以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図のプリンタは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)用の4つの作像プロセス部1Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。Yトナー像を生成するためのY用の作像プロセス部1Yを例にすると、これは図2に示すような構成になっている。そして、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる感光体2Yの周囲に、クリーニング装置100Y、除電手段3Y、帯電ローラ4Y、光書込装置5Y、現像装置6Yなどを有している。
感光体2Yに接触あるいは所定の間隙を介して対向するように配設された帯電ローラ3Yには、帯電バイアスが印加される。そして、帯電ローラ4Yは、図中反時計回り方向に回転しながら感光体2Yとの間に放電を生じせしめることで、感光体2Yの表面を一様帯電せしめる。帯電ローラ4Yの代わりに、帯電ブラシを当接させてもよい。また、感光体2Yを一様帯電せしめる帯電手段として、スコロトロンチャージャーのように、チャージャー方式によって感光体2Yを一様帯電せしめるものを用いてもよい。
帯電ローラ3Yとしては、硬質の導電性材料でローラ部が形成されたものを、微小ギャップを介して感光体2Yに対向させたものであって、次に説明する構成を有するものであることが望ましい。即ち、その軸線方向の寸法がプリンタの出力可能な最大画像幅よりも少し長く設定され、軸線方向の両端部に、それぞれ中央部よりも大きな径で且つ絶縁性のギャップコロ部を有するものである。かかる構成では、両端のギャップコロ部を感光体2Yの軸線方向の両端部に存在する非画像形成領域に当接させることで、自らの中央部と感光体2Yとの間に5〜100[μm]程度(より望ましくは25〜65μm)の微小ギャップを容易に形成することができる。
帯電ローラ4Yによって一様帯電せしめられた感光体2Yの表面は、光書込装置5Yから発せられる走査光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。この光書込装置5Yは、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて変調したレーザー光あるいはLED光を照射するものである。
現像手段たる現像装置6Yは、周知の技術により、感光体2Y表面に担持された静電潜像にYトナーを付着させることで、静電潜像を現像してYトナー像を得る。このYトナー像は、後述する中間転写ベルトに1次転写される。
クリーニング装置100は、1次転写工程を経た後の感光体2Y表面に付着している転写残トナーを除去する。これによってクリーニング処理が施された感光体2Y表面は、図示しない除電ランプ等の除電手段3Yによって除電されて、次の画像形成に備えられる。
先に示した図1において、他色用の作像プロセス部1C,M,Kにおいても、同様にして感光体2C,M,K上にC,M,Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト21上に中間転写される。
作像プロセス部1Y,C,M,Kの図中下方には、像担持体たる中間転写ベルト21を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット20が配設されている。転写手段たる転写ユニット20は、中間転写ベルト21の他、駆動ローラ22、従動ローラ23、4つの1次転写ローラ24Y,C,M,K、2次転写ローラ25、図示しないベルトクリーニング装置などを備えている。
中間転写ベルト21は、そのループ内側に配設された駆動ローラ22と従動ローラ23とによって張架されながら、駆動ローラ22の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。
4つの1次転写ローラ24Y,C,M,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト21を感光体2Y,C,M,Kとの間に挟み込んでY,C,M,K用の1次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト21の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。転写体たる中間転写ベルト21は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体2Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト21のループ外側には、図示しない電源から出力される2次転写バイアスが印加される2次転写ローラ25が配設されており、これはベルトループ内側の駆動ローラ22との間に中間転写ベルト21を挟み込んで2次転写ニップを形成している。
転写ユニット20の下方には、図示しない給紙カセットが配設されている。この給紙カセット内には、転写体たる記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、一番上の記録紙Pを所定のタイミングで図示しない給紙路に送り出す。この給紙路の末端には、レジストローラ対31が配設されている。レジストローラ対31は、記録紙Pを互いに当接しながら回転するローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを中間転写ベルト21上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに向けて送り出す。
中間転写ベルト21上に形成された4色トナー像は、2次転写バイアスが印加される2次転写ローラ25と接地された駆動ローラ22との間に形成される2次転写電界や、ニップ圧の影響により、2次転写ニップ内で記録紙Pに一括2次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、従動ローラ23との間に中間転写ベルト21を挟み込んでいる図示しないベルトクリーニング装置によって除去される。
2次転写ニップの上方には、図示しない定着装置が配設されている。この定着装置は、電子写真方式の画像形成装置で周知になっているように、加圧や加熱によってトナー像を記録紙に定着せしめるものである。
なお、感光体2Y,C,M,K上のY,M,C,Kトナーは、Y,C,M,K用の1次転写ニップにおいて、自らと逆極性の1次転写バイアスが印加されることで、逆極性の電荷注入を受けてしまう場合がある。このため、感光体2Y,C,M,K上の転写残トナーの中には、正規極性トナー粒子と逆帯電トナー粒子とが混在している。
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、4つの作像プロセス部1Y,C,M,Kが、像担持体たる感光体2Y,C,M,Kの無端移動する表面にトナー像を形成するトナー像形成手段として機能している。また、4つの作像プロセス部部1Y,C,M,Kと転写ユニット20との組合せが、像担持体たる中間転写ベルト21の無端移動する表面にトナー像を形成するトナー像形成手段ととして機能している。
次に、本実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図3は、本プリンタにおけるY用のクリーニング装置100Yと、その周囲構成とを示す拡大構成図である。同図において、クリーニング装置100Yは、高圧電源回路101Y、クリーニングブラシ102Y、回収ローラ105Y、スクレーパ106Y、搬送コイル107Y等を有している。
