JP4824151B2 - 末端官能性ホスホリルコリン類似基含有重合体皮膜を有するガラス基材及び皮膜形成剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体適合性に優れ、医用材料として有用であると共に、末端官能基を用いた化学修飾剤としても有用な末端官能性ホスホリルコリン類似基含有重合体皮膜を有するガラス基材及び皮膜形成剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホスホリルコリン基含有重合体は、生体膜に由来するリン脂質類似構造に起因する血液適合性、補体非活性化、生体物質非吸着性等の生体適合性に優れている。また、防汚染性、保湿性等の優れた性質を有することが知られている。それぞれの機能を生かした生体関連材料の開発を目的とした重合体の合成およびその用途開発が行われてきている(例えば、Y.Iwasaki、K.Kurita K.Ishihara、J.Biomater Sci Polymer Edn VOL6,P447)。
また特開平6−313009号公報には、末端官能基ホスホリルコリン基含有重合体として、カルボキシル基、水酸基またはアミノ基と、メルカプト基を有する連鎖移動剤を用いて重合末端に官能基を導入したホスホリルコリン基含有重合体が開示されている。
しかし、前記の技術では、これらの官能基では、ガラスや金属に対する反応性がないため、ガラスや金属に対する修飾剤としての有効性がないなど問題があった。
【0003】
また、特表平7−502053号公報には、ガラスや金属に対する修飾可能なホスホリルコリン単量体と3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートとの共重合体が開示されているが、この技術では、主鎖にそって部分的に側鎖が強く束縛されるので、ホスホリルコリン基の効果を十分に発揮することができないなど問題があった。
【0004】
またさらに、特表平6−510322号公報には、プライマーとして表面に3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートを結合させた後、ホスホリルコリン基含有単量体をグラフト重合させる技術が開示されている。前記の技術では、得られた表面は、ホスホリルコリン基含有重合体で覆われているために高い性能を有するが、この技術では、プライマーが必要でありグラフト化するために無酸素状態にする必要があることなど技術的に困難な点が多くまた未反応の単量体が多く収率が低い問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、優れた生体適合性を有する末端官能性ホスホリルコリン類似基含有重合体の皮膜を有するガラス基材を提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記ガラス基材の製造に用いるガラス基材用皮膜形成剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明らは、前記の問題点に鑑み鋭意検討した結果、特定の連鎖移動剤を用いて、ホスホリルコリン類似基含有単量体を重合すると、新規末端官能性のホスホリルコリン類似基含有体が得られる知見を得て、本発明を完成した。すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔2〕である。
〔1〕下記の式[I]
【0007】
【化4】
【0008】
〔式中、X1、X2及びYlは、同一又は異なる基であって水素原子またはメチル基を示し、Y2は、−COOR(Rはアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ポリオキシアルキレン基またはアルコキシポリオキシアルキレン基を示す)、カルボン酸基、アミド基、アミド誘導体基、ピロリドン基、フェニル基、またハロゲン置換フェニル基を示し、R1、R2、R3は、同一又は異なる基であって炭素数1〜10の炭化水素基、または置換炭化水素基を示す。R4、R5は、同一又は異なる基であって炭素数1〜6の炭化水素基または置換炭化水素基を示す。g、hは1〜3の整数、mは2〜4の整数、またn1は1〜10,000の整数、n2は1〜1,000の整数、n3は0〜10,000の整数を示す。〕で示される分子量500〜1,000,000の末端官能性ホスホリルコリン類似基含有重合体を表面に固定した、該重合体皮膜を有するガラス基材である。
【0014】
〔2〕前記〔1〕の式[I]で示される末端官能性ホスホリルコリン類似基含有重合体をエタノールに溶解した溶液を有効成分とするガラス基材用皮膜形成剤。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる末端官能性ホスホリルコリン類似基含有重合体(以下PC重合体と略す)は、下記式[I]
【0017】
【化7】
【0018】
で示される重合体である。
ここで式中、X1、X2及びYlは、同一又は異なる基であって水素原子またはメチル基を示し、Y2は、−COOR(Rはアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ポリオキシアルキレン基またはアルコキシポリオキシアルキレン基を示す)、カルボン酸基、アミド基、アミド誘導体基、ピロリドン基、フェニル基、またハロゲン置換フェニル基を示し、R1、R2、R3は、同一又は異なる基であって炭素数1〜10の炭化水素基または置換炭化水素基示す。R4、R5は、同一又は異なる基であって炭素数1〜6の炭化水素基または置換炭化水素基を示す。
