JP4831390B2 - 電子線描画データ作成方法、作成装置及び作成プログラム並びに電子線描画装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線描画データ作成方法、作成装置及び作成プログラム並びに電子線描画装置に関し、特に、多重描画のための電子線描画データのデータ容量を減少し、データ作成時間も短縮できる電子線描画データ作成方法、作成装置及び作成プログラム並びに電子線描画装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路の性能の向上に伴い、そのパターンの微細化が急速に進められている。電子線(electron beam:EB)を用いた露光方式は、今後必要とされる長さ0.25マイクロメータ以下の微細なパターンを形成できる点で重要な役割を有する。
【0003】
図16は、半導体集積回路の製造工程の一部を表すフロー図である。すなわち、同図は、いわゆる「マスターレチクル」などの露光マスクMを形成する工程を表す。
まず、ステップS1において半導体集積回路のレイアウトが設計され、レイアウトデータLDが生成される。レイアウトデータLDは、「CAD(computer aided design)データ」などと呼ばれることもある。次に、ステップS2においてレイアウトデータLDが変換され、電子線描画装置において用いられる描画データDDが生成される。この描画データDDが、電子線描画装置ELに入力される。一方、例えば石英などの透光性基板上にクロム(Cr)などの遮光層が積層され、さらにその上にレジスト層が形成されたマスク素材が電子線描画装置に導入される。そして、描画データDDに基づいてマスク素材のレジスト層が電子線により露光される。その後、レジスト層を現像することによりその一部を選択的に除去してレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとしてクロムなどの遮光層を選択的にエッチング除去することにより、所定のパターンが形成されたマスクMを形成することができる。
【0004】
ここで、特許文献1には、レイアウトデータと描画データとの論理演算を行うことにより描画データの検証を行う方法が開示されている。つまり、描画データにおいて生成されるパターンがCAD(computer aided design)データと同一であるか否かを調べることができる。
【0005】
さて、当初は、描画データDDにより1枚のマスクMに描画する回数は1回であった。つまり、電子線描画装置ELは、一回の電子線露光によりマスクMの表面のレジスト層に必要な電子線を照射していた。
しかしその後、マスクの高精度化の一環として、電子線の位置決め誤差の低減などを目的に、電子線描画装置で同じパターンを重ねて描画する「多重描画」が行なわれるようになった。
【0006】
図17は、多重描画を概念的に表す模式図である。
すなわち、「多重描画」とは、レジストの感光に必要な電子線の照射量を複数に分割し、それぞれの照射量で同一のパターンを重ね打ちすることで、いわゆる「平均化」による精度の向上を可能としたものである。照射量を分割した数を「多重度」と呼ぶ。
【0007】
この場合、精度の向上のために、各回の電子線照射量、最大ショットサイズを変化させることによって最適な描画条件で描画する提案がされている(特許文献2)。さらに、多重描画でのパターン寸法・接続精度向上のため、同一パターンではなく、異なる形状に分割したパターンを多重描画する手法も実現されている。
【0008】
図18は、異なる形状に分割した多重描画を表す模式図である。すなわち、同図に表した具体例の場合、2回の描画にそれぞれ対応する描画データDD1及びDD2が生成される。そして、それぞれの描画データは、描画フィールド境界FIでパターンが分割される。そして、これら描画フィールド境界FIにおけるパターンの「つなぎ目」の発生を抑制するために、描画データDD1と描画データDD2との間で、描画フィールド境界FIをずらしている。
【0009】
またさらに、単純でないパターンを台形分割処理する場合にも、微小図形の発生を考慮し、さらに平均化の効果を得るために、台形分割方向を変えることができる。
図19は、台形分割方向を変えた多重描画を表す模式図である。すなわち、レイアウトデータLDのパターンA、Bは、単純な四角形ではないため、複数の台形に分割する処理を施す必要がある。そして、この場合にも、描画データDD1と描画データDD2とで、台形分割方向を変えることにより、微小図形が発生した時にも精度の低下を抑制することができ、さらに「平均化」の効果も得られる。すなわち、図9に表した具体例の場合には、描画データDD1においては、パターンA1、B1をX方向に分割し、一方、描画データDD2においては、これらに対応するパターンA2、B2をY方向に分割している。
また、微小図形に対してのみ、形状を変化させて2重描画を行う方法も提案されている(特許文献3)。
【0010】
以上説明したように、電子線描画装置においてレジストヒーティングを避け、且つパターン精度を上げるためには、多重描画が有効である。さらにまた、描画フィールドをずらしたり、台形分割方向を変えることにより、平均化の効果が得られ、微細パターンを高い精度で形成することが可能となる。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−344302号公報
【特許文献2】
特開平9−251940号公報
【特許文献3】
特開2002−296759号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の多重描画方式においては、原則としてマスクの全パターンについて多重描画を実行していた。このため、描画データの作成時間やそのデータ量、また描画の時間が、2重描画の場合には最大で2倍、4重描画の場合には最大で4倍に増大するという問題があった。LSIの大規模化、高集積化が今後も進展することを考慮すると、このままの多重描画方式を実施しつづけることが困難になると予想される。
【0013】
また、前述した特許文献3に開示されている方法の場合、微小図形に対してのみ、形状を変形させて2重描画を行うが、そうすると、一つのパターンが、一重描画部分と多重描画部分とに分割されることとなり、変形条件の設定などが複雑であり、処理時間の増加などの問題が生ずるおそれがある。
【0014】
一方で、多重描画を実施する場合、それぞれのパターンの多重度は適正に設定されていなければならない。つまり、多重度が誤った描画データにより描画されると、電子線のドーズ量に局所的な過不足が生じてしまい、描画精度が劣化することとなる。
