従来から、エネルギーを有効に利用することが可能な分散型の発電装置として、発電効率及び総合効率が高い燃料電池コージェネレーションシステム(以下、単に燃料電池システムという)が注目されている。
燃料電池システムには、その発電部の本体として、燃料電池が配設されている。この燃料電池の多く、例えば、既に実用化されているリン酸型燃料電池(略称、PAFC)や、現在開発が進められている固体高分子型燃料電池(以下、単にPEFC)は、発電のための燃料として水素を用いる。しかしながら、この水素の供給手段は、現在、インフラストラクチャーとして整備されていない。そのため、燃料電池システムには、通常、発電の際に必要となる水素を生成するための水素生成装置が設けられている。この水素生成装置では、メタン等の炭化水素系の原料が用いられて、水素を豊富に含む改質ガスが生成される。燃料電池は、この水素生成装置で生成される改質ガスと空気とを用いて、所定の電力を出力するべく発電を行う。
燃料電池システムに設けられる水素生成装置では、例えば、メタン、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油等の炭化水素系の原料が所定の改質方法によって改質され、これにより改質ガスが生成される。この所定の改質方法の1つとして、水蒸気改質法がある。この水蒸気改質法では、上述したメタン、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油等の炭化水素系の原料に水(水蒸気)が混合され、この混合物が所定の改質触媒を有する改質部に供給され、この改質部において水蒸気改質反応によって改質されることにより、水素が生成される。
水蒸気改質法で用いられる水蒸気改質反応では、水素が主たる生成物として生成する一方で、一酸化炭素(略称、CO)が副生成物として生成する。具体的には、水蒸気改質反応により生成した水素を豊富に含む改質ガスには、一酸化炭素が約10〜15%含まれている。この改質ガスに含まれている一酸化炭素は、燃料電池としてPEFCを用いる場合、そのPEFCの内部に配設される電極触媒を被毒し、PEFCの発電能力を低下させる。そこで、通常は、水素生成装置にCO低減部を更に設け、このCO低減部において改質部から排出された改質ガスに含まれる一酸化炭素を除去する。例えば、このCO低減部は、水素生成装置の出口における改質ガス中の一酸化炭素濃度が100ppm以下、好ましくは10ppm以下になるように、改質ガスに含まれている一酸化炭素を除去する。
通常、水素生成装置に設けられる上述したCO低減部は、改質ガスに含まれる一酸化炭素を十分に除去するために、第1の一酸化炭素低減部としての変成部と、第2の一酸化炭素低減部としてのCO除去部とを備えている。ここで、この第1の一酸化炭素低減部としての変成部は、改質ガスに含まれている一酸化炭素を所定の変成触媒を用いる水性ガスシフト反応によって水蒸気と反応させることにより水素と二酸化炭素とに変換し、これにより改質ガス中の一酸化炭素の濃度を低減する。又、第2の一酸化炭素低減部としてのCO除去部は、変成部から排出された改質ガスに含まれる一酸化炭素を所定の選択酸化触媒を用いる選択酸化反応によって空気中の酸素と反応させることにより二酸化炭素に変換するか、或いは、変成部から排出された改質ガスに含まれる一酸化炭素を所定のメタン化触媒を用いるメタン化反応によりメタン化することにより、改質ガス中の一酸化炭素の濃度を低減する。このように、水素生成装置にCO低減部を更に設けることにより、水素生成装置から排出される改質ガス中の一酸化炭素濃度は、少なくとも100ppm以下にまで低減される。
ところで、CO低減部の変成部に配設される変成触媒や、CO低減部のCO除去部に配設される選択酸化触媒又はメタン化触媒は、通常、使用環境や使用時間の経過によって上述した水性ガスシフト反応や選択酸化反応又はメタン化反応に対する触媒活性が低下するという傾向を有している。特に、変成部に配設される変成触媒は、水濡れや酸化に対して非常に敏感であり、変成触媒に水が付着した場合や、変成触媒が長時間に渡って酸素と接触した場合には、水性ガスシフト反応に対する触媒活性が著しく低下する。かかる触媒活性の低下は、低温環境下においても進行する。そして、水濡れや酸化によって変成触媒の触媒活性が低下した場合には、変成部における水性ガスシフト反応が好適に進行しないため、改質部から排出される改質ガスの一酸化炭素の含有濃度を十分に低減することはできない。この際、変成部から排出される改質ガスの一酸化炭素の含有濃度がCO除去部の一酸化炭素の除去能力を超える場合には、CO除去部において改質ガス中に含まれる一酸化炭素を十分に除去することができないので、水素生成装置から排出される改質ガス中の一酸化炭素の濃度は100ppmを超える。そして、一酸化炭素が十分に除去されない改質ガスがPEFCに供給された場合には、PEFCの内部に配設される電極触媒が被毒されるので、PEFCの発電能力は著しく低下する。
変成部に配設される変成触媒の水性ガスシフト反応に対する触媒活性の低下は、下記の状況下において容易に発生し得る。
即ち、分散型エネルギー供給システムとしての燃料電池システムを特に家庭用途において使用する場合、エネルギーの利用バランスが変化して、発電された電力と発電に伴って発生した熱エネルギーとの双方を有効に利用できなくなる場合がある。例えば、一般的な家庭では、日中の電力消費量は多く、夜間の電力消費量は少ない。この場合、日中と夜間とに関わらず一定の電力を出力させるように燃料電池システムを運転させると、日中においては発電された電力や熱エネルギーを有効に利用することができるが、夜間においては発電された電力や熱エネルギーを有効に利用することはできない。そこで、通常は、電力の消費量が少ない夜間には燃料電池システムの発電運転を停止させ、商用電源のみから電力の供給を受けるようにしている。
この際、燃料電池システムの発電運転の停止時には、水素生成装置の内部に配設された各種触媒の触媒活性の低下を防止する観点から、水素生成装置の内部を窒素ガス等の不活性ガスを用いて置換することが望ましい。しかしながら、窒素ガス等の不活性ガスの供給手段は、通常、インフラストラクチャーとして整備されていない。又、窒素ガス等の不活性ガスを供給可能なガスボンベ等の一般家庭への設置は、市場の供給体制が整備されていないこともあり困難である。そのため、実際には、窒素ガス等の不活性ガスを用いることなく、燃料電池システムの発電運転を停止する。
さて、窒素ガス等の不活性ガスを用いることなく燃料電池システムの発電運転を停止させた場合、水素生成装置の内部から大気中に改質ガスが拡散すると共に、水素生成装置の内部に外気が混入する場合がある。この場合、その混入する外気に含まれる酸素の影響を受けて、水素生成装置の内部が酸化雰囲気になる。ここで、変成触媒として一般的に広く用いられるCu−Zn系変成触媒を使用する場合には、そのCu−Zn系変成触媒が酸化雰囲気となった水素生成装置の内部で容易に酸化される。このCu−Zn系変成触媒の酸化反応は、比較的低温においても進行する反応である。そして、この酸化されたCu−Zn系変成触媒は水性ガスシフト反応に対する触媒活性を殆ど有さないため、水素生成装置のCO低減部の性能が著しく低下する。
又、燃料電池システムの発電運転を停止させる際、改質部における水蒸気改質反応によって生成した加湿状態の改質ガスが変成部に残留した状態のままで水素生成装置の冷却を行うと、その加湿状態の改質ガスに含まれる水が変成触媒の表面に結露する。この場合、上述したCu−Zn系変成触媒は水濡れに対して非常に敏感であり、少量の水の付着によっても、水性ガスシフト反応に対する触媒活性が著しく低下する。又、この場合、耐酸化性を有する変成触媒として貴金属系触媒を用いても、その表面に水が結露することによって触媒特性が低下する。このように、水の結露による変成触媒の触媒活性の低下によっても、水素生成装置のCO低減部の性能が低下する。
