JP4816816B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池に関し、特に燃料発生部材を有する燃料電池装置に関する。
近年、水素と空気中の酸素から電力を取り出す燃料電池の開発が盛んに行われている。燃料電池は、発電時の排出物が水のみである為、環境に優れた発電方式であるだけでなく、原理的に取り出せる電力エネルギーの効率が高い為、省エネルギーになり、さらに、発電時に発生する熱を回収することにより、熱エネルギーをも利用することができるといった特徴を有しており、地球規模でのエネルギーや環境問題解決の切り札として期待されている。
このような燃料電池は、例えば、固体ポリマーイオン交換膜を用いた固体高分子電解質膜、又はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いた固体酸化物電解質膜等を燃料極と酸化剤極とで両側から挟みこんだものを1つのセル構成としている。そして、セルには、燃料極に燃料ガスである水素を供給する水素流路、及び酸化剤極に酸化剤ガス例えば空気を供給する空気流路が設けられ、これらの流路を介して水素、空気をそれぞれ燃料極、酸化剤極に供給することで電気化学反応によって発電するものである(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1のような構成においては、水素流路が燃料極の表面に沿って形成され、水素流路に供給された水素は、該水素流路を進行するにつれて燃料極で消費される為、水素流路の上流と下流とで水素濃度が異なることとなる。この為、燃料極で発生する起電力は、該燃料極の場所により異なり、燃料極全体として取り出せる起電力は、燃料極内の起電力の低い部分の影響を受け低下する。すなわち、燃料電池の出力が低下し燃料効率が低下するという問題がある。
また、特許文献2は、ニッケルフェルトを備えた水素流路に水素ガスを供給するとともに、電池反応に使用されていない未反応水素ガスをリサイクルして燃料極に供給することを開示している。しかしながら、この特許文献2に開示の技術においても、水素は水素流路に沿って供給されているため、燃料電池の出力の効率化には結びつかない。
さらに、特許文献3は、固体高分子型燃料電池の空気極から発生した水蒸気を燃料極側に配置された水素生成機構に供給し、この水素生成機構から発生された水素を燃料極に供給する燃料電池システムを開示している。しかしながら、このシステムにおいても、水蒸気が一方向に供給されているので、水素生成機構による水素の発生が水蒸気の上流側と下流側で異なることになる。したがって、特許文献3の構成においても、燃料電池の出力の効率化は困難である。
一方、特許文献4は、固体酸化物燃料電池と、水と反応して水素ガスを発生する水素含有燃料とを有する燃料電池システムを開示している。このシステムにおいては、燃料極側で発生した水を利用して水素含有燃料から水素ガスを発生しており、この水素ガスは導管又は開口を通じて燃料電池の燃料極に供給される。
特開平5−36417号公報 特開平6−60888号公報 特開2009−99491号公報 特表2006−503414号公報
しかしながら、特許文献4は、燃料電池の出力の効率化を図るために水素含有燃料と燃料極を具体的にどのように配置するかについては何ら開示していない。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、簡単な構成で、燃料効率の高い燃料電池を提供することを目的とする。
上記目的は、下記の1から8の何れか1項に記載の発明によって達成される。
1.燃料極と酸化剤極との間に固体酸化物電解質膜が狭持された燃料電池であって、
前記燃料極で発生された水との化学反応によって燃料を発生する燃料発生部材を有し、
前記燃料発生部材の前記燃料を放出する放出面と、前記燃料極の前記燃料が供給される供給面とは、互いに対向して平行に配置され、
前記放出面は、前記燃料を面状に放出することを特徴とする燃料電池。
2.前記放出面と前記供給面とは、密着して配置されていることを特徴とする前記1に記載の燃料電池。
3.前記放出面と前記供給面の大きさは同一であることを特徴とする前記1又は前記2に記載の燃料電池。
4.前記燃料発生部材は、鉄によって構成されていることを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の燃料電池。
5.前記燃料発生部材の放出面とは反対側の面に接して設けられたヒータを有することを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の燃料電池。
6.前記ヒータによって前記燃料発生部材の全体の温度は、均一にされることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の燃料電池。
7.前記固体酸化物電解質膜は筒状であり、
前記酸化剤極は、前記固体酸化物電解質膜の内面に設けられ、
前記燃料極は、前記固体酸化物電解質膜の外面に設けられ、
前記固体酸化物電解質膜、前記酸化剤極及び前記燃料極で構成された筒状の構造体が前記燃料発生部材の内部に配置されていることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の燃料電池。
8.前記構造体が前記燃料発生部材の内部に複数配置されていることを特徴とする前記7に記載の燃料電池。