【0015】
ところが、従来、多重描画において、描画データのパターンの多重度を的確に検証できる方法はなかった。例えば、前述した特許文献1に開示された検証方法は、多重描画を念頭に置いたものではなく、描画データの一部のパターンまたはパターンの一部において多重度が異なる場合に対処することが容易でなかった。
【0016】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、多重描画用の描画データのデータ量を低減させ、その作成時間や描画時間も短縮するとともに、そのような描画データにおける多重度が適正に設定されているか否かを検証可能な電子線描画データ作成方法、作成装置及び作成プログラム並びに電子線描画装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によれば、被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画するための描画データを生成する電子線描画データ生成方法であって、描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換ステップと、前記データ変換ステップにより生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記描画データごとの前記カウント値を前記スライス方向における位置に対応づけて合計し、前記位置ごとの前記カウント値の合計から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証ステップと、を備えたことを特徴とする電子線描画データ生成方法が提供される。
【0018】
または、被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画するための描画データを生成する電子線描画データ生成方法であって、描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換ステップと、前記データ変換ステップにより生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記複数の描画データに含まれる前記ベクトルを同一平面に合成し、前記同一平面における前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記位置ごとの前記カウント値から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証ステップと、を備えたことを特徴とする電子線描画データ生成方法が提供される。
【0019】
または、被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画するための描画データを生成する電子線描画データ生成装置であって、描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換手段と、前記データ変換手段により生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記描画データごとの前記カウント値を前記スライス方向における位置に対応づけて合計し、前記位置ごとの前記カウント値の合計から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証手段と、を備えたことを特徴とする電子線描画データ生成装置が提供される。
【0020】
または、被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画するための描画データをコンピュータに生成させる電子線描画データ生成プログラムであって、描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換ステップと、前記データ変換ステップにより生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記描画データごとの前記カウント値を前記スライス方向における位置に対応づけて合計し、前記位置ごとの前記カウント値の合計から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする電子線描画データ生成プログラムが提供される。
【0021】
または、被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画を実施可能とした電子線描画装置であって、描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換手段と、前記データ変換手段により生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記描画データごとの前記カウント値を前記スライス方向における位置に対応づけて合計し、前記位置ごとの前記カウント値の合計から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証手段と、を有するデータ変換検証部を備え、前記データ変換検証部により生成された描画データに基づき、前記多重描画による描画を実行可能とした電子線描画装置が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態にかかる多重描画の描画データ生成方法を用いた半導体集積回路の製造工程の一部を表すフローチャートである。すなわち、同図は、いわゆる「マスターレチクル」などの露光マスクMを形成する工程を表す。
【0024】
まず、ステップS1において生成された半導体集積回路などのレイアウトデータLDが生成される。このレイアウトデータLDには、集積回路のレイアウトに対応するパターンA〜Eが形成されている。レイアウトデータLDは、ステップS2において変換され、電子線による多重描画用の描画データDD1及びDD2が生成される。
【0025】
このレイアウトデータは、ステップS2において多重描画のための描画データに変換される。ただし、本発明においては、レイアウトデータLDに含まれるパターンA〜Eの全てが多重化されるとは限らない。例えば、図1に例示した具体例の場合、レイアウトデータLDのパターンA及びDに対応するパターンは、描画データDD1にのみパターンa、dとして形成され、描画データDD2には形成されない。つまり、パターンA及びEは、多重化されず、一回の露光によって描画される。パターンが単純な形状で高精度を要求されず、また、描画フィールド境界FIによって分割されないような場合には、このように一回の露光により描画することが可能である。このように、単純なパターンを多重化しなければ、描画データ量を低減し、描画データの生成時間や電子線の露光時間を短縮することができる。
