JP4824886B2 - フルクトース吸収阻害剤、組成物、および食品 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、フルクトース吸収阻害剤、ユーカリ抽出物を含有する組成物、および食品に関する。
【従来の技術】
【0002】
【従来の技術】
肥満は体内に脂肪が過剰に蓄積した状態であり、脂肪が体内に蓄積する原因の一つに糖質(炭水化物)の過剰摂取が挙げられる。一般に、飲食物中に含まれる糖質は、体内に摂取されると、消化酵素によって消化され、主に単糖となって腸管より体内に吸収される。単糖は脂肪細胞内において脂肪に変換されて脂肪組織が形成される。
【0003】
単糖の一種であるグルコース(ブドウ糖)は、消化吸収後、解糖系と呼ばれる酵素群により代謝される。これらの酵素のうち、ホスホフルクトキナーゼを経る段階で代謝調節を受けるため脂肪への変換が制御される。しかし、同じく単糖のフルクトース(果糖)は、グルコースとは異なった代謝経路を通り代謝調節を受けない系で代謝されるので、肝臓中において容易に脂肪に変換され、肥満が亢進しやすい。
【0004】
肝臓は生成した脂肪を超低密度リポタンパク(VLDL)等に変換して血清中に放出するが、肝臓のリポタンパク産生能が追いつかなくなると脂肪が肝臓中に蓄積され、やがて脂肪肝から肝硬変に進行する。一方、VLDL分泌が増加すると高脂血症や高コレステロール血症を惹起する。また、糖質の過剰摂取はインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)を生じることからも高脂血症を惹起・悪化させる。血中VLDL濃度の増加は動脈硬化の主要原因である。動脈硬化は血栓等を惹起し、脳梗塞や心筋梗塞等様々な循環器系疾患の要因の一つになっている。インスリン抵抗性が亢進するとこれらの疾病の他、糖尿病、高血圧等を引き起こすようになる。さらに、フルクトースの大量摂取は尿酸合成を促進させるため、高尿酸血症(進行すると痛風にかかる)を悪化させる。
【0005】
前記糖質の一種である砂糖(スクロース)は、糖質分解消化酵素により前記グルコースとフルクトースに分解される。砂糖を大量に摂取すると、速やかなグルコースの吸収により血糖値が急上昇し、それに伴ってインスリンも一気に分泌される。インスリンはフルクトースやグルコースから脂質へと変換させる系やグリコーゲン合成、脂肪細胞のグルコース取り込みを促進させる働きがあるため、前記したグルコースまたはフルクトースをそれぞれ単独で摂取する場合と比較して、砂糖を摂取する場合の方がより肥満が亢進しやすい。したがって、砂糖は肥満原因物質としてグルコースやフルクトース、デンプンよりも医学上重要視されている。
【0006】
しかしながら、砂糖は甘味料として風味上最も優れているので、天然抽出物(グリチルリチン酸を甘味成分とするカンゾウ抽出物、ステビオール配糖体を甘味成分とするステビア抽出物、モグロシド類を甘味成分とするラカンカ抽出物等)、糖アルコール(キシリトール、エリスリトール、ソルビトール等)、非糖質系合成甘味料(アスパルテーム、スクラロース等)等様々な代替甘味料が開発されているにも拘わらず甘味料における重要性は全く変わっておらず、ジュース、菓子類、料理等に大量に消費されている。
【0007】
このため、砂糖を含む飲食物の摂取を避けることは至難であり、砂糖を大量に摂取しても肥満になりにくい方法を講ずる必要があると考えられる。そこで、次の2方法について精力的に検討が行われてきた。
(1)糖質分解消化酵素を阻害することで糖類の体内吸収を遅延させる方法。
(2)腸管における単糖類の体内吸収を阻害させる方法。
【0008】
このうち、(1)については、これまでにα−アミラーゼ阻害剤やβ−グルコシダーゼ阻害剤の使用等数多く報告されている。例えばアカルボース(特公昭54−39474)、茶カテキン(特開平3−133928号公報)、グァバ(特開平7−59539号公報)等がその一例である。しかしながら、糖質分解消化酵素の阻害は糖質の体内吸収を阻害するわけではなく、単に消化を遅らせる効果しかない。したがって、上記(1)の方法は、急激な食後血糖値の上昇を抑制することでインスリン分泌を安定させる効果はあるが、摂取総カロリー量が変わらないため抗肥満効果は不十分といわざるを得ない。また、加工食品等は単糖が原材料として添加される場合があるが、単糖の状態で経口摂取された場合、糖質分解消化酵素阻害活性の効果は全く期待できない。
【0009】
一方、(2)の場合、砂糖の消化により生成するグルコースとフルクトースの体内吸収を阻害することができれば、摂取総カロリー量を減らす効果が期待できる。
【0010】
