JP4835026B2 - ジフェニルキノキサリン骨格を有する化合物を含む導電性組成物 - Google Patents
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その中でも、固体電解コンデンサの陰極材料に用いる場合には、高容量・低等価直列抵抗といったメリットを発揮することから広く用いられるようになってきている。固体電解コンデンサとして使用される導電性高分子にはこれまで低等価直列抵抗を実現するために高い導電性が強く要求されてきた。
近年、実装基板の鉛フリー化に伴い使用される半田の金属組成がSnPbからSnAg、SnAgCu等のPbを含まない金属組成への転換が図られている。それに伴って、実装時の半田の溶融温度は、従来の共晶半田の183℃から240〜245℃へと50℃以上上昇することとなった。さらに実装基板および搭載された部品の熱容量を考慮するとリフロー時の炉内の温度は、半田の溶融温度よりも5℃〜20℃高めに維持する必要があり、鉛フリー化を実現するため実装基板に搭載される部品の耐熱性に対する要求レベルは益々高くなってきている。
一方、ポリフェニルキノキサリンは、特にカーボン材料と複合化すると電極材料年有用であることが知られている(特許文献3)。また、ポリフェニルキノキサリンを可溶化するために発煙硫酸を用いたスルホン化反応により部分的にスルホン酸基が導入された高分子化合物が得られているが構造特定はされていない(非特許文献1)。
(1) 導電性高分子物質に2,3−ジフェニルキノキサリン構造を有するスルホン酸置換化合物をドーパントとして含むことを特徴とする導電性組成物。
(2) スルホン酸置換化合物が、化学式(1)
(式中、R1〜R14 は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基を示し、R1〜R14の少なくとも1つが−SO3M又はSO3Mを有する炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基を示す。Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アンモニウム、または酸化性を有する遷移金属を示す。)で示される化合物あることを特徴とする上記(1)に記載の導電性組成物。
もしくは化学式(3)
で示される化合物である上記(1)または(2)に記載の導電性組成物。
(4) スルホン酸置換化合物が、1,4−ビスフェニルキノキサリルベンゼンのスルホン酸置換化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の導電性組成物。
(式中、R1〜R18 は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基を示し、さらにR1〜R18の少なくとも1つは、−SO3M又はSO3Mを有する炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基を示す。Mは、水素 、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第4級アンモニウムまたは酸化性を有する遷移金属を表わす。)で示される化合物である上記(4)に記載の導電性組成物。
で示される上記(5)に記載の導電性組成物。
(7) 導電性高分子物質が、π電子共役構造を有するモノマーの重合体である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性組成物。
(8) 重合体が、チオフェン骨格を有する化合物、多環状スルフィド骨格を有する化合物、ピロール骨格を有する化合物、フラン骨格を有する化合物、アニリン骨格を有する化合物の群から選ばれる少なくとも一つの化合物の二価基を繰り返し単位として含む上記(7)に記載の導電性組成物。
(9) 重合体の重合度が2以上2000以下である上記(7)又は(8)に記載の導電性組成
(10) 上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の導電性組成物を固体電解質に含む固体電解コンデンサ。
先ず、化学式(1)
で表わされるジフェニルキノキサリン骨格を有するスルホン酸化合物である。
この化合物として化学式(4)で表される化合物を挙げることができる。
化学式(4)
式中、R1〜R18の中には、少なくとも1つが−SO3 −M+又はSO3Mを有する炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基(例えば−CH2−CH2−SO3等))で置換されたジフェニルキノキサリン骨格を有するスルホン酸置換化合物であり、より詳しくは、1〜3箇所で−SO3M基が置換されていることがより好ましい。
本発明に於けるスルホン化された1,2−ジケトン構造を有する芳香族ジケトン化合物もしくはスルホン化された1,2−ジケトン構造を有する芳香族テトラケトン化合物と1,2−ジアミン構造を有するジアミン化合物との脱水反応は、接触を容易にするために溶媒を使用することができる。溶媒としては、テトラケトンやテトラアミンと反応せず、水分含有量の少ない溶媒であればよく、具体的には、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサンなどを使用することができる。特に、スルホン化された1,2−ジケトン構造を有する芳香族テトラケトン化合物を合成する工程においては、使用する発煙硫酸をそのまま溶媒として用いても良い。
本発明は、ジフェニルキノキサリン骨格を有するスルホン酸置換化合物をドーパントに含む導電性組成物であり、耐熱性・耐湿性に優れた導電性組成物である。
本発明に於けるジフェニルキノキサリン骨格を有するスルホン酸置換化合物は、電気化学的に可逆な酸化還元反応を安定に維持できることから当該化合物を含む導電性組成物は導電性が安定に保持される。