クリーニングブラシ102Yは、感光体2Yの軸線方向と平行な姿勢で延在する回転軸部材104Yと、これの周面に植毛された無数の起毛103Yからなるブラシとを有している。そして、クリーニング装置100Yのケーシング両側面にそれぞれ設けられた図示しない軸受(保持手段)によって回転軸部材104Yが回転自在に受けられることで、ケーシング内で回転自在に保持されている。そして、回転しながらブラシの先端を感光体2Yに摺擦せしめることで、転写残トナーを感光体2Y表面上から掻き取りながら、ブラシ表面に転移させる。よって、クリーニングブラシ102Yは、感光体2Y表面に付着しているトナーを自らの表面に転移させて、感光体2Y表面からトナーを除去するクリーニング部材として機能している。
起毛103Yは、高抵抗を発揮する導電性繊維からなる。ここで言う高抵抗とは、少なくとも電荷を保持し得る程度に電気抵抗値が高いことを意味しており、中間転写ベルトの表面層などと同等の電気抵抗値である。高抵抗を発揮し得る導電性繊維としては、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの樹脂にカーボンなどの導電性材料を添加した材料からなる繊維を例示することができる。高抵抗を発揮する導電性繊維であればこれらの繊維に限らない。繊維の素材に導電性を付与するのではなく、絶縁性の繊維に導電材料をコーティングしたり、挿入したりしてもよい。また、他の方法によって繊維に導電性を付与してもよい。また、繊維の表面を絶縁性材料でコーティングする場合には、繊維の素材として、高抵抗ではなく、導電性に優れたもの(例えば金属繊維)を用いることも可能である。かかる構成でも、繊維の表面に電荷を保持させることが可能だからである。
回収ローラ105Yは、そのローラ基材がステンレスなどの金属、あるいは導電性に優れた樹脂材料からなる。そして、ローラ部の両端面からそれぞれ突出している軸部材がケーシングに設けられた図示しない軸受に受けられることで、図中反時計回りに回転しながら、クリーニングブラシ102Yに接触するようになっている。よって、クリーニングブラシ102Yに接触するように配設された電極部材として機能している。表面摩擦係数を小さくする目的で、ローラ基材に対して、PFAなどのフッ素系樹脂を塗布したり、フッ素系樹脂と金属との共析メッキ処理を施したりしてもよい。また、ローラ基材として、導電性ゴムや導電性樹脂などからなるものを用いてもよい。また、例えば、フッ素系樹脂からなる絶縁性表面層を10[μm]の厚みで形成するなどといった具合に、ローラ基材を絶縁性材料で被覆してもよい。
高圧電源回路101Yは、極性の反転を繰り返す交流電圧を出力するものであり、導線と図示しない接点とを介して回収ローラ105Yのローラ基材にその交流電圧を印加する。かかる交流電圧としては、交流成分だけからなるもの、交流成分に直流成分を重畳したもの、の何れであってもよい。但し、極性の反転を繰り返す交流電圧である必要があるため、後者の場合には、直流成分電圧の絶対値が、交流成分のVp-p電圧の半分よりも小さいものである必要がある。かかる構成の高電圧電源回路101Yは、前述の導線や接点などとともに、極性の反転を繰り返す交流電圧を電極部材たる回収ローラ105Yに印加する交流電圧印加手段として機能している。
感光体2Yからクリーニングブラシ102Yのブラシ内に転移した転写残トナーは、ブラシと、交流電圧が印加される回収ローラ105Yとの当接部において、ブラシからローラ表面に静電転移する。
回収ローラ105Yの下方に配設されたスクレーパ106Yは、その一端側が片持ち支持され、且つ自由端側を回収ローラ105Yに突き当てている。そして、回収ローラ105Y表面から転写残トナーを掻き落とす。スクレーパ106Yの材料としては、回収ローラ105Y表面が金属材料からなる場合にはナイロン系シート材やゴムブレードなどの摩擦抵抗の比較的高いものを用いることが望ましい。一方、回収ローラ105Y表面が導電性ゴムや導電性樹脂などの非金属からなる場合には、金属を用いることが好ましい。
スクレーパ106Yの表面から掻き落とされた転写残トナーは、スクレーパ106Yの下方に配設されている搬送コイル107Y内に落下する。そして、図示しない駆動手段によって回転駆動される搬送コイル107Yによって感光体2Yやクリーニングブラシ102Yの軸線方向に搬送された後、クリーニング装置100Y外に排出される。
クリーニングブラシ102Yのブラシは、その回転に伴って、感光体2Yとの当接部であるクリーニング位置を通過した後、回収ローラ105Yとの当接部である回収位置を経由してから、再びクリーニング位置に進入する。回収位置では、上述の交流電圧が印加される回収ローラ105Yと、電気的にフロート状態になっているクリーニングブラシ102Yにおける導電性(高抵抗)の起毛103Yとの間に放電が発生する。そして、この放電により、起毛103Yに電荷が保持される。上述の交流電圧は極性の反転を繰り返す電圧であるため、その反転に伴って放電方向の反転が繰り返される。このように放電方向の反転が繰り返されながら、クリーニングブラシ102Yが回転することにより、回収位置を通過した後のブラシには、正電荷(+)を保持する起毛103Yと、負電荷(−)を保持する起毛103Yとの両方が発生する。即ち、本プリンタでは、回収ローラ105Yとクリーニングブラシ102Yとの間に放電を生じせしめながらクリーニングブラシ102Yを回転させることで、正電荷を保持する正電荷保持領域と、負電荷を保持する負電荷保持領域との両方を、クリーニングブラシ102Yに形成する。なお、クリーニングブラシ102Yを接地してもよい。
かかる構成の本プリンタにおいては、クリーニング位置に進入させる前のブラシに正電荷及び負電荷の両方を保持させることで、感光体2Y表面に付着している正規極性トナー粒子及び逆帯電トナー粒子の両方をブラシに静電転移させることができる。しかも、交流電圧が印加される回収ローラ105Yとの間の放電によってブラシに正電荷保持領域及び負電荷保持領域を形成するので、クリーニングブラシ102Yに高電圧を印加する必要がなくなる。これにより、クリーニング部材に高電圧を印加していた特許文献2に記載の画像形成装置に比べて、クリーニング部材から感光体表面上のトナーへの電荷注入を抑えることができる。
クリーニングブラシ102Yの起毛103Yとして、高抵抗を発揮する繊維からなるもの、あるいは、優れた導電性を発揮する繊維の表面に絶縁材料を被覆したものを用いる理由は、起毛103Yと回収ローラ105Yとの間に放電を生じせしめるためである。これらの繊維を用いなくても放電を良好に生じせしめることができる場合には、起毛103Yとして、絶縁性材料からなるものを用いてもよい。例えば、クリーニングブラシ102Yの回転軸部材104Yとして、金属材料からなるものを用い、それと回収ローラ105Yとの間で放電を発生させる場合には、結果として、起毛103Yと回収ローラ105Yとの間でも放電を発生させていることになる。このような場合には、起毛103Yとして、絶縁性材料からなるものを用いることが可能である。
また、本プリンタのクリーニング装置100Yにおいては、ブラシの電荷保持量によっては、ブラシと感光体2Yとの間で放電を生じせしめて、感光体2Yを除電し得る可能性がある。このような場合には、除電手段3Yを不要にして装置の小型化や低コスト化を期待することができる。
図3においては、クリーニング位置でブラシ表面と感光体2Y表面とを互いに逆方向に表面移動させるカウンター方向の構成を示したが、互いに順方向に表面移動させる構成としてもよい。また、回収位置でブラシ表面と回収ローラ105Yとを互いにカウンター方向に表面移動させる構成を示したが、順方向としてもよい。
