JP4825354B2 - 歪補償増幅器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波無線装置における基地局装置又は中継器に用いられるフィードフォワード方式の歪補償増幅器に係り、特に安定して歪成分を除去することができるフィードフォワード方式の歪補償増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話等の移動無線通信システムでは、基地局装置又は中継器において電波を増幅し、移動局に対して電波を送出する。複数の移動局間の通信を行うには多チャネルの電波を同時に増幅する必要があるため、基地局装置又は中継器の増幅器は高度の線形性が要求されるが、素子の特性を考慮すればこれには限界がある。このため増幅器に多チャネルの電波に影響して瞬時ピークによる過入力が入力されたような場合、増幅器の非線型動作による歪成分の発生を減衰する増幅器として、フィードフォワード方式の歪補償増幅器が用いられている。
【0003】
従来のフィードフォワード方式の歪補償増幅器の構成及び動作について、図7を用いて説明する。図7は、従来のフィードフォワード方式の歪補償増幅器の構成ブロック図である。また図7では、歪補償増幅器を構成する各素子におけるスペクトラム波形を合わせて示している。
図7の歪補償増幅器は機能上、入力信号を分岐して一方の入力信号を増幅し、増幅入力信号と他方の入力信号とを逆位相で合成させて歪成分信号を出力する歪検出ループと、歪成分信号と増幅入力信号とを合成して歪成分を除去した結果を出力する歪補償ループとに大別できる。図7において、分配器42から方向性結合器44までが歪検出ループ、方向性結合器44から方向性結合器46までが歪補償ループに該当する。
【0004】
アンテナ(図示せず)で受信された無線入力信号は、妨害波の影響を受けにくい、すなわちインターセプト・ポイント(以下IPという)の高い増幅器41において増幅される。増幅器41はプリアンプの役割を果たすものである。
増幅器41における増幅後、入力信号は分配器42に入力され、それぞれ主増幅器43のルートと、遅延器47のルートとに分配される。主増幅器43のルートでは、入力信号は主増幅器43によって歪成分と共に増幅され、方向性結合器44に入力される。遅延器47のルートに入力された入力信号は、遅延器47において遅延され、方向性結合器44に入力される。
【0005】
方向性結合器44では入力された両ルートの入力信号に基づいて二つの出力がなされる。一方の出力は主増幅器43で増幅された入力信号がそのまま遅延器45に出力され、他方の出力は主増幅器43で増幅された入力信号と、遅延器47で遅延された入力信号とが逆位相で合成され、結果として歪成分信号が補助増幅器48に出力される。
【0006】
方向性結合器44から出力された、増幅された入力信号は、遅延器45で遅延され、方向性結合器46に入力される。また歪成分信号は補助増幅器48で遅延器45の入力信号と同レベルに増幅され、方向性結合器46に入力される。
方向性結合器46では、増幅された入力信号と増幅さえた歪信号成分とが逆位相で合成されることで歪成分が相殺され、結果として増幅された基本波、すなわち増幅信号を出力する。
【0007】
また方向性結合器44から出力された歪成分信号は、結合器49を経由して検波器50において振幅値が検出され、A/D変換器51でデジタル変換される。図7のフィードフォワード歪補償増幅器では、検波器50の検出結果に基づいて、歪成分信号が最小となるよう主増幅器43の前段に可変位相器及び可変減衰器(図示せず)を設け、入力信号の位相及び振幅の調整を行っている。
上述した動作によって図7のフィードフォワード歪補償増幅器は、入力信号中の歪成分を除去し、基本波に対して所望の増幅度で増幅された出力信号を出力する。
【0008】
近年の基地局装置又は中継器では、低出力時での消費電力を低減するため、フィードフォワード形式の歪補償増幅器における主増幅器又は補助増幅器のバックオフ量を歪成分を除去できる限界まで低下させたり、主増幅器又は補助増幅器を構成する素子のうち終段の素子についてはAB級増幅器を用いるといった処置を行っている。
また、従来のフィードフォワード歪補償増幅器としては他に、平成6年8月12日公開の特開平6−224650号「歪補償増幅器」(出願人:富士通株式会社、発明者:馬庭透他、以下、従来例という)等、複数提案されている。
【0009】
ここでキャンセル量について説明する。上述したように、図7のフィードフォワード形式の歪補償増幅器では歪検出ループにおいて、主増幅器43で増幅された入力信号と、遅延器47で遅延された入力信号とを逆位相で合成し、得られた歪成分信号が最小になるような制御が行われている。
減衰した歪成分信号のレベルを表す量はキャンセル量として示すことができ、キャンセル量は以下の式で表されることが知られている。
【0010】
【数1】
Figure 0004825354
【0011】
(1)式より、振幅及び位相の調整量に基づいてキャンセル量が求まることが明らかである。振幅偏差及び位相偏差とキャンセル量の関係を示したグラフ図は図8に示されている通りである。
【0012】
フィードフォワード歪補償増幅器では、ネットワークアナライザを用いることによって増幅帯域、キャンセル量、振幅偏差、位相偏差及び遅延偏差を測定し、これらの測定結果に基づいてこれらのパラメータを調整し、結果としてキャンセル量の調整を行っている。
