以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、便宜上、改質器から排出された水素含有ガスを「改質ガス」と記載し、変成器から排出された水素含有ガスを「変成ガス」と記載し、CO除去器から排出された水素含有ガスを「生成ガス」と記載する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る水素生成装置の構成を模式的に示すブロック図である。
本発明における技術的な特徴点は、水素生成装置100の制御動作である。そのため、図1に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置100のハードウェアの構成は、従来から広く利用されている一般的な水素生成装置のハードウェアの構成と基本的に同様である。又、本実施の形態に係る水素生成装置100の基本的な動作は、従来から広く利用されている一般的な水素生成装置の基本的な動作と同様である。
つまり、図1に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置100は、改質触媒が充填された改質触媒層(図1では図示せず)を有する改質器1と、変成触媒が充填された変成触媒層(図1では図示せず)を有する変成器2と、改質器1の改質触媒層及び変成器2の変成触媒層を燃焼ガスにより加熱する燃焼バーナー3とを備えている。又、この水素生成装置100は、燃焼バーナー3に燃焼用空気及び燃焼用燃料を供給する燃焼用空気供給装置4及び燃焼用燃料供給装置5と、改質器1に原料及び水蒸気を供給する原料供給装置6及び水供給装置7及び蒸発器8と、変成器2の例えば変成触媒層の動作温度を検出する温度検出器9とを備えている。ここで、温度検出器9は、例えば、変成ガスの流れ方向に対して変成触媒層における下流側に配設されている。
又、この水素生成装置100は、水素生成装置100を構成する各構成要素の動作を適宜制御する制御装置10を備えている。この制御装置10では、水素生成装置100の起動回数及び停止回数を数えるカウンター10aと、水素生成装置100の起動回数又は停止回数に応じた変成触媒の適切な制御温度等を記憶する記憶部10bと、変成触媒の制御温度と温度検出器9により検出される変成触媒層等の動作温度とを比較する比較部10cと、水素生成装置100の起動回数又は停止回数の増加に応じて記憶部10bより起動回数又は停止回数に応じた適切な制御温度を読み込みこれを新たな制御温度として設定する制御温度設定器10dとが構成されている。尚、この水素生成装置100では、従来の水素生成装置の構成と同様、所定の配管により所定の流路が構成されていると共に、所定の配線により所定の電気回路が構成されている。
本実施の形態では、燃焼用空気供給装置4、燃焼用燃料供給装置5、原料供給装置6、水供給装置7の各々は、供給物(即ち、燃焼用空気、燃焼用燃料、原料、水)の流量を調整可能に構成されている。これらの燃焼用空気供給装置4、燃焼用燃料供給装置5、原料供給装置6、水供給装置7において、供給物の流量を実質的に調整する手段としては、吐出流量を制御可能な供給ポンプが挙げられる。又、その他の手段としては、供給物の供給源とその下流側の流路に設けられた供給物の流量調整用バルブとを組み合わせた流体機構が挙げられる。
又、本実施の形態において、温度検出器9としては、サーミスタや熱電対等に代表される電気式の温度センサーが挙げられる。この温度検出器9は、変成器2の運転温度を代表して検出可能な所定の位置に配設されている。ここで、変成器2の運転温度を代表して検出可能な位置としては、例えば、変成触媒層の表面、変成触媒層の内部、或いは、変成触媒層の近傍の位置等が挙げられる。
又、本実施の形態において、制御装置10は、マイコン、メモリー、I/Oポート等の一般的な構成要素を具備している。ここで、この制御装置10において、カウンター10a及び比較部10cは、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方により構成されている。一方、この制御装置10において、記憶部10bとしては、制御装置10が備えるメモリーの一部が割り当てられる。
かかる水素生成装置100では、燃焼用空気供給装置4及び燃焼用燃料供給装置5が、燃焼ガスの生成のために必要な燃焼用空気及び燃焼用燃料の流量を調整して、その流量を調整した燃焼用空気及び燃焼用燃料を燃焼バーナー3に供給する。すると、燃焼バーナー3は、燃焼用空気及び燃焼用燃料を用いて燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスは、図1の矢印で示すように、改質器1を通過した後、変成器2を通過する。これにより、改質器1及び変成器2が備える改質触媒層及び変成触媒層の動作温度が各々適切に制御される。そして、変成器2を通過した燃焼ガスは、水素生成装置100の外部に排出される。尚、本実施の形態において、燃焼用空気供給装置4及び燃焼用燃料供給装置5の動作は、温度検出器9の出力信号に基づき、制御装置10により適切に制御される。
一方、この水素生成装置100では、原料供給装置6が、少なくとも炭素及び水素から構成される有機化合物を含む原料(例えば、都市ガスやプロパンガス)の流量を調整して、その流量を調整した原料を改質器1に供給する。又、水供給装置7が、例えば水道等のインフラストラクチャーから供給される水の流量を調整して、その流量を調整した水を蒸発器8に供給する。すると、蒸発器8は、水供給装置7から供給された水を蒸発させて、それにより生成した水蒸気を改質器1に供給する。
改質器1は、原料供給装置6及び蒸発器8から原料及び水蒸気が供給されると、適切な動作温度に制御される改質触媒層において進行する水蒸気改質反応により、水素を含む改質ガスを生成する。この改質ガスは、水素に加えて、一酸化炭素、二酸化炭素、水等を含む。そして、この改質ガスは、図1の矢印で示すように、改質器1から排出された後、変成器2に供給される。変成器2は、改質器1から改質ガスが供給されると、適切な動作温度に制御される変成触媒層において進行するシフト反応により、一酸化炭素濃度が1%程度の濃度にまで低減された変成ガスを生成する。そして、この変成器2で生成された変成ガスは、水素生成装置100の外部に排出される。
ところで、従来の水素生成装置の場合と同様、本実施の形態に係る水素生成装置100では、その運転時間の経過、例えば、起動停止回数の増加等に応じて、変成器2が備える変成触媒層の触媒活性が次第に低下する。
