JP4828530B2 - オフィス用椅子 - Google Patents

オフィス用椅子

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Description

関連出願の相互参照
本願は2004年7月8日付米国仮特許出願第60/586,951号に基づく優先権を主張する。
本発明はオフィス用椅子、特に、メッシュ生地を有する成形されたオフィス用椅子のフレームに係わる。
公知技術の説明
多様なオフィス用及び事務用椅子が市販されており、その多くは傾倒角度制御機構を有する。設計の目的は、ユーザーの身長、体重またはその他の身体的特徴に関係なく、ユーザーに必要な支持性能及び快適さを提供する一方、ユーザーが種々の姿勢で着座することを可能にする快適な且つ人間工学的な着座構造を提供することにある。
一般に、オフィス用または事務用椅子は、多くの場合床面に接触するキャスターまたは固定式スライドに取付けられる基脚と、これに取付けられてその上に椅子の座部を支持する支柱とを有する。支柱には、椅子の座部と背凭れの間に介在するように傾倒角度制御ハウジングが取付けられ、このハウジングには、ユーザーが自分の使用態様に合せて個人化できるように椅子の高さ、背凭れの傾倒角及びその他のファクターを調整するための種々の制御機器、ノブ及び機構を内蔵している。椅子は肘掛けを含む場合と含まない場合があり、肘掛けは固定式のものもあれば、幾つかの位置に調節できるものもある。オフィス用椅子の背凭れ傾倒角度を制御する機構は色々あるが、この種の制御機構は多くの場合、背凭れに連接され、背凭れの動きによって駆動または起動させられるバネによって操作される。バネは板バネ、コイルバネなどタイプは任意であるが、いずれの場合にも、背凭れの傾倒角度は背凭れにかかるユーザーの体重によって制御される。一般に、背凭れは直立状態に向かって偏移されているから、ユーザーは背凭れを所要の角度に傾倒させるため、背凭れにかなりの圧力を加えねばならない。傾倒の量及び円滑さはバネ張力を調節することによって制御できるが、ユーザーが身体を前方へ動かすや否や、多くの場合、背凭れも前方へ動いてユーザーの背中を押す。従って、ユーザーが背凭れに寄りかかると、背中を押されるように感じ、椅子から押し出されるような感覚を経験することが多い。
椅子はまた、ユーザーの体形または身長に応じて調節可能な腰当て部材を含むことが好ましい。多様な腰当部材が既に提案されているが、その多くは椅子に恒久的に取付けられている。ユーザーが背凭れにこのような腰当部材が存在することを望まない場合には取外せるように、腰当部材は椅子から容易に取外せることが好ましい。腰当部材は椅子の表側に取付けても裏側に取付けてもよく、椅子の詰め物の中に隠してもよい。但し、詰め物がない場合、メッシュ生地などの布の面に沿ってユーザーの腰部から骨盤域まで腰当て部材の位置を随意に調節できることが好ましい。椅子が如何なる身長のユーザーにも適応できるように、肘掛けが調節可能であることも望ましい。椅子の多くは調節自在な肘掛けを備えているが、椅子の位置に関係なくユーザーが快適な状態を維持し、ユーザーの腕が常に床面と平行な位置を保てるように、肘掛けが座部及び背凭れと比例して傾倒しなければならない。
最後に、椅子の布地はユーザーの体重を支える充分な強度を有し、しかも、ユーザーを可能な限り快適にするため、椅子及びユーザーの身体の周りに充分な通気を確保しなければならない。快適性と支持力と確保するためにフォーム材で中身を被覆する詰め物を使用するのが普通であるが、糸目の粗い織布はユーザー周りの通気を促進することができる。糸目の粗い織布、メッシュまたは布地はそれぞれのユーザーの固有の体形に快適に一致するとともに、ユーザーの体重を快適に支持するように充分な緊張状態になければならない。
そこで、必要とされるのは、ユーザーが背凭れに寄りかかっても抵抗感がなく、ユーザーを無理に直立位置へ押し戻そうとしない完全に調節自在なオフィス用または事務用椅子である。
従って、本発明の目的はユーザーの希望にしたがって調節でき、従来よりも優れた制御態様で背凭れを傾倒させることができるオフィス用または事務用椅子を提供することにある。
本発明によると、基脚、前記基脚によって支持される座部、前記座部と前記基脚の間に介在する傾倒機構、及び前記座部及び前記傾倒機構の少なくとも1つに連結された背凭れを含む椅子において、前記傾倒機構が傾倒バネを有し、前記傾倒機構に対して前記座部を移動させると前記傾倒バネが作動されて前記座部及び前記背凭れの少なくとも一方が傾倒するように前記傾倒機構が前記座部と複数のリンクを介して回転自在に連結され、前記複数のリンクが前記座部が前記傾倒機構を中心に回転するように前記座部の両側を前記傾倒機構に回転自在に連結する第1及び第2平行アーム対より成り、前記傾倒機構に対する前記座部の移動に応答して前記傾倒バネが作動されて前記座部及び前記背凭れの少なくとも
一方が傾倒するように前記第1及び第2平行アーム対の少なくとも1対が前記傾倒バネと連結され、傾倒を可能にする第1位置と傾倒を阻止する第2位置との間を移動自在な傾倒制限手段を含み、前記傾倒制限手段が前記第1及び第2位置の少なくとも一方への前記傾倒制限手段の移動を容易にする磁性部分を有することを特徴とする椅子が提供される。
本発明の他の目的はユーザーが背凭れに圧力を加えてではなく、ユーザーの体重に応じて傾倒する調節自在なオフィス用椅子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は如何なるユーザーにも完全に適応できるオフィス用椅子を提供することにある。
本発明の上記以外の目的、特徴及び利点を添付の図面に示す実施例に基づいて以下に説明する。