図9は、ネットワークアナライザでの測定方法及びキャンセル量の測定結果を示した図である。図9(a)に示すように、増幅器等の被測定デバイス(図ではDUT)にネットワークアナライザを接続することによって、被測定デバイスにおける各パラメータの測定を行う。ネットワークアナライザによるキャンセル量の測定結果は図9(b)に示されるようになり、対象周波数帯域内と帯域外とのレベル差がキャンセル量となる。図9(b)に示す例では、被測定デバイスはキャンセル量が40dBであると測定されている。
【0013】
図7のフィードフォワード歪補償増幅器では、増幅対象の入力信号が1トーンの搬送波を含む場合、AB級増幅器を用いてもキャンセル量は確保できる。しかし増幅対象の入力信号が2トーンの搬送波を含む場合、1トーンの場合と比較してキャンセル量に差がついてしまい、キャンセル量を確保できなくなる。例えば振幅偏差に0.5dBのエラーが発生した場合、(1)式よりキャンセル量は約24.5dBになる。
図10は歪検出ループ及び歪補償ループで得られる2トーンの搬送波の入力信号のスペクトラム分布を示した図であり、左側が歪検出ループで、右側が歪補償ループで得られるスペクトラム分布図である。図10では歪補償増幅器は、常時40dB以上のキャンセル量を確保しているものとする。
方向性結合器44における逆位相合成によって、歪成分信号は右上の分布図になるのが理想であるが、振幅偏差で0.5dBのエラーが発生するとキャンセル量を確保できないため、実際には右下の分布図のような歪成分信号が出力されることになる。
キャンセル量に差がついてしまう原因は(1)式より、主増幅器43における入力信号の増幅の過程で、位相若しくは振幅にエラーが発生したためと考えられる。以下、位相及び振幅のエラーの発生の原因について説明する。
【0014】
位相のエラーは、後述する要因により発生する。一般に増幅器の非線型性による歪は、AM−AM変換及びAM−PM変換によって発生する。図11は増幅器におけるAM−AM変換とAM−PM変換のベクトル図及び増幅器の出力特性を示した図である。
図11(a)に示すように、線形成分V1に対して相互変調成分V3が位相差Φ3で発生すると、出力信号V0はV1とV3とのベクトル演算によって求められる。線形成分V1から出力信号V0への変換は、AM−AM変換とAM−PM変換の組み合わせによって導き出される。
また、増幅器の入出力特性は図11(b)に示される通りである。図11(b)のグラフは、横軸が入力信号の、縦軸が出力信号のレベルを表している。線形成分V1は増幅器の理想線形ラインであり、増幅器の飽和レベルに達すると、出力信号V0は理想線形ラインから外れたカーブを描くようになる。このとき増幅器では、出力電圧が抑制され、非線形性による歪みが発生する。
【0015】
図12は2トーンの搬送波の入力信号を、従来のフィードフォワード歪補償増幅器で増幅した場合のスペクトラム分布の解析図である。フィードフォワード形式の歪補償増幅器では、歪検出ループにおいて基本波S1、S2をキャンセルし歪成分信号を出力することが目的であるが、基本波S1、S2中にも3次相互変調歪みIM3と5次相互変調歪みIM5による歪成分A3、A5が含まれている。このため増幅器を構成する素子にAB級増幅器を用いた場合には、基本波に含まれる歪成分も増加することになる。
【0016】
一方、マルチキャリア信号又はCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)信号のように、瞬時のピーク電力を含むような入力信号を増幅するような場合には、出力電圧が増幅器の動作点から瞬時に飽和電力付近に移動するか、飽和電力を超えてしまう事態が発生する。
増幅器で発生する歪の補償を行う装置として、増幅器で発生する歪をあらかじめ逆位相で搬送波に加えておくことで増幅器で発生する歪を相殺するRF−PD(Radio Frequency-Phase Detector)型リニアライザが従来用いられていた。しかしRF−PD型リニアライザは、増幅器の飽和電力付近になると急激に歪補償量が減衰するため、ピーク電力によって発生する歪補償を十分に行うことができない問題点があった。
【0017】
上述したように、フィードフォワード歪補償増幅器における振幅偏差はネットワークアナライザによって測定され、既に調整されているため、歪の発生の原因は位相のエラーによるものであるといえる。すなわち図11において示された相互変調成分IM3は、実際には一定の位相差Φ3で発生しておらず、飽和電力付近で急激に変化して発生したと考えられる。
【0018】
振幅のエラーは、後述する要因により発生する。マルチキャリア信号又はCDMA信号のように、瞬時のピーク電力を含むような入力信号を増幅するような場合には、ピーク電力が飽和されずに増幅されていることが歪みの発生に影響することからも重要である。
最近では入力信号の振幅偏差の分布を測定する方法として、CCDF(Complementary Cumulative Distribution Function:相補累積分布機能)が用いられている。図13は図7のフィードフォワード歪補償増幅器の歪検出ループにおける主増幅器43のルートと、遅延器47のルートでの入力信号のCCDF特性を示した図である。図13において、縦軸は分布率を、横軸は振幅偏差を示している。また2つの曲線のうち、実線が主増幅器43のルートの、点線が遅延器47のルートの入力信号のCCDF特性を表している。
【0019】
