以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
また、保護層26は、放電セルにおける放電開始電圧を下げるために、パネルの材料として使用実績があり、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性に優れたMgOを主成分とする材料から形成されている。
背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、例えばネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、本実施の形態では、輝度向上のためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いているが、放電ガスの混合比率をこの数値に限定するものではなく、その他の混合比率であってもよい。
図2は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。なお、図1、図2に示したように、走査電極SCiと維持電極SUiとは互いに平行に対をなして形成されているために、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に大きな電極間容量Cpが存在する。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について説明する。本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行う。それぞれのサブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
各サブフィールドにおいて、初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。加えて、放電遅れを小さくし書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(放電のための起爆剤=励起粒子)を発生させるという働きを持つ。このときの初期化動作には、全ての放電セルで初期化放電を発生させる初期化動作(以下、「全セル初期化動作」と略記する)と、直前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルだけで選択的に初期化放電を発生させる初期化動作(以下、「選択初期化動作」と略記する)とがある。
書込み期間では、後に続く維持期間において発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、輝度重みに比例した数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。このときの比例定数を「輝度倍率」と呼ぶ。
図3は、本発明の一実施の形態におけるサブフィールド構成を示す図である。なお、図3は、サブフィールド法における1フィールド期間の駆動波形の概略を示したものであり、駆動電圧波形の詳細は後述する。
本実施の形態では、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)で構成し、各サブフィールドはそれぞれ、例えば(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みを持つものとする。そして、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第10SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける全セル初期化動作の放電にともなう発光のみとなり、放電セルで維持放電を生じさせない黒表示領域の輝度は全セル初期化動作における微弱発光だけとなって、コントラストの高い画像表示が可能となる。また、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
なお、本実施の形態では、立ち上がりの傾きが異なる少なくとも2種類の維持パルスを切換えて発生させるとともに、維持期間の後半から最後にかけて、立ち上がりを急峻にした維持パルスを、維持期間の維持パルスの総数に応じた回数だけ連続して発生させている。これにより、パネルにおける残像現象を軽減させ、各放電セルの表示輝度を均一化させている。以下、まず駆動電圧波形の概要および駆動回路の構成について説明し、続いて、維持パルス波形の詳細について説明する。
図4は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図4には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化動作を行うサブフィールド(以下、「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)と、選択初期化動作を行うサブフィールド(以下、「選択初期化サブフィールド」と呼称する)とを示しているが、他のサブフィールドにおける駆動電圧波形もほぼ同様である。
まず、全セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。
第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜Dm、維持電極SU1〜SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧(以下、「上りランプ波形電圧」と呼称する)を印加する。
