JP4831980B2 - セルロースエステルフィルム、偏光板、液晶表示装置、およびセルロースエステルフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献3には、セルロースエステルと架橋ポリマーとのセミIPN(半相互貫
入型網目構造)型ポリマーアロイを有してなる透明フィルムが開示されている。しかしながら、特許文献3に開示された技術は、架橋ポリマーとして、重合性不飽和二重結合を有する低分子化合物を、光重合させることによって得られるものであるが、当該低分子化合物は毒性および揮散性が大きく、製造工程で汚染が発生することが懸念される。また、前記光重合は大掛かりな製造装置が必要であり、現状の製造設備を大きく変更しなければならない場合もある。さらに光重合は、厚い乾燥膜に光を照射するため、酸素を絶つ等の設備を設置したとしても重合は極めて難しく、残モノマー等の問題が十分予測できる。なお特許文献3には、本発明に使用される高分子化促進剤については記載がない。
本発明の別の目的は、該セルロースエステルフィルムを用いて構成される偏光板および液晶表示装置を提供することである。
(1)セルロースエステル、少なくとも1種のエポキシ化合物および少なくとも1種の高分子化促進剤を含有する溶液を流延後、70℃以上にて加熱処理して得られたセルロースエステルフィルムであって、該セルロースエステルが実質的に3次元架橋されておらず、
該エポキシ化合物が、下記一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される化合物から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
(3)セルロースエステルのアシル置換度が2.9以上3.0以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のセルロースエステルフィルム。
(4)該セルロースエステルが、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、またはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムを偏光子の保護層として用いたことを特徴とする偏光板。
(6)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム、または前記(5)の偏光板のいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
(7)セルロースエステル、少なくとも1種のエポキシ化合物および少なくとも1種の高分子化促進剤を含有する溶液を支持体上に流延しドープ膜を得る工程、及び該ドープ膜を70℃以上にて加熱処理する工程を含むセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
該セルロースエステルが実質的に3次元架橋されておらず、
該エポキシ化合物が、下記一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される化合物から選ばれた少なくとも1種である、セルロースエステルフィルムの製造方法。
(式中、R 1 、R 2 、R 3 は、それぞれ独立して、アルキル基またはハロゲン原子を表し、L 1 、L 2 は2価の脂肪族の有機基を表す。また、Mは酸素または窒素原子、Aはm価の連結基を表す。a,b,cは0〜4の整数、x,yは0〜20の実数、lは1または2、mは2〜4の整数を表す。)
また本発明によれば、該セルロースエステルフィルムを用いて構成される偏光板および液晶表示装置が提供される。
まず、上記一般式(I)、(II)、(III)または(IV)で示されるエポキシ化合物についてより詳しく説明する。
一般式(I)、(II)、(IV)において、L1、L2としては例えば、
高分子化促進剤は、エポキシ化合物の高分子化(または、架橋)反応を促進させ、かつ、セルロースエステルを実質的に3次元架橋させない化合物である。高分子化促進剤は、それ自身がエポキシ化合物と縮合反応等を起こしたり、触媒として働き、エポキシ化合物同士の反応を促進することで、セルロースエステル中に、網目構造を形成させる。高分子化促進剤としては、置換もしくは無置換のアミン類、イミダゾール類、メルカプタン類、酸無水物類、ポリアミド樹脂、有機酸ヒドラジド等が挙げられるが、中でも、アミン誘導体、酸無水物及びイミダゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
好ましい具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
H−16 無水マレイン酸
H−17 無水フタル酸
H−18 無水メチルナジック酸
H−19 無水コハク酸
本発明においては、二官能のアミン誘導体がセルロースエステルを架橋せずに網目構造を作るという点で最も好ましい。
なお、セルロースエステルにおける3次元架橋の有無は、非架橋のセルロースエステルを溶解する溶媒、例えば、塩化メチレンに浸漬し、セルロースエステルが溶解するかどうかで判定することができる。また本発明でいう「セルロースエステルが、実質的に3次元架橋されていない」とは、セルロースエステル中に存在する水酸基(置換度3.0の場合は、未反応の水酸基は存在しない)の架橋されている割合が5%以下を言う。好ましくは、3%以下、最も好ましくは1%以下である。セルロースエステル中に存在する水酸基の架橋されている割合は、NMRにてOH基を検出する方法により算出することができる。
また、高分子化促進剤の使用量は、使用するエポキシ化合物の質量に対し、好ましくは1%〜100%、より好ましくは5%〜50%、さらに好ましくは10%〜40%である。
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、またはセルロースアセテートブチレートが好ましい。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サ
ンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチル−フェノール《チヌビン(TINUVIN)171》、2−オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物《チヌビン(TINUVIN)109》、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2イル)−4−メチル−6−tert−ブチル−フェノール《チヌビン(TINUVIN)326》等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。また、上記のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン326等チヌビンは何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の市販品で、好ましく使用出来る。
2、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
であることがより好ましく、400〜1200g/m2・24hであることが特に好ましい。1800g/m2・24hを越えると、フィルムの正面レターデーションRe値、膜厚方向のレターデーションRth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、本発明のセルロースエステルフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。このセルロースエステルフィルムや光学補償フィルムが液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースエステルフィルムの透湿度が200g/m2・24h未満では、偏光子の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースエステルフィルムにより粘着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求めた。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースエステルフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求めた。
〔光学補償フィルム〕
本発明のセルロースエステルフィルムは、様々な用途で用いることができ、特に液晶表示装置の光学補償フィルムに用いると効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
光学異方性層として液晶性化合物を含有してなる光学異方性層を用いる場合、液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物又は棒状液晶性化合物が好ましい。