ここで、本願の発明者らは、変成器2が備える変成触媒層の触媒活性が次第に低下する状況を把握するために、変成触媒を充填した単管を準備して、水素生成装置100の起動及び停止の繰り返しに伴う変成触媒層の触媒活性の変化を調べる模擬試験を実施した。この模擬試験の概要は、以下に示す通りである。即ち、変成触媒としてCu−Zn系触媒を選択し、このCu−Zn系触媒を単管内に18mL充填した。又、水素(57.4%)と一酸化炭素(8.7%)と二酸化炭素(7.9%)と水(26.0%)とからなる改質模擬ガス(改質触媒の温度を650℃としかつS/C=2.7とした場合の改質ガスの平衡組成に相当)を準備した。そして、この改質模擬ガスの流量をSV(dry)1000/hとした上で、変成触媒に都市ガス13Aを0.1L供給する第1工程と、変成触媒に改質模擬ガスを24.3L供給する第2工程と、変成触媒に都市ガス13Aを1.5L供給する第3工程とからなるシーケンスを繰り返した。この際、第1工程では、都市ガス13Aの温度を50℃から150℃に変化させた。又、第2工程では、改質模擬ガスの温度を150℃に維持した。更に、第3工程では、都市ガス13Aの温度を所定時間150℃で維持した後、50℃まで冷却した。そして、適宜、変成触媒の温度を変化させながら、その変成触媒を通過した後の改質模擬ガス中の一酸化炭素濃度をモニタした。
図9(a)は、上述した模擬試験の結果を基にした、変成触媒層の動作温度と、変成ガス中の一酸化炭素濃度と、水素生成装置の起動停止回数との関係を模式的に示すグラフである。尚、図9(a)において、曲線aは、水素生成装置の運転初期における変成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。又、曲線bは、水素生成装置の起動停止2000回後における変成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。又、曲線cは、水素生成装置の起動停止4000回後における変成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。
図9(a)に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置100では、その起動停止回数の増加に応じて、変成器2の変成触媒層の触媒活性が次第に低下する。そして、その変成触媒層の触媒活性の低下により、変成器2が生成する変成ガス中の一酸化炭素濃度が上昇する。
例えば、図9(a)の曲線aに示すように、水素生成装置100の運転初期では、変成器2の変成触媒層の動作温度を190℃から210℃の温度範囲内に制御することで、変成器2が生成する変成ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減することが可能になる。ここで、変成触媒層の制御温度としては、一酸化炭素の濃度を可能な限り低減可能な温度が好適である。具体的には、変成触媒層の制御温度としては、変成ガス中の一酸化炭素濃度を約0.4%にまで低減可能な200℃が最も適切である。これにより、CO除去器を備える水素生成装置を構成する場合、そのCO除去器に供給する酸化反応のための空気の量を少なくすることが可能になるので、水素生成装置100において、効率良く水素を生成することが可能になる。
しかしながら、図9(a)の曲線bに示すように、水素生成装置100の起動停止2000回後では、その運転初期において一酸化炭素の低減特性が非常に良好であった温度範囲内に変成器2が備える変成触媒層の動作温度を制御しても、変成器2が生成する変成ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減することはできない。具体的には、変成器2が備える変成触媒層の動作温度を200℃に制御しても、変成器2が生成する変成ガス中の一酸化炭素濃度を約0.6%にまでしか低減することができない。
更には、図9(a)の曲線cに示すように、水素生成装置100の起動停止4000回後では、変成器2が備える変成触媒層の動作温度を200℃に制御しても、変成器2が生成する変成ガス中の一酸化炭素濃度を約0.8%にまでしか低減することができない。
次に、上述した模擬試験において改質模擬ガスの流量をSV600/hに変更し、それ以外の点については同様の条件である第2の模擬試験を行った。
図9(b)は、この第2の模擬試験の結果を基にした、変成触媒層の動作温度と、変成ガス中の一酸化炭素濃度と、水素生成装置の起動停止回数との関係を模式的に示すグラフである。尚、この図9(b)において、曲線aは、水素生成装置の運転初期における変成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。又、曲線bは、水素生成装置の起動停止1000回後における変成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。又、曲線cは、水素生成装置の起動停止2000回後における変成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。
図9(b)に示すように、改質模擬ガスの流量をSV600/hに変更した場合であっても、水素生成装置100の起動停止回数の増加に応じて、変成器2が備える変成触媒層の触媒活性が次第に低下する。そして、その変成触媒層の触媒活性の低下により、変成器2が生成する変成ガス中の一酸化炭素濃度が上昇する。但し、この場合、改質模擬ガスの流量がSV1000/hからSV600/hに減少したため、変成ガス中の一酸化炭素濃度の上昇は比較的抑制される。
そこで、本実施の形態に係る水素生成装置100では、かかる障害の発生を回避するために、変成器2が備える変成触媒層の触媒活性が経時的に低下しても変成ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減できるよう、水素生成装置100の起動停止回数の増加に応じて、変成触媒層の制御温度を段階的に上昇させる構成が採られる。
図9(c)は、図9(a)及び図9(b)の結果に基づき、原料流量と、変成触媒層の制御温度と、水素生成装置の起動停止回数との関係を推定し、これを模式的に示したグラフである。尚、図9(c)において、実線は、水素生成装置の起動停止回数が1回から1000回までの変成触媒層の制御温度を示している。又、破線は、水素生成装置の起動停止回数が1001回から2500回までの変成触媒層の制御温度を示している。又、一点鎖線は、水素生成装置の起動停止回数が2501回から4000回までの変成触媒層の制御温度を示している。
図9(c)に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置100では、例えば、原料供給装置6から改質器1に供給される原料の流量が1L/min以上2L/min未満である場合には、その起動停止回数が1回から1000回までは変成器2が備える変成触媒層の制御温度を160℃とし、その起動停止回数が1001回から2500回までは変成触媒層の制御温度を170℃とし、その起動停止回数が2501回から4000回までは変成触媒層の制御温度を180℃とする。又、図9(c)に示すように、原料供給装置6から改質器1に供給される原料の流量が2L/min以上3L/min未満である場合には、水素生成装置100の起動停止回数の増加に応じて、変成器2が備える変成触媒層の制御温度を180℃から200℃の範囲で変更する。更には、図9(c)に示すように、原料供給装置6から改質器1に供給される原料の流量が3L/min以上4L/min未満である場合には、水素生成装置100の起動停止回数の増加に応じて、変成器2が備える変成触媒層の制御温度を200℃から220℃の範囲で変更する。
