JP4834302B2 - 定速度継手用排気バルブ - Google Patents

Description

本発明は一般に定速度継手に関し、より詳しくは定速度継手用排気に関する。

定速度継手は自動車における一般的な構成部品である。通常は、定速度継手は定速度回転動作の伝達が望ましいまたは必要な場所に使用される。定速度継手の一般的な種類は、プランジング式トライポッド、固定式トライポッド、プランジング式ボール継手、固定式ボール継手である。これらの種類の継手は、前輪駆動自動車または後輪駆動自動車で使用されており、かつ後輪駆動、全輪駆動、４輪駆動自動車に存在するプロペラ・シャフトで使用されている。これらの定速度継手は、駆動軸に使用するときは一般に最後までグリース潤滑され、シーリング・ブーツによってシールされる。すなわち、定速度継手は、埃および水などの汚染物や異物が継手に入らないようにしながら、グリースを内部に保持するためにシールされる。この保護のため、定速度継手は通常その外側レースの開放端部がゴム、熱可塑性樹脂、またはシリコン材料製のシーリング・ブーツによって密閉される。外側レースの反対端部は、ディスク形継手の場合グリース・キャップとして知られるドームすなわちキャップによって一般に密閉される。モノブロック式またはステム・レース一体設計の型式のものでは、グリース・キャップは使用せず、外側レースの内部形状によってシールされる。定速度継手のこのシールと保護は、内部チャンバの汚染が継手の内部損傷や内部破壊をまねく可能性があるので必要である。さらに、一度継手の内部が潤滑されると、それで最後まで潤滑される。

動作中、定速度継手は継手の内部チャンバに内部圧力を発生させる。継手の動作中に発生し、ブーツを破壊する可能性のある圧力蓄積を防止するために、これらの圧力を大気へ排出しなければならない。圧力蓄積を危険な状態に到達するまで放置した場合は、継手を汚染物や水から保護しているブーツは、クラックが入ったり、劣化したり、または破裂し、その結果そのシール能力を失うことがある。一般的に言って、定速度継手は通常小さな孔をグリース・キャップの一般に中央に置くかまたは少なくとも１個の孔を外側レースの外周の周りに置くことによって排気させている。これらの従来のガス排気方法は、定速度継手が静止状態にあり回転していない場合は、その潤滑グリースが排気孔に溜まり、内部ガス圧力を排気させる機能を阻害し妨害する可能性があるので、時には適切ではない。さらに、排気孔は、定速度継手が回転中すなわち動的な状態でも、潤滑グリースによって閉塞される可能性がある。さらに、グリースが排気孔と通じている場合は、潤滑グリースが外部環境に追い出され、または排出される可能性がある。この種の排気孔は汚染物の侵入も許す可能性がある。排気孔が閉塞された場合は、内部圧力は蓄積し、ブーツが破裂したりまたは他の破局的事態に起因して継手シールが破れる可能性がある。さらに、長時間運転した後、定速度継手は、現行の排気孔を通して排出される高圧に加えて非常に高温になる。したがって、定速度継手が水浸しになったり、はねかけられたり、または水または他の汚染物に浸漬された場合は、温度差によって生じる真空によって、または重力によって、水が定速度継手チャンバ内に吸い込まれ、その結果、グリース潤滑材が汚染され、定速度継手の寿命を低下させる。したがって、排気孔を通って水や他の汚染物が入り、また継手グリースが出て行くと、定速度継手の耐用年数を低下させる。

したがって、この分野では、汚染物が入るのを排除し、継手グリースが出るのを防止しながら内部ガス圧の蓄積を防止し、継手グリースによる詰まりまたは閉塞を受けにくい排気通路を提供する、定速度継手用排気バルブが求められている。またそれに加えて、圧力差が逆転したときに、継手に外部の汚染物が入らないようにしながら、定速度継手チャンバ内に空気を拡散または浸透させて戻す定速度継手用排気バルブが求められている。

