まず第1工程、すなわち、1,2−エポキシ−3−ブテンと水とを反応させて、3−ブテン−1,2−ジオールを得る工程について説明する。
1,2−エポキシ−3−ブテンは、例えば、酸素、有機過酸化物、過酸化水素等の酸化剤を用いてブタジエンをエポキシ化する方法(好ましい態様として、銀系触媒の存在下にブタジエンを酸素酸化する方法については、例えば特許第2854059号公報参照。)等の公知の方法により製造することができる。
1,2−エポキシ−3−ブテンと水との反応は、酸の存在下に実施することが好ましい。酸としては、硫酸;リン酸類;強酸性イオン交換樹脂;周期律表第5族元素および第6族元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を構成要素として含有するシリケート(以下、金属含有シリケートと略記する。);等が挙げられる。なかでも、リン酸類または金属含有シリケートが好ましい。
酸として、硫酸を用いる場合は、例えば、米国特許第5250743号公報に記載の方法に従い実施すればよい。また、酸として、強酸性イオン交換樹脂を用いる場合には、例えば、国際公開WO91/15469号公報に記載の方法に従い実施すればよい。
以下、酸として、リン酸類を用いる場合および金属含有シリケートを用いる場合について説明する。
まず、酸としてリン酸類を用いる場合について説明する。
リン酸類としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。好ましくは、リン酸、メタリン酸およびポリリン酸であり、より好ましくはリン酸が用いられる。リン酸類は、通常、市販のものを使用することができる。また、かかるリン酸類は、水溶液として用いてもよい。
リン酸類の使用量は、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して、通常0.001モル倍以上であれば、本発明の目的を達成することができる。その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して1モル倍以下である。
水の使用量は、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特になく、反応溶媒を兼ねて大過剰量、例えば、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して500モル倍を用いてもよい。
1,2−エポキシ−3−ブテンと水との反応は、通常は無溶媒または溶媒を兼ねて水を過剰量用いて実施されるが、有機溶媒の存在下に実施してもよい。有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;tert−ブタノール等の第三級アルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;などが挙げられる。有機溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して、100重量倍以下である。
1,2−エポキシ−3−ブテンと水との反応は、通常、1,2−エポキシ−3−ブテン、水および酸を接触、混合することにより実施され、その混合順序は特に制限されない。
通常は常圧条件下で反応を実施するが、減圧条件下や加圧条件下で実施してもよい。反応温度は、通常−20〜100℃の範囲であり、無溶媒または溶媒を兼ねて水を過剰量用いた場合には、0〜100℃の範囲が好ましい。
反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後、例えば、反応液に必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層をそのまま、あるいは必要に応じて塩基性水洗浄等の中和処理を行った後に、濃縮処理することにより、3−ブテン−1,2−ジオールを単離することができる。
水に不溶の有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;などが挙げられ、その使用量は特に制限されない。
塩基性水洗浄を行う場合に用いる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;などが通常用いられ、その濃度および使用量は特に限定されない。
次に、酸として、金属含有シリケートを用いる場合について説明する。
金属含有シリケートとは、周期律表第5族元素、第6族元素またはその両方を構成要件として含んだシリケートであれば、特に限定されない。ここで、周期律表第5族元素としては、例えばバナジウム、ニオブ、タンタル等が挙げられ、周期律表第6族元素としては、例えばタングステン、モリブデン、クロム等が挙げられ、バナジウム、モリブテンおよびタングステンが好ましく、バナジウムおよびモリブデンがより好ましい。
かかる金属含有シリケートは、例えば、特開2003−300722号公報、Applied Catalysis A:General 179,11(1999)およびJ.Chem.Soc.Chem.Commun.,2231(1995)等に記載の方法を用いて製造することができる。好ましくは、周期律表第5族金属、第6族金属、第5族元素を含む化合物および第6族元素を含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、金属または化合物と略記する。)と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物(以下、金属酸化物と略記する。)と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめる方法が用いられる。以下、該製造方法について説明する。
周期律表第5族金属としては、例えばバナジウム金属、ニオブ金属、タンタル金属が挙げられ、第6族金属としては、例えばタングステン金属、モリブデン金属、クロム金属が挙げられる。また、第5族元素を含む化合物としては、例えば、酸化バナジウム、バナジン酸アンモニウム、バナジウムカルボニル錯体、硫酸バナジウム、硫酸バナジウムエチレンジアミン錯体等のバナジウム化合物;酸化ニオブ、塩化ニオブ、ニオブカルボニル錯体等のニオブ化合物;酸化タンタル、塩化タンタル等のタンタル化合物;などが挙げられ、第6族元素を含む化合物としては、例えば、ホウ化タングステン、炭化タングステン、酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム、タングステンカルボニル錯体等のタングステン化合物;ホウ化モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン、モリブデンカルボニル錯体等のモリブデン化合物;酸化クロム、塩化クロム等のクロム化合物;などが挙げられる。
かかる金属または化合物の中でも、タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステン化合物、モリブデン化合物およびバナジウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、なかでもモリブデン金属、バナジウム金属、モリブデン化合物およびバナジウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることがさらに好ましい。これらの金属または化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、金属または化合物のなかには、水和物が存在するものがあるが、本発明には、水和物を用いてもよいし、無水物を用いてもよい。
かかる金属または化合物と過酸化水素とを反応させることにより、金属酸化物が得られるが、過酸化水素としては、通常、水溶液が用いられる。もちろん、過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよいが、取扱いがより容易であるという点で、過酸化水素水を用いることが好ましい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%程度の範囲である。過酸化水素水は、通常、市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水溶液を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
金属酸化物を調製する際の過酸化水素の使用量は、金属また化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
金属または化合物と過酸化水素との反応は、通常、水溶液中で実施されるが、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;メタノール、エタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