このように、水素生成装置100の起動停止回数の増加に応じて変成器2が備える変成触媒層の制御温度を変更(上昇)することにより、変成触媒層の触媒活性が次第に低下する場合であっても、変成ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減することが可能になる。例えば、図9(a)の曲線cに示すように、水素生成装置100の起動停止4000回後では、変成器2が備える変成触媒層の制御温度を200℃から210℃に変更して、温度検出器9により検出される変成触媒層の動作温度を200℃から210℃に上昇させることで、変成器2が生成する変成ガス中の一酸化炭素濃度を約0.8%から約0.6%にまで改善することが可能になる。
そして、本実施の形態に係る水素生成装置100では、変成触媒層の触媒活性の低下に応じたより高い制御温度と一致するよう変成触媒層の動作温度を上昇させる際に、ヒーター等の加熱装置を用いることなく、かつ改質器1が備える改質触媒層の動作温度を殆ど変化させることなく、変成器2が備える変成触媒層の動作温度を適切に制御する。
より具体的に説明すると、本実施の形態に係る水素生成装置100では、その起動停止回数の増加に応じたより高い制御温度と一致するよう変成触媒層の動作温度を適切に制御するために、燃焼用燃料供給装置5から燃焼バーナー3に供給される燃焼用燃料を完全燃焼させるための理論空気量に対する燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に実際に供給される空気量の比(以下、単に「空気比」という)を、適切に上昇させる。例えば、この空気比を、1.2から3.0の範囲で変化させる。ここで、空気比の範囲は、燃焼バーナー3において不完全燃焼が発生せず、かつ燃焼バーナー3において失火が発生しない範囲とされる。
以下、本発明を特徴付ける水素生成装置100の具体的な制御動作について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る水素生成装置の特徴的な制御動作を模式的に示すフローチャートである。尚、図2では、本実施の形態にかかる水素生成装置の1サイクルの特徴的な制御動作を示している。又、ここでは、図2に示す制御動作が実行される以前では、変成器2が備える変成触媒層の制御温度がT0(T0<T1)となり、燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に供給する燃焼用空気の空気比がR0(R0<R1)となるように制御されていると仮定する。
図2に示すように、本実施の形態では、制御装置10が備えるカウンター10aが、水素生成装置100の起動停止回数Nxの計数を行う(ステップS1)。尚、本実施の形態では、水素生成装置100の起動停止回数Nxを数える形態を示すが、水素生成装置100の運転形態に応じて、その起動回数及び停止回数の何れか一方を数える形態を採用することも可能である。
次いで、制御装置10では、水素生成装置100の起動停止回数Nxが第1の閾値N1に到達したか否かが判定される。
制御装置10により水素生成装置100の起動停止回数Nxが第1の閾値N1に到達してはいないと判定される場合(ステップS2でNO)、カウンター10aは、水素生成装置100の起動停止回数Nxの計数を継続して行う。
一方、制御装置10により水素生成装置100の起動停止回数Nxが第1の閾値N1に到達したと判定されると(ステップS2でYES)、制御温度設定器10dが第1の閾値N1に対応する変成触媒層の適切な制御温度T1(T1>T0)を、空気比設定器(図示せず)が制御温度T1に対応する適切な空気比R1(R1>R0)を、その記憶部10bから自己のメモリーに読み込む(ステップS3)。そして、制御温度設定器10dは変成器2が備える変成触媒層の制御温度をT0からより高温の制御温度であるT1に設定変更すると共に、空気比設定器は燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に供給する燃焼用空気の空気比をR0からより高い空気比であるR1に設定変更する(ステップS4)。これにより、制御装置10が空気比R1になるよう燃焼用空気供給装置4の出力を変更することで、変成器2が備える変成触媒層の制御温度をT0からT1へ上昇させるための制御が開始される。
次いで、制御装置10は、空気比をR1に設定変更してから温度検出器9の検出温度が制御温度T1になると推定される所定時間が経過した後、制御装置10が備える比較部10cにより、温度検出器9の出力信号に基づく変成触媒層の動作温度Td1と制御温度T1との比較を行う。そして、この比較に基づき、制御装置10は、動作温度Td1と制御温度T1との温度差ΔT1を算出する(ステップS5)。
次いで、制御装置10では、動作温度Td1と制御温度T1との温度差ΔT1が許容範囲内となったか否かの判定が行われる。
そして、制御装置10により動作温度Td1と制御温度T1との温度差ΔT1が許容範囲内となったと判定される場合(ステップS6でYES)、空気比R1を維持した状態で燃焼用空気供給装置4の運転を継続する(ステップS7)。
しかしながら、温度差ΔT1が許容範囲外である場合(ステップS6でNO)、空気比設定器(図示せず)は、温度差ΔT1に対応する適切な空気比R2(ΔT1<0である場合にはR2>R1、ΔT1>0である場合にはR2<R1)をその記憶部10bから自己のメモリーに読み込む(ステップS8)。そして、空気比設定器は、燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に供給する燃焼用空気の空気比をR1からより高い空気比であるR2に更に設定変更する(ステップS9)。これにより、制御装置10は、空気比がR2となるよう燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3への空気の供給量を制御する。
その後、制御装置10は、ステップS5,6と同様にして、温度検出器9の出力信号に基づく変成触媒層の動作温度Td2(Td1に相当)と制御温度T1との比較を行う。そして、温度差ΔT2(ΔT1に相当)が許容範囲内である場合、空気比R2を維持した状態で燃焼用空気供給装置4の運転を継続する。尚、温度差ΔT2が許容範囲外である場合には、空気比を更に変更するという一連のフローを継続して行う。
このように、本実施の形態に係る水素生成装置100では、その起動回数又は停止回数の増加に応じて変成触媒層の制御温度がより高い温度に変更されると共に、制御装置10が、この制御温度と変成触媒層の動作温度とが一致するよう燃焼用空気供給装置4を制御して燃焼バーナー3での燃焼反応における空気比を適切に上昇させる。
これにより、ヒーター等の加熱手段を用いることなく、かつ改質器1が備える改質触媒層の動作温度を殆ど変化させることなく、変成器2が備える変成触媒層の触媒活性が低下しても変成ガスの一酸化炭素濃度を十分に低減することが可能になる。
