JP4824924B2 - 帯電防止用フィラー、該フィラーを有する反射防止フィルム及び該反射防止フィルムを有するディスプレイ用フィルタ - Google Patents

帯電防止用フィラー、該フィラーを有する反射防止フィルム及び該反射防止フィルムを有するディスプレイ用フィルタ Download PDF

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Description

本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)その他のディスプレイの前面フィルタ等に有用な反射防止フィルム、該反射防止フィルムに有用な帯電防止用フィラー、及び該反射防止フィルムを有するディスプレイ用前面フィルタに関する。
PDP及びLCDには通常必ず前面フィルタが使用される。これらの前面フィルタは、必要に応じて、近赤外線カット、色再現性向上(発光色純度向上)、電磁波シールド、明所コントラスト向上(反射防止)、発光パネルの保護、発光パネルからの熱遮断等の役割を果たしている。
PDPの発光パネルの発する近赤外線は、家庭用テレビやビデオ等に使用されるリモコンに誤作動を与えることを避けるために、これを低減することが必要である。またPDPの発光パネルの発する電磁波は、人体や精密機器への悪影響を避けるためにこれを低減することも必要である。さらにPDPの発光パネルからの発光を、人間の視覚にとって自然な色に感じられるように、フィルタでの補正によって色再現性向上(発光色純度向上)の工夫も求められている。またディスプレイの表示は、明るい室内等の明所においても外部からの光の反射等によって妨げられることなく、十分なコントラストで視認されることが望ましい。さらにはディスプレイ製品に直接に手で触れたような場合でも、使用者がその高温に驚かされるような事態を避けるために、PDPの発光パネルの発する熱が遮断されることが求められている。また製品が容易に破損することを避けるために、発光パネルは保護され、万一破損したような場合であってもその破片が飛散しないことが望ましい。
上記の目的に沿った典型的なPDP用前面フィルタの構造を、図2に例示する。透明基板23に、反射防止層21、電磁波シールド層22、色調補正フィルター層24、近赤外線カット層25が積層されたものであり、これが発光パネル20の前面にフィルターとして設置される。この積層の順序は目的に応じて変更される。
このPDP用前面フィルタでは、反射防止層は一般に、光透過性と反射防止性を両立した反射防止フィルムとして製造されて、フィルタの一層として使用されている。LCD用前面フィルタにおいても同様である。
このような反射防止層は、反射光をできるだけ低減するように設計された屈折率の異なる複数の薄層を含む多層の積層体(反射防止フィルム)として製造される。真空蒸着法やスパッタリング法などのドライ処理によってこの多層積層体を製造することが可能であるが、一般的にこのドライ処理は、真空製造設備が必要であり、量産性を求めた場合には、製造費用が上昇せざるを得ない。このため、溶液塗布等によるウェットコーティング法による反射防止フィルムの多層積層体形成が、広く使用される。
このようなウェットコーティングによる反射防止フィルムの一般的構造を、図3に例示する。この反射防止フィルムは、透明基材33に、ハードコート性を有する高屈折率層32、及びこの高屈折率層32よりも屈折率の低い低屈折率層31が積層されたものであり、低屈折率層31によって反射防止性が付与され、低屈折率層31側から入射する外部の光が反射されて視認性が低下することを防ぐ役割を持つ。
現実の使用の場面では、ディスプレイ用フィルタの前面は帯電のために埃等が付着することが多い。そして付着した埃は、ディスプレイ用フィルタの光学的な性能を大きく損なってしまう。この埃等の付着を低減するために、反射防止フィルムには、通常は更に帯電防止性能を付与して製造されることが多い。例えば、フィルタの表面に設置される反射防止フィルムに帯電防止性を有する層が設けられる。
帯電防止性を有する層とするためには、通常、電気伝導性を層に付与する。このような層として、例えば、酸化スズ等の導電性金属酸化物微粒子を合成樹脂中に微分散させた薄膜層や界面活性剤含有薄膜層が使用される。界面活性剤による帯電防止層は、湿度等の環境条件にその帯電防止性能が影響されやすいため、環境条件の影響を受けにくい導電性金属酸化物微粒子を使用した帯電防止層が一般には好ましい。
このような場合には、導電性金属酸化物微粒子による帯電防止用フィラーとして例えば、ITO(酸化インジウム/酸化スズ)、ATO(酸化アンチモン/酸化スズ)、酸化スズ等の導電性微粒子が使用される。
例えば、特許文献1(特開2002−200690号公報)は、有機フィルム上にハードコート層と高屈折率層と低屈折率層を積層して、高屈折率層にITO、ATO等の導電性金属酸化物微粒子を配合することにより帯電防止機能を付与した反射防止フィルムを開示している。
特開2002−200690号公報
しかし、上記ITO(酸化インジウム/酸化スズ)、ATO(酸化アンチモン/酸化スズ)、酸化スズ等の通常使用されている導電性金属酸化物微粒子を帯電防止用フィラーとして使用して、例えば帯電防止層あるいは特許文献1の高屈折率層を設けた場合には、色の偏りや光透過率の低下がその使用量や設置される帯電防止層の厚みの増加に応じて顕著になってくる不都合があった。また、通常使用されるこれらの導電性金属酸化物微粒子を帯電防止用フィラーとして使用した場合には、層の屈折率が比較的大きなものになりやすく、そのために、光学的な設計に制約が生じるという不都合もあった。