グルコースについては、腸管における吸収を阻害する物質が盛んに研究されてきた。このような吸収阻害物質としては、フロリジン(D.F.Diedrich,Biochem.Biophys.Acta,71,688(1963))やフロレチン(D.F.Diedrich,Biochem.Biophys.,117,248(1966))が古くから知られ、最近はギムネマ(吉岡,米子医誌,37,142,(1986)、日地ら,Food Style 21,3,58(1999))、黒糖(松浦ら,和漢医薬学雑誌,7,446(1990))等が知られている。しかしながら、グルコースは哺乳動物の生化学上最も重要な単糖であり、様々な組織の主エネルギー源である。特に脳は通常グルコースを唯一のエネルギー源とする。それゆえ、グルコースの吸収を強力に阻害することは安全上問題がある。
【0011】
一方、フルクトースは、前記したように、その大量摂取によって肥満を始め様々な疾病を惹起するが、カロリー源としての役割以外はほとんど確認されていないため、栄養学的にグルコースほど重要視されていない。したがって、糖質を過剰に摂取した場合の肥満予防方法としては、腸管におけるフルクトースの体内吸収を特異的に阻害させることが最善の策であるといえる。
【0012】
しかしながら、グルコースの体内吸収阻害については、前記したようにギムネマ等の天然物由来の物質が多数報告されているものの、フルクトースの体内吸収を特異的に阻害させる天然物由来の物質については殆ど知られていないのが実情である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主たる目的は、天然物由来でフルクトースの体内吸収を特異的に阻害させることができる安全なフルクトース吸収阻害剤を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、フルクトースの体内吸収を特異的に阻害させることができる組成物および食品を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、安全性の高い天然物由来のフルクトース吸収阻害剤を提供すべく、各種植物の抽出物を対象に鋭意研究を進めた結果、ユーカリは糖質分解消化酵素の一種であるスクラーゼに対する阻害活性(IC50=2.66mg/ml)を有することを見出したが、その阻害活性の強さは例えばカテキン(IC50=1.61mg/ml)と比較してもそれほど強くなく、体重増加を抑制するほどではないと考えられた。しかしながら、腸管におけるグルコースならびにフルクトースの吸収確認試験を行ったところ、ユーカリ抽出物は、腸管からのグルコースの体内吸収は全く阻害しないが、フルクトースの吸収を強力に阻害する驚くべき事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明のフルクトース吸収阻害剤は、ユーカリ属の植物から抽出した抽出物を有効成分として含有する。これにより、生化学上最も重要な単糖類であるグルコースの吸収は阻害せず、栄養学的にグルコースほど重要ではないフルクトースの吸収のみを特異的に阻害することができる。しかも本発明のフルクトース吸収阻害剤は、天然物由来であるので、高い安全性を有する。
【0019】
なお、ユーカリ抽出物が腸管においてフルクトースの吸収を阻害する作用機序については必らずしも明らかではないが、以下のように推察される。すなわち、単糖の吸収は小腸上皮細胞に存在するトランスポーターが行う。管腔側にはグルコースのみを能動輸送するSGLT1とフルクトースのみを受動輸送するGLUT5が存在する。ユーカリ抽出物はフルクトースの吸収を特異的に阻害しグルコースの吸収をまったく阻害しないことから、SGLT1は阻害せずGLUT5を阻害すると推察される。
【0020】
本発明の組成物は、前記フルクトースの吸収阻害剤と、フルクトースとを含有する。本発明の組成物の具体例としては、例えば食品、医薬品、動物飼料、動物飼料用添加剤等の形態が挙げられる。これらの組成物はフルクトースを含有しているので風味が損なわれずに摂取でき、しかもフルクトースの吸収を阻害することができる。
【0021】
本発明の組成物は、特に食品に適用するのが好ましい。すなわち、本発明の食品は、前記フルクトースの吸収阻害剤と、フルクトースとを含有する。ここで、食品とは、固形食品、クリーム状ないしジャム状の半流動食品、ゲル状食品、飲料等の他、これらに添加する食品添加物も含むものである。
【0023】
本発明のフルクトース吸収阻害剤、組成物、および食品は、例えば高脂血症、脂肪肝、肝硬変、糖尿病、高血圧、血栓、脳梗塞や心筋梗塞等の循環器系疾患、高尿酸血症、肥満、脂肪蓄積症、動脈硬化症等の抑制、改善、予防および治療、あるいはトリグリセリド量、血中コレステロール量の抑制または低減等に有効である。
【0024】