【0026】
またこの場合、例えば多重度が「4」すなわち4回に分けて露光するような時には1回で露光せず、2回に分けて露光してもよい。つまり、多重化を実施しないのではなく、多重度を下げる。このようにしても、データ量の低減などの効果を得ることができる。
【0027】
また一方、レイアウトデータのパターンBを見ると、描画データDD1とDD2において、分割形態が同一である。つまり、パターンBは、四角形などの単純な形状ではなく、辺長や面積などの条件により多重化が必要であるが、図1に例示した如くX方向に2分割すると微小図形などが発生しないため、描画データDD1とDD2とおいて、同一の方向に分割され、同一の図形に分割されている。
【0028】
このような場合には、描画データDD1とDD2とに同一の分割図形を出力できるので、データを圧縮することができる。圧縮の方法としては、当業者に公知の各種のデータ圧縮方法を用いることができる。その最も簡単なものは、データを共通化し引用する方法である。つまり、描画データDD2のパターンb2を実行するとき、描画データDD1のパターンb1のデータを引用することにより、パターンBに対応する描画データ量をほぼ半減することも可能である。
また、描画データのフォーマットは電子線描画装置によって異なり、そのフォーマットに応じて各種の圧縮をすることも可能である。そのひとつの方法として、「モーダル化」がある。モーダル化によれば、例えば、「図形種」、「XY座標」、「幅」、「高さ」、「ドーズ量」の順にデータが配列されている。そして、これらの図形毎に、これらのパラメータのうちで同一のものを省略し、異なるもののみを記述すればよい。例えば、「長方形」、「X座標値」、「Y座標値」、「幅」、「高さ」、「ドーズ量」のパラメータで指定された図形の次に、ドーズ量のみがこれらと異なり、他のパラメータが同一の図形を描画するような場合には、「ドーズ量」のみを記述すればよい。
また、「繰り返し法」という方法もある。これは、同じ形状・寸法の図形を等間隔で繰り返し配置する場合に、例えば、「図形種(例えば、長方形)」、「始点のX座標値」、「始点のY座標値」、「幅」、「高さ」、「ドーズ量」、「X方向の配列ピッチ」、「Y方向の配列ピッチ」、「X方向の繰り返し数」、「Y方向の繰り返し数」の如くパラメータを列挙することにより記述することができる。
これら、「モーダル化」や「繰り返し法」のいずれも、本発明における圧縮方法として用いることが可能である。
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、レイアウトデータLDに含まれるパターンのうちで、多重化が必要なもののみについて多重化し、また、多重化した場合でも、描画データを適宜圧縮することにより、描画データのデータ量を低減し、データ生成速度及び露光時間を短縮することができる。
【0030】
また、本発明においては、レイアウトデータLDのパターン(あるいはそのパターンを分割した図形)毎に多重化の有無やデータ圧縮の有無を区別できるので、データ変換処理が無用に複雑化せず、迅速なデータ変換処理を確保することができる。
【0031】
このようにして生成された描画データは、次に、ステップS3において検証される。すなわち、本発明においては、描画データにおいて、パターン(図形)毎に多重度が異なる場合がある。そこで、ステップS3においては、パターン(図形)毎に、設定されている多重度を調べ、その多重度に対応して電子線のドーズ量が適正に設定されているか否かを検証する。また、多重化されている場合には、その分割処理などが適正に実施されているか否かを検証する。
【0032】
このようにして検証された描画データDDは、電子線描画装置ELに入力される。電子線描画装置ELは、生成された描画データに従って、圧縮されたデータを展開し、電子線ドーズ量を調整し、描画フィールド境界を適宜移動させつつ、マスク素材に多重描画パターンを描画する。
【0033】
以下、ステップS2において実行されるデータ変換処理についてさらに詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態にかかるデータ変換処理S2の具体例を表すフローチャートである。
【0034】
すなわちまず、ステップS202においてレイアウトデータLDを入力する。次に、ステップS204において、レイアウトデータLDについて所定の図形演算を実行する。図形演算によって、レイアウトデータLDに含まれているそれぞれのパターン(例えば、パターンA〜E)を認識する。そして、必要があれば、これらパターンについて、スケーリングやサイジングなどの処理を実行する。
【0035】
次に、図形演算で得られた各パターン(または分割された図形)について、ステップS206において、多重描画の要否判定を行う。その判定条件としては、例えば、各パターン(図形)の形状や最小幅、面積を用いることができる。例えば、各パターンの最小幅が所定値以下の場合には多重化を実施する、というように判定することができる。これら判定条件は、電子線描画装置の特性や描画プロセスの条件などに応じて適宜決定することができる。
【0036】
多重描画が不要であると判定されたパターンについては、露光を一度だけにするため、多重描画するパターンに比べて電子線のドーズ量を多くする必要がある。そこで、ステップS220に進み、ドーズ量の変更の処理を行う。
【0037】
一方、多重描画が必要と判定されたパターンについては、ステップS208に進み、描画フィールド境界FIと交差するか否かの判定を行う。
【0038】
パターンが描画フィールド境界FIと交差する場合(ステップS208:yes)には、描画フィールド境界FIが変化(移動)するとパターンの分割形状も変化するため、圧縮表現を使って出力することができない。そこで、ステップS214及びステップS216に進み、X方向の台形分割処理(ステップS214)とY方向の台形分割処理(ステップS216)をそれぞれ実行する。
【0039】
一方、パターンが描画フィールド境界FIと交差しない場合(ステップS208:no)は、ステップS210に進み、仮台形分割処理を実行する。そしてさらに、仮台形分割の結果について、ステップS212において微小図形の有無の判定を実行する。