添付の図面において、類似の参照符号は類似の素子を指し、図1-8にはオフィス用または事務用椅子のような調節自在な椅子の実施例を示し、図1-7には椅子10の斜視図(図1)、右側面図、左側面図、正面図、背面図、頂面図及び底面図(それぞれ図2-7)を示す。特に図8の分解図から明らかなように、椅子10は主として座部12及び平行アームを介して傾倒制御ハウジング16と連接する背凭れ14から成り、傾倒制御ハウジング16は垂直支柱20を介して基脚18に取付けられている。基脚18は好ましくは複数の、例えば、5本の放射状に外方へ張出した脚22から成り、椅子10を床面上に容易に移動させることができるようにキャスター24を設けることが好ましい。キャスターの代わりに(図示しないが)固定式のスライドを設けてもよい。
垂直支柱20は公知の態様でその高さを調節できることが好ましく、1対の調節自在な肘掛け26をも含むことが好ましい。肘掛け26は詳しくは後述するように、2004年11月30日付米国特許第6,824,218号として許諾された本願の出願人の米国特許出願第10/769,061号に記述されている調節自在な肘掛けと同じでよい。椅子10は必ずしも肘掛け26を含まなくてもよい。
座部12及び背凭れ14はいずれも弾性的に可撓性のメッシュ材を材料とすることが好ましい。座部12も背凭れ14も平行アーム30,32を介して傾倒制御ハウジング16に回転自在に取付けることによって、詳しくは図面を参照して後述するように、座部12及び/背凭れ14が傾倒機構に対して及び/または互いに傾倒させることができる。
特に図9及び10から明らかなように、傾倒制御ハウジング16は傾倒制御機構35を内蔵し、ユーザーが椅子10を自分に合わせて快適な着座姿勢を得ることができるように椅子10に種々の調整を施すための種々のノブやハンドルをも含む。例えば、傾倒制御ハウジング16はこれに内蔵されている傾倒制御機構35のほか、傾倒率調節ノブ38、傾倒レバー41、及び座部高さ調節レバー44をも含むことができる。
傾倒制御機構35の好ましい実施例は第1回転シャフト46及び第2回転シャフト48を含み、これらの回転シャフトは好ましくは6角形の断面形状を有し、第1平行リンク対52及び第2平行リンク対54に連結され、これらの平行リンク対はそれぞれ座部12の両側を傾倒制御機構に回転自在に連結する。これらの第1及び第2リンク対52,54は図2及び3に示す2対の平行アーム30,32のうちの第1対30を含む。座部12は、詳しくは後述する座部12の内側フレームの下側にこれと一体に成形可能な座部ブラケット61を介して平行リンク52,54に連結される。平行リンクを座部12としっかり咬合させるには、ネジ57と共にスリーブ53及び圧縮ブッシング55を利用することにより、平行リンク52,54を座部ブラケット61にしっかりと但し回転自在に連結すればよい。スリーブ53及び圧縮ブッシング55は、平行リンク52,54の端部と座部ブラケット61とが互いに密着しないように、即ち、座部ブラケット61に対して平行リンク52,54の端部を回転自在に維持しながらネジ57を充分固く締めることを可能にする。
傾倒制御機構35は回転シャフト46,48の1つ、好ましくは、以下駆動シャフト46と呼称する最後列シャフト46と連携して捻れる傾倒バネ58を含む。第2の、即ち最前列シャフト48は「従動」シャフト48と呼称される。後方に位置する駆動シャフト46から傾倒バネ58を作動させることで、後方の平行アームが座部12と連結する点と駆動シャフト46と連結する点との間の有効距離に相当する比較的小さいモーメント・アームが得られる。この比較的小さいモーメント・アームが公知の傾倒制御機構における傾倒バネよりも小さく且つバネ定
数の低い傾倒バネ58の利用を可能にする。傾倒バネ58としては、円筒形内側弾性バネ素子62に接着された非可撓性外側円筒面60から成る公知のねじりバネを使用することができる。内側弾性バネ素子62に、その中心を貫通する好ましくは6角形断面を有する駆動シャフト46と一致する6角形の孔を設ける。この孔64に6角形駆動シャフト46を挿通して、駆動シャフト46の回転に伴って弾性バネ素子62の内側部分が回転するようにする。弾性バネ素子62の外側部分は非可撓性外面60への取付けを介して固定されているから、内側部分の回転に伴って、弾性バネ素子62にねじり力が発生し、これが座部12及び背凭れ14の傾倒に対する抵抗を生む。
図11及び12の側面図は座部12を傾倒制御ハウジング16に連結する平行アーム30,32をフル上昇(直立)及びフル下降(傾倒)位置でそれぞれ示す。これらの図及びその他の図から明らかなように、座部12及び背凭れ14の傾倒は上記平行アーム30,32を形成し、且つ座部12及び背凭れ14の双方を傾倒制御ハウジング16に回転自在に連結する複数の平行リンク52,54及び70によって達成される。好ましくは、上記複数リンクのうち、椅子10の正面寄りに固定された第1従動リンク対54及び傾倒制御ハウジング16と椅子10の後部とを連接する第2駆動リンク対52から成る2組のリンク対52,54を介して座部12を傾倒制御ハウジング16に取付ける。それぞれのリンク対は傾倒制御ハウジング16及び座部の両側に取付けられた(平行)リンクから成る。詳しくは後述するように、駆動リンク52は座部12を傾倒バネ58に連結する。特に図8から明らかなように、単一のY-字リンク70が背凭れ14の下方中央部を傾倒制御ハウジングに連結し、背凭れ14の両側は最後方座部ブラケット61の取付け点に回転自在に連結され、この取付け点には駆動リンク52も取付けられる。
傾倒バネ58は座部12及び背凭れ14の傾倒率を制御する。それぞれの駆動リンク52の一端は傾倒制御ハウジング16に連接され、他端は座部ブラケット61に枢動自在に取付けられている。
傾倒制御機構35のその他の細部は図9-10に示す通りであり、従動リンク54及び駆動リンク52のそれぞれ一端は座部ブラケット54に回転自在に連結され、他端は傾倒制御ハウジング16を横断する従動シャフト48及び駆動シャフト46に連結されている。従動シャフト48も駆動シャフト46も、傾倒制御ハウジング16内での回転を可能にする一方、リンク52,52との強固な連結を容易にするという点で、断面が6角形のロッドであることが好ましい。断面が6角形の駆動シャフト46は弾性バネ部材62の中心を貫通する6角形の透孔64と咬合するから、傾倒バネ58を確実に作動させることができる。
