JP4829492B2 - 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
このようにネックインが生じると、フィルムの有効幅が減少し生産効率が極度に低下するうえ、幅の収縮に起因して両端部の膜厚が増加し、トリミング時の歩留まり低下を招くという問題があった。
また、Tダイ法では、Tダイの両端部から吐出される樹脂はTダイの中央部分から吐出される樹脂に比べて引き伸ばし量が大きくなるため、得られたフィルムは幅方向の両端部の加熱収縮が大きくなるという問題や、Tダイの両端部では製膜が不安定であり、耳ゆれ、レゾナンス現象などが生じたり、リップ巾に相当する幅のフィルムが得られない、すなわち、リップ巾を有効に利用できないという問題があった。
例えば、冷却ロールの手前にピニングワイヤーを張って高電圧を放電させる方法や、加熱空気を溶融樹脂シートの耳部分に吹き付ける方法が知られている。また、特許文献1〜3には、押さえロールによりシート状の溶融樹脂を冷却ロールに押え付け、ネックインを抑える方法が開示されている。
また、特許文献4には、あらかじめ幅方向の両端の厚みを肉厚にすることにより、ネックインを抑えようとする方法が開示されている。
また、特許文献4に記載された方法では、ネックインを抑えることができても、その両端部は従来のものに比べ膜厚が厚くなる。そのため、トリミングによりカットされる部分の樹脂量が多くなり、歩留まりが悪化するとともに、両端部とそれ以外の中央部とで物性や厚みにムラができるという、幅方向の物性斑・厚み斑の問題もあった。
Lc/2≦Lt<Lc・・・(1)
Tc−5<Tt<Tc+5・・・(2)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、Tダイ法、すなわち、スリット状のリップを有するダイから、溶融樹脂を押出して吐出させ、フィルム状に成形し、冷却ロールなどの冷却・引き取り手段で固化させ、引き取る方法である。Tダイとしては、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイ、スクリューダイなどを適宜選択して使用できる。また、Tダイの幅にも制限はなく、例えば、400〜2400mmのものを使用できる。
本発明においては、Tダイ10の幅方向における両端部(図1中符号11Aで示す領域。)のリップ開度Ltと、該両端部11A以外の中央部(図1中符号11Bで示す領域。)の平均リップ開度Lcとが、下記式(1)を満足するように、両端部11Aのリップ開度Ltと中央部11Bのリップ開度Lcをそれぞれ調整する。また、リップ開度とは、リップ11の幅方向に対して垂直方向の開口長さである。
Lc/2≦Lt<Lc・・・(1)
また、ここで両端部11Aのリップ開度Ltが、中央部11Bの平均リップ開度Lcより小さいとは、両端部11Aのすべての箇所のリップ開度が、平均リップ開度Lcよりも小さいことを意味する。
Tc−5<Tt<Tc+5・・・(2)
ここで両端部11Aから吐出された溶融樹脂の温度Ttとは、両端部11Aの幅方向における任意の箇所から吐出された溶融樹脂の温度であり、中央部11Bから吐出された溶融樹脂の平均温度Tcとは、中央部11Bの幅方向において1cmごとに吐出された溶融樹脂の温度を測定し、その測定温度を平均した値である。また、ここで溶融樹脂の温度は、フィルム状にTダイ10から吐出された溶融樹脂の表面温度を、THI−500(タスコジャパン製)などの放射温度計により測定した値であって、測定箇所は、Tダイ10の吐出端面から流れ方向に1cm下流側に設定されている。
本発明者らは、このように一軸伸張変形する部分のドラフト比を小さくするためには、両端部11Aにおける溶融樹脂の吐出速度を高めることが効果的であることを見出した。
このように両端部11Aにおける吐出速度を高めるためには、両端部11Aのリップ開度Ltが、中央部11Bの平均リップ開度Lcより小さくなるようにすればよい。しかしながら、Tダイ10の両端部11Aは、中央部11Bに比べて放冷が大きく、温度が低下しやすいため、ここから吐出された溶融樹脂は流動性が大きく低下する傾向にある。そのため、両端部11Aのリップ開度Ltを中央部11Bの平均リップ開度Lcよりも単に小さくするだけでなく、両端部11Aから吐出される溶融樹脂の温度Ttを制御して放冷の影響を小さくし、その流動性を適度な状態に保つことが、両端部11Aからの溶融樹脂の吐出速度を高め、ネックインを抑制し、製膜を安定化するうえで非常に重要となる。
