JP4821275B2 - オイルポンプ - Google Patents

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Description

本発明はオイルポンプに関する。例えば車両のパワーステアリング装置に使用されるオイルポンプに利用することができる。
オイルポンプとして、作動室と吸込ポートと吐出ポートとをもつ基部と、基部の作動室に回転可能に設けられたロータとをもつものが知られている(特許文献1)。ロータは、ロータ本体と、ロータ本体の外周部の溝に嵌合されたベーンとをもつ。ロータの回転に伴い、ベーンが遠心方向および向心方向に移動する。これに伴い、互いに隣設するベーン間の室の圧力が変動し、油を吸込ポートから吸い込んで、吐出ポートから吐出する。ここで、基部はフロントハウジングとリヤハウジングとからなる。リヤハウジングは、ロータ本体の軸端面とベーンの側端面とに対向する摺動対向面を備えている。リヤハウジングは、アルミニウム−シリコン系合金で形成され、軽量化を図りつつ、高耐摩耗性および高強度を有するようにされている。
特開2000−179469号公報
近年、内燃機関の更なる高出力化に伴い、オイルポンプの吐出油圧が更に高圧化している。このためオイルポンプの運転条件によっては、リヤハウジングの摺動対向面における摩耗が進行するおそれがある。殊に、内部の高圧化によって、リヤハウジングに反り変形が発生することがある。この場合、リヤハウジングの摺動対向面の摩耗量が増加し易い。この結果、リヤハウジングの摺動対向面とロータ本体の軸端面との間、あるいは、リヤハウジングの摺動対向面とベーンの側端面との間から油が漏れるおそれがある。従って使用期間が長くなると、オイルポンプの本来の性能が得られないおそれがある。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、オイルポンプが高圧化するときであっても、オイルポンプの性能を確保するのに有利なオイルポンプを提供することを課題とするにある。
本発明に係るオイルポンプは、作動室と、作動室に連通する吸込ポートおよび吐出ポートとをもつ基部と、
基部の前記作動室に回転可能に設けられ、回転に伴い油を吸込ポートから吸い込んで前記吐出ポートから吐出するロータとを具備するオイルポンプにおいて、
基部は
作動室をもつ第1ハウジングと、
ロータの軸端面に対向すると共にロータの軸端面が摺動する摺動対向面と、作動室に背向すると共に外方に露出する露出面と、を有する第2ハウジングと、を備え、
第2ハウジングは、アルミニウム合金を基材として形成されており、且つ、摺動対向面はアルマイト層を備え
ロータは、ハウジングの摺動対向面に形成されているアルマイト層と、作動室に配置されている含油部材とで挟まれていることを特徴とする。
ロータの軸端面が摺動する摺動対向面をもつ第2ハウジングは、アルミニウム合金を基材として形成されている。摺動対向面はアルマイト層を備えており、硬化されている。このため第2ハウジングの摺動対向面は耐摩耗性が向上している。このため摺動条件が厳しいときであっても、第2ハウジングの摺動対向面における摩耗の進行が抑制される。この結果、第2ハウジングの摺動対向面とロータ本体の軸端面との間、あるいは、第2ハウジングの摺動対向面とベーンの側端面との間から油が漏れるおそれが抑制される。
本発明に係るオイルポンプによれば、オイルポンプが高圧化するときであっても、オイルポンプの性能を確保するのに有利である。
ここで、ロータの円滑な作動性を高めるためには、ロータと含油部材との間における潤滑性と、ロータと第2ハウジングとの間における潤滑性とにあまり大きな差がない方が好ましい。
この点本発明によれは、含油部材は前述したように含油性を有するため、含油部材とロータとの間においては良好なる油潤滑性が期待できる。また、第2ハウジングの摺動対向面は、前記したようにアルマイト層を備えているため、アルマイト層が形成されていない従来品に比較して、摺動対向面における良好な油保持性を期待できる。このように本発明によれば、ロータの軸心方向に沿った両側において、良好なる油潤滑性を期待できる。このため、ロータの作動性が良好に確保される。