さらに、いわゆるハードコート層は、そのハードコート性として求められる硬度を達成するために、通常1μm〜数μm程度、例えば5μm程度の厚みを必要とする。そして、ITO、ATO等の導電性金属酸化物微粒子のフィラーを導入する場合には、比較的厚みのあるハードコート層に導入することが、製造作業上も好ましい。ところが、ITO、ATO等の導電性金属酸化物微粒子のフィラーを5μm程度の厚みの層として使用した場合には、反射防止フィルムの透過率が低下すると共に、色の偏りが生じて、ディスプレイの色再現性が悪化するという問題が顕著に現れた。
このような色の偏りや光透過率の低下の発生は、ITO、ATO等の導電性金属酸化物微粒子のフィラーが、赤外線領域から可視光領域にかけての光吸収特性を有するためと考えられる。この特性を考慮すると、ITO、ATO等の導電性金属酸化物微粒子のフィラーを使用する限りは、1μm程度よりも小さな厚みの層にフィラーを導入して光吸収特性の顕在化を抑制しなければならない。このために、ハードコート性を有する高屈折率層(ハードコート層)に帯電防止層としての機能を付加することは特に困難であった。
従って、本発明の目的は、プラズマディスプレイパネル(PDP)その他のディスプレイの前面フィルタ等に有用な反射防止フィルムでの使用に適したフィラーであって、光透過性及び色再現性等を悪化させずに帯電防止性を付与することができるフィラー、すなわち帯電防止用フィラーを提供することにある。
また、本発明の目的は、上記のような帯電防止用フィラーであって、さらにハードコート層等の厚みのある層に使用した場合にも光透過性及び色再現性等を悪化させることのない帯電防止用フィラーを提供することにある。
さらにまた、本発明の目的は、上記の帯電防止用フィラーを使用した帯電防止層を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記の帯電防止用フィラーを使用した、帯電防止機能を有するハードコート層を提供することにある。
さらにまた、本発明の目的は、上記の帯電防止用フィラーを使用した反射防止フィルムにある。
さらにまた本発明の目的は、上記の反射防止フィルムを有するディスプレイ用フィルタを提供することにもある。
本発明者等は、上記目的が、プロトン伝導性を有する導電性微粒子からなる帯電防止用フィラーによって達成されること、導電性微粒子がパイロクロア構造を有する酸化アンチモン(Sb25)の微粒子が、上記のプロトン伝導性を有する導電性微粒子からなる帯電防止用フィラーとして特に適していることを見いだした。
すなわち上記帯電防止用フィラーを使用すれば、光透過性に優れ、色の偏りを生じることのない帯電防止層を得ることができる。さらに上記帯電防止用フィラーを層に分散させて使用すれば、ハードコート層として求められる数μm以上の厚みの層を形成した場合にも、帯電防止層は十分な光透過性と、色の偏りを生じることのない優れた性質を示す。このように数μm程度の厚みのハードコート層に帯電防止用フィラーを分散させることが可能になれば、数十nm程度の層に帯電防止用フィラーを均一分散させなければならない場合と比較して、作業性は大きく改善する。
また、上記帯電防止用フィラーを層に使用した場合には、ITO、ATO等の導電性金属酸化物微粒子のフィラーと比較して、層の屈折率を上げすぎない利点がある。すなわち、上記帯電防止用フィラーを使用すればフィラーそのものの使用による屈折率の上昇を低減でき、積層構造の屈折率の配置の設計の自由度を大きなものとできる。
本発明の帯電防止用フィラーが、上記のような優れた特性を発揮する理由の詳細は明らかではないが、プロトン伝導性による光吸収特性が重要であると本発明者等は考えている。このプロトン伝導性とは、プロトン移動により担われる導電性を言う。
従来から帯電防止用として使用されていたITO、ATO等の導電性金属酸化物微粒子のフィラーは、電子移動により導電性が担われている、いわゆる電子伝導性のフィラーにあたるものであった。これは比較的高い伝導性を有するものの、このために赤外線領域から可視光領域にかけての光吸収特性を有するものとなっていたと考えられる。本発明では上記帯電防止用フィラーとしてプロトン伝導性の導電性微粒子を選択することによって可視光領域に光吸収が極めて低減されたものとすることができ、上記のような優れた特性を発揮するフィラーとなっているものと考えられる。
パイロクロア構造とは、パイロクロア(黄緑石)に類似する構造を言う。パイロクロアは、(Na,Ca,U)2(Nb,Ta,Ti)26(OH,F)の化学式を有し、点群は4/m32/m、空間群はFd3mで、立方晶系に属する鉱物である。パイロクロア族(黄緑石族)は、一般化学組成式として、A1~226(O,OH,F)・H2O (但し、A=Ba、Bi,Ca,Ce,Cs,K,Na,Pb,Sb+3、Sn,Sr,Th,U,Y,Zr ; B=Fe,Nb,Sn,Ta,Ti をもつ複合立方晶系酸化物)である。本発明で使用される酸化アンチモン(Sb25)は、A226X’の一般式において、AとしてHが、BとしてSbが、X及びX’としてO及びOHが位置したものとなっており、結晶構造中に含まれる水に由来するプロトンが、プロトン伝導性に寄与するものと考えられる。
従って、上記導電性微粒子を帯電防止用フィラーとして層に含ませて用いることにより、透明性が高く、色の偏りの少ない帯電防止層を得ることができる。すなわち、本発明は、上記帯電防止用フィラーを含む帯電防止層にもある。さらに、上記帯電防止用フィラーを含んでなる帯電防止層は、ハードコート層として求められる比較的厚い層厚に使用した場合にも、十分な光透過性を有しており、色の偏りを生じることもないという利点を保っている。すなわち、本発明は、上記帯電防止用フィラーを含むハードコート層にもある。さらにこのハードコート層を使用すれば、新たに層を付加することなく帯電防止性を付与できるため、新たな層の増加に伴う作業性や生産性の低下や製造コスト上昇等の弊害を排除することができる。