この上りランプ波形電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜Dm上部および維持電極SU1〜SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。ここで、電極上部の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜SUnに正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜Dmに0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜波形電圧(以下、「下りランプ波形電圧」と呼称する)を印加する。この間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
なお、図4の第2SFの初期化期間に示したように、初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加してもよい。すなわち、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3’から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下りランプ波形電圧を印加する。これにより前のサブフィールドの維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められる。また直前の維持放電によってデータ電極Dk(k=1〜m)上部に十分な正の壁電圧が蓄積されている放電セルでは、この壁電圧の過剰な部分が放電され書込み動作に適した壁電圧に調整される。一方、前のサブフィールドで維持放電を起こさなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷がそのまま保たれる。このように前半部を省略した初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して初期化放電を行う選択初期化動作となる。
続く書込み期間では、まず維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。
そして、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(Ve2−Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Ve2を、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態とすることができる。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、まず走査電極SC1〜SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
続いて、走査電極SC1〜SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対24の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電を継続して発生させる。
そして、維持期間の最後には最後の維持放電を発生させるための電圧Vsを走査電極SC1〜SCnに印加してから所定時間後にその放電を弱めるための電圧Ve1を維持電極SU1〜SUnに与えることで、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間にいわゆる細幅パルス状の電圧差を与えて、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧の一部または全部を消去している。具体的には、維持電極SU1〜SUnを一旦0(V)に戻した後、走査電極SC1〜SCnに維持パルス電圧Vsを印加する。すると、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間で維持放電が起こる。そしてこの放電が収束する前、すなわち放電で発生した荷電粒子が放電空間内に十分残留している間に維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を印加する。これにより維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差が(Vs−Ve1)の程度まで弱まる。すると、データ電極Dk上の正の壁電荷を残したまま、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧はそれぞれの電極に印加した電圧の差(Vs−Ve1)の程度まで弱められる。以下、この最後の維持放電を「消去放電」と呼び、消去放電を発生させるために維持期間の最後に発生させる維持パルスを「消去パルス」と呼ぶ。
続くサブフィールドの動作は、維持期間の維持パルスの数を除いて上述の動作とほぼ同様であるため説明を省略する。以上が、本実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
なお、本実施の形態では、維持期間の最後の維持パルス(消去パルス)を除く維持期間の維持パルスにおいて、一方の維持パルスの立ち上がりを他方の維持パルスよりも急峻にした少なくとも2種類の維持パルスを切換えて発生させる構成とする(以下、立ち上がりを急峻にした維持パルスを「第2の維持パルス」と表記し、他方の基準となる維持パルスを「第1の維持パルス」と表記する)。そして、消去パルスを除く維持期間の後半から最後にかけて、立ち上がりを急峻にした第2の維持パルスを、維持期間の維持パルスの総数に応じた所定の回数だけ連続して発生させる構成とする。これにより、パネルにおける残像現象を軽減させ、各放電セルの表示輝度を均一化させている。