断面6角形のシャフト46,48をハウジングに取付ける配列は任意であるが、図示の好ましい実施例では、駆動シャフト46を座部12の後部寄りに取付け、従動シャフト48を座部12の前部寄りに配置する。従動シャフト48はハウジングに対して回転自在であり、回転ウォッシャーを介してハウジングに取付けられ、ストップ機構を含む。ストップ機構としては、従動シャフト48に固定され、これと一緒に回転するウォッシャー77を使用することができる。ウォッシャー77には、傾倒制御ハウジング16の内側に設けた突起79と咬合する肩部78を形成すればよい。このストップ機構は傾倒制御ストッパーとして作用するように意図されたものではなく、傾倒制御機構35の組立てを容易にするのがその目的である。駆動シャフト46にも、同様のウォッシャー80を肩部81と併用する同様のストップ機構を設けることができる。但し、肩部81は駆動シャフト46に嵌合させ、スペーサー83を利用して傾倒制御ハウジング16の縁端部に固定させた別設のストップ部材82と協働させることができる。このストップ機構は傾倒機構35の行程終点に達すると駆動シャフト46がそれ以上回転するのを阻止する行程終点ストッパーである。
駆動シャフト46は傾倒制御ハウジング16に固定され且つこれを貫通し、図示のようにモーメント・アームをできるだけ短くするため傾倒制御ハウジング16の後部寄りに配置された傾倒バネと咬合する。駆動シャフト46も、傾倒制御ハウジング16の内側に設けた突起と咬合して傾倒制御機構35のためのストップまたはリミットの1つとして作用するストップ機構を含むことができる。傾倒バネ58は座部12及び背凭れ14の傾倒率及び傾倒量を制御する。例えば、ユーザーが着座する時に駆動リンク52が回転すると、駆動シャフト46が回転し、その結果、弾性バネ部材62を傾倒制御ハウジング16の内側に固定されている非可撓性の外側円筒面60に対して回転させることにより、その回転を阻止する。例えば、ユーザーが椅子10から立ち上る時のように駆動シャフト46を回転させる力が除かれると、傾倒バネ58が「弛み」、その結果としてこの傾倒バネ58が初期位置にもどると、駆動リンク52を、従って、座部12(及び背凭れ)を初期直立位置に戻す。
図8及び11-12に示すように、背凭れ14は座部12を傾倒制御ハウジング16に連結する駆動リンク52との共通連結点を介して座部12に連結される。背凭れ14はまた上記Y-字リンク70を介して傾倒制御ハウジングと回転自在に連結されており、このY-字リンク70は駆動リンク52と共に座部12/背凭れ14と傾倒制御ハウジング16との間に第2平行アーム32を形成する。Y-字リンク70の非分枝端85は、例えば、Y-字リンク70の前記端部85に埋め込むなどして設けた受け器74と協働するように背凭れ14の下方中央部に埋め込んだT-字突起72を使用して背凭れに枢動自在に連結される。受け器74はT-字開口を有し、このT-字開口内にT-突起72を枢動自在に受ける。例えば、ファスナ76を使用して受け器をY-字リンク70の端部に固定し、弾性部材78をT-字突起72の端部と連携させることによって受け器74のT-字開口でのT-字突起72の枢動を容易にすることができる。このようにして、背凭れ14は背凭れ14が傾倒するのに伴いY-リンク70の端部85に対して充分に枢動することができる。
Y-字リンク70の他端、即ち二股分枝端87は2点において傾倒制御ハウジング16の後端部分に回転自在に取付けられている。Y-字リンク70の二股分枝端87のそれぞれは回転自在な連結を可能にするネジ80またはその他のファスナを介して傾倒制御ハウジング16の後端部分の両側にそれぞれ取付けられる。
座部12及び背凭れ14を傾倒制御ハウジング16に連結する平行アーム30,32は座部12及び背凭れ14の傾倒機構35に対する回転だけでなく座部12及び背凭れ14の相互間の回転、例えば、傾倒を可能にする。これにより、座部12の傾倒度を背凭れ14の傾倒度とは異なる傾倒度に制御することができる。図11に示すように平行アーム30,32が限界一杯の直立位置にある時、座部12及び/または背凭れ14がいずれも前方へやや傾斜していることが好ましい。ユーザーが着座すると、座部12及び背凭れ14がユーザーの体重に応じて後下方へ、座部12と背凭れ14がそれぞれほぼ水平及び垂直に、またはやや後方へ傾いた位置へ移動する。ユーザーが後へ寄り掛かって背凭れ14に体重をかけると、座部12及び背凭れ14は図12に示す位置に相当する限界一杯の傾倒位置まで傾倒する。Y-字リンク70は背凭れ14を支持する作用に寄与すると共に座部12に対する背凭れ14の傾倒度を制御する作用にも寄与する。
図13-15には、傾倒制御ハウジング16との関連において、運動学的ダイヤグラムを使用して平行リンク52,54、Y-字リンク70、座部12及び背凭れ14を示す。図13は限界一杯の直立位置で、図14は限界一杯まで傾倒した位置で、図15はこれら2つの位置で椅子10を示す。本発明の開発及び試験の結果として得られた平行アーム30,32の好ましい実施例は図13-15に示す寸法及び角度を有し、後述するような所要の態様で座部12及び背凭れ14が傾倒する。
非使用状態では椅子10の座部12は水平であればよいかのように思われる。しかし、座部12はやや、例えば、約3°前傾していることが好ましい。即ち、椅子10に誰も腰掛けていない状態において、座部12はやや前傾していることが好ましい。これは予想に反することであるが、本発明のリンク設計では、ユーザーが椅子に着座するや否や、ユーザーの体重に応じて椅子10が水平またはやや後傾した状態になることが実証された。既に述べたように、ユーザーが背凭れ14に寄り掛かって椅子10をさらに傾けると、椅子10が後ろへ傾くのに伴って平行アーム30,32がやや「開く」。これは座部12と背凭れ14が「口を閉じる」、即ち、「2枚貝」効果が働いて背凭れ14がユーザーの背中を押し、不快感を与えるのを防ぐ上で望ましい。