上記導電性微粒子の平均粒径は、一般には5〜300nmの範囲、好ましくは10〜200nmの範囲であり、特に15〜150nmの範囲が好ましい。透明性の観点からは粒径は小さいほど好ましいが、帯電防止効果の点からは粒径は大きいほうが好ましい。
また、上記ハードコート層は、帯電防止用フィラーを、ハードコート層の総質量に対して一般に4〜85質量%の範囲の割合で、好ましくは5〜40質量%の範囲で、特に6〜25質量%の範囲の割合で含むことが好ましい。帯電防止効果の観点からは帯電防止用フィラーの含有割合は大きいほど好ましいが、ハードコート層に求められる可とう性の付与等の観点からは、含有割合は小さいほど好ましい。
また、上記ハードコート層の厚みは、帯電防止用フィラーの特性を生かしつつ形成可能な範囲として一般に1〜10μmであり、好ましくは2〜8μmであり、特に3〜6μmが好ましい。
従って、上記のハードコート層を含む反射防止フィルムでは、ハードコート層に帯電防止層の機能を付加することにより、新たに層を設けることなく帯電防止層の機能を実現できる。すなわち、本発明は上記のハードコート層を含む反射防止フィルムにもある。
そして、透明基材上に、中間層、ハードコート層、ハードコート層よりも屈折率が小さい低屈折率層が順に積層され、ハードコート層が帯電防止層である反射防止フィルムは、ハードコート層に帯電防止層の機能を付与した一層として形成した反射防止フィルムの好ましい実施の一態様である。特に、ハードコート層が上記の帯電防止用フィラーを分散させた樹脂を含む反射防止フィルムであることが好ましい。
上記透明基材としては、種々の材料を使用することができるが、有機樹脂ポリマーが好ましく、このなかにはポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)が含まれ、特にPETが透明性及び可とう性等の観点から好ましい。
上記中間層は、屈折率が一般に1.53〜1.63の範囲にあり、好ましくは1.54〜1.62の範囲、特に1.55〜1.61の範囲が好ましい。中間層は、厚みが一般に60〜115nmの範囲にあり、好ましくは63〜109nmの範囲、特に65〜103nmの範囲とすることが好ましい。これらの範囲の値とすることによって反射防止機能に干渉縞防止機能を実現することが可能となる。特に、透明基材としてPET(屈折率1.65)又はそれに近い屈折率の材料を使用した場合に、優れた干渉縞防止機能を実現できる。
上記低屈折率層は、中空シリカを分散させた樹脂を含むことが好ましい。中空シリカ(ポーラスシリカ)を使用することにより、低屈折率化と表面の硬度とを両立して達成することが可能となる。また上記樹脂としては、硬度の点から紫外線硬化樹脂が好ましい。
上述のように本発明は上記の帯電防止用フィラーを含む帯電防止層にもある。帯電防止層は、帯電防止用フィラーを、帯電防止層の総質量に対して一般に4〜85質量%の範囲の割合で、好ましくは5〜40質量%の範囲で、特に6〜25質量%の範囲の割合で含むことが好ましい。帯電防止効果の観点からは帯電防止用フィラーの含有割合は大きいほど好ましいが、帯電防止層に求められる可とう性の付与等の観点からは、含有割合は小さいほど好ましい。上記帯電防止層の厚みは、帯電防止用フィラーの特性を生かしつつ形成可能な範囲として一般に1〜10μmであり、好ましくは2〜8μmであり、特に3〜6μmが好ましい。さらに、上述のように本発明は上記の帯電防止層を含む反射防止フィルムにもある。
また、上記のようにハードコート層又は帯電防止層を積層した反射防止フィルムを用いれば、反射防止性能、光透過性、及び色の再現性等に優れたディスプレイ用フィルタを得ることができる。すなわち、本発明は、上記反射防止ディスプレイを有するディスプレイ用フィルタにもある。
さらに、上記の反射防止フィルムを最外層として設置することにより、反射防止フィルムの反射防止性能と適切なハードコート性とを発揮したディスプレイ用フィルタを得ることができる。すなわち、本発明は上記反射防止フィルムが、最外層として設けられたディスプレイ用フィルタにもある。
本発明の帯電防止用フィラーを使用すれば、光透過性及び色再現性に優れた帯電防止層を得ることができる。そのため、この帯電防止層を使用した反射防止フィルムは、帯電防止によって埃等の付着を防ぎ、埃等の付着による光学性能の低下を防ぎつつ、優れた光透過性及び色再現性を保ったものである。そして、この反射防止フィルムを、PDPや液晶ディスプレイ等のディスプレイ用前面フィルタとして使用すれば、ディスプレイの外側からの光が反射することによって視認性が低下等することを防ぎつつ、ディスプレイの映像を明瞭かつ良好な色再現で楽しむことができ、さらに帯電によるディスプレイ前面の埃の付着によって画面を遮られたり画像が不鮮明になることを防ぐことができる。
また、本発明の帯電防止用フィラーを使用すれば、その優秀な光透過性及び色再現性を保ちつつ、1μmよりも厚い帯電防止層を得ることができる。そのため、この帯電防止層は、所望の硬度を有するハードコート層と一体のものとして形成することも可能である。そのため、この帯電防止性のハードコート層を使用した反射防止フィルムは、帯電防止によって埃等の付着を防ぎ、埃等の付着による光学性能の低下を防ぎ、優れた光透過性及び色再現性を保ちつつ、生産工程での作業性も改善されているという利点を備えている。そして、この反射防止フィルムを、PDPや液晶ディスプレイ等のディスプレイ用前面フィルタとして使用すれば、上述の優位性に加えて、ディスプレイ前面が傷つきにくいために傷による視認性の低下が少なく、安心して取り扱うことができるディスプレイ用前面フィルタを安価に提供することができる。