そこで、使用環境や使用時間の経過によって変成触媒の水性ガスシフト反応に対する触媒活性が低下した場合であっても良質の改質ガスを燃料電池に対して供給するために、変成触媒の水性ガスシフト反応に対する触媒活性が低下した際に、改質部に供給する水の割合を多くする、或いは、変成触媒の温度を上昇させ、これにより水素生成装置の性能を見かけ上維持する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
又、変成部における水性ガスシフト反応が発熱反応であることを利用して、変成部における温度変化を測定することにより変成触媒の水性ガスシフト反応に対する触媒活性の低下を検出及び判定し、その判定の結果に基づいて改質部に供給する水の割合を多くする、或いは、変成触媒の温度を上昇させ、これにより水素生成装置の性能を見かけ上維持する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−345254号公報
特開2003−217636号公報
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る水素生成装置100の構成を模式的に示すブロック図である。尚、図1では、本発明を説明するために必要となる主要な構成要素のみを示しており、その他の詳細な構成要素については記載を省略している。
先ず、本実施の形態に係る水素生成装置100の基本的な構成について、図1を参照しながら概説する。
図1に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置100は、メタン、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油等の炭化水素系の原料と水とから水素を豊富に含む改質ガス(又は、水素リッチガス)を生成する改質部1を備えている。この改質部1には、図1では特に図示しないが、上述した炭化水素系の原料と水との混合物を用いて水蒸気改質反応により改質ガスを生成するための改質触媒が配設されている。又、この改質部1には、水蒸気改質反応を進行させるために改質触媒を加熱するための改質加熱部4と、この改質加熱部4によって加熱される改質触媒の温度を検出するための改質温度検出部5が配設されている。尚、本実施の形態では改質温度検出部5が改質触媒の温度を検出する構成を示しているが、例えば、改質温度検出部5が改質触媒上での水蒸気改質反応を経た後の改質ガスの温度を検出する構成としてもよい。又、改質部1内の改質触媒の温度は、改質温度検出部5により検出される改質触媒の温度に基づいて、後述する制御部11により改質加熱部4の動作が制御されることにより適切に調整される。
又、図1に示すように、改質部1の上流側には、メタン、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油等の炭化水素系の原料を改質部1に供給する原料供給部2が配設されている。又、改質部1の上流側には、改質部1に水を供給するための水供給部3が配設されている。ここで、上述した炭化水素系の原料として天然ガスが用いられる場合には、原料供給部2には天然ガスのインフラストラクチャーから延出する天然ガス供給用の配管が接続されている。又、炭化水素系の原料としてLPGやガソリン等の原料が用いられる場合には、原料供給部2にはLPGボンベやガソリンタンク等から延出する原料供給用の配管が接続されている。又、水供給部3には、水道管から延出する水供給用の配管が接続されている。尚、本実施の形態では炭化水素系の原料として、メタン、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油等を用いる例を示しているが、水素を生成させる観点から、上記原料供給部2から改質部1に供給する原料は、少なくとも炭素及び水素から構成される化合物を含んでいればよい。例えば、メタン、天然ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油等の他の原料として、メタノール等のアルコール系原料を用いてもよい。又、原料供給部2及び水供給部3から改質部1への原料及び水の供給量は、後述する制御部11によって原料供給部2及び水供給部3の動作が制御されることにより適切に調整される。
一方、本実施の形態に係る水素生成装置100には、改質部1から排出された改質ガスの一酸化炭素の濃度を少なくとも100ppm以下にまで低減するために、変成部7とCO除去部10とを備えるCO低減部13が配設されている。
即ち、図1に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置100には、CO低減部13を構成する第1の一酸化炭素低減部としての変成部7が配設されている。この変成部7には、図1では特に図示しないが、改質ガスに含まれる一酸化炭素を水性ガスシフト反応によって除去するための変成触媒が配設されている。本実施の形態では、この変成触媒として、セリア−ジルコニア担体にPtを担持して調整したPt/セリア−ジルコニア触媒を用いている。この変成触媒を有する変成部7は改質部1の下流側に配設されており、改質部1から排出される改質ガスに含まれている一酸化炭素を水性ガスシフト反応によって水蒸気と反応させて水素と二酸化炭素とに変換する。又、この変成部7には、水性ガスシフト反応の際における変成触媒の温度を検出するための変成温度検出部8が配設されている。この変成温度検出部8は、変成触媒の温度を直接的に検出することが可能となるように、変成部7に配設されている。例えば、変成温度検出部8を構成する温度を実質的に検出する温度プローブが、変成触媒の内部に埋設されている。この変成温度検出部8によって検出される変成触媒の温度は、例えば、改質部1から排出される高温状態の改質ガスによって変成触媒が加熱されることによって決定される。そこで、本実施の形態に係る水素生成装置100では、改質部1から排出される改質ガスの温度を上述した変成部7における水性ガスシフト反応に適した温度に調整するために、改質部1と変成部7とを接続する配管14の周りに、冷却用配管6が螺旋状に配設されている。この冷却用配管6の内部には、冷却水が循環される。この冷却用配管6は、改質部1を構成する構成要素の内の1つとして配設されている。尚、冷却用配管6に供給される冷却水の流量は、図1では特に図示しないが、所定の流量調整手段(例えば、流量を調整可能なポンプ等)によって制御される。この所定の流量調整手段の動作は、変成温度検出部8の出力に基づいて、後述する制御部11により適宜制御される。尚、本実施の形態では、冷却用配管6により改質部1から排出される改質ガスの温度を調整する構成を例示しているが、改質部1から排出される改質ガスを冷却する手段としては様々な構成が考えられ、燃料電池システムの構成に応じて、如何なる冷却構成を採用してもよい。又、本実施の形態では、変成温度検出部8が変成触媒の温度を直接的に検出する構成を示しているが、このような構成に限定されることはなく、例えば、変成温度検出部8が変成触媒上での水性ガスシフト反応を経た後の改質ガスの温度を検出し、その検出する改質ガスの温度を介して変成触媒の温度を間接的に検出する構成としてもよい。かかる構成としても、変成触媒の温度を的確に検出することが可能である。
