以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対28が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層24が形成され、その誘電体層24上に保護層25が形成されている。背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対28とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、例えばネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。本実施の形態においては、輝度向上のためにキセノン分圧を10%とした放電ガスが用いられている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対28とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
図2は、本発明の実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。なお、図1、図2に示したように、走査電極SCiと維持電極SUiとは互いに平行に対をなして形成されているために、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に大きな電極間容量Cpが存在する。
図3は、本発明の実施の形態におけるパネル10を用いたプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路51、データ電極駆動回路52、走査電極駆動回路53、維持電極駆動回路54、タイミング発生回路55、点灯率算出回路58および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路51は、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路52は、サブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。
点灯率算出回路58は、サブフィールド毎の画像データにもとづいてサブフィールド毎の放電セルの点灯率、すなわち点灯する放電セル数の全放電セル数に対する割合(以下、単に「点灯率」と略記する)を算出する。
タイミング発生回路55は、水平同期信号H、垂直同期信号Vおよび点灯率算出回路58が算出した点灯率をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。走査電極駆動回路53は、維持期間において走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路100を有し、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜SCnをそれぞれ駆動する。維持電極駆動回路54は、初期化期間において維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を印加する回路と、維持期間において維持電極SU1〜SUnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路200とを有し、タイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnを駆動する。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。プラズマディスプレイ装置1は、サブフィールド法、すなわち1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行う。それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。このときの初期化動作には、全ての放電セルで初期化放電を発生させる初期化動作(以下、「全セル初期化動作」と略記する)と、維持放電を行った放電セルで初期化放電を発生させる初期化動作(以下、「選択初期化動作」と略記する)とがある。書込み期間では、発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、輝度重みに比例した数の維持パルスを表示電極対に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。このときの比例定数を輝度倍率と呼ぶ。
図4は、本発明の実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図4には、全セル初期化動作を行うサブフィールドと選択初期化動作を行うサブフィールドとを示している。
まず、全セル初期化動作を行うサブフィールドについて説明する。
初期化期間前半部では、データ電極D1〜Dm、維持電極SU1〜SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧を印加する。この傾斜波形電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜Dm上部および維持電極SU1〜SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。ここで、電極上部の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜SUnに正の電圧Ve1を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜波形電圧(以下、「ランプ電圧」とも記す)を印加する。この間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
続く書込み期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。