ここで、上述したように、変成器2が備える変成触媒層の動作温度を上昇させるためには、燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3への空気供給量を増加させ、空気比を大きくすることが、非常に有効な手段となる。
これについて具体的に説明すると、例えば、燃焼用燃料の供給量を変えずに燃焼用空気の供給量を多くすると、燃焼バーナー3での燃焼熱量は変化せず、その一方で、燃焼ガスの生成量が増加する。そのため、燃焼バーナー3において生成される燃焼ガスの温度が若干低下する。従って、燃焼ガスが改質器1を通過する際、燃焼ガスの温度が若干低下した分だけ改質器1への伝熱量は若干低下するが、変成器2に供給される燃焼ガスの保有熱量が多くなるので、変成器2への伝熱量が上昇する。これにより、水素生成装置100において、変成触媒層の動作温度を上昇させるために単に燃焼バーナー3の燃焼量増加により燃焼ガスの保有熱量を増加させて変成触媒層の温度上昇を行った場合には、高温の燃焼ガスと熱交換を行う改質触媒層の温度が耐熱温度以上にまで上昇し、熱劣化を起こす可能性があるが、本実施の形態に係る水素生成装置100のように制御装置10が燃焼バーナー3での燃焼反応における空気比を大きくするよう燃焼バーナー3への空気供給量を増加させることで、改質触媒層の温度を過剰に上昇させることなく、変成触媒層の動作温度を上昇させることが可能になる。
尚、図2に示すフローチャートのステップS4(ステップS9)において変成触媒層の制御温度及び空気比を設定する際には、その時点での変成触媒層に供給される水素含有ガスの供給量に相関する原料ガスの供給量も考慮して、制御温度及び空気比を設定することが好ましい。この場合、制御装置10の記憶部10bには、起動停止回数及び原料流量に対応する適切な制御温度及び空気比を示すテーブルが記憶されている。
又、本実施の形態において、上述のように燃焼用燃料の供給量を変えずに燃焼用空気の供給量のみを上昇させると、改質器1が備える改質触媒層の動作温度が低下して改質器1で生成される水素の生成量が減少するので、水素生成装置100から送出される水素含有ガスを利用する燃料電池(図1では図示せず)等の機器の運転に悪影響が発生する場合がある。かかる障害の発生を回避するためには、制御装置10が、燃焼用燃料供給装置5から燃焼バーナー3への燃焼用燃料の供給量を適切に増加させ、改質器1が備える改質触媒層の温度を検出可能な温度検出器(図1では図示せず)の検出温度が所定の温度に維持されるよう制御すればよい。これにより、変成触媒層の触媒活性が低下しても、改質触媒層の温度を適切な温度に維持することが可能になると共に、変成ガス中の一酸化炭素濃度を低く維持することが可能になる。
又、本実施の形態では、変成触媒層の活性低下に相関するパラメータとして水素生成装置100の起動停止回数を用い、この起動停止回数の増加に応じて変成触媒層の制御温度を高くすると共に、制御装置10が燃焼用空気供給装置4を制御して空気比を上昇させる形態を例示したが、このような形態に限定されることはない。例えば、変成触媒層の活性低下に相関するパラメータとして水素生成装置100の運転時間を用い、この運転時間に基づいて変成触媒層の制御温度を設定すると共に燃焼用空気供給装置4を制御して空気比を変更する形態としてもよい。又、変成触媒層の活性低下に相関するパラメータとして水素生成装置100の起動停止回数と運転時間との双方を用い、これらの値に基づいて変成触媒層の制御温度を設定すると共に燃焼用空気供給装置4を制御して空気比を変更する形態としてもよい。又、水素生成装置100がある一定条件下で運転される際の変成触媒層の活性低下に相関するパラメータとして変成触媒層の動作温度を検出する温度検出器9の検出温度を用い、その検出温度の変化に基づき変成触媒層の制御温度を設定すると共に燃焼用空気供給装置4を制御して空気比を変更する形態としてもよい。この場合、使用する変成触媒やそれを充填する構造体との関係を考慮して、変成触媒層の動作温度をより一層顕著に検出可能な構成を適用すればよい。更には、変成触媒層の活性低下に相関するパラメータとして原料供給装置6から改質器1に供給される原料の累積供給量を用い、この値に基づき制御温度設定器10dが変成触媒層の制御温度を設定すると共に制御装置10が燃焼用空気供給装置4を制御して空気比を変更する形態としてもよい。このような構成としても、本実施の形態で得られる効果と同様の効果を得ることが可能である。
又、本実施の形態では、空気比設定器が制御温度T1に対応する適切な空気比R1(デフォルト値)を記憶部10bから読み込む形態を例示したが、このような形態に限定されることはない。例えば、制御装置10が、変成触媒層の動作温度Td1と制御温度T1との温度差ΔT1が許容範囲内となるようフィードバック制御を行う形態としてもよい。このような構成としても、本実施の形態で得られる効果と同様の効果を得ることが可能である。
又、本実施の形態において、温度検出器9の配設位置は、変成器2の運転温度を代表して検出可能な所定の位置であれば、如何なる配設位置であってもよい。ここで、この温度検出器9の配設位置としては、一般的には、変成触媒層の下流側における所定の位置とされる。その理由は、変成触媒層の下流側の温度はその内部を流れる変成ガス(或いは、変成ガス前駆体)の周囲への放熱作用の影響を受けて比較的低温となり、この比較的低い温度である変成触媒層の下流側における化学平衡が変成器2から排出される変成ガスの組成に対して支配的要因となるからである。従って、本発明の第1の実施形態としては、制御装置10が変成触媒層の下流側(特に、変成気2の出口近傍)の温度に基づき空気比を制御する形態が、より一層効果的である。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る水素生成装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図3に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置200のハードウェアの構成は、CO除去器を備える従来の一般的な水素生成装置のハードウェアの構成と基本的に同様である。又、本実施の形態に係る水素生成装置200の基本的な動作は、CO除去器を備える従来の一般的な水素生成装置の基本的な動作と同様である。
つまり、図3に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置200は、実施の形態1に係る水素生成装置100の構成に加えて、酸化触媒が充填された酸化触媒層(図3では図示せず)を有するCO除去器11と、このCO除去器11に空気を供給する空気供給装置13とを更に備えている。ここで、本実施の形態に係る水素生成装置200は、図1に示す変成器2の例えば変成触媒層の動作温度を検出する温度検出器9に代えて、CO除去器11の例えば酸化触媒層の動作温度を検出する温度検出器12を備えている。ここで、温度検出器12は、例えばCO除去器11の酸化触媒層における生成ガスの流れ方向の上流側に配設されている。尚、その他の点については、水素生成装置200の構成と水素生成装置100の構成とは同様である。