遅延器47は受動的な素子であるため、入力信号も歪むことなくそのまま出力される。一方主増幅器43のルートでは、主増幅器43は消費電力の低減のため、バックオフ量を数dBに設定しており、例えばCDMA信号のように入力レベルのピーク時と平均値との差が10dB以上もあるような入力信号の場合には、瞬時に飽和電力近傍に出力レベルが移動することで抑圧が発生し、図13に示されるような結果となる。これらの曲線の差が、振幅エラーに反映される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の歪補償増幅器では、上述した通り、2トーンの搬送波を含んだり、マルチキャリア信号又はCDMA信号のような瞬時のピーク電力を含む入力信号を増幅する場合には、キャンセル量が理想値の通り確保できないという問題点があった。
【0021】
このような問題を解決する方法として、主増幅器のルートにRF−PD型リニアライザを挿入し、AM/PM変換及びAM/AM変換の補正を行うことで主増幅器で発生する歪を相殺する方法が従来用いられている。
しかし主増幅器のルートに挿入するPDとして入力に対して出力が損失するPDを用いた場合には、この損失を補償するための補正用の増幅器が必要になり、また利得のあるPDを用いた場合には、利得を補償するための減衰器を設置するか、出力先の方向性結合器の結合量を疎結合に調整する必要がある。方向性結合器の結合量を疎結合に調整すると、歪補償ループの補助増幅器における増幅度をさらに増加しなければならない。
したがってPDを挿入することにより、新たな素子又は調整が必要となるため、歪補償増幅器の開発費用が増加するという新たな問題が発生する。
【0022】
また主増幅器は通常、数段階に渡ってカスケード接続された増幅器の集合体で構成されている。主増幅器のルートにPDを挿入する場合、挿入箇所によっては主増幅器中のある段階の増幅器の出力が歪んで見える現象が発生する。この現象はPDで発生した歪が、増幅器において増幅された結果発生するものであるが、歪を除去するための調整及び確認が困難であるという問題点がある。
【0023】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、2トーンの搬送波や瞬時のピーク電力を含む入力信号を増幅する場合でもキャンセル量を確保できる歪補償増幅器を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、入力信号を2つのルートに分配する分配器と、一方のルートに主増幅器を、他方のルートに第1の遅延器及び前記主増幅器と同一のAM−AM変換特性及びAM−PM変換特性を有し、かつ主増幅器より出力電力の小さい歪発生器を設け、主増幅器によって増幅された入力信号と、第1の遅延器及び歪発生器によって遅延かつ増幅された入力信号とを逆位相で合成することで入力信号中の基本波成分信号を相殺し、合成結果である歪成分信号を一方の出力端子から出力し、他方の出力端子から主増幅器によって増幅された入力信号を出力する第1の方向性結合器とを備える歪検出ループと、一方のルートに第2の遅延器を、他方のルートに補助増幅器を設け、第2の遅延器によって遅延された、増幅された入力信号と、補助増幅器によって、増幅された入力信号と同レベルに増幅された歪成分信号とを逆位相で合成し、合成結果である増幅された基本波成分信号を出力する第2の方向性結合器とを備える歪補償ループとを有することを特徴とするフィードフォワード歪補償増幅器であり、2トーンの搬送波や瞬時のピーク電力を含む入力信号を増幅する場合でもキャンセル量を確保することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係る歪補償増幅器は、受信した入力信号から歪成分信号を検出する歪検出ループと、歪成分信号を除去して増幅された基本波を出力する歪補償ループとで構成されるフィードフォワード方式の歪補償増幅器において、歪検出ループに主増幅器と同一の出力特性を有し、かつ出力電力の小さい歪発生器を遅延器側に設けたものであり、これにより2トーンの搬送波や瞬時のピーク電力を含む入力信号に対して、キャンセル量を確保することができる。
【0026】
尚、請求項における第1の遅延器は遅延器19に相当し、第2の遅延器は遅延器19に、第1の方向性結合器は方向性結合器14に、第2の方向性結合器は方向性結合器17に、歪検知手段は図の結合器20及び検波器21に、入力信号検知手段は結合器23及び検波器24に、温度測定手段は温度センサ26に、パラメータ記憶手段はパラメータ蓄積部27及び27´に、入力信号調整手段は調整制御部28及び28´に、入力信号調整回路は高速制御部30にそれぞれ相当する。
【0027】
本発明の実施の形態の歪補償増幅器の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る歪補償増幅器の構成図である。尚、図1と同様の構成をとる部分については同一の符号を付して説明する。
本発明の実施の形態に係る歪補償増幅器は、分配器11と、増幅器12と、主増幅器13と、方向性結合器14と、遅延器15と、補助増幅器16と、方向性結合器17と、歪発生器18と、遅延器19と、結合器20と、検波器21と、A/D変換器22とで構成される。また図1の歪補償増幅器において、分配器11から方向性結合器14で歪検出ループを、方向性結合器14から方向性結合器17で歪補償ループを構成している
【0028】
分配器11は、アンテナ(図示せず)で受信されたアナログ入力信号を分配し、それぞれ増幅器12及び遅延器19に出力する。