次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧の差とが加算されたものとなり放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作を走査電極SCnのn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、消費電力を削減するために電力回収部を用いて駆動を行っているが、駆動電圧波形の詳細については後述することとして、ここでは維持期間における維持動作の概要について説明する。まず走査電極SC1〜SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜SUnに0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
続いて、走査電極SC1〜SCnには0(V)を、維持電極SU1〜SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
そして、維持期間の最後には、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間にいわゆる細幅パルス状の電位差を与えて、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧を消去している。具体的には、維持電極SU1〜SUnを一旦0(V)に戻した後、点灯率にもとづき制御される期間(以下、「立ち上がり期間Thu」と呼称する)をかけて電力回収部による走査電極SC1〜SCnの駆動を行う。その後、電力回収部による駆動からクランプ部による駆動に切換えて走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプし、走査電極SC1〜SCnに維持パルス電圧Vsを印加する。すると、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間で維持放電が起こる。
そしてこの放電が収束する前、すなわち放電で発生した荷電粒子が放電空間内に十分残留している間に維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を印加する。これにより維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差が(Vs−Ve1)の程度まで弱まる。すると、データ電極Dk上の正の壁電荷を残したまま、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧はそれぞれの電極に印加した電圧の差(Vs−Ve1)の程度まで弱められる。以下、この放電を「消去放電」と呼ぶ。
このように、最後の維持放電、すなわち消去放電を発生させるための電圧Vsを走査電極SC1〜SCnに印加した後、所定の時間間隔(以下、「消去位相差Th1」と呼称する)の後、表示電極対の電極間の電位差を緩和するための電圧Ve1を維持電極SU1〜SUnに印加する。こうして維持期間における維持動作が終了する。
次に、選択初期化動作を行うサブフィールドの動作について説明する。
選択初期化動作を行う初期化期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3’から電圧Vi4に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると前のサブフィールドの維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。またデータ電極Dkに対しては、直前の維持放電によってデータ電極Dk上に十分な正の壁電圧が蓄積されているので、この壁電圧の過剰な部分が放電され、書込み動作に適した壁電圧に調整される。一方、前のサブフィールドで維持放電を起こさなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷がそのまま保たれる。このように選択初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を行う動作である。
続く書込み期間の動作は全セル初期化動作を行うサブフィールドの書込み期間の動作と同様であるため説明を省略する。
続く維持期間では、全セル初期化動作を行うサブフィールドの維持期間と同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
そして、維持期間の最後には、全セル初期化動作を行うサブフィールドの維持期間と同様に、点灯率にもとづき制御される立ち上がり期間Thuをかけて電力回収部による走査電極SC1〜SCnの駆動を行い、その後、クランプ部による駆動に切換えて消去放電を発生させるための電圧Vsを走査電極SC1〜SCnに印加し、消去位相差Th1の後、表示電極対の電極間の電位差を緩和するための電圧Ve1を維持電極SU1〜SUnに印加する。
このように、本実施の形態では、維持期間の最後において、最後の維持パルスを発生させる際に電力回収部によって走査電極SC1〜SCnの駆動を行う期間、すなわち立ち上がり期間Thuをサブフィールド毎の点灯率によって制御し、走査電極SC1〜SCnの駆動をクランプ部による駆動に切換えてから消去位相差Th1の期間の後、表示電極対の電極間の電位差を緩和するための電圧Ve1を維持電極SU1〜SUnに印加している。
図5は、本発明の実施の形態における点灯率と立ち上がり期間Thuおよび消去位相差Th1との関係を示す図である。図5に示すように、本実施の形態では、点灯率により立ち上がり期間Thuおよび消去位相差Th1を切換えており、点灯率算出回路58によって算出される点灯率が40%未満のときには、立ち上がり期間Thuを250nsec、消去位相差Th1を150nsecに、点灯率が40%以上のときには、立ち上がり期間Thuを700nsec、消去位相差Th1を300nsecに制御している。なお、立ち上がり期間Thuおよび消去位相差Th1をこのように切換える理由については後述する。
次に、サブフィールド構成について説明する。図6は、本発明の実施の形態におけるサブフィールド構成を示す図である。なお、図6はサブフィールド法における1フィールド間の駆動波形を略式に記したもので、それぞれのサブフィールドの駆動波形は図4の駆動波形と同等なものである。