【0040】
仮台形分割によって微小図形が発生している場合(ステップS212:yes)は、多重描画により異なる分割図形を描画して精度の向上を図ることが望ましい。そこで、ステップS214及びステップS216に進み、X方向の台形分割処理(ステップS214)とY方向の台形分割処理(ステップS216)をそれぞれ実行する。
【0041】
一方、仮台形分割によって微小図形が発生していない場合(ステップS212:no)は、同じ分割図形を多重に出力することができる。そこで、ステップS218に進み、描画データの圧縮表現を利用した多重出力を行う。圧縮の方法は、前述したように、データ引用をはじめとして各種の圧縮方法を用いることができる。
【0042】
なお、ステップS212における微小図形の判定条件としては、分割された図形の幅、高さや隣接図形の有無などを挙げることができ、描画装置の特性や描画プロセス条件などに応じて適宜決定することができる。
【0043】
選択したパターンについて、以上説明した流れに基づいて描画データへの変換が終了したら、ステップS222に進み、処理すべきパターンの有無を判定する。処理すべきパターンがある場合(ステップS222:yes)は、ステップS206に戻り、そのパターンについて多重描画の要否を判定する。一方、処理すべきパターンがない場合(ステップS222:no)には、全てのパターンに対して、上述の変換処理が終了しているので、ステップS224に進み、各台形分割パターンなどを合成し、描画データに変換し、出力する処理を実行する。
【0044】
このようにして生成された描画データは電子線描画装置に入力され、その描画データにしたがって、圧縮データの展開、電子線のドーズ量の調整、描画フィールド境界FIの移動などを行いながら、マスク素材に多重描画パターンが描画される。
【0045】
図3は、ステップS2のデータ変換処理によってレイアウトデータから変換された描画データを例示する模式図である。
すなわち、レイアウトデータLDは、多重度が「2」の多重描画を実施するための、描画データDD1及びDD2に変換されている。ここで、レイアウトデータLDには、大文字のアルファベットA〜Eにより分類される各種のパターンが設けられている。
【0046】
これらのうちで、パターンA及びパターンBは、四角形などの単純な形状であり、そのサイズも多重化が必要なほど小さくない。そこで、これらのパターンは、多重化することなく、描画データDD1及びDD2のいずれかのみに生成することができる。この時、パターンAは、描画データDD1にパターンaとして生成され、一方、パターンBは、描画データDD2にパターンbとして生成される。
【0047】
パターンbが描画データDD2に生成される理由は、描画フィールド境界FIと交差しないようにするためである。つまり、描画データDD1とDD2とでは、描画フィールド境界FIが異なる位置に形成されている。そこで、描画フィールド境界FIと交差しないように、パターンをいずれかの描画データに生成することができる。このようにして描画フィールド境界FIと交差しないように生成すれば、パターンを多重化する必要がなくなり、データ量を低下させることができる。
【0048】
なお、これらパターンa、bは、一度の露光により形成されるのであるから、後に説明する多重化されたパターンよりも電子線のドーズ量を高くするように、データが設定される。
【0049】
次に、レイアウトデータLDにおけるパターンCは、描画データDD1及びDD2において、それぞれパターンc1、c2として分割して生成されている。ただし、これら分割パターンは、多重化されていないので、やはり描画データのデータ量を低下させることができる。パターンc2が描画データDD2に生成される理由は、やはり描画フィールド境界FIと交差しないようにするためである。
【0050】
そして、これらパターンc1、c2も、それぞれ一度の露光により形成されるのであるから、後に説明する多重化されたパターンよりも電子線のドーズ量を高くするように、データが設定される。
【0051】
次に、レイアウトデータにおけるパターンDは、台形分割する必要はないのであるが、多重化され、描画データDD1とDD2とにそれぞれd1、d2として生成されている。これは、これらパターンDは、描画データDD1とDD2のいずれにおいても、描画フィールド境界FIをまたいでしまうからである。これらパターンd1、d2は、多重化され、2回の露光で形成されるので、その電子線ドーズ量は、パターンa、b、c1及びc2よりも低く設定される。
【0052】
最後に、レイアウトデータLDにおけるパターンEは、多重化され、描画データDD1、DD2にそれぞれパターンe1、e2として生成されている。これらパターンe1、e2は、台形分割され、さらに微小図形が発生しているので、描画データDD1においてはX方向に分割され、描画データDD2においてはY方向に分割されている。これらパターンe1、e2も2回の露光で形成されるので、その電子線ドーズ量は、パターンd1、d2と同様に低く設定される。
【0053】
以上説明したように、本具体例においても、多重描画するパターンを限定することにより、描画図形数を削減できている。すなわち、本具体例のパターンの場合、全てのパターンを多重描画する場合と比較すると、描画図形数は、178図形から147図形にまで削減されている。その結果として、描画データのデータ量を低下させ、変換時間を短縮し、露光時間も短縮することができる。
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、多重描画のための描画データを生成するにあたって、多重化が必要であるか否かをパターン毎に判定し、不要であると判定したパターンについては、多重化せずに一回の露光で処理するデータを生成する。また、多重化が必要な場合であっても、データの圧縮を実施することにより、データ量を低下させることができる。
その結果として、描画データのデータ量が低下すると同時に、データの生成に必要なCPUパワーやメモリ容量などのリソースが少なくて済む。従って、比較的小型のコンピュータを用いて迅速な検証を実施することが可能となる。
【0055】
次に、ステップS3において実施されるデータ検証プロセスについて詳細に説明する。
図4は、ステップS3におけるデータ検証プロセスのフローチャートである。
【0056】
すなわちまず、ステップS302において描画データDD(DD1、DD2)を入力し、ステップS304において、パターン毎に多重度の計算を行う。この計算の結果に基づき、ステップS306において、多重化の有無を判定する。