本発明は、内部の継手空洞と継手グリースを内部過圧や外部汚染物から保護する定速度継手用排気バルブを提供する。本発明は、外部汚染物から保護しながら、膨張する内部ガスを外部環境へ排気することができる。本発明による排気バルブは、自浄式であり耐閉塞性がある。本発明による排気バルブは、内部圧力を解放する開口した排気通路を保持しながら、グリースが内部空洞から漏れるのを防止する。本排気バルブはまたガス透過性があり、外部汚染物が継手に入らないようにしながら、外部ガスまたは空気を定速度継手チャンバ内に入れ、圧力を均一化することができる。

本発明はまた、継手内部チャンバと連通する排気開口部を有する定速度継手を備える、排気する定速度継手システムを開示する。この排気開口部は継手に（例えば、グリース・キャップ内に）直接設けることもでき、あるいは、例えばモノブロック設計で通常使用される排気プレートなど、継手の適切な任意の構成部品に設けることもできる。本システムはさらに、前記排気開口部内に取り付ることができる排気バルブを含む。本排気バルブは、本体と少なくとも１つの直線的排気または平坦部とを備え、この少なくとも１つの直線的排気が逃げ通路を形成する。本体は、第１端部と第２端部を含み、第２端部は可撓性保持キャップである。動作においては、この可撓性保持キャップが直線的排気を覆い、通常の閉鎖位置で継手を外部汚染物からシールする。継手空洞内で生じる内部圧力に応答して、保持キャップが開いて直線的開口部を露出させ、定速度継手チャンバ内部から外部環境へ逃げ通路を通って空気が漏れることができるようにする。この直線的排気が、グリースを排気開口部から取り除くことによって、グリースが逃げ通路を閉塞することを防止する。この直線的排気が、定速度継手の回転によって生ずる遠心力の作用の下で、グリースを排気バルブの本体の第１の端部の環状リップの最外面へ移動させ、あるいは完全にそこから取り除く。

本排気バルブの閉塞を防止する自浄という特質に加え、本排気バルブ自体の透過性という特質がある。排気バルブがガス透過性材料で作られているときは、冷却または継手内の内部圧力の低下に際し、排気バルブはガスを再導入し定速度継手チャンバ内に戻すことができる。透過性材料であるので、水または他の汚染物が入らないようにしながら、ガスを定速度継手チャンバ内に入れることができる。透過性材料であるので、排気バルブに残された残留グリースを取り除き、部分的に定速度継手チャンバ内に戻すこともできる。透過性材料であるので、排気バルブへのグリースの堆積をさらに減らすことができる。透過性材料であるので、ガスがその中を通過するときに、排気バルブの内部表面からグリースを引き離し、離脱させる。

本発明の他の利点および特徴はまた、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を読み、添付の図面を参照することによって、明らかになるであろう。

本発明のより完全な理解のために、添付の図面により詳細に図示し本発明の例として以下に説明する実施形態を参照されたい。

図面を参照すると、本発明による排気バルブを含む定速度継手１０が示されている。モノブロック式、デスク式、ルゼッパ（Rzeppa）式など任意の型式を有する、プランジング式トライポッド、固定式トライポッド等など任意の種類の定速度継手が、本発明の排気バルブと組み合わせて使用できることに注意されたい。本発明による排気バルブは、グリースが排気バルブを閉塞するのを防止し、定速度継手チャンバを外部環境と圧力均衡させるように加圧するのを可能とする、継手を排気させる新規な改良された方法を提供する。