なお、上述した消去パルスは、消去放電を発生させるためのパルスであるため、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて、消去放電を発生させるに最適なパルス波形に設定すればよい。本実施の形態は消去パルスの傾きが何ら限定されるものではなく、例えば、第2の維持パルスよりも立ち上がりが急峻なパルスであってもよく、あるいは第2の維持パルスと同等、またはより緩やかな立ち上がりのパルスであってもよい。
次に、本実施の形態におけるパネルの駆動方法について説明する。
図5は、本発明の一実施の形態における第1の維持パルスおよび第2の維持パルスの概略を示す波形図である。本実施の形態では、基準となる第1の維持パルスの立ち上がり時間を約550nsecとし、第2の維持パルスの立ち上がり時間を約350nsecとしている。こうして、第2の維持パルスを第1の維持パルスよりも急峻な立ち上がりとしている。なお、立ち下がり時間は、第1の維持パルスと第2の維持パルスとで互いに等しく、ともに約700nsecである。
なお、これらの維持パルスを発生させるための維持パルス回路および維持パルスの発生の詳細については後述するが、この維持パルス発生回路は電力回収回路と電圧クランプ回路とを有しており、電力回収回路の駆動時間を制御することで維持パルスの立ち上がりを制御している。
図6は、本発明の一実施の形態における維持期間の最後に第2の維持パルスを連続して発生させる様子を示す概略図である。なお、図6(a)は維持パルスの総数が4のときの第2の維持パルスの発生の様子を示し、図6(b)は維持パルスの総数が6のときの第2の維持パルスの発生の様子を示し、図6(c)は維持パルスの総数が10のときの第2の維持パルスの発生の様子を示し、図6(d)は維持パルスの総数が12のときの第2の維持パルスの発生の様子を示し、図6(e)は維持パルスの総数が16のときの第2の維持パルスの発生の様子を示す。なお、この図6の説明においては、維持期間の最後に発生させる維持パルスである消去パルスを維持パルスの総数に含ませていない。例えば、図6(c)における維持パルスの総数10は、消去パルスを含まない維持パルス数が10であって、消去パルスを含ませた場合には11となる。
本実施の形態では、維持期間において、第1の維持パルスと、第1の維持パルスよりも立ち上がりを急峻にした第2の維持パルスとを切換えて発生させ、表示電極対28に印加する構成としている。このとき、図6に示すように、消去パルスを除く維持期間の後半から最後にかけて、立ち上がりを急峻にした第2の維持パルスを、維持期間の維持パルスの総数に応じた所定の回数だけ連続して発生させる構成としている。
具体的には、消去パルスを除く維持パルスの総数が4以上6未満の維持期間では、図6(a)に示すように、消去パルスを除くその維持期間の後半から最後にかけて第2の維持パルスを2回連続して発生させる。また、消去パルスを除く維持パルスの総数が6以上12未満の維持期間では、図6(b)、図6(c)に示すように、消去パルスを除くその維持期間の後半から最後にかけて第2の維持パルスを4回連続して発生させる。そして、消去パルスを除く維持パルスの総数が12以上の維持期間では、図6(d)、図6(e)に示すように、消去パルスを除くその維持期間の後半から最後にかけて第2の維持パルスを10回連続して発生させる。本実施の形態では、このような駆動方法とすることにより、パネル10における残像現象を軽減させ、各放電セルの表示輝度を均一化させることを実現している。これは、次のような理由による。
書込み放電を不安定にする主な原因に、放電セル内に形成される壁電荷が十分でない、あるいは、放電セル内に形成される壁電荷の放電セル毎のばらつき、といったことが確認されている。
維持期間において形成される壁電荷は維持放電の強さに依存しているため、弱い維持放電が発生すると、放電セル内に形成される壁電荷も不十分なままとなってしまう。あるいは、維持放電に放電セル毎のばらつきがあると、壁電荷にも放電セル毎のばらつきが生じてしまう。一方、上述したように、選択初期化サブフィールドにおける書込み放電は、直前のサブフィールドの維持期間において形成される壁電荷に依存している。すなわち、放電強度が不十分な維持放電が発生したり、維持放電に放電セル毎のばらつきが生じることで、不安定な書込み放電が発生してしまう。
この、放電強度が不十分な維持放電や維持放電の放電セル毎のばらつきを発生させる原因の1つに、次のようなことがある。
放電セルの点灯・非点灯は表示画像に応じて変化するため、表示電極対24毎の駆動負荷は表示画像に応じて異なる。そのため、維持パルスの立ち上がり波形にばらつきが生じ、各放電セル間の放電の発生するタイミング(放電開始時間)にばらつきを生じさせる恐れがある。
また、発光効率を改善するためにキセノン分圧を高めたパネルでは、表示電極対24間の放電開始電圧も高くなり、そのため放電の発生するタイミングのばらつきがさらに大きくなる傾向にある。
このとき、隣接する放電セル間において放電の発生するタイミングに差があると、先に放電が発生した放電セルと後で放電が発生した放電セルとで放電の強度が異なることがある。これは、例えば、先に放電する放電セルの影響を受けて後に放電する放電セルの壁電荷が減少し放電が弱くなる、あるいは、隣接する放電セルの放電の影響を受けることによって一度開始された放電が一旦停止し、印加電圧の上昇によって再び放電を生じるために放電が弱くなる、といったことが原因にある。
