JP4815375B2 - チタン酸ナノシート分散液 - Google Patents

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Description

本発明は、チタン酸ナノシート分散液、その固体、及びそれらの製造方法に関する。
チタン酸化物は、セラミックスや複合酸化物等の原料や光触媒材料等として、工業的に広く用いられている。このチタン酸化物には各種の形態があるが、チタン酸化物の中には、従来のアナターゼ型やルチル型のチタニアではなく、チタン酸又はその塩を含有する厚さがナノスケールのシート、すなわちチタン酸ナノシートを形成するものがある。
このチタン酸ナノシートは、層状チタン化合物をソフト化学的な処理により結晶構造の基本単位である層にまで剥離することにより得られ、分子レベルの厚み(nmレベル)に対して横方向にはその数百倍以上のサイズ(μmレベル)をもち、緻密で平滑性の高い膜を形成することができる。このため、例えば、紫外線遮蔽等のバリア膜、耐食膜、誘電体薄膜、触媒等の各種用途への応用が期待される。
チタン酸ナノシート分散液の製造方法として、チタン含有原料を高温で焼成し、塩酸水溶液と更に第4級アンモニウムイオンを反応させる、レピドクロサイト型と呼ばれるチタン酸ナノシート分散液の製造方法(非特許文献1参照)が報告されている。
この方法は、具体的には、まずCs2CO3:TiO2(モル比)=1:5.2の混合粉末を800℃で20時間焼成して、レピドクロサイト型層状チタン酸であるCs0.7Ti1.8250.1754(□は空孔)を合成し、この粉末を1モル/L程度の塩酸水溶液中で攪拌することで、層状構造を維持したまま、層間のCsイオンを全て水素イオンに入れ換えて、H0.7Ti1.8250.1754・H2Oの組成をもつ水素型物質に誘導する。次いで、これに塩基物質であるテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを含む溶液を作用させ、層間に上記塩基物質をインターカレート、更に層剥離させることにより、チタン酸ナノシート分散液を得る方法である。
しかしながら、この方法では、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン類を水素イオン濃度と等量以上(N/Tiモル比0.37以上)添加する必要があり、得られるチタン酸ナノシート分散液中には大量のアミン類が共存しており、アミン類の混入が許容できない用途には利用できない。
また、チタンアルコキシドとアミン類との混合液に水を反応させることによりチタン酸ナノシート水分散液を得る方法(非特許文献2参照)が知られている。しかしながら、この方法で得られるチタン酸ナノシート水分散液においても、大量のアミン類(N/Tiモル比0.4以上)が共存する。
さらに、水酸化チタンとアミン類とを接触させて、チタン源/アミン類のモル比が0.1〜2であるチタン酸ノシートを製造する方法(特許文献1参照)、及びチタンアルコキシドとテトラブチルホスホニウムヒドロキシド等の第4級ホスホニウム水酸化物とを反応させて得られた、チタン酸ナノシートの有機溶媒分散液(特許文献2参照)が知られている。
これらの大量のアミン類やホスホニウム類が共存するチタン酸ナノシート分散液は、経時により着色したり、また例えば、ポリエステル系樹脂に配合した場合、樹脂の分解や着色を引き起こす等の問題が生じ、汎用性に乏しい。
佐々木高義,「新しいナノ素材:酸化物ナノシートコロイド」,色材協会誌,2003年,第76巻,第10号,p.391−396 T. Ohya, A. Nakayama, Y. Shibata, T. Ban, Y. Ohya, Y. Takahashi, Journal of Sol-Gel Science and Technology, Vol. 26, p 799-802 (2003) 特開2006−182588 特開2006−206426
本発明は、アミン類及びホスホニウム類の含有量が少なく、透明性の優れたチタン酸ナノシートの分散液、その固体、及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、アミン類等を含有するチタン酸ナノシートの分散液にヒドロキシカルボン酸とアルカリ金属水酸化物を混合してアミン類等を除去することにより、アミン類等の含有量が少なく、透明性の優れたチタン酸ナノシート分散液を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔4〕を提供する。
〔1〕チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、アミン類及び/又はホスホニウム類の存在下で、加水分解することにより得られるチタン酸ナノシート(A)、ヒドロキシカルボン酸(B)、及びアルカリ金属(C)を含有する、N/Tiモル比及びP/Tiモル比が共に0.2以下であるチタン酸ナノシート分散液。
〔2〕前記〔1〕のチタン酸ナノシート分散液から分散媒を除去して得られる、チタン酸ナノシート固体。
〔3〕下記工程(1)〜(4)を有する、チタン酸ナノシート分散液の製造方法。
工程(1):チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム水酸化物からなる群から選ばれる1種以上のアミン類、及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物の存在下で、加水分解することにより、アミン類及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物を含有するチタン酸ナノシート分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液とヒドロキシカルボン酸を混合する工程