増幅器12は、分配器11から出力された入力信号を増幅し、主増幅器13に出力する。増幅器12は図7の歪補償増幅器における増幅器41と同様、プリアンプの役割を果たすものであり、増幅器41と利得が同一であるが、IPが低い点が異なる。
主増幅器13は、増幅器12で増幅された入力信号を更に高い増幅度で増幅し、方向性結合器14に出力する。
方向性結合器14は、主増幅器13で増幅された入力信号をそのまま遅延器15に出力する。また主増幅器13で増幅された入力信号及び歪発生器18から出力された入力信号及び歪成分信号とを逆位相で合成し、合成結果である歪成分信号を補助増幅器16に出力する。
【0029】
遅延器15は、方向性結合器14から出力された入力信号を遅延させ、方向性結合器17に出力する。
補助増幅器16は、方向性結合器14から出力された歪成分信号を増幅し、方向性結合器17に出力する。
方向性結合器17は、遅延器15から出力された入力信号及び補助増幅器16で増幅された歪成分信号とを逆位相で合成し、合成結果である増幅信号を出力する。方向性結合器17において、出力端子の一方は終端抵抗が接続されている。
歪発生器18は、AM−AM変換及びAM−PM変換特性が主増幅器13と同一の増幅器であり、遅延器19から出力された入力信号を増幅して方向性結合器14に出力する。
遅延器19は、分配器11から出力された入力信号及び歪成分信号を遅延し、歪発生器18に出力する。
【0030】
結合器20は、方向性結合器14における合成によって得られた歪成分信号を検出し、検波器21に出力する。
検波器21は、結合器20で検出された歪成分信号を検波し、振幅値をA/D変換器22に出力する。
A/D変換器22は、検波器21で検波された歪成分信号の検波結果をデジタル変換する。
【0031】
次に、本発明の実施の形態の歪補償増幅器の動作について図1及び図2を用いて説明する。
アンテナで受信されたアナログ入力信号は、図1の歪補償増幅器において、まず歪検出ループの分配器11に入力される。分配器11は入力信号をそれぞれ増幅器12及び遅延器19に分配して出力する。
【0032】
主増幅器のルート、すなわち増幅器12に出力された入力信号は、増幅器12においてプリアンプによる増幅が行われた後、主増幅器13によって歪成分と共に高い増幅度で増幅され、方向性結合器14の入力端子に出力される。
また、歪発生器のルート、すなわち遅延器19に出力されて遅延された入力信号は、歪発生器18に出力され、入力信号の増幅が行われる。歪発生器18で増幅された入力信号は、方向性結合器14の他方の入力端子に出力される。遅延器19は、主増幅器13における入力信号の増幅で入力信号が遅延化されるため、これに同調させるため設けられたものである。
【0033】
図2は、主増幅器13及び歪発生器18の出力特性を示した特性図である。各特性図において、実線がAM/PM変換の、破線がAM/AM変換の特性を示している。図2より、主増幅器13と歪発生器18との両特性はまったく同一であることが分かる。一方、増幅器で発生する歪を相殺するために従来用いられてきたPDの特性は図2下段の通りであるが、増幅器の出力を相殺するため、AM/AM変換及びAM/PM変換の特性は増幅器とは相反する特性となる。
また、歪発生器18において増幅される歪成分の量は、主増幅器のそれよりも相対的に低い値でよい。歪検出ループは、基本波のみを除去することによって歪成分信号を抽出することを目的としているためである。
【0034】
主増幅器13から出力された増幅された入力信号と、歪発生器18から出力された入力信号及び歪成分信号は、方向性結合器14において逆位相で合成され、入力信号中の基本波が除去され、歪成分信号が歪補償ループの補助増幅器16に出力される。また方向性結合器14では、主増幅器13で増幅された入力信号がそのまま遅延器15に出力される。
【0035】
歪補償ループにおいて、遅延器15に出力された入力信号は、遅延化された後、方向性結合器17の入力端子に出力される。また方向性結合器14において検出された歪成分信号は、補助増幅器16において遅延器15の入力信号と同レベルに増幅され、方向性結合器17の他方の入力端子に出力される。遅延器15は、補助増幅器16における歪成分信号の増幅で遅延化された歪成分信号と入力信号とを同調させるため設けられたものである。
方向性結合器17では、遅延器15から出力された入力信号と、補助増幅器16から出力された増幅された歪成分信号とを逆位相で合成されることで歪成分が相殺され、入力信号中の基本波のみを増幅した増幅信号が出力される。
【0036】
また方向性結合器14から出力された歪成分信号は、結合器20で検知され、さらに検波器21において振幅値が検出され、A/D変換器22でデジタル変換される。A/D変換器22でデジタル変換された検波結果は、データ表示や制御部(図示せず)による主増幅器13又は歪発生器18に入力される入力信号に対する位相制御又は振幅制御等に用いられる。
【0037】
本発明の実施の形態の歪補償増幅器を用いることにより、2トーンの搬送波や瞬時のピーク電力を含む入力信号に対して、キャンセル量を確保することができる。
従来のフィードフォワード形式の歪補償増幅器では、2トーンの搬送波や瞬時のピーク電力を含む入力信号を増幅する際には、位相及び振幅のエラーが発生し、必ずしも理想値通りのキャンセル量を確保できないことは上述した通りである。本発明の歪補償増幅器では、主増幅器13とAM/AM変換特性が等しい歪発生器18を歪検出ループの遅延器側のルートに設けたことで、振幅の増幅度が同一となるため、振幅のエラーを補正することができる。さらにCCDFを用いて特性を確認し、特性に基づいて振幅を調整することで確実に振幅のエラーを補正することができる。