計算により得られた多重度が、例えば所定値の半分(例えば、「1」)の場合は「多重無」と判定し、ステップS314に進む。ステップS314においては、パターン寸法が所定のサイズより大きく、電子線のドーズ量の設定値が多重無パターン用となっていることを確認する。つまり、図1に例示したパターンA、Dように、多重化が不要なサイズを有することや、一回の露光により確実に描画されるように電子線のドーズ量が高い値に設定されていることを確認する。
【0057】
一方、例えば、ステップS304の計算によって多重度が「2」とされた場合には、ステップS306において、「多重有」と判定される。これは、例えば、図1に例示したパターンB、C及びDに対応する。この場合には、ステップS308に進み、微小図形の有無が判定される。
【0058】
微小図形が「無」と判定された場合は、ステップS312に進み、同じ形状のパターンが多重に出力され、圧縮表現されていることを確認する。これは、例えば、図1に例示したパターンBに対応する。つまり、分割形態が同一の場合に、適正に圧縮処理されているか否かを確認する。
【0059】
一方、ステップS308において、微小図形が「有」と判定された場合は、ステップS310に進み、分割形状の異なるパターンが重なっていることを確認する。これは、例えば、図1に例示したパターンEに対応する。
【0060】
以上の処理を全てのパターンに対して行うことにより、多重描画データに対する検証が実行される。
【0061】
次に、多重描画データの検証の中で行われるパターン多重度計算(ステップS304)のプロセスについて説明する。
【0062】
図5は、ステップS304におけるアルゴリズムを例示するフローチャートである。以下、このプロセスについて、最も簡単な具体例として、図19に例示した描画データの一部を参照しつつ説明する。
【0063】
図6乃至図10は、本具体例の多重度計算方法を説明するための概念図である。 すなわち、図6(a)及び(b)は、それぞれ図19に表した描画データDD1、DD2を表す模式図である。以下、これら描画データDD1、DD2により多重化されて表現されているパターンP1、P2について本形態の検証方法を実施する具体例について説明する。
【0064】
まず、図5にステップS304Aにおいて、入力した描画データをパターン毎に分割する。例えば、図6に例示した描画データの場合、パターン(例えば、P1、P2など)毎に分割してもよく、またさらに、それぞれパターンを複数の図形(例えば、P3、P4など)に分割してもよい。
【0065】
次に、ステップS304Bにおいて、分割されたパターンまたは図形をベクトル化する。例えば、描画データDD1、DD2に含まれるパターンP1、P2について説明すると、図7(a)及び(b)に例示した如く、その輪郭に沿って一方向に環流するベクトルを生成する。図7においては、右回り(時計回り)にベクトル化した具体例を表したが、これとは逆に左回り(反時計回り)にベクトル化してもよい。
【0066】
次に、ステップS304Cにおいて、スライス上をカウントする。すなわち、ベクトル化されたパターンを所定の方向にスライスし、そのスライスと交差するベクトルをカウントする。カウント方法は、例えば、交差するベクトルのX成分が負の場合をプラス1、正の場合をマイナス1、と決めておく。
【0067】
図8(a)及び(b)は、ベクトル化されたパターンP1、P2をY方向にスライスし、カウントする場合を例示する概念図である。
また、図9(a)及び(b)は、それぞれパターンP1、P2に関して得られるカウントの変化を表すグラフ図である。
矢印Yの方向にスライスした場合、初期値をゼロとすれば、まず座標Y1においてパターンP1、P2の輪郭のベクトルと交差し、カウントはプラス1に上昇する。そして座標Y2においてパターンP1、P2を通過する際に、輪郭のベクトルと交差してゼロに戻る。
【0068】
このようにしてそれぞれの描画データにおいてパターンをカウントしたら、次に、ステップS304Dにおいて、カウントを合成する。すなわち、多重化された描画データ(例えば、データDD1とDD2)に含まれるパターン毎(例えば、パターンP1やP2)に、カウントを合成する。
図10は、図9(a)及び(b)に表されたカウントを合成した結果を表すグラフ図である。すなわち、パターンP1のカウントとパターンP2のカウントとを合成すると、図10に表したように重複部のカウント数は「2」となる。この合成したカウント数が「多重度」すなわち、多重描画における重ね打ちの回数に対応する。このようにして多重度が得られたステップS304Eにおいて、その結果を出力する。
【0069】
以上説明したように、本具体例によれば、多重化された描画データに含まれるパターンの輪郭をベクトル化し、スライスに沿ってそのベクトルをカウントするという簡潔且つ明快な手法によって多重描画におけるパターンの多重度を計算できる。ベクトル化やカウントのプロセスに必要とされるリソースは比較的小さくて済む。このため、CPUパワーの消費も少なく、小型のコンピュータを用いても高速に処理することが可能となり、スループットやコストの点でも有利である。
【0070】
また、図5においては、複数の描画データDD1、DD2にそれぞれ含まれるパターンについてベクトル化、カウントを実行した後に、それらカウントを合成するプロセスを例示したが、本発明はこれには限定されない。
【0071】
これ以外にも、例えば、図11に例示した如く、各パターンをベクトル化(ステップS304B)し、それらベクトルをパターン毎に合成(ステップS304F)した後に、スライスをカウント(ステップS304C)してもよい。
【0072】
図12は、このシーケンスにより多重度の計算を実施する具体例を表す模式図である。同図においては、図1に例示した描画データDD1、DD2を表した。
以下、これら描画データに含まれるパターンa、b1、b2について多重度の計算を実施する場合について説明する。
すなわち、多重描画データDD1、DD2について、各パターンのX方向の成分を持つ辺をベクトル表現に変える。例えば、パターンの輪郭が右回りとなるように、ベクトルの向きを決定する。そして、パターン毎に、これらベクトルを合成する。パターンaに対応するパターンは、描画データDD2には含まれていないので、ベクトルは一重である。これに対して、パターンb1とb2とが対応するので、これらのベクトルを合成することにより、二重となる。
【0073】