こうして、維持放電の放電セル毎のばらつきが生じ、放電が弱められた放電セルが発生すると、その放電セル内に形成される壁電荷は不十分なままとなってしまう。そして、高精細化、大画面化されたパネルにおいては書込みパルス電圧のパルス幅が短縮されるため、放電遅れや放電ばらつきに対する余裕が失われ、書込み放電がさらに不安定になる傾向にある。
書込み放電を安定に発生させるためには、放電セル毎のばらつきが生じないように維持放電の放電強度を揃え、維持放電において形成される壁電荷をできるだけ均一にすることが望ましい。そして、そのためには、電圧の変化が急峻な状態で維持放電を生じさせることが有効である。電圧の変化が急峻な状態で放電を生じさせると、放電開始電圧のばらつきが吸収され、各放電セル間の放電の発生するタイミングのばらつきを小さくすることができるからである。さらに、電圧の変化が急峻な状態で生じる維持放電は強い放電となるため、放電の発生するタイミングのばらつきを小さくするだけでなく、放電セル内に十分な壁電荷を形成させる働きをも有する。
したがって、立ち上がりを急峻にした維持パルスを発生させることで、表示電極対24に印加する電圧の変化が急峻な状態で維持放電を生じさせることができ、放電開始電圧のばらつきを吸収して放電セル間の放電の発生するタイミングを揃えることができる。
一方、書込み放電は、直前のサブフィールドの維持期間の最後に形成される壁電荷に依存しているため、消去パルスを除く維持期間の最後に、放電セル毎の壁電荷のばらつきを低減するとともに、放電セル内に十分な壁電荷を形成させることができればよい。
すなわち、消去パルスを除く維持期間の最後に、基準となる第1の維持パルスよりも立ち上がりを急峻にした第2の維持パルスによる維持放電を発生させることで、放電セル内に、安定した書込み放電に必要な壁電荷を、放電セル毎の壁電荷のばらつきを低減して形成することができる。
そこで、立ち上がりを急峻にした維持パルスを、消去パルスを除く維持期間の最後に10回連続して印加した場合と、そうでない場合とで安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧がどのように変化するかを確認する実験を行った。
図7は、本発明の一実施の形態における安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧と第2の維持パルスとの関係を示す図である。図7において、実線は、消去パルスを除く維持期間の後半から最後にかけて、立ち上がりを急峻にした第2の維持パルスを10回連続して印加した場合を示すグラフであり、破線は消去パルスを除く維持期間の後半から最後にかけて基準となる第1の維持パルスだけを印加した場合を示すグラフである。また、横軸は表示画像の明るさ(Average Picture Level:APL)を示し、縦軸は続くサブフィールドの書込み期間において安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧を示す。
なお、第2の維持パルスの立ち上がり時間を短くするほど、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧が低下するが、立ち上がり時間が350nsec以下ではその差が小さいことが確認されたため、本実施の形態では、第2の維持パルスの立ち上がり時間を約350nsecとしている。
そして、実験の結果から、消去パルスを除く維持期間の後半から最後にかけて立ち上がりを急峻にした第2の維持パルスを10回連続して印加した場合には、そうでない場合よりも、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧がいずれのAPLにおいても低減され、その低減効果は平均して約10(V)になることがわかった。
こうして、正常な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧を下げることができれば、実際に印加する走査パルス電圧Vaに対してのマージンをその分だけ大きくすることができ、書込み放電を安定して発生させることができるようになる。
なお、ここには図示していないが、第2の維持パルスを連続して発生させる回数を多くするほど、安定した書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧を低減させる効果は大きくなるが、徐々にその効果は頭打ちとなることが確認された。また、第2の維持パルスを10回連続して発生させれば十分な効果が得られることが確認されたため、ここでは、連続印加回数を10回としている。
一方、画像表示品質を劣化させる原因の1つである残像現象は、放電セルにおける発光強度のばらつきが発生原因の1つと考えられている。そして、本発明者は、維持放電の安定具合と残像現象とが関連しており、維持放電を安定に発生させることで残像現象を軽減できることを実験的に確認した。
図8は、本発明の一実施の形態における残像レベルと第2の維持パルスとの関係を示す図である。図8において、縦軸は残像レベルを表し、横軸は入力される画像信号の信号レベル(明るさ)を表す。
維持期間において最初に発生させる維持放電は、放電セル毎の壁電荷の状態や放電開始電圧のばらつきが最も大きいと考えられるため、維持放電を継続させた後に発生させる維持放電と比較して発生しにくい。そして、維持期間における最初の維持放電が安定していないと、続く維持放電が不安定なままとなってしまう。
逆に、維持期間における最初の維持放電を安定に発生させることができれば、続く維持放電を継続して安定に発生させることができると考えられる。