かかる水素生成装置200では、CO除去器11が、図3の矢印で示すように変成器2から燃焼ガス及び変成ガスが供給されると共に、空気供給装置13から空気が供給されると、適切な動作温度に制御される酸化触媒層において進行する酸化反応により、一酸化炭素濃度が20ppm程度の濃度にまで更に低減された生成ガスを生成する。そして、このCO除去器11において生成された生成ガスが、水素生成装置200の外部に向けて排出される。尚、その他の点については、水素生成装置200の基本的な動作と水素生成装置100の基本的な動作とは同様である。
ところで、本実施の形態に係る水素生成装置200では、その運転時間の経過や起動停止回数の増加等に応じて、変成器2が備える変成触媒層の触媒活性が次第に低下すると共に、CO除去器11が備える酸化触媒層の触媒活性が次第に低下する。
ここで、本願の発明者らは、CO除去器11が備える酸化触媒層の触媒活性が次第に低下する状況を把握するために、酸化触媒を充填した単管を準備して、水素生成装置200の起動及び停止の繰り返しに伴う酸化触媒層の触媒活性の変化を調べる模擬試験を実施した。この模擬試験の概要は、以下に示す通りである。即ち、酸化触媒としてRu系触媒を選択し、このRu系触媒を単管内に7.6mL充填した。又、水素(79.5dry%)と一酸化炭素(0.5dry%)と二酸化炭素(20dry%)と水とからなる露点が64℃である改質模擬ガス(改質触媒の温度を650℃としかつS/C=3.0とした場合の改質ガスの平衡組成に相当)を準備した。そして、この改質模擬ガスの流量をGHSV(dry)6640/hとし、酸化触媒への酸素の供給量をそれに供給される一酸化炭素の供給量の2倍とした上で、酸化触媒に改質模擬ガスを74.8L供給する第1工程と、酸化触媒に改質模擬ガスを25.2L供給しかつ酸素を上記所定量で所定期間供給する第2工程と、酸化触媒に都市ガス13Aを2.63L供給する第3工程とからなるシーケンスを繰り返した。この際、第1工程では、改質模擬ガスの温度を所定期間50℃で維持した後、その温度を150℃に変化させた。又、第2工程では、改質模擬ガスの温度を150℃に維持した。更に、第3工程では、都市ガス13Aの温度を所定時間150℃で維持した後、50℃まで冷却した。そして、適宜、酸化触媒の温度を変化させながら、その酸化触媒を通過した後の改質模擬ガス中の一酸化炭素濃度をモニタした。
図10(a)は、上記模擬試験の結果を基にした、酸化触媒層の動作温度と、生成ガス中の一酸化炭素濃度と、水素生成装置の起動停止回数との関係を模式的に示すグラフである。尚、図10(a)において、曲線aは、水素生成装置の運転初期における生成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。又、曲線bは、水素生成装置の起動停止1000回後における生成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。又、曲線cは、水素生成装置の起動停止3000回後における生成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。更に、曲線dは、水素生成装置の起動停止4000回後における生成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示している。
図10(a)に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置200では、その起動停止回数が増加するに連れて、CO除去器11が備える酸化触媒層の触媒活性が次第に低下する。そして、その酸化触媒層の触媒活性の低下により、CO除去器11が生成する生成ガス中の一酸化炭素濃度が上昇する。
例えば、図10(a)の曲線aに示すように、水素生成装置200の運転初期においては、CO除去器11が備える酸化触媒層の動作温度を120℃から160℃の温度範囲内に制御することで、CO除去器11が生成する生成ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減することが可能になる。ここで、酸化触媒層の制御温度としては、一酸化炭素の濃度を可能な限り低減可能な温度が好適であることは勿論であるが、水素生成装置200の効率向上を優先した場合、可能な限り低い温度が好適である。例えば、本実施の形態では、酸化触媒層の制御温度としては、生成ガス中の一酸化炭素濃度を約10ppmにまで低減可能な120℃が最も適切な温度である。
ここで、図10(a)の曲線b,cに示すように、水素生成装置200の起動停止1000回後及び3000回後では、その運転初期において一酸化炭素の低減特性が良好であった温度にCO除去器11が備える酸化触媒層の動作温度を制御すると、運転初期に比べればCO除去器11が生成する生成ガス中の一酸化炭素濃度が若干増加する場合があるものの、一酸化炭素濃度を十分に低減することが可能である。具体的には、CO除去器11が備える酸化触媒層の動作温度を120℃に制御しても、CO除去器11が生成する生成ガス中の一酸化炭素濃度を約10ppm以下にまで低減することが可能である。
しかしながら、図10(a)の曲線dに示すように、水素生成装置200の起動停止4000回後においては、CO除去器11が備える酸化触媒層の動作温度を120℃に制御しても、CO除去器11が生成する生成ガス中の一酸化炭素濃度を約30ppmにまでしか低減することができない。
そこで、本実施の形態に係る水素生成装置200では、かかる障害の発生を回避するために、CO除去器11が備える酸化触媒層の触媒活性が経時的に低下しても生成ガス中の一酸化炭素濃度を十分に低減できるよう、水素生成装置200の起動停止回数の増加に応じて、酸化触媒層の制御温度を段階的に上昇させる構成が採られる。
尚、上記模擬試験において、GHSV2490/hとなるように改質模擬ガスの流量を低減した場合には、起動停止回数が4000回後であっても、酸化触媒の上流の温度が100℃〜200℃の範囲で一酸化炭素濃度が2〜3ppmとなり、一酸化炭素を十分に低減可能であることが確認された。これは、原料の供給量が少ない場合には水素含有ガス中の一酸化炭素の絶対量も少なくなるため、酸化触媒の触媒活性が低下して一酸化炭素の酸化が十分に行えなくなるという問題が生じないためであると考えられる。しかし、GHSV6640/h以上となるような水素含有ガスの流量が多い場合には、起動停止回数の増加に応じて適切な酸化触媒層の制御温度が図9(c)のグラフと同様の傾向を有する対応関係を示すことが推測される。
図10(b)は、上記推測に基づく、原料流量と、酸化触媒層の制御温度と、水素生成装置の起動停止回数との関係を模式的に示すグラフである。尚、図10(b)において、実線は、水素生成装置の起動停止回数が1回から2000回までの酸化触媒層の制御温度を示している。又、破線は、水素生成装置の起動停止回数が2001回から3000回までの酸化触媒層の制御温度を示している。又、一点鎖線は、水素生成装置の起動停止回数が3001回から4000回までの酸化触媒層の制御温度を示している。