このようにして形成されたベクトルデータについて、Y方向にスライスし、ベクトルと交差する時にカウントする。カウント方法は、前述の如く、例えばそのベクトルが右向きの場合にマイナス1、左向きの場合にプラス1とすることができる。このようにカウントすると、パターン図形が存在しない領域ではカウントは「0」であるが、図形が存在する領域では、多重度とカウントの値は常に一致する。例えば、パターンaの場合には、カウントすなわち多重度は「1」であり、パターンb1、b2の場合には、カウントすなわち多重度は「2」となる。
【0074】
このようにして、それぞれのパターンの多重度を確実且つ容易に計算することができる。
【0075】
図13は、本発明の描画データ生成方法の変型例を表すフローチャートである。同図については、図1乃至図12に関して前述したものと同様の要素、ステップには同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0076】
本変型例においては、描画データの合成・出力の前に、その検証プロセスを実施する。すなわち、X方向台形分割(ステップS214)、Y方向台形分割(ステップS216、圧縮多重出力(ステップS218)、ドーズ量変更(ステップS220)の各処理によって出力されたパターンに対して、寸法、形状確認等の検証処理(ステップS310、S312、S314)を行い、問題が無いことを確認してから、合成・出力処理(ステップS224)によって、多重描画データを生成する。
【0077】
本変型例の場合、検証プロセスにおいてパターンの多重度の計算や判定を実施する必要がなく、より迅速な処理が可能となる。
【0078】
以上説明した本発明の電子線描画データ生成方法は、例えば、コンピュータまたはそれに類似したハードウエアを有するデータ生成装置によって実施することが可能である。
【0079】
図14は、本発明の実施の形態にかかる電子線描画データ生成装置の外観を例示する模式図である。すなわち、この生成装置80の本体は、CPU(central processing unit)とメモリを内蔵した計算手段と、ディスプレイなどの表示手段と、を適宜備えている。さらに、ハードディスク磁気記録再生装置などの記録再生手段を適宜内蔵する。
【0080】
また、磁気記録媒体や光磁気記録媒体などの磁気記録媒体83を駆動する記録再生装置81や、CD(compact disc)あるいはDVD(digital versatile disc)などの光ディスク84を駆動する光ディスクドライブ82などを適宜備える。
【0081】
記録再生装置81に対しては磁気記録媒体83を、また光ディスクドライブ82に対しては光ディスク84をその挿入口から挿入し、所定の読み出し操作を行うことにより、これらの記録媒体に格納されたプログラムやデータをシステム内に入力しインストールすることができる。
【0082】
また、所定のドライブ装置を接続することにより、例えばメモリ装置としてのROM85や、磁気テープ86を用いることもできる。
またさらに、電話回線やLAN(local area network)などの有線あるいは無線による伝送媒体87を介して、プログラムやデータを適宜ダウンロード可能としてもよい。
【0083】
本具体例の描画データ生成装置によれば、図1乃至図13に関して前述した描画データへの変換とその検証を実行することができる。例えば、前述した描画データ生成方法を実行させるための回路がハードウエアとして実現されていてもよく、または、プログラム、すなわちCPUに本発明の検証方法の一連のステップを実行させるソフトウエアとして実現されていてもよい。
【0084】
また、描画データの生成の対象とすべきレイアウトデータは、磁気記録媒体83、光ディスク84、ROM85、磁気テープ86、伝送媒体87などを介して外部から入力可能としてもよい。または、生成装置80がCAD装置を兼ねており、デバイスのレイアウト設計を実行してレイアウトデータを生成し、内部でそのレイアウトデータを変換することにより多重描画のための電子線描画データを生成するようにしてもよい。
本発明によれば、前述したように、描画データへの変換に際してパターン毎に多重化を省略可能とし、また、検証プロセスにおいては各パターンの輪郭をベクトル化するので、処理に必要なCPUパワーやメモリ容量などのリソースが少なくて済む。従って、小型のコンピュータを用いて迅速なデータ変換と検証を実施することが可能となる。
【0085】
次に、本発明の実施の形態にかかる電子線描画装置について説明する。
図15は、本発明の実施の形態にかかる電子線描画装置のブロック図である。すなわち、電子線描画装置は、電子銃2、絞り3、電子レンズ4、ブランカ5、偏光器8、を介して電子線1をマスク基板15に照射し露光を実施する。コンピュータ11は位置制御系12に目標位置信号を送り、モータ制御系13を介してサーボモータ14を制御し移動台16を移動する。また、位置制御系12はレーザ干渉計17が計測する移動台16の位置信号をコンピュータ11からの目標位置信号と比較し、移動台16を所定精度で停止させる。記移動台16の停止位置精度は、例えば約0.005μmである。
【0086】
マスク基板15の描画にあたっては、コンピュータ11は偏向制御系7に制御信号を送り、偏向制御系7は偏向器8に電子線1の位置情報を送り、また、電子線1のオン(ON)オフ(OFF)信号をブランキング制御系6に伝達する。ブランカー5はこれらオン(ON)オフ(OFF)信号に応じて電子線1をオン(ON)オフ(OFF)制御する。すなわち、偏向器8により電子線1をマスク基板15の所定位置に位置決めし、ブランカー5をオフ(OFF)にして偏向器8に描画信号を送り描画を開始する。
本発明によれば、このような電子線描画装置において、コンピュータ11の前段あるいはコンピュータ11の一部として、描画データ生成部20が設けられている。レイアウトデータLDは、描画データ変換検証部20に入力され、図1乃至図13に関して前述したように多重描画のための描画データへの変換と検証とが実行される。そして、このように変換・検証された描画データに基づき、多重化されていないパターンは、電子線のドーズ量を上げた条件で描画が実行され、多重化されたパターンは電子線のドーズ量を下げた条件で描画が実行される。
【0087】
本具体例によれば、パターン毎に多重化を省略可能とするので、描画時間を短縮でき、電子線描画工程のループットを向上させることができる電子線描画装置を提供できる。また同時に、描画データにおける多重度などの検証も確実に実行されるので、誤ったデータに基づく描画精度の劣化などの発生を未然に防ぐことができる。
