JP4817512B2 - 弾性表面波装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は弾性表面波が伝搬する電極構造列を形成する弾性表面波装置であり、小型化し電極構造列間の音響波の分離を向上する弾性表面波装置の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今の移動体通信機や携帯電話は小型化及び、低背化が進み、これに使用される弾性表面波装置を代表とする電子部品も小型化及び、低背化への対応が進んでいる。更に最近では、通話回線数を多数にし高密度の通信回線の要求もあることから、通話信号を伝送する送受信周波数を精度良く分割する機能部品のフィルタ能率にも高度な仕様の要求を迫られている。
【0003】
上述の送受信信号のフィルタリングに関して、移動体通信等の分野では弾性表面波を利用した帯域フィルタとしての弾性表面波装置が用いられるようになっている。このような分野の弾性表面波装置は、非常に高性能な帯域特性が求められ、特に、帯域外において大きく減衰するような減衰特性が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述する現象の要因のひとつに、電極構造列間の不要伝搬波が考えられる。この不要波の抑制と帯域外減衰特性を得るために、移動体通信等の分野では、入力IDTと出力IDTを有する電極構造列を縦続接続した弾性表面波装置が用いられており、特開平5−102783号公報などに記載があるように、電極構造列間に表面波を吸収又は散乱する遮断手段である溝構造の弾性表面波装置が一般的には使われている。
【0005】
しかしながら、上述の溝構造では溝からの反射波や輻射波に対して充分な不要波の抑制ができにくく、電極構造列を縦続接続すると高周波側の帯域外減衰量が予想よりも劣化する傾向にある。また将来的に、電極構造列単位で異なる周波数のフィルタリングを行うことを実現しようとすると、個々別々の電極構造列相互間で音響波の分離を低下させてしまうという現象も招くおそれがある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述した課題を解決するために成したものであり、弾性表面波が伝搬する矩形状の一主面に1つの電極構造列が設けられている圧電基板が少なくとも2つ以上備えられており、前記各圧電基板は、隣り合う前記圧電基板の長辺の側面を対向させつつ並べて配置されており、隣り合う前記圧電基板の対向する側面全面が接着剤により接合されている弾性表面波装置であって、圧電基板を接合する接着剤が、圧電基板の弾性表面波の伝搬する主面より凸状態に盛り上がっている。このような状態の接着剤により不要波の拡散効果を得ることができる。
【0008】
要するに、従来の弾性表面波装置では、図3に示すように電極構造列間に配置する溝付近では、電極構造列で発生する伝搬波が不規則に反射するために、電極構造列から発生した伝搬波が再度電極構造列に戻ることや、溝部を回避し弾性表面波波装置を構成する圧電基板材料の裏面端(IDT電極を配置する主面に対する他面)に反射する伝搬波などにより、不要波の充分な抑制効果をもたらしていないものと発明者は考察する。
【0009】
この不要波の抑制効率を改善することが本願発明の目的で、これを実現するために、各々の圧電基板上に電極構造列を形成し圧電基板を接着し弾性表面波装置を構成するものである。本発明の弾性表面波装置により、不要波の伝搬と電極構造列間の音響波の分離を殆ど皆無にすることで、各々の電極構造列から発生する伝搬に対する反射波や輻射波を大幅に抑制し、仮に電極構造列毎に異なる周波数のフィルタリングを行うことを実現しようとする場合であっても、個々別々の電極構造列相互間の干渉波の抑制に対して大幅な改善を図ることができる。
【0010】
【作用】
本発明は簡単に表現してしまえば、電極構造列を形成する圧電基板を単位分けし、各々の電極構造列の伝搬波を孤立化することを狙った弾性表面波装置である。従来では、電極構造列間に表面波を吸収又は散乱する溝を設けたことで、電極構造列間における弾性表面波の不要波の影響を改善し、特に高周波側の帯域外減衰量の劣化を低減させたものに対し、電極構造列単位に圧電基板を分割することにより皆無に等しいまでに、電極構造列間の干渉波を抑制することができる。現状ではひとつの弾性表面波装置で単一周波数をフィルタリングしているが、将来的に電極構造列単位で異なる周波数のフィルタリングを行う場合でも、各電極構造から発生する異なる周波数も確実に遮断、分離することから、個々別々の電極構造列相互間の音響波分離をも大幅に向上することができる。
【0011】
【本発明の実施の形態】
以下、添付図面に従ってこの発明の実施例を説明する。なお、各図において同一の符号は同様の対象を示すものとする。本発明の一実施例による2つの電極構造列を縦続接続してなる弾性表面波装置について図1及び図2の斜視図で説明する。第1の基板7と第2の基板8は、約400μm厚のSCカット水晶を材料とし、矩形状の主面を有する圧電基板からなる。第1の基板7の一主面には、その主面の一辺と平行に弾性表面波が伝搬するように、アルミニウム電極による電極構造列3が形成されている。又、第2の基板8の一主面には、その主面の一辺と平行に弾性表面波が伝搬するように、アルミニウム電極による電極構造列30が形成されている。電極構造列3及び30は、それぞれ同一の構造であり弾性表面波の伝搬波長をλとして約20λの間隔をあけて伝搬方向が平行になるように形成されている。
【0012】