キャンセル量の算出式(1)より、振幅のエラーがキャンセル量に多大に影響することが明らかであり、振幅のエラーを補正することでキャンセル量の損失を大幅に低減することができる。
また、位相のエラーについては、歪発生器18のバイアス点又は入力信号の入力レベル等を可変させることにより、相互変調成分の位相を回転させることができるため、位相のエラーを補正することができる。
【0038】
図1の歪補償増幅器において、歪発生器18のIPが低いため、歪発生器18の出力は主増幅器と比較して低い値、例えば数十dB以上小さくしてもよい。また、歪発生器18は主増幅器13よりも出力が小さく済むため、例えば主増幅器13を実現する素子として、GaAS(Gallium Arsenido)のFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を用いるものとすると、歪発生器18は同じGaASの小信号用のMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit:マイクロ波モノリシック回路)を用いて実現できる。
本発明の実施の形態の歪補償増幅器では、従来プリアンプとして用いられてきたIPの高い増幅器が不要となり、この増幅器と利得が等しく、IPの低いMMICを、増幅器12及び歪発生器18に用いることにより、歪補償増幅器全体の消費電力及び開発費用を低減することができる。
【0039】
従来の技術で取り上げた従来例の歪補償増幅器も、被補償増幅器とは別個に歪発生回路を設け、これらの素子の出力を逆位相で合成することで歪成分を除去する旨が記載されている。しかし歪発生回路には「被補償増幅器の電力増幅器を構成する電力増幅器ユニットと同じ増幅器」を用いており、被補償増幅器は本発明の歪補償増幅器における主増幅器に該当するため、歪発生回路の出力を小さくできる本発明の歪補償増幅器ほど消費電力及び開発費用を低減できるとはいえない。
【0040】
本発明の歪補償増幅器において、増幅器13の代わりにIPの高い図7の増幅器41を分配器11の前段に挿入してもよい。図1の歪補償増幅器における方向性結合器14の結合度がα(dB)である場合、このような構成にするにあたって方向性結合器の結合度はα−(歪発生器18の利得値)とする必要がある。よって方向性結合器14の結合度を低減することができるため、方向性結合器14の作成が容易となり、開発費用を低減することができる。
【0041】
本発明の実施の形態に係る歪補償増幅器によれば、主増幅器とAM−AM特性及びAM−PM特性が同一である歪発生器を歪検出ループの遅延器ルートに挿入することにより、主増幅器で発生する位相及び振幅のキャンセル量のエラーを補正できるため、2トーンの搬送波や瞬時のピーク電力を含む入力信号の増幅の際に従来よりキャンセル量を確保できる効果がある。また、キャンセル量を確保できることにより、歪補償ループに入力される電力を低減でき、歪補償増幅器の消費電力を低減できる効果がある。
さらに歪発生器にIPの低い増幅器を用いることによって、消費電力及び開発費用を低減できる効果がある。
【0042】
本発明の実施の形態に係る歪補償増幅器は、歪補償増幅器を構成する素子にアナログ回路又はデジタル回路のいずれを用いても同様の効果を奏するものである。
【0043】
上述したように、CDMA等の瞬時のピーク電力を含むような入力信号を増幅するような場合には、ピーク電力の増幅の際に非線型性の歪みが発生し、キャンセル量を確保できなくなる。このため、歪成分信号の振幅値に基づいて、歪発生器及び主増幅器に入力される入力信号に対して、位相及び振幅の制御を行うことによって、ピーク電力による歪みの発生を抑えることができる。
また、一般に増幅器では、周囲の温度変化によって増幅時の位相又は振幅に変化が現れ、発生する歪みが均等でなくなる現象が起きる。これに伴い、歪補償増幅器における歪成分の相殺が十分に行われなくなる。正しく歪補償を行うには、温度変化に対応して増幅器への入力信号の位相又は振幅制御を行う必要がある。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施例の歪補償増幅器の構成図である。以下、本発明の第1の実施例の動作について、図3を用いて説明する。尚、図1の歪補償増幅器と同一の構成をとる部分についての構成及び動作については、説明は省略する。
【0045】
図3の歪補償増幅器では、分配器11の前段に結合器23が設けられており、さらに検波器24を介して制御回路29に接続されている。アンテナ(図示せず)で受信された入力信号は結合器23で検知されると、検波器24において振幅値が検出され、検出結果は制御回路29に出力される。制御回路29に入力された検波器24の検出結果は、A/D変換器25でデジタル変換され、パラメータ蓄積部27に出力される。また、歪補償増幅器の近傍の温度を計測する温度センサ26は、温度を計測し、デジタル値の計測結果を制御回路29のパラメータ蓄積部27に出力する。
【0046】
パラメータ蓄積部27は、サンプリングされた入力信号の振幅値及び温度計測結果に対してそれぞれの平均値を求め、順次記憶する。パラメータ蓄積部27にはメモリテーブルが設けられており、入力信号の振幅値の平均値、温度計測結果の平均値及びこれらの値に対応し歪検出ループにおいてキャンセル量が最大になるような入力信号の制御値のデータが組となって記憶されている。パラメータ蓄積部27は入力信号の振幅値及び温度計測結果の平均値の算出の際に、メモリテーブルを参照して出力する入力信号の制御値のデータを特定する。
