JP4836389B2 - 卵黄酵素処理物からなる乳化剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生菌数の少ない優れた卵黄酵素処理物及びその製造方法に関し、また、本発明は、該卵黄酵素処理物からなり、食品用途に適した風味発現性と乳化性とを兼ね備えた乳化剤、及び該乳化剤を用いた、風味発現性、口中分散性及び口溶け性の良い水中油型乳化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
卵黄のホスホリパーゼAによる処理物は、従来から食品用の乳化剤として用いられている。これは、卵黄に含有されるリン脂質(主にレシチン)やリン脂質と結合したリポ蛋白質がホスホリパーゼAで酵素処理されることにより生成する、リゾリン脂質やリゾリン脂質に結合したリポ蛋白質が優れた乳化性を有するためである。
【0003】
しかし、卵黄原料は腐敗しやすく、そのまま酵素添加してインキュベーション処理を行う酵素処理を施すと、処理物中に菌が増殖し、食品原料として使用できない場合がある。このため殺菌処理を施した殺菌卵黄を用いる場合でも、この殺菌は卵黄中の蛋白質が変性してしまうような高温での殺菌(滅菌)ではないため、酵素処理中の菌増殖は免れないものであった。また、酵素処理した後、フィルター等で菌を除去する方法もあるが、卵黄は粘度が高く困難である。
【0004】
一方で、乳化性を有するリン脂質やリン脂質と結合したリポ蛋白質を取り出してリゾ化することも考えられるが、食品用途への使用を考慮すると、卵黄由来製品としての卵黄酵素処理物自体の風味、あるいは他の食品原料の風味発現性からは好ましくなく、やはり卵黄の酵素処理物が望まれている。
【0005】
このようなことから、従来は、殺菌卵黄を基質とし、酵素処理した後に再度殺菌することが行われている。しかし、卵黄中の蛋白質の変性による乳化性、風味、食感への影響を考えると、加熱殺菌はできるだけ行わずに卵黄酵素処理物を得ることが望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、乳化性に優れ、且つ生菌数の少ない卵黄酵素処理物及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、該卵黄酵素処理物を用いた、食品用途に適した風味発現性と乳化性とを兼ね備えた乳化剤、及び該乳化剤を用いた、風味発現性、口中分散性及び口溶け性の良い水中油型乳化物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の乳化剤、水中油型乳化物、及び卵黄酵素処理物からなる乳化剤の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
「糖アルコールを対水濃度で30〜70重量%含有し且つ卵黄含有量が10重量%以上である卵黄液を、ホスホリパーゼAにより酵素処理した卵黄酵素処理物からなることを特徴とする乳化剤。」
「油相の割合が30〜70重量部で、上記乳化剤を含めない水相の割合が70〜30重量部(油相と水相との合計量が100重量部)である水中油型乳化物であって、水中油型乳化物全体の重量を基準として、上記乳化剤を0.5〜20重量%含有することを特徴とする水中油型乳化物。」
「糖アルコールを対水濃度で30〜70重量%含有し且つ卵黄含有量が10重量%以上である卵黄液を、ホスホリパーゼAにより酵素処理することを特徴とする卵黄酵素処理物からなる乳化剤の製造方法。」
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施形態について、以下に詳述する。
本発明に用いられる糖アルコールを含有する卵黄液としては、食品工業界で使用できる卵黄液に糖アルコールを加えたもの、或いは食品工業界で使用できる卵黄若しくは卵黄製品に糖アルコールを加えて液状としたものであればどのようなものでも使用することができ、例えば、割卵し分離した生卵黄、殺菌卵黄、冷凍卵黄、これらに糖類及び/又は塩類を加えたもの等から得た卵黄液、これらを乾燥した乾燥卵黄を水戻しした卵黄液、これらを混合した卵黄液等に、糖アルコールを加えたもの、或いは、上記卵黄及び/又は卵黄製品に糖アルコールを加えて、攪拌等により混合して液状としたもの等を例示することができる。
【0009】
上記糖アルコールとしては、可食性の糖アルコールであればどのようなものでも使用することができるが、例えば、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトール、マンニトール、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖化物等を例示することができる。
【0010】