維持放電の発生には、維持パルスの立ち上がりの傾き、維持パルスを電圧Vsに維持する時間等が大きな影響を及ぼすことがわかっている。そこで、ここでは、維持期間における最初の維持放電のばらつきをできるだけ抑え、安定した維持放電を発生させるために、サブフィールドの順番や維持期間における維持パルスの総数等にかかわりなく、走査電極SC1〜SCnに印加する最初の維持パルス(維持期間における最初の維持パルス)の立ち上がり時間を約900nsecにし、維持電極SU1〜SUnに印加する最初の維持パルス(維持期間における2番目の維持パルス)の立ち上がり時間を約500nsecにした場合と、そうでない場合とで残像現象がどの程度変化するかを比較する実験を行った。
すなわち、図面の実線のグラフは、維持期間における最初の2回の維持パルスを上述したパルス波形に固定し、かつ維持パルスの総数に応じた所定の回数だけ連続して第2の維持パルスを発生させた場合を示す。具体的には、維持期間における最初の2回の維持パルスを上述したパルス波形に固定し、消去パルスを除く維持パルスの総数が4以上6未満の維持期間では、消去パルスを除くその維持期間の後半から最後にかけて第2の維持パルスを2回連続して発生させ、消去パルスを除く維持パルスの総数が6以上12未満の維持期間では、消去パルスを除くその維持期間の後半から最後にかけて第2の維持パルスを4回連続して発生させ、消去パルスを除く維持パルスの総数が12以上の維持期間では、消去パルスを除くその維持期間の後半から最後にかけて第2の維持パルスを10回連続して発生させた場合を示す。
また、図面の破線のグラフは、維持期間における消去パルスを除く維持パルスの総数が10以上の維持期間では、消去パルスを除くその維持期間の後半から最後にかけて第2の維持パルスを10回連続して発生させ、維持期間における消去パルスを除く維持パルスの総数が10未満の維持期間では、消去パルスを除く全ての維持パルスを第2の維持パルスとした場合を示す。したがって、図面に示す破線のグラフでは、消去パルスを除く維持パルスの総数が10以下の維持期間では維持期間の最初から第2の維持パルスが印加されることになる。
なお、縦軸における残像レベルは、評価者による主観評価により残像の見え方を0〜5の6段階に分けて示したものであり、各数値が示す残像レベルは以下の通りである。
5:残像がくっきりと見え、残像に色をともなう。
4:残像が見え、残像に色をともなう。
3:残像が薄く見え、文字の残像を文字として認識できる。
2:残像が非常に薄く、文字の残像を文字として認識するのは困難。
1:残像がほとんど見えない。
0:残像が全く見えない。
そして、ここでは、残像レベル2以下であれば実用的に問題のないレベルとしている。
そして、この図8に示すように、上述した実線に示した駆動方法では、破線に示した駆動方法と比較して残像レベルが最大で1.5改善され、残像現象は問題のないレベルに軽減されることがわかった。
これらのことから、本実施の形態では、維持期間において走査電極SC1〜SCnに印加する最初の維持パルス(維持期間における最初の維持パルス)および維持電極SU1〜SUnに印加する最初の維持パルス(維持期間における2番目の維持パルス)は、サブフィールドの順番や維持期間における維持パルスの総数等にかかわりなく、立ち上がり時間を固定した(例えば、維持期間における最初の維持パルスを約900nsecとし、維持期間における2番目の維持パルスを約500nsecとする)維持パルスとする。そして、維持期間の最初の2回および消去パルスを除く維持期間の後半から最後にかけて、立ち上がりを急峻にした第2の維持パルスを、維持期間の維持パルスの総数に応じた所定の回数だけ連続して発生させる(例えば、消去パルスを除く維持パルスの総数が4以上6未満の維持期間では、消去パルスを除く維持期間の最後の2回に第2の維持パルスを連続して発生させ、消去パルスを除く維持パルスの総数が6以上12未満の維持期間では、消去パルスを除く維持期間の最後の4回に第2の維持パルスを連続して発生させ、消去パルスを除く維持パルスの総数が12の維持期間では、消去パルスを除く維持期間の最後の10回に第2の維持パルスを連続して発生させる)構成とする。
本実施の形態では、このような駆動方法とすることにより、維持期間の最初の維持放電を安定に発生させ、維持放電を継続して安定に発生させて、維持放電の発光強度のばらつきを抑える。また、維持放電によって形成される書込みのための壁電荷のばらつきを低減し、続く書込み放電を安定発生させる。これにより、パネル10における残像現象を軽減し、各放電セルの表示輝度の均一化を実現することができ、画像表示品質を向上させることができる。
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図9は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路41は、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路42はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。
タイミング発生回路45は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vからの出力をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。そして、上述したように、本実施の形態においては、維持期間において走査電極SC1〜SCnおよび維持電極SU1〜SUnに印加する少なくとも2種類の維持パルスを切換えて発生させており、それに応じたタイミング信号を走査電極駆動回路43および維持電極駆動回路44に出力する。これにより、パネルにおける残像現象を軽減させ、各放電セルの表示輝度を均一化する制御を行う。