金属または化合物と過酸化水素との反応は、通常その両者を混合、接触させることにより行われ、金属または化合物と過酸化水素との接触効率を向上させるため、金属酸化物調製液中で金属または化合物が十分に分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。金属酸化物の調製時の調製温度は、通常−10〜100℃の範囲である。
金属または化合物と過酸化水素とを水中、有機溶媒中もしくは水と有機溶媒の混合溶媒中で反応させることにより、金属または化合物の全部もしくは一部が溶解し、金属酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができるが、該金属酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、本発明の金属含有シリケートを調製する原料として用いてもよいし、該調製液をそのまま用いてもよい。
ケイ素化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが通常は用いられる。その使用量は、通常、金属または化合物あるいはそれらと過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物中の金属原子1モルに対して、ケイ素原子が4モル倍以上であり、その上限は特にない。
有機テンプレートとしては、例えばアルキルアミン、第四級アンモニウム塩、ノニオン界面活性剤等が挙げられ、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩が好ましい。アルキルアミンとしては、例えばオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、エイコシルアミン等の炭素数8〜20のアルキル基で置換された一級アミン;前記一級アミンのアミノ基の窒素原子と結合する水素原子のうち一つが、例えばメチル基等のアルキル基で置換された、例えばメチルオクチルアミン等の二級アミン;前記二級アミンのアミノ基の窒素原子と結合する水素原子が、例えばメチル基等のアルキル基で置換された、例えばジメチルオクチルアミン等の三級アミン等が挙げられ、なかでも一級アミンがより好ましい。
第四級アンモニウム塩としては、アンモニウムイオン(NH4 +)の四つの水素原子が、同一もしくは相異なる四つの炭素数1〜18のアルキル基で置換された第四級アンモニウムイオンと、例えば水酸化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等のアニオンとから構成されるものが挙げられる。具体的には、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルオクチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム塩;塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化トリメチルオクチルアンモニウム等の塩化第四級アンモニウム塩;臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化トリメチルオクチルアンモニウム等の臭化第四級アンモニウム塩等が挙げられ、水酸化第四級アンモニウム塩が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール類等が挙げられる。
かかる有機テンプレートは、そのまま用いてもよいし、後述する水や親水性溶媒と混合して用いてもよい。有機テンプレートの使用量は、ケイ素化合物に対して、通常0.03〜1モル倍の範囲である。
有機テンプレートの存在下、前記金属酸化物と、ケイ素化合物との反応は、通常、溶媒の存在下に実施される。溶媒としては、例えば水、親水性有機溶媒の単独または混合溶媒が挙げられ、好ましくは水単独および水と親水性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の親水性アルコール溶媒;アセトニトリル等の親水性ニトリル溶媒;ジオキサン等の親水性エーテル溶媒;などが挙げられ、好ましくは親水性アルコール溶媒が挙げられ、なかでもメタノール、エタノールがより好ましい。かかる溶媒の使用量は、有機テンプレートに対して、通常1〜1000重量倍の範囲である。
反応温度は、通常0〜200℃の範囲である。
反応終了後、例えば、反応液から反応生成物を濾過等により分離し、分離した反応生成物を洗浄処理または焼成処理することにより、金属含有シリケートを製造することができる。
分離した反応生成物を洗浄処理する場合の洗浄溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール溶媒、水等が挙げられ、その使用量は、特に制限されない。
分離した反応生成物を焼成処理する場合の焼成温度としては、通常300〜700℃、好ましくは500〜600℃である。焼成時間は、通常0.5〜20時間である。なお、分離した反応生成物を洗浄処理した後、焼成処理してもよい。
かくして得られる金属含有シリケートは、通常、平均細孔径(窒素吸着法により測定した結果をBHJ法により算出)が4〜100オングストロームの細孔を有しており、また、その比表面積(窒素吸着法により測定した結果をBET多点法(p/p0=0.1)により算出)は、通常100m2/g以上である。
続いて、かかる金属含有シリケートと1,2−エポキシ−3−ブテンとの反応について説明する。
金属含有シリケートの使用量は、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して、0.001重量倍以上であれば、本発明の目的を達成することができる。その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して5重量倍以下である。
水の使用量は、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特になく、反応溶媒を兼ねて大過剰量、例えば、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して500モル倍を用いてもよい。
1,2−エポキシ−3−ブテンと水との反応は、通常は無溶媒または溶媒を兼ねて水を過剰量用いて実施されるが、有機溶媒の存在下に実施してもよい。有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;tert−ブタノール等の第三級アルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;などが挙げられる。有機溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、1,2−エポキシ−3−ブテンに対して、100重量倍以下である。
1,2−エポキシ−3−ブテンと水との反応は、通常、1,2−エポキシ−3−ブテン、水および酸を接触、混合することにより実施され、その混合順序は特に制限されない。
通常は常圧条件下で反応を実施するが、減圧条件下や加圧条件下で実施してもよい。反応温度は、通常−20〜100℃の範囲であり、無溶媒または溶媒を兼ねて水を過剰量用いた場合には、0〜100℃の範囲が好ましい。
反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後、例えば、反応液を濾過処理して、金属含有シリケートを分離した後、得られる濾液を濃縮処理もしくは晶析処理することにより、3−ブテン−1,2−ジオールを単離することができる。また、前記濾液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、3−ブテン−1,2−ジオールを単離することもできる。また、反応液から分離された金属含有シリケートは、そのままもしくは必要に応じて洗浄処理等を行った後、1,2−エポキシ−3−ブテンと水との反応に再使用することができる。
水に不溶の有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;などが挙げられ、その使用量は特に制限されない。
かくして得られた3−ブテン−1,2−ジオールは、そのまま、もしくは例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段によりさらに精製した後に、次の第2工程に供することができる。もちろん、3−ブテン−1,2−ジオールを単離することなく、溶液のまま第2工程に供してもよい。