本実施の形態では、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ、例えば(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みを持つものとする。また、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第10SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。また各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスが表示電極対のそれぞれに印加される。
しかし、本発明はサブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではない。また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
次に、維持パルス発生回路100、200の詳細とその動作について説明する。図7は、本発明の実施の形態における維持パルス発生回路100、200の回路図である。なお、図7にはパネル10の電極間容量をCpとして示し、走査パルスおよび初期化電圧波形を発生させる回路は省略している。
維持パルス発生回路100は、電力回収部110とクランプ部120とを備えている。電力回収部110は、電力回収用のコンデンサC10、スイッチング素子Q11、Q12、逆流防止用のダイオードD11、D12、共振用のインダクタL10を有している。また、クランプ部120は、電圧値がVsである電源VSに走査電極22をクランプするためのスイッチング素子Q13、および走査電極22を接地電位にクランプするためのスイッチング素子Q14を有している。そして電力回収部110およびクランプ部120は、走査パルス発生回路(維持期間中は短絡状態となるため図示せず)を介してパネル10の電極間容量Cpの一端である走査電極22に接続されている。
電力回収部110は、電極間容量CpとインダクタL10とをLC共振させて維持パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを行う。維持パルスの立ち上がり時には、電力回収用のコンデンサC10に蓄えられている電荷をスイッチング素子Q11、ダイオードD11およびインダクタL10を介して電極間容量Cpに移動する。維持パルスの立ち下がり時には、電極間容量Cpに蓄えられた電荷を、インダクタL10、ダイオードD12およびスイッチング素子Q12を介して電力回収用のコンデンサC10に戻す。こうして走査電極22へ維持パルスを印加する。このように、電力回収部110は電源から電力を供給されることなくLC共振によって走査電極22の駆動を行うため、理想的には消費電力が0となる。なお、電力回収用のコンデンサC10は電極間容量Cpに比べて十分に大きい容量を持ち、電力回収部110の電源として働くように、電源VSの電圧値Vsの半分の約Vs/2に充電されている。
電圧クランプ部120は、スイッチング素子Q13を介して走査電極22を電源VSに接続し、走査電極22を電圧Vsにクランプする。また、スイッチング素子Q14を介して走査電極22を接地し、0(V)にクランプする。このようにして電圧クランプ部120は走査電極22を駆動する。したがって、電圧クランプ部120による電圧印加時のインピーダンスは小さく、強い維持放電による大きな放電電流を安定して流すことができる。
こうして維持パルス発生回路100は、スイッチング素子Q11、Q12、Q13、Q14を制御することによって電力回収部110と電圧クランプ部120とを用いて走査電極22に維持パルスを印加する。なお、これらのスイッチング素子は、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。
維持パルス発生回路200は、電力回収用のコンデンサC20、スイッチング素子Q21、Q22、逆流防止用のダイオードD21、D22、共振用のインダクタL20を有する電力回収部210と、維持電極23を電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q23および維持電極23を接地電位にクランプするためのスイッチング素子Q24を有するクランプ部220とを備え、パネル10の電極間容量Cpの一端である維持電極23に接続されている。なお、維持パルス発生回路200の動作は維持パルス発生回路100と同様であるので説明を省略する。
また、図7には、表示電極対の電極間の電位差を緩和するための電圧Ve1を発生する電源VE、電圧Ve1を維持電極23に印加するためのスイッチング素子Q28、Q29もあわせて示している。
なお、電力回収部110のインダクタL10とパネル10の電極間容量CpとのLC共振の周期、および電力回収部210のインダクタL20と同電極間容量CpとのLC共振の周期(以下、「共振周期」と記す)は、インダクタL10、L20のインダクタンスをそれぞれLとすれば、計算式「2π√(LCp)」によって求めることができる。そして、本実施の形態では、電力回収部110、210における共振周期が約1100nsecになるようにインダクタL10、L20を設定している。
そして、本実施の形態においては、点灯率算出回路58によって算出される点灯率がしきい値(ここでは40%)以上のときには、立ち上がり期間Thuを共振周期の1/2(約550nsec)よりも長い700nsecとすることで、電力回収部110による駆動の際に1回目の放電を発生させ、さらにクランプ部120による駆動に切換えた後に2回目の放電を発生させている。また、点灯率がしきい値未満のときには、立ち上がり期間Thuを共振周期の1/2よりも短い250nsecとすることで、電力回収部110による駆動の際には放電を発生させず、電力回収部110による駆動からクランプ部120による駆動に切換えた後で放電を発生させている。