駆動リンク52及び従動リンク54は従来の設計に見られるように背凭れ14に連結されるのではなく傾倒制御ハウジング16と座部12の間に連接されているから、本発明の椅子10の傾倒は座部12に加わるユーザーの体重に直接影響される。即ち、椅子10の傾倒はユーザーが椅子10の背凭れ14に加える力よりもユーザーの体重によって制御される。従って、ユーザーが寄り掛かった姿勢から真直ぐな姿勢に移ると、背凭れ14がユーザーの背中と完全に接触したままであっても、背凭れ14がユーザーの背中をはっきりわかる程押すことはない。即ち、椅子10の傾倒には「ドゥエル(休止時間)」があり、ユーザーが真直ぐな姿勢に戻っても、椅子10は短時間に亘ってその位置を維持する傾向があり、椅子10から投げ出される感じを防止することができる。従って、椅子の傾倒は「背凭れによって駆動される」のではなく、「座部によって駆動される」のである。
また、ユーザーが椅子10に掛ける時、ユーザーの体重の作用下に座部12が下方へ移動するから、ある程度の位置エネルギーが傾倒バネ58に蓄積される。(傾倒バネ58が弛むと)この位置エネルギーが解放され、椅子10から立ち上ろうとする時、ユーザーを助ける。その結果、掛ける時にも立ち上る時にも椅子10は従来の椅子よりも快適性に優れる。背凭れに向かって背中を押すことで傾倒バネを作動させる(即ち、背凭れによって駆動される)従来の椅子では、椅子から立ち上がるのを「たすける」要因があるとすれば、背凭れがユーザーの背中を押すことだけであり、椅子から真直ぐに起立するのを助けることにはならない。それどころか、着座の際にも立ち上がる際にも、背凭れがユーザーの背中を押し付けることは不快且つ有難くない状態である。
座部12と背凭れ14を傾倒制御ハウジング16に連結する平行アーム30,32は、座部12の傾倒と背凭れ14の傾倒との比が1.2:1となるように設計されている。椅子10が傾倒すると、座部12の後部が座部12の前部よりも下方へ移動し、座部12が後方へ傾倒する。座部12の傾倒はユーザーの体重次第であるから、傾倒は極めて円滑であり、制御し易い。また、ユーザーの体重は座部12を傾倒させる要因であるから、椅子10の傾倒には重力の助けがあり、心地よく寄り掛かるためにユーザーが背凭れ14に大きい力を加えなくてもよい。
傾倒バネ58に対する初期張力を増減する、即ち、傾倒バネ58に対するプレロードを調整するために、前記テンション調整ノブ38を設ける。(ユーザーの体重に応じて)ユーザーが座部12及び背凭れ14を傾倒し難くまたは傾倒し易くするため、傾倒バネ58に作用するテンションを増大または軽減するようにテンション・ノブ38を回転させる。
図10から明らかなように、上記回転テンション・ノブ38は傾倒バネ58に連結されたテンション制御装置に連結されている。図示のように、テンション・ノブ38はユーザーが操作し易いように傾倒制御ハウジング16の下方に配置されている。
テンション制御御装置は、テンション・ノブ38から傾倒制御ハウジング16内へ延びるネジ棒90の端部に連結されている。ネジ棒90の端部はナット92及びウォッシャー94と協働し、ウォッシャー94はネジ棒90を傾倒バネ58の非可撓性外面60と咬合・協働させる。抜け止めピン96はナット92がネジ棒90の端部から脱落しないように作用する。図示の実施例では、傾倒バネ58の非可撓性外面60と一体形成可能なキャンチレバー・アーム98が外面60から外方へ延びている。テンション・ノブ38が、例えば、時針方向に回転すると、ナット92がノブ38に向かって引っ張られ、ナット92と共にキャンチレバー・アーム98も下方へ引っ張られて傾倒バネ58を回転させることによってバネ58のテンションを増大させ、傾倒バネ58をそれ以上圧縮することを困難にし、座部12及び背凭れ14の傾倒をより困難に且つ緩慢にする。テンション・ノブ38を反対方向に回転させると、傾倒バネ58が初期位置へ、または初期設定位置を越える位置まで戻り、テンションが軽減されるから、座部12及び背凭れ14の傾倒が容易になる。従って、テンション・ノブ38を調節することによって傾倒バネ58のテンションを予調整すれば、ユーザーが背凭れ14に寄り掛かった時の座部12及び背凭れ14の傾倒度及び/または傾倒の容易さを調節することができる。傾倒バネ58はまた、駆動リンク52との駆動シャフト46の連結部を介して座部12と連結しているから、座部12及びこれと連結している背凭れ14は多少とも座部に作用するユーザーの体重に応じて傾倒する。このように、傾倒は「座部によって駆動される」。
同じくテンション調節について説明すると、比較的バネ定数の低い傾倒バネ58を使用できるように平行アーム・リンケージを利用して座部12をテンションバネに回転自在に連結することでモーメント・アームを比較的小さくなることで、テンション調節ノブ38の機能も高められる。具体的には、傾倒バネ58のバネ定数が低いから、テンション調節ノブ38の調節がバネ定数の高い傾倒バネを必要とする従来の傾倒制御機構よりも遥かに容易である。即ち、バネ定数の高いバネよりもバネ定数の低いバネよりもテンションを増大させ易いからである。
多くの場合、バネ定数が比較的高い傾倒バネが必要となる理由は、従来の傾倒椅子では傾倒バネを座部ではなく背凭れに取付け、その結果、背凭れとの連結部と(従来は椅子の座部の真下に位置する)傾倒バネとの連結部との間の距離が比較的大きいため、モーメント・アームも比較的長くなることにある。バネに作用する力はモーメント・アームの端部に加わる負荷とモーメント・アームの長さに比例するから、従来の椅子における著しく長いモーメント・アームはバネ定数の高い傾倒バネを必要とする。従って、このようなバネ定数の高い傾倒バネのためのテンション調節には、傾倒バネをプレロードするためテンション調節ノブを回転させるための、このバネ定数に対応する大きい力が必要である。テンション調節ノブの回転に要する大きい力を軽減するための方法の1つは傾倒バネから延びる比較的長いキャンチレバー・アームを使用することである。しかし、比較的長いキャンチレバー・アームを使用すると、比較的長い傾倒制御ハウジングが必要となる可能性がある。従って、背凭れではなく座部によって傾倒バネを作動させることによって遥かに短いモーメント・アームを、即ち、バネ定数が比較的低い傾倒バネを可能にすることから得られる有利性が顕著であることは云うまでもない。
