式の弁にて構成され、左側のソレノイド27aが励磁されると傾倒シリンダ18は伸長し、逆に右側のソレノイド27bが励磁されると短縮する。前記切換弁27は、制御装置60(図2参照)からパルス信号を受信した場合に、ソレノイド27a又はソレノイド27bにパルス信号を流すことによって、制御される電磁弁であって、電流値に比例するものである。また、上記切換弁27は常態においては中立位置を保っており、傾斜センサ16によってトラクタ1の傾斜が検出された場合に、制御装置60は、ロータリ耕耘装置14を水平に維持すべく、上記何れかのソレノイド(27a、27b)を励磁することによって切換弁27を切り替える。
<リフトアーム7の上昇、下降に関する油圧系統>
40はメインの油圧昇降回路の一部を構成する油路、42は上昇用比例制御弁、45は下降用比例制御弁である。上昇用比例制御弁42は、パイロット圧を制御する第1制御弁47と、流量を制御する第2制御弁48とからなり、第1制御弁47のソレノイドに流す電流値をコントロールすることによって第2制御弁48に掛かるパイロット圧が変わり、上記単動式油圧シリンダ6に至る作動油の量がコントロールされる。同様に、下降用比例制御弁45も、パイロット圧をコントロールする第1制御弁49と、流量制御する第2制御弁50とからなり、第1制御弁49のソレノイドに通電する電流値を変えることによって、第2制御弁50に掛かるパイロット圧が変わり、上記単動式油圧シリンダ6から作動油タンクに排出される作動油の量が制御される。これらの上昇用、下降用の比例制御弁42・45は水平制御用の切換弁27と同様、1パルスあたりのON時間を変えて電流値をコントロール(デューティ制御)するものである。
また、上記切換弁27、上記上昇用比例制御弁42、及び上記下降用比例制御弁45は、制御装置60より送出されるPWM(Pulse Width Modulation)信号によって、切り替えられる構成であっても良い。このように、PWM信号によって切り替えられる構成にする場合、例えば、対地高さ設定器21による設定値と対地高さセンサ23の検出値との間に偏差が生じた場合に、制御装置60は該偏差が小さい場合には1パルス当たりのON時間(オンタイム)を短くしてPWM信号を送出し、他方、該偏差が大きい場合には1パルス当たりのON時間を長くしてPWM信号を送出するように構成しても良い。
制御系の構成としては、トラクタ1においてロータリ耕耘装置14の相対角度のローリング制御等を行うための制御手段の一例である制御装置60には、図2に示すように、トラクタ1の左右の傾斜角度の変化速度を計測する角速度センサ19を具備している。その他、制御装置60には、トラクタ1の後部に取り付けられるロータリ耕耘装置14等の対地作業機の取り付け幅等の連結状態に応じて切り替えを設定するための設定手段の一例である取付切換スイッチ59、シフト位置を検出するシフト位置センサ56、エンジン回転数センサ57、トラクタ1やロータリ耕耘装置14の制御モードを選択・決定するための切換手段の一例であるモードスイッチ61、及びトラクタ1の車速を検出するための車速検出手段の一例である車速センサ70等が接続されている。(以下、「スイッチ」を「SW」と表記する)更に、ロータリ耕耘装置14の耕耘深さを設定するための耕深設定器51、トラクタ1とロータリ耕耘装置14との相対角度を予め設定するための傾斜設定器52も接続されている。
また、制御装置60の入力側にはA/D変換器55が設けられており、該A/D変換器55を介して、シフト位置センサ56、傾斜設定器52、耕深設定器51、対地高さ設定器21、対地高さセンサ23、耕深センサ37、ストロークセンサ17、傾斜センサ16、角速度センサ19等が制御装置60に接続されている。また、上記A/D変換器55を介さずに該制御装置60に接続されるものとしては、取付切換SW59、エンジン回転数センサ57、モードSW61、車速センサ70などがある。また、上記制御装置60は、MPUやCPU等の中央演算装置より成るものであっても良い。
また、制御装置60の出力側には、リフトアーム7、7を昇降回動させる上昇用比例制御弁42と下降用比例制御弁45、及び水平制御用の傾倒シリンダ18を伸長させるソレノイド27aと短縮させるソレノイド27bが接続されている。尚、58はA/D変換器55を介することなく直接制御装置60に接続された昇降用スイッチであっても良い。該スイッチ58をオンにすると、ロータリ耕耘装置14は最大上昇位置まで上昇し、OFFにすると、油圧操作レバー20によって定まる高さまで下降する。
<トラクタ1が行う一連の処理>