次に、維持パルス発生回路の動作と維持パルスの詳細について説明する。図8は、本発明の実施の形態における維持パルス発生回路100、200の点灯率40%未満のときの動作を示すタイミングチャートである。また、図9は、本発明の実施の形態における維持パルス発生回路100、200の点灯率40%以上のときの動作を示すタイミングチャートである。ここでは、維持パルスの繰り返し周期(以下、「維持周期」と略記する)の1周期分をT1〜T6で示した6つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。なお、以下の説明において、スイッチング素子を導通させる動作をON、遮断させる動作をOFFと表記する。また、この繰り返し周期とは、維持期間において表示電極対に繰り返し印加される維持パルスの間隔のことであり、例えば、期間T1〜期間T6によって繰り返される周期のことを表す。また、図8、図9では、正極の波形を用いて説明をするが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、負極の波形における実施の形態例は省略するが、以下の説明の正極の波形において「立ち上がり」と表現しているものを、負極の波形においては「立ち下がり」に、正極の波形において「立ち下がり」と表現しているものを、負極の波形においては「立ち上がり」に読みかえることで、負極の波形であっても同様の効果を得ることができるものである。
まずは、点灯率算出回路58において算出される点灯率が40%未満のときの維持パルス発生回路100、200の動作を図8を用いて説明する。
(期間T1)
時刻t1でスイッチング素子Q12をONにする。すると、走査電極22からインダクタL10、ダイオードD12、スイッチング素子Q12を通してコンデンサC10に電荷が移動し始め、走査電極22の電圧が下がり始める。インダクタL10と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、時刻t1から共振周期の約1/2の時間が経過した後の時刻t2において走査電極22の電圧は0(V)付近まで低下する。しかし共振回路の抵抗成分等による電力損失のため、走査電極22の電圧は0(V)にまでは下がりきらない。
なお、期間T1においてスイッチング素子Q24はONにされており、維持電極23は0(V)にクランプされている。
(期間T2)
そして、時刻t2でスイッチング素子Q14をONにする。すると、走査電極22はスイッチング素子Q14を通して直接に接地されるため、走査電極22は0(V)にクランプされる。
さらに、時刻t2でスイッチング素子Q21をONにする。すると、電力回収用のコンデンサC20からスイッチング素子Q21、ダイオードD21、インダクタL20を通して維持電極23へ電荷が移動し始め、維持電極23の電圧が上がり始める。インダクタL20と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、時刻t2から共振周期の1/2の時間が経過した後の時刻t3において維持電極23の電圧はVs付近まで上昇するが、共振回路の抵抗成分等による電力損失のため、維持電極23の電圧はVsにまでは上がりきらない。
(期間T3)
そして、時刻t3でスイッチング素子Q23をONにする。すると、維持電極23はスイッチング素子Q23を通して直接に電源VSへ接続されるため、維持電極23は電圧Vsにクランプされる。維持電極23が電圧Vsにクランプされると、書込み放電を起こした放電セルでは走査電極22と維持電極23との間の電圧差が放電開始電圧を超え、維持放電が発生する。
(期間T4)
そして、時刻t4でスイッチング素子Q22をONにする。すると、維持電極23からインダクタL20、ダイオードD22、スイッチング素子Q22を通してコンデンサC20に電荷が移動し始め、維持電極23の電圧が下がり始める。インダクタL20と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、時刻t4から共振周期の約1/2の時間が経過した後の時刻t5において維持電極23の電圧は0(V)付近まで低下する。しかし共振回路の抵抗成分等による電力損失のため、維持電極23の電圧は0(V)にまでは下がりきらない。
(期間T5)
そして、時刻t5でスイッチング素子Q24をONにする。すると、維持電極23はスイッチング素子Q24を通して直接に接地されるため、維持電極23は0(V)にクランプされる。
さらに、時刻t5でスイッチング素子Q11をONにする。すると、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して走査電極22へ電荷が移動し始め、走査電極22の電圧が上がり始める。インダクタL10と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、時刻t5から共振周期の1/2の時間が経過した後の時刻t6において走査電極22の電圧はVs付近まで上昇するが、共振回路の抵抗成分等による電力損失のため、走査電極22の電圧はVsにまでは上がりきらない。
(期間T6)
そして、時刻t6でスイッチング素子Q13をONにする。すると、走査電極22はスイッチング素子Q13を通して直接に電源VSへ接続されるため、走査電極22は電圧Vsにクランプされる。走査電極22が電圧Vsにクランプされると、書込み放電を起こした放電セルでは走査電極22と維持電極23との間の電圧差が放電開始電圧を超え、維持放電が発生する。
なお、上述したように本実施の形態においては、インダクタL10と電極間容量Cpとの共振周期は約1100nsecに設定されており、走査電極22に印加する維持パルスの立ち下がり、すなわち時刻t1から時刻t2までの期間T1の時間、および走査電極22に印加する維持パルスの立ち上がり、すなわち時刻t5から時刻t6までの期間T5の時間はそれぞれ約550nsecに設定されている。また、インダクタL20と電極間容量Cpとの共振周期も約1100nsecに設定されており、維持電極23に印加する維持パルスの立ち上がり、すなわち時刻t2から時刻t3までの期間T2の時間、および維持電極23に印加する維持パルスの立ち下がり、すなわち時刻t4から時刻t5までの期間T4の時間もそれぞれ約550nsecに設定されている。また、維持電極23を電圧Vsにクランプしている期間T3、および走査電極22を電圧Vsにクランプしている期間T6の時間はそれぞれ約1450nsecに設定されている。
また、スイッチング素子Q12は時刻t2以降、時刻t5までにOFFにすればよく、スイッチング素子Q21は時刻t3以降、時刻t4までにOFFにすればよい。また、スイッチング素子Q22は時刻t5以降、次の維持周期の時刻t2までにOFFにすればよく、スイッチング素子Q11は時刻t6以降、次の維持周期の時刻t1までにOFFにすればよい。