これらの糖アルコールは、卵黄液中において酵素処理の工程中に生菌数が増加することを抑制することに寄与し、この観点から、卵黄液中における糖アルコールの対水濃度が30重量%以上、特に40重量%以上であることが好ましい。一方、糖アルコールが極端に多いと混合が困難であったり、酵素処理が十分行えなかったりすることがあるため、上記糖アルコールの対水濃度の上限は、70重量%以下、特に50重量%以下とすることが好ましい。
尚、糖アルコールの対水濃度とは以下の式で表される。
{〔(糖アルコール固形分重量)/(糖アルコール固形分重量+卵黄液中の全水分重量)〕×100(%)}
【0011】
このように糖アルコールを使用することにより、高温での殺菌を経ずとも、酵素処理を経た卵黄液中の生菌数を概ね5×103個/g以下にすることができるものである。
【0012】
尚、これら卵黄液に糖が含有されていると熱やpHにより褐変を来たすため、糖アルコールを含有する卵黄液中の糖含量は2重量%未満とすることが好ましく、加糖された卵黄原料を使用する場合は注意が必要である。
【0013】
また、糖アルコールを含有する卵黄液は、後述の酵素処理を効率よく行うために、適宜公知の範囲で水で希釈することができる。この希釈は、低濃度の糖アルコールによっても行うことができる。
【0014】
尚、本発明の卵黄酵素処理物は、用途によっては、卵黄成分の量が極端に少ないと、卵黄酵素処理物を用いる効果が十分得られないことがあるので、糖アルコールを含有する卵黄液中の卵黄含有量が、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上とする。
【0015】
本発明は、上記のような糖アルコールを含有する卵黄液をホスホリパーゼAにより酵素処理するものである。
上記ホスホリパーゼAは、リン脂質加水分解酵素とも呼ばれ、リン脂質をリゾリン脂質に分解する反応を触媒する酵素であれば特に限定されるものではなく、豚、牛等の哺乳類の膵液を起源としたホスホリパーゼAや、微生物を起源としたホスホリパーゼA等のいずれでも使用することができ、市販の製剤も使用することができる。また、ホスホリパーゼAは、作用するエステル結合の位置の違いにより、ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)とホスホリパーゼA2(EC3.1.1.4)の2種類があり、いずれも使用することができるが、好ましくはホスホリパーゼA2を用いる。
【0016】
糖アルコールを含有する卵黄液へのホスホリパーゼAの添加量は、卵黄(生卵黄換算)1gに対し、好ましくは0.2〜100ホスホリパーゼユニット、更に好ましくは0.5〜20ホスホリパーゼユニットの活性量に相当する量とする。ホスホリパーゼユニットとは、ホスホリパーゼの活性量を表す単位であり、1ホスホリパーゼユニットとは、pH8.0、40℃で卵黄にホスホリパーゼAを作用させた時に、卵黄中のリン脂質から、1分間に1マイクロモルの脂肪酸を遊離する活性量である。
【0017】
糖アルコールを含有する卵黄液のホスホリパーゼAによる酵素処理は、卵黄中の蛋白質や、酵素が熱により変性しない温度、且つ酵素の最適温度で行うのが良く、通常20〜60℃、好ましくは40〜55℃の温度範囲で行うのが良い。また、酵素処理中に撹拌機等で撹拌を行うのが有利である。
【0018】
上記酵素処理の際に、糖アルコールを含有する卵黄液を酵素の至適pHとするのがよく、通常pH5〜9の範囲に調整するのが良い。この際に用いることができるpH調整剤としては、食品用であれば特に限定されず、例えば、乳酸、クエン酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、アスコルビン酸、酢酸等の酸味料や、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、食酢、果汁、発酵乳等の酸性物質や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等を用いることができる。また、上記酵素処理の際に、酵素の安定剤として食品用の塩化カルシウム、リン酸二水素カルシウム、乳酸カルシウム等のカルシウム塩を、糖アルコールを含有する卵黄液に添加しても良い。
【0019】
上記酵素処理の際の反応時間に特に制約はないが、0.5〜30時間の範囲内で行うのが良い。
【0020】
本発明における糖アルコールを含有する卵黄液のホスホリパーゼAによる酵素処理の程度は、本発明の卵黄酵素処理物の用途によって求められる卵黄酵素処理物中に含まれるリゾリン脂質の量に従い、適宜調整すればよいが、例えば、乳化剤等の乳化力を要する用途の場合には、卵黄液中のリン脂質の好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上をリゾ化する。