工程(3):工程(2)で得られた分散液とアルカリ金属水酸化物を混合する工程
工程(4):工程(3)で得られた分散液から少なくとも一部の水又は有機溶媒を除去した後、水又は有機溶媒で希釈する工程
〔4〕下記工程(1)〜(3)の後、又は下記工程(1)〜(4)の後の分散液から分散媒を除去する、チタン酸ナノシート固体の製造方法。
工程(1):チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム水酸化物からなる群から選ばれる1種以上のアミン類、及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物の存在下で、加水分解することにより、アミン類及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物を含有するチタン酸ナノシート分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液とヒドロキシカルボン酸を混合する工程
工程(3):工程(2)で得られた分散液とアルカリ金属水酸化物を混合する工程
工程(4):工程(3)で得られた分散液から少なくとも一部の水又は有機溶媒を除去した後、水又は有機溶媒で希釈する工程
本発明のチタン酸ナノシートの分散液及びその固体は、アミン類及びホスホニウム類の含有量が少なく、分散性、透明性が優れている。
また、本発明によれば、上記の優れた特性を有するチタン酸ナノシートの分散液の効率的な製造方法を提供することができる。
本発明のチタン酸ナノシート分散液は、チタン酸ナノシート(A)、ヒドロキシカルボン酸(B)及びアルカリ金属(C)を含有し、N/Tiモル比及びP/Tiモル比が共に0.2以下であることが特徴である。
<チタン酸ナノシート(A)>
本発明でいうチタン酸ナノシートは、チタンを中心として6個の酸素が配位した8面体構造を基本ユニットとし、このユニットが二次元平面状に広がった分子レベルの厚み(例えば、0.3〜0.8nm)を持ったシート構造(例えば、長さ2〜10nm)を有する。このチタン酸ナノシートは、二チタン酸、三チタン酸、四チタン酸、五チタン酸、六チタン酸、レピドクロサイト型等の構造を有するチタン酸ナノシートを包含し、例えば、チタン酸との塩の形態で、アミン類やホスホニウム類等が含まれていると考えられる。
チタン酸ナノシートは、分散液中において、チタン酸ナノシートが1枚ずつばらばらに分散した状態であると推察され、チタン酸ナノシート分散液は、系によっては、チタン酸ナノシートが積層し層を成した状態や、一部凝集したものを含むと考えられる。
このようなチタン酸ナノシートは、ラマンスペクトルで波数が260〜305cm-1、440〜490cm-1及び650〜1000cm-1の領域にそれぞれピークを有する。なお、従来の代表的な酸化チタンであるアナターゼ型チタニアは、ラマンスペクトルで波数が140〜160cm-1、390〜410cm-1、510〜520cm-1及び630〜650cm-1の領域にピークを有し、ルチル型チタニアは、ラマンスペクトルで波数が230〜250cm-1、440〜460cm-1及び600〜620cm-1の領域にピークを有する。
(チタン酸ナノシート分散液)
本発明のチタン酸ナノシート分散液の分散媒の主成分は、分散液の汎用性、保存安定性及びコストの観点から、水や水溶性の有機溶媒が好ましい。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソペンチルアルコール、第3級ブタノール等の炭素数1〜8の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3〜10のケトン、プロピレンカーボネート等のカーボネート系有機溶媒等の有機溶媒が挙げられる。これらの中では、炭素数1〜6のアルコールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、本発明のチタン酸ナノシート分散液に存在する化合物の元素N、TiとしてのN/Tiモル比は、汎用性の観点から、0.2以下であり、好ましくは0.15以下であり、より好ましくは0.1以下であり、更に好ましくは0.08以下であり、その下限は、生産性の観点から、0.005以上である。また、チタン酸ナノシート分散液に存在する化合物の元素Ti、PとしてのP/Tiモル比は、汎用性の観点から、0.2以下であり、好ましくは0.15以下であり、より好ましくは0.1以下であり、更に好ましくは0.08以下である。またその下限は、生産性の観点から、0.005以上である。なお、チタン酸ナノシート分散液の調製の際にアミン類及びホスホニウム類を併用する場合は、好ましくは(P+N)/Tiは0.2以下であり、より好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.08以下である。それらを併用しない場合は、当然ながら配合しない化合物のN/Ti又はP/Ti比は0となる。
本発明において、N/Tiモル比、又はP/Tiモル比とは、それぞれ、チタン酸ナノシート分散液又は固体中の、チタン原子当りのアミン類又はホスホニウム類の分子のモル比を意味する。
本発明でいう“透明性に優れた”とは、TiO2重量換算濃度1%の分散液の濁度が30%以下のことをいう。なお、濁度はJIS K−0101規定の方法により求めることができる。