図10(b)に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置200では、例えば、原料供給装置6から改質器1に供給される原料の流量が4L/min以上5L/min未満である場合には、その起動停止回数が1回から2000回まではCO除去器11が備える酸化触媒層の制御温度を120℃とし、その起動停止回数が2001回から3000回までは酸化触媒層の制御温度を130℃とし、その起動停止回数が3001回から4000回までは酸化触媒層の制御温度を150℃とする。又、図10(b)に示すように、原料供給装置6から改質器1に供給される原料の流量が5L/min以上6L/min未満である場合には、水素生成装置200の起動停止回数の増加に応じて、CO除去器11が備える酸化触媒層の制御温度を130℃から160℃の範囲で変更する。
このように、水素生成装置200の起動停止回数の増加に応じてCO除去器11が備える酸化触媒層の制御温度を変更(上昇)することにより、酸化触媒層の触媒活性が次第に低下しても、生成ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能になる。例えば、図10(a)の曲線dに示すように、水素生成装置200の起動停止4000回後では、CO除去器11が備える酸化触媒層の制御温度を120℃から150℃に変更して、温度検出器12により検出される酸化触媒層の動作温度を120℃から150℃に上昇させることで、CO除去器11が生成する生成ガス中の一酸化炭素濃度を約30ppmから10ppm以下にまで改善することが可能になる。
そして、本実施の形態に係る水素生成装置200では、酸化触媒の触媒活性の低下に応じたより高い制御温度と一致するよう酸化触媒の動作温度を上昇させる際に、実施の形態1の場合と同様、ヒーター等の加熱装置を用いることなく、かつ改質器1が備える改質触媒層の動作温度を殆ど変化させることなく、CO除去器11が備える酸化触媒層の動作温度を適切に制御する。
以下、本発明を特徴付ける水素生成装置200の具体的な制御動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2に係る水素生成装置の特徴的な制御動作を模式的に示すフローチャートである。尚、図4では、本実施の形態にかかる水素生成装置の1サイクルの特徴的な制御動作を示している。又、ここでは、図4に示す制御動作が実行される以前では、CO除去器11が備える酸化触媒層の制御温度がT0(T0<T1)となり、燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に供給する燃焼用空気の供給量が、燃焼バーナー3での燃焼反応における空気比がR0(R0<R1)となるように制御されていると仮定する。
図4に示すように、本実施の形態では、制御装置10が備えるカウンター10aが、水素生成装置200の起動停止回数Nxの計数を行う(ステップS1)。
次いで、制御装置10では、水素生成装置200の起動停止回数Nxが第1の閾値N1に到達したか否かが判定される。
制御装置10により水素生成装置200の起動停止回数Nxが第1の閾値N1に到達してはいないと判定される場合(ステップS2でNO)、カウンター10aは、水素生成装置200の起動停止回数Nxの計数を継続して行う。
一方、制御装置10により水素生成装置200の起動停止回数Nxが第1の閾値N1に到達したと判定されると(ステップS2でYES)、制御装置10では、第1の閾値N1に対応する酸化触媒層の適切な制御温度T1(T1>T0)と、この制御温度T1に対応する適切な空気比R1(R1>R0)とが、その記憶部10bから自己のメモリーに読み込まれる(ステップS3)。そして、制御温度設定器10dはCO除去器11が備える酸化触媒層の制御温度をT0からより高温の制御温度であるT1に設定変更すると共に、空気比設定器が燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に供給する燃焼用空気の空気比をR0からより高い空気比であるR1に設定変更する(ステップS4)。これにより、制御装置10が、空気比R1になるよう燃焼用空気供給装置4の出力を変更することで、CO除去器11が備える酸化触媒層の制御温度をT0からT1へ上昇させるための制御が開始される。
次いで、制御装置10は、空気比をR1に設定変更してから温度検出器12の検出温度が制御温度T1になると推定される所定時間が経過した後、制御装置10が備える比較部10cにより、温度検出器12の出力信号に基づく酸化触媒層の動作温度Td1と制御温度T1との比較を行う。そして、この比較に基づき、制御装置10は、動作温度Td1と制御温度T1との温度差ΔT1を算出する(ステップS5)。
次いで、制御装置10では、動作温度Td1と制御温度T1との温度差ΔT1が許容範囲内となったか否かの判定が行われる。
そして、制御装置10により動作温度Td1と制御温度T1との温度差ΔT1が許容範囲内となったと判定される場合(ステップS6でYES)、空気比R1を維持した状態で燃焼用空気供給装置4の運転を継続する(ステップS7)。
しかしながら、温度差ΔT1が許容範囲外である場合(ステップS6でNO)、空気比設定器は、温度差ΔT1に対応する適切な空気比R2(ΔT1<0である場合にはR2>R1、ΔT1>0である場合にはR2<R1)をその記憶部10bから自己のメモリーに読み込む(ステップS8)。そして、空気比設定器は、燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に供給する燃焼用空気の空気比をR1からより高い空気比であるR2に更に設定変更する(ステップS9)。これにより、制御装置10は、空気比がR2となるよう燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3への空気の供給量を制御する。
その後、制御装置10は、ステップS5,6と同様にして、温度検出器12の出力信号に基づく酸化触媒層の動作温度Td2(Td1に相当)と制御温度T1との比較を行う。そして、温度差ΔT2(ΔT1に相当)が許容範囲内である場合、空気比R2を維持した状態で燃焼用空気供給装置4の運転を継続する。尚、温度差ΔT2が許容範囲外である場合には、空気比を更に変更するという一連のフローを継続して行う。
このように、本実施の形態に係る水素生成装置200では、その起動回数又は停止回数の増加に応じて酸化触媒層の制御温度がより高い温度に変更されると共に、制御装置10が、この制御温度と酸化触媒層の動作温度とが一致するよう燃焼用空気供給装置4を制御して燃焼バーナー3での燃焼反応における空気比を適切に上昇させる。
これにより、実施の形態1の場合と同様、ヒーター等の加熱手段を用いることなく、かつ改質器1が備える改質触媒層の動作温度を殆ど変化させることなく、CO除去器11が備える酸化触媒層の触媒活性が低下しても生成ガスの一酸化炭素濃度を十分に低減することが可能になる。