又、図1に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置100には、CO低減部13を構成する第2の一酸化炭素低減部としてのCO除去部10が配設されている。このCO除去部10は、変成部7から排出される改質ガスの一酸化炭素濃度を更に低減する。このCO除去部10には、図1では特に図示しないが、改質ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化反応によって更に除去するためのCO除去触媒が配設されている。このCO除去触媒を有するCO除去部10は変成部7の下流側に配設されており、変成部7から排出される改質ガスに含まれている一酸化炭素を選択酸化反応によって二酸化炭素に変換する。この選択酸化反応では、酸素が用いられて一酸化炭素が二酸化炭素に変換される。そこで、本実施の形態に係る水素生成装置100には、空気を供給するための空気供給部9が配設されている。この空気供給部9は、所定の配管を介して、変成部7とCO除去部10とを接続する配管の所定位置に接続されている。CO除去部10では、空気供給部9から供給される空気中の酸素と変成部7から供給される改質ガス中の一酸化炭素とをCO除去触媒を用いて選択酸化反応させることにより、改質ガス中の一酸化炭素濃度が低減される。尚、本実施の形態では、CO除去触媒として選択酸化反応用の触媒が配設される構成を示しているが、その他のCO除去触媒として、例えば、メタン化反応用の触媒を配設する構成としてもよい。この場合、変成部7から排出される改質ガスに含まれている一酸化炭素は、メタン化反応用のCO除去触媒によるメタン化反応によってメタン化される。又、CO除去触媒として、選択酸化反応用のCO除去触媒とメタン化反応用のCO除去触媒とを併設する構成としてもよい。又、空気供給部9から供給される空気の供給量は、変成部7から排出される改質ガス中の一酸化炭素濃度に応じて、予め制御部11に設定される。
更に、図1に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置100には、改質温度検出部5により検出される改質触媒の温度に基づいた原料供給部2及び水供給部3からの原料及び水の供給及び停止、改質加熱部4の制御、及び、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度に基づいた冷却用配管6内の冷却水の循環量等、水素生成装置100を構成する各構成要素の動作を制御するための制御部11が配設されている。本実施の形態に係る水素生成装置100では、この制御部11により各構成要素の動作が適宜制御されることによって、一酸化炭素の濃度が十分に低減された改質ガスが生成される。
次に、本実施の形態に係る水素生成装置100の基本的な動作について、図1を参照しながら概説する。
改質部1によって改質ガスが生成される場合、原料供給部2から天然ガス等の炭化水素系の原料が、又、水供給部3から水が、各々改質部1の改質触媒が配設されている領域(水蒸気改質反応が進行する領域)の内部に供給される。そして、改質部1の内部に供給された炭化水素系の原料と水との混合物が、改質加熱部4によって所定の温度に加熱されている改質触媒上での水蒸気改質反応によって、水素を豊富に含む改質ガスに変換される。この改質部1で生成される改質ガスには、通常、約10〜15%の一酸化炭素が副生成物として含まれている。尚、この際、改質加熱部4による改質触媒の加熱量は、改質温度検出部5によって検出される改質触媒の温度に基づいて適宜調整される。
改質部1において生成された改質ガスは、その後、その改質ガスに含まれている一酸化炭素を少なくとも100ppm以下にまで低減するため、CO低減部13に供給される。
CO低減部13によって改質ガス中の一酸化炭素が除去される場合、改質部1から排出された改質ガスは、先ず、変成部7に供給される。この際、改質部1から排出される改質ガスの温度が、冷却水が流通される冷却用配管6が有する冷却作用によって、変成部7における水性ガスシフト反応に適した温度に調整される。これにより、変成部7の内部に配設された変成触媒の温度が、水性ガスシフト反応に適した温度に調整される。尚、冷却用配管6による改質ガスの冷却量は、変成温度検出部8によって検出される変成触媒の温度に基づいて適宜調整される。そして、変成部7の変成触媒上において、改質部1から供給された改質ガスに含まれる一酸化炭素と水との水性ガスシフト反応によって水素と二酸化炭素とが生成し、これにより改質ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が、先ず、約0.3%以下にまで低減される。
変成部7を経た改質ガスは、その後、一酸化炭素の濃度を更に低減するために、CO除去部10に供給される。この際、変成部7から排出された改質ガスには、空気供給部9から供給される空気が混合される。そして、変成部7から排出された改質ガスと空気供給部9から供給される空気との混合物がCO除去部10に供給されると、そのCO除去部10のCO除去触媒上において、選択酸化反応が進行する。この選択酸化反応により、変成部7から排出された改質ガスに含まれる一酸化炭素が酸化され、二酸化炭素に変換される。これにより、改質ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が、少なくとも100ppm以下にまで低減される。
そして、変成部7及びCO除去部10を備えるCO低減部13によって一酸化炭素の濃度が少なくとも100ppm以下にまで低減された改質ガスは、CO除去部10から排出され、CO除去部10とPEFCとを接続する配管に配設された開閉弁12を通過し、図1では特に図示しないPEFCに供給される。尚、開閉弁12の機能については、後に詳細に説明する。これにより、PEFCでは、その供給される改質ガスと酸化剤としての空気とが用いられて、所定の電力を出力するべく発電が行われる。尚、本実施の形態に係る燃料電池システムでは、定格出力が1kwのPEFCが配設されている。
次に、本実施の形態に係る水素生成装置100の運転方法(動作)について、その一例を挙げて詳細に説明する。
水素生成装置100を用いて改質ガスを生成する場合には、炭化水素系の原料と水とから改質ガスを生成する水蒸気改質反応を進行させるために、改質部1に配設された改質触媒の温度を水蒸気改質反応に適する温度に加熱する必要がある。そこで、本実施の形態では、水素生成装置100を起動した後、原料供給部2及び水供給部3から原料及び水を改質部1の改質触媒が配設された領域内に供給すると共に、改質温度検出部5によって検出される改質触媒の温度が650℃となるように、改質触媒を改質加熱部4によって加熱する。これにより、改質触媒が改質加熱部4により加熱されて温度上昇するので、水蒸気改質反応が好適に進行する。この際、改質部1に対する原料供給部2からの天然ガスの供給量は、変成部1における変成触媒の温度に応じて、段階的に増量させる。例えば、本実施の形態では、水素生成装置100の起動直後における天然ガスの供給量は2.0NLMとし、改質部1で生成された高温状態の改質ガスが供給されて変成部7における変成触媒の温度が上昇するに連れて、段階的に、3.0NLMから4.0NLMへと増量させる。この天然ガスの供給量を段階的に増量させることの具体的な内容については、後に詳細に説明する。尚、この水蒸気改質反応により生成した改質ガスは上述したように約10〜15%の濃度の一酸化炭素を含有しているため、一酸化炭素の濃度を低減するために、改質部1から排出される改質ガスは変成部7に供給される。