なお、本分散液中のTi量は、高周波誘導プラズマ発光分析法(ICP)や蛍光X線分析法等の常法により、アミン量は、滴定法、NMR法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ法等の常法により求めることができる。
(チタン酸ナノシート(A)の製造)
チタン酸ナノシート(A)は、チタンアルコキシド及び/又はチタン塩(以下、これらを総称して、単に「チタン源」ということがある)を、アミン類、及び/又はホスホニウム類の存在下で、加水分解することにより得ることができる。
(チタン源)
本発明においては、チタン源として、チタンアルコキシド及び/又はチタン塩が用いられる。チタンアルコキシド及び/又はチタン塩としては、加水分解により水酸化チタンを生成するものが好ましい。ここで、水酸化チタンは、Ti(OH)2、Ti(OH)3、Ti(OH)4又はH4TiO4で表される組成式を有するものを包含する。
チタンアルコキシドとしては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4のアルコキシドを有するチタンアルコキシドが好ましく、具体的には、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中では、特にチタンテトラアルコキシドが好ましく、一般的な入手のし易さ、取り扱い性の観点から、チタンテトライソプロポキシドが好ましい。
チタン塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、二塩化チタン等の塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタニル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、一般的な入手のし易さ、取り扱い性の観点から、四塩化チタン、硫酸チタン及び硫酸チタニルがより好ましい。
チタン塩は、水と混合することにより、又は水との混合後、加熱することにより水酸化チタンを生成するが、その際、更にアルカリを共存させてもよい。水酸化チタンを生成させる際に共存させるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類水酸化物が挙げられる。更にはアンモニアや上記アミン類もアルカリとして使用することができる。これらの中では、入手のし易さ、取り扱い性の観点から、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びアミン類がより好ましい。アルカリの添加量は、チタン塩水溶液のpHが2以上となる量、より好ましくはpHが4以上となる量が好ましい。
チタン源は、水及び/又はチタン源と相溶性の高い溶媒に溶解しておいてもよい。かかる溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール等のアルコールが挙げられる。
なお、チタンとともに、他の元素、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等を共存させ、複合化することもできる。
(アミン類)
アミン類としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及び第4級アンモニウム水酸化物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく用いられるが、炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基を有するアミン類がより好ましい。
具体的には、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルオクチルアミン等が好ましく挙げられる。また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の置換アミン類も用いることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中では、アミン類の留去しやすさの観点から、常圧における沸点が200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、100℃以下であるものが更に好ましい。また、第2級アルキルアミン及び第3級アルキルアミンが好ましく、炭素数1〜6、特に炭素数2〜4のアルキル基を有する第2級アルキルアミン及び第3級アルキルアミンがより好ましく、ジエチルアミン、トリエチルアミン及びジ−n−プロピルアミンが特に好ましい。
アミン類は、チタン酸ナノシート生成の観点から、アミン類濃度9mmol/Lの水溶液におけるpHが9以上であるアミン類が好ましい。
(ホスホニウム類)
ホスホニウム類としては、第4級ホスホニウム水酸化物が好ましく、無機ホスホニウム化合物のリン原子と結合する4原子の水素をアルキル基、フェニル基等で置換した化合物がより好ましい。
第4級ホスホニウム水酸化物としては、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラペンチルホスホニウムヒドロキシド、及びテトラヘキシルホスホニウムヒドロキシド等の炭素数2〜8のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウムヒドロキシド;テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、エチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ペンチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、2−ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド等のトリフェニルホスホニウムヒドロキシドが挙げられる。