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜SCnに印加する初期化波形電圧を発生するための初期化波形発生回路(図示せず)、維持期間において走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルス電圧を発生するための維持パルス発生回路50、書込み期間において走査電極SC1〜SCnに印加する走査パルス電圧を発生するための走査パルス発生回路(図示せず)を有し、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜SCnをそれぞれ駆動する。維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路60および電圧Ve1、電圧Ve2を発生するための回路を備え、タイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnを駆動する。
次に、維持パルス発生回路50、維持パルス発生回路60の詳細とその動作について説明する。図10は、本発明の一実施の形態における維持パルス発生回路50、維持パルス発生回路60の回路図である。なお、図10にはパネル10の電極間容量をCpとして示し、走査パルスおよび初期化電圧波形を発生させる回路は省略している。
維持パルス発生回路50は、電力回収回路51とクランプ回路52とを備えており、電力回収回路51およびクランプ回路52は、走査パルス発生回路(維持期間中は短絡状態となるため図示せず)を介してパネル10の電極間容量Cpの一端である走査電極SC1〜SCnに接続されている。
電力回収回路51は、電力回収用のコンデンサC10、スイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12、逆流防止用のダイオードD11、逆流防止用のダイオードD12、共振用のインダクタL10を有している。そして、電極間容量CpとインダクタL10とをLC共振させて維持パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを行う。このように、電力回収回路51は電源から電力を供給されることなくLC共振によって走査電極SC1〜SCnの駆動を行うため、理想的には消費電力が0となる。なお、電力回収用のコンデンサC10は電極間容量Cpに比べて十分に大きい容量を持ち、電力回収回路51の電源として働くように、電圧値Vsの半分の約Vs/2に充電されている。
クランプ回路52は、走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q13、走査電極SC1〜SCnを0(V)にクランプするためのスイッチング素子Q14を有している。そして、スイッチング素子Q13を介して走査電極SC1〜SCnを電源VSに接続して電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q14を介して走査電極SC1〜SCnを接地して0(V)にクランプする。したがって、電圧クランプ回路52による電圧印加時のインピーダンスは小さく、強い維持放電による大きな放電電流を安定して流すことができる。
そして、維持パルス発生回路50は、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号によりスイッチング素子Q11、スイッチング素子Q12、スイッチング素子Q13、スイッチング素子Q14の導通と遮断とを切換えることによって電力回収回路51と電圧クランプ回路52とを動作させ、維持パルス波形を発生させる。この詳細については後述する。なお、これらのスイッチング素子は、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。
維持パルス発生回路60は、電力回収用のコンデンサC20、スイッチング素子Q21、スイッチング素子Q22、逆流防止用のダイオードD21、逆流防止用のダイオードD22、共振用のインダクタL20を有する電力回収回路61と、維持電極SU1〜SUnを電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子Q23および維持電極SU1〜SUnを接地電位にクランプするためのスイッチング素子Q24を有するクランプ回路62とを備え、パネル10の電極間容量Cpの一端である維持電極SU1〜SUnに接続されている。なお、維持パルス発生回路60の動作は維持パルス発生回路50と同様であるので説明を省略する。
また、図10には、電圧Ve1を発生する電源VE1、電圧Ve1を維持電極SU1〜SUnに印加するためのスイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27、電圧ΔVeを発生する電源ΔVE、逆流防止用のダイオードD30、コンデンサC30、電圧Ve1に電圧ΔVeを積み上げて電圧Ve2とするためのスイッチング素子Q28、スイッチング素子Q29を示している。例えば、図4に示した電圧Ve1を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27を導通させて維持電極SU1〜SUnにダイオードD30、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27を介して正の電圧Ve1を印加する。なお、このときスイッチング素子Q28を導通させ、コンデンサC30の電圧が電圧Ve1になるように充電しておく。また、図4に示した電圧Ve2を印加するタイミングでは、スイッチング素子Q26、スイッチング素子Q27は導通させたまま、スイッチング素子Q28を遮断させるとともにスイッチング素子Q29を導通させてコンデンサC30の電圧に電圧ΔVeを重畳し、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1+ΔVe、すなわち電圧Ve2を印加する。このとき、逆流防止用のダイオードD30の働きにより、コンデンサC30から電源VE1への電流は遮断される。