クリーニングブラシ102Yを回転させることに加えて、軸線方向に揺動させる構成を付加すると、ブラシの局所部位に多量の転写残トナーを一気に進入させてしまうことによるクリーニング性能の低下を抑えることが可能になる。ブラシに対する感光体2Y表面の入力座標を軸線方向に変化させることで、感光体2Y表面の軸線方向において局所的に多量の転写残トナーを付着させている箇所が存在していても、ブラシに対する感光体2Y表面の入力座標を軸線方向に変化させることで、ブラシに対するトナー進入量を軸線方向に分散させることが可能になるからである。
ところで、トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤におけるトナー濃度を把握する目的などで、予め定められた基準パッチトナー像を感光体表面に形成し、それを光学センサで検知する構成を採用することがある。そして、かかる構成では、基準パッチトナー像を構成する多量のトナーをクリーニングする必要が出てくる。また、感光体表面にトナー像が形成された状態で記録紙がジャムを起こした場合、ジャム処理後には感光体表面上のトナー像がベルトに転写されることなく、そのままクリーニングされることになる。このような場合にも、多量のトナーをクリーニングする必要が出てくる。本プリンタでは、多量のトナーをクリーニングする必要が生じた際に、上述した交流電圧の周波数を高くしたり電位値を大きくしたりすることで、多量のトナーを効率よくクリーニングすることができる。
本プリンタにおけるクリーニングブラシ102Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・起毛材質:導電性ポリエステル
・起毛原糸抵抗:108[Ω・cm]
・植毛密度:10[万本/inch2]
・起毛長さ:5[mm]
・電気的接続:フロート
また、回収ローラ105Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・ローラ材質:ステンレス
・ローラ直径:10[mm]
また、スクレーパ106Yの諸設定値の一例は次の通りである。
回収ローラ105Yに対する当接角度:20[°]
回収ローラに対する喰い込み量:1[mm]
材質:ポリウレタンゴム
また、回収ローラ105Yに印加する交流電圧の諸設定値の一例は次の通りである。
交流成分のVp-p電圧:1.2[kV]
交流成分の周波数:200[Hz]
直流成分の電圧:−150[V]
これまで、Y用のクリーニング装置100Yについて説明してきたが、他色(C,M,K)用のクリーニング装置はY用のものと同様の構成になっている。
また、像担持体としてドラム状の感光体を用いた例について説明したが、他の形状の像担持体を用いても、本発明の適用が可能である。例えば、無端ベルト状の感光体をクリーニングするクリーニング装置にも、本発明の適用が可能である。また、像担持体たる中間転写ベルト21をクリーニングするベルトクリーニング装置にも、本発明の適用が可能である。中間転写体の電気的特性(体積抵抗率、表面抵抗率など)、厚さ、構造(単層、二層、それ以上の複層)、材料、材質等は、作像条件などにより適切なものを種々選択して採用することができる。
近年の画像形成装置では、感光体表面を負極性に一様帯電せしめ且つ負帯電性トナーを用いるいわゆる反転現像方式が主流になっているが、正極性トナーを用いる反転現像方式や、負又は正極性トナーを用いる正転現像方式でも、本発明の適用が可能である。
次に、実施形態に係るプリンタにおける一部構成を他の構成に変更した各変形例のプリンタについて説明する。
[第1変形例]
図4は、第1変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、像担持体たる感光体を1つだけ備えている。この感光体2の回りには、クリーニング装置100、除電手段3、帯電ローラ4、光書込装置5、4つの現像装置6Y,C,M,Kが配設されている。
4つの現像装置6Y,C,M,Kはぞれぞれ、図示しない移動機構によって個別に往復移動せしめられる。具体的には、自らの現像ローラを感光体2Yに接触又は近接させる現像位置と、これよりも感光体2Yから遠ざかる待避位置との間を往復移動せしめられる。そして、現像位置にあるものだけが、感光体2Y上の静電潜像を現像する。
除電手段3、帯電ローラ4、光書込装置5の構成は、実施形態に係る作像プロセス部1Yのものと同様である。
感光体2表面には、まず、Y用の静電潜像が形成され、これはY用の現像装置6YによってYトナー像に現像される。そして、中間転写ベルト21に1次転写される。以降、中間転写ベルト21が3周分無端移動する間に、感光体2表面にC,M,Kトナー像が順次形成され、中間転写ベルト21上のYトナー像に順次重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に4色トナー像が形成される。
中間転写ベルト21の下方に配設された2次転写ローラ25は、図示しない接離機構によってベルトに対して接離するようになっている。そして、中間転写ベルト21上が複数周回に渡って無端移動してベルト表面にY,C,M,Kトナー像が順次重ね合わせられる工程においては、2次転写ローラ25はベルト表面から離間している。その後、重ね合わせ転写によってベルト表面に4色トナー像が形成されると、2次転写ローラ25がベルトに当接して2次転写ニップを形成する。そして、この2次転写ニップにおいて、ベルト表面上の4色トナー像が記録紙Pに一括2次転写される。
[第2変形例]
第2変形例に係るプリンタでは、Y,C,M,K用の各色の作像プロセス部がそれぞれ、作像プロセス部を構成する各種部材を1つのユニットとして共通のケーシングに支持しており、プリンタ本体に対して一体的に着脱されるプロセスユニットになっている。
図5は、本プリンタにおけるY用のプロセスユニット201Yを示す概略構成図である。このプロセスユニット201Yは、共通の支持体たるケーシングで、感光体2Y、クリーニング装置100Y、除電手段3Y、帯電ローラ4Y、現像装置6Yを支持している。プロセスユニット201Y内には、光書込装置が配設されていない。その代わりに、各色のプロセスユニットにおけるそれぞれの感光体を個別に光走査することが可能な図示しない光書込ユニットが、各色のプロセスユニットの上方に配設されている。この光書込ユニットは、レーザー光を発するレーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種ミラーを有する周知の光学系により、各色用のレーザー光Lを発する。発せられたレーザー光Lは、プロセスユニットのケーシングに設けられた開口部を通った後に感光体表面に至る。
クリーニング装置100Y、除電手段3Y、帯電ローラ4Y、現像装置6Yの構成は、実施形態に係るプリンタにおけるY用の作像プロセス部のものと同様である。
[第3変形例]
図6は、第3変形例に係るプリンタにおけるY用のクリーニング装置100Yと、その周囲構成とを示す拡大構成図である。同図において、クリーニング装置100Yは、クリーニング部材たるクリーニングローラ108Y、掻き取りブレード109Y、放電ローラ110Y、搬送コイル107Yなどを有している。
クリーニングローラ108Yは、ローラ部両端面からそれぞれ突出する軸部材を有しており、この軸部材がクリーニング装置100Yのケーシングの両側板に設けられた保持体たる図示しない軸受に回転自在に支持されることで、回転可能になっている。そして、ローラ部の周面を感光体2Yに当接させてクリーニングニップを形成しながら、その表面をニップ内で感光体2Yと同方向に移動させるように図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される。クリーニングニップ内では、クリーニングローラ108Yのローラ部の表面が、感光体2Y表面と線速差をもって移動する。