これらの中では、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、及びテトラペンチルホスホニウムヒドロキシドから選ばれる1種以上が好ましい。
第4級ホスホニウム水酸化物は、チタン酸ナノシート生成の観点から、第4級ホスホニウム水酸化物濃度9mmol/Lの水溶液におけるpHが9以上である第4級ホスホニウム水酸化物が好ましい。
なお、アミン類及び/又はホスホニウム類は、溶媒中でチタン源からチタン酸ナノシートを調製する上で、チタン酸ナノシートの構造を決定付ける重要な化合物であるが、本発明においてはアミン類がより好ましく、特に第1級アミン、第2級アミン、及び第3級アミンがより好ましい。
(加水分解)
チタン酸ナノシート(A)は、チタン源を、前記アミン類及び/又はホスホニウム類(以下、総称して「アミン類等」ということがある)の存在下で、加水分解することにより得ることができる。
加水分解において加える水分量は、水酸化チタンを得るために必要な量以上であればよい。通常、チタン源の質量に対して3〜50倍の質量が好ましく、5〜15倍の質量がより好ましい。加水分解の温度及び時間は、用いるチタンアルコキシド及び/又はチタン塩に応じ、適宜選択することができる。
<ヒドロキシカルボン酸(B)>
ヒドロキシカルボン酸は、水酸基を有するカルボン酸であり、チタン酸ナノシートを有機溶媒に安定分散させるために用いられる。
水酸基を1個有するヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸(一塩基酸)、乳酸(一塩基酸)、マンデル酸(一塩基酸)、リンゴ酸(二塩基酸)、及びクエン酸(三塩基酸)等が挙げられる。水酸基を2個有するヒドロキシカルボン酸としては、グリセリン酸(一塩基酸)、酒石酸(二塩基酸)等が挙げられる。
<アルカリ金属(C)>
分散液にはアルカリ金属が含まれる。このアルカリ金属は、チタン酸ナノシートの製造工程において、アミン類等をチタン酸ナノシート表面から除去し易くするために添加するアルカリ金属水酸化物に由来する。このアルカリ金属は、チタン酸ナノシート分散液中では、アルカリ金属イオン又は有機又は無機のアルカリ金属塩として存在する。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
<チタン酸ナノシート分散液の製造方法>
下記工程(1)〜(4)を有する本発明の方法によれば、アミン類及びホスホニウム類の含有量が少なく、透明性の優れたチタン酸ナノシート分散液を効率的に製造することができる。
工程(1):チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム水酸化物からなる群から選ばれる1種以上のアミン類、及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物の存在下で、加水分解することにより、アミン類及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物を含有するチタン酸ナノシート分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散液とヒドロキシカルボン酸を混合する工程
工程(3):工程(2)で得られた分散液とアルカリ金属水酸化物を混合する工程
工程(4):工程(3)で得られた分散液から少なくとも一部の水又は有機溶媒を除去した後、水又は有機溶媒で希釈する工程
(工程(1))
工程(1)におけるアミン類等含有チタン酸ナノシート分散液の製造方法は特に限定されないが、以下に示す第1方法及び第2方法によれば、効率的に製造することができる。
(第1方法)
第1方法は、アミン類等の含水溶液とチタン源とを混合する方法である。
アミン類等の含水溶液には、アミン類等の溶解を容易にするため、有機溶媒が含有されていてもよい。かかる有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール等のアルコールが好ましい。
アミン類等の含水溶液とチタン源とを混合する場合の、チタン源とアミン類等の混合比率は、チタン源/アミン類等のモル比が0.3〜10であることが好ましく、0.3〜5であることがより好ましく、0.4〜2であることが更に好ましい。チタン酸ナノシートを製造する際の、チタン源に対するアミン類等の割合を増加させることで、より低極性の有機溶媒に対しても透明な分散液を得ることができる。
なお、第4級アンモニウム水酸化物又は第4級ホスホニウム水酸化物を使用する際は、3級以下のアミン類と併用することが好ましい。特にチタン源と混合する場合の、チタン源と、第4級アンモニウム水酸化物及び/又は第4級ホスホニウム水酸化物の配合比率は、第4級アンモニウム水酸化物由来の窒素(N4)、及び第4級ホスホニウム水酸化物由来のリン(P4)とした場合、(N4+P4)/Tiがモル比として0.2未満であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、残りは第3級以下のアミン類で補うことが好ましい。
アミン類等の含水溶液とチタン源との混合液中のチタン濃度は、酸化チタン(TiO2)換算で0.01〜15質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.05〜5質量%が更に好ましい。
アミン類等の含水溶液とチタン源の混合に際し、チタン化合物の白濁を生じることがあるが、継続的に攪拌を行うことで無色透明〜薄黄色の液を得ることができる。