続いて、第2工程すなわち、3−ブテン−1,2−ジオールとメタンチオールとを反応させて、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを得る工程について説明する。
メタンチオールは、一般には、メタノールと硫化水素とから合成されるが、市販のものを使用することができる。メタンチオールは、ガス状のものを用いてもよいし、液状のものを用いてもよい。液状のメタンチオールは、例えば、ガス状のメタンチオールを、その沸点(6℃)以下に冷却した容器内に導入して、凝縮させる方法等により調製することができる。
メタンチオールの使用量は、3−ブテン−1,2−ジオールに対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、3−ブテン−1,2−ジオールに対して、10モル倍以下である。
3−ブテン−1,2−ジオールとメタンチオールとの反応は、通常、無溶媒で実施されるが、溶媒の存在下に実施してもよい。溶媒としては、付加反応を阻害しないものであれば特に制限無く用いることができ、例えば、水;ヘキサン、ヘプタン、トルエン等の炭化水素溶媒;クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;tert−ブタノール等の第三級アルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;などの単独または混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、3−ブテン−1,2−ジオールに対して100重量倍以下である。
反応は、減圧、常圧、加圧いずれでも実施可能であるが、メタンチオールの沸点が6℃であり常温では気体であるため、通常は、常圧または加圧の条件下で実施する。
3−ブテン−1,2−ジオールとメタンチオールとの反応は、触媒の存在下に実施することが好ましく、触媒としては、例えば有機過酸化物、ホウ素化合物等の公知の触媒が挙げられる。かかる有機過酸化物やホウ素化合物等の公知の触媒を用いる場合は、例えば、J. of Agricultural and Food Chemistry, 23, 1137(1975)、欧州公開特許第1260500号公報等に記載の方法に従い実施することができる。
また、本工程の触媒としては、アゾ化合物を用いることもできる。本工程において、かかるアゾ化合物を触媒として用いることが好ましい。ここで、アゾ化合物とは、分子内にアゾ結合(−N=N−)を有し、分解温度が250℃以下の化合物を意味し、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノイックアシッド、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド等のアゾニトリル類;アゾビスイソブタノールジアセテート、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソ酪酸エチル等のアゾエステル類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾアミジン類;2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾイミダゾリン類;1,1’−アゾビスホルムアミド、1,1’−アゾビス(N−メチルホルムアミド)、1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)等のアゾアミド類;アゾ−tert−ブタン等のアゾアルキル類;などが挙げられ、入手性の点から好ましくはアゾニトリル類、アゾエステル類、アゾアミジン類およびアゾイミダゾリン類が用いられる。かかるアゾ化合物は、通常市販されているものが用いられる。
アゾ化合物の使用量は、3−ブテン−1,2−ジオールに対して、通常0.001モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、3−ブテン−1,2−ジオールに対して、0.2モル倍以下である。
また、本工程の触媒として、含窒素芳香族化合物および脂肪族カルボン酸化合物を用いることもできる。本工程において、かかる含窒素芳香族化合物および脂肪族カルボン酸化合物を触媒として用いることも好ましい。
含窒素芳香族化合物としては、芳香環の構成原子のうち少なくとも1つが窒素原子であって、単環状または縮合環状の炭素数3〜20の複素芳香族化合物であれば、特に限定されない。かかる含窒素芳香族化合物としては、例えばピリジン、ピペリジン、ピラジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、フェナンスロリン、オキサゾール、チアゾール、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。また、これらの化合物上に、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基;アミノ基;カルバモイル基;などの置換基を有していてもよく、かかる置換基が結合した化合物の具体例としては、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、2,3,5−コリジン、2,4,6−コリジン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸メチル、N−メチルイミダゾール、2−クロロキノリン等が挙げられる。かかる含窒素芳香族化合物のうち、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、2,3,5−コリジン、2,4,6−コリジン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸メチル等の置換されていてもよいピリジン化合物が好ましく用いられる。これらの含窒素芳香族化合物は、通常、市販されているものが用いられる。
脂肪族カルボン酸化合物としては、少なくとも1つのカルボキシ基を有する炭素数1〜20の脂肪族化合物であれば、特に限定されない。かかる脂肪族カルボン酸化合物としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、シュウ酸、乳酸、コハク酸、アジピン酸などが挙げられる。かかる脂肪族カルボン酸化合物は、通常、市販されているものが用いられる。
含窒素芳香族化合物の使用量は、3−ブテン−1,2−ジオールに対して、通常0.001モル倍以上であれば、本発明の目的を達成することができる。その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、3−ブテン−1,2−ジオールに対して、1モル倍以下である。また、脂肪族カルボン酸化合物の使用量は、含窒素芳香族化合物に対して、通常、0.3〜10モル倍の範囲である。かかる含窒素芳香族化合物と脂肪族カルボン酸化合物とは、予め混合しておいてもよい。
反応温度は、用いる触媒の種類や量により異なるが、あまり低過ぎると付加反応が進行しにくく、また反応温度があまり高過ぎると原料3−ブテン−1,2−ジオールや生成物の重合等副反応が進行する恐れがあるため、通常−10〜100℃、好ましくは0〜50℃の範囲である。
3−ブテン−1,2−ジオールとメタンチオールとの反応は、通常、触媒の存在下に、3−ブテン−1,2−ジオールとメタンチオールとを混合することにより実施され、その混合順序は特に限定されない。常圧条件で実施する場合は、通常、触媒と3−ブテン−1,2−ジオールとの混合物を所定温度に調整し、これにガス状のメタンチオールを吹き込む方法により、反応が実施される。加圧条件で実施する場合は、例えば、触媒と3−ブテン−1,2−ジオールとをオートクレーブ等の密閉可能な容器に加えて、該容器を密閉した後、所定温度でガス状のメタンチオールを圧入する方法、触媒と3−ブテン−1,2−ジオールと液状のメタンチオールとを前記密閉容器に加えて、該容器を密閉した後、所定温度に調整する方法等により反応が実施される。3−ブテン−1,2−ジオールとメタンチオールと触媒を混合した後、所定温度に調整して反応させる場合や3−ブテン−1,2−ジオールとメタンチオールとを混合しておき、これに触媒を加えて反応させる場合には、円滑に反応を開始させるため、3−ブテン−1,2−ジオールとメタンチオールとを含む混合物中のメタンチオールを、3−ブテン−1,2−ジオールに対して、4モル倍以下としておくことが好ましい。
反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の通常の分析手段により確認することができる。