特に、本発明における前記抽出物は、高脂血症および脂肪肝の抑制、改善、予防および治療に有用である。すなわち、本発明の高脂血症および脂肪肝の予防または治療剤は、ユーカリ属の植物から抽出したフルクトースの吸収阻害に有効な抽出物を有効成分として含有するものである。
【0025】
本発明における内臓脂肪の蓄積を抑制または改善するための製剤は、ユーカリ属の植物から抽出したフルクトースの吸収阻害に有効な抽出物を有効成分として含有するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0027】
本発明において使用されるユーカリ属の植物としては、例えばEucalyptus globulus, E. robusta, E. grandis, E. macrocarpa, E. amygdalina, E. macarthurii, E. bakeri, E. smithii, E. microcarpa, E. dives, E. ovata, E. cypellocarpa, E. piperita, E. polybractea, E. wandoo, E.citriodora, E. viminalis, E. botryoides, E. calophylla, E. salubris, E. camaldulensis, E. diversicolor, E. rudis, E. saligna, E. coccifera, E. deglupta, E. racemosa, E. oleosa, E. paniculata, E. delegatensis, E. flocktoniae, E. longifolia, E. maculosa, E. goniocalyx, E. gunnii, E. haemastoma, E. leucoxylon, E. perriniana, E. melliodora, E. nitens, E. obliqua, E. parvifolia, E. pauciflora, E. hellandra, E. propinqua, E. consideniana, E. dalrympleana, E. pulverulenta, E. microcorys, E. niphophila, E. punctata, E. radiata, E. cinerea, E. rubida, E. salmonophloia, E. dumosa, E.ficifolia, E. sideroxylon, E. tereticornis, E. regnans, E. rostrata, E. woolsiana, E. blakelyi, E. deglupta等が挙げられ、E. globulus, E. robustaが好ましい。ユーカリ属の植物のうち、抽出に供する部分は、特に制限されないが、葉、実、蕾、幹、根等が挙げられ、特に葉が好ましい。
【0028】
ユーカリ属の植物からの抽出処理は、以下のようにして行う。まず、原料植物、好ましくは葉を粉砕して、水、有機溶媒またはこれらの混合物を使用して有効成分を抽出する。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジアセチン、トリアセチン、ソルビット等の多価アルコール、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、酢酸エチル、植物性油脂等が挙げられる。抽出方法としては、特に制限はなく、常温ホモジナイズ抽出、還流抽出、超臨界流体抽出等が使用可能である。
【0029】
抽出後、必要に応じて、得られたエキスを水飽和n−ブタノール、酢酸エチル等でさらに抽出を行い、さらに得られた抽出エキスを水含有エタノール等で抽出処理を行ってもよい。抽出後、吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等を使用して有効成分を単離し、さらに常法に従って精製を行ってもよい。
【0030】
本発明におけるユーカリ抽出物は、ユーカリ属植物からの抽出処理によって得られるものゆえ、分画および精製が不十分であっても安全性に問題はなく、むしろ未精製であっても未検出成分との相乗作用(crude drug効果) 等が期待できる。
【0031】
また、本発明におけるユーカリ抽出物には、没食子酸、エラグ酸(ellagic acid)、イソクエルシトリン(isoquercitrin) 、テリマグランディン I(tellimagrandin I)、テリマグランディン II (tellimagrandin II) 、ペドゥンクラジン(pedunculagin)、1,2,4-トリ-O- ガロイル- β-D- グルコース、1,2,3,6-テトラ-O- ガロイル- β-D- グルコース、1,2,4,6-テトラ-O- ガロイル- β-D- グルコース、ペンタガロイルグルコース、1,3-ジ-O- ガロイル-4,6- ヘキサヒドロキシジフェノイル- β-D- グルコース、1,3-ジ-O- ガロイル-4,6- ヘキサヒドロキシジフェノイル- α-D- グルコース等のポリフェノール類が含まれている。これらの物質の1 種または2 種以上が本発明におけるユーカリ抽出物の活性に関与していると推測される。