図１は本発明の排気バルブを有利に使用することができる、全輪駆動自動車の動力伝達系統の平面図である。図１に示す動力伝達系統１２は、典型的な全輪駆動自動車動力伝達系統である。ただし、後輪駆動のみの自動車、前輪駆動のみの自動車、全輪駆動自動車および４輪駆動自動車を含めて、排気式定速度継手を使用する他の自動車の動力伝達系統も、本発明の排気バルブによって改良されることに注意されたい。この例では、動力伝達系統１２はトランスミッション１６に連結されたエンジン１４および動力取出し装置１８を含む。前部差動装置２０は、各々が車輪と連結され車輪に動力を伝達する、右手側半軸２２および左手側半軸２４を有している。右手側半軸２２と左手側半軸２４の両端に定速度継手１０がある。プロペラ・シャフト２６が、前部差動装置２０を後部差動装置２８に連結する。後部差動装置２８は、後部右手側半軸３０と後部左手側半軸３２を有し、その端部の各々はその一端で車輪を有している。定速度継手１０が半軸の両端に位置し、車輪と後部差動装置２８に連結している。図１に示すプロペラ・シャフト２６は、複数のカルダン継手３４と１個の高速定速度継手１０を含む３部片構成のプロペラ・シャフトである。定速度継手１０は、車輪の方向転換、サスペンションの上昇または低下に起因して車輪またはプロペラ・シャフト２６の角度が変化しても、プロペラ・シャフト２６を介して動力を車輪に伝達する。定速度継手１０は、プランジング式トライポッド、十字溝継手（cross groove joint）、固定継手（fixed joint）、固定式トライポッド継手（fixed tripod joint）または二重オフセット継手（double off set joint）などを含めて、周知の標準的な種類のものならどれでもよい。これらはすべて、当分野で周知の異なる種類の定速度継手１０を表す術語である。定速度継手１０は、自動車の半軸およびプロペラ・シャフトの両方で、日常の自動車の運転でみられる角度で、定速度の伝達が可能である。

図２に本発明の一実施形態による排気弁を有する例示的な定速度継手の断面を示す。定速度継手１０は、モノブロック型式の固定定速度継手であり、一般に全輪駆動自動車のプロペラ・シャフト２６に使用される。本発明は他の任意の種類の定速度継手にも使用できることに注意されたい。外側レース３６の内壁３８が、一般に定速度継手チャンバ４０を形成している。内側レース４２が、外側レース３６内に位置しまたは格納されている。内側レース４２は、自動車の駆動軸またはプロペラ・シャフト２６に連結される。ボールまたはローラ要素４６が、内側レース４２の外側表面と外側レース３６の内壁３８の間に位置している。ボール４６は、外側レース３６と内側レース４２の間でケージ４８によって所定の位置に保持されている。外側レース３６が回転すると、内側レース４２が同速度または定速度で回転させられ、したがって、定速度がこの継手を介して、所定の固定した角度まで傾斜させられてプロペラ・シャフト２６と動力取出し装置１８の間を伝わることができる。定速度継手１０は、この傾斜が変化するのを許容する。何故なら、ボール４６は回転することができ、外側レース３６と内側レース４２の軌道構造内を移動することによって、シャフト間の傾斜の差があっても補償することができるからである。

スナップ・リング保持器５０が内側レース４２の内側表面に位置しており、プロペラ・シャフト２６を内側レース４２に連結させている。ブーツ・カバー５２が、外側レース３６の外側表面に連結されている。ブーツ・カバー５２の一端は、ブーツ・カバー５２の全周に沿って延びているチャネル５４を有している。ブーツ５６がその一端でブーツ・カバー５２のチャネル５４内に固定されており、も他方の端部は駆動軸２６と係合し、ブーツ・クランプ５８によって所定の場所に保持されている。ブーツ５６は、水、埃、道路の汚れなどの外側汚染物があってもそれらから定速度継手１０をシールする。ブーツ５６の設計は、通常の駆動動作中に遭遇する可能性のある、プロペラ・シャフトまたは半軸がどんな傾き角度になっても、そのシール境界面が保てるようになっている。