触媒として、親油性の触媒を用いた場合には、反応終了後、例えば、反応混合物から残存するメタンチオールを除去した後、必要に応じて、水や非極性溶媒を加え、抽出処理し、得られる4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを含む水層を濃縮処理することにより、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを単離することができる。また、触媒として、親水性の触媒を用いた場合には、例えば反応混合物から残存するメタンチオールを除去した後、必要に応じて、水や水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを含む有機層を濃縮処理することにより、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを単離することができる。
反応混合物から残存するメタンチオールを除去する方法としては、例えば、反応混合物を濃縮処理する方法、反応混合物に窒素ガス等の不活性ガスを吹き込む方法等が挙げられる。
非極性溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。水に不溶の有機溶媒としては、例えば前記炭化水素溶媒のほか、例えば酢酸エチル等のエステル溶媒、例えばメチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
また、触媒として、含窒素芳香族化合物および脂肪族カルボン酸化合物を用いた場合には、反応終了後、例えば、反応混合物から残存するメタンチオールを除去し、必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを含む有機層を水、酸性水および/またはアルカリ水で洗浄した後、濃縮処理することにより、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを単離することができる。
得られた4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールは、そのまま、もしくは例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段によりさらに精製した後に、次の第3工程に供することができる。もちろん、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを単離することなく、溶液のまま供してもよい。
最後に、第3工程すなわち、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを酸化して、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸を得る工程について説明する。
本発明においては、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの分子内の1級アルコール部位の酸化が、2級アルコール部位の酸化やスルフィド部位の酸化よりも、概して優先的に進行する。
4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを酸化して、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸を得る方法としては、例えば、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールをSwern酸化した後、硝酸銀酸化する方法;4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸に変換する能力を有する微生物の菌体または菌体処理物を、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールに作用させる方法;等が挙げられる。好ましくは、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸に変換する能力を有する微生物の菌体または菌体処理物を、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールに作用させる方法が挙げられる。
4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールをSwern酸化した後、硝酸銀酸化する方法は、例えばTetrahedron,48,6043(1992)に記載の方法に従い実施することができる。
4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸に変換する能力を有する微生物の菌体または菌体処理物を、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールに作用させる方法について、以下説明する。
4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸に変換する能力を有する微生物の菌体または菌体処理物としては、例えば、アルカリジェネス・ファエカリス(Alcaligenes faecalis)、アルカリジェネス・デニトリフィカンス(Alcaligenes denitrificans)、アルカリジェネス・エウトロパス(Alcaligenes eutrophus)、アルカリジェネス・エスピー(Alcaligenes sp.)、アルカリジェネス・キシロソキシダンス(Alcaligenes xylosoxydans)等のアルカリジェネス属に属する微生物;
バシラス・アルベイ(Bacillus alvei)、バシラス・バディウス(Bacillus badius)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バシラス・ファーマス(Bacillus firmus)、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・マセランス(Bacillus macerans)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシラス・モリタイ(Bacillus moritai)、バシラス・ミコイデス(Bacillus mycoides)、バシラス・ポリミキシア(Bacillus polymyxa)、バシラス・プミルス(Bacillus pumilus)、バシラス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、バシラス・サチルス(Bacillus subtilis)、バシラス・チューリンゲネシス(Bacillus thuringenesis)、バシラス・バリダス(Bacillus validus)等のバシラス属に属する微生物;
シュードモナス・アウリキュラリス(Pseudomonas auricularis)、シュードモナス・アゾトフォルマンス(Pseudomonas azotoformans)、シュードモナス・キャリョフィリ(Pseudomonas caryophylli)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、シュードモナス・デニトリカンス(Pseudomonas denitrificans)、シュードモナス・ディミヌタ(Pseudomonas diminuta)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi)、シュードモナス・フルバ(Pseudomonas fulva)、シュードモナス・メンドーシナ(Pseudomonas mendocina)、シュードモナス・ムタビリス(Pseudomonas mutabilis)、シュードモナス・ニトロレヂュセンス(Pseudomonas nitroreducens)、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)、シュードモナス・オバリス(Pseudomonas ovalis)、シュードモナス・オキサラティクス(Pseudomonas oxalaticus)、シュードモナス・プランタリイ(Pseudomonas plantarii)、シュードモナス・シュードアルカリジェネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・プトレファシエンス(Pseudomonas putrefaciens)、シュードモナス・リボフラビナ(Pseudomonas riboflavina)、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)、シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea)、シュードモナス・シンクサンタ(Pseudomonas synxantha)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・タバシ(Pseudomonas tabaci)、シュードモナス・タエトロレンス(Pseudomonas taetrolens)、シュードモナス・ベシキュラリス(Pseudomonas vesicularis)等のシュードモナス属に属する微生物;
ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)等のロドバクター属に属する微生物;および、
ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス・グロベルルス(Rhodococcus groberulus)、ロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)等のロドコッカス属に属する微生物;等の菌体または菌体処理物を挙げることができる。
さらに具体的には例えば、アルカリジェネス・ファエカリス(Alcaligenes faecalis)IFO13111t、アルカリジェネス・デニトリフィカンス(Alcaligenes denitrificans)JCM5490、アルカリジェネス・エウトロパス(Alcaligenes eutrophus)ATCC43123、アルカリジェネス・エスピー(Alcaligenes sp.)IFO14130、アルカリジェネス・キシロソキシダンス(Alcaligenes xylosoxydans)IFO15125t、バシラス・アルベイ(Bacillus alvei)IFO3343t、バシラス・バディウス(Bacillus badius)ATCC14574t、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)IFO12334、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)JCM2503t、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)ATCC13403、バシラス・コアギュランス(Bacillus coagulans)JCM2257t、バシラス・ファーマス(Bacillus firmus)JCM2512t、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)JCM2511t、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)IFO12195、バシラス・マセランス(Bacillus macerans)JCM2500t、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IFO12108、バシラス・モリタイ(Bacillus moritai)ATCC21282、バシラス・ミコイデス(Bacillus mycoides)IFO3039、バシラス・ポリミキシア(Bacillus polymyxa)IFO3020、バシラス・プミルス(Bacillus pumilus)IFO12092t、バシラス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)IFO3341、バシラス・サチルス(Bacillus subtilis)JCM1465t、バシラス・チューリンゲネシス(Bacillus thuringenesis)ATCC13366、バシラス・バリダス(Bacillus validus)IFO13635、シュードモナス・アウリキュラリス(Pseudomonas auricularis)IFO13334t、シュードモナス・アゾトフォルマンス(Pseudomonas azotoformans)JCM2777t、シュードモナス・キャリョフィリ(Pseudomonas caryophylli)IFO13591、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)IFO3121t、シュードモナス・デニトリカンス(Pseudomonas denitrificans)IAM1923、シュードモナス・ディミヌタ(Pseudomonas diminuta)JCM2788t、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)IFO14160t、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi)IFO3458t、シュードモナス・フルバ(Pseudomonas fulva)JCM2780t、シュードモナス・メンドーシナ(Pseudomonas mendocina)IFO14162、シュードモナス・ムタビリス(Pseudomonas mutabilis)ATCC31014、シュードモナス・ニトロレヂュセンス(Pseudomonas nitroreducens)JCM2782t、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)IFO135835、シュードモナス・オバリス(Pseudomonas ovalis)IFO12688、シュードモナス・オキサラティクス(Pseudomonas oxalaticus)IFO13593t、シュードモナス・プランタリイ(Pseudomonas plantarii)JCM5492t、シュードモナス・シュードアルカリジェネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)JCM5968t、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO3738、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IAM1002、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IAM1090、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IAM1236、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)ATCC39213、シュードモナス・プトレファシエンス(Pseudomonas putrefaciens)IFO3910、シュードモナス・リボフラビナ(Pseudomonas riboflavina)IFO13584t、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ATCC53617、シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea)JCM2783t、シュードモナス・シンクサンタ(Pseudomonas synxantha)IFO3913t、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)IFO14055、シュードモナス・タバシ(Pseudomonas tabaci)IFO3508、シュードモナス・タエトロレンス(Pseudomonas taetrolens)IFO3460、シュードモナス・ベシキュラリス(Pseudomonas vesicularis)JCM1477t、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)ATCC17023、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)IFO12320、ロドコッカス・グロベルルス(Rhodococcus groberulus)ATCC15610、ロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)JCM3202t、ロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC15610およびロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)ATCC19148等の菌体または菌体処理物が挙げられる。
かかる微生物としては、アルカリジェネス(Alcaligenes)属、バシラス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドバクター(Rhodobacter)属およびロドコッカス(Rhodococcus)属からなる群より選ばれる少なくとも1種の微生物であることが好ましい。また、当該微生物は、バシラス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、およびロドコッカス(Rhodococcus)属からなる群より選ばれる少なくとも1種の微生物であることがより好ましく、シュードモナス(Pseudomonas)属、およびロドコッカス(Rhodococcus)属からなる群より選ばれる少なくとも1種の微生物であることがさらに好ましく、ロドコッカス(Rhodococcus)属の微生物であることが特に好ましい。