本発明によれば、簡単な構成で、燃料極の供給面全面に渡り均一な濃度の燃料を供給することができるので、燃料極で発生する起電力は、該燃料極の場所に依り異なることなく一定となる。その結果、起電力のばらつきによる出力の低下を抑え、燃料効率を高めることができる。
本発明に係る実施形態1における燃料電池の概略構成を示す模式図である。 本発明に係る実施形態2における燃料電池の概略構成を示す模式図である。 本発明に係る実施形態2における燃料電池の製造工程の概略を示す断面模式図である。 本発明に係る実施形態2の変形例における燃料電池の概略構成を示す模式図である。
以下、図面に基づいて、本発明に係る実施の形態における燃料電池を説明する。尚、本発明は、該実施の形態に限られない。
(実施形態1)
実施形態1における燃料電池の構成を図1を用いて説明する。図1は、実施形態1における燃料電池1の概略構成を示す模式図である。
燃料電池1は、図1に示すように、電解質膜101、燃料極102、酸化剤極103、燃料発生部材104、セパレータ105、及びヒータ110等から構成される。
燃料電池1は、電解質膜101の両面に燃料極102と酸化剤極103を接合したMEA(Membrane Electrode Assembly;膜・電極接合体)構造である。本実施形態の燃料電池1としては、固体酸化物燃料電池(SOFC)を用いる。
燃料極102側には、一方のセパレータ105の上に設けられたヒータ110の全面に接して、燃料極102に燃料を供給するための2次元に広がった平板状の燃料発生部材104が設けられている。酸化剤極103側には、酸化剤極103に酸化剤ガスを供給するための酸化剤流路107が他方のセパレータ105に形成されている。
本実施形態において、燃料とは水素であり、酸化剤ガスとは酸素を含有するガス、例えば空気である。
燃料電池1は、燃料発生部材104から燃料極102に水素を供給し、酸化剤流路107から酸化剤極103に酸素を供給することで生じる電気化学反応によって発電する。
電解質膜101の材料としては、例えば安定化イットリアジルコニウム(YSZ)を用いた固体酸化物電解質を用いる。
電解質膜101の成膜方法としては、電気化学蒸着法(CVD−EVD法;Chemical Vapor Deposition−Electrochemical Vapor Deposition)や、塗布法等を用いることができる。
燃料極102、酸化剤極103の形成方法としては、例えば蒸着法を用いることができる。
燃料発生部材104は、化学反応によって燃料を発生するFeやMg合金、分子の構造によって燃料を脱吸着できるカーボンナノチューブ等を用いることができるが、本実施形態においては、より好適なFeを用いる。また、燃料発生部材104は、燃料を発生させるだけでなく、燃料を吸蔵(吸着)できるものでもよい。この場合、燃料発生部材104から燃料を発生させた後、吸蔵(吸着)作業を行うことで、繰り返し燃料発生部材104を用いることができる。燃料である水素を吸蔵できる材料としては、Ni、Fe、Pd、V、Mg等を基材料とする水素吸蔵合金を用いることができる。
燃料発生部材104の燃料を放出する放出面104aと、燃料極102の燃料が供給される供給面102aとは、互いに対向して配置され、図示しないビーズ等のスペーサにより一定の間隔で平行に配置される。なお、本実施形態では、最も効率をよくするために、放出面104aと供給面102aの大きさは同一としている。
燃料発生部材104の全面に接して配置されたヒータ110により、燃料発生部材104全体の温度を一様に上昇させると、燃料が放出面104aから面状に放出される。このようにして、燃料発生部材104は、その放出面104aの全面から燃料極102の供給面102aの全面に向けて燃料を放出することができる。
燃料発生部材104として鉄(Fe)を用いた場合には、下記式(1)に示す化学反応によって、Feは燃料極で発生された水(HO)との反応により酸化鉄(Fe)に変化することで、水素を発生する。
4HO+3Fe→4H+Fe
また、燃料発生部材104の燃料発生速度は、放出面104a上の位置に依らず、略一定になるようにする。具体的には熱化学平衡を用いる。燃料発生部材104の温度を昇降させると、平衡状態からのずれに応じた燃料を発生させることができるので、燃料発生部材104全体の温度をヒータ110を用いて均一にすることで、場所に依らず一定の速度で燃料を発生させることができる。
また、化学平衡を用いると、燃料極102と燃料発生部材104との間の空間の電池起動時の燃料濃度を場所に依らず一定にしておくことでも、燃料発生部材104の燃料発生速度を一定にすることができる。これは、電池起動時の燃料濃度が場所に依らず一定であれば、電極から発生する電力が一定となる。つまり、燃料の消費量も場所に依らず一定となる。この場合、消費された燃料によって化学平衡がずれ、そのずれ量に応じた燃料が新たに、燃料発生部材104から発生する。燃料の消費量が場所に依らず一定なので、燃料発生部材104からの燃料発生速度も場所に依らず一定になる。
尚、電池起動時の燃料濃度を場所に依らず一定にする方法は、例えば燃料が気体や液体の場合、予め燃料極102と燃料発生部材104との間の空間に燃料を封入しておけばよい。燃料が気体や液体の場合、自然に拡散が起こり、封入した空間内での濃度が一定になる為、燃料濃度を場所に依らず一定にすることができる。