また、維持パルス発生回路100、200の出力インピーダンスを下げるために、走査電極22を電圧Vsにクランプしていたスイッチング素子Q13は時刻t1の直前に、走査電極22を0(V)にクランプしていたスイッチング素子Q14は時刻t5の直前にOFFにすることが望ましく、維持電極23を0(V)にクランプしていたスイッチング素子Q24は時刻t2の直前に、維持電極23を電圧Vsにクランプしていたスイッチング素子Q23は時刻t4直前にOFFにすることが望ましい。
以上の期間T1〜期間T6の動作を必要な維持パルス数に応じて繰り返すことにより、維持パルス発生回路100、200はサブフィールド毎の輝度重みに応じた数の維持パルスを走査電極22、維持電極23に印加する。
次に、消去放電を発生させる電位差を表示電極対の電極間に与える際の動作について、期間T7〜期間T10に分割して説明する。
(期間T7)
この期間は維持電極23に印加された維持パルスの立ち下がりであり、期間T4と同じである。すなわち、時刻t7でスイッチング素子Q22をONにすることにより、維持電極23側の電荷はインダクタL20、ダイオードD22、スイッチング素子Q22を通してコンデンサC20に流れ始め、維持電極23の電圧が下がり始める。
(期間T8)
そして、時刻t8でスイッチング素子Q24をONにして維持電極23を接地し、維持電極23の電圧を強制的に0(V)に低下させる。
さらに、時刻t8でスイッチング素子Q11をONにする。すると、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して走査電極22へ電荷が移動し始め、走査電極22の電圧が上がり始める。そして、図8に示す動作は点灯率が40%未満のときの動作であるので、この期間T8、すなわち立ち上がり期間Thuは共振周期の1/2(約550nsec)よりも短い250nsecに設定されている。そのため、期間T8において走査電極22と維持電極23との間の電圧差は放電開始電圧に到達せず、放電は発生しない。
(期間T9)
そして、時刻t8から250nsecが経過した時刻t9aでスイッチング素子Q13をONにする。すると走査電極22はスイッチング素子Q13を通して直接に電源VSへ接続され、電圧Vsにクランプされる。これにより走査電極22の電圧が急峻に電圧Vsに上昇すると、維持放電を起こした放電セルでは走査電極22と維持電極23との間の電圧差が放電開始電圧を超え、放電が発生する。
このように、本実施の形態においては、点灯率が40%未満の場合には、まず電力回収部の共振周期の1/2より短い期間に電力回収部を用いて表示電極対の一方、本実施の形態においては走査電極22に電圧を印加する。そして、放電が発生する前にクランプ部を用いてその表示電極対、本実施の形態においては走査電極22にさらに電圧Vsを印加することにより最後の維持放電である消去放電を発生させる。すなわち、期間T8を共振周期の1/2より短い250nsecとし、走査電極22の電圧がVs付近まで上昇する以前の時刻t9aでスイッチング素子Q13をONにする。これにより、電力回収部110によって駆動が行われる期間T8では放電が発生せず、クランプ部120によって駆動が行われる期間T9において放電が発生する。
そして、維持電極23を0(V)にクランプしていたスイッチング素子Q24を時刻t10a直前にOFFにする。このとき、図8においては、この期間T9、すなわち消去位相差Th1は150nsecに設定されている。
(期間T10)
そして、期間T9で発生した放電が収束する前に、すなわち最後の維持放電で発生した荷電粒子が放電空間内に十分残留している時刻、図8に示したタイミングチャートでは時刻t9aから150nsecが経過した時刻t10aで、スイッチング素子Q28およびスイッチング素子Q29をONにする。すると維持電極23はスイッチング素子Q28、Q29を通して直接に消去用電源VEへ接続されるため、維持電極23の電圧は急峻にVe1まで上昇する。時刻t10aは期間T9で発生した維持放電が収束する前、すなわち最後の維持放電で発生した荷電粒子が放電空間内に十分残留している時刻である。そして荷電粒子が放電空間内に十分残留している間に放電空間内の電界が変化するので、この変化した電界を緩和するように荷電粒子が再配置されて壁電荷を形成する。このとき、走査電極22に印加されている電圧Vsと維持電極23に印加されている電圧Ve1との差が小さいため、走査電極22上および維持電極23上の壁電圧が弱められる。
このように、最後の維持放電を発生させる電位差は、最後の維持放電が収束する前に表示電極対の電極間に与える電位差を緩和するように変化させた細幅パルス形状の電位差であり、そのパルス幅は消去位相差Th1、すなわち時刻t9aから時刻t10aまでの期間T9の時間間隔である。そして発生する維持放電は消去放電である。また、データ電極32はこのとき0(V)に保持されており、データ電極32に印加されている電圧と走査電極22に印加されている電圧との電位差を緩和するように放電による荷電粒子が壁電荷を形成するので、データ電極32上には正の壁電圧が蓄積される。
ここで、消去位相差Th1は、消去放電を発生させるための電圧Vsを走査電極に印加した後、表示電極対の電極間の電位差を緩和するための電圧Ve1を維持電極に印加するまでの時間間隔であるが、その制御は本実施の形態においてはスイッチング素子を用いて行われる。このように、放電セルに印加される細幅パルス形状の電位差はスイッチング素子を介して印加されるので、厳密には消去位相差Th1が時刻t9aから時刻t10aまでの時間間隔に等しくならない可能性もあるが、スイッチング素子の遅れ時間等に大きな差がない限り消去位相差Th1にほぼ等しいと考えてよい。
次に、点灯率算出回路58において算出される点灯率が40%以上のときの維持パルス発生回路100、200の動作を図9を用いて説明する。なお、図9において期間T1〜期間T7は図8における期間T1〜期間T7と同様であるため、ここでは期間T8〜期間T10についてのみ説明を行う。
(期間T8)
時刻t8でスイッチング素子Q24をONにして維持電極23を接地し、維持電極23の電圧を強制的に0(V)に低下させる。
さらに、時刻t8でスイッチング素子Q11をONにする。すると、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して走査電極22へ電荷が移動し始め、走査電極22の電圧が上がり始める。