かかる微生物は、炭素源、窒素源、有機塩、無機塩等を適宜含有する各種の微生物を培養するための培地を用いて培養すればよい。
当該培地に含まれる炭素源としては、例えば、グルコース、スクロース、グリセロール、でんぷん、有機酸および廃糖蜜が挙げられ、窒素源としては、例えば、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、カザミノ酸、麦芽エキス、大豆粉、コーンスティプリカー(corn steep liquor)、綿実粉、乾燥酵母、硫安および硝酸ナトリウムが挙げられ、有機塩および無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム、炭酸カルシウム、酢酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸第1鉄および塩化コバルト等が挙げられる。
培養方法としては、例えば、固体培養、液体培養(試験管培養、フラスコ培養、ジャーファーメンター培養等)が挙げられる。
培養温度および培養液のpHは、かかる微生物が生育する範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、培養温度は約15〜45℃の範囲、培養液のpHは約4〜8の範囲を挙げることができる。培養時間は、培養条件により適宜選択することができるが、通常、約1〜7日間である。
かかる微生物の菌体は、そのまま用いることができる。かかる微生物の菌体をそのまま用いる方法としては、(1)培養液をそのまま用いる方法、(2)培養液の遠心分離等により菌体を集め、集められた菌体(必要に応じて、緩衝液または水で洗浄した後の湿菌体)を用いる方法等を挙げることができる。
また、かかる微生物の菌体処理物を用いることもできる。当該菌体処理物としては、例えば、培養して得られた菌体を有機溶媒(アセトン、エタノール等)処理したもの、凍結乾燥処理したもの若しくはアルカリ処理したもの、または、菌体を物理的もしくは酵素的に破砕したもの、または、これらのものから分離・抽出された粗酵素等を挙げることができる。さらに、菌体処理物には、前記処理を施した後、公知の方法により固定化処理したものも含まれる。
かかる微生物の菌体または菌体処理物を、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールに作用させることにより、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールが酸化され、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸が得られる。
通常、水の存在下で、かかる微生物の菌体または菌体処理物を、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールに作用させる。この場合の水は、緩衝液の形態であってもよい。当該緩衝液に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸のアルカリ金属塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩;などが挙げられる。
また、水および有機溶媒の存在下で、かかる微生物の菌体または菌体処理物を、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールに作用させてもよい。かかる有機溶媒としては、疎水性有機溶媒であってもよいし、親水性有機溶媒であってもよい。疎水性有機溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル溶媒;n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−オクチルアルコール等の疎水性アルコール溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル等の疎水性エーテル溶媒;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;およびこれらの混合溶媒が挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等の親水性アルコール溶媒;アセトン等の親水性ケトン溶媒;ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの等の親水性エーテル溶媒;およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
微生物の菌体または菌体処理物を、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールに作用させる際の水層のpHは通常3〜10の範囲であり、反応温度は通常0〜60℃の範囲であり、反応時間は通常0.5時間〜10日間の範囲である。
反応液中の微生物の菌体または菌体処理物の濃度は、通常0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜20重量%の範囲である。
反応液中の4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの濃度は、通常、50%(w/v)以下である。
微生物の菌体または菌体処理物と4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールとの反応は、通常その両者を混合することにより実施される。また、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを反応系に連続的または逐次的に加えて反応を実施してもよい。
また、必要に応じて反応系に、例えば、グルコース、シュークロース、フルクトース等の糖類、または、TritonX−100もしくはTween60等の界面活性剤等を加えることもできる。
反応終了後、反応液に、抽出処理、濃縮処理等の通常の後処理を施すことにより、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸を単離することができる。得られた2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸は、必要に応じて、カラムクロマトグラフィ、蒸留等の通常の精製手段により、さらに精製することもできる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、金属含有シリケートの比表面積および平均細孔径は、いずれも、Quantachrome社製Autosorb−6を用い、150℃、1.35×10−5Kg/cm−2(0.013kPa相当)の脱気条件下で窒素吸着法により測定した。そして、比表面積についてはBET多点法(p/p0=0.1)を用い、平均細孔径についてはBHJ法を用いて、それぞれ算出した。
参考例1
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、タングステン金属(粉末)5gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを30分かけて滴下し、同温度で2時間保持し、タングステン酸化物含有溶液を得た。該タングステン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、40重量%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液20gを10分かけて滴下した。その後、内温25℃まで冷却し、同温度で攪拌を継続していると、30分程度で固体が析出してスラリー状となった。そのまま同温度で24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、130℃で24時間乾燥し、白色固体38.0gを得た。この白色固体を550℃で6時間焼成し、白色のタングステン含有シリケート16.5gを得た。
XRDスペクトル:d値3.77オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示した。酸化タングステンに帰属されるシャープなピークは見られなかった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3478,1638,1078,960,806、557cm−1