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の帯電防止用フィラーを使用した帯電防止層を含む反射防止フィルムの実施の形態の一例を示す断面図である。図1には、透明基材層14の上に、接着性を有する中間層13、一定の硬度とそれに要する厚みとを有しつつ本発明の帯電防止用フィラーが分散された樹脂を含むことによって帯電防止性を付与されたハードコート層12、ハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層11が、順に積層されて形成された反射防止フィルムが示されている。室内照明光等の外光は、低屈折率層11側から入射するように設置される。ディスプレイ用フィルタとして製造する場合には、透明基材層14の裏側にさらに種々の層が積層され、例えば近赤外線カット層、色調補正フィルター層、電磁波シールド層、あるいは自立性の透明基材等が、所望によりさらにそれらの接着層を介して積層される。
図1の構成の反射防止フィルムは、いわゆる高屈折率層の役割をハードコート層が果たしていることにより、反射防止性能を少ない層数で実現し、さらに中間層の存在により一定の干渉縞低減性能を実現できるものである。そして、ハードコート層には、プロトン伝導性を有する導電性微粒子、特にパイロクロア構造を有する酸化アンチモン(Sb25)の微粒子からなる帯電防止用フィラーが分散された樹脂が含まれている。これによって透明性が高く、色の偏りの少ない帯電防止層を、ハードコート層と一体の層として得ている。
この導電性微粒子の平均粒径は、一般には5〜300nmの範囲、好ましくは10〜200nmの範囲であり、特に15〜150nmの範囲が好ましい。透明性の観点からは粒径は小さいほど好ましいが、帯電防止効果の点からは粒径は大きいほうが好ましい。
また、ハードコート層は、帯電防止用フィラーを、ハードコート層の総質量に対して一般に4〜85質量%の範囲の割合で、好ましくは5〜40質量%の範囲で、特に6〜25質量%の範囲の割合で含むことが好ましい。帯電防止効果の観点からは帯電防止用フィラーの含有割合は大きいほど好ましいが、ハードコート層に求められる可とう性の付与等の観点からは、含有割合は小さいほど好ましい。
また、上記ハードコート層の厚みは、帯電防止用フィラーの特性を生かしつつ形成可能な範囲として一般に1〜10μmであり、好ましくは2〜8μmであり、特に3〜6μmが好ましい。
導電性微粒子が分散される樹脂は、ハードコート層に使用可能な種々の透明樹脂を使用可能であるが、好ましくは熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂の硬化被膜からなる層であり、特に紫外線硬化性樹脂を用いることにより極めて容易に、ハードコート層を透明基材層上に設けることができる。
熱硬化性樹脂としては、熱硬化型シリコーン組成物(例えば有機ポリシロキサン形成するメチルトリメトキシシラン)が好ましく、シラノール基の脱水縮合に3次元架橋がなされ、高硬度の被膜が得られる。一般に、80〜220℃にて、10分〜1時間加熱することにより硬化させることができる。
また硬化性樹脂として、エチレン性二重結合(好ましくはアクリロイル基又はメタクリロイル基)を有する樹脂又はオリゴマーを使用することができ、これは一般に光硬化することによりハードコート層とすることができる。
あるいは、ハードコート層は、シリカ微粒子を含有する硬化性樹脂の硬化被膜からなる層であることも好ましい。特に紫外線硬化性樹脂を用いることにより極めて容易にハードコート層を透明基材層上に設けることができる。
上記シリカ微粒子の一次粒径が1〜200nmの範囲にあることが好ましい。
上記紫外線硬化性樹脂は公知の紫外線硬化性樹脂(重合性オリゴマー、多官能性モノマー、単官能性モノマー、光重合開始剤、添加剤等を含む)を使用することができる。
このような紫外線硬化性樹脂は、例えばエチレン性二重結合(好ましくはアクリロイル基器又はメタクリロイル基)を複数有するウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマー又はエポキシオリゴマー等のオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)等の重合性オリゴマー及び/又は多官能性モノマーを主成分として構成され、好ましい。上記の変性シリカ微粒子の製造に用いた官能性重合モノマー等も適宜使用することができる。
紫外線硬化性樹脂は、上記のようにオリゴマー、必要により反応性稀釈剤(多官能性モノマー、単官能性モノマー)、光重合開始剤から一般に構成される。光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン;アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン系化合物、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビスアシルフォスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ミヒラーケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、3−メチルアセトフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)等が挙げることができ、さらにBTTBと色素増感剤、例えばキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン等との組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、特にベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンが好ましい。