・ロータは、外周面に溝をもつ回転可能なロータ本体と、ロータ本体の溝に嵌合されロータの回転に伴い遠心方向および向心方向に作動するベーンとを有する形態が例示される。摺動対向面のアルマイト層は、ベーンの側端面に接触可能に対向している。この場合、摺動対向面における摩耗が抑制される。
第2ハウジングを構成するアルミニウム合金は、質量%でシリコンを1〜25%含む形態が例示される。シリコンの含有により、アルミニウム合金の硬度および強度が高くなり、第2ハウジングが強化される。この場合、シリコンを5〜20%、8〜15%含む形態が例示される。なお、シリコン含有量は第2ハウジングに要請される性質によって異なり、上限値としては18%、15%、13%が例示され、この上限値と組み合わせ得る下限値としては6%、7%、9%が例示される。
・アルミニウム合金に形成されるアルマイト層(陽極酸化膜)は、一般的には基地側のバリヤ層と表面側のポア層とを備えている。ポア層は油保持性を期待できる。アルマイト層の厚みは、5〜300マイクロメートルである形態が例示される。また10〜200マイクロメートル、10〜100マイクロメートル10〜50マイクロメートルである形態が例示される。上記した厚みであれば、アルマイト層がアルミニウム合金の基地組織の初晶相(α相またはシリコン相)および共晶相の双方を良好に覆うことが期待される。初晶相等の剥離抑制に有利である。
・望ましくは、アルマイト層をもつ第2ハウジングの厚み方向の中心領域の平均内部硬度はHv100〜200であり、アルマイト層の平均硬度はHv230〜450である形態を採用することができる。この場合、摺動対向面における耐摩耗性の向上が期待される。両者の差は一般的にはHv50〜150、80〜120程度が例示される。
・アルマイト層の表面粗さは、Rz(JIS)で1.5〜10マイクロメートル、2〜5マイクロメートルである形態を採用することができる。アルマイト層の表面粗さが上記した範囲であれば、摺動対向面における表面粗さが小さい場合に比較して、摺動対向面における良好な油保持性が期待される。ロータは、第2ハウジングの摺動対向面に形成されているアルマイト層(油保持性が期待される)と、作動室に配置された含油部材とで挟まれている。この場合、ロータの両側において油潤滑性を確保するのに有利である。
・アルマイト層の硬度と表面粗さとの関係は、図4に示すようになっている。この場合、切削加工により平面仕上げした試験片(表面粗さ1マイクロメートル,アルミニウム−シリコン14〜16質量%)系合金)に対してアルマイト処理している。ここで、アルマイト層の硬度がHv230以上であれば、第2ハウジングの耐摩耗性の向上が期待できる。アルマイト層の表面粗さとしては、相手材(ロータ)に有害な摩耗を生じさせないためには、10.0マイクロメートル以下であることが望ましい。このことから、第2ハウジングの耐摩耗性を向上させつつ良好な油保持性を得るためには、アルマイト層の硬度および表面粗さは、上記した範囲(硬度Hv230〜450、表面粗さ1.5〜10.0マイクロメートル)であることが望ましい。
本発明の第1実施例を図1および図2を参照して説明する。まず、全体構成から説明する。オイルポンプは、車両のステアリングの操作をアシストするパワーステアリング装置に使用されるものであり、エンジンのクランクシャフトで回転される。図1に示すように、基部1はアルミニウム合金を基材としており、内壁面11aで区画された作動室11及び作動室11に連通する吐出室12をもつフロントハウジング13(第1ハウジング,分割体)と、フロントハウジング13の取付端面13aに固定されたリヤハウジング18(第2ハウジング,分割体)とを有する。
シール部15を介して作動室11に嵌合して吐出室12に対面するように配置された第1サイドプレート16(含油部材)が設けられている。第1サイドプレート16は鉄系焼結品であり、Hv150〜300程度、殊に180〜250である。第1サイドプレート16の比重は6.3〜7.2程度、6.5〜7.0程度であり、多数の細孔を有する。細孔は含油性を有するため、良好な油潤滑性を期待できる。