ここで、ロータリ耕耘装置14の相対角度のローリング制御等を行うための制御の流れ図を、図5乃至図14を用いて説明する。なお下記説明において、各処理ステップについてはS10などのように省略して表記している。まず、図5乃至図7に示すように、制御装置60はスイッチ類やセンサ類の設定や検出値などを読み込んでトラクタ1の状況を認識する(S10)。制御装置60はロータリ耕耘装置14の左右傾斜角の変化速度を検出する角速度センサ19の値の変化を監視している途中であるか否かを判定し(S20)、判定を開始していなければ所定の判定時間のカウントを開始し、判定を行う(S25)。次に、角速度センサの検出値が設定した範囲内から範囲外に変化したか否かを判定する(S30)。
範囲内から範囲外への変化を検知したならば、その回数(n)を1増やす(S35)。その後、角速度センサ値が範囲内から範囲外へとなった回数(n)が設定値内であったか否かを判別する。(S40)。設定値外であったならば、図6に示すように、そのまま通常の制御動作を行った場合、発振が始まるおそれがあるとみなして、速やかに角速度センサの検出値から制御動作へ至る影響を低下させる処理(手段A)を行うことを決定する(S45)。一方、角速度センサ値が範囲内から範囲外へとなった回数が設定値内であれば、ステップS25で開始された判定期間が経過しているかを判断し(S50)、経過しているならば、そのまま通常の制御動作を行っても発振が始まるおそれは無いとみなして、角速度センサの検出値から制御動作へ至る影響を低下させる処理を行わないことを決定する(S55)。
角速度センサの制御動作へ至る影響を低下させる処理を行う、あるいは行わないことを決定した後に角速度センサの範囲内から範囲外への変化回数(n)とそれを数える間の時間(t)を0に戻し(S56、S57)、次回ループのステップS20からS40に至るまでの処理で判定が再開される。角速度センサ値が範囲内から範囲外へとなった回数(n)が所定内であり、ステップS25で開始された判定時間が経過していないならば、角速度センサの検出値から制御動作へ至る影響を低下させる処理を行うか否かは前回ループによって決定された判定を引き継ぐ。手段Aが有効であるか否かがここまでで決定されたため、次に手段Aが有効であるか無効であるかを判定し(S60)、有効であるならば手段Aを実行する(S65)。
その後、角速度センサの検出値が設定値以内であるか否かを判別する(S70)。設定した閾値を超える場合は、図7に示すように、本機に連結された対地作業機の角速度を減衰する目的で負帰還となる出力方向、出力量を決定する(S100)。ここではあらかじめ角速度に応じたONデューティーをセットする。つまり、角速度が閾値よりも大きい場合には急速に作業機が傾倒している状態であるため、この傾倒速度を低下させるように、通常の角速度に対応したデューティー比よりも小さな値をセットする。角速度センサの検出値が設定値以内である場合は、ステップS80に移行し、トラクタ1本機と対地作業機との相対角度を修正する制御に移行する。ここで、ストロークセンサが設定値以内であるか否かを判断し(S80)、設定値以内である、すなわち、トラクタ1本機と対地作業機が設定された相対角度を保っているならばステップS85に移行し、出力を行わない。一方、設定値以内ではない、すなわち、トラクタ本機と対地作業機が設定された相対角度を保っていないなら、偏差に応じた制御出力を設定する(S90)。つまり、偏差が大きい場合には、その大きさに比例した出力となるように、例えば、油圧の送油量を増加する。角速度に対する負帰還出力、またはストロークセンサ値から算出されるトラクタ1本機と対地作業機の相対角度を修正するべく出力が設定された場合は、その出力方向、量に応じて出力を行う(S110→115/120)。
このような処理を行うことにより、必要のない場合には角速度センサの検出値を通常に戻すことが可能となるため、システムの応答性が向上する。また、必要のない場合には角速度センサの検出値を通常に戻すことが可能となるため、システムの応答性が向上する。
また、図8に示すように、手段Aを実行するステップS65において、角速度の検出値は無いものと判定し(S65a)、実際の角速度センサ検出値に関わらず、ステップS70の判定でS80に移行するよう検出値を修正することも可能である。これによって、角速度センサの頻繁に方向の変化する信号に対して出力を行うことを防ぎ、システムが発振することの無いようにすることが可能となる。
また、図9に示すように、手段Aを実行するステップS65において、角速度センサを制御に用いるか否かを判定する閾値Uを決定することも可能である。一般に安価な角速度センサは機体に角速度が発生しないときでも、振動によりその検出値にノイズがのる。閾値Uは通常はノイズに対してシステムが反応しないために設定された不感帯である。よって、手段Aはこの閾値Uを所定量増加させるようにする(S65b)。角速度の検出値がUを超えるものであるかを判定し(S70b)、超えるものであるならば角速度センサの値に対して負帰還を行うものとし(S100)、Uを超えなければストロークセンサ値に対して負帰還を与えるものとして(S90)、制御出力を設定する。この一連の処理によって、角速度センサ値に対する負帰還を行う頻度を低くして、システムが発振することを防止する。ステップS65aの処理では、確実にシステムの発振を防止できるが反面、角速度センサによる応答性の向上を放棄することになる。よってトラクタ本体の安定度(車体の重量バランスやタイヤ径、車速などからくる走行姿勢の安定度)や作業機の重量に応じて、ステップS65aまたはステップS65bの手段を選択することが可能となる。