ユーザーにとっての便宜上、テンション調節ノブ38上のマーカーと協働するマーキング40を傾倒ハウジングに設けることによって、ユーザーそれぞれの体重に相当する設定値を指示することができる。ユーザーは自分の体重に近似する体重設定値を利用することによって傾倒テンション調節ノブ38を適正な設定値まで回転させることができる。あるいは、ユーザーの好みに応じて、ユーザーがテンションを自分の体重より軽い体重にセットすることによって座部12を素早く傾倒させるか、または自分の体重より軽い体重にセットすることによって座部12をゆっくり傾倒させることもできる。例えば、体重が175ポンドのユーザーはノブ38を175ポンドの設定値にセットするか、または自分の体重より重い体重または軽い体重にセットすることによって、傾倒をそれぞれ困難にするか、または容易にすることができる。また、傾倒レバー41の位置によって座部12の傾倒範囲を制限することができる。
駆動シャフト46と連結・連動するのが傾倒レバー41である。外方へ引っ張られると、傾倒レバー41は座部12及び背凭れの傾倒度を制限またはセットすることができる。傾倒レバー41は外方へ引っ張ることによって制限装置を解除する。
特に図10から明らかなように、傾倒レバー41は例えば図上で見て傾倒制御ハウジング16の左側に設けられ、傾倒制御ハウジング16内の傾倒ロッキング集合体と協働するロッド端
42を含む。傾倒ロッキング集合体104は傾倒レバー41傾倒ハウジング16から外方へ引っ張ると傾倒が可能になる解除位置から傾倒レバー41傾倒ハウジング16内へ押し込むと傾倒が阻止されるロック位置への移動を容易にする磁気部材100(及び戻り止め/ストップ108)と協働する。傾倒レバー41を内方へ押すと、断面が6角形の従動シャフト48の回転を阻止する傾倒制限部材105を含む傾倒ロッキング集合体104が作動される。傾倒制限部材105は内側ブッシング106及び外側ブッシング107により傾倒制御ハウジング16内の磁気部材100及び戻り止め108の近傍に固定される。戻り止め108は詳しくは後述するように上記磁気部材100と協働する。磁気部材100は傾倒レバー41のロッド端42の先端またはその近傍に配置される。戻り止め108は互いに間隔を保つ対向する側壁109,110を有し、磁気部材100はその一部112が対向側壁109,110間に介在する。側壁109,110は磁性材から成り、磁気部材100が側壁109,110のいずれかに接近すると、その側壁に引き寄せられて接触する。傾倒レバー41を内方へ押し込んで断面6角形の従動シャフト48をロックすると、磁気部材100が戻り止め108の最も内側の側壁110に接近し、磁気部材100が側壁109と接触する。この状態において、傾倒レバー41は完全ロック位置まで移動する。戻り止め108に対する磁気部材100の引力は傾倒レバー41を限界一杯まで内方へ引っ張って、内方への限界一杯の移動を確実にするだけでなく、磁気部材100が側壁109と接触すると、可聴指示、即ち、「クリック」を発生させる。この「クリック」は傾倒レバー41がロック位置ぎりぎりまで移動したことをユーザーに音で知らせるものである。逆に傾倒レバー41外方へ引っ張ると、磁気部材100が戻り止め108の反対側の側壁110に接近し、磁気部材100が側壁110と接触し、傾倒レバー41は限界一杯まで外方へ解除位置まで確実に移動する。磁気部材100と側壁110が接触すると、上述した場合と同様に可聴「クリック」が発生し、傾倒レバー41が傾倒を可能にする解除位置ぎりぎりまで移動したことを知らせる。
ユーザーにとっての快適性をさらに増すため、背凭れ14は腰当て部材を含むことが好ましい。図16-19に示す本発明の椅子10のための腰当て200の実施例はユーザーの身体と接触する前面腰当てパッド202と、例えば、マグネットのような磁気部材によって腰当てパッドに固定される背面腰当てフレーム204とから成る。前面腰当てパッドと背面腰当てフレーム204は着脱自在であり、マグネットによって背凭れ14の生地28を挟んで互いに協働関係に保持することが好ましい。好ましくは、腰当てフレーム204の面と結合する前面腰当てパッド202の裏側に設ける6個のマグネット208a-208fと対応するように背面腰当てフレーム204の面に6個のマグネット206a-206fを設ける。このように、背凭れ14のメッシュ生地が腰当て200の前面パッド202と背面フレーム204の間に「挟まれる」。腰当て200と背凭れ14の間には恒久的な結合は存在しないから、腰当200は背凭れ14のほぼ全面に沿って上下方向(及び水平方向)に調節自在である。従って、腰当て200はユーザーの希望に応じて腰から骨盤域までほぼ無限に調節可能である。必要に応じて、ユーザーは前面パッド202を移動させることによって腰当て200を移動または調節することができ、背面フレーム204も介在するマグネットの作用により、この移動または調節に追従する。
詳しくは図18に示すように、前面腰当てパッド202は射出成形プラスチックで形成することができ、ユーザーの腰部になじむ様にやや湾曲している。前面、即ち、ユーザーと接触する腰当てパッド202の前面は接触感の良い材料、例えば、熱可塑エラストマー(TPE)、ゲルまたはゴムなど、背凭れ14及び腰当て200に背中を凭れかけるユーザーにとって接触感の良い材料で形成することが好ましい。前面パッド202の前面もその背面も射出成形で形成することができる。好ましい実施例では、背面は前面よりも硬いが、それでも可撓性である。従って、ユーザーが椅子10に掛け、背中を腰当て200に凭れさせると、腰当て200はメッシュ生地28と共に撓み、快適にユーザーを支える。背凭れ14と接触する前面パッド202の背面にはマグネット保持部をこの背面と一体的に成形することができる。