クリーニングローラ108Yのローラ部としては、ブラシローラにチューブを被覆したもの、ゴムからなるもの、ゴムにチューブを被覆したもの、エラストマー樹脂からなるもの、エラストマー樹脂にチューブを被覆したもの、ポリウレタン樹脂からなるもの、ポリウレタン樹脂にチューブを被覆したものなどを例示することができる。何れの場合であっても、ローラ部の表面が高抵抗を発揮する材料からなるか、あるいは、絶縁性表面の下側に金属等の導電性に優れた材料が位置しているか、のどちらかである必要がある。また、ローラ部の表面には、感光体2Y表面との密着性を高める狙いから、弾性変形可能な材料を使用することが望ましい。
掻き取りブレード109Yは、実施形態に係るプリンタのスクレーパ(106Y)と同様に一端側が片持ち支持されている。そして、自由端側を、クリーニングニップ通過後のクリーニングローラ108Y表面に当接させている。掻き取りブレード109Yとしては、実施形態に係るプリンタのスクレーパと同様の構成のものを用いることが可能である。
放電ローラ110Yは、掻き取りブレード109Yとの当接部を通過した後、クリーニングニップに進入する前のクリーニングローラ108Yに当接して放電ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。また、放電ローラ110Yには、高圧電源回路101Y等からなる交流電圧印加手段により、上述した交流電圧が印加される。かかる放電ローラ110Yとしては、実施形態に係るプリンタの回収ローラ(105Y)と同様の構成のものを使用することが可能である。
以上の構成において、上述の放電ニップ内やその出入口では、放電ローラ110Yとクリーニングローラ108Yとの間で放電が起こることにより、クリーニングローラ108Yの表面に、正電荷を保持する正電荷保持領域と、負電荷を保持する負電荷保持領域との両方が形成される。そして、これら正電荷保持領域及び負電荷保持領域がクリーニングニップに進入することにより、感光体2Y表面の正規極性トナー粒子や逆帯電トナー粒子が感光体2Y表面からクリーニングローラ108Yに静電転移する。そして、クリーニングローラ108Yの回転に伴って掻き取りブレード109Yとの当接位置を通過する際に、ローラ表面から掻き落とされる。この後、搬送コイル107Yによって搬送されて、クリーニング装置100Y外に排出される。
かかる構成において、クリーニングローラ108Yは、クリーニングブラシとは異なり、可撓性の起毛(103Y)の永久変形によるクリーニング性能の低下を回避することができる。但し、クリーニングブラシは、起毛で保持した電荷による静電転移方式のクリーニングに加えて、ブラシの掻き取り機能による掻き取り方式のクリーニングを行うことができるのに対し、クリーニングローラ108Yは静電転移方式のクリーニングのみしか行うことができない。
本プリンタにおけるクリーニングローラ108Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・表面層を形成する被覆チューブの材質:絶縁性PFAチューブ
・被覆チューブの厚み:15[μm]
・ローラ基体:ステンレスローラ
・電気的接続:フロート
また、放電ローラ110Yに印加する交流電圧の諸設定値の一例は次の通りである。
交流成分のVp-p電圧:1.4[kV]
交流成分の周波数:200[Hz]
直流成分の電圧:−100[V]
[第4変形例]
図7は、第4変形例に係るプリンタにおけるY用のクリーニング装置100Yと、その周囲構成とを示す拡大構成図である。電極部材として板状の電極板111Yを有する点、及び、スクレーパ(106Y)を有していない点、の2点が実施形態に係るプリンタと異なっている。
一端側が片持ち支持される電極板111Yは、自由端側を所定の食い込み量でクリーニングブラシ102Yのブラシ部に食い込ませるように配設されている。そして、高圧電源回路101Y等からなる交流電圧印加手段により、上述の交流電圧が印加される。電極板111Yとしては、金属板からなるもの、導電性樹脂からなるもの、導電性ゴムからなるもの等を例示することができる。
クリーニングブラシ102Yの複数の起毛103Yは、回転軸部材104Yの回転に伴って電極板111Yとの当接位置までくると、電極板111Yとの間の放電によって正電荷や負電荷を保持するようになる。また、先端部だけを電極板111Yに当接させてその回転が一時的に阻止されるのに対し、根元側の回転を継続させることで、一時的に大きく撓む。そして、根元側の回転継続がある程度進行させると、先端側を電極板111Yから離間させて、真っ直ぐな姿勢に一気に復元する。このときの復元による先端側の高速移動により、いわゆるフリッカー効果を生じせしめて、毛表面に付着しているトナーを良好に払い落とすことができる。
本プリンタにおけるクリーニングブラシ102Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・起毛材質:導電性ポリエステル
・起毛原糸抵抗:108[Ω・cm]
・植毛密度:10[万本/inch2]
・起毛長さ:5[mm]
・電気的接続:フロート
また、電極板111Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・材質:導電性ポリエチレンテレフタレート
・厚み:200[μm]
・ブラシに対する喰い込み量1[mm]
また、電極板111Yに印加する交流電圧の諸設定値の一例は次の通りである。
・交流成分のVp-p電圧:1.0[kV]
・交流成分の周波数:200[Hz]
・直流成分の電圧:−150[V]
[第5変形例]
図8は、第5変形例に係るプリンタのY用のクリーニング装置100Yと、その周囲構成とを示す拡大構成図である。電極部材として、電極板(111Y)の代わりに、糸状の細線ワイヤー112Yを有している点が、第4変形例のクリーニング装置と異なっている。
細線ワイヤー112Yは、クリーニングブラシ102Yの回転軸線方向に延在する姿勢で、両端部が図示しないケーシング側板に固定されることで、同方向に所定のテンションをもって張架されている。そして、クリーニングブラシ102Yのブラシ部に対して、自らの径方向の全域を食い込ませながら、高圧電源回路101Y等からなる交流電圧印加手段によって上述の交流電圧が印加される。
かかる構成の細線ワイヤー112Yは、その周方向の全領域において、起毛103Yとの間の放電を生起させる。このため、起毛103Yの先端部にくまなく電荷を保持させて、電極板よりも起毛103Yの電荷保持率を高めることができる。また、電極板と同様に、フリッカー効果によって起毛103Yの表面からトナーを払い落とすことができる。
細線ワイヤー112Yの材質としては、モリブデン、ステンレススチール、導電性ナイロンなどを例示することができる。細線ワイヤー112Yを複数本設けてもよい。
本プリンタにおけるクリーニングブラシ102Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・起毛材質:導電性ポリエステル
・起毛原糸抵抗:108[Ω・cm]
・植毛密度:10[万本/inch2]
・起毛長さ:5[mm]
・電気的接続:フロート
また、細線ワイヤー112Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・材質:タングステン