このとき、インダクタL10と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、時刻t8から共振周期の1/2の時間(ここでは、約550nsec)が経過すれば走査電極22の電圧はVs付近まで上昇する。このときの電圧が十分高ければ、維持放電を起こした放電セルでは走査電極22−維持電極23間の電圧が放電開始電圧を超える。
そして、図9に示す動作は点灯率が40%以上のときの動作であるので、この期間T8、すなわち立ち上がり期間Thuは共振周期の1/2(約550nsec)よりも長い700nsecに設定されている。したがって、期間T8内において走査電極22の電圧は一旦Vs付近まで上昇し、維持放電を起こした放電セルでは1回目の放電が発生する。なお、このときの1回目の放電は、共振周期にもとづき緩やかに電圧が上昇する間に発生するので、比較的弱い放電となる。そして、この放電により比較的インピーダンスが高い電力回収部110から放電電流が流れ出すことにより走査電極22に印加される電圧は急速に低下し始める。
(期間T9)
そして、時刻t8から700nsecが経過した時刻t9bでスイッチング素子Q13をONにする。すると走査電極22はスイッチング素子Q13を通して直接に電源VSへ接続され、電圧Vsにクランプされる。
このクランプにより走査電極22の電圧が急峻に電圧Vsに上昇すると、1回目の放電が収束する前の十分な荷電粒子が存在する放電空間に再び放電開始電圧を超える電圧が印加され、1回目の放電を起こした放電セルで2回目の放電が発生する。このときの2回目の放電は、短い時間に急峻に電圧が上昇して発生するので、非常に強い放電となる。
このように、本実施の形態においては、点灯率が40%以上の場合には、まず電力回収部の共振周期の1/2より長い期間に電力回収部を用いて表示電極対の一方、本実施の形態においては走査電極22に電圧を印加する。そして、1回目の放電を発生させた後、クランプ部を用いてその表示電極対、本実施の形態においては走査電極22にさらに電圧Vsを印加することにより2回目の放電を発生させて、2山の放電を発生させる。すなわち、期間T8を共振周期の1/2より長い700nsecとし、走査電極22の電圧がVs付近まで上昇した後の時刻t9bでスイッチング素子Q13をONにする。これにより、電力回収部110によって駆動が行われる期間T8に走査電極22と維持電極23との間の電圧差が放電開始電圧を超え比較的弱い1回目の放電が発生する。そして、クランプ部120によって駆動が行われる期間T9に再び走査電極22と維持電極23との間の電圧差が放電開始電圧を超え2回目の強い放電が発生する。
そして、維持電極23を0(V)にクランプしていたスイッチング素子Q24を時刻t10b直前にOFFにする。このとき、図9においては、この期間T9、すなわち消去位相差Th1は300nsecに設定されている。
(期間T10)
そして、期間T9で発生した2回目の放電が収束する前に、すなわち2回目の放電で発生した荷電粒子が放電空間内に十分残留している時刻、図9に示したタイミングチャートでは時刻t9bから300nsecが経過した時刻t10bで、スイッチング素子Q28およびスイッチング素子Q29をONにする。すると維持電極23はスイッチング素子Q28、Q29を通して直接に消去用電源VEへ接続されるため、維持電極23の電圧は急峻にVe1まで上昇する。時刻t10bは期間T9で発生した2回目の維持放電が収束する前、すなわち2回目の維持放電で発生した荷電粒子が放電空間内に十分残留している時刻である。そして荷電粒子が放電空間内に十分残留している間に放電空間内の電界が変化するので、この変化した電界を緩和するように荷電粒子が再配置されて壁電荷を形成する。このとき、走査電極22に印加されている電圧Vsと維持電極23に印加されている電圧Ve1との差が小さいため、走査電極22上および維持電極23上の壁電圧が弱められる。
このように、図9に示したタイミングチャートにおいては、最後の維持放電は2山の放電となる。そして、最後の維持放電を発生させる電位差は、最後の維持放電が収束する前に表示電極対の電極間に与える電位差を緩和するように変化させた細幅パルス形状の電位差であり、発生する維持放電は消去放電である。また、データ電極32はこのとき0(V)に保持されており、データ電極32に印加されている電圧と走査電極22に印加されている電圧との電位差を緩和するように放電による荷電粒子が壁電荷を形成するので、データ電極32上には正の壁電圧が蓄積される。
以上が、本実施の形態における維持パルス発生回路100、200の動作であり、上述したように、本実施の形態では、維持期間の最後の維持パルスの立ち上がり期間Thuである期間T8の時間を、点灯率算出回路58において算出される各サブフィールド毎の点灯率によって制御している。そして、点灯率が40%未満の場合には立ち上がり期間ThuをインダクタL10と電極間容量Cpとの共振周期1100nsecの1/2である550nsecより短い250nsecとし、点灯率が40%以上の場合には立ち上がり期間Thuを同共振周期の1/2より長い700nsecとしている。
次に、このようなパネルの駆動方法にすることで、走査パルス電圧や書込みパルス電圧を高くすることなく、安定した書込み放電を発生させることができる理由について説明する。
図10は、安定な書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧と立ち上がり期間Thuとの関係を模式的に示す図であり、横軸は立ち上がり期間Thuを、縦軸は安定な書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧を示している。なお、この実験では共振周期を1100nsecに設定して行った。
この図面に示すように、立ち上がり期間Thuの時間を、共振周期1100nsecの1/2の550nsecよりも短くしていくと安定な書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧は低下していき、350nsec以下でその効果が大きいことが実験により明らかになった。また、立ち上がり期間Thuの時間を、共振周期の1/2の550nsecよりも長くしていくと安定な書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧は低下していき、700nsec以上でその効果が大きいことが実験により明らかになった。