取付ボルト14(取付具)をリヤハウジング18の通孔18pに挿通し、更に、フロントハウジング13のねじ孔13pにねじ込むことにより、リヤハウジング18はハウジング13の取付端面13aにシール部18sを介して固定されている。第1サイドプレート16の厚み方向には、吐出室12及び作動室11に連通する吐出ポート19が形成されている。第1サイドプレート16とリヤハウジング18とで挟持されるように、カムリング20が作動室11に嵌合して配置されている。
シャフト孔21は作動室11に繋がるようにフロントハウジング13に形成されている。フロントハウジング13に吸込通路24が形成されている。吸込通路24は、リヤハウジング18の吸込連通路26を経て吸込ポート27に連通する。
図2に示すように、ロータ3は、作動室11のカムリング20内に回転可能に設けられている。ロータ3は、回転に伴い油を吸込ポート27から吸い込んで吐出ポート19を経て吐出室12に吐出し、ひいては吐出通路28に供給し、ポンプ作用を行う。ロータ3は、カムリング20内で回転するロータ本体30(鉄系焼結品を浸炭焼き入れしたもの、Hv600〜800程度)と、ロータ本体30の外周部の溝31aに放射方向に嵌合された複数の羽根状のベーン31(鉄系、切削加工品,Hv700〜900程度)とを有する。鉄系のロータ本体30は、焼結品を浸炭させた後に焼き入れした材料で形成されており、硬化および高強度化されている。
図1に示すようにフロントハウジング13には、公知の流量制御弁(例えば特開平9−32740号公報に記載の流量制御弁5)が設けられた吐出通路28が形成されている。吐出通路28は吐出室12に連通し、吐出室12及び吐出ポート19を介して作動室11に連通する。吐出通路28は吸込通路24に連通している。プーリ4をもつ駆動シャフト4(鉄系、切削加工品、P1:軸芯)はシャフト孔21内にメタル軸受210を介して回転可能に支承されていると共に、ロータ3のロータ本体30の孔に一体的に係合している。
エンジンのクランクシャフトにエンドレスベルトで連結されたプーリ4が回転すると、駆動シャフト4が回転し、ロータ3は回転する。この結果、ロータ3及びベーン31がカムリング20内で同方向に回転する。べーン31の先端はカムリング20のカム面20cに沿って移動する。隣設するベーン31で室33が形成される。吸込ポート27側では室33の容積は、吸込ポート27からの油吸い込み性を確保すべく相対的に大きくされており、吐出ポート19側では室33の容積は相対的に小さくされている。
さて要部構成について説明する。リヤハウジング18は、質量%でシリコンを8〜16%、殊に10〜15%含むアルミニウム合金(ADC12相当、ダイカスト品)で形成されている。リヤハウジング18は、ロータ3のロータ本体30の軸端面およびベーン31の側端面に対向する摺動対向面180をもつ。リヤハウジング18の全体はアルマイト処理(陽極酸化処理)されており、更に封孔処理されている。従って、リヤハウジング18の摺動対向面180の表面にはアルマイト層185が形成されている。リヤハウジング18は、作動室11に背向すると共に外方に露出する露出面182をもつ。露出面182においてもアルマイト層185Bが形成されている。
上記したアルマイト処理においては、リヤハウジング18を脱脂した後に、硫酸を含む液を貯留した低温の硫酸浴にリヤハウジング18を浸漬させ、その状態でリヤハウジング18を陽極とし、陽極と陰極との間に電圧を印加し、硬質アルマイト処理を行ない、その後、封孔処理を行った。この場合、浴電圧は10〜30ボルト、電流密度は50〜200アンペア/dm、液温度は8〜25℃とした。液温度が一般的な硫酸浴を用いるアルマイト処理よりも低温であるため、アルマイト層185の成長速度が低下するものの、アルマイト層185の高硬度化が図れる。アルマイト層185を生成させるときにおける溶解が抑制されるためと推察される。