外側レース３６の内側表面は、第１の肩部６０と第２の肩部６２を備えている。第１の肩部６０は、第１のプラグまたはカバー６４を含み、外側レース３６とチャンバ４０をトランスミッション・オイルまたはトランスミッションの汚染物からシールしている。外側レースの第２の肩部６２に接触して、排気プレートまたはカバー６６がある。これは好ましい実施形態では金属製であるが、定速度継手１０の要求と設計要件に応じて、セラミック、または硬質プラスチックや他の金属複合材料など他の任意の種類で製造することができる。排気プレート６６は、その中央または中央近くに位置する排気開口部すなわちオリフィス６８を含み、その排気開口部に定速度継手１０内で排気バルブ７０を固定することができる。第１のプラグ６４と排気プレート６６は、定速度継手１０の外側レース３６によって形成された第１のチャンバ４０に隣接する第２のチャンバ７２を形成する。第２のオリフィス７５が、第２のチャンバ７２を雰囲気または外部環境に排気させるために、外側レースを通って設けられている。これがあるため、ガスが排気プレートまたは第２のプラグ６６を通り抜け、外側レース表面を貫通する第２のオリフィス７５を通って大気中に排気されることが可能になる。排気プレート６６のオリフィスの内部に、第２のチャンバ７２内の第１のプラグ６４に隣接して、本発明による排気バルブ７０がある。排気バルブ７０は、直線的排気または平坦領域排気８０を有する。直線的排気８０は、遠心力の作用の下で、排気バルブ７０の内部から、または完全にそこから継手グリースを離脱させまたはスピンさせることによって、注入液または継手グリースによる閉塞を防止し排気通路をきれいにする。

図３は、本発明の一実施形態による排気バルブを有する、別の例示的な定速度継手を示す。この定速度継手１０は、ディスク・タイプの固定式定速度継手であり、一般に全輪駆動または前輪駆動自動車の半軸に使用される。定速度継手１０は外側レース３６を含み、その円周内に内側レース４２がある。外側レース３６の内壁３８は一般に定速度継手チャンバ４０を形成している。内側レース４２はシャフト４４に連結される。ボール４６が外側レース３６の内側表面と内側レース４２の外側表面の両方とに接触している。ボール４６はケージ４８によって所定の位置に保持される。外側レース３６の一端にはエンドキャップ４７が位置している。エンドキャップ４７は、排気開口部またはオリフィス６８をその中央部または中央部近くに含む。シール５１がエンドキャップ４７と外側レース３６の間に位置している。外側レース３６の外側表面は、２本のチャネル５５、５７を有する。第１のチャネル５５は、エンドキャップ４７の一端を受け、エンドキャップを外側レース３６に圧着させることができる。外側レース３６の反対側端部には、ブーツ・カバー５２が位置し、外側レース表面の第２のチャネル５７内に圧着している。ブーツ・カバー５２は、その周辺にチャネル５４を含む。チャネル５４の中にはネオプレン材料製のブーツ５６の１端があるが、ブーツには任意の他の種類の軟質ゴム状材料または複合材料も使用できることを理解されたい。ブーツ５６の反対側端部は、ブーツ・クランプ５８または他の使用可能な固定方法によってシャフト４４に固定されている。複数の固定具５９が、外側レース３６を定速度継手１０の本体に保持するために使用される。

この実施形態のエンドキャップ４７は金属製であるが、定速度継手１０の要求または設計上の要件によっては、他の任意の種類のセラミック、硬質プラスチック、他の金属複合材料製でもよい。エンドキャップ４７は、その中央または中央の近くに位置する排気開口部またはオリフィス６８を含み、その排気開口部によって定速度継手１０内で排気バルブ７０の固定が可能となる。排気バルブ７０によって、ガスが排気開口部６８を通り抜け、定速度継手チャンバ４０から大気中へ移動することができる。エンドキャップ４７の排気開口部６８内に、本発明による排気バルブ７０が位置している。排気バルブ７０は、直線的排気または平坦領域排気８０を有する。直線的排気８０は、遠心力の作用の下で、排気バルブ７０の内部からまたは完全にそこから継手グリースを離脱させまたはスピンさせることによって、注入液または継手グリースによる閉塞を防止し排気通路をきれいにする。