本発明の導電性組成物に好適に用いられる導電性高分子は、π電子共役構造を有する有機重合体モノマーの重合体であり、重合度2以上2000以下、より好ましくは3以上1000以下、さらに好ましくは5以上200以下である。具体例としては、チオフェン骨格を有する化合物、多環状スルフィド骨格を有する化合物、ピロール骨格を有する化合物、フラン骨格を有する化合物、アニリン骨格を有する化合物等で示される構造を繰り返し単位として含む導電性重合体が挙げられる。
また、1,3−ジヒドロナフト[1,2−c]チオフェン骨格を有する化合物が、1,3−ジヒドロフェナントラ[2,3−c]チオフェン誘導体や、1,3−ジヒドロトリフェニロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する化合物が、1,3−ジヒドロベンゾ[a]アントラセノ[7,8−c]チオフェン誘導体なども使用できる。
ピロール骨格を有するモノマーとしては、例えば、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−ペンチルピロール、3−ヘキシルピロール、3−ヘプチルピロール、3−オクチルピロール、3−ノニルピロール、3−デシルピロール、3−フルオロピロール、3−クロロピロール、3−ブロモピロール、3−シアノピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジエチルピロール、3,4−ブチレンピロール、3,4−メチレンジオキシピロール、3,4−エチレンジオキシピロール等の誘導体を挙げることができる。これらの化合物は、市販品または公知の方法で準備できる。
これらの中でも、チオフェン骨格または多環状スルフィド骨格を有する化合物が好ましく、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)、1,3−ジヒドロイソチアナフテンが特に好ましい。
また、上記モノマー群から選ばれる化合物を併用し、共重合体として固体電解質を形成させても良い。その時の重合性単量体の組成比などは重合条件等に依存するものであり、好ましい組成比、重合条件は簡単なテストにより確認できる。
本発明において好ましく使用される3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)は、上記の一価アルコールによく溶けるが、水とはなじみが良くないため高濃度の酸化剤水溶液と接触させたときには、EDTはその界面において重合が良好に進行して、フィブリル構造あるいはラメラ(薄い層状)構造の導電性重合体固体電解質層が形成される。
本発明(II)に於ける導電性組成物に含まれる本発明(I)の水溶性化合物は、導電性高分子を構成するモノマーユニットに対して0.1モル%〜50モル%が好ましく、より好ましくは5モル%〜25モル%である。
本発明に於ける化学物質の化学構造は、核磁気共鳴分析(以下NMRと略す):ブルカー社製 AMX−400、質量分析(以下FAB−MSと略す):日本電子(株)製 JMS SX−102Aを使用した。さらに、熱重量分析(以下TGと略す):理学電気(株)製 TG−8120を使用して耐熱性を確認した。
導電性組成物の導電率は、得られた粉末を300kg/cm2の圧力でペレットとしマイクロメーターで膜厚を測定した後、三菱化学(株)製 Loresta IP(MCP−T250)にてシート抵抗を測定し体積導電率を算出した。
2,3-ジフェニルキノキサリン(東京化成工業(株)製)8.1g(28.6mmol)を20%発煙硫酸40ml(ヨツハタ化学(株)製)に内温20℃以下を維持しながら添加し一晩室温で攪拌した。反応液を氷水に投入し希釈した後、粉末の炭酸水素ナトリウム145gを少量ずつ添加して中和し析出した沈殿物を濾別した。本沈殿物を水から再結晶してスポンジ状の無色の結晶8.6g(収率:78%)を得た。
このようにして得られた無色のスポンジ状結晶の質量分析を行ったところ、m/zが384に検出された。また、1H-NMRを測定したところ、1置換フェニル基の特徴を示すピークが7.1(d)、7.2(t)、7.3(d)に認められ、1、3置換フェニル基の特徴を示すピークが7.1(d)、7.25(t)、7.9(s)、7.92(d)に認められキノキサリン骨格に基づくピークが7.4ppm(t)、7.5(t)、7.6(d)、7.7(d)に検出された。さらに、13C-NMRを測定したところ、芳香族4級炭素が7種類、芳香族CHが13種類検出されたことからその化学構造を同定した。
ベンジル(東京化成工業(株)製) 1.3g(6.2mmol)を1,4-ジオキサン(純正化学(株)製)6.4mlに溶解し、冷却しながら20%発煙硫酸19ml(ヨツハタ化学(株)製)を攪拌しながら室温を維持するように滴下し一晩攪拌した。反応液を氷水中に投入し希釈した後、粉末の炭酸水素ナトリウム67gを少量ずつ添加して中和し析出した無色結晶を濾別した。ろ液を減圧下、水分を留去して淡緑色の固形分30g得た。本固形分にN,N−ジメチルホルムアミド90mlを添加し一晩攪拌した。懸濁液中の固形分を濾別して得られた濾液にオルトフェニレンジアミン0.66g(6.1mmol)を加えて120℃で10時間加熱した。反応液を450mlのアセトンに投入し析出した固形分を濾取し、更に50mlのアセトンで2回繰り返して 洗浄した後、水から再結晶して淡黄色針状結晶0.30g(回収率:10%)を得た。
攪拌機と温度計とジムロート冷却管を備えた300ミリリットルの三口フラスコに、調製例1で合成した1,4−ビス(フェニルグリオキシル)ベンゼン(10.00g)と1,4−ジオキサン(50ml)を入れて溶解した。反応混合物を水冷しながら、反応温度を30ないし40℃となるように発煙硫酸(150ml)を滴下した。滴下終了後、室温でしばらく攪拌すると、オレンジ色の溶液となった。この溶液を、800gの氷に投入すると、黄色の溶液が得られ、そこに塩化ナトリウム(198g)を投入すると、黄色の沈殿が得られた。この沈殿を濾別し、200ミリリットルの水に溶解させ、その溶液に炭酸水素ナトリウム(7.0g)を入れて中和した。中和後、塩化ナトリウム(40g)を投入して析出した黄色の固体を濾別、乾燥して黄色の粉末を得た。(収量5.2g)