チタン源を混合する際の温度は、特に限定されない。2〜200℃でアミン類等含有チタン酸のナノシートが生成するが、長鎖アミンの安定性の観点から、10〜150℃がより好ましく、20〜100℃が更に好ましい。反応時間は0.1〜20時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。
また、チタン酸ナノシートの粒子径(横方向の長さ)を発達させるために、アミン類等とチタン源を混合した後に、更に50〜200℃で水熱合成を行ってもよい。
(第2方法)
第2方法は、アミン類等とチタン源を予め混合しておき、その後、水を混合してチタン含有水溶液を製造する方法である。アミン類等には、第1方法と同様の有機溶媒が含有されていてもよい。
アミン類等及びチタン源の混合物に水を加える際、水の量はチタンが分解するのに必要な量であればよい。添加する水の量は、アミン類等及びチタン源の混合物の質量に対して5〜50倍の質量が好ましく、10〜15倍の質量がより好ましい。水を添加する温度は、特に限定はされないが2〜200℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。また、水の滴下時間は、0.01〜5時間が好ましく、0.02〜2時間がより好ましい。更に、水の添加後、0.1〜20時間の熟成を行うことが好ましい。
工程(1)で得られるアミン類等含有チタン酸ナノシート分散液中のチタン濃度は、酸化チタン(TiO2)換算で0.01〜15質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.05〜5質量%が更に好ましい。
(チタン酸ナノシートの確認)
チタン酸ナノシートの生成は、X線回折法、ラマン分光法、紫外線吸収スペクトル、透過型電子顕微鏡(TEM)観察等により確認することができる。チタン酸ナノシートを乾燥により粉末化したものは、X線回折法により層状構造を確認することができる。
本発明のチタン酸ナノシート分散液中には、アミン類等を含むチタン酸シートが形成されていると推定される。これは、アルゴンイオンレーザー(波長488nm)を光源とし、レーザー出力100〜600mW、積算時間30〜300秒の条件下における透過法ラマンスペクトルの測定において、波数が260〜305cm-1、440〜490cm-1及び650〜1000cm-1の領域にそれぞれピークを有し、チタン原子及びチタン酸シートの構造が導出されたためである。
なお、アミン類等を含有するチタン酸ナノシートの紫外線吸収スペクトルは、吸収スペクトルの立ち上がり波長(吸収端)が300〜340nmに見られる。これに対し、アナターゼ型チタニアでは、波長360〜380nmに、ルチル型チタニアでは、波長400〜420nmに吸収スペクトルの立ち上がり波長(吸収端)が見られる。
また、工程(1)で得られるチタン酸ナノシート分散液から分散媒を除去して、乾燥してなる粉末のX線回折により、層間隔はアミン類のカチオンサイズが大きくなるにしたがって増大することが確認されており、アミン類等は層間に存在しているものと考えられる。このことから、アミン類等を含有するチタン酸ナノシートが、有機溶媒への分散性を良好にするものと推定される。
(工程(2))
工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散液とヒドロキシカルボン酸(B)を混合する。
得られるチタン酸ナノシート分散液のpHは、用いるヒドロキシカルボン酸の種類や量により適宜調整することができる。各種用途への適用性の観点から、pHは2〜9.5が好ましく、pH3〜9がより好ましい。チタン酸の中和度としては、通常50〜300%であり、好ましくは50〜200%である。
工程(1)で得られた分散液とヒドロキシカルボン酸の混合温度等は特に限定されないが、通常0〜100℃が好ましく、10〜50℃がより好ましい。
また、チタン酸ナノシートの粒子径(横方向の長さ)を発達させるために、チタン酸ナノシート分散液(水溶液)とヒドロキシカルボン酸を混合した後に、更に50〜200℃で水熱処理を行うこともできる。
ここで、ヒドロキシカルボン酸は、チタン酸ナノシートを有機溶媒に安定分散させるために用いられる。前記工程(1)で得られるチタン酸ナノシートの水分散液にヒドロキシカルボン酸を混合すると、例えばクエン酸の場合、2個のカルボキシ基と1個のヒドロキシ基がチタン酸ナノシート表面に配位し、残る1個のカルボキシ基がカチオン化したアミン類等と塩を形成し、この構造が有機溶媒への安定分散に大きく寄与しているものと推定される。
ヒドロキシカルボン酸の具体例は前記のとおりである。上記の効果を発現するヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、グリセリン酸及び酒石酸からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
ヒドロキシカルボン酸の混合割合は、工程(1)で用いたアミン類等に対して0.5当量倍以上が好ましく、1当量以上がより好ましい。アミン類等に対するヒドロキシカルボン酸の割合を増加させることで、より低極性の有機溶媒に対しても透明〜薄黄色の分散液を得ることができる。その混合割合の上限は特にないが、通常4当量倍以下が好ましく、3当量倍以下がより好ましい。なお、アミン類等の当量とは、アミンのモル数にアミノ基の個数を掛けた値であり、ヒドロキシカルボン酸の当量とは、ヒドロキシカルボン酸のモル数にカルボキシル基の個数を掛けた値である。
チタン酸ナノシートの有機溶媒分散液を製造する場合は、前記工程(1)及び(2)に加え、工程(2)で得られた分散液に有機溶媒を加えながら水を留去すれば、無色透明〜薄黄色の有機溶媒分散液を効率的に製造することができる。