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献[C.Destradeらの"Mol.Crysr.Liq.Cryst.",71巻,p.111(1981年);日本化学会編「季刊化学総説」第22号「液晶の化学」第5章、第10章第2節(1994年);B.Kohneらの"Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.",p.1794(1985年);J.Zhangらの"J.Am.Chem.Soc.",116巻,p.2655(1994年)]に記載の化合物が含まれる。
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
本発明における光学異方性層は、ポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなど)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル及びセルロースエステル(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテートなど)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体又はポリマー混合物を用いてもよい。
、2枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
次ぎに、本発明のセルロースエステルフィルムの偏光板への用途について説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムは、特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースエステルフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に、完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液などを用いて貼り合わせる方法がある。またアルカリ処理の代わりに、特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報などに記載されているような易接着加工を施してもよい。
示装置を提供できるからである。
[一般的な液晶表示装置の構成]
次ぎに、本発明のセルロースエステルフィルムを部材として用いた液晶表示装置について説明する。
前述のとおり、本発明のセルロースエステルフィルムは偏光板保護フィルムとして好適に用いられる。このようにして得られた偏光板を液晶表示装置に用いる場合、液晶表示装置は、2枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、及びその両側に配置された2枚の偏光板を配置し、好適には該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも1枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
本発明のセルロースエステルフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような、様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロースエステルフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
本発明のセルロースエステルフィルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体又は偏光板の保護フィルムとして用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文("Jpn.J.Appl.Phys.",36巻(1997年)p.143及びp.1068)に記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体又は偏光板の保護フィルムとして用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性化合物の分子が90〜360゜の範囲にねじられており、棒状液晶性化合物の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δn・d)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体又は偏光板の保護フィルムとして好ましく用いることができる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムのレターデーション値Reを0〜150nmとし、レターデーション値Rthを70〜400nmとすることが好ましい。レターデーション値Reは、20〜70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に2枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのレターデーション値Reは70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのレターデーション値Rthは150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
本発明のセルロースエステルフィルムは、IPSモード及びECBモードの液晶セルを有する、IPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体、又は偏光板の保護フィルムとしても好ましく用いられる。これらのモードは、黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で、液晶分子を基板面に対して平行配向させて黒表示する。好ましくは、偏光板の保護フィルムと液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体又は偏光板の保護フィルムとしても好ましく用いられる。OCB型液晶表示装置又はHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムには、レターデーションの絶対値が最小となるような方向が、光学補償フィルムの正面方向にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置又はHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質及び光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置又はHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文{"Jpn.J.Appl.Phys.",38巻(199
9年)p.2837}に記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償フィルム又は偏光板の保護フィルムにも好ましく用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有する、ASM型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体又は偏光板の保護フィルムとしても好ましく用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)らの論文{Kume et al.,"SID 98 Digest 1089",(1998年)}に記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースエステルフィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか又はそれらの全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースエステルフィルムを好ましく用いることができる。また前記した偏光板の表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくともいずれかを付与してこれらの機能性偏光板とすることもでき、該機能性偏光板は液晶表示装置に好適に用いることが出来る。
さらに本発明のセルロースエステルフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用でき、該特許に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。それらの技術については、特開2000−105445にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明のセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