このような実験結果が得られる理由については完全に解明されたわけではないが、次のような理由によるものと考えられる。
書込み動作を行うためには、該当する放電セルの走査電極22に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極32に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極32と走査電極22との交差部の電圧、すなわち外部印加電圧(Vd−Va)にデータ電極32上の壁電圧と走査電極22上の壁電圧とが加算された電圧が放電開始電圧を超えることにより書込み放電が発生する。したがって走査電極22上から見てデータ電極32上に蓄積されている壁電圧が十分に高ければ、書込みパルス電圧を低く設定することができる。
上述したように、全セル初期化動作を行うサブフィールドであれば初期化期間の前半部における初期化放電によってデータ電極32上に正の壁電圧が形成されるが、選択初期化動作を行うサブフィールドの初期化期間では過剰な正の壁電圧を放電するだけであり、正の壁電圧そのものを形成するわけではない。この場合、データ電極32上の正の壁電圧は、その前のサブフィールドにおける維持放電および消去放電に伴って形成され、特に維持期間の最後の放電となる消去放電によってデータ電極32上の壁電圧の値が決まる。
そして、消去放電を安定して発生させるためには、期間T8〜期間T10で詳細に説明したように、放電により発生した荷電粒子が放電空間内に十分残留している間に速やかに表示電極対の電極間の電位差を変化させなければならない。そのためには、表示電極対のそれぞれに印加する電圧を変化させるタイミングはもちろん重要であるが、強い放電を発生させ、放電により発生する荷電粒子の量を増やすことが有効である。
例えば、共振周期の1/2の時間が経過する前、すなわち走査電極22の電圧がVs付近まで上昇する以前の時刻t9aでスイッチング素子Q13をONにすると、図8の期間T8、T9で説明したように、短い時間に急峻に電圧が上昇するので非常に強い放電を発生させることができ、十分な量の荷電粒子を発生させることができる。あるいは、共振周期の1/2の時間が経過した後、すなわち走査電極22の電圧が一旦Vs付近まで上昇して1回目の維持放電が発生した後の時刻t9bでスイッチング素子Q13をONにすると、図9の期間T8、T9で説明したように、1回目の放電の発生により走査電極22の電圧が急激に低下した後で再び走査電極22の電圧が急峻に電圧Vsに上昇するので、1回目の放電を起こした放電セルで非常に強い2回目の放電を発生させることができ、十分な量の荷電粒子を発生させることができる。そして、十分な量の荷電粒子を発生させることができれば、十分な壁電圧を蓄積することができるので、必要な書込みパルス電圧を低く抑えることができる。
このような理由により、図10に示したような実験結果が得られたものと考えられる。
次に、点灯率と立ち上がり期間Thuおよび消去位相差Th1との関係について説明する。
図11は、立ち上がり期間Thuおよび消去位相差Th1と安定な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧と点灯率との関係を模式的に示す図であり、横軸は点灯率を、縦軸は安定な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧を示している。なお、この実験でも図10における実験と同様に共振周期を1100nsecに設定して行った。
なお、図11に示した実験では、立ち上がり期間Thuを250nsec、消去位相差Th1を150nsecとしたパターン1と、立ち上がり期間Thuを700nsec、消去位相差Th1を300nsecとしたパターン2の、2つの組み合わせで実験を行った。これは次のような理由による。消費電力の削減効果は、電力回収部110による駆動時間が共振周期の1/2に近くなるほど大きくなる。そこで、本発明者は、印加電圧の低減効果および消費電力の削減効果の両方について効果が得られる値として、立ち上がり期間Thuの時間を250nsecおよび700nsecとした。また、消去位相差Th1は立ち上がり期間Thuに応じて最適な値が変化するため、パターン1では立ち上がり期間Thuの250nsecに合わせて消去位相差Th1の時間を150nsecとし、パターン2では立ち上がり期間Thuの700nsecに合わせて消去位相差Th1の時間を300nsecとした。
この実験からは、図11に示すように、安定な放電を発生させるために必要な走査パルス電圧と点灯率40%以上の点灯率との関係において、パターン1では安定な放電を発生させるために必要な走査パルス電圧がパターン2よりも上昇することが明らかとなった。すなわち、点灯率40%以上においてはパターン2による駆動が望ましいことがわかった。
図12は、立ち上がり期間Thuおよび消去位相差Th1と安定な書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧と点灯率との関係を模式的に示す図であり、横軸は点灯率を、縦軸は安定な書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧を示している。なお、図12において、立ち上がり期間Thu、消去位相差Th1の組み合わせは、図11に示した組み合わせと同様である。
この実験からは、図12に示すように、安定な放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧と点灯率との関係において、点灯率40%以下ではパターン2で、安定した放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧が上昇することが明らかとなった。すなわち、書込みパルス電圧を低減するためには、点灯率40%以下ではパターン1による駆動が望ましいことがわかった。
したがって、これらの実験結果にもとづき、点灯率が低いとき(本実施の形態では、点灯率40%未満)にはパターン1による駆動、すなわち立ち上がり期間Thuを250nsec、消去位相差Th1を150nsecとし、点灯率が高いとき(本実施の形態では、点灯率40%以上)にはパターン2による駆動、すなわち立ち上がり期間Thuを700nsec、消去位相差Th1を300nsecとすれば、走査パルス電圧および書込みパルス電圧を高くすることなく安定な書込み放電を発生させることが可能となることがわかった。