前記のPC重合体において、g、hは1〜3の整数、mは2〜4の整数を示す。またnlは1〜10,000の整数、n2は1〜1,000の整数、n3は0〜10,000の整数を示す。この際n1及びn3が10,000を、n2が1,000を超える場合には、製造が困難である。
前記PC重合体の具体例としては、例えば、下記式[IV]〜[X]で表わされる化合物等を挙げることができる。
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
【0024】
【化13】
【0025】
【化14】
【0026】
前記PC重合体を合成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記の式[II]
【0027】
【化15】
【0028】
〔式中、X1及びX2は、同一又は異なる基であって水素原子またはメチル基を示し、R1、R2、R3は、同一又は異なる基であって炭素数1〜10の炭化水素基、または置換炭化水素基を示す。またmは2〜4の整数を示す。〕
で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体(以下PC単量体と略す)を単独で、若しくは前記PC単量体と他の共重合可能な単量体の単量体組成物を、ラジカル重合開始剤の存在下、特定の含イオウ連鎖移動剤を用いて重合させる方法等により得ることができる。
【0029】
前記PC単量体としては、具体的には例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルホスホリルコリン、β−(2’−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエトキシ)−プロピルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシエチルホスホリルコリン、さらに、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられる。、
より好ましくは、入手性などから、後記の式[XII]で示される、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート{=2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンともいう(以下MPCと略記する)}が挙げられる。
なおここで、ホスホリルコリン類似基としては、下記の式[XI]
【0030】
【化16】
【0031】
〔ここで、式中、R1、R2、R3は同一でも異なっていてもよく炭素数1〜10の炭化水素基、または置換炭化水素基を示す。またmは2〜4の整数を示す。〕
で示される基である。また、MPCは、下記の式[XII]
【0032】
【化17】
【0033】
で示される。
【0034】
また前記PC単量体と共重合可能なビニル単量体としては、下記式[XIII]
【0035】
【化18】
【0036】
〔式中、Ylは、水素原子又はメチル基を示し、Y2は−COOR(Rはアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、ポリオキシアルキレン基またはアルコキシポリオキシアルキレン基を示す)、カルボン酸アミド基、アミド誘導体基、ピロリドン基、フェニル基又はハロゲン置換フェニル基を示す。〕
で示される単量体等を挙げることができる。
【0037】
前記の式[XIII]で示されるビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸トリデシル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチル、ポリ(オキシアルキレン)モノ(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシ(ポリオキシアルキレン)モノ(メタ)アクリル酸エステル等のエーテル基含有単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミド、N−ビニルピロリドン等の含窒素単量体;スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。これらのビニル単量体は、1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。
より好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0038】
本発明において用いられる含イオウ連鎖移動剤としては、下記の式[III]
【0039】
【化19】
【0040】
〔式中、R4、R5は、同一又は異なる基であって炭素数1〜6の炭化水素または置換炭化水素基である。また、g、hは1〜3の整数を示す。〕
で示される少なくとの1個のアルキルオキシシリル基とかつチオール基を有する化合物である。
具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリフェノキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリフェノキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリフェノキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、ジエトキシ−3−メルカプトプロピルエチルシラン、ジプロポキシ−3−メルカプトプロピルプロピルシラン、ジフェノキシ−3−メルカプトプロピルフェニルシラン等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は1種または2種以上を用いてもよい。また市販品を使用してもよい。より好ましくは、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、メルカプトメチルトリメトキシシランが挙げられる。