・直径、80[μm]
また、細線ワイヤー112Yに印加する交流電圧の諸設定値の一例は次の通りである。
・交流成分のVp-p電圧:6.0[kV]
・交流成分の周波数:200[Hz]
・直流成分の電圧:−50[V]
[第6変形例]
図9は、第6変形例に係るプリンタにおけるY用のクリーニング装置100Yと、その周囲構成とを示す拡大構成図である。細線ワイヤー112Yよりもブラシ回転方向上流側でブラシに食い込んでいる板状部材113Yを有する点が、第5変形例と異なっている。片持ち支持される板状部材113Yは、第5変形例における電極板(111Y)と同様に、自由端側をブラシに食い込ませており、フリッカー効果により、起毛103Yに付着しているトナーを払い落とすことができる。板状部材113Yによるフリッカー効果と、細線ワイヤー112Yによるフリッカー効果とにより、起毛103Yからのトナーの除去をより確実にすることができる。
本プリンタにおけるクリーニングブラシ102Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・起毛材質:導電性ポリエステル
・起毛原糸抵抗:108[Ω・cm]
・植毛密度:10[万本/inch2]
・起毛長さ:5[mm]
・電気的接続:フロート
また、細線ワイヤー112Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・材質:タングステン
・直径:80[μm]
また、板状部材113Yの諸設定値の一例は次の通りである。
・材質:絶縁性ポリエチレンテレフタレート
・厚み:200[μm]
・ブラシに対する喰い込み量:1[mm]
また、細線ワイヤー112Yに印加する交流電圧の諸設定値の一例は次の通りである。
・交流成分のVp-p電圧:6.0[kV]
・交流成分の周波数:200[Hz]
・直流成分の電圧:−50[V]
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。
[第1実施例]
図10は、第1実施例に係るプリンタにおけるY用のクリーニング装置100Yと、その周囲構成とを示す拡大構成図である。このクリーニング装置100は、実施形態にかかるプリンタのものと同様の構成に加えて、クリーニングブレード114Yを有している。
クリーニングブレード114Yは、ブラケットによって片持ち支持されており、自由端側を感光体2Y表面に当接させている。感光体2Y表面は、クリーニングブラシ102Yによるクリーニング位置を通過した後、クリーニングブレード114Yによるクリーニング位置に進入する。そして、クリーニングブラシ102Yで除去し切れなかった転写残トナーがクリーニングブレード114Yによって掻き落とされる。
クリーニングブレード114Yは、弾性材料中に研磨剤粒子を含有する材料からなる研磨剤粒子含有層が被覆された研磨用ブレードになっている。感光体2Y表面には、転写残トナーの他に、トナーから脱離した無機微粒子、トナーから滲み出したワックス等の添加剤、記録紙の紙紛に含まれる炭酸カルシウムなどの異物が付着している。これらの異物は、除去されないまま放置されると、感光体2Y表面上でフィルミングを起こしたり、核からやがて塊にまで成長したりする。クリーニングブラシ102Yはこれらの異物を除去することができないが、クリーニングブレード114Yは、上述した研磨剤粒子含有層の削り取り機能によってこれらの異物を除去することが可能である。
クリーニングブレード114Yの研磨剤粒子含有層については、感光体2Yとの接触面を研磨剤粒子で満たし得るように形成することが重要である。接触面における研磨剤粒子の体積占有率を40%以上90%以下にするように、研磨剤粒子の添加量や分散状態を調整することが望ましい。体積占有率が40%未満では、感光体2Y表面に接触する研磨剤粒子の量が不足して、感光体2Y上のフィルミング成長を十分に阻止することができなくなる。また、体積占有率が90%を超えると層表面から突出している研磨剤粒子を剥がれ落ちやすくするため好ましくない。
ブレード表面側に、研磨剤粒子含有層に加えて、ブレード母体層を設けるとより効果的である。研磨剤粒子含有層だけを形成する場合には、弾性材料に研磨剤粒子を混合して遠心成形によりシート状に成形し、それを切断することによって研磨剤粒子含有層を得ることができる。一方、ブレード母体層も形成する場合には、研磨剤粒子含有層だけの場合よりも弾性材料や研磨剤粒子の量を減らして薄いシートを成形し、それを切断して研磨剤粒子含有層からなる薄いフィルムを得る。そして、それを、ゴム、樹脂、金属等の材質からなるブレード母体層に接着する。あるいは、研磨剤粒子を含有せしめて成形した薄いシートの上に、ブレード母体層を形成する樹脂や金属等の材料を流し込み、遠心成形によって一体のシート状に成形して、その後切断してもよい。
クリーニングブレード114Yに用いる弾性材料としては、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム等を例示することができる。この中でも、耐摩耗性の観点から特にウレタンゴムが好ましい。また、弾性材料としては、ゴム硬度が65度以上95度以下の上記のゴム材料がよい。硬度が65度より小さいとブレードの摩耗の進行が早く、また、硬度が95度より大きいとブレードのエッジが欠けやすくなるからである。より好ましくは、ゴム硬度は85度以上95度以下である。ゴム硬度を85度以上にすることで、研磨用ブレードと被研磨面との接触面積を減らし、これにより面圧を高めて研磨力を向上させることができるからである。また、研磨剤粒子のブレードへのめり込みも防ぐことができ、高い研磨力を維持することができる。更に、弾性材料としては、動摩擦係数の低い材料であることが好ましい。例えば、表面をフッ素などで処理したウレタンゴムや、フッ素元素などを含有したウレタンゴム等を例示することができる。
なお、クリーニングブレード114Yにおいて、感光体2Yと接する先端部だけを高硬度のゴム材料としてもよい。硬度が高くない材料であっても、ブレードの裏側にマイラーなどの補強部材を接着することにより、硬度を補って研磨力を向上させることができる。また、研磨剤粒子含有層の被研磨面に対する接触の姿勢を維持することもできる。
研磨剤粒子としては、窒化珪素等の窒化物、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、マイカ、珪酸カルシウム等の珪酸塩、炭酸カルシウム、石膏等の石灰質物質、炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化アルミニウム、炭化ジルコニウム等の炭化物、酸化セリウム、酸化クロム、酸化チタン、酸化アルミニウム等の酸化物を例示することができる。この中でも、研磨力に優れている酸化セリウムが好ましい。
これらの研磨剤粒子は、平均粒径及び種類の異なる複数の粒子を混合して用いるのが良い。このように異なる研磨剤粒子を混合することで、それぞれの研磨力の違いを利用することができ、感光体2Y上の付着物質の中でも性質の異なる物質、例えば、薄いフィルミングと、微小な付着物質が核となって経時的に成長した塊のような異質の付着物質を、効率よく除去することができる。
また、研磨剤粒子含有層には、純度80%以上の酸化セリウムを含有させるとよい。酸化セリウムは研磨力に優れているが、通常、天然鉱石を砕いて製造しているため、純度は50%程度と低く、その他の希土類も研磨力を発揮する塩の形にして混合されている。但し、これでは物性のばらつきが大きく、研磨用ブレードとしたときの研磨性能も一定にすることができない。そこで、研磨力の高い酸化セリウムのみを抽出した純度80%以上の酸化セリウムを物性のばらつきのない研磨剤として含有させるのである。これにより、クリーニングブレード114Yに対して、高い研磨力を安定して発揮させることができる。