【0032】
本発明のフルクトース吸収阻害剤は、上記抽出処理によって得られたユーカリ抽出物を有効成分として含有するものである。このフルクトース吸収阻害剤の形態としては、特に限定されず、抽出物をそのまま用いてもかまわないが、例えば前記抽出物と必要に応じて加えられる他の成分とからなる組成物が挙げられる。このような組成物としては、例えば前記抽出物と適当な担体(食品または医薬品に使用されている担体等)とからなる組成物や、前記抽出物とフルクトースまたはフルクトースを含む二糖類以上の多糖類とを含有する組成物等が挙げられる。これらの組成物の具体例としては、例えば摂取に適した食品(飲食物、食品添加物)、医薬品、動物飼料、動物飼料用添加剤等の形態が挙げられる。前記多糖類としては、例えばスクロース(砂糖)、ラクトスクロース、ラフィノース、エルロース、1−ケストース、イヌリン等が挙げられる。このような形態でユーカリ抽出物を摂取する際における該抽出物の人または哺乳動物への投与量は、通常、1日当たり0.01〜300mg/kg体重の範囲であるのがよいが、投与量が300mg/kg体重/ 日を超えても、ユーカリ属植物由来の天然物であるゆえ安全性に問題はない。
【0033】
食品形態とするには、ユーカリ抽出物を食品に使用する各種成分と混合し、例えば固形食品、クリーム状ないしジャム状の半流動食品、ゲル状食品、飲料等の形態に調製する。また、ユーカリ抽出物はそのまま食品に配合してもよく、あるいは、必要に応じて適当な担体と組み合わせて製造した粉状、顆粒状、カプセル状、タブレット状、液状等の形態で配合してもよい。このような食品形態で使用する際には、特にフルクトースおよび/またはこれを含む前記多糖類と併用すると、嗜好性に優れ、しかもフルクトースの吸収を阻害することができる食品を製造することができる。
【0034】
ユーカリ抽出物と共に食品に配合されるその他の成分は特に制限はなく、通常使用される各種成分がいずれも使用可能である。このような成分としては、例えばブドウ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB群、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等が挙げられ、これらを食品の種類に応じて適宜配合すればよい。
【0035】
前記食品の具体例としては、清涼飲料、ジュース、コーヒー、紅茶、リキュール、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料、キャンデー、チューインガム、チョコレート、グミ、ヨーグルト、アイスクリーム、プディング等が挙げられる。ユーカリ抽出物の食品への含有量は、0.5〜100mg/gの範囲が適当であるが、この範囲よりも多量に配合しても安全性や効果に問題はない。
【0036】
前記食品添加物として使用する場合、例えばユーカリ抽出物をそのまま食品に添加してもよく、あるいはフルクトースまたはフルクトースを含む二糖類以上の多糖類と混合してあってもよい。食品添加物の形態は、粉末、顆粒、カプセル、シロップ、ゲル状、液状、固形状等に調製されたものであってもよい。この食品添加物を添加する食品には、特に制限はなく種々の調理食品や加工食品が挙げられる。また添加量は前記した食品の配合量と同程度であればよい。食品添加物の添加時期は調理前、調理中、調理後のいずれの段階でもよい。
【0037】
前記医薬品形態で使用するには、ユーカリ抽出物に通常の製薬上許容される担体を加えて、固体、半固体または液体の形態に調製する。具体的な形態としては、例えば錠剤、カプセル、丸剤、顆粒剤、散剤、乳濁液、懸濁剤、シロップ剤、ペレット剤等の経口投与剤、坐薬等の非経口投与剤が挙げられる。
【0038】
製剤化に際しては、剤形に応じて従来より使用されている界面活性剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤等の担体を使用することができる。好ましくは、例えばデンプン、乳糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等の固形担体、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の液体担体、さらに各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ等の油性担体等が挙げられる。