なお、電圧Ve1、電圧Ve2を印加する回路については、図10に示した回路に限定されるものではなく、例えば、電圧Ve1を発生させる電源と電圧Ve2を発生させる電源とそれぞれの電圧を維持電極SU1〜SUnに印加するための複数のスイッチング素子とを用いて、それぞれの電圧を必要なタイミングで維持電極SU1〜SUn印加する構成とすることもできる。
なお、電力回収回路51のインダクタL10とパネル10の電極間容量CpとのLC共振の周期、および電力回収回路61のインダクタL20と同電極間容量CpとのLC共振の周期(以下、「共振周期」と記す)は、インダクタL10、L20のインダクタンスをそれぞれLとすれば、計算式「2π√(LCp)」によって求めることができる。そして、本実施の形態では、電力回収回路51、電力回収回路61における共振周期が約1800nsecになるようにインダクタL10、インダクタL20を設定しているが、この数値は実施の形態における一例に過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて最適な値に設定すればよい。
次に、第1の維持パルスおよび第2の維持パルスを発生させるための維持パルス発生回路の動作を、図11、図12を用いて説明する。
なお、以下の説明においてスイッチング素子を導通させる動作をオン、遮断させる動作をオフと表記し、図面にはスイッチング素子をオンさせる信号を「ON」、オフさせる信号を「OFF」と表記する。また、図11、図12では、正極の波形を用いて説明をするが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、負極の波形における実施の形態例は省略するが、以下の説明の正極の波形において「立ち上がり」と表現しているものを、負極の波形においては「立ち下がり」に読みかえることで、負極の波形であっても同様の効果を得ることができるものである。また、ここでは、維持パルスの繰返し周期の1周期分を4つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。
まず、基準パルスである第1の維持パルスについて説明する。図11は、本発明の一実施の形態における第1の維持パルスの波形図である。なお、ここでは走査電極SC1〜SCn側の維持パルス発生回路50について説明するが、維持電極SU1〜SUn側の維持パルス発生回路60も同様の回路構成であり、その動作もほぼ同様である。
(期間T11)
時刻t1でスイッチング素子Q11をオンにする。すると、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して走査電極22へ電荷が移動し始め、走査電極SC1〜SCnの電圧が上がり始める。インダクタL10と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、時刻t1から共振周期の約1/2の時間が経過した時刻において走査電極SC1〜SCnの電圧はVs付近まで上昇する。そして、上述したように本実施の形態において、第1の維持パルスにおける走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスの立ち上がり時間、すなわち時刻t1から時刻t21までの期間T11の時間は約550nsecに設定されている。
ただし、上述したように、維持期間において走査電極SC1〜SCnに最初に印加する維持パルスにおいてはこの期間を約900nsecとし、維持期間において維持電極SU1〜SUnに最初に印加する維持パルスにおいてはこの期間を約500nsecとしている。
(期間T21)
そして、時刻t1から約550nsecが経過した時刻t21でスイッチング素子Q13をオンにする。
すると、走査電極SC1〜SCnはスイッチング素子Q13を通して電源VSへ接続されるため、走査電極SC1〜SCnは電圧Vsにクランプされる。走査電極SC1〜SCnが電圧Vsにクランプされると、書込み放電を起こした放電セルでは走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間の電圧差が放電開始電圧を超え、維持放電が発生する。なお、この電源VSへのクランプ期間が短すぎると、維持放電にともなって形成される壁電圧が不足し、維持放電を継続して発生させることができなくなる。逆に、長すぎると維持パルスの繰返し周期が長くなってしまい、必要な数の維持パルスを表示電極対に印加できなくなる。そのため実用的には電源VSへのクランプ期間を800nsec〜1500nsec程度に設定することが望ましい。そして、本実施の形態においては、期間T21を約1000nsecに設定している。
ただし、維持期間において走査電極SC1〜SCnに最初に印加する維持パルスにおいては、最初の維持放電を安定に発生させるため、この期間を約2000nsecとし、維持期間において維持電極SU1〜SUnに最初に印加する維持パルスにおいてはこの期間を上述と同様の約1000nsecとしている。
(期間T31)
時刻t31でスイッチング素子Q12をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCnからインダクタL10、ダイオードD12、スイッチング素子Q12を通してコンデンサC10に電荷が移動し始め、走査電極SC1〜SCnの電圧が下がり始める。上述したように本実施の形態においては、走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスの立ち下がり時間、すなわち時刻t31から時刻t4までの期間T31の時間は約700nsecに設定されている。