すなわち、両端部11Aのリップ開度Ltが中央部11Bの平均リップ開度Lcの1/2未満となる場合では、両端部11Aから吐出される溶融樹脂の厚みが中央部11Bから吐出される溶融樹脂の厚みに比べて小さくなり、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の両端部が切れやすくなるなど、Tダイの両端部11Aの製膜が不安定になる可能性がある。一方リップ開度Ltが中央部11Bの平均リップ開度Lcと同じ場合、両端部11Aにおける溶融樹脂の吐出速度が十分には高くならない場合がある。リップ開度Ltは、平均リップ開度Lcの90%以下であることが好ましい。
なお、平均リップ開度Lcとは、中央部11Bにおいて、幅方向に1cmごとに測定したリップ開度を平均した値である。各リップ開度は、例えば、所定の厚さの金属プレートを用い、これを最大で何枚重ねてリップ11に挿入できるかを試行する方法により測定できる。
ここで連続的に変化するとは、両端部11Aにおけるある測定点Xnのリップ開度をL(i)、測定点Xnから見てTダイ10の末端寄りのある点でのリップ開度をL(i−1)、測定点Xnから見て中央部11B寄りのある点でのリップ開度をL(i+1)としたときに、下記式(3)の関係を満たす測定点Xnが存在しない状態をいう。
(L(i)−L(i−1))×(L(i+1)−L(i))<0・・・(3)
また、この際、両端部11Aのリップ開度が、末端に向けて徐々に小さくなるように変化することがより好ましい。
Tc−3<Tt<Tc+3・・・(4)
なお、ここで物性とは、製膜条件依存性のある加熱収縮率、温水白化、引張強度などを指す。
ここで連続的に変化するとは、両端部11Aにおけるある測定点Xnの温度をT(i)、測定点Xnから見てTダイ10の末端寄りのある点での温度をT(i−1)、測定点Xnから見て中央部11B寄りのある点での温度をT(i+1)としたときに、下記式(5)の関係を満たす測定点Xnが存在しない状態をいう。
(T(i)−T(i−1))×(T(i+1)−T(i))<0・・・(5)
リップ開度の調整については、式(1)を満足するようにあらかじめリップ開度が固定されたTダイを用いてもよいし、条件によってリップ開度を適宜調整することが求められる場合には、そのようなリップ開度調整手段が設けられた形態のTダイ10を用いればよい。リップ開度調整手段としては、Tダイボルトによる手動調整手段、ヒートボルト方式、ロボット方式、リップヒーター方式、圧電素子方式などによる自動調整手段などがあるが、これらのなかでは、熱可塑性樹脂に対する汎用性が高いことから、ヒートボルト方式による自動調整手段が好ましい。ヒートボルト方式には熱直動式、熱作動式があるが、熱可塑性樹脂が、特に溶融粘度の温度依存性が非常に大きいアクリル樹脂やその組成物である場合には、熱作動式が好ましい。
加熱手段としては、例えば、外付け型のリップヒータ、Tダイ10に通常設けられている内蔵型ヒータなどがある。
内蔵型ヒータとしては、両端部11Aと中央部11Bとを独立に温度制御できるものが好ましく、さらには両端部11Aを複数に細分化してそれぞれ独立に温度制御できる形態のものが好ましい。また、内蔵型ヒータの温度制御機構には特に制限はないが、ヒータの通電率を変化させることにより温度制御する形態のものが、温度制御が簡単であり好ましい。また、このような通電率を変化させる形態のものは、簡単に改造できることからも、このような形態の内蔵型ヒータを備えたTダイ10が好ましい。また、内蔵型ヒータを複数に細分化する際には、各両端部11Aそれぞれを3〜7ゾーンに分割することが好ましい。
また、中央部11Bよりも、両端部11Aの設定温度を、13〜18℃高くすることが効果的である。
また、溶融樹脂のTダイ10からの吐出方向が、鉛直線に対して0度を超えた鋭角をなす時、すなわち引き落とし角度が生じた時には、一般的にメヤニと呼ばれるしずく状の付着物がリップに形成される可能性が大きくなる。メヤニは、吐出された溶融樹脂から発生したガス状物の結露、または、樹脂自身がリップ11と摩擦することにより付着、成長したものであり、熱可塑性樹脂フィルムへの付着やダイラインを引き起こすなどの欠陥の原因となる。このことから、引き落とし角度が生じないように、すなわち、引き落とし角度が0度に近くなるように、Tダイ10および冷却・引き取り手段が配置されていることが好ましい。
例えば、特公昭62−19309号公報、同63−20459号公報、特開昭63−77963号公報等に記載されているアクリル樹脂系の多層構造重合体やその組成物は、透明性、製膜性の良好な組成物である。