変成部7に供給された改質ガスは、変成触媒が配設されている反応領域に到達し、その変成触媒によって水性ガスシフト反応が進行することにより、一酸化炭素の濃度が低減される。ここで、本実施の形態では、変成触媒として、上述したように、セリア−ジルコニア担体にPtを担持して調整したPt/セリア−ジルコニア触媒が用いられている。このPt/セリア−ジルコニア触媒によれば、変成触媒の温度を150℃〜250℃程度の温度範囲にまで昇温させることにより、改質ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を0.3%以下にまで低減することができる。そこで、本実施の形態では、変成部7に配設された変成触媒の温度が150℃以上となるように制御し、これにより、変成部7から排出される改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下となるように制御する。
変成部7から排出された改質ガスは、その改質ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を更に低減するために、CO除去部10に供給される。この際、変成部7から排出された改質ガスには、上述したように、空気供給部9から供給される空気が混合される。そして、このCO除去部10において、変成部7から供給された改質ガス中の一酸化炭素が、CO除去部10内に配設されたCO除去触媒による選択酸化反応によって、少なくとも100ppm以下にまで低減される。
本実施の形態では、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下にまで低減されていることを前提として、CO除去部10に供給する空気供給部9からの空気の供給量が設定(固定)されている。従って、変成部7を通過した後の改質ガスの一酸化炭素濃度が変成触媒の温度低下等により0.3%を上回っている場合には、CO除去部10によって改質ガス中の一酸化炭素濃度を100ppm以下にまで低減することはできない。この場合、一酸化炭素の濃度が100ppm以上である改質ガスをPEFCに供給しても、PEFCの内部に配設された電極触媒が被毒されるので、PEFCの発電能力は著しく低下する。そこで、本実施の形態では、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃になった時に、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下になったと判断する。又、それに伴って、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃になった時に、CO除去部10を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が少なくとも100ppm以下にまで安定的に低減されていると判断する。そして、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃になった後、開閉弁12を閉状態から開状態に切り換えて、CO低減部13によって一酸化炭素の濃度が十分に低減された改質ガスのPEFCへの供給を開始する。
変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃となった後、PEFCの出力電力を定格出力(ここでは、1kw)にまで上昇させるために、改質部1に対する原料供給部2からの天然ガスの供給量を段階的に増量させる。具体的には、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が160℃になった時、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を2.0NLMから3.0NLMにまで上昇させる。又、その後、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が170℃になった時、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を3.0NLMから4.0NLMにまで上昇させる。そして、このようにして原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を段階的に増量させることにより、改質部1における改質ガスの生成量を増量させ、これによりPEFCの出力電力を定格出力である1kwまで上昇させる。その後、燃料電池システムは定格運転に入る。尚、このように、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を段階的に増量させる理由は、例えば、変成部7に配設された変成触媒の加熱が改質部1から供給される高温状態の改質ガスによって行われるため、改質触媒の温度上昇に対して変成触媒の温度上昇が遅延するためである。
このように、本実施の形態では、PEFCの出力電力を定格出力にまで上昇させる際に発電性能を低下させる程度の高濃度の一酸化炭素がPEFCに流入することを防止するために、変成部7における変成触媒の温度に基づいて、PEFCへの改質ガスの供給を開始する。又、変成部7における変成触媒の温度に基づいて、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を、PEFCの定格運転に必要な流量にまで段階的に増加させる。ここで、開閉弁12を閉状態から開状態に切り換えてPEFCに対する改質ガスの供給を許可する第1の基準温度(例えば、本実施の形態では、150℃)や、その後、PEFCの定格運転に必要な流量にまで段階的に天然ガスの供給量を増加させることを許可する第2及び第3の基準温度(例えば、本実施の形態では、160℃及び170℃)は、夫々予め許可又は判定するための基準温度として、制御部11が有する記憶部に設定される。
ところで、上述したように、変成部7に配設される変成触媒は、その他の改質触媒やCO除去触媒と比べて、水濡れや酸化等に対して非常に敏感である。このような変成触媒の水濡れや酸化等は、燃料電池システムを使用する過程において容易に発生する。例えば、水素生成装置100の起動時は、変成触媒の温度が常温にまで低下していることが多い。従って、このような場合には、改質部1から排出される高温状態の改質ガスの熱を利用して、変成触媒の温度が上昇するまで待機することが多い。しかし、変成触媒の温度が常温である状態において改質部1から変成部7に改質ガスを供給した場合には、その改質ガスに含まれる水分(水蒸気)が、変成触媒の表面に凝縮することがある。そして、変成触媒の表面に水が凝縮した後、その変成触媒に改質ガスを接触させると、変成触媒を構成するセリア−ジルコニア複合酸化物の炭酸塩化が進行し、変成触媒の劣化が進行する。この場合、変成触媒の触媒活性が劣化しているので、変成部7における水性ガスシフト反応の進行が妨げられる。尚、本実施の形態で示したPt/セリア−ジルコニア触媒以外の変成触媒でも、その劣化機構は相違するものの、水濡れによって水性ガスシフト反応に対する触媒活性が同様に低下する。
図2は、水素生成装置100の起動と停止とを繰り返した場合における変成触媒の水性ガスシフト反応に対する触媒活性の低下状況を模式的に示す特性図である。ここで、図2の横軸は変成触媒の温度(℃)を示しており、図2の縦軸は変成部7を通過した後の改質ガスに含まれる一酸化炭素の濃度(%)を示している。又、図2では、曲線aは起動の回数が1回目である場合の特性を示しており、曲線bは起動の回数が101回目である場合の特性を示しており、曲線cは起動の回数が201回目である場合の特性を示している。尚、図2では、改質部1に対する天然ガスの供給量を2.0NLMとした場合における変成触媒の触媒活性の低下状況を、模式的に示している。又、図2では、水素生成装置100の起動を変成触媒の温度が常温になるまで冷却した後に行った場合(つまり、起動時、変成触媒の表面に水が凝縮する場合)における変成触媒の触媒活性の低下状況を、模式的に示している。