以上説明したように、本実施の形態においては、維持期間の最後において、点灯率算出回路58が算出した点灯率があらかじめ定めたしきい値(本実施の形態では、40%)よりも小さい場合には、電力回収部110を用いて表示電極対の一方(本実施の形態では、走査電極22)に電圧を印加する期間を共振周期の1/2の時間よりも短い期間(本実施の形態では、250nsec)とし、走査電極22の電圧がVs付近まで上昇する以前の時刻t9aでスイッチング素子Q13をONにすることで放電が発生する前にクランプ部120に切換え、クランプ部120の駆動時にのみ放電を発生させる。さらに、クランプ部120に切換えた後、消去位相差Th1(本実施の形態では、150nsec)の期間をおいて表示電極対の他方(本実施の形態では、維持電極23)に表示電極対の電極間の電位差を緩和するための電圧Ve1を印加する。
また、点灯率があらかじめ定めたしきい値(40%)以上の場合には、電力回収部110を用いて表示電極対の一方(走査電極22)に電圧を印加する期間を共振周期の1/2の時間よりも長い期間(700nsec)とし、走査電極22の電圧がVs付近まで上昇して1回目の放電が発生した後の時刻t9bでスイッチング素子Q13をONにしてクランプ部120に切換える。そして、クランプ部120の駆動時に2回目の放電を発生させることで2山放電とする。さらに、クランプ部120に切換えた後、消去位相差Th1(300nsec)の期間をおいて表示電極対の他方(維持電極23)に表示電極対の電極間の電位差を緩和するための電圧Ve1を印加する。
このような構成とすることで、大画面・高精細・高輝度パネルであっても、走査パルス電圧および書込みパルス電圧を高くすることなく安定な書込み放電を発生させることが可能となる。
なお、消去放電を安定して発生させるためには、各電極に印加する電圧を変化させた後、荷電粒子が再配置されて壁電荷を形成し終えるまでの間、各電極に印加される電圧を一定に保たなければならない。しかし、駆動回路側から見るとパネル10の各電極は容量性の負荷であるため、電極自身および駆動回路の配線等のインダクタンスとパネル10の容量とが共振し、一般的にはパネル10の駆動電圧波形にリンギングが重畳されてしまう。このリンギングは電圧の変化が急峻であるほど大きく、また電圧変化の絶対値が大きいほど大きくなる。しかしながら、本実施の形態においては、電力回収部110を用いた駆動期間である立ち上がり期間Thuを、点灯率が40%未満のときには共振周期(1100nsec)の1/2(550nsec)よりも短い250nsecとすることで時刻t9aにおける走査電極22への印加電圧を1/2Vs程度とし、点灯率が40%以上のときには共振周期の1/2よりも長い700nsecとすることで時刻t9bにおける走査電極22への印加電圧を1/2Vs程度としている。このような駆動にすることにより、その後のクランプ部120を用いての電圧印加時における電圧の変化を緩やかにし、かつ急峻に変化する電圧の絶対値を小さくできるので、駆動電圧波形に重畳されるリンギングを小さく抑え、電極に印加される電圧を極力一定に保つことができ、安定した消去放電を発生させることが可能となる。
なお、上述したように消去位相差Th1を短くすると安定な放電を発生させるために必要な走査パルス電圧は高くなるが、サブフィールドの輝度重みが大きくなるほどその程度は顕著になることが確認されている。これは、輝度重みの大きいサブフィールドほど維持放電によるプライミングが多くなるので、書込み期間において選択された行の放電セルで書込み放電を発生させている間に、選択されていない行の放電セルの壁電荷が奪われやすくなり、書込み放電のための壁電圧が減少する割合が多くなるためと考えられる。これらのことから、本実施の形態において、立ち上がり期間Thuまたは消去位相差Th1の制御を輝度重みに応じサブフィールド毎に変える構成としてもよい。
また、本実施の形態では点灯率が40%未満の場合と40%以上の場合とに分けて立ち上がり期間Thuおよび消去位相差Th1を制御する構成を説明したが、例えばサブフィールド毎に適当な点灯率で切換える構成としてもよい。あるいは、点灯率に応じて立ち上がり期間Thuまたは消去位相差Th1を可能な範囲で連続的に変化するような制御としてもよい。このような制御にすれば、立ち上がり期間Thuまたは消去位相差Th1の変化が表示画像に与える影響も連続的に変化するので、画像表示品質を向上させることが可能となる。
また、本実施の形態では、点灯率が40%以上のときの立ち上がり期間Thuを共振周期の1/2よりも長い時間とすることで最後の維持放電を2山放電とする構成を説明したが、何らこの構成に限定されるものではなく、最後の維持放電を2山放電とすることができれば立ち上がり期間Thuを共振周期の1/2よりも短い時間とする構成であってもかまわない。
また、本実施の形態においては、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ(1、2、3、6、11、18、30、44、60、81)の輝度重みを持つものとして説明したが、本発明はサブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではない。
また、本実施の形態においては、第1SFの初期化期間には全セル初期化動作を行い、第2SFの初期化期間には選択初期化動作を行うものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれのサブフィールドにおいて全セル初期化動作、選択初期化動作を任意に行ってもよい。
また、本実施の形態では、電力供給用と電力回収用とで同一のインダクタを用いる構成を説明したが、何らこの構成に限定されるものではなく、電力供給用と電力回収用とで異なるインダクタを用いる構成、例えば、電力供給用の経路と電力回収用の経路とを分ける構成としてもかまわない。
また、本実施の形態では、放電ガスのキセノン分圧を10%としたが、他のキセノン分圧であってもよく、その場合にはそのパネルに応じた駆動電圧に設定すればよい。
また、本実施の形態において用いた具体的な各数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。