研磨剤粒子の平均粒径は、0.05μm以上100μm以下が好ましい。平均粒径が0.05μm未満では、粒子が細かすぎ、弾性材料の中での均一な分散が困難になり、研磨用ブレードとしての研磨力が十分に得られない。また、平均粒径が100μmを超えると、研磨力が大きすぎ、感光体表面を傷つけるため好ましくない。
研磨剤粒子含有層における感光体2Yとの当接については、エッジを切削した形状とすることが好ましい。研磨剤粒子含有層のエッジの構造は、ミクロ的にみると、研磨剤粒子が露出しておらず、表面がごく薄いゴム等の弾性材料からなるスキン層で覆われている。このため、初期運転時においては、クリーニングブレード114Yの研磨効果は十分でなく、ある程度使用されることでエッジの表面が削れて研磨剤粒子が露出するようになってから、研磨効果が現れてくる。そこで、研磨剤粒子含有層における感光体2Yとの当接部を、エッジを切削した形状とするのである。これにより、研磨剤粒子を露出させて、初期運転開始時から十分な研磨効果を得ることができる。
エッジを切削した形状にしない場合には、初期運転開始時に感光体2Yの空回しを所定時間行って、エッジ表面を削ることが望ましい。これにより、初期プリント動作開始直後から、十分な研磨効果を得ることができる。
また、クリーニングブレード114Yについては、図10に示したような固定端側を自由端側よりも感光体回転方向下流側に位置させるカウンター姿勢ではなく、その逆のトレーリング姿勢で配設してもよい。この場合、カウンター姿勢よりも異物除去能力を低下させてしまうものの、カウンター姿勢で生じ易いブレードの捲れを回避することができる。トレーリング姿勢におけるブレードの感光体2Y表面に対する当接角度については、5〜25[°]にすることが好ましい。5[°]未満であると、ブレードが腹当たりになってクリープ現象を引き起こすため、長期に渡って安定した研磨機能を発揮することが困難になるからである。また、25[°]を超えるとプリントジョブ終了時における感光体2Yの逆転でブレード捲れを発生させるおそれがでてくる。
クリーニングブレード114Yの感光体2Yに対する当接圧については、10〜80[gf/cm]に設定することが望ましい。10[gf/cm]未満ではブレードと感光体との密着不良によって、クリーニング不良を引き起こすおそれがあるからである。また、80[gf/cm]を超えると感光体2Yの膜削れ量を急激に増大させて、感光体2Yの寿命を短くするからである。
クリーニングブレード114Yの硬度と当接圧との関係で得られるブレード食い込み量については、0.2〜1.5[mm]に設定することが望ましい。かかる設定により、感光体2Yの膜削れ量を過剰に増加させることなく、異物を良好に除去することができる。
クリーニングブレード114Yを常に感光体2Yに当接させていると、感光体2Y表面を過剰に削ってしまい、その寿命を縮めてしまう。そこで、必要に応じてクリーニングブレード114Yを感光体2Yに対して接離させる接離機構を設けるとよい。かかる構成では、クリーニングが必要なタイミングだけブレードを感光体2Yに当接させることで、クリーニングが不要なタイミングでもグレードを当接させ続けることによる感光体2Yの寿命低下を回避することができる。なお、プリントジョブ開始時は、クリーニングが不要なタイミング(転写残トナーを感光体に付着させていないタイミング)であるが、所定時間だけブレードを当接させるようにするとよい。これにより、異物を除去してからプリントを行って、安定した画像を得ることができる。
クリーニングブレード114Yの代わりに、回転体を使用することも可能である。例えば、金属の軸基材の周りにゴム等の弾性体層を積層し、その上に研磨剤粒子含有層を積層したものなどである。金属の軸基材の周りに発泡体層を形成し、その表面に研磨剤粒子含有層を形成してもよい。この場合、発泡体層の穴部分に対向する感光体箇所を研磨することができなくなるため、感光体軸線方向に回転体を揺動せしめる機構が必要になる。揺動せしめることで、研磨剤粒子含有層を感光体に確実に当接させることができる。発泡体層を設ける場合には、比較的弱い当接圧でも発泡体層の弾性変形によって研磨剤粒子含有層を感光体表面に十分に密着させることが可能になるため、接離機構が不要となるなどのメリットがある。
回転体については、常時回転させても、所定期間だけ回転させてもよい。通常は回転させない制御としても、回転体の研磨剤粒子含有層の表面が劣化するタイミング毎に回転動作を行うようにすれば、回転体の研磨性能を長期に渡って維持することが可能である。
[第2実施例]
本発明者らは、各色のトナーとして、粒子の形状係数SF1が100であるもの、150であるもの、160であるもの、の3種類を用意して、それぞれのトナーでテスト画像を出力した場合における感光体表面上の転写残トナー付着量を比較する実験を行った。この実験においては、各トナーでそれぞれ、感光体表面上のテスト画像に対する単位面積あたりの付着量を同等にするように、現像バイアスを適宜調整した。感光体表面上における現像直後のテスト画像に付着しているトナーを吸引治具によって採取し、その重量を測定することで、現像トナー付着量M1を求めた。また、中間転写ベルト21に1次転写されたテスト画像に付着しているトナーを吸引治具によって採取し、その重量を測定することで、転写トナー付着量M2を求めた。そして、前者から後者を減じることで、転写残トナー付着量を求めた。この結果を、図11にグラフとして示す。
グラフからわかるように、感光体上に残った転写残トナーの感光体に対する単位面積あたりの付着量である転写残トナー付着量は、形状係数SF1が100のトナーを用いた場合に最も少なくなった。形状係数SF1が大きくなるにつれて、転写残トナー付着量が増加していくのがわかる。よって、形状係数SF1の小さなトナーを用いるほど、転写残トナー付着量を少なくし得ることになる。一般に、転写残トナー付着量が少なくなるほど、クリーニング装置の負担が少なく、長寿命が図れる。このため、形状係数SF1の小さなトナーを用いるほど、クリーニング装置の長寿命化を図ることができる。そこで、第2実施例に係るプリンタでは、各色のトナーとして、粒子の形状係数SF1が100〜150であるものを用いるようになっている。こ
トナーとしては、有機溶媒中にウレア結合し得る変性されたポリエステル系樹脂を含む結着樹脂、着色剤を含有したトナー組成物を溶解或いは分散させ、水系媒体中で粒子化するとともに重付加反応させ、この分散液の溶媒を除去、洗浄、乾燥して得られたものを実験に用いた。平均円形度を大きくしたいわゆる球形トナーを得る製造として、前述した方法の他に、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等の重合法を用いても良いし、従来の粉砕法で得られたトナーを熱処理によって球形化処理してもよい。
形状係数SF1とは、球状物質における形状の丸さの割合を示す数値であり、球状物質を二次元平面状に投影してできる楕円状図形の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで割った後、100π/4を乗ずることで求めることができる。つまり、「SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4)」という公式で求めることができる。トナーからトナー粒子を無作為で100個以上抽出し、それぞれについてのSF1の平均値を、トナー粉体としてのSF1とする。
[第3実施例]