図2に示すように、曲線aとして示す水素生成装置100の使用初期においては、変成触媒の温度が150℃程度において改質ガス中の一酸化炭素を0.3%以下の濃度にまで十分に低減することができる。しかし、曲線bとして示す起動の回数が101回目には、変成触媒の温度が150℃では一酸化炭素を0.3%以下にまで十分に低減することは困難である。この場合、図2に示すように、変成触媒の温度を160℃程度にまで上昇させないと、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することはできない。又、曲線cとして示す起動の回数が201回目には、変成触媒の温度が150℃では一酸化炭素を0.3%以下にまで低減することは不可能であり、変成触媒の温度を170℃程度にまで温度上昇させないと、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することはできない。このように、水素生成装置100では、変成触媒の温度が常温まで低下した後に起動する場合には、その起動と停止とを繰り返す毎に変成触媒上に改質ガス中の水蒸気が凝縮し、これにより変成触媒の劣化が進行する。
つまり、水素生成装置100を用いて一酸化炭素が十分に低減された良質の改質ガスを安定して生成するためには、水素生成装置100の起動及び停止の回数が増加するに従って図2に示すように変成触媒の触媒活性が低下するので、PEFCに対する改質ガスの供給を許可する第1の基準温度や、PEFCの定格運転に必要な流量にまで段階的に天然ガスの供給量を増加させることを許可する第2及び第3の基準温度を、水素生成装置100の起動停止の回数に応じて変化(上昇)させる必要がある。
そこで、本実施の形態では、図3に示すように、水素生成装置100の起動の回数が0〜100回目までは、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度がPEFCに改質ガスを供給することを許可するための第1の基準温度(例えば、150℃)の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断し、その改質ガスをPEFCに供給する。しかしながら、水素生成装置100の起動の回数が101回目〜200回目までは、PEFCに改質ガスを供給することを許可するための第1の基準温度をより一層高い温度(例えば、160℃)に変更し、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が160℃の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断し、その改質ガスをPEFCに供給する。更に、水素生成装置100の起動の回数が201回目からは、それ以下の起動回数(即ち、101回目〜200回目)で設定したPEFCに改質ガスを供給することを許可するための第1の基準温度を更により一層高い温度(例えば、170℃)に変更し、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が170℃の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断し、その改質ガスをPEFCに供給する。ここで、図3に示す水素生成装置100の起動の回数と第1の基準温度との相関関係は、予め変成部7に配設される変成触媒の種類毎に調査され、制御部11が有する記憶部に設定されている。又、上述した第1の基準温度の設定変更は、制御部11による水素生成装置100の起動回数のカウントに基づいて、制御部11によって自動的に実行される。
又、本実施の形態では、上述したPEFCに改質ガスを供給することを許可するための第1の基準温度の設定変更に伴い、PEFCの定格運転に必要な流量にまで段階的に天然ガスの供給量を増加させることを許可する第2及び第3の基準温度についても、水素生成装置100の起動の回数に応じて設定変更される。具体的には、図3に示すように、水素生成装置100の起動の回数が0〜100回目までは、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が第2の基準温度(例えば、160℃)になった時、第1の原料流量増加ステップとして天然ガスの供給量を2.0NLMから3.0NLMに増量する。又、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が第3の基準温度(例えば、170℃)になった時、第2の原料流量増加ステップとして、天然ガスの供給量を3.0NLMから4.0NLMに増量する。しかしながら、水素生成装置100の起動の回数が101回目〜200回目までは、第1の原料流量増加ステップとして天然ガスの供給量を2.0NLMから3.0NLMにまで上昇することを許可する第2の基準温度をより一層高い温度(例えば、170℃)に変更し、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が170℃になった時、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を2.0NLMから3.0NLMにまで増加させる。又、上記と同様にして、水素生成装置100の起動の回数が101回目〜200回目までは、第2の原料流量増加ステップとして原料を3.0NLMから4.0NLMにまで上昇することを許可する第3の基準温度をより一層高い温度(例えば、180℃)に変更し、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が180℃になった時、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を3.0NLMから4.0NLMにまで増加させる。更に、上記と同様にして、水素生成装置100の起動の回数が201回目からは、第1の原料流量増加ステップとして天然ガスの供給量を2.0NLMから3.0NLMにまで上昇することを許可する第2の基準温度を更により一層高い温度(例えば、180℃)に変更し、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が180℃になった時、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を2.0NLMから3.0NLMにまで増加させる。又、同様にして、水素生成装置100の起動の回数が201回目からは、第2の原料流量増加ステップとして原料を3.0NLMから4.0NLMにまで上昇することを許可する第3の基準温度を更により一層高い温度(例えば、190℃)に変更し、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が190℃になった時、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を3.0NLMから4.0NLMにまで増加させる。尚、ここでも、図3に示す水素生成装置100の起動の回数と第2及び第3の基準温度との相関関係は、予め変成部7に配設される変成触媒の種類毎に調査され、制御部11が有する記憶部に設定されている。又、これらの第2及び第3の基準温度の設定変更も、制御部11による水素生成装置100の起動回数のカウントに基づいて、制御部11によって自動的に実行される。