なお、液温が20℃のシュウ酸系の浴においても、アルマイト処理を行ったが、アルマイト層が充分な厚みで生成されず、アルマイト層は良好ではなかった。アルマイト層を生成させるときに基材であるアルミニウム合金の溶出が律速となり、アルマイト層の生成が不充分となるためと推察される。
図3に示すように、アルマイト層185は基地側のバリヤ層と表面側のポア層とを備えている。ポア層は多孔質であり、封孔処理されている。アルマイト層185の厚みは10〜80マイクロメートル、殊に10〜50マイクロメートルとされている。リヤハウジング18の厚み方向の中心領域の平均内部硬度はHv130〜160であり、アルマイト層185の平均硬度はHv300〜400とされている(Hvの測定荷重は100g)。なお、アルマイト層185の平均硬度は、鉄−炭素系の第1サイドプレート16の平均硬度よりも高い。
上記したように本実施例によれば、アルマイト処理によりリヤハウジング18の摺動対向面180の硬度は高くなる。このためロータ3のロータ本体30の軸端面およびベーン31の側端面と摺動するときであっても、リヤハウジング18の摺動対向面180の耐摩耗性が向上し、摺動対向面180の摩耗が低減される。耐焼き付き性も向上する。このためベーン31の遠心方向および向心方向への移動性が長期にわたり円滑に維持され、オイルポンプの本来の性能を良好に維持できる。
更に、リヤハウジング18の摺動対向面180がアルマイト層185により高硬度化されている本実施例によれば、オイルポンプの吐出圧が従来よりもかなり高圧化(例えば8MPa→15MPa)され、高圧化に伴いリヤハウジング18に反り変形が生じるときであっても、リヤハウジング18の摺動対向面180における過剰な摩耗が抑制される。従って、リヤハウジング18の摺動対向面180とロータのロータ本体30の軸端面との間、リヤハウジング18の摺動対向面180とベーン31の側端面との間から油が漏れるおそれが抑制される。従って、オイルポンプの吐出圧が高圧化するときであっても、オイルポンプの本来の性能を良好に維持できる。
リヤハウジング18の摺動対向面180は、油環境下においてロータのロータ本体30の軸端面およびベーン31の側端面と摺動するため、高い精度の平面度を得るため、平面加工される。ここで、アルマイト層185を形成する前のリヤハウジング18の摺動対向面180は表面粗さは、Rz(JIS)で1マイクロメートルであった。これに対してアルマイト層185の表面粗さは、Rz(JIS)で1.5〜3.5マイクロメートルであった。表面粗さはJISB 0601(1994)に準拠して測定した。
このようにリヤハウジング18の摺動対向面180に高い精度の平面加工を施しつつも、摺動対向面180の表面粗さがアルマイト層185により適度に増加する。このため、アルマイト層185が形成されていない従来品に比較して、油膜の抜け(油膜追従性)抑制され、リヤハウジング18の摺動対向面180における油膜の保持性の向上が期待される。この意味においてもリヤハウジング18の摺動対向面180の摩耗が低減され、オイルポンプの本来の性能を良好に維持できる。
リヤハウジング18は、前述したように、合金の強化のために、質量%でシリコンを8〜16%、殊に10〜15%含むアルミニウム合金で形成されている。この金属をアルミニウム−シリコン系の平衡状態図から判定すると、冷却速度を考慮すると、摺動対向面180の金属組織は基本的には初晶相(α相またはシリコン相)および共晶相が混在するように複数の相が混在して形成されることが多い。ここで、アルマイト処理時において、初晶相(α相またはシリコン相)および共晶相の導電率が相違するため、アルマイト処理における電流密度が初晶相と共晶相とで相違し、両相でアルマイト層の成長速度が相違し、この影響で、アルマイト層に適度なムラが発生し、上記した表面粗さが発現され易いものと推察される。なお、アルマイト層185が上記した厚みであれば、基地組織を構成する初晶相および共晶相の双方を良好に覆うことができる。
