JP4818619B2 - ナノポーラスゼオライト触媒表面を持つ触媒の調製方法 - Google Patents
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Description
ゼオライトには、大きく分けて天然産と合成品がある。天然産としては、例えば、ホウフッ石、ソーダフッ石、キフッ石、クリノブチロライト、カイジュウジフッ石、モリブデンフッ石、リョウフッ石、フォージャス石等が知られているが、多くの非晶質あるいは他の異質のゼオライトまたは長石、石英のようなゼオライトでない結晶等が含まれていてその結晶性は、低いのが一般的である。
また、合成ゼオライトは、一般にシリカ源、アルミナ源、アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源を用いた水熱反応により合成され、成分が均一で結晶性が高いものが得られるという利点を有している。このために、これまでに、A型、B型、D型、X型、Y型、Z型、β型などの多数の型の合成ゼオライトが提供されてきた。
また、新しいタイプのゼオライトとしては、ケイ素−ケイ素骨格中に有機基を含有させるものが提案されてきている(特許文献2及び3参照)。また、酸処理によりアルミノケイ酸塩骨格中からアルミニウムを溶出させ(脱アルミ)、テトラエトキシシランや硝酸クロムなどの金属促進剤の存在下に、亜鉛を含侵させ、骨格中に亜鉛を導入したゼオライトも開発されてきている(特許文献4参照)。
本発明者らは、従来からの発想ではなく、即ち合成ではなく、加工・複合化という全く新しい発想に基づいて、相反する課題の解決のための開発に取り組み、そしてナノポーラスなゼオライト表面を形成する効果的な複合ゼオライトを見出し、この技術を確立することに成功した。本発明は、現在注目されているナノポーラスゼオライト触媒表面を独創的な手段により実現させたものであり、新たなゼオライト触媒の調製原理の提案にもなっている極めて原理的な発明である。
また、本発明は、合成ゼオライトを脱アルミ処理して脱アルミさせたゼオライトとし、次いでこれと焼成によりナノポアーが形成されるホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体とを水の存在下で混合し、これを焼成してなる少なくとも表面にナノポアーを有する複合ゼオライトを製造する方法、より詳細には、合成ゼオライトをプロトン型とし、これを焼成した後、これを酸溶液で洗浄することからなる脱アルミ処理して脱アルミさせたゼオライトとし、次いでこれと焼成によりナノポアーが形成されるホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体とを、水の存在下で混合し、これを焼成してなる少なくとも表面にナノポアーを有する複合ゼオライトを製造する方法に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明の複合ゼオライトを含有してなる化学反応用の触媒、より詳細には、前記した本発明の複合ゼオライトを含有してなる、石油成分の水素化分解反応、石油成分の深度脱硫反応、重質パラフィンの異性化反応若しくは分解異性化反応、ナフサの骨格異性化反応、又はNOxのアンモニア還元分解反応などの化学反応用の触媒に関する。
また、本発明は、前記した本発明の複合ゼオライトの存在下に、脂肪族炭化水素を加熱して当該脂肪族炭化水素の炭素骨格を異性化させる方法、及び石油成分、好ましくは軽油を、前記した本発明の複合ゼオライトに接触させて、当該石油成分に含有されている硫黄成分を脱硫する、好ましくは深度脱硫する方法に関する。
脱アルミ処理により一旦脱アルミしたアルミは、再度の水の存在下での熱処理によって可逆的に骨格に復帰することが知られている。したがって、脱アルミ処理により、骨格から脱アルミしたアルミニウムは、これを酸洗浄によって完全に系外に除去することが必要である。酸洗浄に用いる酸は、骨格中のアルミニウムを溶出させずに、脱アルミ処理により骨格から外されているアルミニウムのみを溶出させるような強さの酸であって、使用後ゼオライトから洗浄除去が容易なものが良い。好ましい酸としては、例えば、希塩酸、希硝酸などが挙げられる。アルミニウムを溶出させる酸処理は、より具体的には、0.1規定〜10規定、好ましくは0.1規定〜3規定の塩酸や硝酸溶液に浸漬させ、蒸留水や脱イオン水で洗浄した後、乾燥させることにより行われる。