具体的には、アクリル樹脂として、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートを含む単量体とグラフト交叉剤とを用いて得られる最内層重合体、アルキルアクリレート及び必要に応じて多官能性単量体を含む単量体とグラフト交叉剤とを用いて得られる架橋弾性重合体(中間層)、ならびに、アルキルメタクリレートを含む単量体を用いて得られる最外層重合体を基本構造単位とするアクリル樹脂系多層構造重合体等を好適に使用できる。アクリル樹脂系多層構造重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、他の樹脂と併用してもよい。
これらのアルキル(メタ)アクリレートは、通常、アクリル樹脂系多層構造重合体中、80〜100質量%の範囲で用いられる。また、これらアルキル(メタ)アクリレートは、全多段層を形成するのに種類を統一して用いる場合が好ましいが、最終目的によっては、2種以上の単量体を混合したり、別種のアクリレートを用いてもよい。
グラフト交叉剤の使用量は極めて重要で、最内層重合体を形成する単量体成分の合計量100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部の範囲で用いられ、また、架橋弾性重合体を形成する単量体成分の合計量100質量部に対しても、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部の範囲で用いられる。
このアクリル樹脂系多層構造重合体も1種を単独で用いてもよいし、2種以上の多層構造重合体を併用してもよいし、また他の樹脂と併用してもよい。
他のアクリル系樹脂と併用する例としては、このアクリル樹脂系多層構造重合体(ゴム含有重合体)と、メタクリル酸メチルを含む単量体を用いて得た重合体であって還元粘度(重合体を0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定)が0.1L/gを超える熱可塑性重合体と、メタクリル酸エステルを含む単量体を用いて得た重合体であって還元粘度(上記条件で測定)が0.1L/g以下である熱可塑性重合体との三成分を含むアクリル樹脂組成物等が挙げられる。熱可塑性重合体の還元粘度は、0.1L/g未満では目的とする成形性は得られない。特に好ましい還元粘度は0.1〜1.2 L/gである。
紫外線吸収剤としては、例えば、一般に用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、具体的には、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが例示される。2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、具体的には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4′−クロロベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどが例示される。またサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤として、具体的には、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルなどが例示される。
これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。紫外線吸収剤を配合する場合、その量は、メタクリル樹脂及びゴム粒子の合計100質量部に対して、通常0.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上、2質量部以下である。
MMA : メチルメタクリレート
MA : メチルアクリレート
BuA : ブチルアクリレート
AMA : アリルメタクリレート
St : スチレン
EA : エチルアクリレート
CHP : クメンハイドロパーオキサイド
NOM : n−オクチルメルカプタン
1)熱可塑性重合体(I)の製造
反応容器に窒素置換したイオン交換水200部を仕込み、乳化剤オレイン酸カリウム1部、過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ。続いてMMA40部、BuA10部、NOM0.005部を仕込み、窒素雰囲気下65℃にて3時間撹拌し、重合を完結させた。引き続いてMMA48部、BuA2部からなる単量体混合物を2時間にわたり滴下し、滴下終了後2時間反応を行い、重合を完結させた。得られたラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸凝析した後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状として重合体を回収した。
2)ゴム含有重合体(II)の製造