図３の排気バルブ７０を受けるための排気開口部６８を有するエンドキャップ４７は、図２の排気バルブ７０を受けるための排気開口部６８を有する排気プレート６６と同じ機能を果たす。本排気バルブを受けるための排気開口部を有する他の実施形態もまた、本発明の範囲に含まれる。

図４は、本発明の一実施形態による排気の断面図を示す。図２におけるような、定速度継手内の排気プレート６６は、排気バルブ７０を受けるようになされた排気開口部６８を備えている。排気プレート６６は、定速度継手の排気の適用要件に応じて、適切な任意の寸法または形状でよい。排気プレート６６は、排気バルブ７０を好ましくない接触から保護するのに十分な深さを有する凹部またはオフセット６７を有している。または、排気プレート６６は、排気バルブを本質的に何も保護しない平面状（図示せず）でもよい。しかしながら図示の実施形態では、図２に示すように、排気プレート６６は、第２の肩部６２と定速度継手１０の凹部６７に配設されるようになされた環状部材を含む。

図３、４を参照すると最もよく分かるように、エンドキャップ４７または排気プレート６６は、キャップ４７またはプレート６６の端部表面に形成された凹部またはオフセット６７を含む。したがって、排気プレート６６またはエンドキャップ４７は、可撓性保持キャップ７６が、排気プレート６６またはキャップ４７の最外表面１０２に対して軸方向に凹んでいるように形成させることができる。この例では、凹部６７は、最外表面１０２と端部表面１０４の間が第１の距離Ｄ₁になるように形成され、この凹部に、排気バルブ７０を受けるための排気開口部６８を含む。凹部６７によって、可撓性保持キャップ７６の最外表面１０６がキャップ４７またはプレート６６の最外表面１０２に、またはその下に位置することが可能となる。すなわち、距離Ｄ₂はゼロよりも大きいかまたは同じとなる。この特徴によって、排気バルブ７０が望ましくない接触から保護され、それによって排気バルブ７０が押しのけられまたは傷つけられるのが防止される。凹部６７の半径Ｒ₁はまた、可撓性保持キャップ７６の縁１０３によって形成される半径Ｒ₂よりも少なくとも少し大きい。このようにすると、排気バルブ７０をエンドキャップ４７または排気プレート６６の端部表面１０２から凹んだ保護ポケット内に位置決めすることができる。

図４、５を参照すると、排気バルブ７０は、第１の端部８４および第２の端部８６と、両端部の間を延び逃げ通路７８を形成する少なくとも１つの直線的排気８０とを有する本体８２を備える。排気バルブ７０は、本体８２の第１の端部８４と少なくとも１つの直線的排気８０とに隣接して配設された可撓性保持キャップ７６を含む。保持キャップ７６は、必ずしもその必要はないが、排気バルブ７０が排気プレート６６に配設されたとき、排気開口部６８の領域を越え、それを覆う表面積を有する雨傘形であることが好ましい。

少なくとも１つの直線的排気８０は、それが逃げ通路７８を形成する限り、適切な任意の寸法または形状でよい。直線的排気８０は一般に、排気バルブ７０の本体８２の外表面８８に軸方向に形成された平坦部である。より具体的には、直線的排気８０は、必ずしもその必要はないが、本体８２の外表面８８に位置する第１の端部８４と第２の端部８６の間に作られた軸方向線と整合する勾配を有し、接線方向に位置する単一の平らな面であることが好ましい。この好ましい実施形態における直線的排気８０の勾配は、第１の端部８４と第２の端部８６の間に形成される軸方向線に対して平行でよい。しかしながら、図７に示す別の実施形態では、この勾配は、直線的排気８１が軸方向線に対して平行ではなく、例えば、直線的排気８１が傾いているようにすることもできる。直線的排気８０、８１が本体８２の外表面８８上で互いに交差し、または別々に存在する複数の平面を含むことができる。

排気バルブ７０にしなやかな材料を使用すると、可撓性保持キャップ７６を完全に密閉にすることができ、したがって、可撓性保持キャップが簡単に開口し、存在する高圧ガスを大気中に出すことをできるようにしながら、定速度継手チャンバ４０内への汚染物の侵入を防止することができる。