これらは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。オリゴマー、反応性稀釈剤及び開始剤は、それぞれ1種用いても良く、2種以上組み合わせて用いてもよい。反応性稀釈剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が一般的であり、0.5〜5質量部が好ましい。光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して5質量部以下が好ましい。
上記紫外線硬化性樹脂は、さらにシリコーン重合体を含むことができる。一般にシリコーンを側鎖にもつグラフト共重合体であり、好ましくはシリコーンを側鎖にもつアクリル系グラフト共重合体である。
本発明では、さらにまた上記に必要に応じて各種添加剤を添加することができるが、これらの添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を挙げることができる。
上記ハードコート層は、上記成分を主成分とするものであるが、上記オリゴマー又はモノマーの変性したもの、あるいは他の機能性樹脂、添加剤をさらに使用すること等により、種々の機能に優れたハードコート層を得ることができる。
反射防止フィルムは、透明基材上への積層により形成されるが、この透明基材の材料としては、種々のものが使用可能であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル樹脂、ポリカーボネート;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂等の各フィルムを挙げることができる。PETフィルム及びTACフィルムが、透明性や可撓性の点から特に好ましい。
透明基材層の厚さは、6〜250μm程度であることが好ましい。
透明基材層の上には、接着性を有する中間層が積層されている。
中間層の材料としては、光透過性が良好であって、所望の屈折率を達成できて、所定の厚さで接着可能なものであれば特に制限無く使用可能である。好適な例として、アクリル系樹脂(特にイオウ変性したアクリル系樹脂を含む)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、ポリビニルアセタール系樹脂(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVB)、塩化ビニル樹脂を挙げることができる。特にアクリル系樹脂(特にイオウ変性したアクリル系樹脂)及びEVAが好ましい。
上記アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステルと、アクリル酸、メタクリル酸等のコモノマーとの共重合体;或いは、これらの共重合体の側鎖にカルボキシル基、水酸基、メチロール基、グリシジル基等の官能基を導入し、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、或いはTDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(ナフタレンジイソシアネート)等の芳香族イソシアネートで架橋して得られるアクリルウレタン樹脂を挙げることができ、特に好適な例としては、アクリル系樹脂モノマーとしてイオウ原子を有する官能基を有するモノマーを使用して重合反応させ、あるいはアクリル系樹脂ポリマーの官能基にイオウ原子を有する化合物を反応させることにより得られる、イオウ変性したアクリル系樹脂を挙げることができる。
また、接着力向上の目的で、EVA樹脂にシランカップリング剤を添加することができる。この目的に供されるシランカップリング剤としては公知のもの、例えばγ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロロシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤の配合量は、一般にEVA樹脂100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜2質量部である。
更に、EVA樹脂のゲル分率を向上させ、耐久性を向上するためにEVA樹脂に架橋助剤を添加することができる。この目的に供される架橋助剤としては、公知のものとしてトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、NKエステル(商品名)等の単官能の架橋助剤等も挙げることができる。これらの架橋助剤の配合量は、一般にEVA樹脂100質量部に対して10質量部以下、好ましくは1〜5質量部である。
更に、EVA樹脂の安定性を向上する目的でハイドロキノン;ハイドロキノンモノメチルエーテル;p−ベンゾキノン;メチルハイドロキノンなどを添加することができ、これらの配合量は、一般にEVA樹脂100質量部に対して5質量部以下である。