第3実施例に係るプリンタでは、各色用の感光体202Y,C,M,Kとして、それぞれ、アモルファスシリコンを含有する表面層を被覆したものを用いている。図12は、かかる構成の感光体を示す模式図である。なお、各色の感光体の構成は同じであるので、同図ではY,C,M,Kという符号を省略している。図12(a)に示す感光体202は、導電性支持体202aの上にアモルファスシリコンからなり且つ光導電性を発揮する光導電層202bが設けられている。図12(b)に示す感光体202は、導電性支持体202aの上に、アモルファスシリコンからなり且つ光導電性を発揮する光導電層202bと、アモルファスシリコン系表面層202cとが形成されている。図12(c)に示す感光体202は、導電性支持体202aの上に、アモルファスシリコンからなり且つ光導電性を発揮する光導電層202bと、アモルファスシリコン系表面層202cと、アモルファスシリコン系電荷注入阻止層202dとが形成されている。図12(d)に示す感光体202は、導電性支持体202aの上に、アモルファスシリコンからなる電荷輸送層202f及び電荷発生層202eと、アモルファスシリコン系表面層202cとが順次積層されている。これらの感光体202は、何れも表面層となる最外層がアモルファスシリコンからなるため、優れた耐久性を発揮することができる。
[第4実施例]
第4実施例に係るプリンタでは、各色の感光体として、主材中に粉末状の分散剤が分散せしめられた材料からなる表面層を被覆したものを用いている。より詳しくは、負帯電性の有機感光体であり、直径30[mm]のドラム状導電性支持体上に感光層等を設け、その上に前述の表面層を被覆している。更に詳しく説明すると、導電性支持体の上に、絶縁層である下引き層が積層され、その上に電荷発生層や電荷輸送層からなる感光層が積層され、更にその上に表面層が積層されている。
導電性支持体としては、体積抵抗が1010[Ω・cm]以下の導電性を発揮するものを用いている。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などである。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
導電性粉体を適当な結着樹脂に分散した材料を導電性支持体上に塗工して導電層を形成したものも、導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより、導電層を設けることができる。
適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前述の導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてもよい。
感光層としては、電荷発生層と電荷輸送層とを有する多層構造のものの他、一層構造のものを採用してもよい。
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層には公知の電荷発生物質を用いることが可能である。その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等を例示することができる。これらを単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
電荷発生層については、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上、あるいは下引き層上に塗布した後、乾燥することで形成することが可能である。
電荷発生層には、必要に応じて結着樹脂中に上記電荷発生物質を分散させることができる。この結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を例示することができる。結着樹脂の量は、100重量部の電荷発生物質に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加については、分散前、分散後の何れで行ってもよい。
溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等を例示することができる。特に、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒がよい。これらを単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
電荷発生層の膜厚は、0.01〜5[μm]程度が適当であり、好ましくは0.1〜2[μm]である。
電荷輸送層については、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することで形成することが可能である。必要に応じて、単独あるいは2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質を例示することができる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等を例示することができる。これらの電荷輸送物質を単独、あるいは2種以上混合して用いることが可能である。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂などを例示することができる。
電荷輸送物質の量としては、100重量部の結着樹脂に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度や応答性の点から、25[μm]以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5[μm]以上が好ましい。
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどを例示することができる。これらを単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
単層構造の感光層については、前述した電荷発生物質、電荷輸送物質及び結着樹脂等を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを導電性支持体上ないし下引き層上に塗布、乾燥することで得ることが可能である。電荷輸送物質を含有させずに、電荷発生物質と結着樹脂とによって構成してもよい。また、必要に応じて、可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
結着樹脂としては先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用することができる。100重量部の結着樹脂に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに50〜150重量部であればより好ましい。
電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して、単層構造の感光層を得てもよい。この場合における感光層の膜厚は、5〜25[μm]程度が適当である。
導電性支持体と感光層との間に、下引き層を設けてもよい。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等を例示することができる。
下引き層には、モアレ防止や残留電位の低減のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