本体８２は、排気バルブ７０が排気開口部６８内に圧入され、そこに保持されるように、排気開口部６８の表面積を十分に越える表面積（または直径）を有する環状の係合表面９２と環状のリップ９４を形成する環状のチャネル９０をさらに含む。特に、係合表面９２は、排気開口部６８の内壁９６と接触し、環状リップ９４の上表面９８によって保持される。排気バルブ７０は、熱可塑性のエラストマ、フッ化シリコン、ゴムなどの実質的に剛体の、しかし、しなやかなある材料から製造される。排気バルブ７０は、単一の材料から作ってもよいし、または非透過性、あるいはガス透過性特性を有する材料の組合せから作ってもよい。ガス透過性材料の一例はナイロンまたは伸張四フッ化ポリエチレン重合体であり、非親油性重合体によって飽和されて排気バルブ７０を通る加圧ガスの通過が可能な障壁を作り出す。

動作においては、図４により詳しく示すように、保持キャップ７６は通常の閉位置にあり、逃げ通路７８を覆い、定速度継手チャンバ４０、より詳しくは排気開口部６８を、継手の動作を妨害する可能性のある外部汚染物からシールする機能を果たす。グリースの気化、高温動作温度などによって定速度継手チャンバ内に生じる内部圧力に応答して、保持キャップ７６は図６に示すように開き（例えば、外側に膨らみ）、逃げ通路７８を外部圧力（一般にはより低い大気圧状態）に露出させる。これによって、空気が定速度継手チャンバ４０から逃げ通路７８を通って外部大気中へ逃げ、その結果、継手の過圧力状態を取り除くことができる。一旦、過圧力状態が定速度継手チャンバ４０から取り除かれると、可撓性保持キャップは排気プレート６６の内壁９６に接して着座し、定速度継手チャンバを水または他の望ましくない汚染物からシールする。

排気バルブ７０の材料は、非透過性ものまたはガス透過性もの、またはそれらの任意の組合せでもよい。非透過性排気バルブ７０は、チャンバ４０が排気バルブ７０が排気する外部環境よりも低い圧力になったときでも、ガスを定速度継手チャンバ４０内に戻さない。ガス透過性材料、またはそれらの組合せは、外部と内部圧力の間で圧力不均衡が存在するとき、定速度継手チャンバ４０の再加圧を可能とする。ガス透過性材料は、圧力均衡をもたらすためチャンバ内にガスを戻しながら、水または他の汚染物は入れないという追加の効果を有する。さらに、ガスがガス透過性材料を通って拡散するときは、ガスは排気バルブ７０の本体８２の第１の端部８４の内部部分からグリースを拭き取り引き離す。透過性材料は、圧力差がより頻繁に逆転するプランジング・タイプの定速度継手には理想的である。

図７は、遠心力で排気孔からグリースを移動させる、回転モードにある本発明の排気バルブの概略図を示す。直線的排気は、その独特の特徴によりグリースの漏れを防止または最小限に抑える。排気バルブ７０は、直線的排気または平坦領域排気８０を有する。直線的排気８０は、遠心力の作用の下で排気バルブ７０の内部から、または完全にそこから継手グリースを離脱させ、またはスピンさせることによって注入液または継手グリースによる閉塞を防止し、排気通路をきれいにする。静止状態では、継手グリースは、排気バルブ７０の本体８２の可撓性保持キャップ７６の保持力によって、定速度継手チャンバ４０内に保持される。動的な状態では、排気バルブ７０は定速度継手１０によって矢印９９の方向に回転させられる。排気バルブ７０の回転またはスピンによって、グリースに作用しグリースを外側に排気バルブ７０の第１の端部８４の環状リップ９４に向かって移動させる遠心力が生じる。逃げ通路７８を狭めまたは封鎖する直線的排気８０上のグリースは、回転と逆方向に働く遠心力によって、矢印９７の方向に、環状リップ９４に向かって移動し、リップに到達する。他の実施形態では、逃げ通路７８からグリースを取り除ききれいにする結果をもたらすグリースの移動は、回転９９と同一方向とすることもできる。グリースは、直線的排気８０と環状リップ９４から定速度継手チャンバ４０内に排出して戻され、逃げ通路７８は、継手グリースを外部環境に放出することなく、チャンバ４０から過圧ガスを自由に排気できる。複数の直線的排気８０、８１があってもよい。