元素分析値;W:9.8%,Si:39.5%
比表面積:543m2/g、平均細孔径:16オングストローム
参考例2
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、タングステン金属(粉末)5gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを30分かけて滴下し、同温度で2時間保持し、タングステン酸化物含有溶液を得た。該タングステン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、10重量%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液40gを10分かけて滴下した。その後、内温25℃まで冷却し、同温度で攪拌を継続していると、30分程度で固体が析出してスラリー状となった。そのまま同温度で24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、130℃で24時間乾燥し、白色固体38.0gを得た。この白色固体を550℃で6時間焼成し、白色のタングステン含有シリケート17.3gを得た。
XRDスペクトル:d値3.76オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示した。酸化タングステンに帰属されるシャープなピークがわずかに見られた。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3480,1638,1078,956,800cm−1
元素分析値;W:11.0%,Si:31.4%
比表面積:573m2/g、平均細孔径:22オングストローム
参考例3
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、モリブデン金属(粉末)2gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを1時間かけて滴下し、同温度で1時間保持し、モリブデン酸化物含有溶液を得た。該モリブデン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、ドデシルアミン10gを10分かけて滴下した。すぐに固体が析出してスラリー状となった。内温25℃に冷却し、さらに24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、110℃で6時間乾燥し、次いで550℃で6時間焼成し、白色のモリブデン含有シリケート15.5gを得た。
XRDスペクトル:d値3.8オングストロームに頂点を持つブロードなピークと酸化モリブデンに帰属されるシャープなピークの混合したスペクトルであった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3470,1640,1090,956,915,802cm−1
元素分析値;Mo:13.9%,Si:32.4%
比表面積:171m2/g、平均細孔径:73オングストローム
これらの結果から、得られた白色のモリブデン含有シリケートには、酸化モリブデンが混じっていることがわかった。
参考例4
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、モリブデン金属(粉末)2.5gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを1時間かけて滴下し、同温度で1時間保持し、モリブデン酸化物含有溶液を得た。該モリブデン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、40重量%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液20gを10分かけて滴下した。15分程度経過すると固体が析出してスラリー状となった。イオン交換水200gを加え、内温25℃に冷却し、24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、110℃で6時間乾燥し、次いで550℃で6時間焼成し、白色のモリブデン含有シリケート15.9gを得た。
XRDスペクトル:d値3.79オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示した。酸化モリブデンに帰属されるシャープなピークは見られなかった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3470,1640,1080,956,913,796cm-1
元素分析値;Mo:5.22%,Si:37.0%
比表面積:649m2/g、平均細孔径:22オングストローム
参考例5
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、バナジウム金属(粉末)1.3gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、30重量%過酸化水素水溶液15gを30分かけて滴下し、同温度で1時間保持し、バナジウム酸化物含有溶液を得た。該バナジウム酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、40重量%テトラ−n−プロピルアミン水溶液40gを10分かけて滴下した。その後、内温25℃まで冷却し、攪拌を継続していると、30分程度で固体が析出してスラリー状となったが、同温度でさらに24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、130℃で8時間乾燥し、次いで550℃で6時間焼成し、褐色のバナジウム含有シリケート16.0gを得た。
XRDスペクトル:d値3.85オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示した。酸化バナジウムに帰属されるシャープなピークは見られなかった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:1050,956,794,629cm-1
元素分析値;V:5.56%,Si:36.1%
比表面積:708m2/g、平均細孔径:27オングストローム
実施例1
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、参考例4で調製したモリブデン含有シリケート30mg、1,2−エポキシ−3−ブテン310mgおよび蒸留水3gを仕込み、内温25℃で5時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液にテトラヒドロフラン10gを加え、ガスクロマトグラフィ内部標準法により分析したところ、3−ブテン−1,2−ジオールの収率は93%であった。
実施例2
実施例1において、参考例4で調製したモリブデン含有シリケートに代えて、参考例5で調製したバナジウム含有シリケートを30mg用いることと、1,2−エポキシ−3−ブテンを300mg用いること以外は、実施例1と同様に実施した。3−ブテン−1,2−ジオールの収率は94%であった。
実施例3
実施例1において、参考例4で調製したモリブデン含有シリケートに代えて、参考例3で調製したモリブデン含有シリケートを30mg用いることと、1,2−エポキシ−3−ブテンを330mg用いること以外は、実施例1と同様に実施した。3−ブテン−1,2−ジオールの収率は95%であった。
実施例4
実施例1において、参考例4で調製したモリブデン含有シリケートに代えて、参考例1で調製したタングステン含有シリケートを30mg用いること以外は、実施例1と同様に実施した。3−ブテン−1,2−ジオールの収率は81%であった。
実施例5
実施例1において、参考例4で調製したモリブデン含有シリケートに代えて、参考例2で調製したタングステン含有シリケートを30mg用いること以外は、実施例1と同様に実施した。3−ブテン−1,2−ジオールの収率は82%であった。
実施例6
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、参考例5で調製したバナジウム含有シリケート30mg、1,2−エポキシ−3−ブテン300mgおよび蒸留水3gを仕込み、内温25℃で5時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液にテトラヒドロフラン10gを加え、バナジウム含有シリケートをデカンテーションにより除いた後、得られた溶液をガスクロマトグラフィ内部標準法により分析したところ、3−ブテン−1,2−ジオールの収率は94%であった。
実施例7