【0021】
リゾ化率は、卵黄酵素処理物中の総リン脂質含有量に占める、卵黄酵素処理物中の総リゾリン脂質含有量の割合のことである。リゾ化率の測定方法は任意であるが、例えば以下の方法で求めることができる。
即ち、卵黄酵素処理物から水分を除去し、クロロホルム:メタノール=2:1(体積比)の溶媒に溶解する。これを濾過した後、溶媒を蒸発させ脂質成分を得る。この脂質成分を3回アセトン洗浄することにより中性脂質を除去し、残渣のリン脂質を得る。これを上記溶媒で希釈し、次に、イアトロスキャン(株式会社ヤトロン製)を用い、TLC/FID法にてリン脂質の定量を行う。先ず、ベンゼン:クロロホルム:酢酸=50:20:0.7(重量比)の溶媒で1次展開し、不純物の除去とリン脂質の濃縮を行う。次にクロロホルム:メタノール:29%アンモニア水=65:35:5(重量比)で2次展開し、これをFID法により検出し、予め作成した検量線をもとに定量すればよい。
【0022】
本発明の乳化剤は、上記卵黄酵素処理物からなるものであり、好ましい乳化力を得る観点から、卵黄液中のリン脂質の好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上をリゾ化したものがよい。
【0023】
以下、本発明の水中油型乳化物について詳細に説明する。
本発明の水中油型乳化物は、油相が30〜70重量部で水相が70〜30重量部(油相と水相との合計量が100重量部)である水中油型乳化物であって、該水中油型乳化物中に上記の本発明の卵黄酵素処理物からなる乳化剤を0.5〜20重量%含有する水中油型乳化物である。
【0024】
本発明の水中油型乳化物では、乳化剤として上記の本発明の卵黄酵素処理物を使用することが必須であり、その他の乳化剤では、風味発現性、口中分散性及び口溶け性の良い水中油型乳化物とすることができない。
【0025】
上記の卵黄酵素処理物からなる乳化剤の配合割合は、水中油型乳化の安定化と、風味発現性、口中分散性及び口溶け性の良い水中油型乳化物とするために、水中油型乳化物全体の重量を基準として0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、また、呈味性の観点から、20重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
上記の卵黄酵素処理物からなる乳化剤は、水相に添加することにより水中油型乳化物に含有させることが好ましい。
【0026】
本発明の水中油型乳化組成物に使用される油相としては油脂が用いられ、該油脂としては、食用に適する油脂であればよく、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が一般的であるが、更にパーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴー脂、乳脂等の常温で固体の油脂も除外されるものではなく、更にこれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の物理的又は化学的処理を施した油脂を使用することもできる。
【0027】
上記油脂としては、常温で液体の油脂を使用するのが好ましく、温度による油脂結晶変化が少なく安定しているものが特に好ましい。また、油相には、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤や、増粘安定剤、澱粉、乳蛋白、その他油脂に溶解又は分散する成分や添加剤を加えてもよい。例えば、上記増粘安定剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム等が挙げられる。上記澱粉としては、加熱により糊化膨潤しないものが好ましく、米澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉等の生澱粉、これらの澱粉をエステル化、リン酸架橋等の化学的処理したもの等が挙げられる。これらの澱粉は、水不溶性成分であって、水中油型乳化物の骨格をなし、食感をよくするためには、粒度が20μm以下のものが好ましい。
【0028】