更に、必要に応じ、上記以外に着色剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、変色防止剤等を添加することができる。着色剤の例としては、金属酸化物、金属粉等の無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系、アヂ系、酸性又は塩基染料系レーキ等の有機顔料がある。紫外線吸収剤には、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルフォベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;フェニルサルシレート;p−t−ブチルフェニルサルシレート等のヒンダートアミン系がある。老化防止剤としては、アミン系;フェノール系;ビスフェニル系;ヒンダートアミン系があり、例えばジ−t−ブチル−p−クレゾール;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペラジル)セバケート等がある。
中間層の屈折率は、透明基材及びハードコート層の屈折率との関係によって各種の屈折率とすることができるが、透明基材とハードコート層の屈折率の中間程度に設定することが優れており、一般に1.53〜1.63の範囲にあり、好ましくは1.54〜1.62の範囲、特に1.55〜1.61の範囲が好ましい。中間層の厚みは、屈折率の設定によって各種の厚みとすることができるが、一般に60〜115nmの範囲にあり、好ましくは63〜109nmの範囲、特に65〜103nmの範囲とすることが好ましい。これらの範囲の値とすることによって反射防止機能に加えて干渉縞防止機能を実現することが可能となる。特に、透明基材としてPET(屈折率1.65)又はそれに近い屈折率の材料を使用した場合に、上記の範囲とすることにより優れた干渉縞防止機能を実現できる。
ハードコート層の上には、低屈折率層が積層されている。
低屈折率層は、例えばフッ素系或いは非フッ素系等の低屈折率有機薄膜によって形成することができる。
非フッ素系有機薄膜としては、ハードコートに用いられるようなアクリル系樹脂、シリコン樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ウレタン樹脂等が挙げることができる。
フッ素系有機薄膜としては、FET(フルオロエチレン/プロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン/テトラフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVD(ポリフッ化ビニリデン)等を挙げることができる。
また、防汚性、易滑性等を付与するために、フッ素系、シリコン系の添加物を加えることもある。中でも、シリコン樹脂又はアクリル樹脂が、安価であることもあり、好適である。
上記低屈折率層は、ハードコート層に用いられるような熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂の硬化被膜からなる層とすることもでき、特に紫外線硬化性樹脂は硬度及び取り扱いの点で好適である。
このような有機薄膜は、一般に低屈折率薄膜であるため、本発明において好適なものである。
また、本発明のパイロクロア構造を有する酸化アンチモン(Sb25)の微粒子による帯電防止用フィラーは、通常使用されるITO(酸化インジウム/酸化スズ)、ATO(酸化アンチモン/酸化スズ)、酸化スズ等の導電性金属酸化物微粒子による帯電防止用フィラーと比較して、屈折率が低いものである。そのため、この帯電防止用フィラーを含むハードコート層の屈折率は比較的に低いものとすることができるが、これを生かしてハードコート層の屈折率を低いものとする場合には、反射防止フィルムにおける反射防止効果を十分に発揮するために、低屈折率層の屈折率は一層低くする必要があり、例えば1.48以下の屈折率とすることが好ましい。
このように反射防止性能を向上させるために、低い屈折率の低屈折率層を得る方法としては、中空シリカ(ポーラスシリカ)等のフィラーを充填することにより、屈折率を低下させる方法がある。特に、中空シリカは無機化合物フィラーであるために、これによる屈折率低下は有機添加物による屈折率低下と比較して、より硬い低屈折率薄膜を作成できる点で好ましく、低屈折率層が外側に配置される場合には特に好ましい。
上記中空シリカは、中空であって内部に空気を含有しているために、通常のシリカ(屈折率:約1.46)と比べて非常に低い屈折率(約1.34〜1.44)となっており、これは多孔性シリカ微粒子を有機ケイ素化合物等で表面被覆してその細孔入り口を塞いで作成できる。中空シリカの平均粒径は一般に1nm〜1μmの範囲を使用可能であるが、好ましくは5〜200nmであり、特に10〜100nmが好ましい。低屈折率化への寄与の大きさの観点からは粒径が大きいほど好ましいが、約1μmを超えると極端に透明性が低下して拡散反射の寄与が大きくなり、白っぽく見えるようになってしまう。透明性の観点からは粒径は小さいほど好ましいが、上記低屈折率化への寄与の観点の他に、特に粒径が約0.5nmより小さくなると中空シリカの微粒子が凝集しやすくなってしまい均一な分散が容易でなくなる。
上記低屈折率層の厚みは、反射防止機能と防汚機能を両立させるためには、防汚機能を得ることができる範囲で光学的な膜厚であることが好ましく、50〜500nmの範囲、例えば500nmの波長の光の1/4λ(=125nm)程度とするのが好ましい。
このような有機薄膜を反射防止膜の最表面層の低屈折率層として、ハードコート層上に形成することにより、反射防止機能を得ることができ、さらに優れた防汚性及び耐擦傷性をも得ることができる。
図1を用いて、さらに好適な本発明の実施の態様を説明する。