【0047】
方向性結合器14から出力された歪成分信号は、結合器20で検知され、さらに検波器21において振幅値が検出されると、検出結果は制御回路29に出力される。制御回路29に入力された検波器21の検出結果は、まずA/D変換器22においてデジタル変換され、さらに調整制御部28に出力される。
【0048】
調整制御部28にもRAMのメモリテーブルが設けられており、サンプリングされた歪成分信号の振幅値を順次メモリテーブルに書き込んでいく。同時に調整制御部28では、入力された歪成分信号の振幅値に基づいて、前サンプルとの振幅差と数サンプル前の振幅値の平均値とを算出し、メモリテーブルに書き込んでいく。
調整制御部28はパラメータ蓄積部27から入力信号の振幅値及び温度計測結果の平均値に対応する入力信号の制御値のデータを読み出し、算出された歪成分信号の振幅値の平均値とに基づいて、主増幅器13及び歪発生器18に入力される入力信号の位相及び振幅の調整制御を行う。
【0049】
調整制御部28における歪成分信号の振幅の平均値算出において、入力された歪成分信号と前サンプルとの振幅差が一定の値、すなわち閾値を超えた場合、調整制御部28は入力信号に瞬時のピーク電力が含まれているものとみなして、このとき入力された歪成分信号の振幅値については演算処理の対象から外す。具体的には振幅差の算出にはこの振幅値を用いずにその前の振幅値によって、平均値の算出にはこの振幅値を除いた前後の振幅値から行うようにする。
前サンプルとの振幅差が閾値を超えない場合、調整制御部28はこのとき入力された歪成分信号の振幅値を演算対象として、新たに振幅差及び平均値を算出する。
【0050】
上述したように、本発明の実施例1の歪補償増幅器では、制御回路29において瞬時のピーク電力に対する振幅値を除いて主増幅器13及び歪発生器18への入力信号の制御を行うようにしているため、瞬時のピーク電力による過大な歪信号成分によらず安定して入力信号の制御を行うことができ、結果として安定した歪補償増幅を行うことができる。歪発生回路18を挿入したことで歪成分信号のキャンセル量を確保できるため、図1の歪補償増幅器と比較して一層歪成分信号を除去できる効果がある。また受信直後の入力信号の振幅値及び温度測定結果の平均値を入力信号の制御のための入力パラメータとしているため、環境に応じて安定した歪補償増幅を行える効果がある。
【0051】
上述したように、CDMA等の瞬時のピーク電力を有する信号では、入力レベルのピーク時と平均値との差が10dB以上に及ぶ。このような入力信号に対しては、歪補償増幅器において入力信号又は平均値のダイナミックレンジを広範囲に設定し、最適な動作点で主増幅器及び歪発生器を動作させることで高精度の歪補償を行うことができる。このため歪補償増幅器では、歪成分信号だけでなく、入力信号及び温度測定結果を常に監視し、監視結果に基づいて入力信号の調整制御を行うことが好適である。
【0052】
図4は本発明の第2の実施例の歪補償増幅器の構成図である。以下、本発明の第2の実施例の構成及び動作について、図3の歪補償増幅器との相違点を中心に図4を用いて説明する。尚、図3の歪補償増幅器と同一の構成をとる部分についての構成及び動作については、説明は省略する。
制御回路29において、検波器24で検出された受信直後の入力信号の振幅値はデジタル変換後に調整制御部28´に出力される点、検波器21で検出された歪成分信号の振幅値はデジタル変換後にパラメータ蓄積部27´に出力される点が図3の歪補償増幅器と相違する。
【0053】
パラメータ蓄積部27´には受信直後の入力信号の振幅値と、温度計測結果の他に、A/D変換器22から歪成分信号の振幅値が入力される。パラメータ蓄積部27´はこれら3種のパラメータ値をサンプリングし、順次記憶する。パラメータ蓄積部27´にはメモリテーブルが設けられており、入力信号の振幅値、温度計測結果及びこれらの値に対応し歪検出ループにおいてキャンセル量が最大になるような入力信号の制御値のデータが組となって記憶されている。パラメータ蓄積部27´は、記憶されたパラメータ及びメモリテーブルを参照して出力する入力信号の制御値のデータを特定する。
【0054】
調整制御部28´では、入力された受信直後の入力信号及び歪成分信号の振幅値を用いて、主増幅器13及び歪発生器18への入力信号の調整制御を行っている。調整制御部28´は受信直後の入力信号及び歪成分信号の振幅値を時系列でサンプリングし、内部のメモリテーブルに書き込む。また調整制御部28´は、図3の歪補償増幅回路の調整制御部28と同様の方法で、歪成分信号の振幅値の平均値を算出し、メモリテーブルに書き込む。
調整制御部28´はパラメータ蓄積部27´から入力信号の振幅値及び温度計測結果に対応する入力信号の制御値のデータを読み出し、記憶されている入力信号の振幅値及び歪成分信号の振幅値の平均値とに基づいて、主増幅器13及び歪発生器18に入力される入力信号の位相及び振幅の調整制御を行う。
【0055】
図4の歪補償増幅器によれば、受信直後の入力信号の振幅値を調整制御部28に入力することによって、常に受信直後の入力信号のレベルを監視しながら主増幅器13及び歪発生器18への入力信号の制御を行うことができるため、さらに高精度に歪補償増幅を行える効果がある。例えば増幅器の経年劣化により出力特性が変化するような現象についても、入力信号を監視することによって現状に則した制御を行うことができるため、さらに安定した入力信号の制御を行うことができる。