本発明の水中油型乳化物に使用される水相としては、水や、糖アルコール、水飴等の可食性の液状物が用いられ、該水相には、上記の卵黄酵素処理剤からなる乳化剤以外に、砂糖等の糖類、増粘安定剤、その他の乳化剤、水不溶性又は難溶性のカルシウム塩、水溶性の塩類、呈味原料、香料、着色剤等の副原料を、本発明の目的を損なわない限り、任意に添加することができる。上記糖アルコールとしては、可食性の糖アルコールであればどのようなものでもよく、例えば、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトール、マンニトール、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖化物等が挙げられる。上記増粘安定剤としては、微小繊維セルロース、結晶セルロース、粉末セルロース等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記のその他の乳化物としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン類等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記のその他の乳化剤の配合量は、特に制限はないが、本発明の水中油型乳化物中、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。上記カルシウム塩としては、水不溶性又は難溶性のカルシウム塩であれば、炭酸カルシウム、卵殻カルシウム、貝カルシウム、骨カルシウム、サンゴカルシウム等、どのようなものでもよく、ざらつき感を感じさせないよう、食感を良くするためには、粒度は20μm以下のものが好ましい。上記水溶性の塩類としては、塩化カリウム、塩化カルシウム等が挙げられる。上記呈味原料としては、全脂加糖練乳、牛乳、バター等の乳製品、餡類、フルーツ果汁及びペースト、チョコレート、ナッツ類、ハチミツ、メープルシロップ、抹茶、よもぎ等の乾燥物等が挙げられる。
【0029】
上記油相と上記水相との配合割合は、水中油型乳化の安定化と、風味や食感を良くするために、油相30〜70重量部で水相70〜30重量部、好ましくは油相40〜60重量部で水相60〜40重量部(油相と水相との合計量が100重量部)である。油相の配合割合が70重量部より大きいと水中油型乳化が不安定化し、また30重量部より小さいと得られる水中油型乳化物の食感が悪くなる。
【0030】
尚、本発明の水中油型乳化物を調製する際に、上記水相は、前記卵黄酵素処理物からなる乳化剤も含めて調製されるが、このときの卵黄酵素処理物からなる乳化剤は、上記水相の配合割合には含めないものとする。
【0031】
本発明の水中油型乳化物は、例えば以下の様にして得ることができる。まず、水や、糖アルコール、水飴等の可食性の液状物に、乳化剤として本発明の卵黄酵素処理物と、糖類、増粘安定剤、その他の乳化剤、カルシウム塩、呈味原料、香料、着色料等を分散溶解させたものを水相とし、また、菜種油等の油脂に、増粘安定剤、生澱粉、乳蛋白等の副原料を分散させたものを油相とし、次いで、水相を撹拌しつつ油相を加え、水中油型予備乳化物を得る。これをコロイドミル、ホモミキサー等の乳化機で処理し、仕上げ乳化を行い、本発明の水中油型乳化物が得られる。
【0032】
このようにして得られる本発明の水中油型乳化物の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、製パン用のフィリング材、トッピング材、練込クリーム、製菓用のフィリング材等に使用できる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げ本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
殺菌卵黄(イフジ産業株式会社製)50kgと、糖アルコールとして還元澱粉糖化物(東和化成工業株式会社製、商品名:ピーオー・500、固形分70重量%)49.97kgとを攪拌、混合し、50〜55℃の範囲に温度調節しながら、10%水酸化カルシウム水溶液でPHを7.9に調整した卵黄液を得た。この卵黄液中の卵黄含有量は50.0重量%、糖アルコールの対水濃度は46.6重量%であった。これにホスホリパーゼA2としてノボノルディスクバイオインダストリー社製レシターゼ10L(登録商標)(10000IU/ml)を30ml添加し、50〜55℃の範囲に温度調節しながら2時間攪拌保持して、本発明の卵黄酵素処理物を得た。
得られた卵黄酵素処理物の、上記に例示した方法により測定したリゾ化率は98重量%であり、生菌数は4×102個/gであった。
【0034】
〔実施例2〕
糖アルコールとしてピーオー・500に代えて、ソルビトール液(東和化成工業株式会社製、商品名:ソルビットT−70、固形分70重量%)を使用し、糖アルコールの対水濃度を35.0重量%となるように変更した他は実施例1と同様にして本発明の卵黄酵素処理物を得た。
得られた卵黄酵素処理物の、上記に例示した方法により測定したリゾ化率は98重量%であり、生菌数は2×103個/gであった。
【0035】
〔実施例3〕