図８は、本発明による排気バルブの断面図を示す。排気バルブ７０は、定速度継手に使用されるものであり、本体８２と可撓性保持キャップ７６を備える。本体８２は、円筒状の外部表面８８と、第１の端部８４と、第２の端部８６とを有し、少なくとも１つの直線的排気８０が外部表面８８に位置し、第１の端部８４から、第１の端部８４と第２の端部８６との間に延びる。外側表面８８は、第１の端部８４に隣接する環状リップ９４と、その環状リップ９４と第２の端部８６の間に位置する環状チャネル９０と、環状リップ９４上に位置し環状チャネル９０に向かう環状係合表面９２とを有する。排気通路７８は、少なくとも１つの直線的排気８０と環状チャネル９０によって形成される。

可撓性保持キャップ７６が、本体８２の環状チャネル９０と第２の端部８６の間に配設されている。可撓性保持キャップ７６は、雨傘形であり、環状チャネル９０を覆う。保持キャップは環状リップ９４より大きく、環状リップ９４は環状チャネル９０より大きい。少なくとも１つの直線的排気８０が、回転力の作用の下で排気バルブ７０を自己清掃するようになされている。排気バルブ７０は、通常は閉じており、排気プレート６６を可撓性保持キャップ７６と環状係合表面９２の間でシールする排気通路７８を有している。

本発明をいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれる可能性のある全ての代替形態、改変形態および均等物を含むものとする。

本発明の排気バルブを有利に使用することができる、全輪駆動自動車の動力伝達系統の平面図である。 本発明の実施形態による排気バルブを有する、例示的な定速度継手の断面図である。 本発明の実施形態による排気バルブを有する、別の例示的な定速度継手の断面図である。 本発明の一実施形態による排気の断面図である。 図４の排気バルブの等角投影図である。 内部過圧状態に応答して開位置になった、本発明の排気バルブの詳細の概略図である。 遠心力で排気口からグリースを移動させる、回転モードにおける本発明の排気バルブの概略図である。 本発明による排気バルブの断面図である。

符号の説明

１０ 定速度継手、２６ プロペラ・シャフト、３６ 外側レース、４０ チャンバ、４２ 内側レース、４４ シャフト、４６ ボール、４７ エンドキャップ、５２ ブーツ・カバー、５６ ブーツ、６６ 排気プレート（カバー）、６７ 凹部、６８ 排気開口部（オリフィス）、７０ 排気バルブ、７６ 保持キャップ、７８ 逃げ通路、８０ 直線的排気（平坦部、平坦領域排気）、８２ 本体、８４ 第１の端部、８６ 第２の端部、８８ 本体の外表面、９４ 環状リップ

Claims (20)