このように、本実施の形態によれば、水素生成装置100の起動と停止との繰り返しに伴って進行する変成触媒の触媒活性の低下に対して、水素生成装置100からPEFCに改質ガスを供給することを許可する第1の基準温度、及び、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を増加することを許可する第2及び第3の基準温度をより一層高い温度に変更するので、一酸化炭素の濃度が十分に低減された良質の改質ガスをPEFCに対して安定的に供給することが可能になる。つまり、燃料電池システムの稼働時間の経過に応じて経時的に変成触媒の劣化が進行する場合であっても、その変成触媒の劣化状況を想定して第1〜第3の基準温度を上昇させるので、燃料電池システムの稼働時間に関係することなく、一酸化炭素を確実に低減した良質の改質ガスをPEFCに供給することが可能になる。
又、燃料電池システムを稼働する際、変成触媒の水性ガスシフト反応に対する触媒活性の経時的な低下の程度を検出及び判定する必要が無く、従って、触媒活性の経時的な低下の程度を検出及び判定するための装置を設ける必要が無いので、燃料電池システムの構成を簡略化することが可能になる。これは、燃料電池システムの費用のコストダウンにも貢献する。
尚、本実施の形態においては、PEFCの定格運転時(例えば、1kw)に必要となる天然ガスの供給量(例えば、4.0NLM)よりも少ない供給量(例えば、2.0NLM)の天然ガスを改質部1に供給して水素生成装置100の運転を開始し、その後、PEFCの定格運転時に必要となる供給量にまで段階的に天然ガスの供給量を増加させているが、PEFCの定格運転時に必要となる供給量にまで天然ガスの供給量を速やかに増加させる場合でも、PEFCに改質ガスを供給することを許可する第1の基準温度を起動又は停止の回数の増加に伴い変更(上昇)することで、本実施の形態と同様の効果が得られることは明らかである。例えば、起動の回数が0〜100回目までは第1の基準温度を170℃(つまり、第3の基準温度)とし、起動の回数が101回目〜200回までは第1の基準温度を180℃(つまり、第3の基準温度)とし、起動の回数が201回目以上では第1の基準温度を190℃(つまり、第3の基準温度)とすることにより、PEFCの定格運転時に必要となる供給量にまで天然ガスの供給量を速やかに増加することが可能になる。
又、本実施の形態では、変成触媒の温度の昇温に対して改質部1から排出される高温状態の改質ガスの熱を利用する構成について説明したが、このような形態に限定されることはなく、例えば、変成触媒を昇温するためにヒーター等の加熱手段を用いる構成としてもよい。かかる構成としても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
又、本実施の形態においては、変成触媒の温度を変成温度検出部8により直接測定できる構成としているが、このような構成に限定されることはなく、例えば、変成触媒上での水性ガスシフト反応を経た後の改質ガスの温度を測定する構成としてもよい。かかる構成としても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
又、本実施の形態においては、変成触媒としてPt/セリア−ジルコニア触媒を用いているが、このような構成に限定されることはなく、担体として他の複合酸化物、又は、他の貴金属を用いた変成触媒を用いる構成としてもよい。例えば、変成触媒として、Cu−ZnO系触媒を用いてもよい。尚、Pt/セリア−ジルコニア触媒以外の他の変成触媒を用いる場合には、起動と停止とを繰り返した際の変成触媒の温度と改質ガス中に残留する一酸化炭素の濃度との関係の推移を別途調査し、この調査の結果に基づいて、第1〜第3の基準温度を制御部11に設定する。これにより、本実施の形態と同様の効果を得ることが可能になる。
又、本実施の形態で示した第1〜第3の基準温度、及びこれらの第1〜第3の基準温度を変更する際の水素生成装置100の起動回数は、本実施の形態で使用する水素生成装置100の構成、及び変成触媒に基づいて例示する数値である。つまり、第1〜第3の基準温度、及びこれらの第1〜第3の基準温度を変更する際の水素生成装置100の起動回数は、水素生成装置の構成、変成触媒の種類及び触媒量によって決定される数値であり、本実施の形態において記載した数値に限定されることはない。又、本実施の形態では、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量を増加することを許可する基準温度として第2〜第3の2つの基準温度を設定しているが、この基準温度の分割形態は任意に設定することが可能である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2では、第1〜第3の基準温度を変更する際の基準となる水素生成装置100の起動回数のカウント方法が、実施の形態1におけるカウント方法と異なっている。尚、その他の点については、実施の形態1の場合と同様である。そのため、本実施の形態では、水素生成装置100の基本的な構成及び動作等の、実施の形態1で説明した構成及び動作と同様の構成及び動作については、その説明を省略する。
以下、本実施の形態に係る水素生成装置100の運転方法に関し、特に、実施の形態1の場合との相違点について、図1及び図4を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1で説明したように、変成部7に配設された図1では特に図示しない変成触媒は、水濡れ等に対して非常に敏感である。そして、変成触媒の温度が改質ガスの露点以下の温度になり、これにより変成触媒の表面に水が凝縮した場合には、変成触媒の炭酸塩化が容易に進行する。この場合、変成触媒の水性ガスシフト反応に対する触媒活性は、著しく低下する。
このように、変成触媒の温度が改質ガスの露点以下の温度(例えば、常温)になるまで冷却されてからの水素生成装置100の起動では、変成触媒の表面に水が凝縮して、触媒性能の劣化の進行を促進させることになる。しかしながら、その一方で、水素生成装置100の起動は、燃料電池システムの停止時間が比較的短時間である場合には、変成触媒の温度が改質ガスの露点以上の温度の時に開始される場合もある。この場合、改質部1を通過した後の改質ガス中の水蒸気が変成触媒上で凝縮することはないので、変成触媒の触媒性能の劣化は進行しないと考えられる。
例えば、改質部1から排出される改質ガスの露点は、運転条件によっても異なるが、改質ガスを生成するための炭化水素系の原料としてメタンを用い、水及び原料中の炭素に対する比(即ち、S/C)が3となるように水供給部3から改質部1に水を供給し、改質温度検出部5により検出される改質触媒の温度が650℃になるようにして改質触媒上で改質反応を行わせた場合には、変成部7に供給される改質ガスの露点は70℃になる。
図4は、水素生成装置100の運転を停止した後、変成触媒の温度が70℃以上である時に水素生成装置100を起動させる動作を繰り返した場合における変成触媒の水性ガスシフト反応に対する触媒活性の低下状況を模式的に示す特性図である。ここで、図4の横軸は変成触媒の温度(℃)を示しており、図4の縦軸は変成部7を通過した後の改質ガスに含まれる一酸化炭素の濃度(%)を示している。又、図4では、曲線aは起動の回数が1回目である場合の特性を示しており、曲線bは起動の回数が101回目である場合の特性を示しており、曲線cは起動の回数が201回目である場合の特性を示している。
図4から明らかなように、変成触媒の温度が改質ガスの露点以上の温度の時に水素生成装置100を起動した場合には、水素生成装置100の起動の回数に関わらず、変成触媒は初期に示す触媒活性を概ね維持する。従って、この図4に示す結果によれば、変成触媒の温度が改質部1から供給される改質ガスの露点以上の温度である場合の水素生成装置100の起動回数は、第1〜第3の基準温度を変更する際の基準となる水素生成装置100の起動回数としてカウントする必要はない。