有機溶媒との混合温度等は特に限定されないが、0〜100℃が好ましく、10〜50℃がより好ましい。工程(2)で得られた分散液と有機溶媒とを混合し、水を留去することにより、水分の低減したチタン酸ナノシートを含有する有機溶媒分散液を得ることができる。得られる有機溶媒分散液の水の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
用いる有機溶媒は、工程(1)における第1方法及び第2方法で用いる有機溶媒と異なるものとすることもできる。そうすれば、工程(1)で得られる有機溶媒分散液とは異なる有機溶媒分散液を得ることができる。ここで用いることができる有機溶媒は特に限定されないが、水又は極性を有する有機溶媒が好ましい。かかる有機溶媒の具体例は、チタン酸ナノシート分散液で説明したとおりである。
チタン酸ナノシートの有機溶媒分散液中のチタン濃度は、酸化チタン(TiO2)換算で40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。下限は0.05質量%以上が好ましい。
(工程(3))
工程(3)においては、前記工程(2)で得られた分散液とアルカリ金属水酸化物(C’)を混合する。
前記方法により、チタン酸ナノシートの有機溶媒分散液を製造することができるが、アミン類等はヒドロキシカルボン酸と塩を形成しているため、有機溶媒分散液からの除去が困難である。そのため、アミン類等の分解により着色する可能性があり、例えば光学材料用途等においての利用が制限される。
そこで、前記工程(2)で得られた分散液にアルカリ金属水酸化物(C’)を混合して該分散液のpHをアルカリ性にすることにより、アミン類等とアルカリ金属の交換反応を行わせ、アミン類等をヒドロキシカルボン酸(B)から脱離させることができる。そして、アミン類等を溶媒とともに留去すれば、工程(2)で得られた分散液からアミン類等を容易に除去することができる。
用いることのできるアルカリ金属水酸化物(C’)としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
アルカリ金属水酸化物(C’)の添加量は、ヒドロキシカルボン酸に対して1当量倍以上であればよいが、溶液のpHを考慮に入れると1当量倍以上、3当量倍以下が好ましく、2等量倍以下がより好ましい。
アルカリ金属水酸化物(C’)は、水又は極性を有する有機溶媒から選ばれる溶媒の溶液又は分散液として添加することが好ましい、有機溶媒は、チタン酸ナノシート分散液又は工程(1)で溶媒として挙げたものを用いることが好ましい。溶媒中のアルカリ金属水酸化物(C’)の濃度は、1〜20質量%とすることが好ましい。
(工程(4))
工程(3)におけるアルカリ金属水酸化物の混合により、チタン酸ナノシート表面に存在していたアミン類が遊離し、除去し易くなっているので、工程(4)において、分散液から少なくとも一部の水又は有機溶媒を除去することにより、アミン類等を容易に除去することができる。この場合、有機溶媒は、前記チタン酸ナノシート分散液の溶媒として挙げたものである。また水又は有機溶媒の除去は一部ないし全部でもよく、溶媒除去によりチタン酸ナノシートを固体化した後、該固体を新たな水又は有機溶媒で希釈して分散液を得てもよい。除去した溶媒はアミン類等を取り除くことで再利用することができる。アミン類の除去を徹底するために、工程(4)の後、再度工程(4)を繰り返してもよく、チタン酸ナノシートの構造を維持しうる限り複数回行ってもよい。
(その他工程)
本発明のチタン酸ナノシート分散液のアミン類等を更に低減化させるためには、工程(2)と工程(3)の間に、工程(2’)を行うことが好ましい。
工程(2’):工程(2)で得られた分散液から少なくとも一部の水分を除去した後、有機溶媒を混合し、チタン酸ナノシート有機溶媒分散液を調製する工程。
水分の除去方法としては、加熱により蒸発する方法、減圧により蒸発する方法、及び吸着剤により脱水する方法等が採用される。水分の除去は一部ないし全部であってもよく、固体化させてもよい。固体はチタン酸ナノシート構造を維持したまま得ることができる。工程(2’)はチタン酸ナノシート構造を崩さない限り複数回行ってもかまわない。
水分除去の際の乾燥温度は200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。乾燥時間は、希望する乾燥度により適宜設定すればよいが、通常1〜72時間が好ましく、5〜24時間がより好ましい。また有機溶媒との混合温度等は0〜100℃が好ましく、10〜50℃がより好ましい。
工程(2’)後に得られる有機溶媒分散液の水の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。なお希釈の際に用いる有機溶媒は、前記チタン酸ナノシート分散液の溶媒として挙げたものである。
工程(2’)の後のチタン酸ナノシートの有機溶媒分散液中のチタン濃度は、酸化チタン(TiO2)換算で40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。下限は0.05質量%以上が好ましい。
<チタン酸ナノシート固体の製造方法>
チタン酸ナノシート固体は、前記工程(3)又は工程(4)を行った後の分散液から分散媒である水又は有機溶媒を除去することにより効率的に製造することができる。