1,4−ビス{3’−(4’’-スルホ)フェニル)キノキサリル)}ベンゼンのナトリウム塩(以下BSPQB−Naと略す)の合成
実勢例3で合成した1,4−ビス(3’−スルホ−フェニルグリオキシル)ベンゼンのナトリウム塩 500mg、オルトフェニレンジアミン(東京化成工業(株)製) 200mg、およびN,N−ジメチルホルムアミド2.5mlを2口ナスフラスコに投入し11時間130℃で加熱した。加熱終了後、反応液に蒸留水 20ml、食塩 1.0gを添加することにより析出した沈殿物を濾取した。沈殿物をジエチルエーテルにて洗浄したのち真空乾燥し淡褐色の粉末90mg(収率14%)を得た。
なお、本物質は500℃まで顕著な重量減少は認められず安定であった。
QBSをドーパントに含む導電性組成物の合成
サンプル管に過硫酸アンモニウム 1.37g(6.0mmol)とQBS 0.14g(0.4mmol)を秤量し、次に蒸留水 9mlを注ぎいれ攪拌して溶解した。溶液は懸濁液となった。サンプル管を40℃の温浴につけ3,4-エチレンジオキシチオフェン 0.29g(2mmol)を静かに注ぎいれ重合を開始した。2.5時間後に加熱を止め、得られた固形分を濾取しアセトン10mlで洗浄した後、真空乾燥して黒色粉末を0.17g得た。本粉末をペレットに成形し測定した導電率は、19S/cmであり、熱重量分析により242℃までは発熱を伴う重量減少が認められなかった。
BSPQBをドーパントに含む導電性組成物の合成
サンプル管に過硫酸アンモニウム 1.37g(6.0mmol)とBSPQB−Na0.28g(0.4mmol)を秤量し、次に蒸留水 9mlを注ぎいれ攪拌して溶解した。溶液は懸濁液となった。サンプル管を40℃の温浴につけ3,4-エチレンジオキシチオフェン 0.29g(2mmol)を静かに注ぎいれ重合を開始した。2.5時間後に加熱を止め、得られた固形分を濾取しアセトン10mlで洗浄した後、真空乾燥して黒色粉末を0.15g得た。本粉末をペレットに成形し測定した導電率は、11S/cmであり、熱重量分析により242℃までは発熱を伴う重量減少が認められなかった。
ドデシルベンゼンスルホン酸をドーパントに含む導電性組成物の合成
サンプル管に過硫酸アンモニウム 1.37g(6.0mmol)とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.14g(0.4mmol)を秤量し、次に蒸留水 9mlを注ぎいれ攪拌して溶解した。溶液は懸濁液となった。サンプル管を40℃の温浴につけ3,4-エチレンジオキシチオフェン 0.29g(2mmol)を静かに注ぎいれ重合を開始した。2.5時間後に加熱を止め、得られた固形分を濾取しアセトン10mlで洗浄した後、真空乾燥して黒色粉末を0.17g得た。本粉末をペレットに成形し測定した導電率は、4.5S/cmであり、熱重量分析により200℃で発熱を伴う重量減少が認められた。
Claims (10)
- 導電性高分子物質に2,3−ジフェニルキノキサリン構造を有するスルホン酸置換化合物をドーパントとして含むことを特徴とする導電性組成物。
- スルホン酸置換化合物が、化学式(1)
(式中、R1〜R14 は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基を示し、R1〜R14の少なくとも1つが−SO3M又はSO3Mを有する炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基を示す。Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アンモニウム、または酸化性を有する遷移金属を示す。)で示される化合物あることを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。 - スルホン酸置換化合物が、1,4−ビスフェニルキノキサリルベンゼンのスルホン酸置換化合物であることを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
- スルホン酸置換化合物が、化学式(4)
(式中、R1〜R18 は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基を示し、さらにR1〜R18の少なくとも1つは、−SO3M又はSO3Mを有する炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基を示す。Mは、水素 、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第4級アンモニウムまたは酸化性を有する遷移金属を表わす。)で示される化合物である請求項4に記載の導電性組成物。 - 導電性高分子物質が、π電子共役構造を有するモノマーの重合体である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性組成物。
- 重合体が、チオフェン骨格を有する化合物、多環状スルフィド骨格を有する化合物、ピロール骨格を有する化合物、フラン骨格を有する化合物、アニリン骨格を有する化合物の群から選ばれる少なくとも一つの化合物の二価基を繰り返し単位として含む請求項7に記載の導電性組成物。
- 重合体の重合度が2以上2000以下である請求項7又は8に記載の導電性組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性組成物を固体電解質に含む固体電解コンデンサ。
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