【0056】
また、本発明の実施例1及び2の歪補償増幅器において、制御回路29はアナログ回路又はデジタル回路のいずれを用いても上述した効果を奏するものである。
【0057】
入力信号又は平均値のダイナミックレンジを広範囲に確保する制御方法では、温度計測結果、入力信号及び歪成分信号の振幅値のパラメータを高速でサンプリングするための演算処理媒体と、サンプリングに伴う参照パラメータの数が膨大になるため、パラメータを記憶するための大容量の記憶媒体を歪補償増幅器に用いることが高精度の歪補償を行う上で好ましい。
【0058】
図5は、本発明の第3の実施例の歪補償増幅器の構成図である。図5の歪補償増幅器では、第2の実施例における制御回路29の代わりに高速DSP(Digital Signal Processor)を用いた高速制御部30を設けており、高速サンプリングによる入力パラメータの記憶及び演算処理を行っている。
【0059】
図6は、高速制御部30の構成ブロック図である。高速制御部30では、温度センサ26の温度測定結果、検波器24からの受信直後の入力信号の振幅値及び検波器21からの歪成分信号の振幅値がDSP31に入力される。このうち受信直後の入力信号の振幅値、歪成分信号の振幅値はそれぞれ、A/D変換器25、22でデジタル変換された後DSP31に入力される。
DSP31は、第2の実施例におけるパラメータ蓄積部27´及び調整制御部28´に相当し、高速でサンプリングされた入力パラメータを記憶し、これらに基づいて主増幅器13及び歪発生器18に入力される入力信号の調整制御を行っている。DSP31における入力信号の調整動作は、図4のパラメータ蓄積部27´及び調整制御部28´と同様であるので、説明は省略する。
また高速制御部30では、歪補償ループ中の歪成分信号が電力増幅器(図ではPA)32に入力され、増幅された後、位相特定器(図ではPD)33に出力される。位相特定器33では、DSP31で出力される制御情報に基づいて歪成分信号の位相を調整し、さらに電力増幅器34において増幅し、振幅の調整を行った後、主増幅器13及び歪発生器18に出力することで入力信号の制御を行っている。
【0060】
図5の歪補償増幅器によれば、高速演算を行うDSPを制御回路として用いたことによって、入力パラメータの高速サンプリングに対応して主増幅器13及び歪発生器18への入力信号の調整制御を行うことができるため、さらに高精度に歪補償増幅を行うことができる。すなわち多数の演算処理を高速に行い、かつ大量の入力パラメータを記憶できるため、瞬時の入力信号のレベルの変動にも対応でき一層高精度の歪補償増幅を行うことができる効果がある。
またDSPで制御回路を構成したことによって、回路規模を縮小化できるため、歪補償増幅器全体の回路規模を縮小できる効果がある。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、歪検出ループにおいて歪成分を検出し、歪補償ループにおいて増幅した入力信号と歪成分信号とを逆位相で合成し、基本波成分信号を増幅するフィードフォワード歪補償増幅器において、主増幅器と同じAM−AM変換特性及びAM−PM変換特性を有し、かつ主増幅器より出力電力の小さい歪発生器を歪検出ループの主増幅器とは別のルートに設けたことにより、主増幅器で発生する位相及び振幅のキャンセル量のエラーを補正でき、2トーンの搬送波や瞬時のピーク電力を含む入力信号の増幅の際に歪検出ループでの基本波成分信号のキャンセル量を確保できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る歪補償増幅器の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る歪補償増幅器における主増幅器及び歪発生器の出力特性を示した特性図である。
【図3】本発明の第1の実施例の歪補償増幅器の構成図である。
【図4】本発明の第2の実施例の歪補償増幅器の構成図である。
【図5】本発明の第3の実施例の歪補償増幅器の構成図である。
【図6】本発明の第3の実施例の歪補償増幅器における、高速制御部の構成ブロック図である。
【図7】従来のフィードフォワード方式の歪補償増幅器の構成ブロック図である。
【図8】振幅偏差及び位相偏差とキャンセル量の関係を示したグラフ図である。
【図9】ネットワークアナライザでの測定方法及びキャンセル量の測定結果を示した図である。
【図10】歪検出ループ及び歪補償ループで得られる2トーンの搬送波の入力信号のスペクトラム分布を示した図である。
【図11】増幅器におけるAM−AM変換とAM−PM変換のベクトル図及び増幅器の出力特性を示した図である。
【図12】従来のフィードフォワード歪補償増幅器で増幅した場合のスペクトラム分布の解析図である。
【図13】従来の歪補償増幅器における、歪検出ループの遅延器のルートでの入力信号のCCDF特性を示した図である。
【符号の説明】
11、42…分配器、 12、41…増幅器、 13、43…主増幅器、 14、17、44、46…方向性結合器、 15、19、45、47…遅延器、 16、48…補助増幅器、 18…歪発生器、 20、23…結合器、 21、24…検波器、 22、25…A/D変換器、 26…温度センサ、 27、27´…パラメータ蓄積部、 28、28´…調整制御部、 29…制御回路、 30…高速制御部、 31…DSP、 32、34…電力増幅器、 33…位相特定器

Claims (4)

  1. 入力信号を2つのルートに分配する分配器と、