この際、重合反応をより円滑に行うために溶媒を用いてもよく、該溶媒としては、単量体が可溶であるもの、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、ベンゼン、酢酸エチル等が挙られる。またさらに、用いる溶媒としては、これらの混合物等を挙げることができる。より好ましい溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を挙げることができる。
【0041】
また、前記重合反応を開始する開始剤としては、通常のラジカル開始剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスマレノニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等を挙げることができる。
【0042】
前記PC重合体の数平均分子量は、生体適合性、高分子材料としての強度の点から500〜1,000,000、特に好ましくは、2,000〜500,000となるように合成する。PC重合体の数平均分子量が500未満の場合強度が低下し、1,000,000を超えると合成が困難なので使用できない。
【0043】
前記PC重合体を合成する際の単量体濃度は、前記分子量となるように、0.1mol/リットル〜10mol/リットルが好ましく、特に0.2〜1mol/リットルが望ましい。また連鎖移動剤の濃度比〔S〕/〔M〕は、前記単量体濃度に対して、0.005〜2の範囲が好ましく、特に0.01〜1が望ましい。更にラジカル開始剤の濃度比〔S〕/〔I〕は、該ラジカル開始剤濃度に対して、前記連鎖移動剤濃度が1.0〜500、特に1.0〜200の範囲となるように添加するのが望ましい。重合温度は20〜100℃が好ましく、特に30〜90℃が望ましい。重合時間は1〜72時間程度である。更にまた前記PC単量体と他の共重合可能なビニル単量体とを共重合させる場合、前記ビニル単量体は全量に対し、95〜0モル%の範囲であるのが好ましい。95モル%を越えるとPC単量体による生体適合性の効果が発現しないので好ましくない。
【0044】
【発明の効果】
本発明に用いる末端官能性ホスホリルコリン類似基含有重合体は、新規な重合体であり、リン脂質類似極性基であるホスホリルコリン類似基を高分子の側鎖に有しているため、生体膜類似構造を形成しており、優れた生体適合性を示す。また蛋白質、血球等の生体成分との吸着が少ないため、人工血管、血液透析膜、カテーテル、コンタクトレンズ、血液フィルター等の生体成分と接触するような医用材料等に用いることができる。
前記PC重合体の製造方法は、PC単量体を特定の連鎖移動剤を用いて重合するので、PC重合体を容易に収率よく製造することができる方法である。また、前記PC重合体は、末端にシリル基とホスホリルコリン類似基を含有する重合体であり、特にガラス表面等に結合して、耐久性のある生体適合性を付与することができるので、検査や医療診断において有用である。
【0045】
【実施例】
以下本発明を実施例により更に詳細に説明する。
次に用いた測定方法、試験方法等を以下に示した。
A;分子量測定(GPC)
得られたMPC重合体粉末を用い、0.5重量%の濃度になるよう20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させた重合体溶液を調製した。この溶液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、試験溶液とした。
なお、GPC分析の測定条件はつぎのとおりである。
<測定条件>
カラム;OHpakSB806M HQとOHpakSB8025HQ(直列)
溶出溶媒;20mMリン酸緩衝液(pH7.4)
混合溶媒、
標準物質;ポリエチレングリコール(ポリマー・ラボラトリー社製)、
検出;示差屈折計、
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量測定(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の計算;東ソー社製インテグレーター内蔵分子量計算プログラム(SC−8020用GPCプログラム)、
流速;1.0mL/分、
試料溶液使用量;100μL、
カラム温度;40℃。
【0046】
B;共重合体組成比の測定
得られたPC重合体粉末0.5gを用いて、ケルダール法により窒素(N)量を検出して、重合体中のMPCの含量を算出した。
【0047】
C;表面の元素分析
X線光電子分光計(=XPS分析と略す。機種はESCA A−200、SIENTA社製)を用いて、 試料の膜を作製したコーテイングプレートの表面の元素分析を行った。
光電子放出角度は90度、測定深さは試料表面から100オングストロームで、リン(P)スペクトル、珪素(Si)スペクトルを分析して、P/Siの強度比で示した。
【0048】
D;血小板粘着試験
作製した試料のコーテイングプレート(ガラス基材;18mm円形板)を24穴培養用プレートにセットした。そこに生理的リン酸緩衝液(以下、PBSと略す)1.0mlを加えて、16時間インキュベートした。終了後、PBSを除去することにより表面を平衡化させた。この平衡化させたプレートにウサギ多血小板血漿(以下、PRPと略す)1.0mlを加え、室温で3時間インキュベートした。終了後、PRPを取り除き、1.5mlのPBSで3回洗浄した。洗浄終了後、2.5V%のグルタルアルデヒドを含む1.5mlのPBSを加えて室温で2時間インキュベートすることによって粘着した血小板を固定化した。