脱アルミをさせすぎたり、脱アルミさせる処理温度が高温すぎると、ゼオライト構造の崩壊が起きたり、脱アルミおよびシリカの0.5〜4nmの部分の骨格からの脱離をさせたものがアモルファス構造中に閉じ込められて、酸処理によって溶出除去できなくなるので、骨格からの適度の脱アルミは、シリカの0.5〜4nmの部分の骨格からの脱離をさせ、酸洗浄によってアルミと共にそのようなシリカも完全に系外に除去するのが好ましい。このようにケイ素も同時に除去され、アルミなどと酸点を形成できるケイ素骨格欠陥を有することになる。したがって、本発明の複合ゼオライトは、ケイ素骨格欠陥を有し、この点も本発明の複合ゼオライトの特徴のひとつである。
このようにして脱アルミ処理された脱アルミさせたゼオライトのSiO2/Al2O3のモル比は、10以上となるのが好ましく、より好ましくは10〜100、10〜50、10〜40程度である。
この工程で使用される焼成によりナノポアーが形成されるホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体としては、焼成によりナノポアーを有する金属酸化物となるものであれば、特に制限はないが、硼酸、金属水酸化物、金属酸化物などが好ましい。好ましい元素としては、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、ニオブ、モリブデン、及びタングステンからなる群から選ばれる元素の1種又は2種以上が挙げられる。これらのホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体は焼成によりナノポアーを有するホウ素酸化物又は金属酸化物とされる。
これらの金属酸化物におけるナノポアーとしては、2〜10nm、好ましくは2〜8nm程度の、好ましくは比較的均一なナノポアーを有するものである。
好ましい焼成によりナノポアーが形成される金属酸化物の前駆体としては、焼成すると針状のナノポーラス金属酸化物が形成される金属酸化物前駆体、例えば、金属水酸化物酸化物クラスターや未発達多孔質金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タングステンなどが挙げられる。また、非金属の酸化物としてはホウ素酸化物であるボリアが挙げられる。より好ましい、金属酸化物の前駆体としては、例えば、焼成すると針状のナノポーラスアルミナが形成されるアルミナ前駆体、例えば、水酸化アルミ酸化アルミクラスターないし未発達擬ベーマイトなどのアルミナ前駆体、焼成すると針状のナノポーラスチタニアが形成されるチタニア前駆体、例えば、水酸化チタン酸化チタンクラスターないし未発達アナターゼ前駆体などのチタニア前駆体などが挙げられる。焼成によりナノポアーが形成されるアルミナ前駆体としては、バイヤライトは針状とならず球状のような形状になることから好ましくない。
両者の混合物は少量の水を加えて、十分に混練し、必要に応じて成形する。加える水の量は混練できる程度の少量が好ましい。混練され、必要により成形された混合物は、そのまま焼成することもできるが、好ましくは焼成前に混合物を乾燥させる工程を設ける。乾燥は、混合物を100℃以上、好ましくは120〜180℃、より好ましくは120℃〜150℃程度で、乾燥させる混合物の量によるが、通常は5〜20時間、好ましくは10〜15時間かけて乾燥させることができる。
乾燥した後、脱アルミさせたゼオライトとホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体とを焼成する。焼成は、少量の水の存在下に行うのが好ましい。乾燥の後、焼成前に水を添加することもできるが、混合物の内部にまで浸透させることが困難であることから、乾燥工程における乾燥の程度を調整することにより水分量を調整する方法が好ましい。焼成の方法としては、特に制限はないが、回転型キルン形式などの回転式で、焼成される面が常に更新されるようにして焼成を行うのが好ましい。焼成温度としては、温度が高温すぎると、ゼオライト構造の崩壊が起きたりするので、ゼオライト構造の崩壊が起きない温度で行う。焼成温度としては、例えば、500℃〜800℃、好ましくは500℃〜700℃程度が挙げられる。
また、酸化物としてケイ素の酸化物(シリカ)を使用した場合には、シリカの骨格内において電荷の偏在化が起こらないために、前記したような酸点が生じないことになる。後記する試験例において、酸化物としてシリカを用いた場合(実施例1における触媒F−1及び実施例2における触媒F−2)を比較例として記載しておく。
即ち、本発明の複合ゼオライトは、ナノポーラスで、かつナノポーラスの表面に広範囲に中位の酸点を有し、さらにナノポーラスの表面の下のバルクはゼオライトの特性を保持しているという、3段複合機能を備えていることになる。このことは、空間規制的にも、酸強度的にも3段階で強度が強くなるので多機能を逐次的に実現することができるだけでなく、機械的な強度も備えていることになる。したがって、本発明は、各種の触媒として理想的な新規な複合ゼオライトを提供するものである。