このように本発明に係る実施形態1における燃料電池1においては、燃料を発生する燃料発生部材104を燃料電池1の内部に設け、該燃料発生部材104の燃料を放出する放出面104aと燃料極102の燃料が供給される供給面102aを対向させ一定の間隔で平行に配置し、放出面104aは、その略全面から燃料を燃料極102の供給面102aに向けて面状に放出する構成としている。これにより、燃料極102の供給面102a全面に渡り均一な濃度の燃料を供給することができるので、燃料極102で発生する起電力は、該燃料極102の場所に依り異なることなく一定となる。その結果、起電力のばらつきによる出力の低下を抑え、燃料効率を高めることができる。
また、燃料発生部材104の燃料発生速度は、放出面104a上の位置に依らず、略一定になるようにしているので、起電力のばらつきによる出力の低下をさらに抑えることができ、燃料効率をより高めることができる。
尚、本実施形態においては、燃料発生部材104の燃料を放出する放出面104aと燃料極102の燃料が供給される供給面102aを対向させ一定の間隔で平行に配置する構成としたが、放出面104aと供給面102aを重ねて密着させる構成としてもよい。この場合、より小型で簡単な構成とすることができる。
(実施形態2)
実施形態2における燃料電池の構成を図2を用いて説明する。図2は、実施形態2における燃料電池1の概略構成を示す模式図である。尚、本実施形態における燃料電池1を構成する各部材の材料は、実施形態1の場合と概ね同様である。
燃料電池1は、図2に示すように、筒状の電解質膜101の内外面に酸化剤極103と燃料極102が成膜された複数の筒状のMEA構造体を燃料発生部材104の内部に配置する構成としている。酸化剤流路107は、筒状の酸化剤極103の中心部に形成されている。
図3に、このような構成の燃料電池1の製造方法の概略を示す。
先ず、燃料発生部材104の上下の面にそれぞれ複数の溝104mを形成する(図3(a))。
次に、燃料発生部材104に形成された溝104mの内面に沿って、燃料極102、電解質膜101、酸化剤極103を順次成膜し、構造体1Aを形成する(図3(b)〜図3(d))。燃料極102、電解質膜101、酸化剤極103の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法等を用いることができる。
次に、このようにして形成した構造体1Aを複数積層することで(図3(e))、複数の筒状のMEA構造体を備えた燃料電池1を製造することができる(図3(f))。
このような構成においては、燃料発生部材104の燃料を放出する放出面と燃料極102の燃料が供給される供給面とを容易に密着させることができるとともに、酸化剤流路107も同時に形成することができるので、実施形態1の場合の効果に加えて、さらに製造工程を簡略化することができる。
尚、本実施形態においては、MEA構造体を断面が矩形の筒状としたが、これに限定されることなく、例えば、図4に示すように、断面が円形の筒状としてもよい。この場合も、実施形態2の場合と同様の効果を得ることができる。
1 燃料電池
101 電解質膜
102 燃料極
103 酸化剤極
104 燃料発生部材
105 セパレータ
107 酸化剤流路
110 ヒータ

Claims (8)

  1. 燃料極と酸化剤極との間に固体酸化物電解質膜が狭持された燃料電池であって、
    前記燃料極で発生された水との化学反応によって燃料を発生する燃料発生部材を有し、
    前記燃料発生部材の前記燃料を放出する放出面と、前記燃料極の前記燃料が供給される供給面とは、互いに対向して平行に配置され、
    前記放出面は、前記燃料を面状に放出することを特徴とする燃料電池。
  2. 前記放出面と前記供給面とは、密着して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記放出面と前記供給面の大きさは同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
  4. 前記燃料発生部材は、鉄によって構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の燃料電池。
  5. 前記燃料発生部材の放出面とは反対側の面に接して設けられたヒータを有することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の燃料電池。
  6. 前記ヒータによって前記燃料発生部材の全体の温度は、均一にされることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の燃料電池。
  7. 前記固体酸化物電解質膜は筒状であり、
    前記酸化剤極は、前記固体酸化物電解質膜の内面に設けられ、
    前記燃料極は、前記固体酸化物電解質膜の外面に設けられ、
    前記固体酸化物電解質膜、前記酸化剤極及び前記燃料極で構成された筒状の構造体が前記燃料発生部材の内部に配置されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の燃料電池。
  8. 前記構造体が前記燃料発生部材の内部に複数配置されていることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池。
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