本実施例では弾性表面波の速度が約3157m/sec、中心周波数が85.38MHzであるので、波長λは37μmとなる。本実施例における弾性表面波装置5は、縦続接続の第1段目となる電極構造列3が形成された第1の基板7の側面7Eと、縦続接続の第2段目となる電極構造列30が形成された第2の基板8の側面8Eとを、接着剤6により接合する形態となっている。
【0013】
第1段目の電極構造列3は、中央の入力IDT1の両側に一対の反射器24、25により挟んだ構造を成している。入力IDT1の外側には入力用ボンディングパッド26が設けられ、電極構造列30側には接地用ボンディングパッド27が設けられている。
【0014】
第2段目の電極構造列30は、中央の出力IDT2の両側に一対の反射器34、35により挟んだ構造をしている。出力IDT2の電極構造列3側には接地用ボンディングパッド46が設けられ、第2の基板8における第1の基板7とは反対の端面に近い側には出力用ボンディングパッド47が設けられている。
【0015】
上述する第1段目の電極構造列3と第2段目の電極構造列30の間で発生する不要波や輻射波は、第1の基板7と第2の基板8を貼合わせることにより実質上皆無に等しくなる。なお、電極構造列3のボンディングパッド27と、電極構造列30のボンディングパッド46とは接合部を跨いで、それぞれワイヤ9により接続され、電極構造列3と電極構造列30が縦続接続されている。
【0016】
図2に本発明の一実施例の弾性表面波装置5を分離した概念図を示す斜視図である。第1段目の電極構造列3と第2段目の電極構造列30から発生する伝搬波は、圧電基板の表面を伝搬し各基板(第1の基板7と第2の基板8)の端部に到達する。しかし、第1の基板7と第2の基板8とは分離した異なる基板を接着することで、各基板で発生する伝搬波は接着部(接合部)により吸収されることから、第1段目の電極構造列3と第2段目の電極構造列30におよぼす不要波としての成分を抑制するものである。
【0017】
このことは、仮に電極構造列単位で異なる周波数のフィルタリングを行う素子形態を持つ弾性表面波装置5の場合にあっては、各電極構造から発生する異なる周波数を上述の接合部により遮断することから、個々別々の電極構造列相互間の音響波の分離を大幅に向上することができる。
【0018】
なお、本実施例では、第1段目の電極構造列3と第2段目の電極構造列30との2段の電極構造列を例として記載しているが、電極構造列が増えた場合には、各電極構造列間を接着するすることで同様の効果を奏することは言うまでもなく、電極構造列単位で異なる周波数のフィルタリングを行う素子形態を持つ弾性表面波装置5では、その周波数帯の制限を受けるものではない。また、実施例では共振器型の構造を例にしているが、トランスバーサル型の構造や、電極構造列それぞれが異なる構造であったり、電気機械結合係数が同じで構造も異なった構造を持つ弾性表面波装置であっても構わない。
【0019】
また、本実施例では圧電基板の材料に水晶基板を用いているが、水晶基板以外の圧電基板材料として、四ホウ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ランガライト、ダイアモンドなど、基板材料の制限を受けるものでも無く、異なる材料の圧電基板を接着して弾性表面波装置5を形成しても構わない。なお、圧電基板の接着剤の一例として、シリコン系やエポキシ系などの接着剤6が使われるが接着剤の種類に制約を受けるものではない。更に、圧電基板の接着部(接着剤)を弾性表面波の伝搬する主面より僅かに凸状態(特に図示しない)になるように接着剤6を形成することにより、弾性表面波装置5表面の伝搬波の抑制を実現することで本発明の効果効率をより向上することができる。
【0020】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、電極構造列間に表面波を吸収又は散乱することを目的とし、電極構造列を形成する圧電基板を一単位として、各圧電基板を接着することで、電極構造列間における不要波の影響を抑制することにより、特に高周波側の帯域外減衰量を低減することができる。また、仮に電極構造列単位で異なる周波数のフィルタリングを行うことを実現しようとする場合であっても、個々別々の電極構造列相互間の音響波の分離の向上も図ることで、小型化ながら減衰特性を満足する弾性表面波装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である弾性表面波装置の斜視図である。
【図2】 本発明の弾性表面波装置における不要波の反射概念を示す斜視図である。
【図3】 従来の弾性表面波装置における不要波の反射概念を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 入力IDT
2 出力IDT
3、30 電極構造列
5 弾性表面波装置
6 接着剤
7 第1の基板(圧電基板)
8 第2の基板(圧電基板)

Claims (1)

  1. 弾性表面波が伝搬する矩形状の一主面に1つの電極構造列が設けられている圧電基板が少なくとも2つ以上備えられており、
    前記各圧電基板は、隣り合う前記圧電基板の長辺の側面を対向させつつ並べて配置されており、
    隣り合う前記圧電基板の対向する側面全面が接着剤により接合されている弾性表面波装置であって、
    前記接着剤が、前記圧電基板の弾性表面波が伝搬する主面より凸状態であることを特徴とする弾性表面波装置。
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