ところで、アルミニウム−シリコン系合金では、摺動環境が過酷であると、摺動条件によっては、シリコンの粒径にもよるが、シリコン(共晶シリコン、初晶シリコン)が基地から剥離、脱落するおそれがある。この場合、硬いシリコンが摺動対向面180とベーン31およびロータ3との間に介在した状態で摺動が行われるため、油が存在する摺動条件といえども、摺動条件によっては、リヤハウジング18の摺動対向面180を損傷させるおそれがある。この点本実施例によれば、リヤハウジング18の摺動対向面180が硬いアルマイト層185で覆われているため、ロータ本体30およびベーン31と基地組織とが直接的に摺動することが抑制され、ひいてはシリコンの剥離、脱落が抑制され、上記したおそれが軽減され、この意味においても耐摩耗性の向上に有利である。
本実施例によれば、鉄系の第1サイドプレート16の比重は6.4〜7.0、殊に6.7〜6.9であり、鉄系部品としては比較的小さく、多数の細孔をもち、含油性を有する。従って、第1サイドプレート16の摺動対向面160とロータ3との間における良好な油潤滑性、摺動性が確保されている。
本実施例によれば、図1に示すように、ロータ3は、アルマイト層185を備えた摺動対向面180をもつアルミニウム合金で形成されたリヤハウジング18と、鉄系焼結部品である第1サイドプレート16(鉄系の含油部材、焼結体)とで、ロータ本体30の厚み方向に挟まれている。ここで、ロータ3を構成するロータ本体30とベーン31との円滑な作動性を高めるためには、ロータ3と第1サイドプレート16との間における潤滑性と、ロータ3とリヤハウジング18との間における潤滑性とにあまり大きな差がない方が好ましい。
この点本実施例によれは、第1サイドプート16は前述したように含油性を有するため、第1サイドプレート16とロータ3との間においては良好なる油潤滑性が期待できる。また、リヤハウジング18の摺動対向面180は、前記したようにポア層および適度な表面粗さを有するアルマイト層185を備えているため、アルマイト層185が形成されていない従来品に比較して、摺動対向面180における良好な油保持性を期待できる。このように本実施例によれば、ロータ3の軸心方向に沿った両側において、良好なる油潤滑性を期待できる。このため、ロータ3を構成するロータ本体30およびベーン31の作動性が良好に確保される。
本実施例によれば、リヤハウジング18のうち外気に触れる露出面182においてもアルマイト層185Bが形成されている。このため、露出面182における耐摩耗性も向上させることができ、保管時や組付時等において他の部品が露出面182に衝突したとしても、露出面182に傷がつきにくい。また、リヤハウジング18はシャフト4を嵌合させるシャフト孔18xを有する。シャフト孔18xの内周面18yにもアルマイト層185が形成されているため、内周面18yにおける耐摩耗性が向上している。
なお、フロントハウジング13(分割体)にはアルマイト処理が施されていないが、これに限らず、フロントハウジング13にもアルマイト層を形成しても良い。
実施例2は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。図1〜図3が準用される。本実施例においても、実施例1と同様に、リヤハウジング18は、ロータ3のロータ本体30の軸端面およびベーン31の側端面に対向する摺動対向面180をもつ。リヤハウジング18の摺動対向面180の表面にはアルマイト層185が形成されている。リヤハウジング18のうち作動室11に背向する露出面182にも、アルマイト層185Bが形成されている。摺動対向面180におけるアルマイト層185の厚みは、露出面182におけるアルマイト層185Bの厚みよりも厚くされている。この場合、アルマイト処理のコストを抑えつつ、リヤハウジング18の摺動対向面180の耐摩耗性を向上させることができる。この場合、アルマイト処理するにあたり、リヤハウジング18が陽極とされ、相手電極である陰極との間に電圧が印加されて陽極酸化されるが、リヤハウジング18の摺動対向面180を陰極に近づけて対向させておくと共に、リヤハウジング18の露出面182を陰極に背向させて陰極から遠ざけておく。
(その他)