上述しているように、図1には、透明基材層14の上に、接着性を有する中間層13、一定の硬度とそれに要する厚みとを有しつつ本発明の帯電防止用フィラーが分散された樹脂を含むことによって帯電防止性を付与されたハードコート層12、ハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層11が、順に積層されて形成された反射防止フィルムが示されている。このような構成において、さらに各屈折率等について以下のようにすることにより、特に干渉縞性能の点で更に優れた反射防止フィルムを得ることができる。
すなわち、図1の構成においてさらに、次式(1)〜(4):
1>n2>n3 (1)
| n2−(n1+n3)/2 | ≦ 0.07 (2)
1.56≦n1≦1.71 (3)
1.50≦n2≦1.70 (4)
(但し、n1は透明基材の屈折率、n2は中間層の屈折率、n3はハードコート層の屈折率である)
を満たし、且つ、中間層の厚みd(nm)が、65〜103nmの範囲にある反射防止フィルムとする。
中間層の厚みd(nm)の範囲である65〜103nmの範囲としては、さらに65〜77nmの範囲、78〜93nmの範囲、または88〜103nmの範囲のいずれかをとることが好ましい。この3つの範囲は、本発明で考慮している3波長型の蛍光灯の備えるRGBの各領域に相当する3つの光のピーク波長領域(例えば、450nm付近、545nm付近、610nm付近の3つの波長領域)に対応したものであり、このような厚みd(nm)とすることによって、各特定ピーク波長において反射する光が打ち消しあうことが可能となる。そのために、反射フィルム及びディスプレイ用前面フィルタの全体の設計において、特に障害となる各特定のピーク波長に対応した干渉縞を、劇的に低減することが可能となる。
この中間層の厚みd(nm)は、次式(5):
d=λ/(4×n2) (5)
(但し、λは干渉縞低減の標的とする光の波長(nm)である)
によって求められた値と対応する範囲となっている。すなわち、本発明の上記中間層の厚みd(nm)の範囲をなす3つの範囲は、上記の式(5)の光の波長λ(nm)として、本発明で考慮している3波長型の蛍光灯の備えるRGBの各領域に相当する3つの光のピーク波長領域、すなわち450nm付近、545nm付近、610nm付近の3つの波長領域に対応した値を選択して適用することにより、求めることができる範囲である。この3波長型の蛍光灯の備えるRGBの各領域に相当する3つの光のピーク波長の値は、それぞれの蛍光灯の設計によって若干異なってくるが、それに対応させた値を上記の式(5)に適用することも当然に可能である。ピーク波長の真の中心の値から意図的にずらした値を上記の式(5)に適用することも当然に可能である。
上記中間層の厚みd(nm)は65〜103nmの範囲の範囲にある値とすることができるが、その内実である65〜77nmの範囲、78〜93nmの範囲、及び88〜103nmの範囲から、さらに以下のように選択した範囲にある値とすることが可能である。
上記中間層の厚みd(nm)の65〜77nmの範囲は、好ましくは68〜75nmの範囲、特に好ましくは70〜73nmの範囲とすることにより、450nmを中心とした特定ピーク波長に対して、干渉縞の発生を効果的に抑制することが可能である。
上記中間層の厚みd(nm)の78〜93nmの範囲は、好ましくは83〜91nmの範囲、特に好ましくは85〜89nmの範囲とすることにより、545nmを中心とした特定ピーク波長に対して、干渉縞の発生を効果的に抑制することが可能である。
上記中間層の厚みd(nm)の88〜103nmの範囲は、好ましくは92〜101nmの範囲、特に好ましくは94〜99nmの範囲とすることにより、610nmを中心とした特定ピーク波長に対して、干渉縞の発生を効果的に抑制することが可能である。
上記中間層の屈折率n2は、一般に1.50〜1.70の範囲、好ましくは1.54〜1.65の範囲、特に1.55〜1.62の範囲が好ましい。このような範囲を選択して、中間層の厚みと組み合わせることにより本発明の干渉縞低減効果を発揮することができる。
また上記中間層の屈折率n2の値は、上記式(2)において、次式:
| n2−(n1+n3)/2 |
で求められる値が一般に0.07以下、好ましくは0.05以下、特に0.03以下となる値であることが好ましい。この基準に従って中間層の屈折率n2の値を設定して各層の屈折率の差を小さくすることで、干渉縞発生抑止効果と反射防止効果とを特に高めた反射防止フィルムを得ることができる。
以下に実施例を示し、本発明ついてさらに詳述する。本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
[実施例]
本発明の反射防止フィルム及びディスプレイ用フィルタの製造
透明基材としてPETフィルム(屈折率1.65、150μm厚)の製膜直後に、このPETフィルム上にイオウ変性したアクリル樹脂を流延し、これを圧延・接着して、屈折率1.59で厚さ80nmの中間層(中間屈折率層)を形成した。次に、多官能性アクリレートモノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬(株)製、商品名DPHA)75質量部、平均粒径150nmのパイクロア構造のSb25を25質量部、MEK100質量部、トルエン100質量部、重合開始剤として光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名イルガキュア184)4質量部を含むコート液を調製して、上述の中間層のさらに上に塗布した。次いで80℃で約1分間乾燥処理した後に、紫外線照射(光量200mJ/cm2)により硬化させて、ハードコート層(屈折率1.54、厚さ5μm)を形成した。