1. 第１の端部と第２の端部と、それらの間に延びる少なくとも１つの直線状排気とを有する本体と、
   前記本体の前記第１の端部と前記少なくとも１つの直線状排気とに隣接して配設された可撓性保持キャップとを備え、前記直線状排気は回転力の作用の下で排気バルブを自己清掃を行い、且つ前記本体および前記可撓性保持キャップがガス透過性であることを特徴とする排気バルブ。
2. 前記本体および前記可撓性保持キャップが柔軟性を有する材料製であることを特徴とする請求項１に記載の排気バルブ。
3. 前記本体および前記可撓性保持キャップがフッ化シリコン材料製であることを特徴とする請求項１に記載の排気バルブ。
4. 前記少なくとも１つの直線状排気が１つの平坦部であることを特徴とする請求項１に記載の排気バルブ。
5. 前記少なくとも１つの直線的排気が前記本体に沿って延びる傾斜部を有することを特徴とする請求項１に記載の排気バルブ。
6. 前記可撓性保持キャップが傘形状であることを特徴とする請求項１に記載の排気バルブ。
7. 前記本体および前記可撓性保持キャップが四フッ化ポリエチレン重合体製であることを特徴とする請求項１に記載の排気バルブ。
8. 互いに交差する２つの平坦部を備えることを特徴とする請求項４に記載の排気バルブ。
9. 内部チャンバと前記継手チャンバと連通する排気開口部を形成する排気プレートとを有する定速度継手と、前記排気開口部に取り付けられた排気バルブとから構成され；
   前記排気バルブは、第１の端部と第２の端部と、それらの間に延びる少なくとも１つの直線的排気とを有する本体と、
   前記本体の前記第１の端部と前記少なくとも１つの直線的排気とに隣接して配設された可撓性保持キャップとを備え、前記直線的排気は回転力の作用の下で前記排気バルブを自己清掃するようになされた定速度継手を備え、
   前記本体および前記可撓性保持キャップがガス透過性であることを特徴とする定速度継手排気システム。
10. 前記可撓性保持キャップが、前記排気開口部より大きな表面積を有することを特徴とする請求項９に記載の定速度継手排気システム。
11. 前記排気プレートが、オフセットまたは凹部を有することを特徴とする請求項９に記載の定速度継手排気システム。
12. 前記本体および前記可撓性保持キャップが、フッ化シリコン材料製であることを特徴とする請求項９に記載の定速度継手排気システム。
13. 前記少なくとも１つの直線的排気が１つの平坦部であることを特徴とする請求項９に記載の定速度継手排気システム。
14. 前記少なくとも１つの直線的排気が前記本体に沿って延び、軸方向に傾斜している請求項９に記載の定速度継手排気システム。
15. 前記可撓性保持キャップが傘形状であることを特徴とする請求項９に記載の定速度継手排気システム。
16. 前記可撓性保持キャップが前記排気プレートの最外表面に対して軸方向に凹むように前記排気プレートが形成されることを特徴とする請求項９に記載の定速度継手排気システム。
17. 凹部またはオフセットが、前記可撓性保持キャップの最外表面が前記排気プレートの前記最外表面にまたはその下に位置するように、前記排気開口部を含む前記排気プレートの最外表面と前記排気プレートの端部表面の間で第１の距離Ｄ1を有することを特徴とする請求項１１に記載の定速度継手排気システム。
18. 前記凹部またはオフセットが、前記排気開口部から半径方向に、前記可撓性保持キャップの最外半径方向縁より大きく延びることを特徴とする請求項１１に記載の定速度継手排気システム。
19. 前記凹部またはオフセットが、前記排気開口部から半径方向に、前記可撓性保持キャップの最外半径方向縁より大きく延びることを特徴とする請求項１７に記載の定速度継手排気システム。
20. 円筒状の外表面と、第１の端部と、第２の端部を有する本体と、
    前記外表面に形成され、前記第１の端部から第２の端部に延びる少なくとも１つの直線状排気であって、前記外表面は前記第１の端部に隣接して位置する環状リップと、その環状リップと前記第２の端部の間に位置する環状チャネルと、前記環状リップ上に位置し前記環状チャネルに向かう環状係合部とを有し、排気通路が前記少なくとも１つの直線状排気と前記環状チャネルによって形成される直線状排気と、
    前記本体の前記環状チャネルと前記第２の端部の間に形成され、前記環状チャネルを覆う雨傘形であり、前記環状チャネルより大きな外周を有する前記環状リップより大きな外周を有する可撓性保持キャップとを有し、
    前記少なくとも１つの直線状排気が、回転力の作用の下で排気バルブを自己清掃するようにされ、前記本体および前記可撓性保持キャップがガス透過性であることを特徴とする定速度継手に使用する排気バルブ。

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