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、実施例6でデカンテーションにより回収したバナジウム含有シリケートの全量、1,2−エポキシ−3−ブテン300mgおよび蒸留水3gを仕込み、内温25℃で5時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液にテトラヒドロフラン10gを加え、ガスクロマトグラフィ内部標準法により分析したところ、3−ブテン−1,2−ジオールの収率は87%であった。
実施例8
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、85%リン酸30mg、1,2−エポキシ−3−ブテン300mgおよび蒸留水3gを仕込み、内温5℃で5時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液にテトラヒドロフラン10gを加え、ガスクロマトグラフィ内部標準法により分析したところ、3−ブテン−1,2−ジオールの収率は92%であった。
実施例9
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、メタリン酸30mg、1,2−エポキシ−3−ブテン300mgおよび蒸留水3gを仕込み、内温25℃で5時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液にテトラヒドロフラン10gを加え、ガスクロマトグラフィ内部標準法により分析したところ、3−ブテン−1,2−ジオールの収率は86%であった。
実施例10
磁気回転子を付した100mLフラスコに、3−ブテン−1,2−ジオール880mgと2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10mgを加え、内温25℃で攪拌下に、ガス状のメタンチオールを約10〜20mL/分の速度で1時間かけて吹き込んだ。同温度で、さらに1時間攪拌後に、窒素ガスを吹き込むことにより、残存するメタンチオールを除去し、1245mgの無色オイルを得た。このオイルをガスクロマトグラフィ面積百分率法により分析したところ、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの収率は73%であった。
実施例11
磁気回転子を付した100mLオートクレーブに、3−ブテン−1,2−ジオール1300mgと2,2’−アゾビスイソブチロニトリル20mgを加え、内温0℃に冷却した後、メタンチオールを1400mg加えた。オートクレーブを密閉したのち、30℃に保温して2時間攪拌した。オートクレーブの内圧(ゲージ圧)は当初2kg/cm2(0.2MPa相当)であり、反応終了時には1kg/cm2(0.1MPa相当)であった。反応後、常圧に戻し、溶液中に窒素ガスを吹き込むことにより、残存するメタンチオールを除去し、1790mgの無色オイルを得た。このオイルをガスクロマトグラフィ面積百分率法により分析したところ、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの収率は、67%であった。
実施例12
磁気回転子を付した100mLオートクレーブに、3−ブテン−1,2−ジオール1300mgと2,2’−アゾビスイソブチロニトリル20mgを加え、内温0℃に冷却した後、メタンチオールを1400mg加えた。オートクレーブを密閉したのち、40℃に保温して4時間攪拌した。オートクレーブの内圧(ゲージ圧)は、当初2.5kg/cm2(0.25MPa相当)であり、反応終了時には0.5kg/cm2(0.05MPa相当)であった。反応後、常圧に戻し、溶液中に窒素ガスを吹き込むことにより、残存するメタンチオールを除去し、1990mgの無色オイルを得た。このオイルをガスクロマトグラフィ面積百分率法により分析したところ、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの収率は94%であった。
実施例13
磁気回転子を付した50mLオートクレーブに、3−ブテン−1,2−ジオール2000mgと2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]20mgを加え、内温0℃に冷却した後、メタンチオールを1500mg加えた。オートクレーブを密閉したのち、40℃に保温して4時間攪拌した。オートクレーブの圧力(ゲージ圧)は当初2.5kg/cm2(0.25MPa相当)であり、反応終了時には0.5kg/cm2(0.05MPa相当)であった。反応後、常圧に戻し、溶液中に窒素ガスを吹き込むことにより、残存するメタンチオールを除去し、酢酸エチル10gで希釈した。得られた溶液をガスクロマトグラフィ内部標準法により分析したところ、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの収率は94%であった。
実施例14
実施例13において、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]に代えて、アゾビスイソ酪酸メチルを用いる以外は実施例13と同様に実施し、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールを含む溶液を得た。得られた溶液をガスクロマトグラフィ内部標準法により分析したところ、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの収率は98%であった。
実施例15
磁気回転子を付した50mLオートクレーブに、3−ブテン−1,2−ジオール2000mgとピリジン9mgと酢酸14mgとを加え、内温0℃に冷却した後、メタンチオールを1500mg加えた。オートクレーブを密閉したのち、40℃に保温して4時間攪拌した。オートクレーブの内圧(ゲージ圧)は当初2.5kg/cm2(0.25MPa相当)であり、反応終了時には0.5kg/cm2(0.05MPa相当)であった。反応後、常圧に戻し、溶液中に窒素ガスを吹き込むことにより、残存するメタンチオールを除去し、酢酸エチル10gで希釈した。この溶液をガスクロマトグラフィ内部標準法により分析したところ、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの収率は94%であった。
実施例16
実施例10で得られた無色オイルに、4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオールの濃度が10%(w/v)となるように水を加えた後、当該混合物から不溶分(即ち、アゾビスイソブチロニトリル)を濾過操作によって除去することにより、10%(w/v)の4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオール水溶液を得た。
試験管に滅菌済み培地(1Lの水に、グルコース20g、ポリペプトン5g、酵母エキス3g、肉エキス3g、硫酸アンモニウム0.2g、リン酸2水素カリウム1gおよび硫酸マグネシウム7水和物0.5gを加えた後、pHを7.0に調整したもの)5mlを入れ、これに表1〜4に示された各種の菌体を植菌した。これを30℃で好気条件下、振盪培養した。培養終了後、遠心分離により菌体を分離することにより、生菌体を得た。ねじ口試験管に0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7)を2ml入れ、これに上記の生菌体を加えた後、懸濁した。当該懸濁液に、上記10%(w/v)の4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジオール水溶液を0.2ml(即ち、4−(メチルチオ)ブタン−1,2―ジオールが、最終濃度として1%(w/v)となるように)を添加した後、得られた混合物を30℃で2〜3日間振盪させた。反応終了後、反応液を1mlサンプリングした。当該サンプリング液から菌体を除去した後、生成した2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸の量を液体クロマトグラフィにより分析した。得られた結果を表1〜4に示す。
なお、液体クロマトグラフィの分析条件は以下のとおりである。
カラム:Cadenza CD−C18(4.6mmφ×15cm,3μm)(Imtakt社製)
移動相:A液 0.1%トリフルオロ酢酸水溶液,B液 メタノール
グラジエント条件: 0−10分 A液/B液=80/20(一定)
10−20分 10分かけて、A液/B液=50:50へ
20−30分 A液/B液=50:50(一定)
30−30.1分 0.1分かけて、A液/B液=80:20へ
30.1−50分 A液/B液=80/20(一定)
流量:0.5mL/分,カラム温度:40℃,検出波長:220nm