本発明の複合ゼオライトは、固体酸を触媒として使用する化学反応における触媒として使用できるだけでなく、金属のナノポアーでのイオン交換的担持が必要な化学反応においても触媒として使用することができる。
本発明の複合ゼオライトを触媒として使用する化学反応としては、例えば、石油成分の水素化分解反応、軽油などの石油成分の脱硫反応、好ましくは深度脱硫反応、重質パラフィンの異性化反応、重質パラフィンの分解異性化反応、ナフサの骨格異性化反応、NOxのアンモニア還元分解反応などが挙げられるが、これらの反応に限定されるものではない。
また、比較のために上記のHβナノポーラスゼオライトの代わりに、ナノポーラス処理前のHβゼオライトを用いて、前記と同様に複合化物を製造した場合の酸強度を測定したところ、弱酸0.4、中位の酸0.7、強酸0.3となり、個別に測り加算した値と変わらない値を示した。
したがって、本発明の方法による複合化によって、中位の酸が生成していることが確認できた。また、中位の酸の生成にはナノポーラス処理が不可欠であることが確認できた。
(1)前記した実施例1で調製したナノポーラスβゼオライトとナノポアーアルミナの複合ゼオライトに、硝酸パラジウム水溶液をパラジウム金属重量基準で複合物重量に対して1wt%を限界吸液含浸法によって担持させ、1晩密閉保持後、風乾して120℃12時間で乾燥後、550℃3時間で空気下焼成し、水素気流中で450℃6時間還元してA−1触媒を得た。
(2)前記(1)のナノポーラスβゼオライトの代わりに、前記実施例1で調製したナノポーラスYゼオライトを用いて、前記(1)と同様にしてB−1触媒を得た。
(3)前記実施例1において、ナノポアーアルミナ前駆体の代わりにナノポアーチタニア前駆体を用いて、実施例1と同様にしてナノポーラスβゼオライトとナノポアーチタニアの複合ゼオライトを調製し、これを前記(1)と同様に処理してC−1触媒を得た。
(4)前記(3)のナノポーラスβゼオライトの代わりにナノポーラス処理前のHβゼオライトを用いて、前記(3)と同様にしてD−1触媒を得た。
(5)前記実施例1において、ナノポアーアルミナ前駆体の代わりにナノポアーシリカ前駆体を用いて、実施例1と同様にしてナノポーラスβゼオライトとナノポアーシリカの複合ゼオライトを調製し、これを前記(1)と同様に処理してE−1触媒を得た。
(6)前記(1)において、ナノポーラスβゼオライトの代わりにナノポーラス処理前のHβゼオライトを用いて、前記(1)におけるナノポアーアルミナ前駆体の代わりにナノポアーシリカ前駆体を用いてF−1触媒を得た。この触媒F−1は、酸化物としてシリカを用いたものであり、酸点を形成しない比較例として使用されるものである。
(2)前記(1)におけるナノポーラスβゼオライトの代わりにナノポーラスYゼオライトを用いて、(1)と同様にしてB−2触媒を得た。
(3)前記(1)におけるナノポアーアルミナ前駆体の代わりにナノポアーチタニア前駆体を用いて、(1)と同様にしてC−2触媒を得た。
(4)前記(1)におけるナノポーラスβゼオライトの代わりにナノポーラス処理前のHβゼオライトを用いて、(1)と同様にしてD−2触媒を得た。
(5)前記(1)におけるナノポアーアルミナ前駆体の代わりにナノポアーシリカ前駆体を用いて、(1)と同様にしてE−2触媒を得た。
(6)前記(1)におけるナノポーラスβゼオライトの代わりにナノポーラス処理前のHβゼオライトを用い、前記(1)におけるナノポアーアルミナ前駆体の代わりにナノポアーシリカ前駆体を用いて、(1)と同様にしてF−2触媒を得た。この触媒F−2は、酸化物として酸点を形成しないシリカを用いたものであり、比較例として使用されるものである。
Claims (24)
- ベータ型合成ゼオライトを脱アルミ処理して脱アルミさせたゼオライトと、焼成によりナノポアーが形成されるホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体とを水の存在下で混合し、これを焼成してなる少なくとも表面にナノポアーを有する複合ゼオライト。
- 複合ゼオライトの表面の少なくとも一部が、ナノポアーなホウ素酸化物又は金属酸化物で覆われている請求項1に記載の複合ゼオライト。
- ホウ素酸化物若しくは金属酸化物の前駆体、又はそれを焼成してなるホウ素酸化物若しくは金属酸化物が、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、ニオブ、モリブデン、及びタングステンからなる群から選ばれる元素の酸化物の1種又は2種以上からなるものである請求項1又は2に記載の複合ゼオライト。