【0039】
前記医薬品の具体例としては、例えば高脂血症および脂肪肝の予防または治療剤の他、抗肥満剤、内臓脂肪や皮下脂肪等の脂肪蓄積抑制剤、抗動脈硬化症剤、血栓防止剤、トリグリセリド低下作用剤、血中コレステロール低下作用剤等が挙げられる。
【0040】
前記動物飼料形態で使用するには、ユーカリ抽出物を動物飼料に使用する各種成分と混合して調製する。動物飼料の具体例としては、家畜用飼料、キャットフード、ドッグフード等のペットフード等が挙げられる。ユーカリ抽出物の動物飼料への配合量は、0.5〜100mg/gの範囲が適当であるが、この範囲よりも多量に配合しても安全性や効果に問題はない。
【0041】
前記動物飼料用添加剤の形態としては、特に制限はなく、ユーカリ抽出物をそのまま動物飼料に添加してもよく、あるいは粉末、顆粒、カプセル、シロップ、ゲル状、液状、固形状等の形態に調製されたものであってもよい。前記動物飼料用添加剤を添加する動物飼料には、前記したような種類の動物飼料が挙げられる。また添加量は前記した動物飼料の配合量と同程度であればよい。動物飼料の添加時期は製造時または製造後のいずれの段階でもよい。
【0042】
【実施例】
以下、参考例および試験例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0043】
参考例
Eucalyptus globulus の乾燥葉500gを33%エタノール4.5kgで2時間還流を行い、室温冷却後、ろ過し、ろ液を一晩冷蔵放置した。ついで、ろ液をさらにろ過し、得られたろ液を減圧濃縮し、さらに凍結乾燥してユーカリ抽出物を得た。
【0044】
試験例1
参考例で得たユーカリ抽出物を用いて以下の試験を行い、ユーカリ抽出物の安全性を確認した。
(1)急性毒性試験
ウィスター系SPFラットを使用して、経口投与による急性毒性試験を行った。
すなわち、上記ラットに対して体重1kg当たり2gのユーカリ抽出物を胃内ゾンデを用いて経口投与し、24時間ラットの行動観察を行った(n=5)。その後、このラットを屠殺解剖し、内臓等の各組織に病変奇形等がないか確認した。その結果、24時間経過しても各ラットの行動には全く異常は認められず、解剖による検査でも各組織には奇形等の異常は見られなかった。
【0045】
(2)亜急性毒性試験
ウィスター系SPFラットを使用して、経口投与による亜急性毒性試験を行った。
すなわち、上記ラットを、通常飼料を摂食させるコントロール群(n=7)と、通常飼料に1体積%のユーカリ抽出物を混ぜた飼料を摂食させるユーカリ群(n=7)とに分け、それぞれ個別飼育した。これらの群のラットに飼料および飲料水を自由摂取させた。前記通常飼料にはフルクトースを含まないものを用いた。これらの群のラットの摂食量、飲水量は毎日測定し、体重変化は週に2回測定した。試験は5週間継続した。試験終了後、心臓より採血して失血死させ、解剖ののち内臓等各組織の病変奇形等を確認した。その結果、コントロール群とユーカリ群との間に摂食量、飲水量、体重変化ともに有意な差は認められなかった。また、解剖による検査でも各組織には奇形等の異常は見られなかった。また、肝臓中のコレステロール量、トリグリセリド量を測定したところ、有意な差は見られなかった。血糖値、血中トリグリセリド量、血中総コレステロール量も有意な差は見られなかった。
【0046】
試験例2
参考例で得たユーカリ抽出物を用いてフルクトースに対する糖負荷試験を行った。
まず、ウィスター系SPFラット(雄)に対してユーカリ抽出物を投与するユーカリ群と、ユーカリ抽出物を投与しないコントロール群とに分け、各群のラットを18時間絶食させた。ついで、ユーカリ群のラットに、体重1kg当たりユーカリ抽出物の投与量が1gとなるように調製した試験液を胃内ゾンデにて投与した。10分後、ユーカリ群およびコントロール群のラットに、体重1kg当たりフルクトースの投与量が1gとなるように調製した試験液を胃内ゾンデにて投与した。フルクトース投与直前と投与後30分および投与後60分に門脈より採血を行い、以下の方法にて門脈血中のフルクトース濃度を測定した。
門脈血のフルクトース濃度は、D−フルクトースデヒドロゲナーゼ(Gluconobacter sp.由来)を用いた酵素法によって測定した。
すなわち、100 mM リン酸緩衝(pH 6.0)、1% Triton X-100、0.2mM WST-1、8オM 1-methoxy PMS、5Uフルクトースデヒドロゲナーゼを含む混合液0.99 mlに血清を0.01 ml添加し、30℃で3時間反応させたのち、生成した還元型WST-1の438 nmの吸収を測定することでフルクトース量を求めた。なお、各条件ともn=5で試験を行った。測定結果を表1に示す。