尚、図4に示すフローチャートのステップS4(ステップS9)において酸化触媒層の制御温度及び空気比を設定する際には、その時点での酸化触媒層に供給される水素含有ガスの供給量に相関する原料ガスの供給量も考慮して、制御温度及び空気比を設定することが好ましい。この場合、制御装置10の記憶部10bには、起動停止回数及び原料流量に対応する適切な制御温度及び空気比を示すテーブルが記憶されている。
又、本実施の形態においても、制御装置10が、燃焼バーナー3での燃焼反応における空気比を上昇させる際に、燃焼用燃料供給装置5からの燃焼用燃料の供給量を変えずに燃焼用空気供給装置4からの燃焼用空気の供給量のみを上昇させると、改質器1が備える改質触媒層の動作温度が低下して改質器1で生成される水素の生成量が減少するので、水素生成装置200から送出される水素含有ガスを利用する燃料電池(図3では図示せず)等の機器の運転に悪影響が発生する場合がある。かかる障害の発生を回避するためには、制御装置10が、燃焼用燃料供給装置5から燃焼バーナー3への燃焼用燃料の供給量を適切に増加させ、改質器1が備える改質触媒層の温度を検出可能な温度検出器(図3では図示せず)の検出温度が所定の温度に維持されるよう制御すればよい。これにより、酸化触媒層の触媒活性が低下しても、改質触媒層の温度を適切な温度に維持することが可能になると共に、生成ガス中の一酸化炭素濃度を低く維持することが可能になる。
又、本実施の形態では、酸化触媒層の活性低下に相関するパラメータとして水素生成装置200の起動停止回数を用い、この起動停止回数の増加に応じて酸化触媒層の制御温度を高くすると共に、制御装置10が燃焼用空気供給装置4を制御して空気比を上昇させる形態を例示したが、このような形態に限定されることはない。例えば、実施の形態1の場合と同様、酸化触媒層の活性低下に相関するパラメータとして、水素生成装置200の運転時間、水素生成装置200の起動停止回数及び運転時間、水素生成装置200がある一定条件下で運転される際に温度検出器12により検出される酸化触媒層の検出温度、及び原料供給装置6から改質器1に供給される原料の累積供給量の何れかを用い、この値に基づき制御温度設定器10dが酸化触媒層の制御温度を設定すると共に燃焼用空気供給装置4を制御して空気比を変更する形態としてもよい。このような構成としても、本実施の形態で得られる効果と同様の効果を得ることが可能である。
又、本実施の形態では、空気比設定器が制御温度T1に対応する適切な空気比R1(デフォルト値)を記憶部10bから読み込む形態を例示したが、このような形態に限定されることはない。例えば、制御装置10が、酸化触媒層の動作温度Td1と制御温度T1との温度差ΔT1が許容範囲内となるようフィードバック制御を行う形態としてもよい。このような構成としても、本実施の形態で得られる効果と同様の効果を得ることが可能である。
又、本実施の形態において、温度検出器12の配設位置は、CO除去器11の運転温度を代表して検出可能な所定の位置であれば、如何なる配設位置としてもよい。ここで、この温度検出器12の配設位置としては、一般的には、酸化触媒層の上流側における所定の位置とされる。その理由は、酸化触媒層の下流側の温度はその内部を流れる生成ガス(或いは、生成ガス前駆体)の周囲への放熱作用の影響を受けて比較的低温となり、比較的高温である酸化触媒層の上流側においてのみ酸化反応が進行するからである。つまり、酸化触媒層の上流側における温度がCO除去器11から排出される生成ガスの組成に対して支配的要因となるからである。従って、本発明の第2の実施形態としては、制御装置10が酸化触媒層の上流側(特に、CO除去器11の入口近傍)の温度に基づき空気比を制御する形態が、より一層効果的である。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る水素生成装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図5に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置300は、実施の形態1に示す水素生成装置100の構成と、実施の形態2に示す水素生成装置200の構成とを組み合わせた構成を備えている。
つまり、図5に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置300は、変成器2の例えば変成触媒層の動作温度を検出する温度検出器9と、CO除去器11の例えば酸化触媒層の動作温度を検出する温度検出器12との双方を備えている。尚、その他の点については、水素生成装置300の構成と水素生成装置100,200の構成とは同様である。
図9(a)に示す変成触媒の温度特性から明らかなように、高温領域における変成触媒の動作温度の低下に比べて、低温領域における変成触媒の動作温度の低下は、変成器2が生成する変成ガス中の一酸化炭素濃度を著しく上昇させる。又、図10(a)に示す酸化触媒の温度特性から明らかなように、高温領域における酸化触媒の動作温度の低下に比べて、低温領域における酸化触媒の動作温度の低下は、CO除去器11が生成する生成ガス中の一酸化炭素濃度を著しく上昇させる。
そこで、本実施の形態では、水素生成装置300の制御装置10が、温度検出器9と温度検出器12との双方からの出力信号に基づき、燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3への空気の供給量を適切に制御する。
図6は、本発明の実施の形態3に係る水素生成装置の特徴的な制御動作の一部を模式的に示すフローチャートである。
図6に示すように、例えば、水素生成装置300の制御装置10は、温度検出器9と温度検出器12との両方により、変成触媒層と酸化触媒層との双方の動作温度Tr及びTpを検出する(ステップS1a,S1b)。
次いで、制御装置10は、変成触媒層の動作温度Trと酸化触媒層の動作温度Tpとの少なくとも何れか一方が触媒活性の低下(本実施の形態では、起動回数又は停止回数の増加)に応じた適切な制御温度Tr1,Tp1よりも低く、かつその温度差△Tが許容範囲外である場合には(ステップS2でYES)、燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に対する燃焼用空気の供給量を増加させるよう制御して、空気比R0を上記温度差ΔTに対応する適切な空気比R1に変更する(ステップS3a)。
一方、制御装置10は、変成触媒層と酸化触媒層との両方の動作温度Tr,Tpが起動停止回数の増加に応じた適切な制御温度Tr1,Tp1よりも高く、かつその温度差△Tが何れも許容範囲外である場合には(ステップS2でNO)、燃焼用空気供給装置4から燃焼バーナー3に対する燃焼用空気の供給量を減少させるよう制御して、空気比R0を適切な空気比R−1に変更する(ステップS3b)。
尚、本実施の形態では、変成触媒層又は酸化触媒層の活性低下と相関するパラメータとして水素生成装置の起動停止回数を用いたが、これに限定されることはない。つまり、変成触媒層又は酸化触媒層の活性低下と相関するパラメータであれば、如何なるパラメータを用いてもよい。そして、実施の形態1及び2の場合と同様、その他のパラメータに応じて適切な制御温度を設定し、この制御温度と上記触媒の動作温度とが一致するよう制御装置10が燃焼用空気供給装置4を制御して空気比を変更しても構わない。