反応容器に下記(イ)及び(ロ)記載の半分量の各原料を仕込み、窒素雰囲気下80℃で90分間、撹拌を行いながら重合した。その後、(イ)及び(ロ)の残りの半分量の各原料を90分間にわたって連続的に添加し、添加終了後さらに120分間重合を行い、弾性体ラテックスを得た。得られた弾性体ラテックスに引き続いて下記に示す原料(ハ)を添加し撹拌した後、さらに下記に示す原料(ニ)を80℃で45分間にわたって連続的に添加し、その後さらに80℃で1時間連続して重合を行い、ゴム含有重合体(II)ラテックスを得た。得られたゴム含有重合体(II)ラテックスを塩化カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後乾燥してゴム含有重合体(II)を得た。
(イ)
脱イオン水 300部
N−アシルザルコシン酸 1.5部
ホウ酸 1.0部
炭酸ナトリウム 0.1部
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.5部
硫酸第一鉄 0.00024部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.00072部
(ロ)
BuA 80.0部
St 19.0部
AMA 1.0部
CHP 0.3部
(ハ)
脱イオン水 5部
N−アシルザルコシン酸 1.2部
(ニ)
MMA 76.6部
EA 3.2部
NOM 0.28部
CHP 0.24部
3)アクリル樹脂組成物の製造
上記のごとくして得られた熱可塑性重合体(I)2部、ゴム含有重合体(II)20部、熱可塑性重合体(III)であるメタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=98/2、還元粘度0.06L/g)80部、及び三洋化成(株)製ポリエチレングリコールPEG20000(IV)6部をヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで二軸押出機を用いてシリンダー温度200〜260℃ダイ温度250℃で溶融混練してペレット化した。
なお、熱可塑性重合体(III)の還元粘度は、重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定した。
上記製造例によって得られたアクリル樹脂組成物のペレットを80℃で一昼夜乾燥し、押出成形機のダイから押出成形された溶融ポリマーを、幅が500mmのコートハンガー型のTダイ10にて製膜し、フィルムを得た。この際、両末端11Aから吐出された溶融樹脂の厚みが、55μmとなるようにリップ開度を調整した。また、引取り速度は35m/minとした。
なお、ここで使用するTダイ10は、リップ開度調整手段として、熱作動式ヒートボルト方式の自動調製手段を備えていて、両端部11Aと中央部11Bのリップ開度を独立して調整できるようになっている。また、加熱手段としては、両端部11Aと中央部11Bとを独立に温度制御でき、さらに各両端部11Aを3分割してそれぞれ独立に温度制御できる形態の内蔵型ヒータを備えている。内蔵型ヒータは、通電率により設定温度を変更できるようになっている。
このようなリップ開度調整手段と加熱手段により調整・制御されたリップ開度分布と溶融樹脂の温度分布を測定し、その結果を表1〜2にまとめた。なお、表には、幅方向に5cmおきの値を記載した。
また、ネックイン量、得られたフィルムの両端部の厚み比および加熱収縮率比、フィルム両端部の製膜安定性について評価し、結果を表3に示した。
これら評価方法と、リップ開度および溶融樹脂の温度の測定方法を次に示す。
放射温度計THI−500(タスコジャパン製)を用いて、フィルム状に吐出された溶融樹脂の温度を測定した。測定範囲は1mmスポットであり、測定箇所はTダイ吐出端面より1cm下流側とした。放射温度計THI−500(タスコジャパン製)は精度良く樹脂温度を測定するために、補正係数を0.94とした。
また、測定は、幅方向の両末端と、両末端から中央に向かって1cm毎に行った。測定点の間隔が1cm未満になった場合は、最後にその部分の中央の温度を測定した。
2)リップ開度
Tダイ10を設定温度になるまで昇温し、樹脂を吐出させていない状態で測定した。
具体的には、厚みが定められた薄い金属プレート(0.05μm単位)を1枚、または複数枚重ね合わせて所定の厚みにし、これをリップ11に挿入した際に、挿入可能な最大のプレート枚数を求めた。そして、そのプレートの総厚みをリップ開度(mm)とした。
測定は、幅方向の両末端と、両末端から中央に向かって1cm毎に行った。測定点の間隔が1cm未満になった場合は、最後にその部分の中央の開度を測定した。
3)ネックイン量