そこで、本実施の形態では、例えば、原料供給部2から改質部1にメタンを供給し、水及び原料中の炭素に対する比(S/C)が3となるように水供給部3から改質部1に水を供給し、改質温度検出部5により検出される改質触媒の温度が650℃となるように改質触媒を改質加熱部4により加熱する水素生成装置100の運転条件(つまり、改質部1から排出される改質ガスの露点が70℃になる運転条件)においては、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が70℃以下の温度である場合にだけ、水素生成装置100の起動回数をカウントすることとしている。一方、変成触媒の温度が70℃を超える場合には、変成触媒の表面に水が凝縮することはないので、水素生成装置100の起動回数はカウントしないこととしている。そして、そのカウントされる水素生成装置100の起動回数が100回目までは、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断して、PEFCに対して水瀬尾生成装置100から改質ガスを供給する。しかし、カウントされる水素生成装置100の起動回数が101回目から〜200回目までは、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が160℃の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断して、PEFCに対して水素生成装置100から改質ガスを供給する。更に、カウントされる水素生成装置100の起動回数が201回目からは、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が170℃の時に、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断して、PEFCに対して水素生成装置100から改質ガスを供給する。尚、本実施の形態でも、実施の形態1の場合と同様、水素生成装置100の動作の制御は、制御部11によって行われる。又、改質部1から排出される改質ガスの露点は、例えば、制御部11に設定される水素生成装置100の運転条件等に基づいて、制御部11において導出される。そして、この制御部11において、改質部1から排出される改質ガスの導出された露点と変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度とが比較され、この比較の結果に基づいて、水素生成装置100の起動回数のカウントが実施される。尚、その他の点については、実施の形態1の場合と同様である。
このように、本実施の形態よれば、変成触媒の触媒活性の低下に関与する水素生成装置の起動回数のみをカウントすることにより、変成触媒の真の性能劣化に対応することができるので、高性能の水素生成装置を提供することが可能になる。
尚、改質部1から排出される改質ガスの露点は、改質ガスを生成するための炭化水素系の原料の種類や、その原料と水との供給比、水蒸気改質反応の反応温度、及び装置構成等によって変化するため、本実施の形態に記載した限りではない。つまり、水素生成装置100の起動回数をカウントするか否かの判断は、変成部7に供給される改質ガスの露点に基づいて行われる。
又、本実施の形態では、改質部1から排出される改質ガスの露点と変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度との比較に基づいて水素生成装置100の起動回数をカウントするか否かが決定されるが、変成触媒上に水が凝縮しないと判断する方法や各基準温度を変更する回数等は、装置の構成、触媒の種類及び触媒量によって変化するため、本実施の形態に記載した限りではない。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、PEFCに対して改質ガスを供給することを許可する第1の基準温度、第1の原料流量増加ステップを許可する第2の基準温度、及び、第2の原料流量増加ステップを許可する第3の基準温度等を変更せずに、水素生成装置100の起動停止の繰り返しに伴い、各基準温度に対応する原料の供給量をより一層低い供給量に変更する点において、実施の形態1の場合と異なっている。尚、その他の点については実施の形態1の場合と同様であるため、本実施の形態でも、実施の形態1で説明した構成及び動作と同様の構成及び動作に関する説明は省略する。
以下、本実施の形態に係る水素生成装置100の運転方法に関し、特に、実施の形態1の場合との相違点について、図1及び図5を参照しながら詳細に説明する。
上述したように、実施の形態1及び2では、変成部7に配設された図1では特に図示しない変成触媒の水濡れ等による経時的な触媒活性の低下に応じて、変成触媒の温度を上昇させて水性ガスシフト反応に対する触媒活性を高めるという解決手段を採っている。これに対して、本実施の形態では、変成触媒の水濡れ等による経時的な触媒活性の低下に応じて、変成部7に対する改質ガスの供給量、即ち、改質部1に対する原料供給部2からの天然ガスの供給量を減少させるという解決手段を採る。
図5は、水素生成装置100の起動と停止とを繰り返した場合における変成触媒の触媒活性の低下状況を模式的に示す特性図である。ここで、図5の横軸は変成触媒の温度(℃)を示しており、図5の縦軸は変成部7を通過した後の改質ガスに含まれる一酸化炭素の濃度(%)を示している。又、図5では、曲線aは水素生成装置100の起動の回数が1回目であり、曲線bは水素生成装置100の起動の回数が101回目であり、曲線cは水素生成装置100の起動の回数が201回目である場合の特性を各々示している。又、図5では、PEFCに改質ガスを供給することを許可する第1の基準温度(例えば、150℃)での原料供給量が、曲線aでは2.0NLMであり、曲線bでは1.5NLMであり、曲線cでは1.0NLMとしている。尚、図5に示す特性を調査する際、水素生成装置100の起動は、変成触媒の温度が常温になるまで冷却してから行っている。つまり、図5では、起動時に変成触媒の表面に水が凝縮する場合における変成触媒の触媒活性の低下状況を、模式的に示している。
実施の形態1において示した図2では、原料の供給量を減少させていないため、変成触媒の温度が低いときには一酸化炭素の濃度を低減することはできなかった。しかし、図5の曲線a〜曲線cに示すように、水素生成装置100の起動回数の増加に伴って変成部7の変成触媒の触媒活性が低下しても、原料供給部2から改質部1への原料の供給量を減少させることによれば、変成触媒の温度を変更することなく、改質ガス中の一酸化炭素を十分に低減することができる。これは、第1の基準温度(例えば、150℃)に対応して設定された原料の供給量(例えば、実施の形態1及び2では、2.0NLM)を減少させることにより、有効な触媒量に対応して改質ガスの流量が少なくなるため、変成触媒の触媒活性が劣化した場合であっても、低い温度で一酸化炭素を十分に低減できるためである。
そこで、本実施の形態では、PEFCに対して改質ガスを供給することを許可する第1の基準温度を例えば150℃に固定し、PEFCの出力電力を上昇させる第1の原料流量増加ステップを実行する際の第2の基準温度を例えば160℃に固定し、更に、PEFCの出力電力を上昇させる第2の原料流量増加ステップを実行する際の第3の基準温度を例えば170℃に固定する。そして、水素生成装置100の起動初期における原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量(第1の基準供給量)を変成触媒の触媒活性の低下に伴って減少させると共に、変成部7の変成触媒の温度が第2〜第3の基準温度に到達した時の原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量(第2〜第3の基準供給量)も、変成触媒の触媒活性の低下に応じて減少させる。