- ベータ型合成ゼオライトを脱アルミ処理して脱アルミさせたゼオライトのSiO2/Al2O3のモル比が、10以上である請求項1〜3のいずれかに記載の複合ゼオライト。
- ベータ型合成ゼオライトを脱アルミ処理して脱アルミさせたゼオライトのSiO2/Al2O3のモル比が、10〜100である請求項4に記載の複合ゼオライト。
- 複合ゼオライトが、ケイ素骨格欠陥を有する請求項1〜5のいずれかに記載の複合ゼオライト。
- 複合ゼオライトが、広範に中位の強さの酸点が形成されたものである請求項1〜6に記載の複合ゼオライト。
- 中位の強さの酸点の水素イオンが、金属イオンで置換されている請求項7に記載の複合ゼオライト。
- ベータ型合成ゼオライトを脱アルミ処理して脱アルミさせたゼオライトとし、次いでこれと焼成によりナノポアーが形成されるホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体とを水の存在下で混合し、これを焼成してなる少なくとも表面にナノポアーを有する複合ゼオライトを製造する方法。
- 脱アルミ処理が、ベータ型合成ゼオライトをプロトン型とし、これを焼成した後、これを酸溶液で洗浄することからなるものである請求項9に記載の方法。
- 脱アルミさせたゼオライトと、ホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体との焼成が、水の存在下で、金属イオンなしに混練焼成し脱水反応によって複合化して新たな中位の酸点を形成せしめるものである請求項9又は10に記載の方法。
- 脱アルミさせたゼオライトと、ホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体との混合比が、酸化物基準で、ナノポアー酸化物が20〜50質量%で、脱アルミさせたゼオライトが50〜80質量%である請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
- 脱アルミさせたゼオライトと、ホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体との焼成の前に、混合物を120〜180℃で乾燥させる工程を行う請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
- 脱アルミさせたゼオライトと、ホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体との焼成が、焼成温度500℃〜700℃で行われるものである請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
- 脱アルミさせたゼオライトと、ホウ素酸化物又は金属酸化物の前駆体との焼成が、回転型のキルン形式で行われるものである請求項9〜14のいずれかに記載の方法。
- ホウ素酸化物若しくは金属酸化物の前駆体、又はそれを焼成してなるホウ素酸化物若しくは金属酸化物が、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、ニオブ、モリブデン、及びタングステンからなる群から選ばれる元素の酸化物の1種又は2種以上からなるものである請求項9〜15のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の複合ゼオライトを含有してなる石油成分の水素化分解反応用の触媒。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の複合ゼオライトを含有してなる石油成分の深度脱硫反応用の触媒。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の複合ゼオライトを含有してなる重質パラフィンの異性化反応又は分解異性化反応用の触媒。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の複合ゼオライトを含有してなるナフサの骨格異性化反応用の触媒。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の複合ゼオライトの存在下に、脂肪族炭化水素を加熱して当該脂肪族炭化水素の炭素骨格を異性化させる方法。
- 石油成分を、請求項1〜8のいずれかに記載の複合ゼオライトに接触させて、当該石油成分に含有されている硫黄成分を脱硫する方法。
- 脱硫が、深度脱硫である請求項22に記載の方法。
- 石油成分が、軽油である請求項22又は23に記載の方法。
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