また、図10に示すように、手段Aを実行するステップS65(及びステップS66)において、角速度の検出値を減少させることも可能である(S65c、S66c)。すなわち、ステップS65cにおいて前述の頻度(n)から角速度センサの検出値を減少させる量Kを求めて、ステップS66cにおいて実際の検出値から減じたものを角速度センサの検出値として負帰還制御に用いる。ここでは、減少量Kを検出値から減ずることとしたが、係数を乗ずることで検出値を低下させても良く、限定するものではない。また説明を簡便にするため、図9に示す方法とは別個の処理としたが、図11に示すように、一連の処理の中で両方の処理を盛り込んでも良く、限定するものではない。図8に示す処理との関係については、図10に示す処理で述べたのと同様である。この一連の処理によって、トラクタ1自身の発振によって急激に本体が左右に揺動する角速度と、本来応答するべく圃場面の起伏上を走行することによって発生した角速度が複合した検出値から、その検出値を減ずることによって後者の本来応答するべき角速度を少しでも検出しようとする効果がある。
このように処理を構成することにより、発振による悪影響を排除しながらも、発振以外の角速度の検出を継続することが可能となるため、システムの応答性を高めることが可能となる。
また、図12及び図13に示すような処理をすることも可能である。すなわち、図12では図9の処理に、手段Aの有効が決定されるステップS45において角速度センサの不感帯増加係数を増加させる処理(S45b、r=r+1)と手段Aの無効が決定されるステップS55において角速度センサの不感帯増加係数をクリアする処理(S55b、r=0)を加える。これにより角速度センサ影響低下手段Aが有効である場合は、ステップS45bによって決定された係数rに応じて不感帯Uが増加する(S65d)。これら一連の処理により、システムの発振につながる角速度の検出が続く限り不感帯Uは増加することとなる。
一方、図13では図10の処理に、手段Aの有効が決定されるステップS45において角速度センサの検出減少係数を増加させる処理(S45c、s=s+1)と、手段Aの無効が決定されるステップS55において角速度センサの検出減少係数をクリアする処理(S55c、s=0)を加える。これにより角速度センサ影響低下手段Aが有効である場合には、ステップS45cにて決定された係数sに応じて角速度減少補正値Kが増加する(S65e)。これら一連の処理により、システムの発振につながる角速度の検出が続く限り角速度検出減少補正値Kは増加することとなる。その後前ステップで求められた角速度検出減少補正値を角速度検出値から減算する(S66e)。以上により、図9及び図10の手段を用いて角速度センサの検出値に補正をかけても発振につながるトラクタ1機体の揺動が収まらないような非常の場合は、その補正値を増加させることによりシステムの発振を防止することが可能となる。本実施例は、図9に示す方法、もしくは図10に示す方法のいずれかの方法で処理する場合について説明したが、この両者を複合させることも可能であり限定するものではない。
また、図14に示すように、ステップS45において手段Aの有効が決定された場合、トラクタ1の機体本体が発振しやすい状態にあることを、ランプ80を点灯して報知することも可能である(S46)。一方、ステップS55において手段Aの無効が決定された場合、前記報知を目的としたランプ80を消灯する(S56)。図15に示すように、該ランプ80は運転席のハンドル周辺に配置されたメータパネル81に配設されており、システムが発振した場合に、操縦者に注意を喚起させることにより、図4に示すチェックチェーン90を緩める、すなわち、該チェックチェーン90と連結しているターンバックル92を緩めることによって左右方向のリンクにある程度のたるみを持たせるなどの対応を行わせることが可能となる。
これによって、角速度センサの制御に対する影響を低下させている状態を報知し、システムの応答性を低下させている状況をオペレータに報知することで、チェックチェーン90を緩めるなどの対応を行うことが可能となり、本来目的とするところのシステムの応答速度で使用することが可能となる。また、最適な状態で制御装置を使用することが可能となり、システムの精度が向上し、使用者が扱いやすい機械を供給することが可能となる。