具体的には、図6に示すように、水素生成装置100の起動の回数が0〜100回目までは、実施の形態1の場合と同様、水素生成装置100の起動初期における原料供給部2から改質部1への原料の供給量(第1の基準供給量)を2.0NLMとし、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断し、水素生成装置100からPEFCに改質ガスを供給する。又、水素生成装置100の起動の回数が0〜100回目までは、実施の形態1の場合と同様、変成部7の変成触媒の温度が第2の基準温度に到達した時には原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量(第2の基準供給量)を2.0NLMから3.0NLMにまで増加させ、又、変成部7の変成触媒の温度が第3の基準温度に到達した時には原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量(第3の基準供給量)を3.0NLMから4.0NLMにまで増加させる。
しかしながら、図6に示すように、水素生成装置100の起動の回数が101〜200回目までは、水素生成装置100の起動初期における原料供給部2から改質部1への原料の供給量(第1の基準供給量)を2.0NLMから例えば1.5NLMにまで減少させ、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断し、水素生成装置100からPEFCに改質ガスを供給する。又、水素生成装置100の起動の回数が101〜200回目までは、変成部7の変成触媒の温度が第2の基準温度に到達した時には原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量(第2の基準供給量)を1.5NLMから例えば2.0NLMにまで増加させ、又、変成部7の変成触媒の温度が第3の基準温度に到達した時には原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量(第3の基準供給量)を2.0NLMから例えば3.0NLMにまで増加させる。
又、図6に示すように、水素生成装置100の起動の回数が201回目以上では、水素生成装置100の起動初期における原料供給部2から改質部1への原料の供給量(第1の基準供給量)を1.5NLMから例えば1.0NLMにまで減少させ、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断し、水素生成装置100からPEFCに改質ガスを供給する。又、水素生成装置100の起動の回数が201回目以上では、変成部7の変成触媒の温度が第2の基準温度に到達した時には原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量(第2の基準供給量)を1.0NLMから例えば1.5NLMにまで増加させ、又、変成部7の変成触媒の温度が第3の基準温度に到達した時には原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量(第3の基準供給量)を1.5NLMから例えば2.0NLMにまで増加させる。
このように、本実施の形態によれば、変成部7における変成触媒の触媒活性が経時的に低下しても、その低下を想定して原料供給部2から改質部1への原料の第1〜第3の基準供給量を減少させるので、一酸化炭素を確実に低減した良質の改質ガスを水素生成装置100からPEFCに供給することができる。尚、本実施の形態では、図6に示す水素生成装置100の起動回数と第1〜第3の基準供給量との適切な関係が予め調査されており、その調査の結果が制御部11における記憶部に記憶されている。そして、制御部11によって水素生成装置100の起動回数がカウントされ、そのカウントされた起動回数に応じて第1〜第3の基準供給量が制御部11に設定され、この設定に基づいて制御部11が原料供給部2の動作を制御し、これにより原料供給部2から改質部1への原料の供給量が自動的に変更される。
尚、本実施の形態で示した第1〜第3の基準供給量、及びこれらの第1〜第3の基準供給量を変更する際の水素生成装置100の起動回数は、本実施の形態で使用する水素生成装置100の構成、及び変成触媒に基づいて例示する数値である。つまり、第1〜第3の基準供給量、及びこれらの第1〜第3の基準供給量を変更する際の水素生成装置100の起動回数は、水素生成装置の構成、変成触媒の種類及び触媒量によって決定される数値であり、本実施の形態において記載した数値に限定されることはない。又、本実施の形態では、原料供給部2から改質部1への天然ガスの供給量として第2〜第3の2つの基準供給量を設定しているが、この基準供給量の分割形態は任意に設定することが可能である。
又、本実施の形態では、変成触媒の触媒活性の低下に応じて第1〜第3の基準供給量を減少させるので、その減少に応じてPEFCの出力電力も低下する。かかる構成は、燃料電池システムの定格出力に対して負荷の消費電力が常に低い使用環境、即ち、燃料電池システムの定格出力を必要としない使用環境においては、有効な解決手段となり得る。しかしながら、例えば、水素生成装置100の起動の回数が101回目以上においては、燃料電池システムから定格出力の電力を得ることはできないので、定格出力が必要となる場合がある使用環境においては、本実施の形態で示す構成は効果的ではない。そこで、このような燃料電池システムの定格出力が必要となる場合には、実施の形態1の如く変成触媒の温度を上昇させて改質部1への原料の供給量を増加させることにより対応する。尚、この原料の供給量を増加させる際には、原料の供給量を実施の形態1の場合と同様にして段階的に増加させる。この増加させる際の基準温度も、水素生成装置100の起動回数に応じて設定することができる。例えば、原料を増加させる場合、水素生成装置100の起動回数が201回目以後は、図6の如く水素生成装置100の起動直後の原料供給量を1.0NLMにし、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が150℃の時、変成部7を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素濃度が0.3%以下であると判断して、PEFCに対する改質ガスの供給を開始する。又、その後、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が第3の基準温度(例えば、170℃)に到達した時、原料供給部2から改質部1への原料の供給量を3.0NLMに増加させる。そして、変成温度検出部8により検出される変成触媒の温度が第4の基準温度(例えば、180℃)に到達した時、原料供給部2から改質部1への原料の供給量を3.0NLMから4.0NLMにまで増加させる。これにより、燃料電池システムの定格出力が必要となった場合であっても、一酸化炭素が十分に低減された良質の改質ガスをPEFCに供給することが可能になる。
又、本実施の形態でも、水素生成装置100の起動回数をカウントする形態としては、実施の形態2の場合と同様にして、変成温度検出部8で検出される変成触媒の温度が改質ガスの露点以下になった場合にカウントする形態としてもよい。
尚、実施の形態1〜3では、水素生成装置100の起動回数をカウントする形態について説明したが、この形態に限定されることはなく、例えば、水素生成装置100の停止回数をカウントする形態としてもよい。かかる構成としても、実施の形態1〜3の場合と同様の効果を得ることが可能である。