上述したように、座部12及び背凭れ14の材料としてメッシュ材28を利用することが好ましい。但し、腰当て200の位置調整の際に材料の両面側において腰当て200の前面パッド202と背面フレーム204の協働マグネット部材の協働関係を維持できる比較的薄い適当な材料なら如何なるタイプの材料から形成してもよい。
座部12及び背凭れ14はフレームに弾性メッシュ生地28を取付けたものであることが好ましい。図20に示すように、メッシュ生地28は複数の異なるタイプの材料、座部12及び背凭れ14に目の粗い織りパターンを付与する、例えば、マルチフィラメント・ヤーンとモノフィラメント・ファイバーから成ることが好ましい。これにより、椅子10及びユーザーの身体の周りの空気循環がよくなるから、ユーザーのとって心地よく着座できる構成となる。座部12及び背凭れ14はそれぞれ成形されたフレーム、例えば、詳しくは後述するように、射出生計またはその他の公知のプラスチック成形技術によって形成されたフレームを含み、これにメッシュ生地を組み込まれる。図示のように、メッシュ生地28は目の粗い織りパターンのマルチフィラメント・ヤーンとものヤーンと直交するモノフィラメント・エラストマー材と共に絡み織りパターンに織り交ぜられている。絡み織りとは横糸と横糸の間で、互いに隣接する縦ファイバー(即ち、モノフィラメント)が1対ずつ一方と他方が交絡して、それぞれの横糸を有効に固定している織りパターンである。図面では、マルチフィラメント・ヤーン250が上下方向に延び、モノフィラメント材255水平方向に「波打って」マルチフィラメント・ストランド間で交絡するように織られた1対のモノフィラメント・ストランドから成る。このように織られた生地28はユーザーの身体をしっかりと支えるのに充分な緊張状態まで「伸張自在」である。
座部12及び背凭れ14の好ましい実施例を図8及び21-26に示す。図8に示すように、座部12はファスナ314を利用して外側フレーム308に取り付け、固定された内側フレーム310を含む。図21に示すように、外側フレーム308はメッシュ生地28が取付けられたリム部分300を封入するオーバーモールディング305から形成される。図8及び22に示すように、背凭れ14も同様にファスナ314を介して内側フレーム311に固定された外側フレーム309を含み、外側フレーム309もメッシュ生地28が取付けられているリム部分301を封入するオーバーモールディングから形成される。
座部12の構成及び組立て方法を以下に詳しく説明するが、背凭れ14の構成及び組立て方法は本質的に座部12の場合と同じであるから、背凭れ14の構成は簡単な説明にとどめる。
内側フレーム310は主要な構造部品であり、傾倒制御ハウジング16に座部12を固定するための部位を含む。外側フレーム308は上述したように、詳しくは後述する態様でメッシュ生地と一体に形成することが好ましい。刺繍用フレームのように外側フレーム308を内側フレーム310に重ねると、メッシュ生地28が内側フレーム310の上縁312に密着する。外側フレーム308を内側フレーム310に沿って押し下げると、メッシュ生地28の周縁が内側フレーム310の上縁に沿って下方へ引っ張られ、椅子10に腰掛けるユーザーを支えるのに必要な程度にまで張りつめる。次いで、内側フレーム310を、複数のファスナ、例えば、図26に示すように内側フレーム310の周縁に間歇的に成形されたパイロット孔を貫通し、外側フレーム308に形成したネジ孔と螺合する機械的なネジなど介して外側フレーム308に固定する。このようにして内側フレーム310と外側フレーム308が一体的にロックされ、メッシュ生地28を張りつめた状態に維持する。当業者には明らかなように、内側フレーム310と外側フレーム308を一体的にロックするために上記以外のファスナ手段を利用することもできる。例えば、公知の電気的及び/または化学的接合方法を採用することもできる。好ましい実施例では、内側フレーム310及び外側フレーム308の双方にこれら両フレームの結合を容易にするための平滑な咬合面を設ける。
図21-26には、本発明の好ましい実施態様として、座部12及び背凭れ14それぞれの外側フレーム308,309の構成手順を示す。座部に関しては、先ず、伸張自在なメッシュ生地28をリム部分300と一体に製造するが、この段階でメッシュ生地28は弛緩した、または未伸張の状態にある。リム部分300を取付けるには、弛緩状態のメッシュ生地28をジグに固定して射出成形機に移し、所要の座部12の形状に従ってメッシュ生地28の周りにリム部分300を射出成形する。リム部分300はコポリエステル・エラストマーまたはポリプロピレン材料から成ることが好ましく、これをメッシュ生地28の周縁に射出成形する。リム部分300の材料は、この材料を融解させるのに要する温度、及び射出成形に使用される温度がメッシュ生地28を損傷することがないように選択される。この温度は約200℃を超えないことが好ましい。こうしてリム部分300の材料と伸張自在なメッシュ生地28との間に恒久的な接合が形成される。リム部分300から外方へ張出すことがあるメッシュ生地28の外周縁はトリミングしてもよいし、外側フレーム308を製造する最終工程中そのまま残して置いてもよい。
図示のように、外側フレーム308はほぼ非可撓性であり、メッシュ生地28の周縁周りにはみ出してリム部分300を囲んでいる非可撓性材料をオーバーモールディングすることによって、フレーム製造の工程において膨張または変形する恐れのない複合外側フレーム集合体308を形成することで完成する。オーバーモールディング材料としては、約220℃を超えない温度でリム部分300に重ねて射出成形されるガラス充填または非ガラス充填ナイロンまたはネオプレンまたはポリプロピレンを使用することが好ましい。この温度はオーバーモールディング工程中にリム部分300を著しく融解することがないように選択される。オーバーモールディングはリム部分300を越えてメッシュ生地28に接触することがないから、メッシュ生地28を損傷する恐れはない。