本発明のセルロースエステルフィルムは液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリア性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースエステルフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースエステルフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考
えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロースエステルフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079や特開2000−227603号の各公報などに公開されている。
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
アセチル置換度2.92のセルロースアセテート 100.0質量部
トリフェニルホスフェート 8.0質量部
ビフェニルホスフェート 4.0質量部
チヌビン109 0.5質量部
チヌビン171 0.5質量部
UVT−5 0.5質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 400.0質量部
エタノール(第2溶媒) 60.0質量部
下記の組成物を分散機に投入し、撹拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
平均粒径16nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 72.4質量部
エタノール(第2溶媒) 10.8質量部
セルロースアセテート溶液A 10.3質量部
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、エポキシ化合物溶液を調製した。
エポキシ化合物I−3 20質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 68質量部
エタノール(第2溶媒) 12質量部
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、高分子化促進剤溶液を調製した。
<高分子化促進剤溶液組成>
高分子化促進剤H−4 20質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 68質量部
エタノール(第2溶媒) 12質量部
上記セルロースアセテート溶液Aを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、エポキシ化合物溶液4.2質量部、高分子化促進剤溶液2.1質量部を、それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤含量35%でフィルムをバンドから剥離し、130℃の条件でフィルムをテンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま140℃で30秒間保持した。その後、クリップを外して140℃で40分間乾燥させ(乾燥1)、セルロースエステルフィルム試料A−1を製造した。出来あがったセルロースエステルフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は92μmであった。
エポキシ化合物及び高分子化促進剤の種類、添加量を表1の内容に変更した以外は同様の方法、即ち、エポキシ溶液および高分子化促進剤溶液の種類と濃度を変え、セルロースエステルフィルムの試料A−2〜17を作製した。
更に、セルロースアセテートの代わりに、一部がセルロースプロピオネートとなったポリマーCAP(アセチル基の置換度1.9、プロピオニル基の置換度0.8)を用いた以外は試料A−2及びA−11に対応する試料B−2及びB−11を作製した。
同様にセルロースアセテートの代わりに、一部がセルロースブチレートとなったポリマーCAB(アセチル基置換度1.1、ブチリル置換度1.6)を用いた以外は試料A−2及びA−11と同じ試料C−2及びC−11を作製した。
次に、上記のセルロースアセテート溶液A組成中のトリフェニルホスフェートの代わりにレターデーション低減剤Xに置き換えた以外はA−2及びA−11と同じ試料D−2及びD−11を作製した。
また、同様に、上記のセルロースアセテート溶液A組成中のトリフェニルホスフェートの代わりにレターデーション上昇剤Yに置き換えた以外は試料A−2及びA−11と同じ試料E−2及びE−11を作製した。
また、各サンプルの弾性率を測定した。
具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用い、23℃・70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。結果を表2に示す。
実施例1で得た本発明の試料A−1を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃にて0.1Nの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗層中で洗浄し、さらに100℃で乾燥した。
このようにして、試料A−1の表面をケン化した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光子を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリけん化処理した試料A−1を2枚用意して偏光子を間にして貼り合わせ、両面が試料A−1によって保護された偏光板P1を得た。
同様にして、試料A−2〜A−17、B−2、B−11、C−2、C−11、D−2、D−11、E−2、E−11を用い、偏光版P2〜P25を作製した。
偏光板P1〜P25を65℃、95%RHの高温高湿条件化で、14日間放置し、その前後の偏光度の変化量を求めた。
Claims (8)
- セルロースエステル、少なくとも1種のエポキシ化合物および少なくとも1種の高分子化促進剤を含有する溶液を流延後、70℃以上にて加熱処理して得られたセルロースエステルフィルムであって、該セルロースエステルが実質的に3次元架橋されておらず、
該エポキシ化合物が、下記一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される化合物から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
- 該高分子化促進剤が、アミン誘導体、酸無水物及びイミダゾール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
- セルロースエステルのアシル置換度が2.9以上3.0以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースエステルフィルム。
- 該セルロースエステルが、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、またはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムを偏光子の保護層として用いたことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項5に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
- セルロースエステル、少なくとも1種のエポキシ化合物および少なくとも1種の高分子化促進剤を含有する溶液を支持体上に流延しドープ膜を得る工程、及び該ドープ膜を70℃以上にて加熱処理する工程を含むセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
該セルロースエステルが実質的に3次元架橋されておらず、
該エポキシ化合物が、下記一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される化合物から選ばれた少なくとも1種である、セルロースエステルフィルムの製造方法。
(式中、R 1 、R 2 、R 3 は、それぞれ独立して、アルキル基またはハロゲン原子を表し、L 1 、L 2 は2価の脂肪族の有機基を表す。また、Mは酸素または窒素原子、Aはm価の連結基を表す。a,b,cは0〜4の整数、x,yは0〜20の実数、lは1または2、mは2〜4の整数を表す。)
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