水の除去方法としては、加熱により蒸発する方法、減圧により蒸発する方法、及び吸着剤により脱水する方法等が採用される。加熱する場合の温度は200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。乾燥時間は、希望する乾燥度により適宜設定すればよいが、通常1〜72時間が好ましく、5〜24時間がより好ましい。本発明では工程(2’)を行った場合は、工程(3)の分散液を固体化したものでも十分にアミン類等の低いチタン酸ナノシート固体を得ることができる。
チタン酸ナノシート固体の水の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
得られたチタン酸ナノシート固体は、アミン類等の濃度がTiに対して少なく、具体的には、元素記号N,P及びTiとしてN/Tiのモル比及びP/Tiのモル比が共に0.2以下であり、ナノシート構造を維持したまま、アルコール等の有機溶媒に再分散が可能である。固体を必要なときに有機溶媒などで分散して使用すればよい。粉末化により分散液の場合と比べて保存や輸送効率において有利である。
以下の実施例及び比較例において、X線回折法による粉末チタン化合物の層状構造の確認、及びラマン分光法によるチタン酸ナノシート構造の確認は、以下の方法で行った。
<X線回折法による粉末チタン化合物の層状構造の確認>
得られた無色透明溶液をガラス板上に数滴滴下し、乾燥させた膜を用いてX線回折分析を行った。用いたX線回折装置は、理学電機株式会社製、RINT2000であり、線源:CuKα線、管電圧:40kV、管電流:120mA、走査速度:10°/minの条件下で測定を行った。
<ラマン分光法によるチタン酸シート構造の確認>
溶液のラマンスペクトル測定は、ラマン分光測定装置(東京インスツルメント株式会社製、Nanofinder30)を用いて、アルゴンイオンレーザー(波長633nm)を光源とし、グレーティング600grp/mm、積算時間400秒の条件で室温にて透過法で測定した。
また、粉末の測定については、溶液を100℃の温度で12時間以上常圧にて乾燥させることによって得られた粉末について、反射法で測定する以外は上記と同様の測定条件で行った。
実施例1
(チタン酸ナノシートの製造)
ジエチルアミン0.05モル(3.657g)を蒸留水160gに溶解したアミン水溶液を攪拌し、これに、2−プロパノール10mLにチタンテトライソプロポキサイド〔Ti(OiPr)4〕0.1モル(28.422g)を溶解させた液をチタン源として滴下した。滴下に伴い溶液は白濁するが、攪拌を続行することで透明溶液を得た。
この透明溶液中に生成したチタン化合物の同定は、この溶液数滴をガラス基板上に滴下し、乾燥させた薄膜をX線回折法により分析し、この溶液そのものをラマン分光測定法により分析することで行った。その結果、X線回折においては、アナターゼ型やルチル型等の結晶性化合物のピークは見られず、面間隔1.0nmの層状構造に由来するピークのみが認められたことから、チタン酸ナノシート薄膜が層状構造であることが確認できた。また、前記ラマン分光法により、レピドクロサイト型チタン酸ナノシート構造を有することが判った。
(チタン酸ナノシート分散液の製造)
このチタン酸ナノシートを含む透明溶液に、クエン酸0.033モル(6.404g)を蒸留水30gに溶解したクエン酸水溶液を滴下した。滴下終了後のpHは約7であり、溶液は透明であった。
この溶液をテフロン(デュポン社、登録商標)製バットに入れ、100℃の乾燥機にて8時間乾燥し淡黄色の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末の定量分析の結果、TiO2換算濃度50%、ジエチルアミン17%、クエン酸21%、水分12%、N/Tiモル比は0.37、クエン酸/Tiモル比は0.17であった。この乾燥粉末を前記ラマン分光法により測定した結果、レピドクロサイト型チタン酸ナノシート構造を有していた。
次に、この乾燥粉末8.0g(TiO2換算:0.05モル、ジエチルアミン:0.0185モル、クエン酸:0.0085モル)をメタノール32.0gに分散させた(TiO2換算濃度:10質量%)。このとき分散液中に沈殿物は見られず、淡黄色透明溶液であった。この分散溶液を前記ラマン分光測定装置により測定した結果、レピドクロサイト型チタン酸ナノシート構造を有していた。この分散液に水酸化セシウム0.0185モル(3.1g)をメタノール15.0gに溶解した水酸化セシウムのメタノール溶液を攪拌しながら室温下、徐々に滴下した。滴下過程中、溶液が増粘してきたが攪拌を続けたところ、粘度は低下して淡黄色透明溶液を得た。ここで得られた透明溶液を60℃にて溶媒であるメタノール30gを留去した結果、N/Tiモル比は0.04であった。
また、この分散溶液を前記ラマン分光測定装置により測定した結果、レピドクロサイト型チタン酸ナノシート構造を有していた。
(チタン酸ナノシート分散液の評価)
上記で得られたN/Tiモル比が0.04のチタン酸ナノシートのメタノール分散液にシランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを重量比で50/50(チタン酸ナノシート分散液/シランカップリング剤)になるように混合した。この溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて薄膜を形成し、110℃で30分間硬化させた。この薄膜つきガラス基板を50mW/cm2の光強度のキセノンランプ下に置き、着色度合いを評価した。評価には、可視光域での分光スペクトルにて評価した。その結果、96時間照射後も着色に由来する吸収は見られなかった。
実施例2
実施例1において、水酸化セシウムを水酸化ナトリウムに変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた溶液のN/Tiモル比は0.13であった。