背凭れ14の外側フレーム309は上述した座部12の外側フレーム308を製造するのと全く方法で製造される。従って、座部12も背凭れ14もそれぞれの内側フレーム310,311は周縁に切れ目のない断面形状を有する。座部12及び背凭れ14の外側フレーム308,309も同様に周縁に切れ目のない断面形状を呈する。内側フレーム310,311及び外側フレーム308,309の形状は互いに補完関係にあることが好ましく、射出成形の工程において任意の輪郭となるように形成することができる。例えば、座部フレームの前縁を下方へ湾曲させれば、着座しているユーザーの腿に違和感を与えることがない。さらにまた、座部フレームの前縁に沿って、メッシュ生地と内側フレームの間に弾性的な挿入物またはパッド317を設けることが好ましい。このパッドは座部前縁においてユーザーの脚に作用する圧迫感を和らげ、座部の快適性を著しく高める。
同様に、背凭れ14はユーザーの背中の下方部分だけでなく肩に近い上方部分にも腰当てを配置できるように形成すればよい。座部12及び背凭れ14の形状に関係なく、メッシュ生地28を組立て前の弛緩状態から最終的な伸張状態まで伸張させる。伸張状態において、生地28は内側フレーム310,311と外側フレーム308,309の間に保持され、ユーザーの体重を充分に且つ心地よく支えることができる程度に緊張状態にある。
以上に述べたデザインの結果、座部及び背凭れのフレーム外面を画定する外側フレーム308,309の外面として、従来よりもスッキリした、且つセンスのよい外面が得られる。背凭れ及び座部にメッシュ生地を利用する椅子のデザインとして、メッシュ部分をcarrier portionに取付け、このcarrier portionを座部及び背凭れのフレーム部材の外面に形成された溝に挿入するというデザインがあり、このデザインでは、carrier portionが挿入された溝の2条の継ぎ目が目立つ。これでは美的に優れた椅子の外観は得られない。本発明における取付け方式では、外側フレーム308,309と内側フレーム310,311の間に1条の継ぎ目が形成されるだけであり、しかもこの継ぎ目は椅子の下から、または後ろからしか見えない。図面からも明らかなように、椅子10の頂面図、正面図及び側面図では、外側フレーム308,309と内側フレーム310,311の間に継ぎ目は見えず、スッキリした、平滑な外観を呈している。内側フレームと外側フレームの間に1条の継ぎ目が見えるのは下からと後ろからだけである。
この種の椅子10に共通のこととして、垂直支柱に高さ調整機構を設けることが好ましい。図9及び10において、傾倒バネ58の直ぐ後方には、傾倒制御ハウジング16の管状容器320が見える。この管状容器320には、基脚18を傾倒制御ハウジング16に連結する上下方向調節可能な垂直支柱20の上端部分が収まっている。管状容器320と隣接するように高さ調節アクチュエータ322が設けられ、このアクチュエータ322が垂直支柱20の上端と協働して垂直支柱20の上下方向調節を行わせる。垂直支柱20は従来のガス圧式ピストン/シリンダのような調節自在な支柱である。アクチュエータ322はその基部において1対の保持手段324,325を介して枢動自在に保持すればよい。アクチュエータ322の先端部は管状容器320に被さり、垂直支柱20の上端部と協働して垂直支柱を上下方向に調節する。高さ調節制御ロッド44の端部45は傾倒制御ハウジング16内に収まり、アクチュエータ322と連動してアクチュエータを枢動させることによって保持されている端部を中心に上下方向調節アクチュエータ322を枢動させ、アクチュエータ322の先端部分が調節自在な垂直支柱20を作動させて座部12の上昇または下降を可能にする。また、傾倒ばね58の非可撓性外面60と上下方向調節アクチュエータ322の間に弾性部材326を介在させることにより、弾性部材326が高さ調節アクチュエータ322を、調節自在な垂直支柱20の上下方向調節動作を停止させ、垂直支柱20の高さを調節できなくなるが位置に向かって偏移させる。高さ調節制御ロッド44の反対端は高さ調節アクチュエータ322を、調節自在な垂直支柱20の上下方向調節が可能になる第2位置へ移動させるために容易に操作できる形状のハンドルである。ハンドルを上向きに移動させれば調節自在な垂直支柱20を上昇または下降させることができ、ハンドルを放せば弾性部材326が自動的に高さ調節アクチュエータ322を、支柱20の上下方向調節を停止させる位置へ偏移させるようにすることが好ましい。
体形及び体重が多岐に亘るユーザーに適応できる多機能の姿勢変化自在なオフィス用または事務用椅子を以上に説明した。
添付の図面を参照しながら、本発明の特定実施例を詳細に説明したが、開示内容から種々の変更及び代替実施態様を開発できることは当業者の良く理解するところである。従って、ここに述べた特定の実施例は飽くまでも説明のための実施例であり、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲は添付の請求項及びその等価物によってのみ定義される。