得られたフィルムについて流れ方向の任意の15箇所において、フィルム幅を測定し、下記式(6)により各箇所のネックイン量を求めた。そして、15箇所の平均値をフィルムのネックイン量として表5に示した。
ネックイン量=Tダイのリップ幅−最終フィルム幅・・・(6)
得られたフィルムの両端部と、それ以外の中央部との膜厚を測定し、中央部の膜厚を1とした場合の両端部の膜厚を表5に示した。ここでフィルムの両端部とは、Tダイ10の幅方向の両末端から中央に向かって、Tダイ全幅の20%未満の部分から吐出された部分である。
測定にはβ線厚み計を用いて1往復スキャンを1分で行うように設定し、10スキャンした。両端部の膜厚、中央部の膜厚は、これら10スキャンの平均値とした。
5)加熱収縮率比
得られたフィルムの両端部と、それ以外の中央部とで別々に加熱収縮率を測定し、中央部の加熱収縮率を1とした場合の両端部の加熱収縮率比を表5に示した。ここでフィルムの両端部とは、Tダイ10の幅方向の両末端から中央に向かって、Tダイ全幅の20%未満の部分から吐出された部分である。
具体的には、図2のように、得られたフィルムの中央部と両端部から、それぞれ(5cm×5cm)の正方形を切り取り、これらを試験片20とした。これら試験片20に、幅方向(すなわちTD方向)に1cm毎に垂直線を油性マジック等で引き、流れ方向(すなわちMD方向)に2.5cm毎に同様に垂直線を引いておく。そして、これらの試験片20に対して、乾燥機にて100℃、10分間の熱処理をし、幅方向に垂直に区切られた1cmの各線(計5つの線)が何cmになったかを測定し、収縮した長さを求める。求めたこの長さを平均し、これに20を乗じた値を、両端部および中央部の加熱収縮率としてそれぞれ求め、加熱収縮率比を算出した。
6)フィルム両端部の製膜安定性
1時間製膜した後のフィルムの状態、押し出しの状態を下記3段階で評価した。
○:フィルム両端のフィルム切れが全くなく、厚みが均一で安定に押し出すことができる。
△:フィルム両端のフィルム切れはないが、耳ゆれ、レゾナンス現象がある。または、数回フィルム切れが発生する。
×:フィルム両端のフィルム切れが頻繁にあり、製膜が不安定である。
表1、2に示すリップ開度分布、溶融樹脂温度分布とした以外は、実施例1と同様にして製膜と評価を行った。評価結果を表3に示す。
一方、リップ開度、溶融樹脂温度の少なくとも一方が、式(1)および(2)を満たす関係にない場合、ネックイン量などの特性のうち、少なくとも1つが劣った。
具体的には、式(1)を満足しない(Lt=Lcのため)とともに、(2)をも満足しない比較例1では、ネックイン、加熱収縮率比、フィルム両端部の厚み比がいずれも大きく、幅方向の物性斑・厚み斑が顕著であった。また。両端部が耳ゆれを起こし、1時間の製膜中にフィルム切れが1度起こり、製膜安定性にも劣った。
また、式(1)を満足していても式(2)を満足せず、溶融樹脂温度が不適切であった比較例2では、加熱収縮率比は比較的良好であるものの、両端部11Aに溶融樹脂が流れすぎ、耳高となり、フィルムの厚みを55μmに一定にすることが困難になったり、フィルム両端部の製膜安定性が悪かった。
また、式(2)を満足していても式(1)を満足せず(Lt=Lcであるため)、リップ開度が不適切であった比較例3では、比較例1と同様の傾向が認められた。
また、式(1)を満足しない(LtがLcの1/2未満であるため)とともに、式(2)をも満足しない比較例4では、ネックイン量、加熱収縮率比は比較的良好であるものの、フィルム両端部11Aの厚み比が小さく、製膜安定性にも劣った。
また、式(2)を満足していても式(1)を満足しない(LtがLcの1/2未満であるため)比較例5では、ネックイン量、加熱収縮率比は比較的良好であるものの、フィルム両端部の厚み比が小さく、製膜安定性にも劣った。
11 リップ
Claims (1)
- Tダイ法により熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法において、
前記熱可塑性樹脂フィルムは、アクリル樹脂またはその組成物からなるフィルムであり、
Tダイの幅方向における両端部のリップ開度Ltと、前記両端部以外の中央部の平均リップ開度Lcとが下記式(1)を満足し、かつ、
前記両端部から吐出された溶融樹脂の温度Tt[℃]と、前記中央部から吐出された溶融樹脂の平均温度Tc[℃]とが下記式(2)を満足することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
Lc/2≦Lt<Lc・・・(1)
Tc−5<Tt<Tc+5・・・(2)
Priority Applications (1)
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