【0088】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0089】
例えば、レイアウトデータを描画データに変換する時、多重描画の多重度は「2」以外にも、「4」やその他の数値とすることができる。また、描画フィールドの分割や台形処理、ショット分割などの処理の順序やその分割数あるいは分割形状などの内容について、当業者が公知の範囲で適宜偏向したものも、本発明の要旨を含む範囲で本発明の範囲に包含される。ベクトル化の方向や、スライスの方向あるいはその頻度についても同様である。
【0090】
また、本発明は、マスクの製造のみに限定されるものではなく、半導体集積回路のウェーハ上にレジストを形成した被処理体に電子線描画を行うこともできる。
【0091】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての電子線描画装置、及びその描画データ生成方法、生成装置、生成プログラムは本発明の範囲に包含される。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、多重描画を用いた電子線描画データを生成する場合に、描画データに出力されるパターン数が削減され、また、描画データの圧縮表現を有効に利用することが可能となる。その結果、多重描画に伴う描画データ量および描画時間の増大を抑止できる。
【0093】
また、本発明によれば、多重化された描画データに含まれるパターンの輪郭をベクトル化し、スライスに沿ってそのベクトルをカウントするという簡潔且つ明快な手法によって多重描画における多重度の異常を確実且つ容易に発見することができる。ベクトル化やカウントのプロセスに必要とされるリソースは比較的小さくて済む。このため、CPUパワーの消費も少なく、小型のコンピュータを用いても高速に処理することが可能となり、スループットやコストの点でも有利である。
【0094】
すなわち、本発明によれば、マスクなどのコストの削減が期待でき、半導体集積回路などの先端デバイスの高性能化と開発効率の向上と低コスト化を促進でき産業上のメリットは多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる多重描画の描画データ生成方法を用いた半導体集積回路の製造工程の一部を表すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態にかかるデータ変換処理S2の具体例を表すフローチャートである。
【図3】ステップS2のデータ変換処理によってレイアウトデータから変換された描画データを例示する模式図である。
【図4】ステップS3におけるデータ検証プロセスのフローチャートである。
【図5】ステップS304におけるアルゴリズムを例示するフローチャートである。
【図6】(a)及び(b)は、それぞれ図19に表した描画データDD1、DD2を表す模式図である。
【図7】パターンの輪郭に沿って一方向に環流するベクトルを生成する様子を表す模式図である。
【図8】ベクトル化されたパターンP1、P2をY方向にスライスし、カウントする場合を例示する概念図である。
【図9】パターンP1、P2に関して得られるカウントの変化を表すグラフ図である。
【図10】図9(a)及び(b)に表されたカウントを合成した結果を表すグラフ図である。
【図11】各パターンをベクトル化(ステップS304B)し、それらベクトルをパターン毎に合成した(ステップS304C)した後に、スライスをカウント(ステップS304D)する様子を表す模式図である。
【図12】異なるシーケンスにより多重度の計算を実施する具体例を表す模式図である。
【図13】本発明の描画データ生成方法の変型例を表すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態にかかる描画データ生成装置の外観を例示する模式図である。
【図15】本発明の実施の形態にかかる電子線描画装置のブロック図である。
【図16】半導体集積回路の製造工程の一部を表すフロー図である。
【図17】多重描画を概念的に表す模式図である。
【図18】異なる形状に分割した多重描画を表す模式図である。
【図19】台形分割方向を変えた多重描画を表す模式図である。
【符号の説明】
1 電子線
2 電子銃
3 絞り
4 電子レンズ
5 ブランカ
6 ブランキング制御系
7 偏向制御系
8 偏向器
11 コンピュータ
12 位置制御系
13 モータ制御系
14 サーボモータ
15 マスク基板
16 移動台
17 レーザ干渉計
20 描画データ変換検証部
80 検証装置
81 記録再生装置
82 光ディスクドライブ
83 磁気記録媒体
84 光ディスク
86 磁気テープ
87 伝送媒体
DD、DD1、DD2 描画データ
EL 電子線描画装置
FI 描画フィールド境界(境界線)
LD レイアウトデータ
M マスク
Claims (14)
- 被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画するための描画データを生成する電子線描画データ生成方法であって、
描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換ステップと、
前記データ変換ステップにより生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記描画データごとの前記カウント値を前記スライス方向における位置に対応づけて合計し、前記位置ごとの前記カウント値の合計から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証ステップと、
を備えたことを特徴とする電子線描画データ生成方法。 - 被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画するための描画データを生成する電子線描画データ生成方法であって、
描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換ステップと、
前記データ変換ステップにより生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記複数の描画データに含まれる前記ベクトルを同一平面に合成し、前記同一平面における前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記位置ごとの前記カウント値から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証ステップと、