上記した実施例によれば、リヤハウジング18は、質量%でシリコンを8〜16%、殊に10〜15%含むアルミニウム合金で形成されているが、これに限らず、質量%でシリコンを2〜8%含むアルミニウム合金で形成されていても良い。またアルミニウム−シリコン系の合金としては、初晶シリコンが生成する過共晶系でも良い。更に、アルミニウム−シリコン系の合金に限らず、アルミニウム−銅系の合金、アルミニウム−マグネシウム系の合金、アルミニウム−亜鉛系の合金に適用しても良い。リヤハウジング18はダイカスト品(鋳造品)とされているが、砂型品でも、鍛造品でも良い。第1サイドプート16は焼結品であり、含油性を有するが、場合によっては含油性を有しないものでも良い。第1サイドプレート16は鉄系焼結品であり、焼き入れされていないが、焼き入れ硬化させても良い。
上記した実施例によれば、ベーン式のオイルポンプに適用されているが、これに限らず、場合によってはギヤ式のポンプでも良い。パワーステアリング装置用のオイルポンプに限らず、他の用途のオイルポンプでも良い。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更して実施できるものである。
本発明は車両等に搭載されるオイルポンプ、例えば、車両のパワーステアリング装置等の油圧機器に使用されるオイルポンプに用いるのに適する。
実施例1に係り、オイルポンプの断面図である。 実施例1に係り、異なる方向からみたオイルポンプの断面図である。 アルマイト層を模式的に示す構成図である。 アルマイト層の硬度と表面粗さとの関係を示すグラフである。
1は基部、11は作動室、13はフロントハウジング(分割体,第1ハウジング)、16は第1サイドプレート(含油部材)、18はリヤハウジング(分割体,第2ハウジング)、180は摺動対向面、185はアルマイト層、185Bはアルマイト層、19は吐出ポート、24は吸込通路、27は吸込ポート、28は吐出通路、3はロータ、30はロータ本体、31はベーンを示す。

Claims (6)

  1. 作動室と、前記作動室に連通する吸込ポートおよび吐出ポートとをもつ基部と、
    前記基部の前記作動室に回転可能に設けられ、回転に伴い油を前記吸込ポートから吸い込んで前記吐出ポートから吐出するロータとを具備するオイルポンプにおいて、
    前記基部は
    前記作動室をもつ第1ハウジングと、
    前記ロータの軸端面に対向すると共に前記ロータの前記軸端面が摺動する摺動対向面と、前記作動室に背向すると共に外方に露出する露出面と、を有する第2ハウジングと、を備え、
    前記第2ハウジングは、アルミニウム合金を基材として形成されており、且つ、前記摺動対向面はアルマイト層を備え
    前記ロータは、前記ハウジングの前記摺動対向面に形成されている前記アルマイト層と、前記作動室に配置されている含油部材とで挟まれていることを特徴とするオイルポンプ。
  2. 請求項1において、前記ロータは、外周面に溝をもつ回転可能なロータ本体と、前記ロータ本体の溝に嵌合され前記ロータの回転に伴い遠心方向および向心方向に作動するベーンとを有しており、前記摺動対向面の前記アルマイト層は前記ベーンの側端面に接触可能に対向していることを特徴とするオイルポンプ。
  3. 請求項1または2において、前記アルミニウム合金は、シリコンを1〜25質量%含むことを特徴とするオイルポンプ。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記アルマイト層の厚みは、5〜300マイクロメートルであることを特徴とするオイルポンプ。
  5. 請求項1〜のうちのいずれか一項において、前記アルマイト層をもつ前記第2ハウジングの厚み方向の中心領域の平均硬度はHv100〜200であり、前記アルマイト層の平均硬度はHv230〜450であることを特徴とするオイルポンプ。
  6. 請求項1〜のうちのいずれか一項において、前記アルマイト層の表面粗さは、Rz(JIS)で1.5〜10マイクロメートルであることを特徴とするオイルポンプ。
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