さらに、DPHAを2質量部、ポーラスシリカ(中空シリカ)(平均粒径100nm)2質量部、重合開始剤として光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名イルガキュア184)1質量部、溶剤としてMEK95質量部を含むコート液を調製して、上述のハードコート層のさらに上に塗布した。次いで80℃で約1分間乾燥処理した後に、紫外線照射(光量200mJ/cm2)により硬化させて、低屈折率層(屈折率1.44、厚さ90nm)を形成した。
さらにこれを厚さ2.5mmのガラス板に貼り合わせて、ディスプレイ用フィルタを作成した。
[比較例]
ATOを使用した反射防止フィルム及びディスプレイ用フィルタの製造
ハードコート層に、パイクロア構造のSb25を使用する代わりに、平均粒径150nmのATO(アンチモンドープスズ)を50質量部使用したことを除いて、実施例と同様に反射防止フィルム及びディスプレイ用フィルタを作製した。
ハードコート層が屈折率1.60で厚さ5μmであったことを除いて、各層の屈折率と厚みは実施例と同じである。
[透過率の測定]
日立製可視紫外光分光測定装置(U−4000)を用いて波長400〜800nm付近の平均透過率を測定した。
[表面抵抗の測定]
表面抵抗値の測定は、JISK6911に基づき、アドバンテスト社製のデジタル超高抵抗計(R8340A)を用いて500V印加にて測定した。
[干渉縞発生の評価]
実施例及び比較例のディスプレイ用フィルタを、3波長形の蛍光灯(東芝製、商品名FHF32EX−N)を天井灯として使用した室内で、平滑な壁面に反射防止フィルム面が室内側になるように設置した。3波長形の蛍光灯の照明により生じた干渉縞(油染み)の程度を目視にて評価した。評価は、○:目立った干渉縞がほとんど見えない △:目立つ干渉縞が若干見える ×:目立つ干渉縞がはっきり見える の三段階で行った。この結果を次の表に示す。
[結果]


Figure 0004824924
ハードコート層 透過率 表面抵抗 干渉縞
フィラー 屈折率 (Ω/□) 評価
Figure 0004824924
実施例 Sb25 1.54 92% 1.0×1010

比較例 ATO 1.60 80% 1.0×1010 ×
Figure 0004824924
同程度の表面抵抗を有するようにした場合に、パイロクロア構造のSb25を分散させた帯電防止性のハードコート層を有する反射防止フィルムによるディスプレイ用フィルタは、ATOを分散させた帯電防止性のハードコート層を有する反射防止フィルムによるディスプレイ用フィルタと比較して、高い光透過率を示す一方で、目立つ干渉縞は視認されなかった。また透過する色に偏りを生じさせずに、色再現性に優れたものであった。
また、パイロクロア構造のSb25を分散させた帯電防止性のハードコート層を有する反射防止フィルムによるディスプレイ用フィルタは、反射防止性にも優れ、埃等が付着しにくく、その前面は傷つきにくいものであった。
すなわち、本発明の帯電防止用フィラーを使用した反射防止フィルムによるディスプレイ用フィルタは、帯電防止性をハードコート層に付与した製造上有利な構造を備えつつ、反射防止性、光透過性、色再現性、干渉縞低減性、埃等付着防止性、傷付き防止性等に優れたものであった。
図1は、本発明の反射防止フィルムの基本構造の一例の断面図である。 図2は、典型的なPDP用前面フィルタの構造を示す断面図である。 図3は、ウェットコーティング法により製造された反射防止フィルムの一般的構造の一例を示す断面図である。
符号の説明
11 低屈折率層
12 ハードコート層
13 中間層
14 透明基材層
20 発光パネル
21 反射防止層
22 電磁波シールド層
23 透明基板
24 色調補正フィルター層
25 近赤外線カット層
31 低屈折率層
32 ハードコート性を有する高屈折率層
33 透明基材

Claims (10)

  1. 透明基材上に、中間層、ハードコート層、及びハードコート層よりも屈折率が小さい低屈折率層が順に積層された反射防止フィルムであって、
    前記ハードコート層が、樹脂と、当該樹脂中に分散されたプロトン伝導性を有する導電性微粒子からなる帯電防止用フィラーと、を含み、
    前記導電性微粒子がパイロクロア構造を有する酸化アンチモンの微粒子であり、かつ
    前記中間層の屈折率が1.54〜1.62の範囲にあることを特徴とする反射防止フィルム。
  2. 前記酸化アンチモンの微粒子の平均粒径が5〜300nmの範囲にある請求項に記載の反射防止フィルム
  3. 前記ハードコート層が、前記帯電防止用フィラーを、前記ハードコート層の総質量に対して4〜85質量%の範囲の割合で含む請求項1又は2に記載の反射防止フィルム
  4. 前記ハードコート層の厚みが1〜10μmの範囲にある請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルム
  5. 前記樹脂が、紫外線硬化性樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム
  6. 前記透明基材がPETフィルムである請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
  7. 前記中間層の厚みが60〜115nmの範囲にある請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
  8. 前記低屈折率層が、中空シリカを分散させた樹脂を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の反射防止フィルムを有するディスプレイ用フィルタ。
  10. 反射防止フィルムが、最外層として設けられた請求項に記載のディスプレイ用フィルタ。
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