を備えたことを特徴とする電子線描画データ生成方法。 - 前記データ変換ステップにおいて、前記多重度が最小の前記パターンについて電子線のドーズ量を第1の値に設定し、前記多重度が最小の前記パターンよりも前記多重度が大きい前記パターンについて、電子線のドーズ量を前記第1の値よりも小なる第2の値に設定し、
前記検証ステップにおいて、前記多重度が最小の前記パターンについて、電子線のドーズ量が前記第1の値に設定されていることを確認することを特徴とする請求項1または2に記載の電子線描画データ生成方法。 - 前記複数の描画データは、それぞれ複数の描画フィールドを含み、前記多重度が最小の前記パターンを前記描画フィールドの境界と交差しない描画データに含ませることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子線描画データ生成方法。
- 前記データ変換ステップは、前記多重描画する前記パターンを分割し、微小図形の有無を判定し、前記微小図形を含まない前記パターンのデータを圧縮し、少なくとも1つの前記描画データに前記圧縮されたデータを含ませることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子線描画データ生成方法。
- 前記検証ステップにおいて、前記微小図形を含む前記パターンについて、前記描画データごとに前記分割形態が異なることを確認することを特徴とする請求項5記載の電子線描画データ生成方法。
- 被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画するための描画データを生成する電子線描画データ生成装置であって、
描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換手段と、
前記データ変換手段により生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記描画データごとの前記カウント値を前記スライス方向における位置に対応づけて合計し、前記位置ごとの前記カウント値の合計から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証手段と、
を備えたことを特徴とする電子線描画データ生成装置。 - 被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画するための描画データをコンピュータに生成させる電子線描画データ生成プログラムであって、
描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換ステップと、
前記データ変換ステップにより生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記描画データごとの前記カウント値を前記スライス方向における位置に対応づけて合計し、前記位置ごとの前記カウント値の合計から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする電子線描画データ生成プログラム。 - 前記データ変換ステップにおいて、前記多重度が最小の前記パターンについて電子線のドーズ量を第1の値に設定し、前記多重度が最小の前記パターンよりも前記多重度が大きい前記パターンについて、電子線のドーズ量を前記第1の値よりも小なる第2の値に設定し、
前記検証ステップにおいて、前記多重度が最小の前記パターンについて、電子線のドーズ量が前記第1の値に設定されていることをコンピュータに確認させること特徴とする請求項8記載の電子線描画データ生成プログラム。 - 前記複数の描画データは、それぞれ複数の描画フィールドを含み、前記多重度が最小の前記パターンを前記描画フィールドの境界と交差しない描画データに含ませることを特徴とする請求項8または9に記載の電子線描画データ生成プログラム。
- 前記データ変換ステップは、前記多重描画する前記パターンを分割し、微小図形の有無を判定し、前記微小図形を含まない前記パターンのデータを圧縮し、少なくとも1つの前記描画データに前記圧縮されたデータを含ませることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1つに記載の電子線描画データ生成プログラム。
- 前記検証ステップにおいて、前記微小図形を含む前記パターンについて、前記描画データごとに前記分割形態が異なることを確認させることを特徴とする請求項11記載の電子線描画データ生成プログラム。
- 被露光体に対して電子線を用いた多重描画により描画を実施可能とした電子線描画装置であって、
描画すべきパターンごとに多重度を決定し、前記多重度の内の最大の度数に対応する複数の描画データを生成し、前記パターンごとに、それぞれの前記多重度に対応した数の前記描画データに含まれるようにデータ変換するデータ変換手段と、
前記データ変換手段により生成された描画データにおいて、前記パターンの輪郭に沿って環流するベクトルを生成し、前記パターンの所定の方向のスライスと交差するベクトルの数を、前記ベクトルの方向を加味してカウントし、前記スライス方向における位置に対応させてカウント値を記憶し、前記描画データごとの前記カウント値を前記スライス方向における位置に対応づけて合計し、前記位置ごとの前記カウント値の合計から、前記位置に対応する前記パターンの多重度を計算する検証手段と、
を有するデータ変換検証部を備え、
前記データ変換検証部により生成された描画データに基づき、前記多重描画による描画を実行可能とした電子線描画装置。 - 前記データ変換検証部は、
前記データ変換手段において、前記多重度が最小の前記パターンについて電子線のドーズ量を第1の値に設定し、前記多重度が最小の前記パターンよりも前記多重度が大きい前記パターンについて、電子線のドーズ量を前記第1の値よりも小なる第2の値に設定し、
前記検証手段において、前記多重度が最小の前記パターンについて、電子線のドーズ量が前記第1の値に設定されていることを確認し、
前記描画データ変換検証部により生成された描画データに基づき、前記多重度が最少の前記パターンについては、電子線のドーズ量を前記第1の値に設定して描画を実施し、前記多重度が最小の前記パターンより大きい前記パターンについては、電子線のドーズ量を前記第2の値に設定して多重描画を実施することを特徴とする請求項13記載の電子線描画装置。
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