【表1】
【0047】
表1は、フルクトース投与直前(0分)と投与後30分および60分の門脈血中におけるフルクトース濃度の平均値を示している。同表から明らかなように、参考例で得たユーカリ抽出物を投与したユーカリ群は、コントロール群に比べてフルクトース濃度の増加が有意に抑制されていることから、ユーカリ抽出物が腸管におけるフルクトースの吸収を阻害していることがわかる。
【0048】
試験例3
参考例で得たユーカリ抽出物を用いてグルコースに対する糖負荷試験を行った。
すなわち、ウィスター系SPFラット(雄)に対してユーカリ抽出物を投与するユーカリ群と、ユーカリ抽出物を投与しないコントロール群とに分け、各群のラットを18時間絶食させた。ついで、ユーカリ群のラットに、体重1kg当たりユーカリ抽出物の投与量が1gとなるように調製した試験液を胃内ゾンデにて投与した。10分後、ユーカリ群およびコントロール群のラットに、体重1kg当たりグルコースの投与量が1gとなるように調製した試験液を胃内ゾンデにて投与した。グルコース投与直前と投与後30分に門脈より採血を行い、ベーリンガーマンハイム社の新ブラッド・シュガー・テストにより門脈血中のグルコース濃度を測定した。なお、各条件ともn=5で試験を行った。測定結果を表2に示す。
【表2】
【0049】
表2は、グルコース投与直前(0分)と投与後30分の門脈血中におけるグルコース濃度の平均値を示している。同表から明らかなように、参考例で得たユーカリ抽出物を投与したユーカリ群とコントロール群との間でグルコース濃度に有意な差異は見られないことから、ユーカリ抽出物がグルコースの吸収を阻害していないことがわかる。
【0050】
試験例4
(1)ラットの長期飼育
参考例で得たユーカリ抽出物を用いて、以下に示すラットの長期飼育を行った。
まず、ウィスター系SPFラット(雄)を1週間予備飼育後、7匹ずつ2群に群分けし、各群に表3に示す組成の試験食(高フルクトース食)を5週間自由摂取させた。なお、飼育は温度23±2℃、湿度55±5%、照明12時間/日の条件下にて行った。なお、試験食にユーカリ抽出物を添加した群をユーカリ群とし、ユーカリ抽出物を添加していない群をコントロール群とする。
【0051】
【表3】
【0052】
(2)肝臓中のトリグリセリド量測定試験
上記(1)の飼育終了後、肝臓を摘出し、常法により処理後、和光純薬社製の「トリグリセライドG−テストワコー」にて肝臓中のトリグリセリド量を測定した。その結果を表4に示す。表4から明らかなように、ユーカリ群では、コントロール群に比べて肝臓中のトリグリセリドの蓄積が抑制されていた。この結果から、ユーカリ抽出物の投与が、肝臓中のトリグリセリドの蓄積に起因する脂肪肝や肝硬変の抑制、改善、予防および治療に有効であることがわかる。
【0053】
【表4】
【0054】
(3) 血中のトリグリセリド量測定試験
上記(1)の飼育終了後、心採血し、常法により処理後、上記(2)と同様にして血中のトリグリセリド量を測定した。その結果を図1に示す。図1から明らかなように、ユーカリ群では、コントロール群に比べて血中トリグリセリド量が低下していた。この結果から、ユーカリ抽出物の投与が、血中トリグリセリド量が多いことに起因する疾病、例えば高脂血症、動脈硬化、コレステロール血症、血栓等の抑制、改善、予防および治療に有効であることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、ユーカリ抽出物は、生化学上最も重要な単糖類であるグルコースの吸収は阻害せず、フルクトースの吸収のみ特異的に阻害するので、フルクトースおよびこれを含むスクロース等の多糖類の摂取による高脂血症、脂肪肝、肝硬変、糖尿病、高血圧、血栓、脳梗塞や心筋梗塞等の循環器系疾患、高尿酸血症、肥満、脂肪蓄積症、動脈硬化症等の疾病を抑制、改善、予防および治療、あるいはトリグリセリド量、血中コレステロール量を抑制または低減することができるという効果がある。しかも本発明におけるユーカリ抽出物は、天然物由来であるので、安全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例4における血中トリグリセリド低下作用を示すグラフである。
Claims (4)
- ユーカリ属の植物から抽出した抽出物を有効成分として含有する、グルコースの吸収は阻害しない、フルクトースの吸収阻害剤。
- 請求項1に記載の吸収阻害剤と、フルクトースとを含有する組成物。
- 請求項1に記載の吸収阻害剤と、フルクトースとを含有する食品。
- グルコースの吸収は阻害せず、フルクトースの吸収阻害に特異的な薬品を製造するための、請求項1に記載の吸収阻害剤の使用。
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