本発明のオフィス用椅子の実施例を示す斜視図である。 図1に示すオフィス用椅子の左側面図である。 図1に示すオフィス用椅子の右側面図である。 図1に示すオフィス用椅子の正面図である。 図1に示すオフィス用椅子の背面図である。 図1に示すオフィス用椅子の頂面図である。 図1に示すオフィス用椅子の底面図である。 図1に示すオフィス用椅子の実施例の分解図である。 図1に示すオフィス用椅子のための傾倒機構及びそのハウジングを、カバーを取外して示す斜視図である。 図9に示すハウジング及び傾倒機構の実施例を示す分解図である。 図1に示すオフィス用椅子の座部及び背凭れに傾倒機構及びそのハウジングを取付けるためのリンケージ機構の実施例を、背凭れを限界一杯に直立させた状態で示す側面図である。 図11に示すのと同じリンケージを、背凭れを限界一杯に倒した状態で示す側面図である。 傾倒機構を椅子の座部及び背凭れと連結する平行アームの実施例における運動学的ダイアグラムである。 傾倒機構を椅子の座部及び背凭れと連結する平行アームの実施例における運動学的ダイアグラムである。 傾倒機構を椅子の座部及び背凭れと連結する平行アームの実施例における運動学的ダイアグラムである。 図1に示すオフィス用椅子のための腰支え部材の好ましい実施例を示す斜視図である。 図16に示す腰支え部材の反対側を示す斜視図である。 図1のオフィス用椅子を、図16及び17に示した腰支え部材の表側が見えるように示す斜視図である。 図1のオフィス用椅子を、椅子および図16及び17に示した腰支え部材の裏側が見えるように示す斜視図である。 椅子の座部及び背凭れに利用できるメッシュ材の構造を示す拡大図である。 図1のオフィス用椅子における座部の実施例を示す分解図である。 図1のオフィス椅子の背凭れの分解図である。 座部布地及びこれに取付けられた周縁リム部分の実施例の部分断面図である。 オーバーモールドされた部分をも示す図23と同様の部分断面図である。 図24のオーバーモールドを、本発明実施例の座部または背凭れに取付ける場合を想定して示す断面図である。 図25の断面図のうち、本発明実施例の座部フレームまたは背凭れフレームにオーバーモールドを取付ける態様を示す部分断面図である。

Claims (11)

  1. 基脚、前記基脚によって支持される座部、前記座部と前記基脚の間に介在する傾倒機構、及び前記座部及び前記傾倒機構の少なくとも1つに連結された背凭れを含む椅子において、
    前記傾倒機構傾倒バネを有し、前記傾倒機構に対して前記座部を移動させると前記傾倒バネが作動されて前記座部及び前記背凭れの少なくとも一方が傾倒するように前記傾倒機構が前記座部と複数のリンクを介して回転自在に連結され、
    前記複数のリンクが前記座部が前記傾倒機構を中心に回転するように前記座部の両側を前記傾倒機構に回転自在に連結する第1及び第2平行アーム対より成り、前記傾倒機構に対する前記座部の移動に応答して前記傾倒バネが作動されて前記座部及び前記背凭れの少なくとも一方が傾倒するように前記第1及び第2平行アーム対の少なくとも1対が前記傾倒バネと連結され、
    傾倒を可能にする第1位置と傾倒を阻止する第2位置との間を移動自在な傾倒制限手段を含み、前記傾倒制限手段前記第1及び第2位置の少なくとも一方への前記傾倒制限手段の移動を容易にする磁性部分を有することを特徴とする椅子。
  2. 前記背凭れが回転自在に前記座部と連結され、
    前記背凭れを前記傾倒機構と回転自在に連結する第3リンクをさらに含み、前記座部及び前記背凭れが互いに独立に傾倒することを特徴とする請求項に記載の椅子。
  3. 前記背凭れが前記第1及び第2平行アーム対の一方の対の前記座部との連結点において回転自在に前記座部と連結されることを特徴とする請求項に記載の椅子。
  4. 前記第3リンクが2つの位置において回転自在に前記傾倒機構と連結され、1つの位置において枢動自在に前記背凭れと連結していることを特徴とする請求項に記載の椅子。
  5. 前記座部及び背凭れの少なくとも一方が前記座部及び背凭れが傾倒する前の初期位置において少なくともやや前傾していることを特徴とする請求項に記載の椅子。
  6. 前記傾倒制限手段が前記第1及び第2位置の少なくとも一方へ前記傾倒制限手段が完全に移動したとの可聴指示を発生することを特徴とする請求項1に記載の椅子。
  7. 前記磁性部分が前記第1及び第2位置の少なくとも一方へ前記傾倒制限手段が完全に移動したとの可聴指示の発生を容易にすることを特徴とする請求項に記載の椅子。
  8. 前記座部及び前記背凭れの少なくとも一方が可撓性メッシュ材をも含むことを特徴とする請求項1に記載の椅子。
  9. 前記背凭れの両面に沿って位置設定可能な前面パッド及び背面フレームを有する腰当てと、
    前記前面パッドの背面及び前記背面フレームの前面に設けた磁性部材とを含み;
    前記背凭れの前記両面において前記前面パッドと背面フレームを前記磁性部材間の引力によって互いに位置保持できることと;
    前記磁性部材によって前記前面パッドと背面フレームを互いに位置保持しながら前記腰当てを前記背凭れに対して移動させ、前記背凭れにおける所要の位置に配置できることと;
    前記背凭れを、前記腰当てを移動させる過程において前記磁性部材が前記前面パッド及び背面フレームを互いに位置保持することを可能にする材料から形成したことをも含むことを特徴とする請求項1に記載の椅子。
  10. 前記背凭れの材料が可撓性のメッシュ材を含むことを特徴とする請求項に記載の椅子。
  11. 前記座部及び前記背凭れの少なくとも一方を可撓性メッシュ材から形成したことと;
    前記可撓性メッシュ材が前記座部及び前記背凭れの少なくとも一方の実質的に非可撓性の外側フレーム部分に取付けられた周縁部分を有することと;
    前記外側フレーム部分をこれと対応する前記座部及び前記背凭れの少なくとも一方の内側フレーム部分に取付けることができることと;
    前記可撓性メッシュ材が初期の未伸張状態から、前記外側フレーム部分が前記内側フレーム部分に取付けられる時の最終伸張状態まで伸張可能であることと;
    前記外側フレームが、前記内側フレーム部分に取付けられる時に前記座部及び前記背凭れの少なくとも一方の外面を形成する外面を有することと;
    前記内側フレームが前記外側フレーム部分に取付けられる前記外側フレーム部分によって隠蔽されることをも含むことを特徴とする請求項1に記載の椅子。
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