粘着した血小板は金蒸着機(SC−701AT、Quick Auto Coater、SANYU DENSHI Co.Ltd.,製)を用いて、金蒸着した。その後試料を走査型電子顕微鏡(JSM−5400、JOEL社製)で、観察して20μm×20μmの視野に吸着した血小板の数を測定した。
【0049】
製造例1
メタノール30mlと、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)0.3mol/リットルと、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.06mol/リットルと、ベンゾイルペルオキシド0.003mol/リットルとを用い、封管法により凍結脱気した。真空封管後50℃で6時間重合させた後、反応溶液をクロロホルム中に滴下し、沈殿を収集した。得られた沈殿を洗浄、減圧乾燥して、下記式[XIV]
【0050】
【化20】
【0051】
で示される重合体を得た。
ただし、式中のn1は1〜10000の整数を示す。得られた重合体は、前ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により数平均分子量を測定し、更に収率、分子量、末端基、IR及び1H−NMRスペクトルを測定した。この際コリンのIR波長は970cm-1だった。1H−NMRスペクトル分析の結果を図1に、結果を表1に示す。
なお、1H−NMRスペクトル分析の結果は次のとおりであった。
1H−NMRの結果;(δ(ppm))
0.85、1.05、1.20、20.5、3.20、3.60、3.95、4.15、4.25にピークを認めた。
なお通常の基準物質のTMSを使用せず、Si末端のプロトンを基準として示す。末端のシリル基の結合は、1H−NMRで確認した。
【0052】
製造例2、3
PC単量体の組成を表に示したように代えた以外は製造例1と同様にして、製造例2、3を行なって重合体を得た。各測定結果を表1に示す。なお、製造例2では、MPC0.16mol/l(リットル)、共重合用単量体としてブチルメタクリレート(BMA)0.04mol/lを使用した以外は製造例1に準じて重合した。製造例3では、MPC0.12mol/l、共重合用単量体として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)0.08mol/l、さらに連鎖移動剤としてジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシランを用いて重合した。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例1
公知の方法によりMPCの単独重合体を得た。分子量は30,000であった。
比較例2
公知の方法により(MPC)0.9−(3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)0.1(モル比)の反応を行った。分子量86,000であった。
【0055】
比較例3;3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−MPCグラフト化物
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(SiMAと略す)の1重量%メタノール溶液でガラス基材をコーテイングした後、100℃で60分間乾燥し、0.2mol/l MPCメタノール溶液に浸漬し、窒素ガスを30分間バブリングした。その後、開始剤としてパーブチルND 0.01mol/lを加えて重合し、水で十分洗浄した後、試験を行った。
【0056】
実施例1、比較例1〜4;ガラス密着試験
製造例1で得られたPC重合体、又は上記比較例1〜3で得られた重合体の1重量%エタノール溶液を用いて、その中にガラス基材(直径18mm円形)を浸漬した後、引き上げて乾燥して、ガラス表面に皮膜を形成した。その後100℃の恒温槽中で、30分間加熱処理して、重合体を処理したガラス基材を作成した。その後、前記のXPSの測定方法により、表面の分析を行った。さらに、その後前記の試料を3日間水中に浸漬した後、前記と同様にして、表面分析を行った。結果を表2に示す。また比較例4として、未処理のガラス基材のみを使用して試験した。その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例1、比較例1〜4;血小板粘着試験
前記実施例1、比較例1〜3と同様にして得た、ガラス基材に重合体を処理したもの及び比較例4のガラス基材を試料として、前記のDの血小板粘着試験の方法に従い評価を行った。結果を表2に合わせて示す。
【0059】
以上の結果から、XPS分析の結果、本発明の処理したガラス基材には、MPC重合体由来のリン(P)、シリル(Si)基が存在することがわかる。このことから、本発明の実施例は、ガラス表面上に強固に結合して皮膜ができており、PC基が表面に強く偏在していることがわかる。また本発明の実施例は、比較例のポリMPCを表面処理した場合は溶解して表面からとれてしまうのに比べて、ガラス基材に存在することが分かる。末端Si基の重合体である実施例1は、比較例1、2、3、4に比べて血小板の付着が少ないことがわかる。また、実施例1は、比較例1〜4に比べて血小板の形状が球状に近く変性されにくかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、製造例1の化合物の1H−NMRのチャートである。
Claims (2)
- 下記の式[I]
- 下記の式[I]
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