(期間T4)
そして、時刻t31から約700nsecが経過した時刻t4でスイッチング素子Q14をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCnはスイッチング素子Q14を通して直接に接地されるため、走査電極SC1〜SCnは0(V)にクランプされる。
本実施の形態では、このようにして、基準となる第1の維持パルスを発生させている。
次に、第1の維持パルスよりも立ち上がりが急峻な第2の維持パルスについて説明する。図12は、本発明の一実施の形態における第2の維持パルスの波形図である。
(期間T12)
時刻t1でスイッチング素子Q11をオンにする。すると、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して走査電極SC1〜SCnへ電荷が移動し始め、走査電極SC1〜SCnの電圧が上がり始める。そして、第2の維持パルスにおいては、走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスの立ち上がり時間、すなわち時刻t1から時刻t22までの期間T12の時間は、第1の維持パルスにおける期間T11よりも短い約350nsecに設定されている。
(期間T22)
そして、時刻t22でスイッチング素子Q13をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCnはスイッチング素子Q13を通して直接に電源VSへ接続されるため、走査電極SC1〜SCnは電圧Vsにクランプされ、維持放電が発生する。なお、第2の維持パルスでは、第1の維持パルスよりも立ち上がり時間を短くした分だけ期間T22を期間T21よりも長く設定して約1200nsecとし、第1の維持パルスと第2の維持パルスとで立ち上がりから立ち下がりまでの1周期の長さが変わらないようにしている。
なお、第2の維持パルスにおいては、期間T31、期間T4の動作は第1の維持パルスと同様であるため説明を省略する。
本実施の形態では、このようにして、第1の維持パルスよりも急峻な立ち上がりの第2の維持パルスを発生させている。なお、上述の説明で示した第1の維持パルスの立ち上がり時間や第2の維持パルスの立ち上がり時間等の具体的な各数値は、本実施の形態における一例を挙げたに過ぎない。本実施の形態は何ら上述した数値に限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて最適に設定すればよい。
以上が、本実施の形態における第1の維持パルスおよび第2の維持パルスを発生させるための維持パルス発生回路の動作であり、上述したように、電力回収回路による表示電極対への電圧印加を制御するスイッチング素子(具体的には、スイッチング素子Q11、スイッチング素子Q21)をオンに持続する時間を制御することで、立ち上がりの異なる維持パルスを発生させることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、維持期間における最初の維持パルスおよび2番目の維持パルスおよび最後の消去パルスを除く維持期間の後半から最後にかけて、基準となる第1の維持パルスよりも立ち上がりを急峻にした第2の維持パルスを、維持期間の維持パルスの総数に応じた所定の回数だけ連続して発生させるように構成することで、残像現象を軽減し、各放電セルの表示輝度を均一化させて画像表示品質を高めることが可能となる。
なお、この実験は表示電極対数768本の50インチのパネルを使用して行っており、上述した数値はそのパネルにもとづき設定したものに過ぎない。本実施の形態は何らこれらの数値に限定されるものではなく、維持パルスの立ち上がり期間や重複期間等の具体的な各数値はプラズマディスプレイ装置の仕様やパネルの特性等に応じて最適に設定することが望ましい。
また、本実施の形態では、維持パルスの総数に応じた第2の維持パルスの連続印加回数が、何ら上述した構成に限定されるものではない。例えば、消去パルスを除く維持パルスの総数が12未満の維持期間では、維持期間における最初の2回の維持パルスおよび消去パルスを除く残りの維持パルスの全てを第2の維持パルスとし、消去パルスを除く維持パルスの総数が12以上の維持期間では、消去パルスを除くその維持期間の後半から最後にかけて第2の維持パルスを10回連続して発生させるように構成してもよい。また、本実施の形態では、第2の維持パルスの連続印加回数を最大で10回とする構成を説明したが、何らこの数値に限定されるものではなく、第2の維持パルスの連続印加回数はパネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に応じて最適に設定すればよい。
また、本実施の形態では、放電ガスのキセノン分圧を10%としたが、他のキセノン分圧であってもそのパネルに応じた駆動電圧に設定すればよい。
また、本実施の形態は、維持期間における最初の2回の維持パルス、最後の消去パルス、および連続して印加する第2の維持パルス以外の維持パルスの発生について何ら限定されるものではなく、例えば基準となる第1の維持パルスだけを発生させる構成、第1の維持パルスと第2の維持パルスとを織り交ぜて発生させる構成、あるいはサブフィールドの順番や輝度重み等に応じて適応的に変化させる構成等、どのような構成であってもかまわない。
また、本実施の形態において用いたその他の具体的な各数値は、単に一例を挙げたものに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。