    一方のルートに主増幅器を、他方のルートに第1の遅延器及び前記主増幅器と同一のAM−AM変換特性及びAM−PM変換特性を有し、かつ前記主増幅器より出力電力の小さい歪発生器を設け、
    前記主増幅器によって増幅された入力信号と、前記第1の遅延器及び前記歪発生器によって遅延かつ増幅された入力信号とを逆位相で合成して前記入力信号中の基本波成分信号を相殺し、合成結果である歪成分信号を一方の出力端子から出力し、他方の出力端子から前記主増幅器によって増幅された入力信号を出力する第1の方向性結合器とを備える歪検出ループと、
    一方のルートに第2の遅延器を、他方のルートに補助増幅器を設け、前記第2の遅延器によって遅延された前記増幅された入力信号と、前記補助増幅器によって前記増幅された入力信号と同レベルに増幅された前記歪成分信号とを逆位相で合成し、合成結果である増幅された基本波成分信号を出力する第2の方向性結合器とを備える歪補償ループとを有することを特徴とするフィードフォワード歪補償増幅器。
  2. 請求項1記載のフィードフォワード歪補償増幅器において、
    歪検出ループで検出された歪成分信号を検知し、前記歪成分信号の振幅値を検出する歪成分検知手段と、
    入力信号を検知し、前記入力信号の振幅値を検出する入力信号検知手段と、
    フィードフォワード歪補償増幅器の近傍の温度を計測し、温度測定結果を出力する温度測定手段と、
    前記入力信号の振幅値及び前記温度測定結果についてそれぞれの平均値及び歪発生器への入力信号の位相及び振幅の調整制御値を記憶するパラメータ記憶手段と、
    歪検出ループで相殺される基本波成分信号のキャンセル量が最大となるように歪発生器への入力信号の位相及び振幅の調整制御を行う入力信号調整手段とを設け、
    前記入力信号調整手段は、前記歪成分信号の振幅値を時系列でサンプリングし、前記歪成分信号の振幅値が規定値以下である場合、当該振幅値を含めた平均値を算出し、規定値より大である場合、前記規定値より小さい代替値を出力することによって振幅値の平均値をサンプル毎に算出し、前記入力信号の振幅値の平均値及び前記温度測定結果の平均値とに基づいて、歪検出ループにおける基本波成分信号のキャンセル量が最大となるような調整制御値を前記パラメータ記憶手段から読み出し、前記調整制御値及び前記歪成分信号の振幅値の平均値とに基づいて入力信号の位相又は振幅の調整制御を行う手段であることを特徴とするフィードフォワード歪補償増幅器。
  3. 請求項1記載のフィードフォワード歪補償増幅器において、
    歪検出ループで検出された歪成分信号を検知し、前記歪成分信号の振幅値を検出する歪成分検知手段と、
    入力信号を検知し、前記入力信号の振幅値を検出する入力信号検知手段と、
    フィードフォワード歪補償増幅器の近傍の温度を計測し、温度測定結果を出力する温度測定手段と、
    前記歪成分信号の振幅値、前記入力信号の振幅値及び前記温度測定結果と、歪発生器への入力信号の位相及び振幅の調整制御値を記憶するパラメータ記憶手段と、
    歪検出ループで相殺される基本波成分信号のキャンセル量が最大となるように歪発生器への入力信号の位相及び振幅の調整制御を行う入力信号調整手段とを設け、
    前記入力信号調整手段は、前記歪成分信号の振幅値及び前記入力信号の振幅値を時系列でサンプリングし、前記歪成分信号の振幅値が規定値以下である場合、当該振幅値を含めた平均値を算出し、規定値より大である場合、前記規定値より小さい代替値を出力することによって振幅値の平均値をサンプル毎に算出し、前記入力信号の振幅値及び前記温度測定結果とに基づいて、歪検出ループにおける基本波成分信号のキャンセル量が最大となるような調整制御値を前記パラメータ記憶手段から読み出し、前記調整制御値、前記入力信号の振幅値及び前記歪成分信号の振幅値の平均値とに基づいて入力信号の位相又は振幅の調整制御を行う手段であることを特徴とするフィードフォワード歪補償増幅器。
  4. 請求項1に記載のフィードフォワード歪補償増幅器において、
    歪検出ループで検出された歪成分信号を検知し、前記歪成分信号の振幅値を検出する歪成分検知手段と、
    入力信号を検知し、前記入力信号の振幅値を検出する入力信号検知手段と、
    フィードフォワード歪補償増幅器の近傍の温度を計測し、温度測定結果を出力する温度測定手段と、
    DSPで構成され、前記歪成分信号の振幅値、前記入力信号の振幅値、前記温度測定結果及び歪発生器への入力信号の位相及び振幅の調整制御値を記憶し、歪検出ループで相殺される基本波成分信号のキャンセル量が最大となるように歪発生器への入力信号の位相及び振幅の調整制御を行う入力信号調整回路とを設け、
    前記入力信号調整回路は、前記歪成分信号の振幅値、前記入力信号の振幅値及び前記温度測定結果とを時系列でサンプリングし、前記歪成分信号の振幅値が規定値以下である場合、当該振幅値を含めた平均値を算出し、規定値より大である場合、前記規定値より小さい代替値を出力することによって振幅値の平均値をサンプル毎に算出し、前記入力信号の振幅値及び前記温度測定結果とに基づいて、歪検出ループにおける基本波成分信号のキャンセル量が最大となるような調整制御値を読み出し、前記調整制御値、前記入力信号の振幅値及び前記歪成分信号の振幅値の平均値とに基づいて入力信号の位相又は振幅の調整制御を行う回路であることを特徴とするフィードフォワード歪補償増幅器。
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