実施例1又は実施例2で得られた卵黄酵素処理物を24時間冷蔵したものを乳化剤として2重量%、還元水飴32重量%、グラニュー糖10重量%、微小繊維状セルロース5重量%、炭酸カルシウム2重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.5重量%を混合、70℃に調温し、水相を調製した。菜種油45重量%にカラギーナン0.1重量%、乳蛋白0.4重量%及び米澱粉3重量%を混合、70℃に調温し、油相を調製した。該油相と水相とを70℃で攪拌しながら混合し、粗乳化物を調製した。次に、得られた粗乳化物をコロイドミル(3500rpm)で均一な乳化物とし、5℃で24時間以上冷却し、それぞれの卵黄酵素処理物を配合した水中油型乳化物を得た。実施例1又は2で得られた卵黄酵素処理物をそれぞれ配合したこれらの水中油型乳化物は、いずれも、口溶け性、風味発現性及び口中分散性が良好なものであった。
【0036】
〔実施例4〕
実施例1又は実施例2で得られた卵黄酵素処理物の量を1重量%に、還元水飴の量を33重量%に変えた他は実施例3と同様にして、卵黄酵素処理物を配合した水中油型乳化物を得た。卵黄酵素処理物を配合したこれらの水中油型乳化物は、いずれも、口溶け性、風味発現性及び口中分散性が良好なものであった。
【0037】
〔実施例5〕
実施例1又は実施例2で得られた卵黄酵素処理物の量を5重量%に、還元水飴の量を29重量%に変えた他は実施例3と同様にして、卵黄酵素処理物を配合した水中油型乳化物を得た。卵黄酵素処理物を配合したこれらの水中油型乳化物は、いずれも、口溶け性、風味発現性及び口中分散性が良好なものであった。
【0038】
〔比較例1〕
糖アルコールを使用しない他は実施例1と同様にして卵黄酵素処理物を得た。
得られた卵黄酵素処理物の、上記に例示した方法により測定したリゾ化率は98重量%であり、生菌数は2×104個/gであった。
【0039】
〔比較例2〕
比較例1で得られた卵黄酵素処理物は生菌数が多かったため、該卵黄酵素処理物に75℃で15分間の殺菌処理を施した後24時間冷蔵保存したものを乳化剤として用いた他は実施例3と同様にして、卵黄酵素処理物を配合した水中油型乳化物を得た。この卵黄酵素処理物を配合した水中油型乳化物は、口溶け性、風味発現性及び口中分散性がいずれも不良であった。
【0040】
〔比較例3〕
本発明の卵黄酵素処理物は加えず、還元水飴の量を34重量%に変えた他は実施例3と同様にして、水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物は、乳化状態が不安定で油が分離しており、口溶け性も不良であった。
【0041】
〔比較例4〕
本発明の卵黄酵素処理物に変えて、20重量%加糖卵黄を2重量%配合した他は実施例3と同様にして、水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物は、口溶け性、風味発現性及び口中分散性がいずれも不良であった。
【0042】
〔比較例5〕
本発明の卵黄酵素処理物に変えて、20重量%加糖卵黄を5重量%配合し、還元水飴の量を29重量%に変えた他は実施例3と同様にして、水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物は、口溶け性、風味発現性及び口中分散性がいずれも不良であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の効果は、乳化性に優れ、且つ生菌数の少ない卵黄酵素処理物及びその製造方法を提供したことにあり、また該卵黄酵素処理物を用いた、食品用途に適した風味発現性と乳化性とを兼ね備えた乳化剤、及びこの乳化剤を用いた風味発現性、口中分散性及び口溶け性の良い乳化物を提供したことにある。
また、本発明の卵黄酵素処理物は、生菌数が少ないため、酵素処理の前後で高温での殺菌処理をする必要がなく、このため卵黄成分の変質を極めて少なくすることができ、食品材料として極めて優れている。

Claims (4)

  1. 糖アルコールを対水濃度で30〜70重量%含有し且つ卵黄含有量が10重量%以上である卵黄液を、ホスホリパーゼAにより酵素処理した卵黄酵素処理物からなることを特徴とする乳化剤。
  2. ホスホリパーゼAによる上記酵素処理が、上記卵黄液中のリン脂質の30重量%以上をリゾ化するものである請求項1記載の乳化剤。
  3. 油相の割合が30〜70重量部で、請求項1又は2記載の乳化剤を含めない水相の割合が70〜30重量部(油相と水相との合計量が100重量部)である水中油型乳化物であって、水中油型乳化物全体の重量を基準として、請求項1又は2記載の乳化剤を0.5〜20重量%含有することを特徴とする水中油型乳化物。
  4. 糖アルコールを対水濃度で30〜70重量%含有し且つ卵黄含有量が10重量%以上である卵黄液を、ホスホリパーゼAにより酵素処理することを特徴とする卵黄酵素処理物からなる乳化剤の製造方法。
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