本発明の実施の形態に係るトラクタ1の概略構成を示す側面図。 トラクタ1の制御系に関するブロック図。 トラクタ1における油圧回路図。 トラクタ1における対地作業機との連結に用いるロワーリンク11の平面図。 制御系が行う一連の処理(スタート〜S40)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S50〜S65)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S70〜S120)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S65a等)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S65b、S70b等)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S65c、S66c等)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S65b、S65c、S66c、S70b等)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S45b、S55b、S65d、S70d等)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S45c、S55c、S65e、S66e等)の一例を示した流れ図。 制御系が行う一連の処理(S46、S56等)の一例を示した流れ図。 トラクタ1におけるメータパネルの一例を表した平面図。 システムが発振を起こした場合の角速度センサ検出値を表したグラフ図。 システムが発振を起こした場合において、本発明に掛かる処理を施した場合の角速度センサ検出値を表したグラフ図。
1 トラクタ
6 単動式油圧シリンダ
7 リフトアーム
14 ロータリ耕耘装置
16 傾斜センサ
18 傾倒シリンダ
21 対地高さ設定器
23 対地高さセンサ
60 制御装置
80 ランプ
81 メータパネル

Claims (6)

  1. 農用作業車の左右の傾斜角の変化速度を検出する角速度センサ(19)と、前記角速度センサ(19)の検出値に基づいて、農用作業車と対地作業装置との相対角度を制御する制御手段とを具備し、該制御手段は前記対地作業装置の姿勢変化による角速度を減少させるべく相対角度制御を行う農用作業車において、前記制御手段は、該角速度センサ(19)の検出値が一定時間内に閾値(U)を超える頻度が一定以上である場合は、前記対地作業機の相対角度制御に対する角速度センサ(19)の検出値の影響を低下させる手段(A)を設け、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)が用いられる場合、前記角速度センサ(19)の検出値の影響を低下させても、前記一定時間内に角速度センサ(19)の検出値が閾値(U)を超える頻度が高い場合には、更に相対角度制御に対する、角速度センサの検出値の影響を低下させる手段(A)の働きを時系列的に段階を踏んで強めていくことにより、角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させることによって、最適補正量を自動的に得ることを特徴とする農用作業車の姿勢制御装置。
  2. 請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)として、該角速度センサ(19)の検出値を姿勢制御に反映させないことを特徴とする農用作業車の姿勢制御装置。
  3. 請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)として、該角速度センサ(19)の閾値(U)を増加させることを特徴とする農用作業車の姿勢制御装置。
  4. 請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)として、実際の角速度センサ(19)の検出値よりも低い値に変換して対地作業機の相対角度制御に用いることを特徴とする農用作業車の姿勢制御装置。
  5. 請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)を用いた後、該角速度センサ(19)の検出値が一定時間内に閾値(U)を超える頻度が一定以内になった場合は、該角速度センサの検出値の影響を低下させる手段(A)を用いることを解除することを特徴とした農用作業車の姿勢制御装置。
  6. 請求項1記載の農用作業車の姿勢制御装置において、前記角速度センサ検出値の相対角度制御に対する影響を低下させる手段(A)が用いられる場合には、警報を発する報知手段を具備することを特徴とする農用作業車の姿勢制御装置。
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