また、この分散溶液を前記ラマン分光測定装置により測定した結果、レピドクロサイト型チタン酸ナノシート構造を有していた。
実施例3
実施例1において、水酸化セシウムを水酸化リチウムに変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた溶液のN/Tiモル比は0.18であった。
また、この分散溶液を前記ラマン分光測定装置により測定した結果、レピドクロサイト型チタン酸ナノシート構造を有していた。
実施例4
実施例1において、クエン酸をリンゴ酸に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた溶液のN/Tiモル比は0.12であった。
また、この分散溶液を前記ラマン分光測定装置により測定した結果、レピドクロサイト型チタン酸ナノシート構造を有していた。
実施例5
実施例1において、クエン酸をリンゴ酸に、水酸化セシウムを水酸化カリウムに変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた溶液のN/Tiモル比は0.19であった。
また、この分散溶液を前記ラマン分光測定装置により測定した結果、レピドクロサイト型チタン酸ナノシート構造を有していた。
比較例1
実施例1において、水酸化セシウムの添加を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果得られた溶液のN/Tiモル比は0.37であった。
得られたチタン酸ナノシートのメタノール分散液を用いて、実施例1と同様の評価を行った。その結果、96時間後の分光スペクトルにおいては、400nm付近での吸収が見られ、膜が黄色く着色しているのが確認された。
比較例2
実施例1において、クエン酸の添加を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた溶液のN/Tiモル比は0.02であったものの白色沈殿が生成し、分散性に劣るものであった。
本発明のチタン酸ナノシート分散液は、アミン類等の含有量が少なく、分散性、透明性に優れ、流動性を有していることから、機能性膜(紫外線遮蔽等のバリア膜、耐食膜等)のコート剤、誘電体薄膜材料、触媒等のみならず、アミン類の混入が許容できない樹脂(例えば、ポリエステル系樹脂)等の添加剤としても利用することもできる。

Claims (8)

  1. チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、アミン類存在下加水分解することにより得られるチタン酸ナノシート(A)、ヒドロキシカルボン酸(B)、及びアルカリ金属(C)を含有する、N/Tiモル比0.2以下であるチタン酸ナノシート分散液。
  2. ヒドロキシカルボン酸(B)が、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、グリセリン酸及び酒石酸からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のチタン酸ナノシート分散液。
  3. アルカリ金属(C)が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のチタン酸ナノシート分散液。
  4. 水の含有量が10質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のチタン酸ナノシート分散液。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のチタン酸ナノシート分散液から分散媒を除去して得られる、チタン酸ナノシート固体。
  6. 下記工程(1)〜(4)を有する、チタン酸ナノシート分散液の製造方法。
    工程(1):チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム水酸化物からなる群から選ばれる1種以上のアミン類存在下加水分解することにより、アミン類含有するチタン酸ナノシート分散液を得る工程
    工程(2):工程(1)で得られた分散液とヒドロキシカルボン酸を混合する工程
    工程(3):工程(2)で得られた分散液とアルカリ金属水酸化物を混合する工程
    工程(4):工程(3)で得られた分散液から少なくとも一部の水又は有機溶媒を除去した後、水又は有機溶媒で希釈する工程
  7. 前記工程(2)と工程(3)の間に、工程(2’)を有する、請求項6に記載のチタン酸ナノシート分散液の製造方法。
    工程(2’):工程(2)で得られた分散液から少なくとも一部の水分を除去した後、有機溶媒を混合し、チタン酸ナノシート有機溶媒分散液を調製する工程。
  8. 下記工程(1)〜(3)の後、又は下記工程(1)〜(4)の後の分散液から分散媒を除去する、チタン酸ナノシート固体の製造方法。
    工程(1):チタンアルコキシド及び/又はチタン塩を、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム水酸化物からなる群から選ばれる1種以上のアミン類存在下加水分解することにより、アミン類含有するチタン酸ナノシート分散液を得る工程
    工程(2):工程(1)で得られた分散液とヒドロキシカルボン酸を混合する工程
    工程(3):工程(2)で得られた分散液とアルカリ金属水酸化物を混合する工程
    工程(4):工程(3)で得られた分散液から少なくとも一部の水又は有機溶媒を除去した後、水又は有機溶媒で希釈する工程
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