このように、本実施の形態に係る水素生成装置300では、変成触媒層の動作温度Trと酸化触媒層の動作温度Tpとの少なくとも何れか一方が触媒活性の低下に応じた制御温度以下になった場合についてより一層厳しく温度制御が行われる。そのため、変成器2及びCO除去器11の動作温度を触媒活性の劣化に応じた制御温度以上に安定的に維持することが可能となる。そして、これにより、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度をより一層適切に低減することが可能になる。
尚、その他の点については、実施の形態1,2の場合と同様である。
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図7に示すように、本実施の形態に係る燃料電池システム400は、その発電部の本体としての燃料電池30と、温度検出器31とを備えている。
燃料電池30は、水素を含む燃料ガス及び酸素を含む酸化剤ガスがその燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路に供給されると共に、その冷却媒体流路に冷却媒体が供給されると、燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とを用いる電気化学反応を進行させて、電力と熱とを生成する。この燃料電池30としては、例えば、高分子電解質膜を備える高分子電解質形燃料電池が挙げられる。又、温度検出器31は、燃料電池30の動作温度を検出する。
一方、図7に示すように、この燃料電池システム400は、燃焼バーナー32bを備える水素生成装置32aと、流路切替器33と、迂回流路38と、オフガス流路39と、酸化剤ガス供給装置35と、冷却媒体循環装置36と、制御装置37と、燃焼用空気供給装置40とを備えている。
水素生成装置32aは、都市ガス等の原料と水とを用いて、水素を含む水素含有ガスを生成する。ここで、図7では図示しないが、この水素生成装置32aは、改質触媒層を備える改質器と、変成触媒層及びその動作温度を検出する第1の温度検出器を備える変成器と、酸化触媒層及びその動作温度を検出する第2の温度検出器を備えるCO除去器とを備えている。又、燃焼バーナー32bは、燃料電池30から排出されるオフガスと燃焼用空気供給装置40から供給される燃焼用空気とを用いて、水素生成装置32aに水素含有ガスを生成する際に必要となる熱を供給する。
流路切替器33は、水素生成装置32aで生成された水素含有ガスの供給先を、燃料電池30の燃料ガス流路と迂回流路38との間で切り替える。又、オフガス流路39は、水素生成装置32aから迂回流路38を介して供給される可燃性ガス、若しくは、燃料電池30から排出される可燃性ガスを、燃焼バーナー32bに向けて通流させる。
酸化剤ガス供給装置35は、燃料電池システム400の外部から酸化剤ガス(空気)を導入して、この導入した酸化剤ガスを燃料電池30の酸化剤ガス流路に供給する。
冷却媒体循環装置36は、燃料電池30の冷却媒体流路との間で冷却水等の冷却媒体を循環させる。
そして、制御装置37は、燃料電池システム400の各構成要素の動作を制御して、燃料電池システム400の全体動作を制御する。
かかる燃料電池システム400では、都市ガス等の原料と水とが供給されると、水素生成装置32aは、水素含有ガスの生成を開始する。この水素含有ガスの生成開始当初、水素生成装置32aで生成される水素含有ガスは、高濃度の一酸化炭素を含有している。そのため、水素生成装置32aで生成された水素含有ガスは、燃料電池30に供給されることなく、流路切替器33、迂回流路38、オフガス流路39を介して、水素生成装置32aの燃焼バーナー32bに供給される。この際、制御装置37は、所定の空気比で燃焼用空気が燃焼バーナー32bに供給されるよう、燃焼用空気供給装置40を制御する。
さて、一酸化炭素が低減された水素含有ガスの供給が可能になると、水素生成装置32aから燃料電池30の燃料ガス流路に燃料ガスとして水素含有ガスが供給される。又、酸化剤ガス供給装置35から燃料電池30の酸化剤ガス流路に酸化剤ガスが供給される。すると、燃料電池30では、燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とが用いられる電気化学反応が進行する。この電気化学反応により、燃料電池30は、電力と熱とを同時に生成する。この際、冷却媒体循環装置36により、燃料電池30が備える冷却媒体流路に、冷却水等の冷却媒体が供給される。すると、冷却媒体は、燃料電池30が生成した熱を受け取り、これを燃料電池30の外部に運搬することで、燃料電池30の温度を適切な温度に維持する。これにより、燃料電池30では、水素と酸素とが用いられる電気化学反応が好適に進行する。
尚、電気化学反応に用いられなかった余剰の燃料ガスは、余剰の水蒸気と共に燃料電池30から排出され、水素生成装置32aの燃焼バーナー32bに供給される。又、電気化学反応に用いられなかった余剰の酸化剤ガスは、発電に伴い生成される水と共に燃料電池30から排出され、その後、燃料電池システム400の外部に廃棄される。又、燃料電池30から排出された冷却媒体は、冷却媒体循環装置36において冷却され、再び、燃料電池30に供給される。
そして、この燃料電池システム400では、その変成触媒層及び酸化触媒層の触媒活性の低下(本実施の形態では、起動停止回数の増加)に応じて、制御装置37が燃焼用空気供給装置40から燃焼バーナー32bに供給する燃焼用空気の量を適切に変化させることにより、水素生成装置32aの変成器が備える変成触媒層及びCO除去器が備える酸化触媒層の双方の動作温度が適切に制御される。つまり、この燃料電池システム400では、実施の形態1〜3で説明したように、水素生成装置32aの起動停止回数等のパラメータに応じて、燃焼バーナー32bでの燃焼反応における空気比が適切に制御される。これにより、変成触媒層又は酸化触媒層の触媒活性が経時的に低下しても、水素含有ガス中の一酸化炭素を十分に低減することが可能になるので、長期間に渡り優れた発電性能を発揮する燃料電池システムを提供することが可能になる。
又、本実施の形態に係る燃料電池システム400の構成では、変成触媒層及び酸化触媒層の活性低下に応じてそれぞれの触媒の制御温度がより高い制御温度に変更される際、燃焼バーナー32bでの燃焼反応における空気比が上昇するよう燃焼用空気供給装置40を制御し、燃焼バーナー32bへのオフガスの供給量を増加させ、即ち水素生成装置32aへの原料の供給量を増加させ、燃焼バーナー32bでの燃焼熱量の増加により上記触媒の温度が上昇するよう制御しない。従って、原料の供給量の増加に伴う改質触媒の温度上昇により水素の生成量が増大し、オフガスの供給量が増加することにより改質触媒の温度が更に上昇して、水素の生成量が更に増大するという循環により、燃料電池システム400において熱暴走が発生する可能性がある。しかし、本実施の形態に係る燃料電池システム400の特徴的な制御動作によれば、この問題を回避することが可能になる。