また、下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを下引き層の材料として使用することもできる。この他、下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5[μm]が適当である。
表面層については、アモルファスシリコン等の母材に、アルミナや酸化スズ等の粉末状の分散剤を分散せしめた材料で形成する。かかる表面層は、分散剤によって優れた耐久性を発揮することができる。
[第5実施例]
第5実施例に係るプリンタは、各色の感光体としてそれぞれ、架橋型の高分子材料を含有する表面層を被覆したものを用いている。かかる高分子材料については、例えば1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成したものを例示することができる。この網目構造により、優れた耐摩耗性を発揮することができる。電気的な安定性、耐刷性、寿命等の観点から、前述した反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用すると非常に効果的である。かかるモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位を形成して、耐摩耗性を更に向上させることができる。
電荷輸送能を有する反応性モノマーとしては、同一分子中に電荷輸送性成分と加水分解性の置換基を有する珪素原子とを少なくとも1つずつ以上含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とヒドロキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とカルボキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とエポキシ基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とイソシアネート基とを含有する化合物等を例示することができる。これら反応性基を有する電荷輸送性材料を、単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
さらに好ましくは、電荷輸送能を有するモノマーとして、電気的・化学的安定性が高いこと、キャリアの移動度が速いこと等から、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーを用いるとよい。塗工時の粘度調整、架橋型電荷輸送層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能の重合性モノマー及び重合性オリゴマーを併用することもできる。これらの重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが使用可能である。
架橋型の高分子材料については、熱または光を用いて正孔輸送性化合物の重合または架橋を行う。熱によって重合反応を行う場合には、熱エネルギーのみで重合反応が進行する場合と重合開始剤が必要となる場合があるが、より低い温度で効率よく反応を進行させるためには、開始剤を添加することが好ましい。光によって重合反応を行う場合には、光として紫外線を用いることが好ましいが、光エネルギーのみで反応が進行することはごく稀であり、一般には光重合開始剤が併用される。この場合の重合開始剤とは、主には波長400nm以下の紫外線を吸収してラジカルやイオン等の活性種を生成し、重合を開始させるものである。熱及び光重合開始剤を併用することも可能である。
本第5実施例に係るプリンタにおける感光体の製造方法の一例は次の通りである。即ち、メチルトリメトキシシラン182部、ジヒドロキシメチルトリフェニルアミン40部、2−プロパノール225部、2%酢酸106部、アルミニウムトリスアセチルアセトナート1部を混合し、表面層用の塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上に塗布・乾燥し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、膜厚3μmの表面層を形成する。
本第5実施例に係るプリンタの感光体における製造方法の他の一例は次の通りである。即ち、正孔輸送性化合物(化1)を30部、アクリルモノマー(化2)及び光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)0.6部を、モノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン50部の混合溶媒中に溶解し、表面層用塗料を調製した。これをスプレーコーティング法によって電荷輸送層上に塗布し、メタルハライドランプを用いて500[mW/cm
2]の光強度で30秒間硬化させることによって、膜厚5μmの表面層を得る。
[第6実施例]
第6実施例に係るプリンタは、各色の感光体としてそれぞれ、ポリアリレート樹脂、あるいはこれを主材とする材料、からなる表面層を被覆したものを用いている。ポリアリレート樹脂としては、図13に示すA〜Yの何れかの化学式からなるものを例示することができる。かかる表面層においても、優れた耐摩耗性を発揮することができる。
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、クリーニング部材として、保持手段たる軸受に回転可能に保持される回転軸部材104Yと、これの周面に立設せしめられた複数の起毛103Yとを有するクリーニングブラシ102Yを用いている。かかる構成では、静電転移方式のクリーニングと同時に、ブラシでの掻き取りによる掻き取り方式のクリーニングを行って、クリーニング性能を高めることができる。
また、第3変形例に係るプリンタにおいては、クリーニング部材として、保持手段たる軸受に回転可能に保持されるクリーニングローラ108Yを用いている。かかる構成では、既に説明したように、クリーニングブラシ102Yとは異なり、可撓性の起毛(103Y)の永久変形によるクリーニング性能の低下を回避することができる。
また、実施形態、各変形例、各実施例に係るプリンタのクリーニング装置においては、電極部材をクリーニング部材に接触させているので、離間させる場合に比べて低い交流電圧で放電を生じせしめて、クリーニング部材に正電荷及び負電荷を保持させることができる。
また、実施形態、第3変形例、第1実施例に係るプリンタのクリーニング装置においては、電極部材として、回転可能に保持されるローラ部材(106Y、110Y)を用いている。かかる構成では、クリーニング部材からローラ部材に転移させた転写残トナーをローラの表面移動によって搬送することができる。
また、第4変形例に係るプリンタのクリーニング装置では、クリーニング部材として、クリーニングブラシ102Yを用いるとともに、電極部材として、板状の電極板111Yを用い、これをクリーニングブラシ102Yに食い込ませている。かかる構成では、既に説明したように、電極板111Yとの当接によるフリッカー効果によって起毛103Y上から転写残トナーを払い落とすことができる。
また、第5変形例や第6変形例に係るプリンタのクリーニング装置では、クリーニング部材として、クリーニングブラシ102Yを用いるとともに、電極部材として、クリーニングブラシ102Yの回転軸線方向に延在するように配設された糸状の細線ワイヤー112Yものを用い、これをクリーニングブラシ102Yに食い込ませている。かかる構成では、既に説明したように、細線ワイヤー112Yとの当接によるフリッカー効果によって起毛103Y上から転写残トナーを払い落とすことができる。更には、電極板111Yを用いる場合に比べて起毛103Yの電荷保持率を高めることもできる。